韓国とEU2025年03月22日 23:19

Microsoft Designerで作成
【概要】
 
 韓国とEUがいかにして自然な同盟関係を築いているかについて述べられている。韓国とEUの市民は、ロシアが脅威であり、ウクライナ支援が必要であり、新しいアメリカの政権(特にトランプ政権)に懸念を抱いている点で意見が一致している。トランプ氏の登場により、世界の安全保障秩序が揺らぎつつあり、その影響で、韓国とEUの協力関係は強化される可能性が高いとされている。

 トランプ政権への懸念

 韓国とEUの市民は、トランプ政権に対して否定的な意見を持っている。特に韓国では、67%の人々がトランプの選出を否定的に捉えており、世界平和を脅かすと考えている人々も多い。これに対し、EUでは38%がトランプの選出を否定的に見ており、40%がトランプが世界平和を脅かすと考えている。この意見の差異にもかかわらず、両者は共通してトランプ政権に対して懸念を抱いている。

 ロシアに対する一致した立場

 韓国とEUは、ロシアを強力な敵として見なしており、ロシアの行動は国際的な安定を脅かすものと考えている。両者の世論調査によると、ロシアを「ライバル」または「敵」と考えている人々は過半数にのぼり、特にロシアのウクライナ侵攻に関して、両者は一致した立場を取っている。ロシアの行動を非難し、ウクライナへの支援が重要であると考えている点で共通している。

 ヨーロッパと東アジアの安全保障のつながり

 ロシアと北朝鮮の関係は、ヨーロッパと東アジアの安全保障において重要な役割を果たしている。ロシアと北朝鮮の間で軍事協力が強化されており、北朝鮮はウクライナ戦争においてロシアに軍事支援を提供している。また、ロシアは北朝鮮に対し、食料支援や現金、さらには先進的な軍事技術を提供しているとされている。このような協力関係は、韓国とヨーロッパ両方にとって安全保障上の脅威を増大させている。

 EUと韓国の協力の重要性

 EUと韓国は、アメリカの影響が弱まる中で、より緊密に協力する必要がある。特に防衛面では、韓国はウクライナへの支援を行っており、その防衛産業は価格競争力が高く、迅速な納品が可能である。韓国はヨーロッパの防衛能力強化に貢献できる潜在能力を持っており、また、韓国の情報機関は北朝鮮の動向に関してヨーロッパと情報を共有することができる。

 経済的な機会

 経済面でも、EUと韓国は相互に利益を得ることができる。特に、韓国の電気自動車やバッテリー産業は、アメリカの保護主義的な貿易政策の影響でEU市場にとって重要な選択肢となっている。また、EUの競争力強化や中国との競争が激化する中で、韓国の製品はEU市場において競争優位を得る可能性がある。

 結論

 EUと韓国の戦略的協力は、トランプ政権の登場やロシアの脅威により、これまで以上に重要な意味を持つようになっている。両者の市民は共通の懸念を抱えており、これを基盤にして、今後さらに強固なパートナーシップが形成される可能性がある。

【詳細】 

 韓国と欧州連合(EU)がいかに自然な戦略的パートナーであるかについて論じている。特に、ロシアの脅威、ウクライナへの支援、そして新しいアメリカのトランプ政権への懸念が両者の共通の関心事項として浮かび上がる。両者の公的意見が一致する中、EUと韓国の協力関係が深まる可能性について触れている。

 1. トランプ政権への懸念

 韓国と欧州の両者は、トランプ政権の影響について懐疑的である。韓国では67%がトランプの再選を否定的に捉えており、欧州でも38%がトランプの再選に懸念を抱いている。トランプが世界平和に与える影響についても、韓国では半数が危険視しており、欧州でも40%以上が懸念している。このような見解は、2024年11月の調査時点でも強く、トランプの演説やウクライナのゼレンスキー大統領との対立などを背景に、これらの懸念は一層強まっていると予想される。

 アメリカにとって重要な同盟国である韓国は、アメリカとの軍事同盟に依存しているが、トランプ政権の誕生により、その信頼性に疑問が生じている。調査結果によると、21%の欧州人と40%の韓国人がアメリカを「同盟国」と認識し、50%と45%がアメリカを「必要なパートナー」として捉えている。しかし、これらの割合はアメリカの新政権に対する不安感と矛盾しており、韓国と欧州におけるアメリカ依存の見直しが進む可能性が示唆されている。

 2. ロシアとの一致した認識

 韓国と欧州は、ロシアを共通の脅威と見なしている点でも一致している。調査では、両者の半数以上がロシアを「敵対的な相手」または「ライバル」と認識しており、韓国では36%、欧州では44%が「敵対的な相手」と答えている。特に、ロシアのウクライナ侵攻に関して、両者は「西側対ロシア」、「民主主義対独裁主義」の戦いであると考えており、ウクライナの血を流した責任がロシアにあるとの見解も一致している。

 ロシアと北朝鮮の関係が強化されている中、韓国と欧州は、ウクライナ支援やロシアへの制裁強化といった政策に関して、共通の立場を取る可能性が高い。特に、韓国はロシアとの距離を置く姿勢を強める可能性があり、将来的に新たな韓国の指導者がロシアとの関係を進展させることは難しくなるだろう。

 3. 欧州と東アジアの安全保障の連携

 ロシアのウクライナ侵攻は、欧州と東アジアの安全保障環境を一体化させる要因となっている。ロシアと北朝鮮の関係は、両地域に共通する安全保障上の脅威を生み出している。2024年6月、ロシアと北朝鮮は包括的戦略的パートナーシップ協定を結び、双方が戦争状態に陥った場合、軍事的支援を行うことを約束した。これにより、北朝鮮はロシアに対して弾薬や兵士を提供し、ロシアは北朝鮮に対して食糧援助や現金、軍事技術支援を行っている。

 これにより、北朝鮮の核兵器開発が加速し、韓国にとっては新たな軍事的脅威が増大するリスクがある。北朝鮮の核潜水艦開発など、ロシアの支援が北朝鮮の軍事力強化に寄与しており、これが韓国にとっての安全保障上の課題となっている。

 4. 欧州と韓国の戦略的協力の機会

 現在の地政学的な状況は、EUと韓国が戦略的に協力するための新たな機会を生み出している。ロシアの脅威やトランプ政権の不安定性が、両者の連携を促進する要因となっている。特に、韓国はウクライナへの支援を強化しており、2024年には39億4000万ドルの支援を行い、2023年にはアメリカに対して30万発の155mm砲弾を供給している。

 また、韓国は防衛産業にも強みを持っており、欧州の防衛力強化にも貢献できる。2022年にはポーランドと140億ドル規模の軍事契約を結んでおり、今後、韓国はEU内での防衛産業拡大やウクライナへの再武装支援を行う可能性が高い。

 5. 経済的な連携

 経済面でもEUと韓国は競争と協力の関係にある。アメリカの保護主義的な貿易政策や、中国からの競争圧力に対して、韓国とEUは協力する機会が増えている。特に、EUの単一市場とその450万人規模の消費者市場は、韓国企業にとって魅力的な市場であり、トランプ政権下での不安定な貿易環境の中で、EUとの連携強化が重要となっている。

 6. 結論

 トランプ政権の不安定さ、ロシアの脅威、そして北朝鮮の軍事力強化という共通の課題が、EUと韓国を戦略的に近づける要因となっている。両者の市民は、これらの問題に対する見解が一致しており、今後の協力に向けた基盤が整いつつある。韓国とEUの協力は、単に防衛面や政治面にとどまらず、経済的な連携においても重要な役割を果たすだろう。

【要点】

 1.トランプ政権への懸念

 ・韓国では67%、欧州では38%がトランプの再選に否定的な見解を示す。

 ・韓国では半数以上がトランプが世界平和に与える影響を危険視。

 ・韓国と欧州両者とも、アメリカに対する信頼性が低下している。

 2.ロシアとの共通認識

 ・韓国と欧州の両者はロシアを共通の脅威と認識。

 ・半数以上がロシアを「敵対的な相手」または「ライバル」と捉えている。

 ・ロシアのウクライナ侵攻を「西側対ロシア」「民主主義対独裁主義」の戦いとして位置づけ。

 3.ロシアと北朝鮮の連携強化

 ・ロシアと北朝鮮が戦争状態での軍事支援を約束。

 ・北朝鮮の核兵器開発が進み、韓国の安全保障に対する脅威が増大。

 ・北朝鮮はロシアから軍事技術支援を受けている。

 4.欧州と韓国の戦略的協力の機会

 ・ロシアの脅威やトランプ政権の不安定性が、EUと韓国の連携を強化。

 ・韓国はウクライナへの支援を強化し、アメリカに155mm砲弾を供給。

 ・韓国は防衛産業での強みを活かし、欧州の防衛力強化に貢献。

 5.経済的な連携

 ・EUの単一市場と450万人規模の消費者市場は、韓国にとって重要。

 ・韓国とEUは、アメリカの保護主義的貿易政策に対抗するため協力の可能性が高い。

 6.結論

 ・トランプ政権の影響、ロシアの脅威、北朝鮮の軍事力強化が、韓国とEUを戦略的に結びつける要因となる。

 ・今後、両者の協力は防衛、政治、経済の各分野で重要な役割を果たす。

【引用・参照・底本】

Polls, peril and partnership: Why South Korea and the EU are natural allies ecfr.eu 2025.03.20
https://ecfr.eu/article/polls-peril-and-partnership-why-south-korea-and-the-eu-are-natural-allies/

コメント

トラックバック