【概要】

　プーチンがFSBに与えた新たな任務は、その重要性からより注目されるべきである。

　ロシア国内外の一部の支持者は、トランプがプーチンとの和平交渉に本気で取り組むかについて懐疑的であった。しかし、プーチンはトランプのアプローチを評価し、それにより支持者へ明確なメッセージを送った。プーチンは、連邦保安庁(FSB)の会議において、トランプおよびそのチームとの最初の接触が「一定の希望を抱かせる」と述べた。さらに、米国がロシアとの関係修復と世界的な戦略的問題の解決に取り組む意思を共有していると強調した。

　続けて、「我々のパートナーは実利的かつ現実的な視点を持ち、多くの固定観念や、いわゆるルール、そして前任者のメシア的でイデオロギー的な決まり文句を放棄した」と発言した。そして、「西側エリートの一部は依然として世界の不安定化を維持しようとしており、これらの勢力は再開された対話を妨害または破壊しようとするだろう」と警告した。

　この発言に続き、FSBに対し「外交および特殊機関のあらゆる手段を活用し、こうした試みを阻止する」よう指示した。この新たな任務は、その示唆する意味からより詳細な分析が求められる。

　第一に、プーチンとトランプが本格的な合意に向けて動いており、それが「新デタント」と呼べるような地政学的な転換点となる可能性があることを示している。これに関連する分析として、以下の5つの記事が挙げられる。

　・1月3日：「創造的なエネルギー外交がロシア・アメリカの大規模合意の基盤を築く可能性」
　・2月13日：「プーチンとトランプが和平交渉開始で合意した後の次の展開」
　・2月14日：「ロシアが西側との関係を修復する理由と、それが外交政策に与える影響」
　・2月15日：「ヴァンスのミュンヘン演説が、プーチンの2022年夏の欧州政治変化予測を裏付けた理由」
　・2月25日：「国連におけるロシアと米国の外交的動きが示す『新デタント』への意志」

　第二に、一部の西側エリートがこの「新デタント」に反対し、それを妨害しようとする可能性がある。どのような形で行われるかは不明であるが、プーチンの警告から、ロシアやベラルーシに対する挑発行為が含まれる可能性があると考えられる。また、「対話を損なう」との表現は、情報の漏洩や偽情報の拡散を示唆している可能性がある。FSBは、これらの事態を事前に阻止するか、発生時に適切な対応を取る必要がある。

　第三に、以上の点から、プーチンが支持者に対し、自身の目指す合意を公に支持するよう求めていることがうかがえる。少なくとも、彼やトランプの意図に疑念を抱くことは望ましくないというメッセージを送っている。つまり、最近の動向についての「公式な」解釈は、ロシアと米国が世界の安定のために包括的な問題解決に向かっているというものであり、この見解に反する主張はクレムリンの方針にそぐわない可能性がある。

　第四に、前述の点を踏まえると、新たな「公式な」解釈に異を唱える者は、西側エリートの影響を受けていると疑われる可能性がある。これにより、国外の支持者が影響力を失うことや、国内の異論を唱える者が監視対象となる可能性も考えられる。

　最後に、プーチンは「世紀の合意」を実現させることを目指しており、国内外の支持者に対し、自身の判断を信頼するよう求めていると考えられる。

【詳細】

　プーチンの発言の背景とFSBへの新たな任務の意義

　1. プーチンの発言の重要性

　ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、連邦保安庁(FSB)の会合で行った発言において、ドナルド・トランプ前米大統領とそのチームとの最初の接触について言及し、「一定の希望を抱かせる」と評価した。これは、米国がロシアとの関係修復に前向きであり、世界の戦略的問題の解決に共同で取り組む可能性を示唆するものである。

　この発言は、ロシア国内外の支持者に対するメッセージとして重要である。特に、トランプの対ロシア政策に対して懐疑的な立場を取る者に対し、プーチン自らが「トランプのアプローチには期待が持てる」と表明することで、支持者の間での統一見解を形成しようとしていると考えられる。

　また、プーチンは「我々のパートナー(米国)は実利的かつ現実的な視点を持ち、多くの固定観念や、いわゆるルール、そして前任者のメシア的でイデオロギー的な決まり文句を放棄した」と述べた。これは、トランプが従来の「リベラルな国際秩序」に基づいた外交政策を放棄し、現実主義に基づくアプローチを取っているという認識を示している。

　2. FSBへの新たな指示とその意味

　プーチンは、西側エリートの一部が依然として「世界の不安定化を維持しようとしている」と警告し、FSBに対し「外交および特殊機関のあらゆる手段を活用し、こうした試みを阻止する」よう命じた。これは以下の3つの目的を持つと考えられる。

　(1)ロシアと米国の「新デタント」に対する妨害を防ぐ

　・プーチンは、米国との対話が進展する中で、一部の西側エリートがこれを阻害しようとする可能性があると指摘した。これは、NATO内部の対ロ強硬派や、米国内の反トランプ勢力を指している可能性が高い。
　・FSBは、これらの勢力が仕掛ける可能性のある情報戦、挑発行為、偽情報キャンペーンに対処し、ロシアの外交戦略が阻害されることを防ぐ任務を負うことになる。

　(2)ロシア国内の世論の統制

　・プーチンの発言は、ロシア国内の支持者に対しても影響を与えるものであり、「トランプとの交渉に懐疑的な見方を持つべきではない」とのメッセージを暗に送っている。
　・FSBは、国内メディアや識者の発言を監視し、政府の方針に対する疑念や批判を最小限に抑える役割を果たす可能性がある。

　(3)情報戦の強化と対外工作

　・プーチンは、FSBに「外交および特殊機関のあらゆる手段を活用する」よう指示しており、これはサイバー戦、情報操作、影響力工作を含む可能性がある。
　・ロシアはこれまで、西側諸国の選挙や世論形成に影響を与えるための情報戦を展開してきたが、今回の指示もその延長線上にあると考えられる。

　3. 「新デタント」の可能性とその要因

　今回の動きが意味するのは、ロシアと米国が冷戦終結以来の大規模な関係改善、いわゆる「新デタント」に向けて動き出している可能性である。これについて、以下のような要因が考えられる。

　(1)エネルギー政策を通じた米露関係の再構築

　・1月3日の分析では、「創造的なエネルギー外交」がロシアと米国の大規模合意の基盤になり得ると指摘されている。
　・米国がエネルギー供給の安定化を求める中で、ロシアが重要な役割を果たす可能性がある。

　(2)欧州の政治的変化と米露関係への影響

　・2月15日の分析では、米国のJ.D.ヴァンス上院議員のミュンヘン会議での演説が、欧州の政治変化を象徴していると指摘されている。
　・これは、欧州内で対ロ強硬政策に疑問を持つ勢力が増えていることを示唆している。

　(3)国連での米露協調の兆し

　・2月25日の分析では、国連における米露の外交的動きが「新デタント」への意志を示しているとされている。
　・これは、米国とロシアが対立を超えて一定の合意形成を進める可能性を示唆している。

　4. 「新デタント」に対する妨害の可能性とFSBの役割

　「新デタント」を阻害しようとする勢力がどのような手段を取るかについては不明だが、以下のようなシナリオが考えられる。

　(1)ロシアやベラルーシへの挑発行為

　・NATO諸国による軍事的プレッシャーの増大
　・ウクライナ戦争におけるさらなるエスカレーション

　(2)情報戦とプロパガンダの強化

　・米国内での「トランプ＝親ロシア」という批判の強化
　・ロシア国内での反政府的な動きを煽るキャンペーン

　(3)内部からの対話破壊

　・トランプ陣営内での意見対立を煽る
　・ロシア国内での対話懐疑論を強める

　プーチンの指示は、これらの動きに対処するため、FSBに対し積極的な情報工作と防衛戦略を取るよう求めていると考えられる。

　5. 国内外の支持者へのメッセージ

　プーチンの発言には、ロシア国内外の支持者に向けたメッセージも含まれている。

　(1)「新デタント」はロシアにとって有益であるという認識の浸透

　・トランプとの交渉を疑問視する動きは、国家の利益に反する可能性があるという暗示。

　(2)対話を妨害する勢力への警戒

　・西側の一部勢力だけでなく、ロシア国内の意見も統制する意向が示されている。

　(3)プーチンのリーダーシップへの信頼の強化

　・「世紀の合意」を実現するために支持者はプーチンの決断を信頼すべきというメッセージ。

　まとめ

　プーチンの発言とFSBへの指示は、ロシアと米国の関係が新たな段階に入る可能性を示している。これが「新デタント」となるかどうかは今後の展開次第であるが、ロシアはこの動きを確実なものとするため、国内外での情報統制と防衛戦略を強化する方針を示している。
　
【要点】
　
　プーチンの発言の背景とFSBへの新たな指示の意義

　1. プーチンの発言の要点

　・トランプ陣営との最初の接触が「一定の希望を抱かせる」と評価。
　・「米国は実利的かつ現実的な視点を持ち、前任者のイデオロギー的な決まり文句を放棄した」と指摘。
　・ロシアと米国の関係改善(「新デタント」)の可能性を示唆。

　2. FSBへの新たな指示と目的

　・「世界の不安定化を維持しようとする勢力を阻止せよ」と命令。
　・「外交および特殊機関のあらゆる手段を活用する」よう指示。
　
　目的

　1.米露関係改善を妨害する勢力への対策

　・NATO内の対ロ強硬派や米国内の反トランプ勢力の影響を封じる。
　・偽情報キャンペーンや挑発行為への対応。

　2.ロシア国内の世論統制

　・「トランプとの交渉を疑問視するべきではない」とのメッセージを発信。
　・反政府的な言説の監視・抑制。

　3.情報戦の強化と対外工作

　・サイバー戦、影響力工作、プロパガンダの強化。
　・米国や欧州の世論形成への介入。

　「新デタント」の可能性と要因

　1.エネルギー政策を通じた米露関係の再構築(1月3日の分析)

　・ロシアがエネルギー供給の安定化に寄与する可能性。

　2.欧州の政治的変化と米露関係への影響(2月15日の分析)

　・欧州内で対ロ強硬政策への疑問が広がる。

　3.国連での米露協調の兆し(2月25日の分析)

　・国際機関を通じた協力の可能性。

　「新デタント」への妨害とFSBの役割

　1.ロシアやベラルーシへの挑発行為

　・NATOの軍事的圧力の増加、ウクライナ戦争のエスカレーション。

　2.情報戦とプロパガンダ

　・「トランプ＝親ロシア」批判の強化、ロシア国内の反政府活動の扇動。

　3.内部からの対話破壊

　・トランプ陣営内の意見対立の煽動、ロシア国内の懐疑論拡大。

　国内外の支持者へのメッセージ

　・「新デタント」はロシアの国益にかなうと示唆。
　・対話を妨害する勢力への警戒を強調。
　・プーチンのリーダーシップへの信頼を強化。

　まとめ

　・プーチンは米露関係改善の可能性を示唆し、FSBに対し情報統制と防衛戦略の強化を指示。
　・これが「新デタント」に繋がるかは、今後の西側の動向とFSBの対策次第。

【引用・参照・底本】

Putin’s Praise Of Trump’s Approach To Peace Talks Sends A Message To All Of Russia’s Supporters Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.01
https://korybko.substack.com/p/putins-praise-of-trumps-approach?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=158156081&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

【概要】

　2025年2月28日、アメリカのドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はホワイトハウスで会談を行った。この会談は、ロシアとの戦争終結に向けた和平交渉や、ウクライナの鉱物資源に関する合意を目指していた。しかし、会談中に両者の意見が対立し、激しい口論となった。

　トランプ大統領は、ゼレンスキー大統領に対し、ロシアのプーチン大統領に対する批判を控え、和平に向けた姿勢を示すべきだと主張した。一方、ゼレンスキー大統領は、ロシアを信用して譲歩することに強い懸念を示し、安全保障の保証がない停戦は受け入れられないと強調した。これに対し、トランプ大統領はゼレンスキー大統領の態度を「米国を侮辱した」と非難し、予定されていた鉱物資源に関する合意や共同記者会見は中止された。

　この会談の決裂を受け、トランプ大統領はウクライナへの軍事支援の見直しを示唆し、欧州の指導者たちはゼレンスキー大統領への支持を表明した。また、ゼレンスキー大統領は予定されていたワシントンD.C.での公の場での出演をキャンセルし、アメリカ国民への感謝の意を表明した。

　今回の会談は、ウクライナとロシアの戦争終結に向けた和平交渉の難しさと、国際社会の複雑な外交関係を浮き彫りにした。今後の米ウクライナ関係や、ウクライナの安全保障に対する影響が注目される。


【詳細】

　トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談の詳細

　2025年2月28日、米国のドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がホワイトハウスで会談を行った。この会談は、ウクライナへの米国の支援継続や、ロシアとの戦争終結に向けた和平交渉、ウクライナの鉱物資源に関する合意を目的としていた。しかし、両者の意見が対立し、会談は緊張した雰囲気の中で進んだ。

　トランプ大統領の発言とゼレンスキー大統領への要求

　トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対する批判をやめ、和平に向けた歩み寄りをすべきだと主張した。トランプ大統領は以下のように述べた。

　「プーチン氏について否定的な発言をやめるべきだ。彼が言うべきことは、和平を望んでいる、戦争を終わらせたいということだけだ」

　さらに、トランプ大統領はゼレンスキー大統領が和平に向けた意思を示さない限り、ウクライナへの軍事支援の継続を再考する可能性があると示唆した。

　ゼレンスキー大統領の反応

　ゼレンスキー大統領はこれに対し、ロシアを信用することはできず、一方的な譲歩はウクライナの安全保障を危険にさらすと反論した。彼は、プーチン大統領との交渉に応じるには具体的な安全保障の保証が必要であり、現在の条件では停戦には応じられないと主張した。

　また、ゼレンスキー大統領はウクライナの主権と領土保全が確保されない限り、戦争を続ける以外に選択肢はないと強調した。この点について、トランプ大統領とゼレンスキー大統領の間で激しい口論が発生したと報じられている。

　会談の決裂とその後の展開

　トランプ大統領はゼレンスキー大統領の態度を「米国への侮辱」と非難し、予定されていたウクライナの鉱物資源に関する合意や共同記者会見を中止した。米国はウクライナのレアメタルをはじめとする資源の開発に関心を持っており、これに関する協議が進められていたが、今回の対立により合意に至らなかった。

　さらに、ゼレンスキー大統領が会談終了後にホワイトハウスを再訪しようとしたが、トランプ大統領側はこれを拒否した。その後、ゼレンスキー大統領は予定されていたワシントンD.C.での公の場での出演をキャンセルし、米国国民に対し支援への感謝の意を表明した。

　一方、トランプ大統領は会談後に記者団に対し、ゼレンスキー大統領について以下のように批判した。

「我々は10年戦争を目指してなどいない。平和が欲しいのだ。あの男は戦いたい一心だ。我々は犠牲を終わりにしたい」

　さらに、戦闘を続ける場合の影響についても警告し、「どうなるか見ものだ、さらに戦ってみればいい」と述べた。この発言は、ウクライナに対する米国の支援を縮小する可能性を示唆していると受け取られた。

　国際的な反応と今後の展望

　今回の会談の決裂を受け、欧州の指導者たちはゼレンスキー大統領への支持を表明し、ウクライナへの支援を継続する意向を示した。しかし、トランプ大統領がウクライナへの軍事支援の見直しを示唆したことで、ウクライナの戦争継続能力に影響が及ぶ可能性がある。

　また、ウクライナ国内では、ゼレンスキー大統領がトランプ大統領に「侮辱された」として反発する声が強まっており、今回の会談が米ウクライナ関係に悪影響を及ぼすことが懸念されている。

　まとめ

　・トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対し、プーチン大統領への批判を控え、和平交渉に応じるべきだと要求。
　・ゼレンスキー大統領は安全保障の保証がない状態での停戦を拒否し、ロシアへの譲歩に強く反対。
　・会談は対立の末に決裂し、ウクライナの鉱物資源に関する合意や共同記者会見は中止。
　・トランプ大統領はウクライナへの軍事支援の見直しを示唆し、ゼレンスキー大統領の態度を批判。
　・欧州の指導者たちはウクライナへの支持を表明するも、今後の米ウクライナ関係に不透明感が増す可能性がある。

　今後、トランプ大統領の政策がウクライナ戦争にどのような影響を及ぼすのか、またゼレンスキー大統領がどのように対応するのかが注目される。
　
【要点】
　
　トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談の要点

　会談の背景

　・2025年2月28日、米ホワイトハウスで両首脳が会談。
　・ウクライナ支援の継続、ロシアとの和平交渉、ウクライナの鉱物資源に関する協議が議題。
　・両者の意見が対立し、会談は緊張した雰囲気で進行。

　トランプ大統領の主張

　1.プーチン大統領への批判をやめるよう要求。

　　・「プーチンについて否定的な発言は控え、和平を望む姿勢を示せ」と発言。
　
　2.ウクライナに即時停戦を求める。

　・「10年戦争を望んでいない。我々は平和を求めている」と強調。

　3.ゼレンスキー大統領が戦争を続けたがっていると批判。

　・「あの男は戦いたい一心だ。我々は犠牲を終わらせたい」と発言。

　4.ウクライナへの軍事支援の継続を再考する可能性を示唆。

　・停戦に応じない場合の影響について「どうなるか見ものだ」と警告。

　ゼレンスキー大統領の反論

　1.ロシアとの和平交渉には安全保障の保証が必要。

　・現状では停戦に応じられないと主張。

　2.ウクライナの主権と領土保全が確保されなければ戦争継続は不可避。

　・ロシアへの一方的な譲歩は不可能と反論。

　会談の決裂とその後の対応

　・トランプ大統領が予定されていたウクライナの鉱物資源に関する合意を中止。
　・共同記者会見もキャンセル。
　・ゼレンスキー大統領がホワイトハウスを再訪しようとするも拒否される。
　・トランプ大統領はフロリダへ移動し、ウクライナ問題に関する追加発言を控える。

　国際的な反応と影響

　・欧州の指導者たちはゼレンスキー大統領への支持を表明。
　・トランプ大統領の発言を受け、米国のウクライナ支援縮小の可能性が浮上。
　・ウクライナ国内ではゼレンスキー大統領の対応を巡って議論が活発化。

　今後の展望

　・トランプ政権がウクライナへの軍事・経済支援を削減するかどうかが焦点。
　・ゼレンスキー大統領が欧州諸国からの追加支援を模索する可能性。
　・ロシア側の反応や、戦争継続の影響が注視される。

【引用・参照・底本】

トランプ大統領がゼレンスキーに苦言、「プーチン大統領を悪く言うな」 sputnik日本 2025.03.01
https://sputniknews.jp/20250301/19614090.html

【概要】
　
　米国ホワイトハウスで行われたドナルド・トランプ大統領とウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の会談が激しい対立に終わり、共同記者会見の中止と鉱物資源協定の不調が報じられた。両首脳の議論はロシアとの和平交渉を巡り先鋭化し、米国のウクライナ軍事支援継続が不透明な情勢となった。

　主な展開

　1.会談の経緯

　・トランプ大統領はゼレンスキーに対し「第三次世界大戦を誘発する賭けをしている」と非難。即時停戦を要求し、「合意できないなら米国は支援を打ち切る」と表明した。

　・ゼレンスキーは「領土に関する妥協はない」と反論し、欧州諸国の支援を強調。安全保障保証がない限りロシアとの交渉を拒否する姿勢を示した。

　・ジョン・デイビッド・ヴァンス副大統領も「米国への感謝は一度もないのか」とゼレンスキーを批判。会談は公開中に打ち切られ、ゼレンスキーは予定より早くホワイトハウスを退去した。

　2.米政府の対応

　・ホワイトハウスは「鉱物協定未締結」を公式に確認。トランプは記者団に「ゼレンスキーは手札を過大評価した」と述べ、ウクライナ支援の条件として「欧州の負担増」を要求した。

　・マルコ・ルビオ国務長官(共和党)はCNNに対し「ゼレンスキーは謝罪すべき」と発言。和平への意欲を疑問視する姿勢を示した。

　・リンジー・グラハム上院議員(共和党)は「ゼレンスキーは辞任すべき」と要求。一方、民主党議員はトランプ陣営の対応を「恥ずべき行為」と非難した。

　3.欧州諸国の反応

　・エマニュエル・マクロン仏大統領：「ロシアが侵略者であり、ウクライナは欧州の安全保障のために戦っている」と強調。

　・オリーフ・ショルツ独首相：「ウクライナはドイツと欧州を頼れる」と支援継続を表明。

　・スペインのペドロ・サンチェス首相：「スペインはウクライナと共にある」とツイート。

　・ポーランドのドナルド・ツスク首相：「ウクライナは孤立していない」と連帯を表明。

　・ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相：トランプの「平和への勇気」を称賛し、欧州内で孤立した立場を示した。

　4.ロシアの反応

　・ドミトリー・メドベージェフ安保会議副議長(元大統領)は「ホワイトハウスでの惨めな叱責」と嘲笑的にコメント。

　・ロシア軍は会談同日、ハルキフの医療施設をドローン攻撃し、民間人5名が負傷。ウクライナ当局は「ロシアの挑発」と非難した。

　5.ゼレンスキーの対応

　・フォックスニュースのインタビューで「両側にとって良くなかった」と述べつつ、自らの姿勢を正当化。「米国民がウクライナ側に立つことを望んでいる」と訴えた。

　・トランプとの関係修復は可能との見解を示し、「米国の支援がなければ困難」と危機感を表明した。

　今後の影響

　・米ウクライナ関係：トランプ政権が軍事支援を全面停止する可能性が浮上。数十億ドル規模の兵器供与が保留される見通し。

　・欧州の役割：仏・独を中心に「欧州単独の安全保障枠組み」構築の機運が高まる。3月3日予定のロンドンサミットで具体策が議論される見込み。

　・和平交渉：トランプが「プーチンは約束を守る」と発言する一方、ウクライナは「ロシア軍の完全撤退」を前提条件に堅持。膠着状態が続く。

【詳細】

　1. ホワイトハウス会談の背景と対立の核心

　会談の目的

　・トランプ政権の意図

　米国が仲介する「ロシア・ウクライナ和平案」の具体化を目指し、ウクライナに領土譲歩を迫る。特に、クリミア半島やドンバス地域の「現実的解決」を要求。
併せて、ウクライナの希少鉱物資源(リチウム、レアアース等)の米国企業への優先供給を条件にした「鉱物協定」の締結を提案。

　・ゼレンスキー政権の立場

　ロシア軍の完全撤退と1991年国境線の回復を前提とした「公正な和平」を主張。安全保障保証(NATO加盟または米欧の集団防衛条約)がなければ交渉不可と表明。

　対立の焦点

　(1)トランプの発言

　・「欧州諸国が十分な資金を出さず、米国がウクライナ支援の負担を背負っている」と批判。

　・「ウクライナが『第三次世界大戦』を招く危険な賭けをしている」と警告。

　・「合意なき場合、米国はNATOを含む全軍事支援を停止する」と最終通告。

　(2)ゼレンスキーの反論

　・「ウクライナは欧州の盾として戦っており、安全保障なしの和平は自国の消滅を意味する」と訴え。

　・「米国の支援が止まれば、ロシアの欧州侵攻が現実化する」と警告。

　2. ホワイトハウス内の具体的な応酬

　公開場面での衝突

　(1)トランプの挑発的発言

　・あなたはスーツを着て豪華にしているが、戦場の現実を見ていない」とゼレンスキーの指導力を揶揄。

　・「プーチンは『合意を守る』と私に約束した」と発言し、ロシアへの信頼を表明。

　(2)ヴァンス副大統領の介入

　・「ウクライナは過去5年間、米国から1,200億ドル以上の支援を受けたが、感謝の言葉すらない」と非難。

　・「米国民の税金を無駄にしている」と感情的に訴え、議場の緊張が最高潮に。

　会談打ち切りの経緯

　・トランプが「話し合いの余地なし」と判断し、予定されていた非公開協議をキャンセル。

　・ゼレンスキー側は「米国が和平の障害になった」と声明を発表し、急遽ホワイトハウスを退去。

　3. 米国内の政治的反響

　共和党の姿勢

　(1)マルコ・ルビオ国務長官

　・「ゼレンスキーは会談を『政治ショー』にし、和平への真剣さを疑わせた」とCNNで批判。

　(2)リンジー・グラハム上院議員

　・「ゼレンスキーは退任すべき」と要求し、ウクライナ支援の見直しを主張。

　(3)共和党主流派

　・トランプの「米国第一主義」を評価し、「欧州の自助努力を促す転機」と歓迎。

　民主党の反発

　(1)ナンシー・ペロシ下院議員

　・「トランプの態度は歴史的恥辱。プーチンへの従属を露呈した」と非難。

　(2)ジョー・バイデン前大統領

　・「米国の国際的信頼を崩壊させる行為」と声明を発表。

　4. 欧州諸国の対応

　連帯の強化

　(1)フランス・ドイツ主導の動き

　・マクロン大統領とショルツ首相が緊急会談を実施。

　・「欧州単独のウクライナ安全保障枠組」創設を提案。具体案として「EU軍の即時展開」や「武器共同調達基金」を検討。

　(2)東欧諸国の危機感

　・ポーランドのツスク首相が「米国の離脱は欧州の分断を招く」と警告。

　・バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)がNATOへの早期配備増強を要請。

　ハンガリーの孤立

　・オルバン首相がトランプを「平和の擁護者」と称賛し、EU内で唯一親露的姿勢を強調。

　・欧州委員会は「ハンガリーへの予算凍結」を検討する方針を示した。

　5. ロシアの戦略的優位化

　軍事・情報作戦

　・ハルキフ攻撃

　会談同日に医療施設をドローンで標的化。民間人被害を出すことで「ウクライナの脆弱性」を国際的に印象付ける。

　・情報戦

　ソーシャルメディアで「米ウクライナ関係の崩壊」を誇大宣伝。欧州諸国の厭戦感情を煽る工作を強化。

　外交的アピール

　・メドベージェフ氏が「トランプは現実主義者だ」と評価し、米露直接交渉の可能性を示唆。

　・ロシア外務省が「ウクライナの非武装化」を和平条件として再提示。

　6. 今後のシナリオ分析

　短期的影響

　・ウクライナ戦線の悪化

　米国からの兵器供給停止により、前線の弾薬不足が深刻化。ロシア軍の夏季攻勢が予測される。

　・欧州の緊急対応

　3月3日のロンドンサミットで「欧州版軍支援基金」の創設が議論される見込み。

　中長期的課題

　・米欧関係の再定義：

　NATOの役割縮小が現実化。フランス主導の「欧州防衛イニシアチブ」が加速。

　・ウクライナの戦略転換

　ゼレンスキー政権が中国や中東諸国への接近を模索する可能性。

　まとめ

　米国の孤立主義的傾向と欧州の戦略的自立の模索、ウクライナを巡る地政学的なパワーゲームを描いたものである。現代の国際政治が抱える脆弱性(同盟関係の不安定性、大国の国内政治の外交影響等)を表現している。
　
【要点】
　
　1. ホワイトハウス会談の背景

　目的

　・トランプ政権：ウクライナに「ロシアとの即時停戦」と「領土譲歩」を要求。

　・ゼレンスキー政権：ロシア軍の完全撤退と「NATO加盟」を含む安全保障保証を要求。

　鉱物協定の提案

　・米国企業へのウクライナ産レアアース・リチウムの優先供給を条件に、和平仲介を提示。

　2. 会談中の具体的対立点

　トランプの発言

　・「第三次世界大戦を誘発する危険な賭け」と非難。

　・「合意なければ米国はNATOを含む全支援を停止」と最終通告。

　・「プーチンは約束を守ると私に伝えた」とロシアへの信頼を表明。

　ゼレンスキーの反論

　・「領土妥協は国民への裏切り」と拒絶。

　・「安全保障保証なしの和平はウクライナ消滅を意味する」と訴え。

　ヴァンス副大統領の介入

　・「1,200億ドル支援への感謝なし」と批判し、会談を打ち切りに導く。

　3. 米国内の反応

　(1)共和党の対応

　・ルビオ国務長官：ゼレンスキーに「謝罪要求」。

　・グラハム上院議員：ゼレンスキーの「辞任要求」を表明。

　・主流派：トランプの「米国第一」姿勢を支持。

　(2)民主党の批判

　・ペロシ議員：「トランプの態度は歴史的恥辱」と非難。

　・バイデン前大統領：「米国の国際的信頼を破壊」と声明。

　4. 欧州諸国の対応

　(1)連帯強化の動き

　・フランス・ドイツ：EU軍展開や「武器共同調達基金」を検討。

　・ポーランド・バルト三国：NATO早期配備増強を要請。

　(2)ハンガリーの孤立

　・オルバン首相：トランプを「平和の擁護者」と称賛し、EU内で批判を受ける。

　5. ロシアの戦略的優位化

　・軍事行動

　　ハルキフの医療施設をドローン攻撃し、民間人5名負傷。

　・情報戦

　　「米ウクライナ関係崩壊」をソーシャルメディアで拡散。

　・外交的アピール：

　　メドベージェフ：「トランプは現実主義者」と評価し、米露交渉を模索。

　6. 今後の見通し

　(1)短期的影響

　・ウクライナ戦線：米兵器供給停止で弾薬不足が深刻化。

　・欧州対応：ロンドンサミットで「欧州単独支援枠組」を協議。

　(2)中長期的課題

　・NATOの役縮小：フランス主導の「欧州防衛イニシアチブ」加速。
　　
　・ウクライナの戦略転換：中国・中東諸国への接近を模索。

　7. まとめ

　・米国の孤立主義が同盟関係を脆弱化させ、欧州の戦略的自立を促す構図。

　・大国の国内政治が国際安全保障に直接影響を与えるリスクを暗示。

【引用・参照・底本】

Meeting at white house ends in disagreement – as it happened The Guardian 2025.03.01
https://www.theguardian.com/world/live/2025/feb/28/volodymyr-zelenskyy-donald-trump-us-minerals-deal-russia-ukraine-live-news

【概要】
　
　2025年2月23日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、首都キーウで記者会見を行い、同国の平和が実現するか、北大西洋条約機構(NATO)への加盟が認められれば、大統領職を辞任する用意があると述べた。

　この発言は、トランプ米大統領から「選挙なしの独裁者」と非難されたことへの反論とみられる。

　ゼレンスキー氏は、権力に固執する意図はないと強調し、ウクライナの安全保障の確保に集中する姿勢を示した。

　一方、米国はウクライナの希少な鉱物資源の供与を要求しているが、ウクライナ側は、見返りとなる安全保障措置が合意に含まれていないとして反発している。

　ゼレンスキー氏は、米国との合意には軍事的保証が必要であり、双方にとって「ウィンウィン」の取引でなければならないと主張している。

　これらの状況を踏まえ、ゼレンスキー大統領は、ウクライナの平和と安全保障の実現に向けて、引き続き職務を遂行する意向を示している。

【詳細】

　2025年3月1日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、アメリカのリンゼー・グラム上院議員(共和党)からの辞任要求を拒否した。

　グラム議員は、ウクライナへの軍事支援を推進してきたタカ派として知られ、米ウクライナ間の会談後、ゼレンスキー大統領を批判し、辞任を要求した。

　これに対し、ゼレンスキー大統領は、グラム議員のこれまでの支援に感謝の意を示しつつも、辞任を拒否した。

　グラム議員は、ウクライナの地下資源を巡る取引の交渉を支援してきたが、全ての努力が無駄になったと述べ、米ウクライナ関係の修復は困難であるとの見解を示した。

　また、ゼレンスキー大統領は2月23日の記者会見で、ウクライナの平和が実現するのであれば、大統領職を辞任する用意があると述べ、NATO加盟と引き換えに辞任する意向を示した。

　さらに、ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官の解任を検討していることを認めたが、ザルジニー氏は国民からの信頼が高く、解任に対して国内から懸念の声が上がっている。

　これらの状況は、ウクライナの内政や外交に影響を及ぼす可能性があり、今後の展開が注目される。

【要点】
　
　1.ゼレンスキー大統領の辞任要求拒否

　・2025年3月1日、米上院議員リンゼー・グラムによる辞任要求を拒否。
　・グラム議員のウクライナ支援に感謝を示しつつも、職務続行の意向を表明。

　2.グラム議員の批判と辞任要求

　・ウクライナへの軍事支援を推進してきたタカ派。
　・米ウクライナ会談後、ゼレンスキー氏を批判し、辞任を要求。
　・ウクライナの地下資源取引交渉を支援したが、努力が無駄になったと発言。
　・米ウクライナ関係の修復は困難との見解を示す。

　3.ゼレンスキー氏の辞任に関する過去の発言

　・2月23日の記者会見で、ウクライナの平和やNATO加盟が実現すれば辞任の用意があると発言。
　・ただし、現在の状況では辞任せず、引き続き職務を遂行する姿勢。

　4.ウクライナ国内の情勢

　・ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍のザルジニー総司令官の解任を検討していると認める。
　・しかし、ザルジニー氏は国民の支持が高く、解任への反発が国内で広がる可能性。

　5.今後の展望

　・ウクライナの内政および米国との関係に影響を及ぼす可能性。
　・ゼレンスキー政権の安定性や、米国からの支援継続が注目される。

【引用・参照・底本】

ゼレンスキー氏、辞任の要求を拒否 sputnik日本 2025.03.01
https://sputniknews.jp/20250301/19614090.html

【概要】
　
　ロシアのミハイル・ノズドリェフ駐日大使は、日本政府が1月に発表した第25弾の対ロシア制裁について言及し、対抗措置を取る方針を示した。ノズドリェフ大使は、日ソ外交関係樹立100周年を踏まえて露日関係の現状を評価し、日本政府の対応を強く批判した。

　ノズドリェフ大使は、日本政府が発動した制裁について「不当なものであり、日本の反ロシア政策の継続を示すものだ」と指摘した。さらに、「米国の政権交代前夜に石破茂政権が下したこの措置は、日本政府の視野の狭さを露呈し、世界の地政学的プロセスに対する理解が極めて表面的であることを改めて証明した」と述べた。ただし、ロシア側は「公然と騒ぎ立てる」ことはせず、慎重にすべての措置を検証した上で対抗措置を継続する方針を示した。

　1925年1月20日、日本とソビエト連邦(ソ連)は外交の基本原則を定めた日ソ基本条約に署名し、同年2月にはソ連の全権代表が日本で活動を開始した。

【詳細】

　ロシアのミハイル・ノズドリェフ駐日大使は、日本政府が2025年1月に発表した第25弾の対ロシア制裁について言及し、日本の対応を厳しく批判するとともに、ロシア側として対抗措置を取る方針を示した。この発言は、日ソ外交関係樹立100周年の節目に行われたものであり、日本とロシアの関係が冷え込んでいる現状を改めて浮き彫りにした。

　ノズドリェフ大使の主張と批判

　ノズドリェフ大使は、日本政府の制裁措置について「不当なものであり、日本の反ロシア政策の継続を示すものだ」と強調した。特に、日本が制裁を発動したタイミングに着目し、「米国の政権交代前夜に石破茂政権が下したこの措置は、日本政府の視野の狭さを露呈し、世界の地政学的プロセスに対する理解が極めて表面的であることを改めて証明した」と指摘した。これは、日本がアメリカの対ロシア政策に追随する形で制裁を実施したものの、国際情勢の変化や今後の米ロ関係の動向を十分に考慮せずに決定を下したとする批判である。

　また、大使は「ロシア側は公然と騒ぎ立てることはしないが、すべての措置を慎重に検証し、それに基づいて対抗措置を継続する」と述べ、ロシア政府が冷静かつ計画的に日本への報復措置を取る姿勢を示した。これにより、日本の対ロ政策に対する圧力を強め、今後の日本の対応を牽制する狙いがあると考えられる。

　日本政府の対ロ制裁の背景

　日本政府は、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中で、欧米諸国と足並みを揃えながら段階的に対ロシア制裁を強化してきた。2022年以降、ロシアの金融機関や個人、企業に対する制裁が拡大され、2025年1月に発表された第25弾の制裁では、さらなる輸出規制や金融制裁が含まれていた可能性が高い。石破政権が発足後も対ロ強硬路線を維持し、今回の制裁措置を実施したことが、ロシア側の強い反発を招いたと考えられる。

　日ソ外交関係樹立100周年の意義

　1925年1月20日、日本とソビエト連邦(ソ連)は日ソ基本条約に署名し、正式に外交関係を樹立した。この条約は、日露戦争後に断絶していた両国の国交を正常化し、経済的・政治的な関係を構築する基盤となった。条約の締結を受けて、1925年2月にはソ連の全権代表が日本での活動を開始し、両国の公式な外交関係が動き出した。

　しかし、その後の歴史を振り返ると、日ソ関係は必ずしも安定していたわけではない。第二次世界大戦末期のソ連対日参戦、戦後の北方領土問題、冷戦期の対立など、長年にわたり緊張が続いてきた。1991年のソ連崩壊後、ロシア連邦と日本は関係改善を模索してきたものの、領土問題の解決は進まず、2022年のウクライナ戦争以降は日露関係が急速に悪化した。

　ロシアの対日政策と今後の展望

　ロシア側は、日本が制裁を強化するたびに対抗措置を発表しており、今回のノズドリェフ大使の発言もその流れの一環とみられる。ロシア政府は、日本に対して経済的・外交的圧力を強める可能性があり、具体的には以下のような措置が取られる可能性がある。

　・経済制裁の強化：日本企業に対する制限や、日本との貿易における障壁の強化
　・外交的対抗措置：日本との外交対話の制限や、ビザ発給の厳格化
　・軍事的圧力：北方領土周辺での軍事演習の強化や、日本の安全保障政策に対する牽制

　今後、日本が対ロ制裁をさらに強化する場合、ロシア側の対抗措置も厳しさを増すと考えられる。ロシアは現在、中国やインド、グローバル・サウス諸国との関係を重視しており、日本との関係悪化を補う形で外交戦略を進めている。このため、日本政府としては、今後のロシアの動向や国際情勢を慎重に分析しながら政策判断を行う必要がある。

　まとめ

　ノズドリェフ駐日大使の発言は、日本政府の制裁措置に対するロシアの強い不満を反映したものであり、今後の対抗措置を示唆するものであった。日ソ外交関係樹立100周年という歴史的な節目においても、日露関係の冷え込みが続いていることが浮き彫りになった。ロシアの対日政策は今後も厳しさを増すと予想され、日本政府は地政学的視点を持ちつつ慎重な対応を求められる局面にある。

【要点】
　
　ロシア駐日大使の発言と日本政府への批判

　・第25弾の対ロ制裁：日本政府が2025年1月に発表した新たな対ロ制裁について、ノズドリェフ駐日大使が強く批判。
　・視野の狭さを指摘：大使は「日本政府の視野の狭さと地政学的理解の浅さを証明するもの」と非難。
　・米政権交代との関係：制裁の発動が米国の政権交代直前であったことを問題視し、日本が米国の政策に盲目的に追随していると主張。
　・ロシアの対応：公然と騒ぎ立てることはしないが、制裁措置を慎重に検証し、適切な対抗措置を講じると警告。
　
　日本政府の対ロ制裁の背景

　・制裁の経緯：2022年以降、日本は欧米と協調し、ロシアの金融機関や企業、個人への制裁を段階的に拡大。
　・石破政権の方針：対ロ強硬姿勢を維持し、新たな制裁措置を発動。
　・ロシアの反発：日本の制裁強化に対し、ロシアは報復措置を強める構え。

　日ソ外交関係樹立100周年の意義

　・1925年の基本条約締結：日本とソ連が日ソ基本条約を締結し、正式な外交関係を樹立。
　・その後の関係：第二次大戦末期のソ連対日参戦、戦後の北方領土問題、冷戦期の対立など、緊張が続く。
　・2022年以降の悪化：ウクライナ戦争を機に日露関係が急速に冷え込み、現在も関係改善の見通しは立たず。

　ロシアの対日政策と今後の展望

　・経済制裁の強化：日本企業に対する制限や貿易障壁の強化。
　・外交的対抗措置：日本との外交対話の制限やビザ発給の厳格化。
　・軍事的圧力：北方領土周辺での軍事演習強化、日本の安全保障政策への牽制。
　・グローバル・サウス重視：日本との関係悪化を補うため、中国・インドなどとの協力を深化。

　まとめ

　・ノズドリェフ大使の発言：日本の制裁措置への強い不満を示し、対抗措置を取る方針を表明。
　・日露関係の悪化：日ソ外交関係樹立100周年にもかかわらず、関係悪化が続く。
　・日本の対応の必要性：ロシアの動向や国際情勢を慎重に分析し、長期的な戦略を考慮した政策判断が求められる。

【引用・参照・底本】

トランプ政権発足前夜に対露制裁を発動した日本政府、視野の狭さを自ら露呈＝駐日ロシア大使 sputnik日本 2025.02.28
https://sputniknews.jp/20250228/19612677.html