コソボの独立は民主主義や法の支配の原則ではない2025年03月22日 21:56

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【概要】
 
 コソボの独立とその政治的リーダーシップが組織犯罪と密接に結びついているという主張を展開している。著者のミシェル・チョスドフスキーは、米国やNATO、EUが犯罪者を要職に据えることでコソボを「マフィア国家」として支えていると述べている。

 特に、ハシム・サチ(Hashim Thaci)の経歴に焦点を当て、彼がコソボ解放軍(KLA)時代から犯罪シンジケートと関係を持っていたと指摘している。サチは米国の支援を受け、クリントン政権の下で重要な役割を果たしながら、麻薬密売や人身売買などの犯罪活動に関与していたとされる。また、Interpolや米国議会の報告書でもKLAの犯罪組織とのつながりが記録されている。

 このような背景にもかかわらず、米国はコソボの独立を推し進め、国際機関への加盟を支援してきた。記事では、これは米国がバルカン地域で影響力を維持し、ロシアやセルビアの影響を排除するための戦略の一環であると示唆している。

 要するに、コソボの独立は民主主義や法の支配の原則ではなく、地政学的な利益と犯罪ネットワークとの結びつきによって推進されたものであると著者は主張している。

【詳細】 

 カナダの経済学者でありGlobal Researchの創設者であるミシェル・チョスドフスキーが、コソボの独立とその政府の犯罪組織との関係について批判的に論じたものである。彼は、米国、NATO、EUがコソボの独立を支援する一方で、その指導者が犯罪ネットワークと深く結びついていることを指摘している。

 1. コソボ独立の背景

 コソボは、1999年のNATOによるユーゴスラビア爆撃(コソボ紛争)を経て、国連の管理下に置かれた後、2008年2月に一方的に独立を宣言した。米国のブッシュ政権は、コソボ独立の法的枠組みを整備するために、フランク・ウィズナー・ジュニアを派遣した。ウィズナーは、1953年のイラン・クーデターを主導したCIAのフランク・ウィズナー・シニアの息子である。

 コソボは現在、国際通貨基金(IMF)や世界銀行(WB)に加盟し、NATOやEU、さらにはインターポール(Interpol)への加盟も目指している。しかし、コソボの指導者であるハシム・サチ(Hashim Thaçi)が犯罪組織と関係しているとされ、特にインターポールの指名手配リストに載っていた過去が問題視されている。

 2. ハシム・サチとコソボ解放軍(KLA)の犯罪活動

 コソボ解放軍(KLA)は、1990年代にセルビアとの戦闘を行ったアルバニア系の武装組織であり、後に米国やNATOの支援を受けた。しかし、KLAは単なる民族独立運動ではなく、国際的な犯罪組織とも関係が深かったとされる。

 サチの犯罪歴

 ・「ドレンチカ・グループ」: サチが設立した犯罪組織であり、コソボの犯罪活動(武器密輸、盗難車取引、石油・タバコの密輸、人身売買など)の10~15%を支配していたとされる(Wikipedia)。

 ・麻薬取引とテロ組織の関与: 元DEA(米国麻薬取締局)のマイケル・レヴィンによれば、KLAは中東やアジアの麻薬カルテルと密接に関係しており、インターポールや欧州の情報機関もKLAと犯罪組織の結びつきを記録している。

 ・オサマ・ビン・ラディンとの関係: KLAのメンバーは、アフガニスタンやボスニアで訓練を受けており、ビン・ラディン率いるアルカイダともつながりがあったとされる(ワシントン・タイムズ 1999年5月4日)。

 3. アメリカ・NATOの関与と支援

 サチは、1998年のランブイエ和平交渉(Rambouillet negotiations)において、米国のマデレーン・オルブライト国務長官の支援を受けた。この交渉は、ユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェヴィッチ政権に対する圧力を強めるために行われたが、結果的にNATOの軍事介入を正当化する理由となった。

 NATOによるコソボ爆撃(1999年)は、KLAを事実上支援する形となり、その後、コソボの自治政府(UNMIK)が設立された。しかし、チョスドフスキーは、この自治政府がKLAの元メンバーによって支配され、犯罪組織の影響下にあったと主張している。

 アメリカの支援の背景

 ・クリントン政権の意図: 1999年のNATO爆撃は、ユーゴスラビアの影響力を排除し、バルカン半島に親米政権を樹立する目的があった。

 ・「必要悪」論: ヘリテージ財団の報告(1999年5月13日)は、KLAが犯罪組織と関係があることを認めつつも、ミロシェヴィッチ政権に対抗する「レジスタンス」としての価値を優先し、支援を正当化した。

 4. コソボの現状と国際社会の対応

 現在のコソボは、形式的には独立国家であるが、米国とNATOの軍事的・政治的な影響を強く受けている。EUや国連も、コソボの統治に深く関与しているものの、内部の汚職や組織犯罪の問題は解決されていない。

 主要な問題点

 ・戦争犯罪の裁判: サチは2020年に逮捕され、ハーグの特別法廷で戦争犯罪の裁判を受けている。

 ・経済と治安の不安定性: コソボは欧州最貧国の一つであり、失業率が高く、移民が増加している。

 ・国際的な承認問題: 100カ国以上がコソボを独立国家として承認しているが、セルビアやロシア、中国などは依然としてコソボをセルビア領とみなしている。

 5. まとめ

 チョスドフスキーの主張は、コソボが米国の支援を受けた「マフィア国家」であり、その政府が犯罪組織と密接な関係を持っているというものである。特に、米国やNATOがKLAの過去の犯罪活動を知りながらも支援を続けたことは、国際政治のダブルスタンダードを象徴していると指摘している。

 コソボ独立の正統性を巡る議論は今も続いており、米国とNATOの影響力、EUの統治支援、セルビアとの緊張関係、そして国内の腐敗問題が複雑に絡み合っている。

【要点】

 1.コソボ独立の背景

 ・1999年のNATOによるユーゴスラビア爆撃後、国連の管理下に置かれる

 ・2008年2月に一方的に独立を宣言

 ・米国・NATO・EUが独立を支援

 ・フランク・ウィズナー・ジュニアが独立プロセスを主導

 2. ハシム・サチとコソボ解放軍(KLA)の犯罪活動

 ・KLAの実態: 独立運動だけでなく、犯罪組織としても活動

 ・「ドレンチカ・グループ」: サチが率いた犯罪組織

  ⇨ 武器密輸、盗難車取引、石油・タバコ密輸、人身売買に関与

  ⇨ コソボの犯罪市場の10~15%を支配(Wikipedia)

 ・麻薬取引: DEA(米国麻薬取締局)やインターポールもKLAの関与を記録

 ・アルカイダとの関係: KLAのメンバーがアフガニスタンやボスニアで訓練を受ける

 ・戦争犯罪: 2020年、サチが逮捕されハーグの特別法廷で裁判を受ける

 3. アメリカ・NATOの関与と支援

 ・1998年のランブイエ和平交渉: 米国がサチを支援

 ・1999年のNATO爆撃: KLAを事実上支援し、ユーゴスラビアの影響力を排除

 ・米国の戦略的意図

  ⇨ バルカン半島での親米政権の確立

  ⇨ ミロシェヴィッチ政権の弱体化

 ・「必要悪」論: ヘリテージ財団がKLAの犯罪関与を認識しつつも支援を正当化

 4. コソボの現状と国際社会の対応

 ・米国・NATOの影響が継続

 ・国際的な承認問題

  ⇨ 100カ国以上が独立を承認

  ⇨ セルビア、ロシア、中国はコソボをセルビア領と見なす

 ・経済と治安の不安定性

  ⇨ 欧州最貧国の一つ

  ⇨ 失業率が高く、移民が増加

 ・戦争犯罪裁判: サチが2020年に逮捕

 5. まとめ

 ・コソボ政府は「マフィア国家」として機能している

 ・KLAと犯罪組織の関係が深い

 ・米国・NATOはKLAの犯罪活動を知りつつ支援

 ・国際政治のダブルスタンダードが浮き彫り

 ・コソボ独立の正統性は依然として議論の的

【引用・参照・底本】

Kosovo, America’s “Mafia State”: The US-NATO-EU Support a Political Process Linked to Organized Crime Michel Chossudovsky 2025.03.22
https://michelchossudovsky.substack.com/p/kosovo-america-mafia-state-us-nato-eu-support-organized-crime?utm_source=post-email-title&publication_id=1910355&post_id=159553001&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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