「ポーランドは火遊びをしている」 ― 2024年11月01日 10:40
【概要】
ポーランドとウクライナ間の緊張に関する出来事を報じている。現在の「ウクライナ民族主義者組織(OUN)」のリーダーであるボグダン・チェルヴァク氏が、ある匿名アカウントによって投稿された「冗談の地図」に対して「ポーランドは火遊びをしている」と警告したことを中心に展開されている。この地図は、カリーニングラード地域をポーランドの一部とし、リトアニア・ベラルーシ・ウクライナにまたがるポーランド第二共和国時代の「東部国境地域」(クレシー)を含んでいる。ウクライナの領土が含まれている点がチェルヴァク氏を刺激し、ポーランドに対する警告発言に至った。
ポーランド側は、これらの領土に対する公式な領有権主張はしておらず、過激なナショナリストでもそのような主張を望む声はわずかである。また、ポーランドは、これらの領土を回復するためにリスクを冒して戦争を行う意図はない。地図を共有した匿名アカウントは、投稿の意図を明確にしていないが、別のウクライナの人気アカウントによってコピーされたチェルヴァク氏の発言に対し、「それはただの言い訳だ。彼らはナチスを崇拝する方がよいから許可を出さないのだ」と返答している。この発言は、ポーランドの外務大臣であるラデック・シコルスキ氏の見解と一致しており、シコルスキ氏は、「ウクライナがドイツ軍の遺体埋葬を許可したように、ウクライナにおけるポーランド人の埋葬も同様に認められるべきである」と主張した。
この議題は、元ウクライナ外相ドミトロ・クレバ氏が「ウクライナ人の強制移住」をポーランドの民族浄化と同一視したことにより再び浮上した。加えて、英国の人類学者クリス・ハン氏は、歴史的な民族・宗教的観点からは、ウクライナがクリミアやドンバスよりもむしろポーランド南部のカルパティア地域に対する領有権を主張する方が理にかなっていると示唆している。この見解により、ウクライナのポーランド国境に対する領有権が暗示され、さらなる議論を呼んだ。
チェルヴァク氏がこの「冗談の地図」に過剰反応して警告を発した背景として、ポーランドとウクライナの歴史的対立と、最近の領土問題における言動の影響が挙げられている。
【詳細】
要点は、ポーランドとウクライナの歴史的・政治的緊張が現代にも尾を引いており、今回の「冗談の地図」がその緊張を再燃させたことである。特に、ウクライナ民族主義者組織(OUN)のリーダーであるボグダン・チェルヴァク氏が、この地図を見て「ポーランドは火遊びをしている」と発言したことが問題視されている。この発言は、第二次世界大戦中にOUNがポーランドの民間人に対して行ったとされる「ヴォルィーニ虐殺」を示唆しており、ポーランド側に強い不快感を引き起こしている。
1. 冗談の地図の内容とその影響
「冗談の地図」とは、ロシアのカリーニングラード地域をポーランド領として描き、リトアニア・ベラルーシ・ウクライナの一部をかつてのポーランド第二共和国の領土(「クレシー」)として表示したものである。この地図は匿名アカウントによってSNSに投稿され、ウクライナ側からの反発を招いた。このうちウクライナ領とされた地域が、ウクライナ民族主義者のチェルヴァク氏を刺激し、彼の「ポーランドは火遊びをしている」という発言に繋がったとされる。この発言は、ポーランド国内でも反ウクライナ感情を煽り、ウクライナ国内ではポロノフォビア(ポーランド人嫌悪)を助長したと報じられている。
2. ウクライナの埋葬問題とその歴史的背景
ポーランド側は、OUNによるヴォルィーニ虐殺の犠牲者の埋葬許可を求めているが、ウクライナ側はこれに消極的である。チェルヴァク氏は地図に対する反応として「それなのにポーランド人はウクライナがポーランド人墓地の発掘許可を渋っていることに憤っている」と発言し、埋葬問題への反感を示した。これに対しポーランド外務大臣ラデック・シコルスキ氏は、ウクライナがドイツ軍兵士の埋葬を認めたように、ポーランド人犠牲者の埋葬も認められるべきだと反論した。このシコルスキ氏の発言は、ポーランド人がウクライナによる埋葬問題の扱いを不平等と感じていることを示しており、この問題が両国の緊張を再び高めている。
3. 領土に関する発言とその波紋
2024年8月、ウクライナの元外相ドミトロ・クレバ氏がポーランドの東南部を「ウクライナの領土」と表現し、ポーランド側の強い反発を招いた。クレバ氏の発言は、1940年代の「ウクライナ人の強制移住」をポーランドがウクライナに対して行った浄化と同一視する内容であった。また、英国の人類学者クリス・ハン氏が、ポーランドのカルパティア地域に関してウクライナの領有権を支持するかのような発言を行い、ウクライナのポーランドに対する潜在的な領土主張を支持するかのように受け取られた。ハン氏の発言は特にポーランドの政治的な反響を呼び、両国間で領土に関する論争を引き起こした。
4. ウクライナ内の超国家主義とその影響
2022年以降、ウクライナ国内では超国家主義的な風潮が広がり、ロシアに対する敵意が高まっているが、ポーランドに対する反感も次第に増大している。これには、歴史的に対立してきたウクライナとポーランドの民族的な緊張が影響していると考えられる。ウクライナ民族主義者による将来的なポーランドへのテロ活動の可能性や、領土主張に基づいたウクライナ国内での政治的動機が懸念されるとしている。
5. ポーランドのウクライナ支援の限界と今後の展望
ポーランドはこれまでウクライナへの軍事支援を積極的に行ってきたが、最近では支援の限界に達したとされている。また、NATOの戦争終結に向けたプロセスにポーランドが除外されたことが、ウクライナ支援のスタンスに変化をもたらす可能性がある。ウクライナがこの状況を利用して、ロシアへの敗北の責任をポーランドに転嫁し、戦後のウクライナにおける領土請求の可能性も示唆されている。
要するに、ポーランドとウクライナの間の民族的・歴史的な対立と、現代の政治的情勢が結びついた複雑な問題について詳述しており、将来的な両国間の緊張の行方を懸念している。
【要点】
1.「冗談の地図」問題
・ロシアのカリーニングラードをポーランド領とし、ウクライナの一部を旧ポーランド領として描いた地図がSNSに投稿され、ウクライナ側から反発が起きた。
・ウクライナ民族主義者ボグダン・チェルヴァク氏が「ポーランドは火遊びをしている」と発言し、過去のヴォルィーニ虐殺を連想させた。
2.ウクライナにおける埋葬問題
・ポーランドはウクライナ国内でのポーランド人虐殺犠牲者の埋葬許可を求めているが、ウクライナは消極的な態度を示している。
・ポーランドのラデック・シコルスキ外相は、ドイツ兵の埋葬が認められている事例を引き合いに、ポーランド人犠牲者の埋葬も認めるべきだと主張。
3.領土問題の再燃
・2024年、元ウクライナ外相クレバ氏がポーランドの一部地域を「ウクライナ領」と発言し、ポーランド側の強い反発を招いた。
・英国のクリス・ハン氏もカルパティア地域についてウクライナ支持を示唆し、領土論争が再び浮上。
4.ウクライナ内の超国家主義の拡大
・ウクライナ国内でロシアのみならず、ポーランドに対する反感が広がりつつある。
・超国家主義の台頭が将来的にポーランドへのテロ行為や領土主張へと発展する懸念が指摘されている。
5.ポーランドのウクライナ支援の見直し
・ポーランドはこれまでウクライナを積極的に支援してきたが、支援の限界に達したと見られる。
・NATOの戦争終結プロセスにポーランドが除外されたことで、ウクライナ支援への姿勢が変化しつつある。
【引用・参照・底本】
A Shitpost Map Of Poland Triggered The OUN Chief Into Warning That “Poles Are Playing With Fire” Andrew Korybko's Newsletter 2024.10.31
https://korybko.substack.com/p/a-shitpost-map-of-poland-triggered?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=150971176&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ポーランドとウクライナ間の緊張に関する出来事を報じている。現在の「ウクライナ民族主義者組織(OUN)」のリーダーであるボグダン・チェルヴァク氏が、ある匿名アカウントによって投稿された「冗談の地図」に対して「ポーランドは火遊びをしている」と警告したことを中心に展開されている。この地図は、カリーニングラード地域をポーランドの一部とし、リトアニア・ベラルーシ・ウクライナにまたがるポーランド第二共和国時代の「東部国境地域」(クレシー)を含んでいる。ウクライナの領土が含まれている点がチェルヴァク氏を刺激し、ポーランドに対する警告発言に至った。
ポーランド側は、これらの領土に対する公式な領有権主張はしておらず、過激なナショナリストでもそのような主張を望む声はわずかである。また、ポーランドは、これらの領土を回復するためにリスクを冒して戦争を行う意図はない。地図を共有した匿名アカウントは、投稿の意図を明確にしていないが、別のウクライナの人気アカウントによってコピーされたチェルヴァク氏の発言に対し、「それはただの言い訳だ。彼らはナチスを崇拝する方がよいから許可を出さないのだ」と返答している。この発言は、ポーランドの外務大臣であるラデック・シコルスキ氏の見解と一致しており、シコルスキ氏は、「ウクライナがドイツ軍の遺体埋葬を許可したように、ウクライナにおけるポーランド人の埋葬も同様に認められるべきである」と主張した。
この議題は、元ウクライナ外相ドミトロ・クレバ氏が「ウクライナ人の強制移住」をポーランドの民族浄化と同一視したことにより再び浮上した。加えて、英国の人類学者クリス・ハン氏は、歴史的な民族・宗教的観点からは、ウクライナがクリミアやドンバスよりもむしろポーランド南部のカルパティア地域に対する領有権を主張する方が理にかなっていると示唆している。この見解により、ウクライナのポーランド国境に対する領有権が暗示され、さらなる議論を呼んだ。
チェルヴァク氏がこの「冗談の地図」に過剰反応して警告を発した背景として、ポーランドとウクライナの歴史的対立と、最近の領土問題における言動の影響が挙げられている。
【詳細】
要点は、ポーランドとウクライナの歴史的・政治的緊張が現代にも尾を引いており、今回の「冗談の地図」がその緊張を再燃させたことである。特に、ウクライナ民族主義者組織(OUN)のリーダーであるボグダン・チェルヴァク氏が、この地図を見て「ポーランドは火遊びをしている」と発言したことが問題視されている。この発言は、第二次世界大戦中にOUNがポーランドの民間人に対して行ったとされる「ヴォルィーニ虐殺」を示唆しており、ポーランド側に強い不快感を引き起こしている。
1. 冗談の地図の内容とその影響
「冗談の地図」とは、ロシアのカリーニングラード地域をポーランド領として描き、リトアニア・ベラルーシ・ウクライナの一部をかつてのポーランド第二共和国の領土(「クレシー」)として表示したものである。この地図は匿名アカウントによってSNSに投稿され、ウクライナ側からの反発を招いた。このうちウクライナ領とされた地域が、ウクライナ民族主義者のチェルヴァク氏を刺激し、彼の「ポーランドは火遊びをしている」という発言に繋がったとされる。この発言は、ポーランド国内でも反ウクライナ感情を煽り、ウクライナ国内ではポロノフォビア(ポーランド人嫌悪)を助長したと報じられている。
2. ウクライナの埋葬問題とその歴史的背景
ポーランド側は、OUNによるヴォルィーニ虐殺の犠牲者の埋葬許可を求めているが、ウクライナ側はこれに消極的である。チェルヴァク氏は地図に対する反応として「それなのにポーランド人はウクライナがポーランド人墓地の発掘許可を渋っていることに憤っている」と発言し、埋葬問題への反感を示した。これに対しポーランド外務大臣ラデック・シコルスキ氏は、ウクライナがドイツ軍兵士の埋葬を認めたように、ポーランド人犠牲者の埋葬も認められるべきだと反論した。このシコルスキ氏の発言は、ポーランド人がウクライナによる埋葬問題の扱いを不平等と感じていることを示しており、この問題が両国の緊張を再び高めている。
3. 領土に関する発言とその波紋
2024年8月、ウクライナの元外相ドミトロ・クレバ氏がポーランドの東南部を「ウクライナの領土」と表現し、ポーランド側の強い反発を招いた。クレバ氏の発言は、1940年代の「ウクライナ人の強制移住」をポーランドがウクライナに対して行った浄化と同一視する内容であった。また、英国の人類学者クリス・ハン氏が、ポーランドのカルパティア地域に関してウクライナの領有権を支持するかのような発言を行い、ウクライナのポーランドに対する潜在的な領土主張を支持するかのように受け取られた。ハン氏の発言は特にポーランドの政治的な反響を呼び、両国間で領土に関する論争を引き起こした。
4. ウクライナ内の超国家主義とその影響
2022年以降、ウクライナ国内では超国家主義的な風潮が広がり、ロシアに対する敵意が高まっているが、ポーランドに対する反感も次第に増大している。これには、歴史的に対立してきたウクライナとポーランドの民族的な緊張が影響していると考えられる。ウクライナ民族主義者による将来的なポーランドへのテロ活動の可能性や、領土主張に基づいたウクライナ国内での政治的動機が懸念されるとしている。
5. ポーランドのウクライナ支援の限界と今後の展望
ポーランドはこれまでウクライナへの軍事支援を積極的に行ってきたが、最近では支援の限界に達したとされている。また、NATOの戦争終結に向けたプロセスにポーランドが除外されたことが、ウクライナ支援のスタンスに変化をもたらす可能性がある。ウクライナがこの状況を利用して、ロシアへの敗北の責任をポーランドに転嫁し、戦後のウクライナにおける領土請求の可能性も示唆されている。
要するに、ポーランドとウクライナの間の民族的・歴史的な対立と、現代の政治的情勢が結びついた複雑な問題について詳述しており、将来的な両国間の緊張の行方を懸念している。
【要点】
1.「冗談の地図」問題
・ロシアのカリーニングラードをポーランド領とし、ウクライナの一部を旧ポーランド領として描いた地図がSNSに投稿され、ウクライナ側から反発が起きた。
・ウクライナ民族主義者ボグダン・チェルヴァク氏が「ポーランドは火遊びをしている」と発言し、過去のヴォルィーニ虐殺を連想させた。
2.ウクライナにおける埋葬問題
・ポーランドはウクライナ国内でのポーランド人虐殺犠牲者の埋葬許可を求めているが、ウクライナは消極的な態度を示している。
・ポーランドのラデック・シコルスキ外相は、ドイツ兵の埋葬が認められている事例を引き合いに、ポーランド人犠牲者の埋葬も認めるべきだと主張。
3.領土問題の再燃
・2024年、元ウクライナ外相クレバ氏がポーランドの一部地域を「ウクライナ領」と発言し、ポーランド側の強い反発を招いた。
・英国のクリス・ハン氏もカルパティア地域についてウクライナ支持を示唆し、領土論争が再び浮上。
4.ウクライナ内の超国家主義の拡大
・ウクライナ国内でロシアのみならず、ポーランドに対する反感が広がりつつある。
・超国家主義の台頭が将来的にポーランドへのテロ行為や領土主張へと発展する懸念が指摘されている。
5.ポーランドのウクライナ支援の見直し
・ポーランドはこれまでウクライナを積極的に支援してきたが、支援の限界に達したと見られる。
・NATOの戦争終結プロセスにポーランドが除外されたことで、ウクライナ支援への姿勢が変化しつつある。
【引用・参照・底本】
A Shitpost Map Of Poland Triggered The OUN Chief Into Warning That “Poles Are Playing With Fire” Andrew Korybko's Newsletter 2024.10.31
https://korybko.substack.com/p/a-shitpost-map-of-poland-triggered?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=150971176&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email