台湾:先進的な訓練機:T-5ブレイブ・イーグル2025年03月15日 15:15

Ainovaで作成
【概要】 

 台湾は、独自に生産する先進的な訓練機であるT-5ブレイブ・イーグルの納品遅れを解消するために、必要な重要部品の供給不足を克服したと、台湾の国防省が発表した。この訓練機は、F-16Vなどの先進的な戦闘機の操縦士訓練を強化する目的で、台湾の防衛計画の重要な要素となっている。しかし、過去1年間における輸入部品の不足により、2024年の納品スケジュールが遅れ、政府支援の航空産業開発株式会社(AIDC)は予定通りの納品ができなかったと国防省は述べている。

 AIDCは、本来47機を昨年末までに空軍に納品する予定だったが、実際には43機の納品にとどまり、4機の遅れが生じた。国防省は、輸入部品の納品遅延が原因であるとし、空軍は供給業者と積極的に調整を行い、納品を軌道に乗せるよう努めていると述べた。

 不足していた部品には、エンジン、環境制御システム、キャノピー爆発解放システム、着陸装置、油圧油タンク、車輪格納庫アクチュエーター、緊急ラムエア遮断バルブの7つが含まれていた。これらの不足に対処するため、国防省は、台湾の主要な武器開発機関である中華民国国防科技研究院(NCSIST)がAIDCと協力して、油圧油タンク、車輪格納庫ドアアクチュエーター、緊急ラムエア遮断バルブの3つの部品を国内で開発したことを発表した。この部品は、元々の海外製造業者からの認証を得て、輸入部品の一部を置き換えることができ、納品遅延の軽減に寄与したとされている。

 国防省はまた、AIDCが必要なすべてのシステム部品を海外の供給業者から受け取ったことを確認し、現在は組み立てとテストが進行中であり、遅延した納品は今月末までに完了する見込みであると伝えた。

 AIDCは、T-5ブレイブ・イーグル訓練機66機を製造する計画で、総予算はNT$68.6億(約20億米ドル)であり、2026年までに空軍に全機を納品する予定だ。この航空機は2020年に初飛行を行い、2021年に限定生産を開始し、2023年からは本格的な量産が始まった。また、先月には東部台湾で訓練飛行中にT-5の2座席型訓練機が墜落する事故が発生したが、これは2021年の運用開始以来初の事故である。

 T-5ブレイブ・イーグルは、台湾が30年以上前に開発した国産防衛戦闘機(IDF)を基にした第五世代の訓練機であり、AT-3訓練機や米製F-5訓練機の老朽化を補完することを目的としている。この機体は、F-16に似たアビオニクスを備えており、前線の戦闘機へのスムーズな移行を支援する。空対空及び空対地の戦闘訓練が可能であり、短い滑走路でも離着陸できる特徴を持っている。

 台湾は主に米国製の装備を頼りにしているが、政府は自国の先進的な防衛産業の構築を優先しており、特に中国が台湾を自国の領土と主張し、軍事的な近接行動を強化する中で、その重要性が増している。

【詳細】 

 台湾は、独自に開発した先進的な訓練機であるT-5ブレイブ・イーグルの製造において、重要な部品の供給不足を克服するために、国内での部品開発を進め、納品遅延を解消しようとしている。T-5ブレイブ・イーグルは、台湾空軍の訓練機として、主にF-16Vなどの先進戦闘機を運用するための操縦士を育成することを目的とした機体であり、台湾の防衛計画において重要な役割を担っている。

 訓練機の開発背景

 台湾は、China(中国)の軍事的脅威の高まりに対応するため、自国の防衛能力を強化している。その一環として、T-5ブレイブ・イーグルは、台湾の航空産業で開発された先進的な訓練機であり、特にF-16V戦闘機などの高性能機に搭乗するパイロットを育成する目的がある。この航空機は、台湾が独自に開発した国産防衛戦闘機(IDF)を基にした第五世代の訓練機であり、AT-3やF-5訓練機の老朽化に対処するために設計された。

 部品供給の遅れ

 しかし、T-5ブレイブ・イーグルの生産は、輸入部品の供給不足により遅延していた。AIDC(航空産業開発株式会社)は、2024年内に空軍に47機を納品する計画だったが、実際には43機のみ納品され、4機の遅れが生じた。その原因として、特に7つの重要な部品の供給が遅れたことが挙げられる。これらの部品は、エンジン、環境制御システム、キャノピー爆発解放システム、着陸装置、油圧油タンク、車輪格納庫アクチュエーター、緊急ラムエア遮断バルブの7つであり、いずれも訓練機の運用に欠かせない重要な部品である。

 国内での部品開発

 部品の供給不足に対応するため、台湾は国内で部品を開発する取り組みを進めた。具体的には、国防科技研究院(NCSIST)とAIDCが協力し、油圧油タンク、車輪格納庫ドアアクチュエーター、緊急ラムエア遮断バルブの3つの部品を国内で開発した。この取り組みにより、輸入部品の一部を置き換え、納品遅延を軽減することができた。これらの部品は、元々の外国製品と同様に、認証を受けたため、品質や安全性に問題はなく、納品の遅れを回避する助けとなった。

 予定される納品スケジュールと予算

 AIDCは、T-5ブレイブ・イーグルを66機製造する予定であり、その総予算はNT$68.6億(約20億米ドル)である。2026年までに全機が台湾空軍に納品される予定だ。T-5は2020年に初飛行を行い、2021年には限定生産を開始したが、2023年から本格的に量産が始まり、現在は安定した生産体制が整いつつある。量産の開始から少し遅れたものの、今後は納品が予定通り進む見込みである。

 機体の特徴と機能

 T-5ブレイブ・イーグルは、台湾が開発したIDF(Indigenous Defence Fighter)を基にした訓練機であり、F-16に似たアビオニクスを搭載している。そのため、F-16戦闘機に乗り換えるパイロットがスムーズに移行できるよう設計されている。T-5は、空対空および空対地の訓練が可能であり、短い滑走路での離着陸もできる。そのため、台湾の地理的な条件にも適した訓練機と言える。

 また、この機体は将来的には武装することも可能であり、戦時には支援機として使用されることも想定されている。しかし、現段階では武装の試験段階にあり、完全に実戦に投入できる状態ではない。なお、T-5の設計には、AT-3訓練機とF-5訓練機の機能を統合する意図もあり、これにより台湾空軍は、訓練の効率化を図ることができる。

 空軍の人員問題と訓練

 台湾空軍は、T-5ブレイブ・イーグルの導入により、訓練体制の改善を図っているが、同時に人員不足という課題にも直面している。空軍の職員比率は、訓練済みのパイロット1人に対して、3機の飛行機があるという状態であり、2人のパイロットを確保する必要があるという基準を下回っている。これは、台湾の少子化と軍事航空の訓練キャリアに対する需要の不足が影響している。

 この人員不足を解決するために、台湾空軍は積極的に訓練の効率化と人員確保を進めており、今後はより多くのパイロットを養成する計画が進行中である。しかし、訓練の進行には時間がかかるため、短期間で十分なパイロット数を確保するのは難しいという課題が残っている。

 結論

 T-5ブレイブ・イーグルの製造は、台湾の防衛能力向上に向けた重要な一歩であり、部品の国産化が進むことで、台湾の防衛産業の自立性が強化されることになる。納品遅延の克服は、台湾空軍の訓練環境の改善に貢献するとともに、台湾の防衛産業の技術力向上にも寄与することが期待されている。

【要点】

 1.T-5ブレイブ・イーグルの開発背景

 ・台湾空軍の訓練機として、F-16Vなどの高性能戦闘機の操縦士を育成する目的。
 ・台湾独自開発の訓練機であり、AT-3やF-5の老朽化を補う。

 2.部品供給の遅延

 ・輸入部品の供給不足で納品が遅延。
 ・遅延の原因は、エンジン、キャノピー爆発解放システム、油圧油タンクなど7つの部品に関わる。
 
 3.国内での部品開発

 ・国防科技研究院(NCSIST)とAIDCの協力により、国内開発で部品供給の遅延を克服。
 ・3つの部品(油圧油タンク、車輪格納庫アクチュエーター、緊急ラムエア遮断バルブ)を国内で開発。
 
 4.納品スケジュールと予算

 ・T-5は66機製造予定、総予算はNT$68.6億(約20億米ドル)。
 ・2024年内に47機を納品予定だが、43機のみ納品され、4機が遅延。

 5.T-5の特徴

 ・F-16V戦闘機の操縦士訓練に適した機体。
 ・空対空・空対地訓練が可能で、短い滑走路での離着陸も可能。
 ・将来的には武装可能な訓練機としても使用予定。

 6.台湾空軍の人員問題

 ・パイロット1人に対し3機の飛行機という人員不足。
 ・少子化と航空訓練キャリア不足が影響し、訓練効率化と人員確保が課題。

 7.結論

 ・T-5の開発と納品遅延の克服は、台湾空軍の訓練環境の改善と防衛産業の自立性強化に寄与。
 ・国内での部品開発成功は、防衛技術の向上にもつながる。

【引用・参照・底本】

Taiwan plugs imported parts gap in Brave Eagle military training jet production SCMP 2025.03.15
https://www.scmp.com/news/china/military/article/3302474/taiwan-plugs-imported-parts-gap-brave-eagle-military-training-jet-production?module=top_story&pgtype=homepage

コメント

トラックバック