米国の小包に対する関税政策の不確実性2025年02月10日 20:06

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【概要】

 アメリカの小包に対する関税政策の不確実性について、中国の越境EC業界の関係者は強く批判している。新たな関税は消費者のコストを引き上げる一方で、アメリカ市場における中国製品の競争力に影響を与える可能性があると指摘されている。しかし、専門家は中国の越境EC業界がサプライチェーンの最適化や市場戦略の多様化を進めることで、政策の変更に適応できると述べている。

 アメリカは、中国製品に対して10%の関税を課し、小額商品の免税措置を調整した。この新たな規制は、800ドル未満の小包についても免税を廃止する内容を含んでおり、これにより小包に対しても関税が課せられることとなった。しかし、ドナルド・トランプ大統領は、2025年2月7日にこの措置の実施を一時停止し、アメリカ商務省が実施可能な形にする時間を確保することになった。この急な政策変更により、税関検査員や郵便配達業者、オンライン小売業者に混乱が生じたとの報道がある。

 上海のある越境EC企業の従業員であるXu氏は、春節前にアメリカ向けに発送された商品が通関で問題を抱えており、アメリカ税関が申告価格を上回る関税を課したと述べている。「60ドルから130ドルの間で関税が課されたことは不合理であり、信頼できる基準が欠如していることを示している」と彼は指摘した。

 また、ある中国の越境EC業界の関係者は、「なぜこんな大国が貿易政策をこんなにも気軽に変更するのか」と不満を漏らし、自社のビジネスモデルを市場の変化に適応させる必要性を感じていると述べた。

 この不確実性に対応するため、多くの商人は新しい開発パスを模索している。中国の商人であるGu氏は、「多くの人々が小包の免税政策は最終的に廃止されると予測している」と述べ、現在の政策の一時停止はアメリカの税関や物流、業者が直面している課題に対応するための時間稼ぎにすぎないと考えている。

 テンム(Temu)という中国の越境ECプラットフォームでカメラアクセサリーを扱っているHan氏は、これまで$800の免税措置を活用していた商人たちが大きな影響を受けていると述べている。Han氏によると、「$10の製品の送料、登録料、関税を合わせたコストは約40%増加しており、利益を維持することが不可能になった」とのことだ。

 また、広東省汕頭の玩具工場経営者であるYang氏は、越境EC業者がアメリカ国内の倉庫や物流サービスを活用するハイブリッド型のビジネスモデルに切り替えていると述べている。これにより在庫管理が効率化され、コスト削減と配送効率の向上が期待されている。

 さらに、越境EC業界は長期的な戦略として市場の多様化を進めている。多くの商人は、東南アジアや中東などの新興市場への進出を検討しており、これらの地域は成長ポテンシャルと消費者需要が高いと見なされている。

 中国インターネット情報センターの越境EC50フォーラムの副事務局長であり、同センターのEコマース研究センターのディレクターであるCao Lei氏は、新たなアメリカの規制は輸入品のコストを引き上げる可能性があり、越境EC業者が海外供給者に依存する中国市場において、利益率が大幅に圧縮されると指摘している。また、「アメリカの消費者は価格の引き上げを強いられる可能性があり、関連企業は競争力の低下というリスクに直面するだろう」と予測している。

 一方で、中国の越境EC業界は、サプライチェーンの最適化、市場戦略の多様化、製品品質やサービスレベルの向上によって、今後の政策変更に対応できると強調している。

【詳細】

 アメリカの小包に対する関税政策の不確実性が中国の越境EC業界に与える影響について、さらに詳しく説明する。

 新たな関税政策とその影響

 アメリカ政府は中国製品に対して新たな関税を課し、特に小額商品に関して免税措置を撤廃する決定を行った。この政策変更により、従来免税だった800ドル未満の小包に対しても関税が課せられることになった。この政策は、特に低価格の商品をアメリカ市場に輸出していた中国の越境EC業者にとって大きな打撃となっている。例えば、従来は免税であったため、Gu客に対して低価格での配送が可能だったが、新たな関税措置によって、製品の最終価格が上昇し、競争力が低下する恐れがある。

 この変更により、関税が商品の価格に直接影響を与えるため、消費者が支払う金額が増加することが予想される。また、関税の計算方法や規制の不透明さが、商人にとって不安材料となっており、これに対する適応が求められている。

 トランプ大統領の政策変更の背景

 アメリカ政府は、2025年2月7日に関税措置の一時停止を発表し、実施を一時延期した。これは、急激な政策変更が税関検査や物流業務、さらにはオンライン小売業者に混乱を引き起こし、業界全体が適応する時間を必要とするためである。特にアメリカの税関や郵便配達業者は、この突然の政策変更により、急激な対応が求められ、業務が滞る事態となった。このため、アメリカ政府は、商務省に対して規制を再調整するための時間を与え、より実行可能な形での政策実施を目指すこととなった。

 一方で、トランプ大統領が関税撤廃の決定を一時停止したことにより、短期的な混乱は避けられたものの、政策の最終的な方向性が不確定であるため、商人たちは今後の動向を注視せざるを得ない状況となっている。

 中国の越境EC業界の適応と戦略変更

 中国の越境EC業界では、このような不確実な状況に適応するため、さまざまな戦略が取られている。例えば、多くの商人はサプライチェーンの最適化を進め、コスト削減を図ると同時に、異なる市場戦略を模索している。これにより、他国の市場での競争力を高めるとともに、アメリカ市場に依存しない経営基盤を築くことを目指している。

 さらに、アメリカ向けに依存していた商人たちは、東南アジアや中東などの新興市場への進出を進めている。これらの地域は、インターネットの普及率が高く、若年層を中心にテクノロジーへの理解が深いことから、今後の成長が期待されている。中東市場では、特に若年層の消費者層が急速に拡大しており、中国製品に対する需要が高まっている。

 また、越境ECプラットフォームとしては、アリババグループが運営するAliExpressや、Temu、Sheinなどがあり、これらのプラットフォームは商人に対して、半管理型のモデルを提供している。このモデルでは、商人が自ら在庫を管理する一方で、プラットフォームが物流や倉庫管理を担うため、商人は海外に在庫を保持し、配送の効率化を図ることができる。これにより、配送の遅延を避け、コスト削減にもつながる。

 中東市場の成長可能性

 中東市場に関しては、特にインターネットの普及と若年層の消費者層の拡大が注目されている。中東地域は、テクノロジーに精通した若者が多く、インターネットショッピングへの需要が急速に増えている。また、消費者は高品質で低価格の製品を求めており、中国製品がそのニーズを満たす存在となっている。

 例えば、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)では、インターネットの普及率が非常に高く、これらの国々ではオンラインショッピング市場が急成長を遂げている。これにより、中国の越境EC業者にとって、中東市場は今後の重要なターゲット市場となると見込まれている。

 価格引き上げと競争力低下

 アメリカの新たな関税政策は、特に消費者に対して価格引き上げをもたらす可能性が高い。例えば、商品に対する関税が追加されることにより、商品価格が上昇し、その結果、消費者が支払う価格が高くなると予想される。これにより、アメリカ市場における中国製品の競争力が低下し、他国製品が選ばれるリスクが高まる可能性がある。

 中国の越境EC業者は、このような価格の引き上げに直面し、利益率が圧縮されることが予想される。したがって、企業は製品の品質向上やサービスレベルの強化を進めることが求められており、これにより競争力を維持するための戦略が必要となる。

 結論

 アメリカの関税政策変更は、中国の越境EC業界に大きな影響を与えており、特に小包の免税措置の撤廃は、商人にとって大きな負担となっている。しかし、業界はサプライチェーンの最適化や市場戦略の多様化を進めることで、この不確実性に対応しようとしている。さらに、中東や東南アジアなどの新興市場の開拓が長期的な成長戦略として重要視されている。一方、アメリカ市場に依存している業者にとっては、価格引き上げと競争力低下が今後の大きな課題となるだろう。

【要点】

 1.アメリカの新関税政策

 ・アメリカは、中国製品に10%の関税を課し、800ドル未満の小包に免税措置を撤廃。
 ・小包の関税が追加され、商品価格が上昇する可能性がある。

 2.トランプ大統領の政策変更

 ・2025年2月7日に関税措置の実施を一時停止。
 ・急激な政策変更が税関や物流業務に混乱を招いたため、調整の時間を設けた。

 3.中国の越境EC業界への影響

 ・小包の免税撤廃により、商人はコスト上昇に直面し、競争力低下のリスクがある。
消費者に対して価格引き上げが予想され、アメリカ市場での中国製品の競争力が低下する恐れ。

 4.商人の適応戦略

 ・サプライチェーンの最適化と市場戦略の多様化が進められている。
 ・多くの商人がアメリカ以外の新興市場(東南アジア、中東など)への進出を検討。

 5.中東市場の成長

 ・中東はインターネット普及率が高く、若年層が多いため、越境ECにとって有望な市場。
 ・中国製品はこの地域で高い需要が見込まれる。

 6.プラットフォームの戦略

 ・半管理型モデルを採用するプラットフォーム(AliExpress、Temu、Sheinなど)が登場。
 ・商人は海外倉庫を活用し、効率的な配送とコスト削減を目指している。

 7.価格引き上げと競争力低下の懸念

 ・アメリカ市場では関税による価格上昇が消費者に負担をかけ、競争力を低下させる可能性がある。
 ・中国の越境EC業者は利益率圧縮に直面し、品質向上やサービス強化が求められる。

【引用・参照・底本】

Chinese e-commerce merchants slam US tariff uncertainty GT 2025.02.09
https://www.globaltimes.cn/page/202502/1328134.shtml

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