欧州のNATOにおける米国の代替計画とその影響 ― 2025年03月22日 20:19
【概要】
英紙「フィナンシャル・タイムズ」(FT)は、匿名の欧州当局者4人の話として、「欧州の軍事大国が、今後5~10年でNATOにおける米国の役割を代替する計画を進めている」と報じた。報道によれば、英国、フランス、ドイツ、北欧諸国がこの構想を主導しており、6月の次回NATO首脳会議で米国に提案する予定であるという。
一方で、一部の国々はこの計画への参加を拒否している。これは、米国の撤退を早める可能性への懸念、または米国が欧州を放棄しないとの見方によるものであるとされる。具体的には、ポーランド、バルト三国、ルーマニアがこの立場を取っており、これらの国々は引き続き米国の安全保障の傘下に留まることを望んでいると推測される。
ポーランドについては、フランスとの関係強化を模索する動きが見られるが、これは現政権の戦略の一環であり、米国との関係を再調整する意図もあると考えられる。ただし、5月の大統領選挙で自由主義的な現政権が勝利した場合、フランスへの傾斜がさらに進む可能性がある。しかし、現時点では、これは米国の軍事的関与を維持・拡大するための交渉手段とも解釈できる。
バルト三国については、親米的な政治エリートが主導権を握っており、米国の軍事的関与が縮小する場合を除き、欧州主導の安全保障構想へ転換する可能性は低いと見られる。特に、トランプ前大統領が復帰し、ロシアとの交渉の一環として駐留米軍を縮小または撤退させる場合には、欧州の枠組みへの依存が強まる可能性がある。
ルーマニアに関しては、フランスが提案した欧州の核抑止力の拡大に否定的な立場を取っており、危機的状況において欧州よりも米国の関与を信頼していることが示唆される。特に、モルドバを巡るロシアとの対立が激化した場合、米国の支援をより重視する可能性が高い。
これらの5カ国が引き続きこの立場を維持する場合、NATO内部での戦略的な分裂が生じる可能性がある。フランスとドイツは、戦後の欧州秩序における主導権を争っており、ポーランドもこの競争に関与している。このため、ポーランドがフランス寄りの姿勢を取らない限り、欧州中央・東部(CEE)諸国に対するフランス・ドイツの影響力は限定的なものとなる可能性がある。
CEE地域では、エストニアからルーマニア、さらにはブルガリアやギリシャに至るまで、米国の影響力が依然として強いと見られる。特にギリシャは、ロシア寄りの世論があるにもかかわらず、政府としては米国との関係を強化している。また、トルコとの海洋権益問題において、米国の関与を必要としている。
この状況が続く場合、欧州は軍事的に二分される可能性がある。すなわち、西欧諸国は戦略的自立を進め、東欧諸国は米国と密接な関係を維持する形となる。これを覆す要因となり得るのは、ポーランドの大統領選挙の結果である。ポーランドがフランス寄りの政策に転じれば、欧州の軍事統合が進む可能性が高まるが、そうでなければ、西欧とCEEの間に戦略的な溝が生じることとなる。
なお、ロシアがNATO加盟国へ侵攻する意図はないと見られるが、米国がCEE地域に軍事的影響力を維持することで、これらの国々による対ロシア強硬策を抑制する可能性がある。また、仮にNATOとロシアの間で核戦争に至らない武力衝突が発生し、米国がCEEを見捨てるような事態となれば、米国の国際的な信頼は大きく損なわれる。
このような観点から、FTの報道が事実であれば、欧州は軍事的に西欧と東欧で分かれる可能性がある。そして、ポーランドの選挙結果が、今後の欧州安全保障の方向性を大きく左右することになる。
【詳細】
欧州のNATOにおける米国の代替計画とその影響
1. 概要
『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の報道によれば、英国、フランス、ドイツ、北欧諸国が、今後5~10年の間にNATO内で米国の役割を代替する計画を立案しているという。この計画は、2025年6月のNATO首脳会議で米国に提示される予定である。しかし、ポーランド、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、ルーマニアといった東欧諸国は、この動きに参加していないとされる。
2. 東欧諸国の立場
ポーランド、バルト三国、ルーマニアは、引き続き米国の安全保障の傘の下に留まることを望んでいるとされる。これには以下のような背景がある。
・ポーランド
現在のリベラル派政権はフランスとの関係強化を模索しているが、これは米国との関係を再調整する交渉戦略の一環と考えられる。2025年5月の大統領選挙でリベラル派が勝利した場合、フランスへの傾斜が本格化する可能性があるが、それまでは米国の軍事的プレゼンスを維持・拡大するための圧力として機能している。
・バルト三国
これらの国々の政治エリートは強固な親米路線を維持しており、米国が駐留部隊を削減・撤退する場合を除いて、欧州の防衛主体に切り替える可能性は低い。仮にトランプ政権がロシアとの交渉の一環として米軍の撤退を決定すれば、欧州主導の防衛に転換する可能性がある。
・ルーマニア
ルーマニアはフランスによる「欧州の核の傘」構想を拒否しており、米国の核抑止力の方を信頼していることが示唆される。特にモルドバ情勢において、ロシアとの対立が深まる可能性を考慮し、米国の支援を重視している。
3. NATO内の分裂の可能性
東欧諸国が米国との安全保障関係を維持し続ける場合、NATO内部で西欧と東欧の間に戦略的な分裂が生じる可能性がある。
・フランスとドイツの影響力
フランスとドイツは、ウクライナ戦争後の欧州安全保障の枠組みにおいて主導的な役割を果たすことを目指している。ポーランドがフランス寄りに傾けば、西欧の影響力が東欧にも拡大する可能性があるが、そうでなければ東欧諸国は依然として米国に依存する。
・「コルドン・サニテール」の形成
エストニアからルーマニア、さらにはブルガリアやギリシャに至るまで、東欧・南欧諸国が米国の影響下に留まることで、地政学的に西欧とロシアの間に「コルドン・サニテール(防波地帯)」が形成される可能性がある。これは、米国がアジアへの戦略的転換を進める中でも、欧州に一定の影響力を残す手段となる。
4. 米国の影響力の維持要因
このような状況の維持は、以下の3つの要因に依存する。
(1)ロシアを脅威と認識し続けるか
東欧諸国がロシアを安全保障上の脅威と考え続ける限り、米国の抑止力を重視する傾向が続く。
(2)米国の信頼性
米国がEUよりも信頼できる安全保障パートナーであると東欧諸国が考え続けるかどうかが重要である。特にトランプ政権がNATOからの撤退を決断するかどうかが焦点となる。
(3)米国の欧州戦略
米国が欧州における影響力を完全に放棄せず、最低限の軍事プレゼンスを維持する場合、東欧諸国は引き続き米国寄りの立場を取る可能性が高い。
5. NATOの二極化の可能性
このまま推移すれば、NATO内部で「戦略的自律を目指す西欧」と「米国に依存する東欧」の二極化が進む可能性がある。これは、西欧諸国にとっても東欧諸国にとっても相互に有益となる可能性がある。
・西欧の軍事的統合のメリット
西欧が独自の軍事能力を強化することで、万が一米国がNATOを放棄した場合にも、東欧の防衛を支援できる体制を整えることができる。
・米国の影響力の継続
米国が引き続き東欧に関与することで、ロシアとの緊張関係をコントロールし、NATO内部のバランスを維持できる可能性がある。
6. ポーランドの選挙の影響
2025年5月のポーランド大統領選挙は、欧州の安全保障構造に大きな影響を与える可能性がある。リベラル派が勝利すれば、フランスとの連携が進み、西欧寄りの安全保障政策が強化される可能性がある。一方で、保守派が勝利すれば、米国との関係維持が優先されることになり、東欧のNATO内での立場も変化しないと考えられる。
7. 結論
現在のNATOにおける欧州主導の防衛構想は、米国の影響力低下を前提としているが、東欧諸国は依然として米国の安全保障の傘の下に留まることを望んでいる。このため、NATOは西欧と東欧の間で戦略的に二極化する可能性がある。この構造の変化は、ポーランドの選挙結果や米国の欧州戦略の方向性によって左右されることになる。
【要点】
欧州のNATOにおける米国の代替計画とその影響
1. 概要
・英国、フランス、ドイツ、北欧諸国が米国の役割を代替する計画を立案。
・計画は2025年6月のNATO首脳会議で米国に提示予定。
・ポーランド、バルト三国、ルーマニアなどの東欧諸国はこの動きに参加せず、米国との関係を維持。
2. 東欧諸国の立場
・ポーランド:リベラル派政権はフランス寄りの姿勢を見せるが、現在は米国の軍事的プレゼンス維持を優先。
・バルト三国:親米路線を継続。米軍撤退の可能性がない限り、欧州主導の防衛に移行する意向は低い。
・ルーマニア:フランスの「欧州の核の傘」構想を拒否し、米国の核抑止力を重視。
3. NATO内の分裂の可能性
・西欧(フランス・ドイツ)主導の防衛構想と東欧の親米路線で戦略的対立が発生する可能性。
・「コルドン・サニテール(防波地帯)」の形成
エストニア~ルーマニアが米国寄りとなり、西欧との間に地政学的な境界が生まれる。
4. 米国の影響力の維持要因
(1)ロシアを脅威と認識し続けるか → 東欧諸国が脅威を感じる限り、米国の安全保障を重視。
(2)米国の信頼性 → トランプ政権がNATOから撤退すれば東欧諸国の立場が変化する可能性。
(3)米国の欧州戦略 → 最低限の軍事プレゼンスを維持すれば、東欧諸国は親米路線を継続。
5. NATOの二極化の可能性
・西欧:フランス・ドイツを中心に独自の軍事能力を強化し、NATOの自立を目指す。
・東欧:米国との安全保障関係を維持し、西欧の防衛構想には慎重。
・米国:東欧に関与を続けることで、ロシアとの緊張を管理しつつ影響力を維持。
6. ポーランドの選挙の影響
・2025年5月の大統領選挙が欧州の安全保障構造に影響を与える。
⇨ リベラル派勝利 → フランスとの連携強化、西欧寄りの安全保障政策に転換。
⇨ 保守派勝利 → 米国との関係維持を優先、東欧の親米路線が継続。
7. 結論
・NATOは 「戦略的自律を目指す西欧」 と 「米国に依存する東欧」 の二極化が進む可能性。
・今後の動向は ポーランドの選挙結果 や 米国の欧州戦略 に左右される。
【引用・参照・底本】
Europe’s Reported Plan To Replace The US In NATO Ignores The Interests Of Five Key Countries Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.22
https://korybko.substack.com/p/europes-reported-plan-to-replace?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=159599865&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
英紙「フィナンシャル・タイムズ」(FT)は、匿名の欧州当局者4人の話として、「欧州の軍事大国が、今後5~10年でNATOにおける米国の役割を代替する計画を進めている」と報じた。報道によれば、英国、フランス、ドイツ、北欧諸国がこの構想を主導しており、6月の次回NATO首脳会議で米国に提案する予定であるという。
一方で、一部の国々はこの計画への参加を拒否している。これは、米国の撤退を早める可能性への懸念、または米国が欧州を放棄しないとの見方によるものであるとされる。具体的には、ポーランド、バルト三国、ルーマニアがこの立場を取っており、これらの国々は引き続き米国の安全保障の傘下に留まることを望んでいると推測される。
ポーランドについては、フランスとの関係強化を模索する動きが見られるが、これは現政権の戦略の一環であり、米国との関係を再調整する意図もあると考えられる。ただし、5月の大統領選挙で自由主義的な現政権が勝利した場合、フランスへの傾斜がさらに進む可能性がある。しかし、現時点では、これは米国の軍事的関与を維持・拡大するための交渉手段とも解釈できる。
バルト三国については、親米的な政治エリートが主導権を握っており、米国の軍事的関与が縮小する場合を除き、欧州主導の安全保障構想へ転換する可能性は低いと見られる。特に、トランプ前大統領が復帰し、ロシアとの交渉の一環として駐留米軍を縮小または撤退させる場合には、欧州の枠組みへの依存が強まる可能性がある。
ルーマニアに関しては、フランスが提案した欧州の核抑止力の拡大に否定的な立場を取っており、危機的状況において欧州よりも米国の関与を信頼していることが示唆される。特に、モルドバを巡るロシアとの対立が激化した場合、米国の支援をより重視する可能性が高い。
これらの5カ国が引き続きこの立場を維持する場合、NATO内部での戦略的な分裂が生じる可能性がある。フランスとドイツは、戦後の欧州秩序における主導権を争っており、ポーランドもこの競争に関与している。このため、ポーランドがフランス寄りの姿勢を取らない限り、欧州中央・東部(CEE)諸国に対するフランス・ドイツの影響力は限定的なものとなる可能性がある。
CEE地域では、エストニアからルーマニア、さらにはブルガリアやギリシャに至るまで、米国の影響力が依然として強いと見られる。特にギリシャは、ロシア寄りの世論があるにもかかわらず、政府としては米国との関係を強化している。また、トルコとの海洋権益問題において、米国の関与を必要としている。
この状況が続く場合、欧州は軍事的に二分される可能性がある。すなわち、西欧諸国は戦略的自立を進め、東欧諸国は米国と密接な関係を維持する形となる。これを覆す要因となり得るのは、ポーランドの大統領選挙の結果である。ポーランドがフランス寄りの政策に転じれば、欧州の軍事統合が進む可能性が高まるが、そうでなければ、西欧とCEEの間に戦略的な溝が生じることとなる。
なお、ロシアがNATO加盟国へ侵攻する意図はないと見られるが、米国がCEE地域に軍事的影響力を維持することで、これらの国々による対ロシア強硬策を抑制する可能性がある。また、仮にNATOとロシアの間で核戦争に至らない武力衝突が発生し、米国がCEEを見捨てるような事態となれば、米国の国際的な信頼は大きく損なわれる。
このような観点から、FTの報道が事実であれば、欧州は軍事的に西欧と東欧で分かれる可能性がある。そして、ポーランドの選挙結果が、今後の欧州安全保障の方向性を大きく左右することになる。
【詳細】
欧州のNATOにおける米国の代替計画とその影響
1. 概要
『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の報道によれば、英国、フランス、ドイツ、北欧諸国が、今後5~10年の間にNATO内で米国の役割を代替する計画を立案しているという。この計画は、2025年6月のNATO首脳会議で米国に提示される予定である。しかし、ポーランド、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、ルーマニアといった東欧諸国は、この動きに参加していないとされる。
2. 東欧諸国の立場
ポーランド、バルト三国、ルーマニアは、引き続き米国の安全保障の傘の下に留まることを望んでいるとされる。これには以下のような背景がある。
・ポーランド
現在のリベラル派政権はフランスとの関係強化を模索しているが、これは米国との関係を再調整する交渉戦略の一環と考えられる。2025年5月の大統領選挙でリベラル派が勝利した場合、フランスへの傾斜が本格化する可能性があるが、それまでは米国の軍事的プレゼンスを維持・拡大するための圧力として機能している。
・バルト三国
これらの国々の政治エリートは強固な親米路線を維持しており、米国が駐留部隊を削減・撤退する場合を除いて、欧州の防衛主体に切り替える可能性は低い。仮にトランプ政権がロシアとの交渉の一環として米軍の撤退を決定すれば、欧州主導の防衛に転換する可能性がある。
・ルーマニア
ルーマニアはフランスによる「欧州の核の傘」構想を拒否しており、米国の核抑止力の方を信頼していることが示唆される。特にモルドバ情勢において、ロシアとの対立が深まる可能性を考慮し、米国の支援を重視している。
3. NATO内の分裂の可能性
東欧諸国が米国との安全保障関係を維持し続ける場合、NATO内部で西欧と東欧の間に戦略的な分裂が生じる可能性がある。
・フランスとドイツの影響力
フランスとドイツは、ウクライナ戦争後の欧州安全保障の枠組みにおいて主導的な役割を果たすことを目指している。ポーランドがフランス寄りに傾けば、西欧の影響力が東欧にも拡大する可能性があるが、そうでなければ東欧諸国は依然として米国に依存する。
・「コルドン・サニテール」の形成
エストニアからルーマニア、さらにはブルガリアやギリシャに至るまで、東欧・南欧諸国が米国の影響下に留まることで、地政学的に西欧とロシアの間に「コルドン・サニテール(防波地帯)」が形成される可能性がある。これは、米国がアジアへの戦略的転換を進める中でも、欧州に一定の影響力を残す手段となる。
4. 米国の影響力の維持要因
このような状況の維持は、以下の3つの要因に依存する。
(1)ロシアを脅威と認識し続けるか
東欧諸国がロシアを安全保障上の脅威と考え続ける限り、米国の抑止力を重視する傾向が続く。
(2)米国の信頼性
米国がEUよりも信頼できる安全保障パートナーであると東欧諸国が考え続けるかどうかが重要である。特にトランプ政権がNATOからの撤退を決断するかどうかが焦点となる。
(3)米国の欧州戦略
米国が欧州における影響力を完全に放棄せず、最低限の軍事プレゼンスを維持する場合、東欧諸国は引き続き米国寄りの立場を取る可能性が高い。
5. NATOの二極化の可能性
このまま推移すれば、NATO内部で「戦略的自律を目指す西欧」と「米国に依存する東欧」の二極化が進む可能性がある。これは、西欧諸国にとっても東欧諸国にとっても相互に有益となる可能性がある。
・西欧の軍事的統合のメリット
西欧が独自の軍事能力を強化することで、万が一米国がNATOを放棄した場合にも、東欧の防衛を支援できる体制を整えることができる。
・米国の影響力の継続
米国が引き続き東欧に関与することで、ロシアとの緊張関係をコントロールし、NATO内部のバランスを維持できる可能性がある。
6. ポーランドの選挙の影響
2025年5月のポーランド大統領選挙は、欧州の安全保障構造に大きな影響を与える可能性がある。リベラル派が勝利すれば、フランスとの連携が進み、西欧寄りの安全保障政策が強化される可能性がある。一方で、保守派が勝利すれば、米国との関係維持が優先されることになり、東欧のNATO内での立場も変化しないと考えられる。
7. 結論
現在のNATOにおける欧州主導の防衛構想は、米国の影響力低下を前提としているが、東欧諸国は依然として米国の安全保障の傘の下に留まることを望んでいる。このため、NATOは西欧と東欧の間で戦略的に二極化する可能性がある。この構造の変化は、ポーランドの選挙結果や米国の欧州戦略の方向性によって左右されることになる。
【要点】
欧州のNATOにおける米国の代替計画とその影響
1. 概要
・英国、フランス、ドイツ、北欧諸国が米国の役割を代替する計画を立案。
・計画は2025年6月のNATO首脳会議で米国に提示予定。
・ポーランド、バルト三国、ルーマニアなどの東欧諸国はこの動きに参加せず、米国との関係を維持。
2. 東欧諸国の立場
・ポーランド:リベラル派政権はフランス寄りの姿勢を見せるが、現在は米国の軍事的プレゼンス維持を優先。
・バルト三国:親米路線を継続。米軍撤退の可能性がない限り、欧州主導の防衛に移行する意向は低い。
・ルーマニア:フランスの「欧州の核の傘」構想を拒否し、米国の核抑止力を重視。
3. NATO内の分裂の可能性
・西欧(フランス・ドイツ)主導の防衛構想と東欧の親米路線で戦略的対立が発生する可能性。
・「コルドン・サニテール(防波地帯)」の形成
エストニア~ルーマニアが米国寄りとなり、西欧との間に地政学的な境界が生まれる。
4. 米国の影響力の維持要因
(1)ロシアを脅威と認識し続けるか → 東欧諸国が脅威を感じる限り、米国の安全保障を重視。
(2)米国の信頼性 → トランプ政権がNATOから撤退すれば東欧諸国の立場が変化する可能性。
(3)米国の欧州戦略 → 最低限の軍事プレゼンスを維持すれば、東欧諸国は親米路線を継続。
5. NATOの二極化の可能性
・西欧:フランス・ドイツを中心に独自の軍事能力を強化し、NATOの自立を目指す。
・東欧:米国との安全保障関係を維持し、西欧の防衛構想には慎重。
・米国:東欧に関与を続けることで、ロシアとの緊張を管理しつつ影響力を維持。
6. ポーランドの選挙の影響
・2025年5月の大統領選挙が欧州の安全保障構造に影響を与える。
⇨ リベラル派勝利 → フランスとの連携強化、西欧寄りの安全保障政策に転換。
⇨ 保守派勝利 → 米国との関係維持を優先、東欧の親米路線が継続。
7. 結論
・NATOは 「戦略的自律を目指す西欧」 と 「米国に依存する東欧」 の二極化が進む可能性。
・今後の動向は ポーランドの選挙結果 や 米国の欧州戦略 に左右される。
【引用・参照・底本】
Europe’s Reported Plan To Replace The US In NATO Ignores The Interests Of Five Key Countries Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.22
https://korybko.substack.com/p/europes-reported-plan-to-replace?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=159599865&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email