米海軍:F-16戦闘機にAGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)2025年03月19日 22:57

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【概要】 
 
 アメリカ軍は、太平洋地域での中国との潜在的な戦争に備えて、長距離対艦ミサイルを戦闘機に統合し、空中攻撃能力を強化する計画である。アメリカの防衛ニュースサイト『The War Zone』が報じたところによると、アメリカ海軍はF-16戦闘機にAGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)のバリアントを統合するための契約交渉を進めている。

 アメリカ海軍航空システム司令部(NAVAIR)がオンラインで公開した契約通知によると、ロッキード・マーティン社とのコストプラス固定料金の納入契約が結ばれる予定であり、この契約はF-16プラットフォームへのAGM-158C-1ミサイルの統合とテスト支援を目的としている。AGM-158C-1は、ロッキード・マーティン社が開発したAGM-158空対地スタンドオフミサイルの一部であり、LRASMの主力バージョンである。

 LRASMは、航続距離322kmを誇るステルスミサイルで、急な脅威に応じて自動的にコースを変更する能力や、目標をより正確に追尾するための電子支援装置を搭載している。F-16にLRASMを統合することで、アメリカ空軍の対艦能力は強化されると見込まれている。現在、F-16はAGM-84ハープーンミサイルを使用しており、その運用距離は約120kmであるが、LRASMの統合により、より長距離の対艦攻撃能力を得ることができる。

【詳細】 
 
 アメリカ軍は、太平洋地域での潜在的な中国との紛争に備え、戦闘機に長距離対艦ミサイルを統合することを計画している。この計画は、アメリカ海軍がF-16戦闘機にAGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)を搭載するための契約交渉を進めていることに基づいている。報道によると、このミサイルの統合は、アメリカ空軍の対艦攻撃能力を大きく強化することを目的としている。

 AGM-158C LRASMとは

 AGM-158C LRASMは、ロッキード・マーティン社が開発したステルス型の対艦ミサイルで、航続距離は最大322km(約200マイル)に達する。このミサイルは、従来の対艦ミサイルよりも優れた精度と柔軟性を持ち、近年の戦闘環境において重要な役割を果たすと期待されている。

 LRASMの特徴的な点は、次のような技術的な利点を持つ点である:

 自律的な航路計画:LRASMは、目標に到達するために最適なルートを自動で選択する能力を持ち、これは特に敵の防空網や妨害行為を突破するために重要である。
電子支援システム:ミサイルは高度な電子支援機器を搭載しており、これにより敵の妨害を受けてもミサイルのコースを修正し、目標を確実に追尾することができる。
目標追尾能力:LRASMは、目標の放射するラジオ周波数(RF)を検出して追尾する能力を持ち、従来のミサイルよりも高精度で目標に接近することができる。

 F-16への統合

 F-16戦闘機へのLRASMの統合は、アメリカ空軍における対艦攻撃能力の強化を意味する。現在、F-16は主にAGM-84ハープーンミサイルを使用しており、このミサイルは最大航続距離が約120km(75マイル)である。しかし、LRASMはその航続距離がはるかに長く、322kmに達するため、より遠距離からの攻撃が可能になる。このような長距離攻撃能力は、敵艦船に対する抑止力を高め、戦争の初期段階での海上作戦の優位性を確保するために非常に重要である。

 NAVAIRの契約通知

 アメリカ海軍航空システム司令部(NAVAIR)は、2025年3月にオンラインで契約通知を発表し、ロッキード・マーティン社と交渉を開始することを示した。この契約は、F-16戦闘機にLRASMを統合するための準備作業として、ミサイルの試験と統合支援が行われることを目的としている。具体的には、ロッキード・マーティン社がF-16プラットフォームにLRASMを統合し、各種テストを実施する予定であり、この作業は将来的な納品契約に繋がることが予想される。

 空軍の対艦能力の向上

 F-16にLRASMを搭載することで、アメリカ空軍は対艦攻撃能力を大幅に向上させることができる。現行のF-16は対艦ミサイルとしてAGM-84ハープーンを使用しているが、その運用距離が短いため、敵艦船に接近するリスクが高くなる可能性がある。しかし、LRASMの統合により、空軍は遠距離から安全に攻撃を行うことができるようになり、戦闘機の対艦ミサイル能力が劇的に強化される。

 このミサイルの統合は、特にアジア太平洋地域での軍事的緊張が高まる中で、アメリカの海上作戦における抑止力を向上させることを目的としている。中国との対立が続く中で、アメリカはその軍事能力を強化し、特に海上戦力における優位性を維持するために、新たな技術を導入している。F-16にLRASMを搭載することは、アメリカ軍の海上攻撃能力を飛躍的に向上させるステップであり、潜在的な戦争の際には重要な役割を果たすと考えられている。

【要点】

 米軍のF-16へのLRASM統合について

 概要

 ・米軍は、太平洋地域での中国との潜在的な紛争に備え、F-16戦闘機に**AGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)**を統合する計画を進めている。
 ・これにより、空軍の対艦攻撃能力が大幅に強化される見込み。

 AGM-158C LRASMの特徴

 ・長距離攻撃能力:最大航続距離322km(約200マイル)で、従来のAGM-84ハープーン(約120km)を大きく上回る。
 ・自律航路計画:敵の防空網や妨害を避けるため、自動で最適なルートを選択。
 ・電子支援システム:敵の妨害を受けてもコース修正可能。
 ・高度な目標追尾:ラジオ周波数(RF)を検出し、正確に目標を追尾。

 F-16への統合の意義

 ・現在F-16が運用するAGM-84ハープーン(航続距離約120km)より大幅に射程が伸び、リスクが低減。
 ・遠距離攻撃が可能になり、敵艦隊への抑止力が向上。
 ・ステルス性能を活かし、敵の防空網を突破しやすくなる。

 契約と計画の進展

 ・2025年3月、米海軍航空システム司令部(NAVAIR)がロッキード・マーティン社と契約交渉を開始。
 ・F-16プラットフォームへの統合テストを実施し、その後の本格運用につなげる予定。

 戦略的影響

 ・アジア太平洋地域での海上戦力の優位性を維持。
 ・中国海軍への対抗能力を強化し、軍事的抑止力を向上。
 ・米空軍の戦力が海軍と連携し、より柔軟な作戦展開が可能に。

 この計画は、アメリカ軍の対艦攻撃能力を飛躍的に向上させ、アジア太平洋地域での作戦遂行能力を強化する重要なステップである。

【引用・参照・底本】

US Navy to extend Pacific reach with long-range anti-ship F-16 stealth missiles: report SCMP 2025.03.19
https://www.scmp.com/news/china/military/article/3303002/us-navy-extend-pacific-reach-long-range-anti-ship-f-16-stealth-missiles-report?module=top_story&pgtype=homepage

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