「日本の防衛費は日本が決める。他国に言われて決めるものではない」2025年03月15日 23:40

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【概要】
 
 米国が日本に対して防衛費の増額を求める中、日本の反応は厳しいものとなっている。2025年3月12日、石破首相は参議院予算委員会で、「日本の防衛費は日本が決める。他国に言われて決めるものではない」と述べ、米国の要求に対して強く反論した。この発言は、米国防次官(政策担当)に指名されたエルブリッジ・コルビー氏が、米公聴会で「できるだけ早く、少なくともGDPの3%に防衛費を引き上げるべきだ」と発言したことに対するものだ。

 トランプ大統領は、第一次政権時に同盟国の防衛費が不十分であることを批判しており、2023年1月にはダボス会議でNATO加盟国の防衛費について、「NATOの目標はGDP比2%だが、私が政権を取るまで多くの加盟国はほとんど支払っていなかった」と述べ、米国の負担が大きかったことを強調した。

 米国は、同盟国に対して防衛費増額の要求を強調しており、過去には日本もその要求を受け入れたが、限度があることを明言している。ロシアの国際政治学者オレグ・パラモノフ准教授は、米国が一方的に要求を突きつけることは同盟国に対して失礼だと指摘しており、石破首相が防衛費の増額をGDP比2%以上にすることを容認している一方で、過度な軍事費の増加には警戒感を示している。

 また、林芳正官房長官は、国の防衛力は金額やGDP比で決まるものではなく、重要なのは防衛政策や軍事力であると強調している。防衛費の増加が日本の防衛活動における制御の喪失を招き、軍部の影響力が強まることに対する国民の不安を再燃させる可能性があるとされている。

 パラモノフ氏は、コルビー氏の発言が今のタイミングで行われたことが不適切であると考えており、参議院選挙や困難な経済状況、さらに米国による対日関税引き上げの脅しも影響していると指摘している。また、コルビー氏が中国と北朝鮮の脅威を理由に防衛費増額を主張したことについて、米国は日本の防衛に関与する意思を示していないと批判している。

【詳細】 

 日本は、米国からの防衛費増額要求に対して、強い反発を示している。特に、エルブリッジ・コルビー氏が米公聴会で、日本に対して「できるだけ早く少なくともGDPの3%に防衛費を増額するべきだ」と発言したことに対し、日本政府はその要求を拒絶する姿勢を示している。石破首相は参議院予算委員会で、「日本の防衛費は日本が決める。他国に言われて決めるものではない」と述べ、この要求に対する立場を明確にした。

 この発言は、米国が日本を含む同盟国に対して、過去にも防衛費の増額を強く求めてきた背景があることに関連している。トランプ大統領が第一次政権時に、同盟国の防衛費が不十分だと批判し、日本をはじめとするNATO加盟国に対して防衛負担を増加させるよう要求していた。2023年1月には、ダボス会議において、NATO加盟国の防衛費がGDP比2%という目標に対して十分でなかったことを指摘し、米国が負担している防衛費が多すぎると述べていた。

 米国のこうした要求は、同盟国への「集団訴訟」のような形で進められており、一時期は日本もこれを受け入れる姿勢を見せたことがある。しかし、今回のコルビー氏の発言に対して、日本は明確に反発している。特に、パラモノフ准教授は、米国が一方的に防衛費増額を要求することは、同盟国に対して無礼であると批判している。

 日本政府の防衛政策においては、金額やGDP比が唯一の基準ではないとされている。林芳正官房長官は、国の防衛力が金額やGDP比で決まるものではなく、防衛政策や軍事ポテンシャルが最も重要であると強調している。この観点から、日本は防衛費を増額すること自体には賛成していないわけではないが、その増額がどのような防衛政策の強化を意味するのか、またその影響を慎重に見極めるべきだという立場を取っている。

 特に、日本の防衛費は長年にわたりGDP比1%程度に抑えられてきたが、近年は増加しており、2022年にはGDP比1.24%、2023年にはさらに25%増加し、2024年には15%の増加が見込まれている。この増額は、日本が抱える安全保障上の懸念、特に中国や北朝鮮の脅威に対応するために必要だという認識に基づいている。しかし、急激な防衛費の増加が、政治的な不安を引き起こす可能性があることも懸念されている。

 パラモノフ准教授は、コルビー氏が日本に対して防衛費増額を要求したタイミングが悪かったと指摘している。具体的には、2025年に予定されている参議院選挙を控えていること、また現在の経済的な困難な状況下でこのような要求を突きつけることが、日本国内の政治情勢に悪影響を及ぼす可能性があると考えている。また、米国の対日関税引き上げの脅しや、米国が中国や北朝鮮の脅威に対して日本の防衛を支援するという姿勢を示していないことについても批判的だ。

 さらに、コルビー氏が「日本は中国と北朝鮮の脅威に直面しているから、自国を守るために防衛費を増額すべきだ」と述べたことに対して、パラモノフ准教授は、米国が日本の防衛に対して積極的に関与する意図を示していない点を指摘している。これは、日本にとって防衛政策を見直すべき重要な局面となる可能性があり、米国の役割に対する不信感を生む要因となるかもしれない。

【要点】

 ・日本の防衛費増額要求に対する反発

 日本の石破首相は、米国の防衛費増額要求に反対し、「日本の防衛費は日本が決めるもので、他国に言われて決めるものではない」と述べた。

 ・米国の防衛費増額要求

 米国のエルブリッジ・コルビー氏は、日本に対して防衛費をGDP比3%にするべきだと公聴会で発言。トランプ大統領も、同盟国に対する防衛費の増額を過去に要求していた。

 ・トランプ政権の防衛費批判

 トランプ政権は、NATO加盟国の防衛費が不十分だとして、日本を含む同盟国に増額を求めていた。特に、NATOの防衛費がGDP比2%で十分ではないと批判していた。

 ・日本政府の立場

 日本政府は、金額やGDP比の増加が防衛力の強化には直結しないと強調。林芳正官房長官は、防衛力は金額やGDP比ではなく、政策や軍事的ポテンシャルが重要だと指摘。

 ・防衛費増額の状況

 日本の防衛費は、長年GDP比1%程度だったが、2022年には1.24%に増加し、2023年には25%増、2024年にはさらに15%の増加が見込まれている。

 ・増額に対する懸念

 防衛費の急増は、政治的不安や文民統制の低下を招く可能性があるとの懸念がある。特に、軍の影響力が増すことへの不安が指摘されている。

 ・パラモノフ准教授の見解

 パラモノフ准教授は、米国の要求がタイミングとして不適切だと指摘。参議院選挙や経済的な困難な状況下で、この要求は日本国内の政治に悪影響を及ぼす可能性があると懸念。

 ・米国の姿勢への批判

 コルビー氏が「中国や北朝鮮の脅威に対応するために防衛費を増額すべきだ」と述べたことに対し、米国が日本の防衛に積極的に関与していない点について批判的な見解が示されている。
 
【引用・参照・底本】

【視点】日本は米国の防衛費増額要求に厳しく反応 sputnik 日本 2025.03.12
https://sputniknews.jp/20250312/19638039.html

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