中国自動車:テスラを上回る電気自動車(EV)の販売を記録 ― 2025年03月26日 17:58
【概要】
2025年2月、中国の自動車メーカーが欧州市場においてテスラを上回る電気自動車(EV)の販売を記録した。JATO Dynamicsの調査によると、BYD、Polestar、XPengを含む中国系自動車ブランドは、欧州で合計19,800台のEVを登録し、テスラの15,700台を超えた。前年同月には、中国系ブランドが23,182台、テスラが28,131台を登録していた。
中国系ブランドの中で最も売れたのはボルボ、BYD、Polestarであった。ボルボのバッテリー電気自動車(BEV)の登録台数は30%減少したものの、BYDとPolestarはそれぞれ94%、84%の大幅な増加を記録した。XPengも1,000台以上を販売し、Leapmotorも約900台を登録した。
JATO Dynamicsのグローバルアナリストであるフェリペ・ムニョス氏は、テスラがモデルYの刷新に向けて販売調整を進めていることや、EV市場での競争激化、さらにはイーロン・マスク氏の政治活動の影響を受けていると指摘した。また、モデル数が少ないブランドは、新モデル投入の過渡期に販売が落ち込みやすい傾向があると述べた。
中国メーカーはこの2年間で安定した成長を遂げており、欧州市場における販売を拡大している。上海汽車(SAIC Motor)は、2025年1月から2月にかけてEU、英国、欧州自由貿易連合(EFTA)地域において26.1%の販売増を記録した。一方で、EU全体の新車登録台数は前年同期比3%減少している。
BYDは2024年の年間売上高を7,771億元(約1,072億ドル)と発表し、初めて7,000億元を超えた。これは、テスラの2024年の売上高976.9億ドルを上回る結果であり、2018年以来初めてBYDがテスラを年間売上高で超えたことになる。
また、吉利汽車(Geely Auto)は2024年の財務報告において、売上高2,402億元、純利益166億元(前年比213%増)を報告した。同社のグローバル戦略も成果を上げており、東欧での売上は76.7%増加し、中東・欧州の高級市場にも急速に拡大した。さらに、海外工場の調達の60%以上を現地化している。
NIOも2024年の売上高を657.3億元と発表し、前年比18.2%増を記録した。同社の李斌CEOは、2025年までに25の国と地域へ事業を拡大する方針を示し、海外市場を主要な成長分野と位置づけている。
中国のEVメーカーの強みについて、自動車業界アナリストの呉碩成氏は、「中国の自動車業界の規模がコスト優位性を生み出し、価格競争力を維持する要因となっている」と分析した。また、ソフトウェアの重要性が増す中で、今後の利益の多くは車両の販売そのものではなく、ライフサイクル全体のサービスから生まれると述べた。
中国乗用車協会(CPCA)の崔東樹秘書長は、「中国ブランドは、技術とソフトウェアの継続的な革新によって海外市場での成長を維持している」と指摘した。さらに、「他のブランドと比較して、中国のEVは進化が速く、コストパフォーマンスに優れ、世界的に人気が高まっている」と述べた。
【詳細】
中国EVメーカーの欧州市場における成長とテスラを上回った背景
1. 2025年2月の欧州市場におけるEV販売実績
2025年2月、中国の自動車メーカーが欧州市場でのEV販売台数においてテスラを上回った。JATO Dynamicsのデータによると、BYD、Polestar、XPengなどを含む中国系ブランドは欧州で合計19,800台のEVを登録し、テスラの15,700台を超えた。前年同月(2024年2月)は、中国系ブランドの登録台数が23,182台、テスラが28,131台であり、1年でテスラの販売台数が大きく減少したことがわかる。
2. ブランド別の販売動向
中国系EVブランドの中でも特に好調だったのはボルボ(Volvo)、BYD、Polestarである。ボルボは電気自動車(BEV)の登録台数が30%減少したものの、BYDとPolestarは大幅な成長を遂げた。
・BYD:前年比94%増の販売台数を記録
・Polestar:前年比84%増の販売台数を記録
・XPeng:1,000台以上を販売
・Leapmotor:約900台を登録
この結果から、中国系ブランドの中でも特にBYDとPolestarが欧州市場で急速にシェアを拡大していることが分かる。
3. テスラの販売低迷の要因
テスラの販売が低迷した背景には、いくつかの要因が考えられる。
(1)モデルYの刷新に伴う販売調整
・テスラは欧州での主力モデルであるModel Yの刷新を進めており、新モデル投入に向けた販売調整を行っている。
・その結果、新モデル登場前の販売減少が影響したと考えられる。
(2)EV市場の競争激化
・欧州市場では中国メーカーを含む競合ブランドが急速に台頭しており、テスラが従来の優位性を維持することが難しくなっている。
(3)イーロン・マスク氏の政治的活動の影響
・テスラのCEOであるイーロン・マスク氏の政治活動が、ブランドイメージや消費者の購買意欲に影響を与えた可能性がある。
(4)モデル数の少なさによるリスク
・テスラはモデル数が限られているため、新モデル投入前の販売低迷が他ブランドよりも顕著に現れる傾向がある。
4. 中国メーカーの欧州市場での成功要因
中国メーカーの欧州市場での成長は、以下の要因によるものと考えられる。
(1)価格競争力の優位性
・中国のEVメーカーは大規模な生産体制を活用し、コストを抑えた価格設定を実現している。
・そのため、欧州市場においても競争力のある価格で販売できる。
(2)技術革新とスマート機能の強化
・スマートドライビング技術(自動運転補助)や、インテリジェントコックピットの分野で中国メーカーは先行している。
・特にBYD、NIO、XPengなどのブランドは、ソフトウェア開発にも力を入れており、欧州市場でも高い評価を得ている。
(3)欧州市場での販売ネットワークの拡大
・中国メーカーは欧州の販売・流通ネットワークを強化しており、販売拡大につながっている。
・例えば、BYDはドイツ、フランス、イギリスなどでディーラー網を拡大している。
(4)欧州の電動化政策の追い風
・欧州各国では、ガソリン車の販売禁止やEV購入補助金などの政策が進んでおり、中国メーカーにとって有利な市場環境が整っている。
5. 各中国メーカーの業績と市場展開
中国メーカーは近年、国内外での業績を伸ばしており、欧州市場でも積極的に事業を展開している。
(1)BYD
・2024年の年間売上高は**7,771億元(約1,072億ドル)**に達し、初めて7,000億元を超えた。
・テスラの2024年売上高976.9億ドルを上回り、2018年以来初めてBYDがテスラを年間売上で超えた。
(2)吉利汽車(Geely Auto)
・2024年の売上高は2,402億元。
・純利益は前年比213%増の166億元を記録。
・東欧での売上は76.7%増、中東・欧州の高級市場でも急速に拡大。
・海外工場の調達の60%以上を現地化。
(3)NIO
・2024年の売上高は657.3億元(前年比18.2%増)。
・2025年までに25の国と地域へ事業を拡大する計画。
・CEOの李斌氏は、海外市場を主要な成長分野と位置づけている。
6. 中国EVメーカーの今後の展望
自動車業界アナリストの呉碩成氏によると、中国のEVメーカーの強みは製品競争力の高さにあり、特にスマートドライビング技術やインテリジェントコックピットの分野で優位性を持っている。
また、中国自動車産業の大規模な生産体制がコスト優位性を生み出しており、価格競争力を維持できる要因となっている。
中国乗用車協会(CPCA)の崔東樹秘書長も、中国EVメーカーの技術とソフトウェアの継続的な革新が海外市場での成長を支えていると指摘した。さらに、「他のブランドと比較して、中国のEVは進化が速く、コストパフォーマンスに優れ、世界的に人気が高まっている」と述べた。
今後、中国メーカーは欧州市場のみならず、中東、東南アジア、北米市場でも事業を拡大する可能性が高く、グローバルなEV市場での競争がさらに激化することが予想される。
【要点】
中国EVメーカーの欧州市場における成長とテスラを上回った背景
1.2025年2月の販売実績
・中国系EVメーカーが欧州市場でテスラを上回る。
・中国系ブランド:19,800台、テスラ:15,700台。
・前年比でテスラの販売台数が減少。
2.ブランド別の販売動向
・BYD:前年比94%増。
・Polestar:前年比84%増。
・XPeng:1,000台以上を販売。
・Leapmotor:約900台を登録。
3.テスラの販売低迷の要因
・モデルYの刷新による販売調整。
・競争激化:他ブランドの台頭。
・イーロン・マスク氏の政治的活動による影響。
・モデル数の少なさによる販売低迷。
4.中国EVメーカーの成功要因
・価格競争力:コストを抑えた価格設定。
・技術革新:スマートドライビング技術やインテリジェントコックピット。
・販売ネットワークの拡大:欧州各国でディーラー網を強化。
・欧州の電動化政策の追い風。
5.中国EVメーカーの業績と展開
・BYD:2024年売上高7,771億元(テスラを超える)。
・吉利汽車(Geely Auto):2024年売上高2,402億元、純利益166億元。
・NIO:2024年売上高657.3億元、2025年に25か国以上へ展開。
6.今後の展望
・中国EVメーカーは製品競争力と価格競争力を武器に、欧州を含む海外市場でのシェアを拡大。
・技術革新やソフトウェアの進化により、さらなる成長が期待される。
【引用・参照・底本】
Chinese automakers overtake Tesla Europe’s EV market in February GT 2025.03.25
https://www.globaltimes.cn/page/202503/1330848.shtml
2025年2月、中国の自動車メーカーが欧州市場においてテスラを上回る電気自動車(EV)の販売を記録した。JATO Dynamicsの調査によると、BYD、Polestar、XPengを含む中国系自動車ブランドは、欧州で合計19,800台のEVを登録し、テスラの15,700台を超えた。前年同月には、中国系ブランドが23,182台、テスラが28,131台を登録していた。
中国系ブランドの中で最も売れたのはボルボ、BYD、Polestarであった。ボルボのバッテリー電気自動車(BEV)の登録台数は30%減少したものの、BYDとPolestarはそれぞれ94%、84%の大幅な増加を記録した。XPengも1,000台以上を販売し、Leapmotorも約900台を登録した。
JATO Dynamicsのグローバルアナリストであるフェリペ・ムニョス氏は、テスラがモデルYの刷新に向けて販売調整を進めていることや、EV市場での競争激化、さらにはイーロン・マスク氏の政治活動の影響を受けていると指摘した。また、モデル数が少ないブランドは、新モデル投入の過渡期に販売が落ち込みやすい傾向があると述べた。
中国メーカーはこの2年間で安定した成長を遂げており、欧州市場における販売を拡大している。上海汽車(SAIC Motor)は、2025年1月から2月にかけてEU、英国、欧州自由貿易連合(EFTA)地域において26.1%の販売増を記録した。一方で、EU全体の新車登録台数は前年同期比3%減少している。
BYDは2024年の年間売上高を7,771億元(約1,072億ドル)と発表し、初めて7,000億元を超えた。これは、テスラの2024年の売上高976.9億ドルを上回る結果であり、2018年以来初めてBYDがテスラを年間売上高で超えたことになる。
また、吉利汽車(Geely Auto)は2024年の財務報告において、売上高2,402億元、純利益166億元(前年比213%増)を報告した。同社のグローバル戦略も成果を上げており、東欧での売上は76.7%増加し、中東・欧州の高級市場にも急速に拡大した。さらに、海外工場の調達の60%以上を現地化している。
NIOも2024年の売上高を657.3億元と発表し、前年比18.2%増を記録した。同社の李斌CEOは、2025年までに25の国と地域へ事業を拡大する方針を示し、海外市場を主要な成長分野と位置づけている。
中国のEVメーカーの強みについて、自動車業界アナリストの呉碩成氏は、「中国の自動車業界の規模がコスト優位性を生み出し、価格競争力を維持する要因となっている」と分析した。また、ソフトウェアの重要性が増す中で、今後の利益の多くは車両の販売そのものではなく、ライフサイクル全体のサービスから生まれると述べた。
中国乗用車協会(CPCA)の崔東樹秘書長は、「中国ブランドは、技術とソフトウェアの継続的な革新によって海外市場での成長を維持している」と指摘した。さらに、「他のブランドと比較して、中国のEVは進化が速く、コストパフォーマンスに優れ、世界的に人気が高まっている」と述べた。
【詳細】
中国EVメーカーの欧州市場における成長とテスラを上回った背景
1. 2025年2月の欧州市場におけるEV販売実績
2025年2月、中国の自動車メーカーが欧州市場でのEV販売台数においてテスラを上回った。JATO Dynamicsのデータによると、BYD、Polestar、XPengなどを含む中国系ブランドは欧州で合計19,800台のEVを登録し、テスラの15,700台を超えた。前年同月(2024年2月)は、中国系ブランドの登録台数が23,182台、テスラが28,131台であり、1年でテスラの販売台数が大きく減少したことがわかる。
2. ブランド別の販売動向
中国系EVブランドの中でも特に好調だったのはボルボ(Volvo)、BYD、Polestarである。ボルボは電気自動車(BEV)の登録台数が30%減少したものの、BYDとPolestarは大幅な成長を遂げた。
・BYD:前年比94%増の販売台数を記録
・Polestar:前年比84%増の販売台数を記録
・XPeng:1,000台以上を販売
・Leapmotor:約900台を登録
この結果から、中国系ブランドの中でも特にBYDとPolestarが欧州市場で急速にシェアを拡大していることが分かる。
3. テスラの販売低迷の要因
テスラの販売が低迷した背景には、いくつかの要因が考えられる。
(1)モデルYの刷新に伴う販売調整
・テスラは欧州での主力モデルであるModel Yの刷新を進めており、新モデル投入に向けた販売調整を行っている。
・その結果、新モデル登場前の販売減少が影響したと考えられる。
(2)EV市場の競争激化
・欧州市場では中国メーカーを含む競合ブランドが急速に台頭しており、テスラが従来の優位性を維持することが難しくなっている。
(3)イーロン・マスク氏の政治的活動の影響
・テスラのCEOであるイーロン・マスク氏の政治活動が、ブランドイメージや消費者の購買意欲に影響を与えた可能性がある。
(4)モデル数の少なさによるリスク
・テスラはモデル数が限られているため、新モデル投入前の販売低迷が他ブランドよりも顕著に現れる傾向がある。
4. 中国メーカーの欧州市場での成功要因
中国メーカーの欧州市場での成長は、以下の要因によるものと考えられる。
(1)価格競争力の優位性
・中国のEVメーカーは大規模な生産体制を活用し、コストを抑えた価格設定を実現している。
・そのため、欧州市場においても競争力のある価格で販売できる。
(2)技術革新とスマート機能の強化
・スマートドライビング技術(自動運転補助)や、インテリジェントコックピットの分野で中国メーカーは先行している。
・特にBYD、NIO、XPengなどのブランドは、ソフトウェア開発にも力を入れており、欧州市場でも高い評価を得ている。
(3)欧州市場での販売ネットワークの拡大
・中国メーカーは欧州の販売・流通ネットワークを強化しており、販売拡大につながっている。
・例えば、BYDはドイツ、フランス、イギリスなどでディーラー網を拡大している。
(4)欧州の電動化政策の追い風
・欧州各国では、ガソリン車の販売禁止やEV購入補助金などの政策が進んでおり、中国メーカーにとって有利な市場環境が整っている。
5. 各中国メーカーの業績と市場展開
中国メーカーは近年、国内外での業績を伸ばしており、欧州市場でも積極的に事業を展開している。
(1)BYD
・2024年の年間売上高は**7,771億元(約1,072億ドル)**に達し、初めて7,000億元を超えた。
・テスラの2024年売上高976.9億ドルを上回り、2018年以来初めてBYDがテスラを年間売上で超えた。
(2)吉利汽車(Geely Auto)
・2024年の売上高は2,402億元。
・純利益は前年比213%増の166億元を記録。
・東欧での売上は76.7%増、中東・欧州の高級市場でも急速に拡大。
・海外工場の調達の60%以上を現地化。
(3)NIO
・2024年の売上高は657.3億元(前年比18.2%増)。
・2025年までに25の国と地域へ事業を拡大する計画。
・CEOの李斌氏は、海外市場を主要な成長分野と位置づけている。
6. 中国EVメーカーの今後の展望
自動車業界アナリストの呉碩成氏によると、中国のEVメーカーの強みは製品競争力の高さにあり、特にスマートドライビング技術やインテリジェントコックピットの分野で優位性を持っている。
また、中国自動車産業の大規模な生産体制がコスト優位性を生み出しており、価格競争力を維持できる要因となっている。
中国乗用車協会(CPCA)の崔東樹秘書長も、中国EVメーカーの技術とソフトウェアの継続的な革新が海外市場での成長を支えていると指摘した。さらに、「他のブランドと比較して、中国のEVは進化が速く、コストパフォーマンスに優れ、世界的に人気が高まっている」と述べた。
今後、中国メーカーは欧州市場のみならず、中東、東南アジア、北米市場でも事業を拡大する可能性が高く、グローバルなEV市場での競争がさらに激化することが予想される。
【要点】
中国EVメーカーの欧州市場における成長とテスラを上回った背景
1.2025年2月の販売実績
・中国系EVメーカーが欧州市場でテスラを上回る。
・中国系ブランド:19,800台、テスラ:15,700台。
・前年比でテスラの販売台数が減少。
2.ブランド別の販売動向
・BYD:前年比94%増。
・Polestar:前年比84%増。
・XPeng:1,000台以上を販売。
・Leapmotor:約900台を登録。
3.テスラの販売低迷の要因
・モデルYの刷新による販売調整。
・競争激化:他ブランドの台頭。
・イーロン・マスク氏の政治的活動による影響。
・モデル数の少なさによる販売低迷。
4.中国EVメーカーの成功要因
・価格競争力:コストを抑えた価格設定。
・技術革新:スマートドライビング技術やインテリジェントコックピット。
・販売ネットワークの拡大:欧州各国でディーラー網を強化。
・欧州の電動化政策の追い風。
5.中国EVメーカーの業績と展開
・BYD:2024年売上高7,771億元(テスラを超える)。
・吉利汽車(Geely Auto):2024年売上高2,402億元、純利益166億元。
・NIO:2024年売上高657.3億元、2025年に25か国以上へ展開。
6.今後の展望
・中国EVメーカーは製品競争力と価格競争力を武器に、欧州を含む海外市場でのシェアを拡大。
・技術革新やソフトウェアの進化により、さらなる成長が期待される。
【引用・参照・底本】
Chinese automakers overtake Tesla Europe’s EV market in February GT 2025.03.25
https://www.globaltimes.cn/page/202503/1330848.shtml