フランスの科学者:米国への入国を拒否された事件2025年03月21日 21:54

Microsoft Designerで作成
【概要】 
 
 フランスの科学者が米国への入国を拒否された事件について、フランス政府は強い不満を表明した。この科学者は、トランプ政権とその科学研究政策に対する個人的な意見を含むテキストメッセージを携帯電話に保存していたことが理由で、米国の入国審査で発見され、入国を拒否された。

 フランス外務省はこの事件を受け、フランス領事館が情報を受け取ったことを報告し、その状況に「遺憾の意」を表明した。しかし、米国政府は領土への入国を決定する権利を有していることも認めた。

 フランスの高等教育・研究大臣フィリップ・バティスト氏は、フランス国立科学研究センター(CNRS)で働く宇宙研究者が、ヒューストンでの会議に向かう途中に米国の空港でランダムチェックを受け、携帯電話に保存されていたテキストメッセージが原因で追い返されたことを知り、バティスト大臣は懸念を示した。大臣によれば、このメッセージはトランプ政権の研究政策に対する批判を含むものであり、米国当局はその内容を「トランプへの憎悪」と見なし、テロ行為と見なす可能性があるとした。

 米国政府は、入国管理官がセキュリティチェックの一環として電子機器を調査する権限を持っていると主張している。このようなワーニングなしの検索に対し、米国の市民自由団体であるACLU(アメリカ市民自由連合)は2017年に訴訟を起こし、これが違憲であると主張した。しかし、連邦裁判所はこの訴えを認めたが、控訴審で覆され、最終的に米国最高裁判所に案件が持ち込まれる可能性がある。

 バティスト大臣は、この事件を「自由な意見、自由な研究、学問の自由を守る」ために引き続き努力すると述べ、すべてのフランスの研究者がこれらの価値観を守る権利があると強調した。

 トランプ政権下での米国の科学予算削減に対する批判を続けてきたバティスト大臣は、アメリカの研究者が米国を離れることを決断した場合、フランスがその受け入れを行う意向を示している。南フランスのエクス=マルセイユ大学は、気候変動に関する研究を行っている米国の研究者を迎えるための特別プログラムを開始した。

 バティスト大臣は、米国の研究環境が不安定であることを受けて、フランスはこれらの研究者を受け入れる準備が整っていることを強調している。また、彼は米国の研究者に対して、フランスでの学問の自由と革新を支援する環境での研究継続を提案している。

 この件について、米国の調査が行われたものの、最終的にはその研究者に対する起訴は取り下げられ、フランスに帰国することとなった。

【詳細】 

 フランスの科学者が米国への入国を拒否された事件は、トランプ政権下の科学政策に対する批判的な意見が引き金となった。事件は、2025年3月9日に起こり、フランスの研究者がヒューストンで開催される学会に参加するため、米国に向かう途中で発生した。この科学者はフランス国立科学研究センター(CNRS)に所属しており、米国の空港でランダムチェックを受けた際、携帯電話に保存されていたテキストメッセージが問題となった。

 メッセージには、米国のトランプ政権の科学研究政策に対する個人的な批判が含まれていた。このため、米国当局はそのメッセージを「トランプへの憎悪」や「テロ行為に関連する可能性がある」と見なしたとされる。その結果、このフランスの研究者は米国への入国を拒否され、強制的に帰国のための便に乗せられた。アメリカ合衆国政府は、入国審査官がセキュリティチェックの一環として電子機器を調査する権限を持つと主張しており、その行為は合法だとしている。しかし、このような電子機器の調査に対しては、過去に市民権団体であるアメリカ市民自由連合(ACLU)が訴訟を起こしており、無令状での検索が憲法違反であると主張した。この訴訟は、連邦裁判所でACLUが勝訴したものの、控訴審で覆され、最終的には最高裁判所に持ち込まれる可能性があるとされている。

 フランス政府はこの事件に対し、強い抗議の意を表明した。フランス外務省は、フランス領事館がこの件を受けて情報を提供し、その状況を「遺憾」としていると述べた。しかし、米国は領土への入国を許可するかどうかを決定する「主権的な」権利があるとも認めている。

 フランスの高等教育・研究大臣であるフィリップ・バティスト氏は、フランスの科学者が自由に意見を表現し、学問の自由を享受する権利を守ることの重要性を強調した。彼は、このような出来事が学問の自由や自由な意見表明に対する攻撃であるとし、「自由な意見、自由な研究、学問の自由は、フランスが引き続き誇りを持って守るべき価値である」と述べた。また、フランスの研究者がこの価値観を守るために権利を行使することを支持すると表明した。

 バティスト大臣は、トランプ政権が科学予算の大幅な削減を行ったことに強く反対し、これがアメリカ国内の科学者たちに大きな影響を与えていると指摘した。特に、健康、気候変動、再生可能エネルギー、人工知能などの分野で多くの専門家が職を失い、その結果、アメリカの研究環境は深刻な危機に直面していると述べた。このような状況により、多くのアメリカの科学者がフランスを含む他国に移住することを考え始めているとバティスト氏は言及した。

 フランス政府は、アメリカの研究者を迎え入れる準備が整っており、特に気候変動に関する研究を行っている研究者を対象とした特別プログラムを開始している。南フランスのエクス=マルセイユ大学は、トランプ政権の政策により米国で困難を感じている研究者を受け入れるための特別プログラムを設立し、学問の自由と革新を支援する環境を提供するとしている。このプログラムは、米国で研究の自由が制限されたり、科学的な環境が不安定になったりしていると感じる研究者を対象にしており、フランスがその受け入れを積極的に行っていることを示している。

 バティスト大臣はまた、米国の研究環境が危機的であることを強調し、米国の科学者たちに対してフランスの受け入れプログラムを利用するよう呼びかけた。このような行動は、トランプ政権による科学予算の削減や研究環境の悪化に対するフランス政府の対応を示すものであり、フランスが引き続き国際的な科学の拠点であり続ける意志を示している。

【要点】

 ・事件の概要: フランスの科学者が2025年3月9日に米国に入国する際、トランプ政権に対する批判的なテキストメッセージが原因で入国を拒否され、強制的にフランスに帰国させられた。
 ・批判の内容: 科学者の携帯電話には、トランプ政権の科学政策に対する批判的な個人的意見が含まれており、米国当局はこれを「トランプへの憎悪」や「テロ行為と関連付けられる可能性がある」と見なした。
 ・米国の主張: 米国政府は、入国審査官がセキュリティチェックの一環として電子機器を調査する権限を有すると主張しており、これを合法としている。
 ・フランス政府の反応: フランス外務省はこの事件を「遺憾」と表明し、米国の主権として誰を受け入れるかを決定する権利を認めつつも、自由な意見と学問の自由の重要性を強調。
 ・バティスト大臣の発言: フランスの高等教育・研究大臣フィリップ・バティストは、学問の自由と意見表明の自由を守る重要性を強調し、フランスの科学者がこれらの価値を守る権利を支持すると発言。
 ・米国の研究環境への批判: バティスト大臣は、トランプ政権による科学予算の大幅な削減と研究者の解雇を非難し、米国の科学環境が危機的であると指摘。
 ・フランスの対応: フランス政府は、米国の研究者を歓迎する姿勢を示し、特に気候変動の分野で困難を感じている米国の研究者を受け入れるためのプログラムを開始した。
 ・エクス=マルセイユ大学の取り組み: 同大学は、トランプ政権下での研究環境の悪化に懸念を抱える米国の研究者を対象に、学問の自由と革新を支援する特別プログラムを設立。
 ・フランスの科学コミュニティへの呼びかけ: バティスト大臣は、米国の研究者がフランスに移住するよう促し、フランスの研究機関が受け入れの準備を整えていることを示した。

【引用・参照・底本】

'Deplorable': French scientist denied US entry over text messages criticising Trump FRANCE24 2025.03.20
https://www.france24.com/en/americas/20250320-french-scientist-denied-us-entry-over-text-messages-criticising-trump?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250320&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

コメント

トラックバック