対中批判:「G7内部の対立を解決するための万能薬ではない」 ― 2025年03月15日 15:23
【概要】
中国は、G7外相会議で行われた南シナ海および台湾海峡に関する中国の活動に対する批判を受けて、「傲慢で偏見に満ちた、悪意あるものだ」と非難した。カナダの中国大使館は、G7が中国を「公然と誹謗中傷し、内部問題に対して不当に干渉している」と述べ、G7の声明は「中国を抑圧し攻撃する意図を持ち、非常に傲慢で偏見に満ちている」と批判した。中国は、これに対して強く抗議し、カナダ側に正式に申し入れを行った。
G7は「海洋安全保障と繁栄」に関する声明の中で、中国の台湾海峡および南シナ海における行動を「違法で挑発的、強制的、危険なもの」とし、中国が「現状を一方的に変更し、地域の安定を危険にさらしている」と非難した。また、土地の埋め立てや前哨基地の建設を軍事目的で使用していることも指摘された。
声明の中では、台湾の「適切な国際組織への意味のある参加」を支持する旨が繰り返され、中国の主権を侵害するものであるとして強く反対する姿勢を示した。中国は、台湾の国際組織への参加は「一つの中国原則」に基づいてのみ処理されるべきだと主張している。
G7の声明は、過去の政策とは異なり、「一つの中国政策」に言及しなかったことが注目された。中国は台湾を自国の一部と見なしており、統一のために武力行使を放棄していない。
また、中国は南シナ海における政策を擁護し、フィリピンとの衝突が続く中で、G7に対して「冷戦的な思考を捨て、地域での対立を煽ることを止めるべきだ」と述べた。
さらに、G7は「ロシアの戦争を支える決定的な要因」として、中国がロシアに対して武器や二重用途の部品を提供していることにも懸念を表明した。加えて、中国の軍事力増強と急速な核兵器の増加についても言及し、「戦略的リスク削減のための議論」を呼びかけた。
中国はこれらの批判を否定し、G7は「ウクライナ問題において中国を非難する立場にはない」と強調した。また、中国は自国の核兵器庫について「国家安全保障のために必要な最小限のレベル」であるとし、核軍備競争に参加する意図はないと主張した。
G7の内部では貿易問題や安全保障問題で亀裂が見られ、特にドナルド・トランプ前大統領がウクライナ戦争に対する立場を変更したことが、欧州やアジアにおける中国との関係にどのような影響を及ぼすかについて議論を呼んでいる。
G7はまた、中国の「市場に基づかない政策や実践」による過剰生産能力や市場歪曲についても懸念を示し、輸出管理措置が供給網に大きな混乱を引き起こす可能性があるとして警告した。
中国はこれらの指摘に対し、G7が「経済や貿易問題を政治化し、武器化している」と反論し、G7メンバーは「国際経済秩序を損なうべきではない」と述べた。
【詳細】
中国は、2025年3月15日に発表されたG7外相会議の声明を受けて、強く反発した。G7は、南シナ海および台湾海峡での中国の行動について「違法で挑発的、強制的、危険なもの」と批判し、中国が地域の安定を脅かしていると非難した。この批判に対し、中国は、G7が自国を「傲慢で偏見に満ちた、悪意ある方法で誹謗中傷している」として、反論を表明した。
1. 南シナ海および台湾海峡に関するG7の批判
G7の声明では、中国の行動が「一方的に現状を変更し、地域の安定を脅かしている」と指摘された。具体的には、中国が南シナ海において土地を埋め立てたり、前哨基地を建設したり、これらを軍事目的で使用したりしていることが挙げられた。これにより、G7は中国が地域の平和と安定を損なっていると警告した。
また、G7は台湾海峡に関しても言及し、中国の軍事活動や挑発的な行動が、周辺地域に不安をもたらしていると非難した。これらの行動に対して、G7は「中国の行動は国際的な法と規範に違反しており、台湾問題についても一方的な変更を試みるものであり、国際社会の安定を損なう危険がある」と警告した。
2. 台湾の国際的な参加への支持
G7は、台湾が国際組織に「意味のある形で参加することを支持する」と表明した。これは、台湾が多くの国際機関に参加できるようにするべきだという立場を示している。ただし、中国はこれに対し、台湾の国際組織への参加は「一つの中国原則」に従って処理されるべきだと強調し、G7の立場を強く反対した。
中国政府は、台湾は自国の一部であり、台湾問題については外国が干渉することを許さないとし、台湾の参加に関する議論が一つの中国政策に従うべきであることを繰り返し主張した。G7の声明において、「一つの中国政策」に触れられなかった点が、過去の声明と異なるとして、特に中国はこれに不満を示した。
3. 南シナ海における中国の立場
中国は、南シナ海での政策を擁護し、特にフィリピンとの間で起きた衝突を指摘されているが、その立場を強調した。中国は、G7に対して「冷戦思考を捨て、地域の対立を煽らないようにすべきだ」と述べた。中国は、南シナ海における領有権問題に関して、他国の干渉を拒絶し、自己の主権を強調した。
中国の主張によれば、南シナ海は自国の歴史的権益であり、他国の介入や領有権主張は受け入れられないという立場だ。これにより、G7の批判は中国にとって「不当であり、国際的な正義に基づくものではない」と主張した。
4. ロシアへの支援と核兵器問題
G7は、中国がロシアに対して武器や二重用途の部品を提供していることを指摘し、それがロシアのウクライナ侵攻を支えていると非難した。また、中国の軍事力、特に核兵器の増加について懸念を示し、戦略的リスク削減の議論が必要だと訴えた。
中国はこれらの指摘に対して強く反論した。中国大使館は、G7の非難を受けて「中国はウクライナ問題における当事者ではなく、武器提供を行ったこともない」と明言した。さらに、中国は自国の核兵器について、「国家安全保障に必要な最小限度であり、核軍拡競争には参加しない」と主張した。中国は、G7の核兵器問題に関する言及を「不合理な非難」として退け、他国の核兵器管理に関して指摘される立場ではないと反論した。
5. 貿易と経済問題
G7は、最近の中国の貿易政策についても批判した。中国の「非市場的な政策と実践」が過剰な生産能力を生み出し、市場に歪みをもたらしているとして、これを改善するよう呼びかけた。特に、電気自動車産業に対する補助金が西洋の製造業に悪影響を与えているという指摘もあった。
中国はこれに対して、G7が中国の貿易政策を「政治化し、武器化している」として反論した。中国は、G7メンバーが経済的優位を保つために中国を標的にしているとし、これが国際経済秩序に対する不当な干渉であると訴えた。
6. G7内部の対立
G7内部では、トランプ前大統領の影響を受けて、ウクライナ戦争に対する立場や貿易問題で意見が分かれている。トランプ氏が示した姿勢が、欧州やアジアにおける中国との関係にどのような影響を与えるかについての議論が続いている。しかし、G7は中国に対しては一貫して批判的な立場を維持しており、声明を通じて中国に対する強硬な姿勢を示し続けている。
中国は、G7の対中批判が「G7内部の対立を解決するための万能薬ではない」として、グループの内部不一致を指摘した。
【要点】
・G7の批判
G7外相は、中国の行動を「違法で挑発的、強制的、危険なもの」とし、南シナ海や台湾海峡での行動を非難。
・南シナ海・台湾海峡について
G7は、中国が現状変更を試み、地域の安定を脅かしていると警告。中国はこれに反発し、自己の主権を強調。
・台湾の国際的参加
G7は台湾の国際組織への参加を支持、中国は台湾は一つの中国政策に基づいて扱うべきだと反論。
・南シナ海における中国の立場
中国は南シナ海の領有権を主張し、他国の介入を拒否。G7に対して冷戦思考を捨てるよう訴える。
・ロシアへの支援と核兵器問題
G7は中国がロシアに武器提供していると非難、中国はこれを否定し、核兵器については最小限に留めると主張。
・貿易と経済問題
G7は中国の非市場的な貿易政策を批判、中国はこれを政治化していると反論。
・G7内部の対立
G7は対中批判で一貫した姿勢を維持しつつ、内部で意見の違いがあることを中国は指摘。
【引用・参照・底本】
Beijing hits out at ‘arrogant and malicious’ G7 criticisms over South China Sea and Taiwan SCMP 2025.03.15
https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3302504/beijing-hits-out-arrogant-and-malicious-g7-criticisms-over-south-china-sea-and-taiwan?module=top_story&pgtype=homepage
中国は、G7外相会議で行われた南シナ海および台湾海峡に関する中国の活動に対する批判を受けて、「傲慢で偏見に満ちた、悪意あるものだ」と非難した。カナダの中国大使館は、G7が中国を「公然と誹謗中傷し、内部問題に対して不当に干渉している」と述べ、G7の声明は「中国を抑圧し攻撃する意図を持ち、非常に傲慢で偏見に満ちている」と批判した。中国は、これに対して強く抗議し、カナダ側に正式に申し入れを行った。
G7は「海洋安全保障と繁栄」に関する声明の中で、中国の台湾海峡および南シナ海における行動を「違法で挑発的、強制的、危険なもの」とし、中国が「現状を一方的に変更し、地域の安定を危険にさらしている」と非難した。また、土地の埋め立てや前哨基地の建設を軍事目的で使用していることも指摘された。
声明の中では、台湾の「適切な国際組織への意味のある参加」を支持する旨が繰り返され、中国の主権を侵害するものであるとして強く反対する姿勢を示した。中国は、台湾の国際組織への参加は「一つの中国原則」に基づいてのみ処理されるべきだと主張している。
G7の声明は、過去の政策とは異なり、「一つの中国政策」に言及しなかったことが注目された。中国は台湾を自国の一部と見なしており、統一のために武力行使を放棄していない。
また、中国は南シナ海における政策を擁護し、フィリピンとの衝突が続く中で、G7に対して「冷戦的な思考を捨て、地域での対立を煽ることを止めるべきだ」と述べた。
さらに、G7は「ロシアの戦争を支える決定的な要因」として、中国がロシアに対して武器や二重用途の部品を提供していることにも懸念を表明した。加えて、中国の軍事力増強と急速な核兵器の増加についても言及し、「戦略的リスク削減のための議論」を呼びかけた。
中国はこれらの批判を否定し、G7は「ウクライナ問題において中国を非難する立場にはない」と強調した。また、中国は自国の核兵器庫について「国家安全保障のために必要な最小限のレベル」であるとし、核軍備競争に参加する意図はないと主張した。
G7の内部では貿易問題や安全保障問題で亀裂が見られ、特にドナルド・トランプ前大統領がウクライナ戦争に対する立場を変更したことが、欧州やアジアにおける中国との関係にどのような影響を及ぼすかについて議論を呼んでいる。
G7はまた、中国の「市場に基づかない政策や実践」による過剰生産能力や市場歪曲についても懸念を示し、輸出管理措置が供給網に大きな混乱を引き起こす可能性があるとして警告した。
中国はこれらの指摘に対し、G7が「経済や貿易問題を政治化し、武器化している」と反論し、G7メンバーは「国際経済秩序を損なうべきではない」と述べた。
【詳細】
中国は、2025年3月15日に発表されたG7外相会議の声明を受けて、強く反発した。G7は、南シナ海および台湾海峡での中国の行動について「違法で挑発的、強制的、危険なもの」と批判し、中国が地域の安定を脅かしていると非難した。この批判に対し、中国は、G7が自国を「傲慢で偏見に満ちた、悪意ある方法で誹謗中傷している」として、反論を表明した。
1. 南シナ海および台湾海峡に関するG7の批判
G7の声明では、中国の行動が「一方的に現状を変更し、地域の安定を脅かしている」と指摘された。具体的には、中国が南シナ海において土地を埋め立てたり、前哨基地を建設したり、これらを軍事目的で使用したりしていることが挙げられた。これにより、G7は中国が地域の平和と安定を損なっていると警告した。
また、G7は台湾海峡に関しても言及し、中国の軍事活動や挑発的な行動が、周辺地域に不安をもたらしていると非難した。これらの行動に対して、G7は「中国の行動は国際的な法と規範に違反しており、台湾問題についても一方的な変更を試みるものであり、国際社会の安定を損なう危険がある」と警告した。
2. 台湾の国際的な参加への支持
G7は、台湾が国際組織に「意味のある形で参加することを支持する」と表明した。これは、台湾が多くの国際機関に参加できるようにするべきだという立場を示している。ただし、中国はこれに対し、台湾の国際組織への参加は「一つの中国原則」に従って処理されるべきだと強調し、G7の立場を強く反対した。
中国政府は、台湾は自国の一部であり、台湾問題については外国が干渉することを許さないとし、台湾の参加に関する議論が一つの中国政策に従うべきであることを繰り返し主張した。G7の声明において、「一つの中国政策」に触れられなかった点が、過去の声明と異なるとして、特に中国はこれに不満を示した。
3. 南シナ海における中国の立場
中国は、南シナ海での政策を擁護し、特にフィリピンとの間で起きた衝突を指摘されているが、その立場を強調した。中国は、G7に対して「冷戦思考を捨て、地域の対立を煽らないようにすべきだ」と述べた。中国は、南シナ海における領有権問題に関して、他国の干渉を拒絶し、自己の主権を強調した。
中国の主張によれば、南シナ海は自国の歴史的権益であり、他国の介入や領有権主張は受け入れられないという立場だ。これにより、G7の批判は中国にとって「不当であり、国際的な正義に基づくものではない」と主張した。
4. ロシアへの支援と核兵器問題
G7は、中国がロシアに対して武器や二重用途の部品を提供していることを指摘し、それがロシアのウクライナ侵攻を支えていると非難した。また、中国の軍事力、特に核兵器の増加について懸念を示し、戦略的リスク削減の議論が必要だと訴えた。
中国はこれらの指摘に対して強く反論した。中国大使館は、G7の非難を受けて「中国はウクライナ問題における当事者ではなく、武器提供を行ったこともない」と明言した。さらに、中国は自国の核兵器について、「国家安全保障に必要な最小限度であり、核軍拡競争には参加しない」と主張した。中国は、G7の核兵器問題に関する言及を「不合理な非難」として退け、他国の核兵器管理に関して指摘される立場ではないと反論した。
5. 貿易と経済問題
G7は、最近の中国の貿易政策についても批判した。中国の「非市場的な政策と実践」が過剰な生産能力を生み出し、市場に歪みをもたらしているとして、これを改善するよう呼びかけた。特に、電気自動車産業に対する補助金が西洋の製造業に悪影響を与えているという指摘もあった。
中国はこれに対して、G7が中国の貿易政策を「政治化し、武器化している」として反論した。中国は、G7メンバーが経済的優位を保つために中国を標的にしているとし、これが国際経済秩序に対する不当な干渉であると訴えた。
6. G7内部の対立
G7内部では、トランプ前大統領の影響を受けて、ウクライナ戦争に対する立場や貿易問題で意見が分かれている。トランプ氏が示した姿勢が、欧州やアジアにおける中国との関係にどのような影響を与えるかについての議論が続いている。しかし、G7は中国に対しては一貫して批判的な立場を維持しており、声明を通じて中国に対する強硬な姿勢を示し続けている。
中国は、G7の対中批判が「G7内部の対立を解決するための万能薬ではない」として、グループの内部不一致を指摘した。
【要点】
・G7の批判
G7外相は、中国の行動を「違法で挑発的、強制的、危険なもの」とし、南シナ海や台湾海峡での行動を非難。
・南シナ海・台湾海峡について
G7は、中国が現状変更を試み、地域の安定を脅かしていると警告。中国はこれに反発し、自己の主権を強調。
・台湾の国際的参加
G7は台湾の国際組織への参加を支持、中国は台湾は一つの中国政策に基づいて扱うべきだと反論。
・南シナ海における中国の立場
中国は南シナ海の領有権を主張し、他国の介入を拒否。G7に対して冷戦思考を捨てるよう訴える。
・ロシアへの支援と核兵器問題
G7は中国がロシアに武器提供していると非難、中国はこれを否定し、核兵器については最小限に留めると主張。
・貿易と経済問題
G7は中国の非市場的な貿易政策を批判、中国はこれを政治化していると反論。
・G7内部の対立
G7は対中批判で一貫した姿勢を維持しつつ、内部で意見の違いがあることを中国は指摘。
【引用・参照・底本】
Beijing hits out at ‘arrogant and malicious’ G7 criticisms over South China Sea and Taiwan SCMP 2025.03.15
https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3302504/beijing-hits-out-arrogant-and-malicious-g7-criticisms-over-south-china-sea-and-taiwan?module=top_story&pgtype=homepage