北朝鮮:ミサイル発射を米国や韓国への「適切な軍事行動」と2024年11月01日 10:09

Ainovaで作成
【概要】
 
 米国時間10月30日、北朝鮮が新たな大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、さらにウクライナ戦争に参戦する可能性が報じられた。約8,000人の北朝鮮軍がロシアのクルスク地域に配置され、ウクライナ軍との戦闘に参加する準備が整っていると米国務長官アントニー・ブリンケン氏が述べた。これにより、ウクライナ戦争における北朝鮮の関与が明確化し、米国とその同盟国にとって新たな外交的課題が浮上している。

 また、米国防長官ロイド・オースティン氏は、ロシアが軍事援助を求めたことが、ウクライナ戦でのロシアの弱体化を示していると指摘。米国と韓国は中国に対して、北朝鮮がロシアへの支援を拡大しないよう影響力を行使することを求めた。中国はロシアと北朝鮮に経済的な結びつきが深いが、北朝鮮の軍事行動には懸念を抱いているとされている。

 北朝鮮の新型ICBMは、12月に発射されたミサイルを上回る高度4,350マイル(約7,000キロメートル)に達し、米本土への攻撃が可能であることが確認された。

【詳細】

 10月30日、北朝鮮は新たな大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、これまでの発射記録を超える高度に到達した。このミサイルは固体燃料を使用しているとされ、従来の液体燃料式ICBMに比べて迅速に発射可能で、発射準備中の早期発見を回避できるという利点がある。日本の防衛大臣によると、このミサイルは86分間飛行し、約7,000キロメートル(4,350マイル)の高度に達した後、日本の北方海域である北海道の沖合、奥尻島の西方に着水した。

 北朝鮮はこのミサイル発射を米国や韓国への「適切な軍事行動」と主張しており、金正恩氏は、米韓が核同盟を強化しているとみなして対抗措置をとる意図を示している。また、米国とその同盟国の軍事演習に対する反発として、同国はICBMの発展を加速させ、核能力を強化する姿勢を明確にした。

 加えて、約8,000人の北朝鮮兵がロシアのクルスク地方に派遣され、ウクライナ軍との戦闘に参加する見通しが立てられた。米国務長官アントニー・ブリンケン氏は、北朝鮮軍がロシア国内で戦闘訓練を受け、特に砲撃やドローン運用、塹壕戦などの歩兵戦術を習得していると述べた。米国と韓国はこの北朝鮮のロシア支援を非難し、同国の行動が地域の安定を脅かすと警告している。

 米国は中国に対し、北朝鮮がロシアと軍事協力を進めないよう圧力をかけるよう求めた。ロイド・オースティン米国防長官は、中国が北朝鮮の軍事行動には懸念を抱いている可能性があると指摘し、韓国の外交関係者も「中国はこの状況を非常に不快に感じていると思われる」と述べている。一方で、中国はロシアへの経済支援を提供しているが、北朝鮮の軍事支援についての立場は明らかにしていない。

 さらに、北朝鮮がロシアに軍事支援を提供する見返りとして、ロシアが北朝鮮のミサイル技術や軍事能力の向上を支援する可能性もあると米国は見ている。
 
【要点】

 ・北朝鮮ICBM発射:10月30日、北朝鮮が新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、これまでの発射記録を超える高度4,350マイル(約7,000キロメートル)に達した。

 ・ミサイルの特徴:固体燃料を使用しているため迅速に発射可能で、液体燃料式と比べて発射準備中の早期発見を回避できる利点がある。

 ・発射の目的:北朝鮮はこれを「適切な軍事行動」と称し、米韓の軍事同盟強化への対抗措置として、核能力の強化を示唆。

 ・着水地点:ミサイルは86分間飛行し、日本の北海道沖、奥尻島の西方に着水。

 ・北朝鮮兵のロシア派遣:約8,000人の北朝鮮兵がロシアのクルスク地域に派遣され、ウクライナ軍との戦闘に参加する見通し。

 ・軍事訓練:北朝鮮兵はロシアで砲撃、ドローン運用、塹壕戦などの訓練を受けており、戦闘準備が整っているとされる。

 ・米国の対応:米国は北朝鮮の行動を非難し、中国に対して北朝鮮とロシアの軍事協力を抑制するよう圧力をかけるよう求めた。

 ・中国の立場:中国はロシアを支援する一方で、北朝鮮の軍事行動には懸念を抱いていると推測されている。

 ・見返りの可能性:北朝鮮の軍事支援に対する見返りとして、ロシアが北朝鮮のミサイル技術や軍事能力の向上を支援する可能性がある。
 
【引用・参照・底本】

North Korea tests new ICBM as its troops appear set to join Ukraine war The Washintong Post 2024.10.31
https://www.washingtonpost.com/world/2024/10/30/north-korea-ballistic-missile-launch-icbm/

「ポーランドは火遊びをしている」2024年11月01日 10:40

Ainovaで作成
【概要】
 
 ポーランドとウクライナ間の緊張に関する出来事を報じている。現在の「ウクライナ民族主義者組織(OUN)」のリーダーであるボグダン・チェルヴァク氏が、ある匿名アカウントによって投稿された「冗談の地図」に対して「ポーランドは火遊びをしている」と警告したことを中心に展開されている。この地図は、カリーニングラード地域をポーランドの一部とし、リトアニア・ベラルーシ・ウクライナにまたがるポーランド第二共和国時代の「東部国境地域」(クレシー)を含んでいる。ウクライナの領土が含まれている点がチェルヴァク氏を刺激し、ポーランドに対する警告発言に至った。

 ポーランド側は、これらの領土に対する公式な領有権主張はしておらず、過激なナショナリストでもそのような主張を望む声はわずかである。また、ポーランドは、これらの領土を回復するためにリスクを冒して戦争を行う意図はない。地図を共有した匿名アカウントは、投稿の意図を明確にしていないが、別のウクライナの人気アカウントによってコピーされたチェルヴァク氏の発言に対し、「それはただの言い訳だ。彼らはナチスを崇拝する方がよいから許可を出さないのだ」と返答している。この発言は、ポーランドの外務大臣であるラデック・シコルスキ氏の見解と一致しており、シコルスキ氏は、「ウクライナがドイツ軍の遺体埋葬を許可したように、ウクライナにおけるポーランド人の埋葬も同様に認められるべきである」と主張した。

 この議題は、元ウクライナ外相ドミトロ・クレバ氏が「ウクライナ人の強制移住」をポーランドの民族浄化と同一視したことにより再び浮上した。加えて、英国の人類学者クリス・ハン氏は、歴史的な民族・宗教的観点からは、ウクライナがクリミアやドンバスよりもむしろポーランド南部のカルパティア地域に対する領有権を主張する方が理にかなっていると示唆している。この見解により、ウクライナのポーランド国境に対する領有権が暗示され、さらなる議論を呼んだ。

 チェルヴァク氏がこの「冗談の地図」に過剰反応して警告を発した背景として、ポーランドとウクライナの歴史的対立と、最近の領土問題における言動の影響が挙げられている。

【詳細】

 要点は、ポーランドとウクライナの歴史的・政治的緊張が現代にも尾を引いており、今回の「冗談の地図」がその緊張を再燃させたことである。特に、ウクライナ民族主義者組織(OUN)のリーダーであるボグダン・チェルヴァク氏が、この地図を見て「ポーランドは火遊びをしている」と発言したことが問題視されている。この発言は、第二次世界大戦中にOUNがポーランドの民間人に対して行ったとされる「ヴォルィーニ虐殺」を示唆しており、ポーランド側に強い不快感を引き起こしている。

 1. 冗談の地図の内容とその影響

 「冗談の地図」とは、ロシアのカリーニングラード地域をポーランド領として描き、リトアニア・ベラルーシ・ウクライナの一部をかつてのポーランド第二共和国の領土(「クレシー」)として表示したものである。この地図は匿名アカウントによってSNSに投稿され、ウクライナ側からの反発を招いた。このうちウクライナ領とされた地域が、ウクライナ民族主義者のチェルヴァク氏を刺激し、彼の「ポーランドは火遊びをしている」という発言に繋がったとされる。この発言は、ポーランド国内でも反ウクライナ感情を煽り、ウクライナ国内ではポロノフォビア(ポーランド人嫌悪)を助長したと報じられている。

 2. ウクライナの埋葬問題とその歴史的背景

 ポーランド側は、OUNによるヴォルィーニ虐殺の犠牲者の埋葬許可を求めているが、ウクライナ側はこれに消極的である。チェルヴァク氏は地図に対する反応として「それなのにポーランド人はウクライナがポーランド人墓地の発掘許可を渋っていることに憤っている」と発言し、埋葬問題への反感を示した。これに対しポーランド外務大臣ラデック・シコルスキ氏は、ウクライナがドイツ軍兵士の埋葬を認めたように、ポーランド人犠牲者の埋葬も認められるべきだと反論した。このシコルスキ氏の発言は、ポーランド人がウクライナによる埋葬問題の扱いを不平等と感じていることを示しており、この問題が両国の緊張を再び高めている。

 3. 領土に関する発言とその波紋

 2024年8月、ウクライナの元外相ドミトロ・クレバ氏がポーランドの東南部を「ウクライナの領土」と表現し、ポーランド側の強い反発を招いた。クレバ氏の発言は、1940年代の「ウクライナ人の強制移住」をポーランドがウクライナに対して行った浄化と同一視する内容であった。また、英国の人類学者クリス・ハン氏が、ポーランドのカルパティア地域に関してウクライナの領有権を支持するかのような発言を行い、ウクライナのポーランドに対する潜在的な領土主張を支持するかのように受け取られた。ハン氏の発言は特にポーランドの政治的な反響を呼び、両国間で領土に関する論争を引き起こした。

 4. ウクライナ内の超国家主義とその影響

 2022年以降、ウクライナ国内では超国家主義的な風潮が広がり、ロシアに対する敵意が高まっているが、ポーランドに対する反感も次第に増大している。これには、歴史的に対立してきたウクライナとポーランドの民族的な緊張が影響していると考えられる。ウクライナ民族主義者による将来的なポーランドへのテロ活動の可能性や、領土主張に基づいたウクライナ国内での政治的動機が懸念されるとしている。

 5. ポーランドのウクライナ支援の限界と今後の展望

 ポーランドはこれまでウクライナへの軍事支援を積極的に行ってきたが、最近では支援の限界に達したとされている。また、NATOの戦争終結に向けたプロセスにポーランドが除外されたことが、ウクライナ支援のスタンスに変化をもたらす可能性がある。ウクライナがこの状況を利用して、ロシアへの敗北の責任をポーランドに転嫁し、戦後のウクライナにおける領土請求の可能性も示唆されている。

 要するに、ポーランドとウクライナの間の民族的・歴史的な対立と、現代の政治的情勢が結びついた複雑な問題について詳述しており、将来的な両国間の緊張の行方を懸念している。
 
【要点】

 1.「冗談の地図」問題

 ・ロシアのカリーニングラードをポーランド領とし、ウクライナの一部を旧ポーランド領として描いた地図がSNSに投稿され、ウクライナ側から反発が起きた。
 ・ウクライナ民族主義者ボグダン・チェルヴァク氏が「ポーランドは火遊びをしている」と発言し、過去のヴォルィーニ虐殺を連想させた。

 2.ウクライナにおける埋葬問題

 ・ポーランドはウクライナ国内でのポーランド人虐殺犠牲者の埋葬許可を求めているが、ウクライナは消極的な態度を示している。
 ・ポーランドのラデック・シコルスキ外相は、ドイツ兵の埋葬が認められている事例を引き合いに、ポーランド人犠牲者の埋葬も認めるべきだと主張。

 3.領土問題の再燃

 ・2024年、元ウクライナ外相クレバ氏がポーランドの一部地域を「ウクライナ領」と発言し、ポーランド側の強い反発を招いた。
 ・英国のクリス・ハン氏もカルパティア地域についてウクライナ支持を示唆し、領土論争が再び浮上。

 4.ウクライナ内の超国家主義の拡大

 ・ウクライナ国内でロシアのみならず、ポーランドに対する反感が広がりつつある。
 ・超国家主義の台頭が将来的にポーランドへのテロ行為や領土主張へと発展する懸念が指摘されている。

 5.ポーランドのウクライナ支援の見直し

 ・ポーランドはこれまでウクライナを積極的に支援してきたが、支援の限界に達したと見られる。
 ・NATOの戦争終結プロセスにポーランドが除外されたことで、ウクライナ支援への姿勢が変化しつつある。
 
【引用・参照・底本】

A Shitpost Map Of Poland Triggered The OUN Chief Into Warning That “Poles Are Playing With Fire” Andrew Korybko's Newsletter 2024.10.31
https://korybko.substack.com/p/a-shitpost-map-of-poland-triggered?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=150971176&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

「月面レンガ」の曝露実験2024年11月01日 11:42

Microsoft Designerで作成
【概要】
 
 神舟19号のミッションは、中国の将来の月探査計画において重要な役割を担う、若手中心のクルーと新たな実験を特徴とするミッションである。2024年10月30日、北京時間午前11時に打ち上げられた後、約6.5時間で中国の宇宙ステーションに無事にドッキングした。今回のクルーは、司令官のCai Xuzheと新任の宇宙飛行士であるSong Lingdong、初の女性宇宙飛行士エンジニアであるWang Haozeで構成され、特に1990年代生まれの若い宇宙飛行士が選ばれた点が注目される。

 宇宙分野の専門誌「宇宙知識」(Aerospace Knowledge)の編集長であるWang Ya’nan氏によると、このミッションは、若年層の起用と女性宇宙飛行士の参加により、今後の月面探査を見据えた意義がある。具体的には、月面探査での使用を想定した「月面土壌模擬材料」を用いたレンガの曝露実験が含まれており、これは将来の月面基地建設を視野に入れた研究の一環である。また、Caiは神舟14号に参加して以来、わずか22カ月で再び宇宙飛行を果たし、中国の宇宙飛行士として最短期間での飛行記録を更新している。

 神舟19号の主な任務は、約6カ月の滞在中に神舟18号クルーとの交代、船外活動、物資の管理、宇宙デブリ保護装置の設置など多岐にわたる。さらに、神舟19号のクルーは、天舟8号貨物船と神舟20号有人宇宙船の受け入れも予定されており、2025年4月末または5月初めに地球へ帰還する計画である。

 神舟19号ミッションでは、宇宙船の開発元である中国宇宙技術研究院(China Academy of Spacecraft Technology)は、軌道モジュールの設計とレイアウトの最適化を行い、積載容量を20%増加させ、時間の制約がある物資をより多く運搬できるようにした。この最適化により、宇宙ステーションの長期運用を支えるための効率がさらに高まることが期待されている。

 また、神舟19号は、月面探査を目指す中国の目標に向けた大きなステップとなっている。2030年までに月面に宇宙飛行士を送る計画に向けて、若い宇宙飛行士が登用され、未来の月探査のための技術的な準備と訓練が進行中であるとされる。王氏によると、35歳から45歳の宇宙飛行士が最も適しているとされるため、1990年代生まれの宇宙飛行士の参加はこの年齢層の経験を蓄積する上で重要である。

 加えて、今回の神舟19号ミッションでは、中国初の女性飛行士エンジニアの参加があり、今後の有人宇宙飛行ミッションにおいて女性宇宙飛行士が増加することが予想される。女性の参加により、宇宙ステーションや月面基地での長期滞在がより円滑に進むと考えられている。

 科学実験においても神舟19号は注目され、生命科学、流体力学、燃焼科学、材料科学の分野での研究が行われる。特に、初めてショウジョウバエを実験対象とし、微重力と亜磁場環境が動物の成長と行動に及ぼす影響を調べる研究が行われる。中国科学院によると、ショウジョウバエは遺伝実験に適したモデル生物であり、この実験は将来の人間の宇宙適応の研究の基礎を築くことが期待されている。

 さらに、「月面レンガ」の曝露実験も計画されており、月面環境に適した建設材料の研究が進められている。王氏は、このレンガが月面基地の建設に実用的なデータを提供することを期待しており、もし実験が成功すれば、月面基地建設の技術的な基盤が確立される可能性があると述べている。

【詳細】

 神舟19号ミッションは、中国の宇宙ステーションに最も若いクルーを迎え入れた点や、複数の新しい実験計画を実施する点から、これまでの中国の宇宙開発において特筆すべき進展とされている。以下では、このミッションの各側面についてさらに詳述する。

 1. 若手クルーの起用

 神舟19号のクルーは、指揮官のCaiXuzheを中心に、1990年代生まれのSong LingdongとWang Haozeから構成されており、これまでで最も若いクルーとなった。Caiは、わずか22カ月前に神舟14号に搭乗しており、これは中国の宇宙飛行士としての最短間隔での宇宙飛行記録である。また、王は中国初の女性宇宙飛行士エンジニアとしての役割を担っており、女性の専門技術者の参加は、今後の長期宇宙探査においても重要な意味を持つとされている。

 2. 宇宙ステーション内の主要任務

 神舟19号の主な目的には、神舟18号のクルーとの交代、6カ月間の滞在中に科学実験や技術試験の実施、さらには船外活動(EVA)や宇宙デブリ対策装置の設置・回収といった重要な活動が含まれる。また、天舟8号の貨物船や神舟20号の有人宇宙船を受け入れるための準備も行い、これにより宇宙ステーションの運用効率と長期的な機能性の向上が図られる予定である。

 3. 科学実験と技術検証

 ミッションにおける重要な取り組みの一つが、生命科学、流体力学、燃焼、材料科学に関する実験である。今回初めて実験対象となるのがショウジョウバエで、これは亜磁場環境と微重力が動物の成長と行動にどのような影響を及ぼすかを調べるためである。ショウジョウバエは遺伝実験に適したモデル生物であり、短いライフサイクルと少数の染色体数、さらにはヒトと共通の遺伝子を多く持つことから、宇宙環境での生物学的研究において重要な役割を果たす。

 さらに、未来の実験として、ラットを使った研究も計画されており、これによりさらに大型の動物での影響を調べ、長期間の有人探査ミッションにおける人間の適応力向上に役立てられることが期待されている。

 4. 月面基地建設に向けた「月面レンガ」実験

 神舟19号ミッションの重要な要素には、月面環境で使用することを想定した「月面レンガ」の曝露実験が含まれている。このレンガは、月面土壌を模した材料から作られ、宇宙放射線に対する耐久性や機械的性能、熱的性能などが評価される。これは、将来の月面基地建設において現地調達の材料を活用するための研究の一環である。このような現地での製造方法を確立することにより、地球から資材を運搬するコストを抑え、月面での持続可能な居住地構築が可能となると期待されている。

 もしこの実験で得られるデータが良好であれば、月面基地の建設技術が確立される基礎データが得られるため、中国が目指す2030年の有人月探査において非常に重要な知見となるだろう。

 5. クルーの年齢層と今後の有人探査の展望

 今回の神舟19号ミッションで選ばれたクルーは若年層であり、これは今後の宇宙探査や月探査を見据えた世代交代の一環でもある。35歳から45歳が最適とされる宇宙飛行士の年齢層を考慮し、1990年代生まれの宇宙飛行士が若手として訓練を積むことは、複雑な未来のミッションにおいて中核的な役割を果たすことが見込まれている。

【要点】

 1.若手クルーの起用

 ・神舟19号のクルーは最も若い編成であり、指揮官のCaiと1990年代生まれのSong Lingdong、Wang Haozeから成る。
 ・Wang Haozeは中国初の女性宇宙飛行士エンジニアであり、若手と女性技術者の参加は今後の宇宙開発に重要な意義を持つ。

 2.宇宙ステーション内の主要任務

 ・神舟18号クルーとの交代、6カ月間の科学実験や技術試験の実施。
 ・船外活動(EVA)、宇宙デブリ対策装置の設置・回収、天舟8号や神舟20号の受け入れ準備を含む。

 3.科学実験と技術検証

 ・生命科学、流体力学、燃焼、材料科学の実験を実施。
 ・初めてショウジョウバエを対象とした亜磁場と微重力下での動物成長・行動研究を行い、宇宙環境での生物適応に関する知見を得る。

 3.月面基地建設に向けた「月面レンガ」実験

 ・月面土壌模擬材で作成したレンガを宇宙で曝露し、放射線耐性や機械的・熱的性能を評価。
 ・将来の月面基地建設に向けた現地調達材料の利用可能性を検証する。

 4.クルーの年齢層と今後の有人探査の展望

 ・若年層のクルーが未来の有人月探査や長期探査に備えた世代交代の一環として活躍。
 ・最適な35~45歳層での運用を目指し、若手が次世代の中核的役割を担う準備を進める。
 
【引用・参照・底本】

Three taikonauts of Shenzhou-19 crew enter China Space Station GT 2024.10.30
https://www.globaltimes.cn/page/202410/1322121.shtml

EUは中国製EVに対して最大45.3%の関税2024年11月01日 13:32

Microsoft Designerで作成
【概要】

 EUが中国製電気自動車(EV)に対する関税を45.3%まで引き上げる決定について、ドイツの経済開発および貿易促進の連邦協会の会長であるミヒャエル・シューマン氏(Michael Schumann)の批判を取り上げている。シューマン氏は、ドイツ経済が現在直面している困難な状況において、追加の貿易摩擦を引き起こすことは不適切だと指摘し、中国企業との協力がもたらす可能性を無視するべきではないと主張している。

 EUの関税引き上げの意図とその影響:EUは中国製EVに対し、安価な製品がEU市場で競争優位を持つことへの懸念から高関税を課しているが、シューマン氏は、この措置が電動化の目標達成を妨げると述べている。ドイツの消費者の間では、調査により60%が中国製の車を検討していることが分かっており、関税による価格上昇はEV普及への逆風となるとする。また、関税の増加が中国のEV製造業者にとどまらず、ドイツの企業も含む他の自動車メーカーに影響し、消費者にその負担が転嫁される可能性が高いと述べている。

 ドイツ政府と他の欧州諸国の立場:ドイツのオラフ・ショルツ首相やハンガリー、スペインなどの諸国も関税引き上げに反対している。特に、ハンガリーをはじめとする東欧諸国は、中国のEV関連産業からの投資が国内産業に貢献していることから、EUの関税措置に否定的である。シューマン氏は、米国が選挙戦を背景にした保護主義的措置を取っているが、EUが米国に影響されるべきではないと述べ、EUが環境目標を掲げながらも、その達成を支える外国の供給者を妨げることが信頼性を損なうと警告している。

 EU自動車業界への潜在的リスク:EUによる中国EVへの関税は中国市場における欧州の自動車メーカーにも反発を招く可能性があり、シューマン氏は特に中国からの対抗措置が自動車産業に「毒」となると述べている。例えば、フランスやスペインのブランデーに対する関税が引き上げられたが、これ以上の経済的報復が起きる可能性があるため、EUは対話と外交を重視するべきと提言している。

 イデオロギーを超えた協力の必要性:シューマン氏は、中国企業との提携がドイツにとって有益であると主張し、特にファーウェイ、BYD、アリババなどの企業との協力を深めるべきだと述べている。彼は、イデオロギー的な視点からの脱却と、双方の対話の強化が必要であるとし、こうした協力がドイツを「革新の国」として強化する手段となると考えている。

 ドイツおよび欧州における共鳴:シューマン氏と同様の意見を持つ人々はいるものの、メディアの影響により多くの人々が公には発言を控えている。しかし、彼はドイツを含む欧州各国で、長期的には別のアプローチを求める声が増えると予測している。

【詳細】

 EUが中国製電気自動車(EV)に対して高関税を課す決定を下したことについて、ドイツの経済開発と貿易促進に関する連邦協会の会長であるミヒャエル・シューマン氏の見解を詳しく紹介している。以下に、その要点を詳しく説明する。

 1. EUの関税政策とその影響

 EUは、中国からのEV輸入に対して最大45.3%の関税を設定することを決定した。この背景には、中国製品の価格競争力がEU内の自動車産業に与える影響がある。シューマン氏は、この政策が誤ったタイミングでの誤ったメッセージを送るものであり、ドイツ経済にとって重大な悪影響を及ぼす可能性があると警告している。

 ・経済的背景:ドイツは現在、経済の停滞や不安定な状況に直面しており、新たな貿易摩擦を引き起こすことは、さらなる経済的ダメージをもたらすと懸念されている。
 ・消費者の反応:シューマン氏によると、ドイツの消費者の約60%が中国製車両の購入を検討しており、特にEVの購入希望者は80%に達する。このため、関税引き上げによる価格上昇は、EVの普及を妨げる要因になる。

 2. 環境目標との整合性

 EUは気候保護目標を掲げており、2030年までにドイツの道路に1500万台の完全電動車を導入する計画である。しかし、実際には2023年7月時点で登録されている完全電動車はわずか152万台であり、目標達成には大きなギャップがある。シューマン氏は、中国のEVメーカーが提供する多様で手頃な価格の製品が、この目標を達成するために不可欠であると述べている。

 ・競争と革新:中国のEV市場の競争は、ドイツ国内のメーカーに対して革新を促進し、コストを削減する効果があると主張し、これにより消費者が利益を得られると指摘している。

 3. 各国の反対意見

 ドイツのショルツ首相は、EUの関税政策を批判しており、ハンガリーやスペインなど他のEU加盟国も同様の立場を取っている。特に、東欧諸国は中国からの投資が経済に大きく寄与しているため、EUの保護主義的措置に反対している。シューマン氏は、これらの国々の反対が示すのは、EU内の意見の分裂であり、将来的な経済協力の観点からも重要であると強調している。

 4. 自動車産業への影響

 シューマン氏は、EUの高関税が中国のEV製造業者だけでなく、ドイツや他のEU国の自動車メーカーにも悪影響を及ぼすと警告している。これにより、消費者への価格転嫁が行われ、EVの購入が難しくなる可能性がある。また、EU自動車業界は、すでに高い電気料金や複雑な法的要件に悩まされており、保護主義的な関税が競争をより厳しくするリスクがある。

 5. 対応策と外交の重要性

 シューマン氏は、EUと中国の間の経済的対立が他の分野に波及する恐れがあると指摘し、適切な外交と対話の重要性を訴えている。彼は、EUが中国の反発に対して冷静に対処し、対話を通じて解決策を見つける必要があると強調している。

 ・長期的な視点:シューマン氏は、EUが短期的な保護主義に走るのではなく、長期的に持続可能な政策を採用することが求められていると考えている。これにより、EUは気候保護の目標を実現するために必要な外国からの投資を引き続き受け入れることができる。

 6. イデオロギーを超えた協力の必要性

 シューマン氏は、ドイツがイデオロギーを捨てて中国企業との協力を深めることで、より良い経済状況を築くことができると述べている。特に、HuaweiやBYDなどの中国企業とのコラボレーションが、技術革新や産業の発展につながると期待している。この視点は、ドイツだけでなく、ヨーロッパ全体に当てはまるものである。

 7. 社会の意識と変化の兆し

 最後に、シューマン氏は、ドイツや他の欧州諸国において、中国との経済的協力を支持する声が徐々に増えていると指摘している。ただし、これはまだ多数派ではなく、現在の激しい政治的雰囲気の中では声を上げにくい状況にある。彼は、将来的にこの傾向が選挙結果にも反映される可能性があると考えている。

 全体を通して、シューマン氏の意見は、EUが中国との関係をより建設的に捉え、保護主義的措置を見直す必要があることを強調している。彼は、国際的な協力が気候目標の達成に向けて重要であると信じており、EUがそのための適切な政策を策定することが求められている。

【要点】

 1.EUの関税政策

 ・EUは中国製EVに対して最大45.3%の関税を設定することを決定。
 ・この決定は、経済的な悪影響を及ぼす可能性があると警告。

 2.経済状況と消費者の意見

 ・ドイツは経済的な停滞に直面しており、新たな貿易摩擦を避けるべき。
 ・消費者の約60%が中国製車両の購入を検討、80%がEVを検討。

 3.気候目標とEV普及

 ・ドイツは2030年までに1500万台の完全電動車を導入する目標を持つが、現状は152万台のみ。
 ・中国のEV市場からの競争が、気候目標の達成に必要。

 4.EU内の意見の分裂

 ・ドイツのショルツ首相やハンガリー、スペインなどが関税政策に反対。
 ・東欧諸国は中国からの投資に依存しており、保護主義に反対。

 5.自動車産業への影響

 ・高関税はドイツの自動車メーカーにも影響を及ぼし、価格上昇を招く恐れ。
 ・EVの販売が減少し、高い電気料金や法的要件が業界を圧迫。

 6.外交と経済関係

 ・EUと中国の間の経済的対立が他の分野にも波及する恐れがある。
 ・適切な外交と対話が重要。

 7.イデオロギーを超えた協力:

 ・ドイツは中国企業との協力を深めるべきであり、技術革新につながると主張。
 ・HuaweiやBYDとの協力が必要とされる。

 8.社会の変化と意識:

 ・中国との経済的協力を支持する声が増加中だが、まだ少数派。
 ・将来的にこの傾向が選挙結果に影響を与える可能性がある。
 
【引用・参照・底本】

EU risks losing credibility by obstructing Chinese EVs that could help achieve climate goals GT 2024.10.30
https://www.globaltimes.cn/page/202410/1322133.shtml

中国:世界貿易機関(WTO)に訴え2024年11月01日 13:46

Microsoft Designerで作成+
【概要】

 2024年10月31日に発表されたもので、欧州委員会が中国製電気自動車(EV)に対して反補助金調査の最終判決を発表したことを受けたものである。この判決により、EUは中国からのバッテリーEVの輸入に対して5年間の対抗的な関税を課すことを決定した。中国商務省の報道官は、この判決に異議を唱え、世界貿易機関(WTO)への訴えを行ったことを述べ、EU側に建設的な協力を呼びかけている。

 この声明では、EUの今回の判決が保護主義を示すものであり、「自由貿易への後退」を意味するとしている。特に、EUが自国の自動車産業の競争力を守るために、競争を排除する法律を導入したとして批判している。ドイツ自動車工業会の会長であるヒルデガルト・ミュラー氏もこの判決に対し懸念を示し、自由貿易の観点から後退を指摘している。

 中国製EVの競争力は、高効率の製造、強力なサプライチェーン、継続的な技術革新から来ており、これは保護主義によるものではなく、オープンな協力を通じて築かれたものだと強調している。さらに、EUが市場競争に対抗して保護主義を続けると、産業のアップグレードや技術革新の機会を逃すリスクがあると警告している。

 また、報道では、EUが関税を課す前にアメリカの外交官がEU加盟国を訪れ、中国に対して強硬な姿勢を取るよう働きかけたとされ、EUの決定が政治的動機に基づいている可能性があるとも指摘している。最終的には、EUが保護主義ではなく自由貿易を基本原則として認識し、対立を激化させるのではなく協力の道を選ぶことが最も賢明な選択であると述べている。

 中国は、EUが対話を通じて貿易の違いを解決できる能力と意欲を持っていると信じており、相互の利益に基づく関係の構築を望んでいる。声明は、EUが中国との関係において協力的な姿勢を示し、国際的な貿易システムを支持することを期待している。

【詳細】

 2024年10月31日に発表されたもので、欧州連合(EU)が中国製電気自動車(EV)に対する反補助金調査の最終結果を発表したことに関連している。この最終判決に基づき、EUは中国からのバッテリー電気自動車の輸入に対して、5年間の対抗的な関税を課すことを決定した。この措置は、EUが保護主義的な傾向を示しているとの批判を受けており、自由貿易の理念に反するとされている。

 1. EUの決定とその影響

 ・反補助金調査: EUの反補助金調査は、中国のEVメーカーが受けているとされる補助金についてのもので、EUはこれを「不公正な競争」と見なした。この決定により、中国からのEV輸入に対する関税が導入され、EU内の自動車産業を守る意図が示されている。
 ・中国の反応: 中国商務省の報道官は、この判決を「受け入れられない」とし、WTOへの訴えを行うとともに、EU側に建設的な対話を求めている。これにより、貿易摩擦の激化を避け、相互に受け入れ可能な解決策を見出すことを期待している。

 2. 保護主義への批判

 ・自由貿易の後退: 記事では、EUの決定が「21世紀の馬車保護法」と比喩され、自由貿易の原則に反するものとして強く批判されています。EUが自国の産業を守るために、競争を排除しようとする姿勢が、結果的に自らの競争力を低下させるリスクを孕んでいると指摘している。
 ・自動車産業の競争力: ドイツ自動車工業会の会長であるヒルデガルト・ミュラー氏も、EUの決定が自由貿易に逆行するものであると警告している。中国製EVの競争力は、高効率の製造能力や堅固なサプライチェーン、技術革新によるものであり、保護主義によってそれを打破しようとするのは短絡的であるとされている。

 3. 歴史的な視点

 ・過去の保護主義の失敗: 過去の保護主義的な措置が成功しなかった事例を引き合いに出している。具体的には、オイル危機の際に日本車が西洋市場に流入したことや、米国の鉄鋼業や造船業の競争力が低下したことを挙げ、保護主義は結局市場の競争を阻害するだけであると警告している。

 4. EUと米国の関係

 ・政治的な背景: 一部の報道では、EUが関税を課す前にアメリカの外交官がEU加盟国を訪れ、中国に対して強硬な姿勢を取るよう働きかけたとのことである。このことは、EUの決定が純粋に経済的な理由だけではなく、政治的な動機もあるのではないかという疑念を生じさせている。

 5. 未来への提言

 ・協力の重要性: 記事は、EUが自由貿易を基本原則として維持し、対話を通じて貿易の違いを解決することが重要であると強調している。これにより、EUは中国との関係をより良いものにし、国際的な投資や協力を引き寄せることができると述べている。

 6. 結論

 ・持続可能な関係の構築: 最後に、中国はEUとの対話を通じた問題解決を希望しており、相互の利益に基づく経済関係の発展を促進する姿勢を示している。EUが保護主義ではなく、協力的なアプローチを選択することが、双方にとって有益であるとしている。中国は、EUが持つ戦略的な自律性を信じ、貿易問題を解決する意欲と能力があると見ている。

 以上の内容から、EUの保護主義的措置が中国との貿易関係に及ぼす影響や、その背後にある政治的な要因、そして今後の協力の可能性についての詳細な説明がなされている。

【要点】

 1.EUの決定

 ・欧州委員会が中国製電気自動車(EV)に対する反補助金調査の最終結果を発表。
 ・中国からのバッテリーEV輸入に5年間の対抗的な関税を課すことを決定。

 2.中国の反応

 ・中国商務省の報道官が判決に異議を唱え、WTOへの訴えを発表。
 ・EUに対し、建設的な対話を求め、貿易摩擦の激化を避けるよう促す。

 3.保護主義への批判

 ・EUの判決が自由貿易の理念に反し、「馬車保護法」と比喩される。
 ・自国産業を守るために競争を排除しようとする姿勢が、自らの競争力を低下させるリスクがあると指摘。

 4.自動車産業の競争力

 ・中国製EVの競争力は、高効率の製造、強固なサプライチェーン、技術革新から来ている。
 ・保護主義による打破は短絡的であるとの警告。

 5.過去の保護主義の失敗

 ・過去の保護主義的措置が成功しなかった事例(例: 日本車の流入、米国の鉄鋼業や造船業の競争力低下)を引き合いに出す。

 6.EUと米国の関係

 ・アメリカの外交官がEU加盟国を訪れ、中国に対して強硬な姿勢を取るよう働きかけたとの報道。
 ・EUの決定が経済的な理由だけでなく、政治的な動機もある疑念を生じさせる。

 7.未来への提言

 ・EUが自由貿易を基本原則として維持し、対話を通じて貿易の違いを解決することが重要。
 ・協力的なアプローチが双方にとって有益であると強調。

 8.結論

 ・中国はEUとの対話を通じた問題解決を希望。
 ・相互の利益に基づく経済関係の発展を促進する姿勢を示す。
 
【引用・参照・底本】

Europe should not continue down the misguided path of protectionism: Global Times editorial GT 2024.10.31
https://www.globaltimes.cn/page/202410/1322168.shtml