【概要】

　中国政府は、安定的な対外貿易の成長を促進するための取り組みを強化するとともに、外的衝撃に対する耐性を強調した。これは、米国が中国製品に最大60％の関税を課す可能性を示唆する中で行われたものである。

　2024年11月22日に開催された記者会見では、商務部(MOFCOM)、外交部、中国人民銀行など5つの政府部門が参加し、経済の安定化を図る政策パッケージの一環として、対外貿易の成長を促進する措置を発表した。この政策には、保険、金融、越境貿易決済、輸出入の拡大、貿易構造の最適化、ビザ発給の促進、輸送支援など9つの具体的な取り組みが含まれている。

政策支援の概要

　中国商務部のWang Shouwen副部長は、国際貿易環境の変化に対応し、貿易企業が直面する金融や海上輸送の課題を解決するための措置を強調した。これらの政策は、2024年11月8日の国務院常務会議で審議され、採択されたものである。

　9つの具体的な措置には、金融機関が中小企業に対して市場原則と法に基づく金融支援を強化することが含まれている。また、越境電子商取引の促進、農産品輸出の拡大、主要設備やエネルギー資源の輸入支援も推進される。

　専門家の分析によれば、これらの政策は中国の貿易企業の信頼をさらに高め、経済の発展に安定的で強力な原動力を注入するものである。この措置は、年内の経済目標の達成を支えるものとされている。

　外的衝撃への対応力

　記者会見では、Wang Shouwen副部長が、中国経済の持つ強靭性と活力が外的衝撃への対応能力を高めていると指摘した。中国は「国内市場を基盤とし、国内外市場が相互に補完し合う」という「双循環」発展モデルを構築しており、外的衝撃に対処する十分な能力を備えていると述べた。

　また、関税の影響については、輸入国の消費者がそのコストを負担する結果となり、物価上昇やインフレを招くと強調した。さらに、関税政策は貿易赤字の問題を解決するどころか、逆に輸入品の価格を押し上げるとしている。

　Wang副部長は、中国と米国が安定的で健全な経済・貿易関係を維持すれば、両国民のみならず、全世界の人々に利益をもたらすと述べた。中国は、相互尊重、平和共存、ウィンウィン協力の原則に基づき、米国との対話を通じて協力の拡大や相違の管理を進め、二国間関係の安定を図る用意があると強調した。

　中国の競争優位性

　中国企業は、完全なサプライチェーンや高い生産効率を背景に、注文、輸送、倉庫管理などの輸出関連分野で他国が代替するのが難しい競争力を持つと指摘されている。さらに、中国経済の持つ市場規模は、外的リスクを吸収する力を提供している。

　また、中国の輸出品は多くの米国産業の競争力を支える一部として供給チェーンに組み込まれており、両国の相互依存性を深めている。このため、米国が中国に対する経済・貿易政策で合理性を保つことが求められると述べられている。

【詳細】

　中国政府は、対外貿易の安定的な成長を支えるために包括的な政策を発表し、米国による関税引き上げの可能性に対して強い耐性を持つことを明確に示した。この政策は、11月22日に開催された記者会見で、商務部(MOFCOM)、外交部、中国人民銀行(PBOC)、工業情報化部(MIIT)、および税関総署(GAC)の代表によって説明されたものである。

　対外貿易安定化に向けた9つの具体的政策

　国務院常務会議で承認された9つの政策措置は、貿易企業の競争力を強化し、国際市場の不確実性に対応することを目的としている。以下が具体的な政策の概要である：

　1.金融支援の強化

　市場原則と法に基づき、金融機関が中小企業向けに融資を拡大。特に輸出入に関わる中小企業への資金調達を促進することで、資金不足の課題を解決する。

　2.越境貿易決済の最適化

　越境電子商取引(EC)の発展を促進し、決済手段を多様化する。これにより、国際的な資金移動を効率化し、企業の国際取引コストを削減する。

　3.農産物輸出の拡大

　食品や農産物の輸出を支援し、新しい市場を開拓。特に農村部の経済発展を支える狙いがある。

　4.主要設備・エネルギー資源の輸入支援

　経済の持続可能な発展を支えるため、製造業の基盤となる重要な機械設備やエネルギー資源の輸入を後押しする。

　5.輸送インフラの支援

　国際物流ネットワークを強化し、輸送コストを削減。特に海上輸送や航空貨物輸送におけるボトルネックを解消する。

　6.ビザ発給の促進

　貿易関連の渡航を容易にするため、ビザ申請手続きの効率化を図る。

　7.輸出入範囲の拡大

　新興市場での貿易拡大を目指し、輸出入品目の多様化を促進。

　8.貿易構造の最適化

　産業チェーン全体の競争力を向上させ、ハイテク製品やサービス貿易を重点的に発展させる。

　9.輸送と倉庫管理の改善

　貿易企業が効率的に輸送および倉庫管理を行えるよう、インフラ支援を提供。

　これらの政策は、特に中小企業が抱える資金調達や輸送コストの課題を解決するだけでなく、国際貿易の新たな競争力を育むことを目的としている。

　米国の関税引き上げに対する対応力

　Wang Shouwen副部長は、米国が中国製品に対して60％の関税を課す可能性について初めて公に言及し、次のように説明した。

　1.関税の影響は消費者に転嫁される

　関税は最終的に輸入国の消費者や利用者によって支払われるため、製品の価格上昇やインフレを招く。米国の関税政策は、自国の貿易赤字を解消するどころか、国内消費者に経済的負担を与える。

　2.「双循環」発展モデルの強み

　中国は、国内市場を主要な成長エンジンとしながら、国際市場との連携を強化する「双循環」発展モデルを採用している。これにより、外的リスクに対する耐性を高め、安定した経済成長を維持できる。

　3.過去の関税引き上げの教訓

　過去の事例から、他国が中国製品に関税を課しても、自国の競争力や貿易赤字の問題を解決できなかったことが示されている。中国製中間財は、多くの米国産業にとって不可欠な要素であり、米国産業の競争力の一部となっている。

　対米関係の重要性

　Wang Shouwen副部長は、米中両国が世界の二大経済大国であり、相互補完性が高いことを指摘した。米中経済関係の安定的かつ健全な発展は、両国民だけでなく、国際社会全体に利益をもたらすと述べている。具体的には、次のような方針が示された：

　・相互尊重、平和共存、ウィンウィン協力の原則に基づく対話を通じて、協力分野を拡大し、相違を管理する。
　・中国の主権、安全、発展利益を断固として守る。
　・国際的な期待に応え、安定的な経済貿易関係を維持する。

　経済の強靭性と競争力

　中国の輸出産業は、完全なサプライチェーン、高効率な生産体制、競争力の高い物流システムを持つ点で他国に優位性がある。また、近年ではハイテク産業や越境ECの成長が顕著であり、これが新たな国際競争力を創出している。

　特に、中国国内市場の規模は、外的リスクに対するクッションとして機能しており、輸出依存度の低下も進んでいる。これにより、世界経済の不確実性が高まる中でも安定した成長を維持できる。

　以上の政策と戦略により、中国は外的衝撃への耐性をさらに高め、国際市場における競争力を維持しつつ、内需を基盤とした経済成長を続ける方針である。

【要点】　
　
　対外貿易安定化に向けた政策の要点

　1.9つの具体的政策措置

　・金融支援：中小企業への融資を市場原則と法に基づき強化。
　・越境貿易決済の最適化：越境電子商取引(EC)の発展を促進し、決済手段を多様化。
　・農産物輸出拡大：新市場開拓を目指し農産物の輸出を支援。
　・主要設備・エネルギー資源輸入支援：重要機械設備やエネルギー資源の輸入を促進。
　・輸送インフラ支援：国際物流の効率化とコスト削減を目指す。
　・ビザ発給促進：貿易関連渡航の手続き簡素化。
　・輸出入範囲拡大：新興市場での貿易拡大、輸出入品目の多様化。
　・貿易構造の最適化：ハイテク製品やサービス貿易の発展を推進。
　・輸送と倉庫管理の改善：貿易企業の効率的な物流管理を支援。

　2.政策の背景と目的

　・国際市場の不確実性に対応し、貿易企業の競争力を強化。
　・内需拡大と国際市場との連携を強化する「双循環」発展モデルを推進。

　米国の関税引き上げに対する対応力

　1.消費者への影響

　・関税は輸入国の消費者が負担し、製品価格やインフレを押し上げる。
　・貿易赤字解消には寄与せず、米国の産業競争力にも影響を与える。

　2.中国経済の強靭性

　・完全なサプライチェーンと高効率な生産体制を背景に、外的衝撃に耐性。
　・ハイテク産業や越境ECの成長が新たな競争力を創出。

　3.「双循環」発展モデル

　・国内市場を成長の柱としつつ、国際市場との相互補完関係を強化。
　・外需依存度の低下でリスク分散を実現。

　対米貿易関係の重要性と中国の立場

　1.米中経済の相互補完性

　・両国間の安定した経済・貿易関係が国際社会全体に利益をもたらす。
　・中国製中間財が米国の産業競争力の一部を形成。

　2.対話と協力の姿勢

　・相互尊重、平和共存、ウィンウィン協力を原則に、協力分野を拡大。
　・主権、安全、発展利益を断固守る立場を明確に。

　3.国際的期待の反映

　・世界が期待する安定した米中経済関係を維持するための対話と調整を重視。

　経済全体への影響

　1.国内経済の活性化

　・10月以降、消費、投資、輸出が改善傾向。
　・支援政策が企業と消費者の信頼感を強化。

　2.外的リスクへの対応力

　・輸送、倉庫、サプライチェーンにおける競争力で国際市場の不確実性に対応。
　・国内市場の大規模な需要で外需減少の影響を緩和。

　これらの政策により、中国は内外経済の安定と成長を同時に実現することを目指している。

【引用・参照・底本】

China vows to promote steady growth of foreign trade GT 2024.11.22
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1323620.shtml

【概要】

　中国はウクライナ問題に関して一貫して明確な立場を維持しており、危機の政治的解決を主張し、状況の悪化を避けるべきであると述べている。中国外交部の報道官である林剣は、22日(金曜日)の定例記者会見で、この立場を改めて強調した。これは、ロシアがウクライナに対して極超音速の中距離弾道ミサイルを発射したとする報道に対するコメントを求められた際の発言である。

　林剣は、現状においてすべての関係者が冷静さと自制を保ち、対話と協議を通じて緊張を緩和するための努力を行い、早期の停戦および政治的解決に向けた条件を整えるべきであると強調した。

　ロシアのプーチン大統領はテレビ演説で、新型の中距離極超音速弾道ミサイル「オレシュニク(ハシバミ)」を用いてウクライナの軍事施設を攻撃したと述べ、さらなる攻撃が行われる可能性について警告した。また、民間人にはこの種の武器による攻撃の前に警告が行われると明言したことが、ロイター通信によって報じられている。

【詳細】

　中国外交部の林剣報道官は、11月22日(金)の定例記者会見で、ウクライナ情勢に関連して中国の立場を改めて明確にした。中国は一貫して、危機の解決において政治的手段を重視し、状況のさらなる悪化を防ぐべきだと主張している。今回の発言は、ロシアがウクライナに対して極超音速の中距離弾道ミサイルを使用したとの報道を受け、記者からのコメント要請に応じたものである。

　林剣は、すべての当事者が冷静さと自制を保つ必要があると強調した上で、対話と協議を通じた緊張緩和の努力が重要であると述べた。さらに、早期の停戦と政治的解決に向けた条件を整えることが現在の最優先課題であると訴えた。この発言は、紛争が激化するリスクを回避するために、中国が各国に責任ある行動を求める姿勢を示したものといえる。

　一方、ロシアのプーチン大統領は同日、テレビ演説でウクライナへの攻撃に関する詳細を述べた。演説によると、ロシアは新型の中距離極超音速弾道ミサイル「オレシュニク(ハシバミ)」を使用し、ウクライナの軍事施設を標的にした攻撃を実施した。このミサイルは従来の兵器よりも高速かつ高精度であり、攻撃能力を大幅に強化したものであるとされる。プーチン大統領は、今回の攻撃がウクライナ軍の戦闘能力を削ぐ目的で行われたと説明し、必要に応じて同様の攻撃を続ける用意があると警告した。

　さらに、プーチン大統領は民間人の安全を重視する姿勢を示し、極超音速ミサイルによる攻撃が行われる際には事前に警告を発する方針を明言した。この点については、ロシアの軍事行動が国際的な批判を受ける中、一定の配慮を示すものと見られる。

　これらの発表を受け、中国は再度、紛争解決には政治的手段が不可欠であるとの立場を堅持し、対立のさらなる激化を防ぐために各国が対話を進めるべきであると訴えた。特に、停戦実現と平和的解決に向けた建設的なアプローチを重視する中国の姿勢は、国際社会に対する調停役としての影響力を意識したものと考えられる。

【要点】　
　
　1.中国の立場

　・中国はウクライナ危機の政治的解決を一貫して主張している。
　・紛争のエスカレーションを避け、冷静さと自制を保つようすべての関係者に求めている。
　・対話と協議を通じて緊張を緩和し、早期停戦と政治的解決の条件を整えるべきだと強調した。

　2.林剣報道官の発言

　・記者からの「ロシアによる極超音速弾道ミサイル発射」に関する質問に答える形で声明を発表した。
　・現状における優先課題として、対話による紛争の解決と平和構築を挙げた。

　3.ロシアの軍事行動

　・プーチン大統領は「オレシュニク(ハシバミ)」と名付けられた新型の極超音速中距離弾道ミサイルを使用したと発表した。
　・このミサイルはウクライナの軍事施設を攻撃するために使用された。
　・極超音速ミサイルは高速・高精度で、ロシアの攻撃能力を強化するものとされている。
　・必要に応じてさらなる攻撃を行う用意があると警告した。

　4.民間人への配慮

　・プーチン大統領は、同様のミサイル攻撃が行われる際には民間人に事前警告を行うと表明した。
　・民間人保護を示すことで、国際的な批判を緩和しようとする意図が見られる。

　5.中国のメッセージの意図

　・中国は対立激化を防ぎ、政治的解決に向けた調停役としての役割を果たす姿勢を示している。
　・各国が責任を持って対話を進める重要性を訴え、停戦と平和的解決を促している。

【引用・参照・底本】

China calls for restraint, de-escalation of tensions amid risks of Ukraine crisis escalation GT 2024.11.22
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1323595.shtml

【概要】

　米中関係における最近の動きについて、中国の国防部報道官であるWu Qian氏は、米国防長官ロイド・オースティンが第11回ASEAN国防相会議プラス(ADMM-Plus)の際に中国国防部長との会談が実現しなかったことについて「遺憾」を表明した件に対し、その責任は完全に米国側にあると指摘した。Wu氏は、米国が台湾への武器売却を行いながら、一方で何事もなかったかのように中国との軍事交流を求めることは矛盾しているとし、米国に対し即座に過ちを正し、中国の核心的利益を真摯に尊重し、ハイレベルな軍事交流を可能にする環境を整えるべきであると述べた。

　この問題の背景には、米国防総省が先月、バイデン政権下で最大規模となる20億ドルの台湾への武器売却を承認した事実がある。この武器には、先進的な地対空ミサイル防衛システムやレーダーシステムが含まれており、これらの装備が「ウクライナで実戦投入された」と米国メディアが報じている。このことは、中国が再三にわたり台湾問題を米中関係の「第一のレッドライン」として強調してきた点を再び顕在化させるものである。

　今年に入り、米中間では防衛大臣同士の直接対話が実現し、国防政策調整会議や軍事海上協議協定の作業部会会議、地域指揮官レベルでの対話が再開されている。これらは、米国が中国との「対話拒否」の責任を中国に押し付けようとする主張が矛盾していることを示している。

　一方で、米国は台湾問題や南シナ海問題で中国の利益を損なう行動を続けつつ、「危機管理」を名目に対話を強調している。これは、対話の名の下で「自分は攻撃できるが、相手は反撃できない」という不均衡なコミュニケーションを押し付けるような姿勢である。このような米国の主張に対し、地域諸国の反応がほとんどないことが示す通り、こうした「パフォーマンス」は国際社会からの支持を得られていない。

　第11回ADMM-Plusでは、中国が提唱した「より緊密な安全保障共同体の構築」が多くの参加国から歓迎された。中国は、マレーシア、タイ、インド、日本などの国々と防衛協議を実施しており、特にインドのラジナート・シン国防大臣は、中国との会談を「非常に生産的」と評している。また、第14回中国-ASEAN国防相非公式会議では、ASEAN諸国が中国との実務的安全保障協力の強化を望んでいることが示された。

　軍事対話は米中関係において「最後の安全弁」として重要であり、その目的は協力を促進し、信頼を築き、誤解を解消することにある。中国は、一貫して相互尊重に基づく対話を主張しており、その姿勢に沿って行動している。一方で、米国が中国との防衛大臣会談を実現できない理由については、米国自身が反省すべきである。

　中国は、地域の統一を維持し、対話を通じた問題解決を推進する立場を堅持しており、対立を煽る行為や外部勢力の介入を反対している。このような立場は、地域諸国の共通の願望を反映していると言える。

【詳細】

　米中間の軍事対話を巡る最近の問題について、中国と米国の主張をより詳細に解説する。

　背景

　第11回ASEAN国防相会議プラス(ADMM-Plus)の際、米国防長官ロイド・オースティンは、中国国防部長との対話が実現しなかったことについて「遺憾」であり、「地域全体にとっての後退」であると述べた。これに対し、中国国防部の報道官であるWu Qian氏は、会談が実現しなかった責任は全て米国側にあると指摘した。

　中国側の主張によれば、米国が台湾への武器売却を行いながら同時に中国との対話を求める行為は、真摯さを欠いた矛盾した態度とみなされる。特に台湾問題は中国の核心的利益に関わるものであり、「レッドライン」(越えてはならない一線)とされている。中国は、米国がその過ちを正し、実質的な信頼醸成措置を取らない限り、高レベルの軍事交流の実現は困難であると明言している。

　台湾問題の影響

　米国防総省は先月、バイデン政権下で最大規模となる20億ドル相当の武器売却を台湾に対して承認した。この契約には、先進的な地対空ミサイル防衛システムやレーダーシステムが含まれている。これらの兵器は「ウクライナで実戦投入された」と報じられており、その軍事的意図が中国にとって明確な脅威と受け取られている。

　中国はこの行為を、米国が一方的に緊張を高めている証拠であるとし、台湾問題が米中関係の最重要課題であるとの立場を再確認している。台湾への武器売却は、米国が中国の主権を侵害し、「一つの中国」政策を無視しているとみなされる。

　米中の防衛交流状況

　2024年に入り、米中間では複数の防衛交流が実現している。具体的には、防衛大臣間の直接会談、中国-米国防衛政策調整会議、軍事海上協議協定(MMCA)に基づく作業部会会合、地域指揮官レベルでの対話が再開された。これらの交流が行われている中で、米国が「中国側が対話に応じない」と主張するのは矛盾している。

　中国側は、真の対話には「相互尊重」が不可欠であると強調している。これに対し、米国側の態度は「一方的な譲歩を求めるもの」であると批判されている。中国は、米国が対話を求めつつ、その一方で台湾問題や南シナ海問題で挑発的行動を継続していることを問題視している。

　ASEANでの中国の立場と反応

　ADMM-Plusにおいて、中国は「より緊密な安全保障共同体の構築」を提唱し、多くの参加国から支持を受けた。中国はマレーシア、タイ、インド、日本などの国々と防衛協議を実施しており、インドのラジナート・シン国防大臣は会談を「非常に生産的」と評価した。

　さらに、第14回中国-ASEAN国防相非公式会議では、ASEAN諸国が中国との安全保障協力を強化する意向を示した。これは、中国が地域における信頼と実務的な協力を構築する能力を示している。

　一方で、米国の対中姿勢については、地域諸国からの支持がほとんど得られていない。オースティン長官の「遺憾」表明に対し、ASEAN諸国の反応が乏しいことは、米国の主張が説得力を欠いていることを示している。

　中国の提唱する地域安全保障の方向性

　中国は以下の方針を強調している。

　1.ASEAN中心性の堅持：地域の協力枠組みを維持・強化し、「新たな枠組みの構築」や「小規模なグループ形成」に反対する。
　2.地域統一の維持：地域諸国の連携を強化し、陣営対立を持ち込むことに反対する。
　3.対話による問題解決の推進：紛争の挑発、武力行使、派閥形成、外部勢力の介入に反対し、地域の平和と安定を重視する。

　結論

　中国は、真の対話には相互尊重と行動の一貫性が必要であると主張している。地域諸国は、中国が平和のために具体的な行動を取っている一方で、米国が対立を煽っているとの認識を共有している。この状況は、米国が自らの政策と行動を見直すべき時期に来ていることを示唆している。

【要点】　
　
　米中間の軍事対話に関する問題と背景

　1. 問題の発端

　・米国防長官ロイド・オースティンは、ASEAN国防相会議プラスで中国国防部長との会談が実現しなかったことを「遺憾」と表明。
　・中国国防部は、この責任は全て米国側にあると主張。

　2. 中国の主張

　・米国は台湾への武器売却を行いながら、同時に対話を求める矛盾した態度を示している。
　・台湾問題は中国の「核心的利益」であり、越えてはならない「レッドライン」とされている。
　・米国の行動は中国の主権侵害であり、真摯な対話の条件を損ねている。

　3. 米国の台湾政策とその影響

　・米国防総省は先月、20億ドル相当の武器を台湾に売却(バイデン政権下で最大規模)。
　・売却には、地対空ミサイル防衛システムやレーダーシステムが含まれる。
　・中国はこれを、米国が緊張を一方的に高めている証拠と見なしている。

　4. これまでの防衛交流実績

　・2024年に米中間で以下の防衛交流が再開：
　　⇨ 防衛大臣間の直接対話
　　⇨ 防衛政策調整会議(DPC)
　　⇨ 軍事海上協議協定(MMCA)に基づく作業部会会合
　　⇨ 地域指揮官レベルでの対話

　・中国側は「米国が対話に応じない」とする主張を矛盾だと批判。

　5. ASEAN会議での中国の提案と評価

　・中国は「より緊密な安全保障共同体の構築」を提唱し、ASEAN諸国から広く支持を受けた。
　・中国はマレーシア、タイ、インド、日本などと個別の防衛協議を実施。
　　⇨ インド防衛大臣は会談を「非常に生産的」と評価。
　　⇨ ASEAN諸国は中国との協力強化に意欲を示す。

　6. 米国への批判と反応

　・米国が対話を求めながら挑発的行動を継続していることを問題視。
　・ASEAN諸国からオースティン長官の発言への支持がほとんど得られない状況。

　7. 中国の提唱する地域安全保障の方向性

　・ASEAN中心性の維持：既存の枠組みを強化し、小規模なグループ形成を排除。
　・地域統一の堅持：陣営対立の導入を拒否。
　・対話重視：紛争挑発や武力行使、外部勢力の介入を防止。

　8. 結論と展望

　・真の対話には相互尊重と行動の一貫性が必要。
　・米国は政策と行動の見直しを求められている。
　・地域諸国は中国の平和維持への姿勢を評価しつつ、米国の対立的行動を警戒している。

【引用・参照・底本】

What should Washington reflect on US defense minister’s ‘regret’?: Global Times editorial GT 2024.11.23
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1323632.shtml

【桃源寸評】米国の素質　"掏り替えの狡猾さ"

　「世界のリーダーであり続ける」というフレーズは、単に核兵器を持つだけでなく、国際社会における「正義」としての立場を維持することを含意している。この文脈では、以下のような意図が考えられる。

　1.義名分を作る」戦略の背景

　・道徳的優位性の確保

　米国が核兵器を使用する場合、それが国際社会から非難されることを避けるために「正当な理由」が必要である。そのため、相手に先に核を使用させる、またはその使用意図を明確にすることで、米国側が「防衛的措置」として核を用いる状況を演出する可能性がある。

　・国際社会の支持を得る

　核兵器使用がやむを得ないと見なされる状況を作り出せば、他国からの支持や同情を得やすくなる。これは、国際的な非難を回避し、逆に相手国を孤立させる効果が期待できる。

　・抑止力の効果を最大化

　相手に核を使用させる可能性を煽りつつ、実際には相手を抑止する戦略を維持することで、自国のリーダーシップを強化する。この「抑止力のゲーム」において、先に核を使うリスクを負わせることで、米国は最終的な主導権を握ろうとする。

　2.「世界のリーダーであり続ける」の具体的な意味

　・正義と秩序の擁護者としての演出

　核使用の際には、米国が「国際法」や「人道的理由」を強調し、他国と連携して「秩序を回復する」ために動く姿勢を示すことが想定される。

　・敵国の孤立化

　相手国を「核兵器を乱用する脅威」と位置づけ、国際社会で非難を集中させる。これにより、米国は「責任あるリーダー」としての地位をさらに強固にする。

　・冷戦時代の教訓の活用

　冷戦期における米ソ間の核抑止理論を踏襲し、戦略的に相手の失敗を待つ形で「勝利」を収めることを目指す。この文脈での「勝利」とは、実際の核戦争ではなく、政治的・外交的に相手を封じ込めることを指す。

　「世界のリーダーであり続ける」とは、核兵器を用いる正当性を確保し、国際社会における道徳的優位性を維持することを意味している。このため、相手に先に核を使用させるよう仕向けることが戦略の一環である可能性が高い。ただし、このような計画は非常に危険であり、予測不能な結果を招くリスクを伴う。したがって、ブキャナン少将の発言は、米国が核戦争を避けたいとする一方で、必要に応じて「勝つ準備」を進めているという二面性を明確に示している。

　3.米国の「いやらしさ」の特徴

　・道徳的優位性の強調

　米国は常に「自由」や「民主主義」の名の下で軍事行動を正当化する傾向がある。このような価値観を盾に、「自分たちは正義の側にいる」と主張しながら、実際には自国の利益を最優先している。

　・相手を悪役化する戦略

　米国は相手国を挑発し、危険な行動を取らせることで、国際社会においてその国を孤立化させる手法を多用する。このような状況を作り出した後、自らの行動を「やむを得ない対応」として説明する。

　・力の裏にある計算

　米国の核政策や軍事戦略は「使用する力」だけではなく、「その使用を正当化するための状況づくり」に大きな重点を置いている。このような計算は、力そのものよりも、その使い方と国際的なイメージを重視していることを示している。

　4.結果としてのリーダーシップ維持

　核抑止力を活用して、実際の戦争を避けつつも、相手を政治的に追い詰めるのが狙いである。相手を完全に壊滅させるのではなく、コントロール可能な範囲で弱体化させることに重点を置いている。

　5.このアプローチの倫理的問題

　・選択的道徳観

　米国は「核兵器の使用を避けるべき」と主張しつつ、実際にはその使用を前提とした計画を立てている。このような矛盾は、他国に対しても信頼を損なう可能性がある。

　・グローバルなリスクの無視

　自国の利益やリーダーシップ維持のために、他国や地球規模のリスクを軽視している点が問題視される。核戦争のリスクは全人類に影響を与えるにもかかわらず、これを政治的道具として利用する態度は冷酷とも言える。

　米国の核政策は、リーダーシップを維持するための高度な戦略に基づいているが、その中には明らかに計算高く、時に倫理的問題を伴う側面がある。「いやらしさ」という感覚は、このような自己中心的な姿勢から生じていると言える。ただし、これらは冷戦以来の「抑止力を優先する」という考え方に基づいており、他の核保有国にも共通する部分もある。

　核戦争が実際に勃発すれば、どの国も「無傷」では済まないというのは重要な現実である。米国であれ、他の核保有国であれ、核戦争は全人類にとって壊滅的な結果をもたらす可能性が高い。

　6.核戦争がもたらす危険性

　・大規模な人的被害

　核兵器が使用されると、即座に膨大な数の死傷者が出るだけでなく、その後の放射線被害、医療インフラの崩壊、社会的混乱などが続く。米国もその影響を避けることはできず、多くの都市やインフラが破壊される可能性が高い。

　・世界規模の環境破壊

　核戦争によって生じる「核冬期」や放射能の拡散は、地球規模での環境崩壊を引き起こし、農業や水供給、自然環境に甚大な影響を及ぼす。これにより、米国国内だけでなく、他の国々とともに食糧不足や社会不安が広がり、結果として世界の秩序が崩壊する可能性がある。

　・経済的崩壊

　米国をはじめとする核保有国が核戦争を展開すれば、世界経済は壊滅的な影響を受ける。貿易の停滞、資本の流出、物資の不足が加速し、経済活動が長期間にわたり停止する恐れがある。米国の経済力もこの影響を免れることは難しく、全ての国が経済的に打撃を受けるだろう。

　7.国際的な非難と孤立

　米国が核兵器を使用した場合、その使用の正当性を訴え続けることは非常に困難になる。国際社会は当然、米国に対する非難の声を強め、政治的孤立を招く可能性が高い。特に、戦争の悲惨な結果が明らかになれば、米国の「正義」の主張はほとんど通用しなくなるだろう。

　・国家のリーダーシップの失墜

　米国が核戦争に突入すれば、その国際的リーダーシップは深刻な打撃を受ける。正当性や道義的立場が大きく揺らぎ、同盟国や友好国の信頼を失うことになる。この結果、米国が長年にわたり築いてきた影響力が崩れ、世界の秩序が変動する可能性がある。

　核戦争が勃発すれば、どの国も「勝者」となることはない。米国も例外ではなく、最も強力な軍事力を持っていても、致命的なダメージを受ける可能性が高い。正当性や「世界のリーダー」としての地位を訴えたとしても、戦争の悲惨な結果により、それは意味をなさなくなるだろう。核戦争の最も危険な点は、すべての国と人々に広範囲で壊滅的な影響を与えることにある。

　核兵器の使用を避けるための最も重要な前提は、相手国を核兵器を使用せざるを得ない状況に追い込まないことである。核抑止理論(nuclear deterrence)においても、この考え方が基盤となっており、核兵器を使用しないためには、相手に核を使わせないようにするための戦略が不可欠である。

　8．核不使用の大前提としての「相手を追い込まない」

　・核兵器使用の脅威を回避する

　核兵器の使用は非常に深刻な結果を伴い、ほとんどの国家はそれを最終手段として利用したくないと考えている。そのため、相手国が自国を核兵器を使用しなければならないような状況に追い込まれないようにすることが、核戦争を防ぐための基本的な原則となる。

　・外交と対話の重要性

　核兵器の使用を避けるためには、対話と外交によって緊張を和らげ、相手に「核を使う理由」を与えないことが重要である。適切な交渉と意思疎通により、誤解や過剰反応を避けることが可能であり、これが核戦争を防ぐ鍵となる。

　・核抑止理論の限界

　核抑止の理論は、相手が核兵器を使わないようにするための圧力をかけることに重点を置いているが、それが破綻すると核兵器が実際に使われるリスクが高まる。抑止が効かない場合、外交的手段や威圧戦術を使ってでも核兵器使用を避けるための状況作りが求められる。

　・「限界点」を越えさせない

　相手が核を使うという決断に至るのは、限界的な状況、すなわち戦争が全面的に拡大し、他に選択肢がないと感じるときである。この「限界点」を越えさせないためには、十分な抑止力と同時に、戦争を長期化させないような戦略を取ることが必要である。

　・誤解や誤算の回避

　核兵器の使用は、しばしば誤解や誤算から起こる危険を伴う。したがって、相手が自国に対して核攻撃を行う動機を持たないようにすることが、核不使用の大前提となる。過剰な軍事行動や挑発的な言動は、相手に核使用の選択肢を現実的に考えさせることにつながる。

　核兵器はその性質上、非常に破壊的であり、使用することが極めて危険であるため、相手に核兵器を使用させる状況を作らないことが、核不使用を維持するための基本である。このため、国際社会は外交的手段、信頼醸成措置、軍事的抑止力を活用し、相手が核を使用するという選択肢を現実的なものにしないよう努めている。核戦争を防ぐためには、相手に「核を使う理由」を与えないことが最も重要な戦略となる。　

　9.身近なところでは

　米国の関与する至る所で此の米国の素質　、"掏り替えの狡猾さ"が観察できる。自国は負けないの立場の高所に立つ、或は何とでも言い逃れの出来る、云わば"投網の論理"である。

　一網打尽する論理、自らを"正義"の立場に置く、論理である。この論理が引き起こすのは結果論であり、決して惹起する問題の解決にはならないのである。

　ただ求めたのは米国自身の"正義面"であり、"自由面"であり、"民主主義"なのである。
　
　此の"面"は、米国だけのものであり、他国など当事者以外のものには普遍性も皆無で、教授できない代物である。

　台湾問題然り、南シナ海問題然り、ウクライナ戦争然り、イスラエル問題然りなのである。
　
　米国は火付けは出来ても、"消火活動"しない。

　世界が向き合うのは、虚仮の<唯我独尊>国家、成らず者国家の米国なのである。

　来年には其の所業の数々を披露されることであろう。

　怯むことは無い、国連を中心に対応し、似非正義の御株を奪うことだ。
　
【寸評　完】

【引用・参照・底本】

米国:核兵器を「政治的な武器」として位置づけ　越水桃源LOG 2024.11.21

US military prepared for nuclear strikes – spokesman RT 2024.11.21
https://www.rt.com/news/607969-us-nuclear-strike-exchange/

【概要】

　グローバルタイムズは、2024年11月21日に掲載した記事で、アメリカがガザにおける停戦決議案に対して国連安全保障理事会で4度目の拒否権を行使したことを非難している。記事は、これを「ガザにおける人道的危機の創造者」としてアメリカを批判する内容である。

　記事によると、今回の決議案は安全保障理事会の10の非常任理事国によって提案され、即時的、無条件かつ恒久的な停戦と、すべての人質の即時無条件の解放を求めるものであった。この決議案に対して賛成が14票、反対が1票(アメリカ)であり、アメリカが唯一反対した結果、決議案は成立しなかった。

　現在、ガザでは約44,000人が死亡しており、2.4百万人の住民がほぼ全員、戦争によって避難を余儀なくされている。記事は、アメリカが安全保障理事会の常任理事国として「国際平和と安定の維持」という責任を負うべき立場にあるにもかかわらず、その拒否権の行使が平和的解決への努力に矛盾するものであると指摘している。

　フランスやイギリスを含む同盟国からもアメリカの行動に対して批判が寄せられており、フランスの国連大使ニコラ・ド・リヴィエール氏は「すべての市民を保護し、緊急支援を大量かつ妨害なく届ける唯一の方法は、即時無条件の停戦を実施することである」と述べている。また、中国アラブ研究院の執行所長であるNiu Xinchun氏は、アメリカのイスラエルへの揺るぎない支持が国内外で分裂を生み、国連の場でも孤立を深めていると述べている。

　さらに、記事はアメリカが人権を擁護すると主張しながら、ガザの状況には無関心であると非難している。国際社会が停戦と人質解放を求める中、アメリカは停戦に条件を課し続けており、イスラエルの軍事行動が人質救出を超える規模に達しているにもかかわらず戦争の長期化を黙認していると主張している。

　記事は、アメリカの拒否権行使が停戦実現の最大の障害であり、安全保障理事会の機能不全の根本原因であると強調する。安全保障理事会が国際社会を代表し、紛争終結を両当事者に求めるべき場であるにもかかわらず、アメリカの行動がその信頼性と有効性を損なっているという批判を展開している。

　最後に、記事はアメリカが「人権」や「人道的価値」を掲げながら、ガザの人々の生命を軽視しているとし、歴史がこの時期を振り返る際に、アメリカの指導力や信頼性の喪失、国際的な評判の失墜が問われるであろうと締めくくっている。

【詳細】

　この記事は、アメリカによる国連安全保障理事会での拒否権行使を中心に、ガザ紛争に対する国際社会の懸念とアメリカの孤立を批判的に取り上げている。以下に、内容をさらに詳しく解説する。

　1. 拒否権行使の背景と影響

　アメリカは2024年11月20日、ガザにおける即時停戦を求める安全保障理事会決議案を拒否した。この決議案は、10の非常任理事国が共同提案したものであり、「即時的、無条件かつ永続的な停戦」と「すべての人質の即時無条件解放」を強調していた。賛成14票に対し、アメリカのみが反対票を投じたため、常任理事国の特権である拒否権により採択が阻止された。

　記事は、この拒否権行使が国連の停戦を促進する努力を阻害し、国際的な人道支援の提供やガザ市民の保護を著しく妨げていると指摘している。ガザでは約44,000人が死亡し、人口のほぼ全員にあたる約240万人が戦争によって避難を余儀なくされ、深刻な人道危機が生じている。この状況下で、アメリカが拒否権を行使したことは、国際的な平和と安全を維持すべき常任理事国としての責任を果たしていないと批判されている。

　2. 国際社会での孤立
　
　アメリカの拒否権行使に対し、国際社会からは厳しい非難が寄せられている。フランスの国連大使ニコラ・ド・リヴィエールは、「即時無条件の停戦は、すべての市民を保護し、緊急人道支援を妨害なく届ける唯一の手段である」と述べ、アメリカの行動に異議を唱えた。また、イギリスを含む他の同盟国からも、アメリカの対応に対する不満が表明されている。さらに、米国の主要メディアであるニューヨーク・タイムズも、アメリカがこの問題で国際的に孤立していることを認めている。

　中国アラブ研究院の執行所長、Niu Xinchun氏は、アメリカのイスラエル支持が国内外で分裂を生み、国連内でも孤立を深めていると述べている。特に、アメリカの「条件付き停戦」への固執は、他の国々が求める「即時無条件停戦」との間で大きな乖離を生んでおり、この問題におけるアメリカの外交的立場をさらに困難なものにしている。

　3. アメリカのダブルスタンダード

　記事は、アメリカが一貫して「人権」や「人道的価値観」を擁護すると主張しながら、ガザの状況には無関心であるという矛盾を批判している。イスラエルの軍事行動が「人質救出」の名目を超えて拡大し、民間人への被害が深刻化しているにもかかわらず、アメリカは停戦実現に対して条件を課し続けている。この姿勢は、戦争の長期化を容認し、さらなる犠牲を招くものとして非難されている。

　特に、「即時無条件停戦」を求める国際社会の大多数の声を無視し、「パレスチナ人の命は重要ではない」とするかのような態度は、アメリカの「人道的価値観」の信頼性を著しく損なっているとされている。このダブルスタンダードは、アメリカが国際的リーダーシップを放棄しつつある証拠と見なされている。

　4. 国連安全保障理事会の機能不全

　この記事は、アメリカの拒否権行使が安全保障理事会の機能不全の主因であると指摘している。安全保障理事会は、国際社会の代表として紛争の平和的解決を推進する役割を担っているが、アメリカがその拒否権を濫用することで、その役割を果たすことが困難になっていると述べられている。この結果、国連の信頼性が損なわれるとともに、国際社会におけるアメリカへの信頼も大きく低下している。

　5. 歴史的評価への懸念

　記事の結論部分では、アメリカが「人権」や「人道的価値観」を掲げながら、ガザの人道危機を軽視し続ける態度が、将来の歴史的評価において厳しい批判を受けるだろうと警告している。特に、44,000人以上の命が失われ、数百万人が避難を余儀なくされている現状において、アメリカの対応が「指導力の喪失」と「信頼性の崩壊」を招いていると指摘している。

6. 全体の要約と論調

　この記事の論調は、アメリカの外交政策に対して極めて批判的である。特に、アメリカが国際社会の大多数に反する行動を取り続けていることを「孤立」と表現し、その行動が国際的な平和や安全保障を妨害していると強調している。また、アメリカの行動を「人道的価値観に反する」と断じ、その外交的信用とリーダーシップが大きく損なわれているとする厳しい評価が特徴的である。

　これにより、アメリカの行動が単なる一国の政策に留まらず、国際社会全体に深刻な影響を及ぼしていることを強調している。

【要点】　
　
　・拒否権行使の経緯

　アメリカは、ガザでの即時停戦を求める国連安全保障理事会の決議案に対し、2024年11月20日に拒否権を行使した。賛成14票に対し、アメリカが唯一反対票を投じた。

　・決議案の内容

　決議案は、「即時的、無条件かつ永続的な停戦」と「すべての人質の即時無条件解放」を求めていた。

　・人道危機の現状

　ガザでは約44,000人が死亡し、240万人の住民が避難を余儀なくされている。戦争による深刻な人道危機が拡大している。

　・アメリカへの批判

　アメリカの拒否権行使は、国際社会が求める平和的解決への努力を妨害し、常任理事国としての責任を果たしていないと批判されている。

　・国際社会での孤立

　フランスやイギリスを含む同盟国や国連大使からもアメリカの行動に対する不満が表明され、米国内メディアも外交的孤立を指摘している。

　・ダブルスタンダードの指摘

　アメリカが「人権」や「人道的価値観」を掲げながら、ガザの人道危機には無関心な態度をとっているという矛盾が非難されている。

　・国連安保理の機能不全

　アメリカの拒否権行使が、国連安全保障理事会の機能不全を引き起こし、国際社会の信頼を損なっていると指摘されている。

　・将来的な歴史的評価への懸念

　アメリカの行動が「指導力の喪失」と「信頼性の崩壊」をもたらし、将来の歴史的評価で厳しく批判されるだろうと警告している。

　・記事の論調

　アメリカの行動は、国際社会における平和や安全保障を妨害していると強調し、極めて批判的な立場を取っている。

【引用・参照・底本】

Abusing its veto power, the US is undoubtedly ‘humanitarian disaster creator’ in Gaza GT 2024.11.21
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1323541.shtml