バルト海と北極圏の戦線2025年03月24日 22:58

Microsoft Designerで作成
【概要】

 ロシアのプーチン大統領の上級補佐官であるニコライ・パトルシェフは、最近ロシアの「国家防衛」誌のインタビューでバルト海と北極圏の戦線に関するいくつかの最新情報を共有した。パトルシェフは、バルト海の緊張を引き起こしているのはイギリスであり、これはロシアとアメリカの関係改善の進展を妨害し、ウクライナに関する交渉を混乱させるための試みだと非難した。

 パトルシェフは、いくつかのNATO加盟国(特にイギリス)がロシアの船舶の航行設備に対してサイバー攻撃を行っていると警告し、バルト海での最近の破壊行為にイギリスが関与している可能性があることを示唆した。この破壊行為はロシアの海軍展開を促し、その結果、ロシアの利益に対する脅威が増大している。パトルシェフは、これらの脅威に対して無人の水中システムを使い、バルト艦隊を強化することで防御する計画であることを明らかにした。

 さらに、フィンランドとエストニアが共同でフィンランド湾を封鎖するという最悪のシナリオについても触れ、ロシアはその脅威を克服し、攻撃者に対して報復できると自信を示した。フィンランドについては、その国民は友好的だが、政府は歴史を歪曲しており、ロシアへの侵略の目的を隠していると批判した。また、フィンランドがナチスによってソ連に対する攻撃のために利用された過去を挙げ、NATOが同様の目的でフィンランドを利用しようとしている可能性があることを警告した。

 北極圏については、資源を巡る競争が激化しているが、ロシアは平和的な協力を望んでおり、対立ではなく協力を目指していると強調した。北海航路(NSR)の開発を進め、地域インフラを整備し、氷海航行用の船舶を建造して、通年での航行を可能にする計画を進めることを明言した。

 パトルシェフの発言は、イギリスがバルト海での緊張を引き起こす意図を持っていることを示唆しており、これに対抗するためにロシアがその準備を進めていることが分かる。また、フィンランド政府の歴史的な歪曲とその危険な外交政策に対して警戒を呼びかけ、最終的には北極圏での協力に対するロシアの意向を表明した。

 全体として、北極圏の戦線はバルト海に比べて早く氷解しており、アメリカがロシアと協力できる可能性がある一方で、バルト海ではイギリスがロシアとの危機を引き起こそうとしていることが強調されている。ロシアとアメリカが北極圏で協力するにはウクライナでの停戦が前提となる一方、イギリスが主導するNATOとの対立はアメリカを誤導することに依存している。最終的には、プーチン大統領とトランプ大統領の関係がこれらの問題の進展に大きな影響を与えることになるとパトルシェフは示唆している。

【詳細】 
 
 ニコライ・パトルシェフは、ロシアの安全保障の重要な役割を担ってきた人物であり、最近のインタビューでバルト海と北極圏の戦線に関する詳細な見解を述べた。パトルシェフは、ロシアと西側諸国、特にイギリスとの関係において、現在の状況がどのように展開しているのかを説明した。

 バルト海の状況とイギリスの役割

 パトルシェフは、バルト海の緊張がイギリスの影響力によるものであると主張している。彼は、イギリスがこの地域で意図的に緊張を高め、ロシアとアメリカの関係改善を妨害しようとしていると指摘した。この背景には、ウクライナ問題の解決に向けたロシアとアメリカの対話があるとされ、イギリスはその進展を阻止しようとしているとされる。

 特に、パトルシェフはイギリスがサイバー攻撃を仕掛け、ロシアの船舶の航行設備を標的にしていると警告している。これらのサイバー攻撃は、ロシアの海軍力に対する脅威を増大させ、バルト海でのロシアの軍事的プレゼンスを拡大させる結果を生んでいると述べた。さらに、パトルシェフは最近の破壊行為がイギリスの手によるものであり、それがロシアの海軍艦隊を強化する必要性を引き起こしたと示唆した。このような破壊行為は、ロシアの海底パイプラインやタンカー、貨物船に対するテロ攻撃のリスクを高め、ロシアの経済や安全保障に対する深刻な脅威をもたらす。

 フィンランドとエストニアの脅威

 パトルシェフは、フィンランドとエストニアが連携してフィンランド湾を封鎖する可能性についても言及した。このような行動は、ロシアにとって重大な危機を引き起こす可能性があるが、彼はロシアがこのような脅威を克服し、攻撃者に対して報復する能力を持っていると強調した。フィンランドに関しては、パトルシェフはその国民は友好的であるとしつつも、フィンランド政府が過去の歴史を歪曲し、ロシアへの攻撃的な政策を取っていることを批判した。彼はフィンランドがナチス・ドイツと協力してソ連に対する攻撃を行った歴史を引き合いに出し、現在でもNATOがフィンランドをロシアへの侵略の足掛かりとして利用しようとしている可能性を警告した。

 北極圏の競争とロシアの平和的な意図

 パトルシェフは、北極圏が新たな競争の舞台となりつつあることを認めながらも、ロシアはこの地域での平和的な協力を望んでいると述べた。北極圏の資源は重要であり、そのために競争が激化しているが、ロシアは対立を避け、国際的な協力を推進する立場を取っているという。彼は、北海航路(NSR)がこの地域での協力のための重要な道具となり得ることを強調した。ロシアはNSRの開発を進め、これにより年中を通じて航行可能なルートを提供し、地域のインフラを整備する計画を立てている。また、ロシアは氷海での航行を支援するための氷クラス船の建造を進めており、これによって北極圏での活動を活発化させるつもりだ。

 ロシアとアメリカの協力可能性

 パトルシェフは、北極圏でのロシアとアメリカの協力の可能性についても言及した。特に、ウクライナ問題の停戦が実現すれば、アメリカとの協力が現実のものとなるかもしれないと示唆した。アメリカとロシアの協力によって、北極圏での競争が対立から協力へと転換する可能性があり、これはロシアの外交政策の重要な側面であると考えられる。

 総括

 パトルシェフの発言からは、ロシアが現在直面している外交的および軍事的な脅威についての詳細な見解が示されている。特に、バルト海におけるイギリスの影響や、フィンランドとエストニアによる封鎖の脅威について強調されており、ロシアはこれらの脅威に対して自信を持って対処する意向を示している。一方で、北極圏においては、ロシアは対立ではなく平和的な協力を目指しており、アメリカとの協力を進める余地があることも示唆されている。

 これらの問題は、ロシアと西側諸国、特にアメリカとの関係において重要な転換点となる可能性があり、今後の展開に注目が集まる。

【要点】

 1.バルト海の緊張とイギリスの役割

 ・イギリスがバルト海で緊張を高め、ロシアとアメリカの関係改善を妨害しているとパトルシェフが主張。

 ・イギリスがロシアの船舶の航行設備にサイバー攻撃を仕掛けている可能性を警告。

 ・イギリスが破壊行為を行い、それがロシアの海軍艦隊強化を引き起こしていると示唆。

 2.フィンランドとエストニアの脅威

 ・フィンランドとエストニアが連携してフィンランド湾を封鎖する計画について言及。

 ・ロシアはこの脅威を克服し、攻撃者に報復できる自信を持っているとパトルシェフが強調。

 ・フィンランド政府が過去の歴史を歪曲し、NATOに利用される危険性を警告。

 3.北極圏での競争とロシアの平和的意図

 ・北極圏は資源を巡る競争が激化しているが、ロシアは平和的協力を望んでいる。

 ・ロシアは北海航路(NSR)の開発を進め、氷クラス船を建造し、年中航行可能なルートを提供する計画。

 4.ロシアとアメリカの協力の可能性

 ・ウクライナ問題の停戦が実現すれば、アメリカとの協力が現実となる可能性がある。

 ・ロシアとアメリカが北極圏で協力することで、競争から協力へと転換する可能性がある。

 5.総括

 ・ロシアはバルト海とフィンランド湾での脅威に対して自信を持って対応し、北極圏ではアメリカとの協力を進める意向。

 ・ロシアと西側諸国の関係において、今後の展開が注目される。

【引用・参照・底本】

Putin’s Senior Aide Patrushev Shared Some Updates About The Arctic & Baltic Fronts Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.24
https://korybko.substack.com/p/putins-senior-aide-patrushev-shared?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=159724516&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

コメント

トラックバック