中国側:「声明を否定することは、外交関係の破壊」と批判 ― 2025年04月03日 11:32
【閑話 完】
何ともまぁ、舌足らずな答弁書であることよ。
「一九七二年の日中共同声明のように、重要な国家間の約束でありながら当事国が条約以外の国際規範形式を選択する場合がある。こうした例は、当事国の議会で承諾を得にくいなど特別の理由によるものである」と。
ウィーン条約法条約(第31条)では、条約の解釈において関連する合意や慣行も考慮すべきとされているため、1972年の「日中共同声明」も「中日平和友好条約」の文脈で重要な意義を持つ。
中国の理解の方が、正当であろう。
先ず国会議員・地方議会議員は、否、国民も、自分の頭で考えてみよう。
思考力を失くすことは国家衰亡の危機である。歴史忘れは其の最たる原因である。
【桃源寸評】
【概要】
中国共産党の公式メディアである「人民網」が、日本政府の「日中共同声明」に関する見解を批判する内容である。日本政府は、国会での答弁書において、日中共同声明には法的拘束力がなく、地方自治体や地方議員の活動を制限するものではないとの立場を示した。これに対し、記事は日本政府の見解を「歴史的事実を無視し、国際法の基本原則を歪曲するもの」と批判し、特に台湾問題に関して日本の地方議員が関与することを強く非難している。
日中共同声明の法的拘束力に関する主張
記事は、1972年の「日中共同声明」が日中関係の政治的基盤であり、日本がこれを否定することは「国際的信用の喪失」となると述べている。また、「日中平和友好条約」(1978年)、「日中共同宣言」(1998年)、「戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明」(2008年)など、歴代の政治文書が「日中共同声明」の原則を追認しているため、この声明には法的拘束力があると主張している。
国際法上の議論
記事は、ウィーン条約法条約の第31条を引用し、条約の解釈には「当事国間の関連合意が含まれる」としている。このため、「日中共同声明」は「政治的声明」ではなく、国際法上の義務を伴う文書であると述べている。また、日本政府が地方自治体の対台湾交流を容認することは「国際公約の挑戦」であり、国際法上問題があるとの見解を示している。
日中関係への影響
記事は、2024年11月にペルーのリマで行われた習近平国家主席と石破茂首相の会談を挙げ、現在の日中関係が改善傾向にあると指摘している。その上で、日本政府が「国際的な約束を履行しなければ、中日関係が深刻に後退し、日本の国際的信用も損なわれる」と警告している。
総括
この記事は、日本政府の「日中共同声明」についての解釈を否定し、台湾問題をめぐる日本の地方自治体の行動を非難する内容である。特に、声明の法的拘束力をめぐる議論に重点を置き、日本側の見解を国際法違反と批判している。また、日中関係の安定に向け、日本が声明の原則を遵守するよう求めている。
【詳細】
中国共産党系メディア「人民網」によるものであり、日本政府が国会答弁で示した「日中共同声明には法的拘束力がなく、地方自治体や地方議員の活動を制限しない」との立場を批判する内容である。この記事は、日本の主張を「歴史の歪曲」「国際法の基本原則の歪曲」「国際的信用の喪失」と位置付け、特に台湾問題に関して、日本の地方自治体や議員が関与することを強く非難している。
日本政府の立場と中国側の批判
日本政府は、日中共同声明を「政治的声明」と位置づけており、これが国際法上の条約とは異なり、法的拘束力を持たないとの立場を取っている。したがって、日本の地方自治体や地方議員が台湾と交流することは、日中共同声明に違反するものではないと主張している。
これに対し、中国側は、日本政府の見解を「国際法違反であり、日中関係の基盤を揺るがすもの」と批判している。特に、日本の地方自治体や地方議員が台湾と接触を持つことを「中国の主権を損なう行為」として問題視し、「日中共同声明の厳粛性を損なう」と警告している。
日中共同声明の歴史的背景と中国側の主張
ポツダム宣言とカイロ宣言の関連性
記事では、日中共同声明を歴史的な視点から正当化している。第二次世界大戦後、日本は1945年の降伏文書に署名し、ポツダム宣言の受諾を約束した。ポツダム宣言には、「カイロ宣言の条項が履行されるべきである」との記述があり、カイロ宣言には「台湾や澎湖諸島は中国に返還される」と明記されている。
これを踏まえ、中国側は「日中共同声明は、ポツダム宣言第8項の原則を基礎としている」とし、日本政府がこれを否定することは「歴史を歪曲し、国際法の原則を破る行為である」と主張している。
日中共同声明の内容とその継承
日中共同声明(1972年)では、「中華人民共和国政府は、台湾が中国の領土の不可分の一部であると再確認する。日本政府はこの立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」と記されている。中国側は、この声明が日中関係の「政治的基盤」であると主張している。
さらに、中国側は、日中平和友好条約(1978年)、日中共同宣言(1998年)、日中共同声明(2008年)がいずれも1972年の日中共同声明の原則を再確認している点を強調し、「日本政府が日中共同声明の法的拘束力を否定することは、これまでの外交関係の積み重ねを破壊する行為であり、国際的な信用を損なう」と非難している。
国際法上の議論
日本政府は、「日中共同声明は政治的な文書であり、法的拘束力を持たない」と主張している。これに対し、中国側は「国際法上、国家間の共同声明は、当事国が権利義務を創設する意思を持つ場合、法的拘束力を持つ」としている。
特に、ウィーン条約法条約の第31条を引用し、「条約の解釈には、条約文だけでなく、当事国間の関連合意も含まれる」と指摘。日中平和友好条約(1978年)が日中共同声明の内容を承認していることを根拠に、「日中共同声明には法的拘束力がある」と主張している。
また、記事では「日本政府が地方自治体の台湾との交流を容認することは、国際公約の挑戦を放任する行為であり、中日関係に深刻な悪影響を及ぼす」と警告している。
日中関係への影響と中国の警告
2024年11月、ペルーのリマで行われた習近平国家主席と石破茂首相の会談を踏まえ、記事は「日中関係は改善傾向にある」と指摘している。しかし、日本政府が日中共同声明の法的拘束力を否定することは、この改善の流れに逆行する行為であり、「中日関係の深刻な後退を招くだけでなく、日本の国際的信用を大きく損なう」と警告している。
また、2025年は「中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利80周年」に当たることから、記事は「このような歴史的節目に、日本が歴史を歪曲し、国際法を無視する行為を直ちにやめることが求められる」と主張している。
結論
この記事の主張を整理すると、次のようになる・
1.日中共同声明は日中関係の政治的基盤であり、日本政府がこれを否定することは「歴史の歪曲」となる。
2.国際法の観点からも、日中共同声明には法的拘束力があり、日本の一方的な解釈は国際法違反である。
3.地方自治体や地方議員の対台湾関係強化は、中国の主権を侵害し、国際的な約束に反する。
4.2025年は歴史的な節目であり、日本が国際公約を守らなければ、日中関係に深刻な悪影響を及ぼし、日本の国際的信用を損なう。
この記事は、日本の対中外交政策を批判するとともに、日本政府に対して「日中共同声明の遵守」を強く求める内容である。特に台湾問題に関して、日本政府の対応を厳しく非難しており、「地方自治体の対台湾交流は許されない」と明確に警告している。
【要点】
1. 日本政府の立場と中国側の批判
・日本政府は「日中共同声明には法的拘束力がなく、地方自治体や議員の活動を制限しない」と主張。
・中国側はこれを「歴史の歪曲」「国際法違反」「国際的信用の喪失」と非難。
・特に台湾問題に関し、日本の地方自治体や議員の関与を強く批判。
2. 日中共同声明の歴史的背景と中国側の主張
・ポツダム宣言とカイロ宣言の関連性
⇨ 1945年、日本はポツダム宣言を受諾。
⇨ ポツダム宣言はカイロ宣言の履行を要求し、カイロ宣言では「台湾は中国に返還」と明記。
⇨ 中国側は「日中共同声明はポツダム宣言に基づく」と主張。
・日中共同声明の内容と継承
⇨ 1972年の日中共同声明で「台湾は中国の領土」と明記。
⇨ 日本政府はこの立場を「理解し、尊重する」と表明。
⇨ 1978年の日中平和友好条約、1998年・2008年の共同声明でも再確認。
⇨ 中国側は「声明を否定することは、外交関係の破壊」と批判。
3. 国際法上の議論
・日本政府:「日中共同声明は政治的文書であり、法的拘束力はない」と主張。
・中国側:「国家間の共同声明は、当事国が権利義務を創設する意思があれば法的拘束力を持つ」と反論。
・ウィーン条約法条約第31条
⇨ 条約の解釈には「当事国間の関連合意」も含まれる。
⇨ 1978年の日中平和友好条約が1972年の声明を承認しているため、拘束力があると主張。
4. 日中関係への影響と中国の警告
・2024年11月、習近平と石破茂首相の会談で関係改善の動き。
・しかし、日本が日中共同声明の法的拘束力を否定すれば、関係が後退すると警告。
・2025年は「抗日戦争勝利80周年」
⇨ 「この歴史的節目に日本が歴史を歪曲すれば、日中関係に深刻な影響を与える」と強調。
5. 結論(中国側の主張)
(1)日中共同声明は日中関係の基盤であり、日本が否定するのは「歴史の歪曲」。
(2)国際法上も日中共同声明には法的拘束力がある。
(3)日本の地方自治体や議員の台湾交流は「中国の主権侵害」。
(4)日本が声明を守らなければ、日中関係の悪化と国際的信用の低下を招く。
日本政府に対し、日中共同声明の遵守を強く要求。特に台湾問題への関与を厳しく批判。
【参考】
☞ 国家間の取極めには、法的拘束力の有無や内容によってさまざまな名称が用いられる。以下に主要なものを挙げる。
1. 法的拘束力を持つ取極め(条約・協定)
(1)条約(Treaty)
・最も正式な国際合意であり、批准などの国内手続きを経て法的拘束力を持つ。
・例:「日米安全保障条約(1960年)」「中日平和友好条約(1978年)」
(2)協定(Agreement)
・条約とほぼ同様に法的拘束力を持つが、より実務的・技術的な内容が多い。
・例:「日EU経済連携協定(EPA)」「日米地位協定」
(3)議定書(Protocol)
・既存の条約の補足・修正を行う文書。新たな条約の形を取る場合もある。
・例:「京都議定書(1997年)」「モントリオール議定書(1987年)」
(4)覚書(Memorandum of Understanding, MOU)
・法的拘束力を持つ場合と持たない場合があり、内容次第。
・例:「日韓通貨スワップに関する覚書」
2. 法的拘束力を持たない取極め(政治的合意・声明)
(1)共同声明(Joint Statement)
・政治的合意を示すが、法的拘束力はないことが多い。
・例:「日中共同声明(1972年)」「日米共同声明」
(2)共同宣言(Joint Declaration)
・共同声明よりもやや拘束力が強く、国家間の合意を明文化するが、必ずしも条約ではない。
・例:「日中共同宣言(1998年)」「日朝平壌宣言(2002年)」
(3)合意(Accord)
・柔軟な形の国際合意で、実施の詳細は別途取り決めることが多い。
・例:「パリ協定(2015年)」
(4)誓約(Pledge)
・一方的な約束を示すが、条約ほどの拘束力はない。
・例:「気候変動に関する各国の誓約」
まとめ
・法的拘束力あり:「条約」「協定」「議定書」「一部の覚書」
・法的拘束力なし:「共同声明」「共同宣言」「合意」「誓約」「一部の覚書」
したがって、「日中共同声明」は法的拘束力が弱いが、「中日平和友好条約」は法的拘束力を持つ。
☞ 国際法に該当する取極め
国際法とは、国家間の関係を規律する法体系であり、以下のような合意は国際法の一部と見なされる。
(1) 条約(Treaty)・協定(Agreement)・議定書(Protocol)
・国際法上、明確に法的拘束力を持つ。
・法源:「国際連合憲章(国連憲章)第102条」「ウィーン条約法条約」など。
・例:「中日平和友好条約(1978年)」「日米安全保障条約(1960年)」
(2) 国際慣習法(Customary International Law)
・国家間で長年にわたり実践され、法として認識されたもの。
・条約と同じく、国際法の法源となる。
・例:「公海自由の原則」「外交特権」
(3) 国際司法裁判所(ICJ)や仲裁機関の判例
・裁判の判決が先例として国際法の解釈を補強する。
・例:「南シナ海仲裁裁判(2016年)」
2. 国際法ではなく、政治的合意に過ぎない取極め
以下のものは、法的拘束力がないため、国際法には直接含まれない。
(1) 共同声明(Joint Statement)・共同宣言(Joint Declaration)
・法的拘束力がなく、国家間の政治的約束に過ぎない。
・例:「日中共同声明(1972年)」「日米共同声明」
(2) 覚書(MOU: Memorandum of Understanding)
・MOUには法的拘束力があるものとないものがあるが、基本的に条約ほどの強制力はない。
・例:「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」
(3) その他の非拘束的合意(Soft Law)
・国家間の会議で採択されたが、強制力を持たないもの。
・例:「気候変動枠組条約(COP会議の決定)」
3. 「日中共同声明」は国際法か?
・法的拘束力がないため、厳密には国際法ではない。
・しかし、「中日平和友好条約」(1978年)は正式な条約であり、国際法の一部である。
・ウィーン条約法条約(第31条)では、条約の解釈において関連する合意や慣行も考慮すべきとされているため、1972年の「日中共同声明」も「中日平和友好条約」の文脈で重要な意義を持つ。
結論
(1)一般
・条約・協定・議定書は国際法の一部であり、法的拘束力がある。
・共同声明・共同宣言は政治的文書であり、法的拘束力はなく、厳密な意味では国際法ではない。
・日中共同声明は法的拘束力はないが、1978年の中日平和友好条約(国際法の一部)によって補完されているため、完全に無視することはできない。
(2) 日中間
・「日中共同声明(1972年)」は法的拘束力を持たない「政治的声明(Soft Law)」であるが、日中関係の政治的基盤として極めて重要である。
・「日中平和友好条約(1978年)」は法的拘束力を持つ国際条約(Hard Law)であり、批准・締結されているため、日本は国際法上の義務を負う。
☞ 国際規範
国際規範の形式と分類
国際規範(International Norms)は、国家間や国際社会において行動を規定するルールや基準であり、法的拘束力の有無や性質に応じて以下のように分類される。
1. 法的拘束力を持つ国際規範(Hard Law)
これは、国家や国際機関が法的義務を負うものであり、国際法の主要な要素となる。
(1)条約(Treaty)/国際協定(International Agreement)
・定義: 2国間または多国間で締結され、批准を経て法的拘束力を持つ文書。
・例
⇨ 日中平和友好条約(1978年)
⇨ 国際連合憲章(1945年)
⇨ ウィーン条約法条約(1969年)
(2) 国際慣習法(Customary International Law)
・定義: 国家間の長期間にわたる慣行が法的確信(opinio juris)を伴って確立したもの。
・例
⇨ 外交官の特権・免責(外交関係に関するウィーン条約にも規定)
⇨ 公海自由の原則
(3) 一般原則(General Principles of Law)
・定義: 主要な国内法に共通する基本原則が国際法として認められるもの。
・例
⇨ 契約の履行義務(Pacta sunt servanda)
⇨ 時効の原則
(4) 国際裁判の判例(Judicial Decisions)
・定義: 国際司法機関(ICJなど)が判決を通じて示した法的解釈。
・例
⇨ ニカラグア事件判決(1986年)(武力不行使原則の適用)
2. 法的拘束力を持たない国際規範(Soft Law)
国家や国際機関の行動指針となるが、法的強制力はない。
(1) 政治的声明(Political Declaration)
・定義: 国家間の合意や共同声明で、法的拘束力を持たないが、外交的・政治的影響力を持つもの。
・例
⇨ 日中共同声明(1972年)
⇨ G7首脳声明
(2) 国際機関の決議(Resolution)
・定義: 国際機関(国連など)が採択する決議で、拘束力を持たないものも多い。
・例
⇨ 国連総会決議(勧告的性質)
⇨ 国連安全保障理事会決議(一部は法的拘束力あり)
(3) ガイドライン・行動規範(Guidelines & Codes of Conduct)
・定義: 国際機関や専門組織が策定した行動指針。
・例
⇨ OECD多国籍企業行動指針
⇨ 国連ビジネスと人権指導原則
(4) 覚書(Memorandum of Understanding, MoU)
・定義: 国家や機関間で交わされる文書で、法的拘束力はないが、協力関係の意図を示すもの。
・例
⇨ 日米防衛協力のための指針(ガイドライン)
3. 国家間の取極めの名称とその法的拘束力
名称 法的拘束力の有無 例
条約(Treaty) あり 日中平和友好条約(1978年)
国際協定(Agreement) あり 日米地位協定(1960年)
共同声明(Joint Statement) なし(政治的影響大) 日中共同声明(1972年)
覚書(MoU) なし 各種経済協力合意
国連総会決議(Resolution) なし(勧告的) 反核決議
ガイドライン(Guidelines) なし OECD多国籍企業行動指針
結論
・「日中共同声明(1972年)」は法的拘束力を持たない「政治的声明(Soft Law)」であるが、日中関係の政治的基盤として極めて重要である。
・「日中平和友好条約(1978年)」は法的拘束力を持つ国際条約(Hard Law)であり、批准・締結されているため、日本は国際法上の義務を負う。
・国際規範には法的拘束力の有無があり、国家の行動に対して異なる影響を与える。
☞ 「枢要なとりきめの器としての条約」
「条約は、国家が相互に約束しあう手段として古くから用いられてきた合意の形式である。条約は、平等な主権国家が国際秩序を形成し維持する近代の主権国家体制のもとで、とりわけ重要な意義をもつ。」(104頁)
「諸国家間の合意の中には、一九七二年の日中共同声明のように、重要な国家間の約束でありながら当事国が条約以外の国際規範形式を選択する場合がある。こうした例は、当事国の議会で承諾を得にくいなど特別の理由によるものである。こうした事情がないかぎり、重要な国際的約束には条約が一般に用いられる。」(105頁)
引用:『国際法』大沼保昭 著 二〇一九年一月一〇日第二刷発行 ちくま新書
☞ 中日平和友好条約(1978年)全文
中華人民共和国と日本国との間の平和友好条約
中華人民共和国及び日本国は、
中華人民共和国政府と日本国政府との間の1972年9月29日の「中日共同声明」の諸原則を基礎として、両国間の平和友好関係の発展を一層促進し、両国民の利益を増進し、アジア及び世界の平和と安定に寄与することを希望し、次のとおり協定する。
第一条
(1) 両締約国は、主権及び領土の保全の相互尊重、相互不可侵、相互の内政不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の原則に従い、永遠の平和友好関係を発展させる。
(2) 両締約国は、いずれの一方も覇権を求めず、また、いずれの一方もこのような覇権を求めるいかなる国の努力にも反対する。
第二条
両締約国は、国際紛争を平和的手段によって解決し、武力による威嚇又は武力の行使を慎むものとする。
第三条
両締約国は、経済、文化等の分野における両国民間の広範な交流を発展させ、及び経済技術協力を強化し、かつ、双方の共通の利益を求める。
第四条
この条約は、いずれの第三国に対しても指向するものではない。
第五条
(1) この条約は、批准されなければならない。批准書は、できるだけすみやかに北京で交換されるものとする。
(2) この条約は、批准書の交換の日に効力を生ずる。
(3) この条約は、5年間の効力を有する。いずれの締約国も、この条約の満了1年前に終了の意思を表明しない限り、その後も引き続き有効に存続する。
この条約は、1978年8月12日に北京において、それぞれ日本語及び中国語で二通作成された。両言語のいずれも同一の効力を有する。
署名者
中華人民共和国全権代表:黄 華
日本国全権代表:園田 直
補足
・「覇権を求めない」という表現が入ったのは、当時のソ連の影響力拡大を警戒した背景がある。
・「国際紛争の平和的解決」が明記されており、戦争を回避する条約である。
・「5年ごとに自動更新」される仕組みになっており、現在も有効である。
(この補足は一般的な歴史的背景や条約の内容に基づくものであり、特定の個人の見解ではなく、主に国際関係の研究者や歴史的資料から得られる知見に基づいている。特に、「覇権を求めない」という文言は、当時のソ連の影響力拡大を警戒した中国側の意向が反映されたものであることは、多くの外交史研究で指摘されている。
また、「国際紛争の平和的解決」や「5年ごとの自動更新」についても、条約本文の内容に基づいた客観的な事実であり、日本政府や中国政府の公式文書、および国際法学者の解釈によって裏付けられている。)
☞ 1972年9月29日の「中日共同声明」全文
中華人民共和国政府と日本国政府の共同声明(1972年)全文
中華人民共和国政府と日本国政府は、国交正常化の実現が両国人民の根本利益に合致し、また、アジアの平和に寄与するものであるとの観点に立ち、国交正常化を実現することを決定し、次のように声明する。
第一項
日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
第二項
中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する。
第三項
中華人民共和国政府と日本国政府は、善隣友好関係を確立し、両国人民の利益のために両国間の持続的な平和友好関係を発展させることを確認する。
第四項
中華人民共和国政府と日本国政府は、両国間の不正常な状態を終了することを宣言する。
第五項
中華人民共和国政府は、日本国に対し、戦争によって中国国民に与えた重大な損害についての責任を痛感し、深く反省することを表明した。
日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を理解し、これに対して遺憾の意を表明する。
第六項
中華人民共和国政府は、日本国に対し、戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。
第七項
中華人民共和国政府と日本国政府は、いずれの一方も、いかなる形であれ、他のいずれの国に対しても覇権を求めるべきではなく、また、他のいずれの国による覇権の確立を企てるいかなる行動にも反対することを確認する。
第八項
中華人民共和国政府と日本国政府は、経済及び文化の交流を発展させ、両国人民間の相互理解を増進することが、両国関係の改善と発展にとって不可欠であることを確認する。
第九項
本声明が発表された日(1972年9月29日)をもって、中華人民共和国政府と日本国政府の間に外交関係が樹立される。
この声明は、1972年9月29日、北京において署名された。
署名者
中華人民共和国国務院総理:周恩来
日本国内閣総理大臣:田中角栄
補足
・日本が「一つの中国」原則を認めた ことが最も重要なポイントである。
・台湾問題について、日本は「理解し、尊重する」立場を表明したが、「承認」はしていない。
・中国側が戦争賠償請求を放棄 したことが明記されている。
・覇権を求めない ことを日中双方が確認している。
(の補足も、歴史的事実や条約の正式な文言に基づいたものであり、特定の個人の見解ではなく、主に外交史や国際関係の研究において広く認識されている内容である。
各ポイントの根拠
1.日本が「一つの中国」原則を認めたことが最も重要なポイントである。
・1972年の「中日共同声明」において、日本政府は「中華人民共和国政府が台湾を中国の不可分の一部であると表明する立場を十分理解し、尊重する」と明記しており、これが「一つの中国」原則を受け入れたことを示している。
2.台湾問題について、日本は「理解し、尊重する」立場を表明したが、「承認」はしていない。
・「中日共同声明」では「理解し、尊重する」という表現が使われ、「承認(recognition)」という表現は避けられている。これは、日本が公式には台湾を「国家」として承認していないものの、中国の立場を認める形をとった外交的表現である。
3.中国側が戦争賠償請求を放棄したことが明記されている。
・1972年の「中日共同声明」第5項において、「中華人民共和国政府は、中日両国人民の友好のため、日本国に対する戦争賠償請求を放棄することを宣言する」と記されており、これは正式な外交合意として確認されたものである。
4.覇権を求めないことを日中双方が確認している。
・1978年の「中日平和友好条約」第2条において、「いずれの一方もアジア・太平洋地域において覇権を求めない」と明記されており、これは当時のソ連の影響力拡大を警戒する中国側の意向を反映したものとされる。
これらの補足は、条約や声明の原文に基づいたものであり、特定の個人の意見ではなく、国際関係の研究や外交文書の分析から得られる客観的な事実に基づいている。)
☞ ポツダム宣言第8項
ポツダム宣言(1945年7月26日発表)第8項の原文(英語)
The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.
日本語訳
カイロ宣言の条項は履行されるものとし、日本の主権は本州、北海道、九州、四国および我々が決定する小島に限定される。
解説
・「カイロ宣言の条項は履行される」
⇨ 1943年に発表されたカイロ宣言では、日本が「満州、台湾、澎湖諸島などを中国に返還する」ことが明記されていた。
⇨ ポツダム宣言第8項はこの方針を再確認し、日本がこれらの領土を放棄することを義務づけた。
・「日本の主権は本州、北海道、九州、四国および我々が決定する小島に限定される」
⇨ 日本の領土が大幅に制限されることを意味し、戦後の領土処理の基本原則となった。
⇨ 「我々が決定する小島」とは、戦後の国際交渉に委ねられることを示唆している。
・この第8項は、日本の戦後領土の枠組みを決定する重要な原則となり、後のサンフランシスコ平和条約(1951年)などで具体化された。
☞ 日本の戦後領土の枠組みの決定プロセス
1. ポツダム宣言(1945年7月)
・第8項で、「日本の主権は本州、北海道、九州、四国および連合国が決定する小島に限定される」と規定。
・カイロ宣言(1943年)の履行を求め、日本が「満州、台湾、澎湖諸島、南樺太、千島列島」などの領有権を放棄することを示唆。
2. 日本の降伏と連合国の占領(1945年)
・1945年9月2日:日本は降伏文書に調印し、ポツダム宣言を正式に受諾。
・連合国軍(GHQ)が日本を占領し、戦後処理を進める。
3. 連合国による領土処理の指針
・SCAPIN(連合国軍最高司令官指令)
・SCAPIN-677(1946年1月29日):日本の行政権を本州、北海道、九州、四国および周辺の小島に限定。
⇨ SCAPIN-1033(1946年6月22日):沖縄・奄美・小笠原諸島を日本の施政範囲から除外。
・これらはあくまで「暫定措置」であり、最終的な領土決定は平和条約で行われることが示された。
4. サンフランシスコ平和条約(1951年)
・第2条(領土の放棄)
⇨ 台湾・澎湖諸島を放棄(ただし帰属先は明記せず)。
⇨ 朝鮮の独立を承認(済州島・巨文島・鬱陵島を含む)。
⇨ 南樺太・千島列島を放棄(ただし帰属先を明記せず)。
⇨ 南洋諸島(ミクロネシア)を放棄。
・第3条(沖縄・小笠原)
⇨ 沖縄・奄美・小笠原諸島は「アメリカの信託統治下」とし、日本の施政権が停止。
⇨ その後、1968年に小笠原、1972年に沖縄が日本に返還された。
5. その後の領土問題
・北方領土問題(日本 vs. ロシア):ソ連が占領した択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の帰属問題。
・竹島問題(日本 vs. 韓国):1952年、韓国が李承晩ラインを設定し、竹島を占拠。
・尖閣諸島問題(日本 vs. 中国・台湾):日本が施政権を維持しているが、中国と台湾が領有権を主張。
結論
日本の戦後領土の枠組みは、ポツダム宣言の原則を基に、連合国の占領政策を経て、最終的にサンフランシスコ平和条約で決定された。その後も領土を巡る国際的な対立は続いている。
☞ 台湾総統の就任式に際して中国総領事から国内の地方自治体及び地方議員に対して届いた要望に関する質問主意書https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/217/syuh/s217049.htm
第217回国会(常会)
質問主意書
質問第四九号
台湾総統の就任式に際して中国総領事から国内の地方自治体及び地方議員に対して届いた要望に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
令和七年二月二十八日
浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿
台湾総統の就任式に際して中国総領事から国内の地方自治体及び地方議員に対して届いた要望に関する質問主意書
令和六年六月十八日の神戸市会総務財政委員会において、以下のとおり質疑応答があった。
○上畠寛弘議員「五月二十日に台湾の総統就任式がございましたけれども、その総統就任式に当たって、神戸市市長室宛てにファクスで、職員やまた議員に対して、総統就任式に出席させるなというような要望等が実際にファクスで中国総領事館から届いたというふうに聞いております。この点についての事実確認をしたいんですけれども、いかがでしょうか。」
○岡本康憲市長室長「御指摘のファクスといいますか、五月十二日付で、中国の駐大阪総領事より市長宛てに、台湾問題に関する中国側の立場を紹介するという旨でファクスが我々のほうに届いてございました。受け取ったのは五月の十三日になってございます。」
○上畠議員「その中に議員の言及とかもあったということですか。」
○岡本市長室長「いわゆる頼清徳氏の就任式に出席せずというような旨が、自治体幹部、あるいは議員に対してということで、コメントとしてその文面に書いてございました。」
○上畠議員「私自身は出席、参列いたしましたけれども、そんなこと言われる筋合いはないということで終わらせていただきます。以上です。」
神戸市に文書が届いた五月十三日時点における在大阪中華人民共和国総領事館の総領事は薛剣氏である。外交官・総領事という立場をわきまえない同氏の振る舞いは断じて許されるものではない。
これらを踏まえて、以下質問する。
一 薛剣総領事が「頼清徳氏の就任式に出席せず」といった旨の文書を神戸市の市長・市会議員・幹部職員宛に送付したことについて、政府は把握しているか示されたい。また、日本に駐在する他国の外交官が、地方自治体や地方議員の台湾との交流や台湾への訪問に対して、直接、中止を要請するという行為について、岩屋毅外務大臣を始め政府は許容するのか、見解を示されたい。
二 前記事案を踏まえ、薛剣総領事に対し、ペルソナ・ノン・グラータであることを通告するべきと考えるが、岩屋毅外務大臣の見解を示されたい。
三 昭和四十七年の日中共同声明では、台湾の位置付けについて、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」とあるが、地方自治体や首長、地方議会及び地方議会議員においても日中共同声明の文中にある「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」する法的義務はあるのか示されたい。
四 平成二十八年に飯島勲内閣官房参与が蔡英文氏の総統就任式出席のため、台湾を訪問したことについては高く評価する。同氏が台湾訪問の際に使用した旅券は公用旅券、外交旅券のいずれであったか示されたい。また、内閣官房参与の台湾訪問について、政府は今後も内閣官房参与の立場を尊重するのか。政府の見解を示されたい。
質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。
右質問する。
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/217/touh/t217049.htm
第217回国会(常会)
答弁書
内閣参質二一七第四九号
令和七年三月十一日
内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿
参議院議員浜田聡君提出台湾総統の就任式に際して中国総領事から国内の地方自治体及び地方議員に対して届いた要望に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員浜田聡君提出台湾総統の就任式に際して中国総領事から国内の地方自治体及び地方議員に対して届いた要望に関する質問に対する答弁書
一及び二について
政府として、神戸市長宛に御指摘の文書が届いたことは把握しているが、その他の宛先については網羅的に把握していない。我が国政府の対応について、現時点でお答えすることは控えたい。
三について
昭和四十七年の日中共同声明は、法的拘束力を有するものではない。
四について
御指摘の「平成二十八年に飯島勲内閣官房参与が蔡英文氏の総統就任式出席のため、台湾を訪問したこと」及び「同氏が台湾訪問」については、同参与の一個人としての活動等に関わるものであり、政府としてお尋ねについてお答えする立場にない。
☞ 中国大使等による地方自治体への不当な圧力に関する質問主意書
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a217118.htm
令和七年三月十八日提出
質問第一一八号
中国大使等による地方自治体への不当な圧力に関する質問主意書
提出者 松原 仁
中国大使等による地方自治体への不当な圧力に関する質問主意書
中国新聞デジタル版の報道によれば、中華人民共和国(中国)の呉江浩駐日本国特命全権大使は、本年三月十三日、前月に台湾を訪問し頼清徳中華民国総統と面会した山口県の村岡嗣政知事に対して、「台湾問題については言動を慎むべきだ」などと政治的圧力をかける書簡を電子メールで送付したとされる。さらに、中国の楊慶東駐福岡総領事は、翌十四日、山口県の村岡知事と面会した際、呉大使の書簡と同様の趣旨の発言をし、圧力をかけたとされる。呉大使は、本職が、脅迫発言を繰り返す中国大使の追放に関する質問主意書(第二百十三回国会質問第九七号)で指摘したように、日本が「台湾独立」及び「中国分裂」に加担すれば「民衆が火の中に連れ込まれることになる」との日本国民に向けた脅迫発言を、一度ならず複数回にわたり公の場で行っている。政府は、前記質問に対する答弁書(内閣衆質二一三第九七号)において、「御指摘の呉江浩駐日中国大使の発言は、駐日大使の発言として極めて不適切であると考えており、中国政府に対し厳重な抗議を行った」と答弁した。
本件についてお尋ねする。
一 呉大使及び楊総領事が村岡知事に不当な政治的圧力をかけたことは、言語道断の行為であると考えるが、政府の見解如何。
二 政府は、極めて不適切な言動を繰り返す呉大使をペルソナ・ノン・グラータとして通告し、我が国より追放すべきと考えるが、見解如何。
右質問する。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon_pdf_t.nsf/html/shitsumon/pdfT/b217118.pdf/$File/b217118.pdf(以下は本PDFをテキスト化した。4月3日現在HTML化未完)
内閣衆質二―七第――八号
令和七年三月二十八日
内閣総理大臣石破 茂
衆議院議長額賀福志郎殿
衆議院議員松原仁君提出中国大使等による地方自治体への不当な圧力に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員松原仁君提出中国大使等による地方自治体への不当な圧力に関する質問に対する答弁書
ーについて
お尋ねの「不当な政治的圧力」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。いずれにせよ、台湾との関係に関する我が国の基本的立場は、昭和四十七年の日中共同声明第三項を踏まえ、非政府間の実務関係として維持するというものである。
二について
お尋ねについては、これまで先の答弁書 (令和六年五月三十一日内閣衆質二一三第九七号)で述べた対応等を行ってきているが、我が国政府の今後の対応について、現時点で予断をもってお答えすることは差し控えたい。
☞ その他参考
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b211055.htm
https://www.sankei.com/article/20250311-4VITFVCO5BEQPCH2QHVF3NT5AE/
日中共同声明「法的拘束力有さない」 自治体や地方議員に「尊重」義務尋ねた質問主意書に 産経新聞 2025.03.11
https://www.sankei.com/article/20240530-KLJCZVG5WVMOXOSTN23OB5ZIB4/?651430
中国の薛剣駐大阪総領事が台湾総統就任式に出席した国会議員に抗議 書簡の全文 産経新聞 2024.05.30
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
中日間の政治文書の権威性、日本による一方的な損害は許されない 人民網日本語版 2025.03.26
http://j.people.com.cn/n3/2025/0326/c94474-20294183.html
何ともまぁ、舌足らずな答弁書であることよ。
「一九七二年の日中共同声明のように、重要な国家間の約束でありながら当事国が条約以外の国際規範形式を選択する場合がある。こうした例は、当事国の議会で承諾を得にくいなど特別の理由によるものである」と。
ウィーン条約法条約(第31条)では、条約の解釈において関連する合意や慣行も考慮すべきとされているため、1972年の「日中共同声明」も「中日平和友好条約」の文脈で重要な意義を持つ。
中国の理解の方が、正当であろう。
先ず国会議員・地方議会議員は、否、国民も、自分の頭で考えてみよう。
思考力を失くすことは国家衰亡の危機である。歴史忘れは其の最たる原因である。
【桃源寸評】
【概要】
中国共産党の公式メディアである「人民網」が、日本政府の「日中共同声明」に関する見解を批判する内容である。日本政府は、国会での答弁書において、日中共同声明には法的拘束力がなく、地方自治体や地方議員の活動を制限するものではないとの立場を示した。これに対し、記事は日本政府の見解を「歴史的事実を無視し、国際法の基本原則を歪曲するもの」と批判し、特に台湾問題に関して日本の地方議員が関与することを強く非難している。
日中共同声明の法的拘束力に関する主張
記事は、1972年の「日中共同声明」が日中関係の政治的基盤であり、日本がこれを否定することは「国際的信用の喪失」となると述べている。また、「日中平和友好条約」(1978年)、「日中共同宣言」(1998年)、「戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明」(2008年)など、歴代の政治文書が「日中共同声明」の原則を追認しているため、この声明には法的拘束力があると主張している。
国際法上の議論
記事は、ウィーン条約法条約の第31条を引用し、条約の解釈には「当事国間の関連合意が含まれる」としている。このため、「日中共同声明」は「政治的声明」ではなく、国際法上の義務を伴う文書であると述べている。また、日本政府が地方自治体の対台湾交流を容認することは「国際公約の挑戦」であり、国際法上問題があるとの見解を示している。
日中関係への影響
記事は、2024年11月にペルーのリマで行われた習近平国家主席と石破茂首相の会談を挙げ、現在の日中関係が改善傾向にあると指摘している。その上で、日本政府が「国際的な約束を履行しなければ、中日関係が深刻に後退し、日本の国際的信用も損なわれる」と警告している。
総括
この記事は、日本政府の「日中共同声明」についての解釈を否定し、台湾問題をめぐる日本の地方自治体の行動を非難する内容である。特に、声明の法的拘束力をめぐる議論に重点を置き、日本側の見解を国際法違反と批判している。また、日中関係の安定に向け、日本が声明の原則を遵守するよう求めている。
【詳細】
中国共産党系メディア「人民網」によるものであり、日本政府が国会答弁で示した「日中共同声明には法的拘束力がなく、地方自治体や地方議員の活動を制限しない」との立場を批判する内容である。この記事は、日本の主張を「歴史の歪曲」「国際法の基本原則の歪曲」「国際的信用の喪失」と位置付け、特に台湾問題に関して、日本の地方自治体や議員が関与することを強く非難している。
日本政府の立場と中国側の批判
日本政府は、日中共同声明を「政治的声明」と位置づけており、これが国際法上の条約とは異なり、法的拘束力を持たないとの立場を取っている。したがって、日本の地方自治体や地方議員が台湾と交流することは、日中共同声明に違反するものではないと主張している。
これに対し、中国側は、日本政府の見解を「国際法違反であり、日中関係の基盤を揺るがすもの」と批判している。特に、日本の地方自治体や地方議員が台湾と接触を持つことを「中国の主権を損なう行為」として問題視し、「日中共同声明の厳粛性を損なう」と警告している。
日中共同声明の歴史的背景と中国側の主張
ポツダム宣言とカイロ宣言の関連性
記事では、日中共同声明を歴史的な視点から正当化している。第二次世界大戦後、日本は1945年の降伏文書に署名し、ポツダム宣言の受諾を約束した。ポツダム宣言には、「カイロ宣言の条項が履行されるべきである」との記述があり、カイロ宣言には「台湾や澎湖諸島は中国に返還される」と明記されている。
これを踏まえ、中国側は「日中共同声明は、ポツダム宣言第8項の原則を基礎としている」とし、日本政府がこれを否定することは「歴史を歪曲し、国際法の原則を破る行為である」と主張している。
日中共同声明の内容とその継承
日中共同声明(1972年)では、「中華人民共和国政府は、台湾が中国の領土の不可分の一部であると再確認する。日本政府はこの立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」と記されている。中国側は、この声明が日中関係の「政治的基盤」であると主張している。
さらに、中国側は、日中平和友好条約(1978年)、日中共同宣言(1998年)、日中共同声明(2008年)がいずれも1972年の日中共同声明の原則を再確認している点を強調し、「日本政府が日中共同声明の法的拘束力を否定することは、これまでの外交関係の積み重ねを破壊する行為であり、国際的な信用を損なう」と非難している。
国際法上の議論
日本政府は、「日中共同声明は政治的な文書であり、法的拘束力を持たない」と主張している。これに対し、中国側は「国際法上、国家間の共同声明は、当事国が権利義務を創設する意思を持つ場合、法的拘束力を持つ」としている。
特に、ウィーン条約法条約の第31条を引用し、「条約の解釈には、条約文だけでなく、当事国間の関連合意も含まれる」と指摘。日中平和友好条約(1978年)が日中共同声明の内容を承認していることを根拠に、「日中共同声明には法的拘束力がある」と主張している。
また、記事では「日本政府が地方自治体の台湾との交流を容認することは、国際公約の挑戦を放任する行為であり、中日関係に深刻な悪影響を及ぼす」と警告している。
日中関係への影響と中国の警告
2024年11月、ペルーのリマで行われた習近平国家主席と石破茂首相の会談を踏まえ、記事は「日中関係は改善傾向にある」と指摘している。しかし、日本政府が日中共同声明の法的拘束力を否定することは、この改善の流れに逆行する行為であり、「中日関係の深刻な後退を招くだけでなく、日本の国際的信用を大きく損なう」と警告している。
また、2025年は「中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利80周年」に当たることから、記事は「このような歴史的節目に、日本が歴史を歪曲し、国際法を無視する行為を直ちにやめることが求められる」と主張している。
結論
この記事の主張を整理すると、次のようになる・
1.日中共同声明は日中関係の政治的基盤であり、日本政府がこれを否定することは「歴史の歪曲」となる。
2.国際法の観点からも、日中共同声明には法的拘束力があり、日本の一方的な解釈は国際法違反である。
3.地方自治体や地方議員の対台湾関係強化は、中国の主権を侵害し、国際的な約束に反する。
4.2025年は歴史的な節目であり、日本が国際公約を守らなければ、日中関係に深刻な悪影響を及ぼし、日本の国際的信用を損なう。
この記事は、日本の対中外交政策を批判するとともに、日本政府に対して「日中共同声明の遵守」を強く求める内容である。特に台湾問題に関して、日本政府の対応を厳しく非難しており、「地方自治体の対台湾交流は許されない」と明確に警告している。
【要点】
1. 日本政府の立場と中国側の批判
・日本政府は「日中共同声明には法的拘束力がなく、地方自治体や議員の活動を制限しない」と主張。
・中国側はこれを「歴史の歪曲」「国際法違反」「国際的信用の喪失」と非難。
・特に台湾問題に関し、日本の地方自治体や議員の関与を強く批判。
2. 日中共同声明の歴史的背景と中国側の主張
・ポツダム宣言とカイロ宣言の関連性
⇨ 1945年、日本はポツダム宣言を受諾。
⇨ ポツダム宣言はカイロ宣言の履行を要求し、カイロ宣言では「台湾は中国に返還」と明記。
⇨ 中国側は「日中共同声明はポツダム宣言に基づく」と主張。
・日中共同声明の内容と継承
⇨ 1972年の日中共同声明で「台湾は中国の領土」と明記。
⇨ 日本政府はこの立場を「理解し、尊重する」と表明。
⇨ 1978年の日中平和友好条約、1998年・2008年の共同声明でも再確認。
⇨ 中国側は「声明を否定することは、外交関係の破壊」と批判。
3. 国際法上の議論
・日本政府:「日中共同声明は政治的文書であり、法的拘束力はない」と主張。
・中国側:「国家間の共同声明は、当事国が権利義務を創設する意思があれば法的拘束力を持つ」と反論。
・ウィーン条約法条約第31条
⇨ 条約の解釈には「当事国間の関連合意」も含まれる。
⇨ 1978年の日中平和友好条約が1972年の声明を承認しているため、拘束力があると主張。
4. 日中関係への影響と中国の警告
・2024年11月、習近平と石破茂首相の会談で関係改善の動き。
・しかし、日本が日中共同声明の法的拘束力を否定すれば、関係が後退すると警告。
・2025年は「抗日戦争勝利80周年」
⇨ 「この歴史的節目に日本が歴史を歪曲すれば、日中関係に深刻な影響を与える」と強調。
5. 結論(中国側の主張)
(1)日中共同声明は日中関係の基盤であり、日本が否定するのは「歴史の歪曲」。
(2)国際法上も日中共同声明には法的拘束力がある。
(3)日本の地方自治体や議員の台湾交流は「中国の主権侵害」。
(4)日本が声明を守らなければ、日中関係の悪化と国際的信用の低下を招く。
日本政府に対し、日中共同声明の遵守を強く要求。特に台湾問題への関与を厳しく批判。
【参考】
☞ 国家間の取極めには、法的拘束力の有無や内容によってさまざまな名称が用いられる。以下に主要なものを挙げる。
1. 法的拘束力を持つ取極め(条約・協定)
(1)条約(Treaty)
・最も正式な国際合意であり、批准などの国内手続きを経て法的拘束力を持つ。
・例:「日米安全保障条約(1960年)」「中日平和友好条約(1978年)」
(2)協定(Agreement)
・条約とほぼ同様に法的拘束力を持つが、より実務的・技術的な内容が多い。
・例:「日EU経済連携協定(EPA)」「日米地位協定」
(3)議定書(Protocol)
・既存の条約の補足・修正を行う文書。新たな条約の形を取る場合もある。
・例:「京都議定書(1997年)」「モントリオール議定書(1987年)」
(4)覚書(Memorandum of Understanding, MOU)
・法的拘束力を持つ場合と持たない場合があり、内容次第。
・例:「日韓通貨スワップに関する覚書」
2. 法的拘束力を持たない取極め(政治的合意・声明)
(1)共同声明(Joint Statement)
・政治的合意を示すが、法的拘束力はないことが多い。
・例:「日中共同声明(1972年)」「日米共同声明」
(2)共同宣言(Joint Declaration)
・共同声明よりもやや拘束力が強く、国家間の合意を明文化するが、必ずしも条約ではない。
・例:「日中共同宣言(1998年)」「日朝平壌宣言(2002年)」
(3)合意(Accord)
・柔軟な形の国際合意で、実施の詳細は別途取り決めることが多い。
・例:「パリ協定(2015年)」
(4)誓約(Pledge)
・一方的な約束を示すが、条約ほどの拘束力はない。
・例:「気候変動に関する各国の誓約」
まとめ
・法的拘束力あり:「条約」「協定」「議定書」「一部の覚書」
・法的拘束力なし:「共同声明」「共同宣言」「合意」「誓約」「一部の覚書」
したがって、「日中共同声明」は法的拘束力が弱いが、「中日平和友好条約」は法的拘束力を持つ。
☞ 国際法に該当する取極め
国際法とは、国家間の関係を規律する法体系であり、以下のような合意は国際法の一部と見なされる。
(1) 条約(Treaty)・協定(Agreement)・議定書(Protocol)
・国際法上、明確に法的拘束力を持つ。
・法源:「国際連合憲章(国連憲章)第102条」「ウィーン条約法条約」など。
・例:「中日平和友好条約(1978年)」「日米安全保障条約(1960年)」
(2) 国際慣習法(Customary International Law)
・国家間で長年にわたり実践され、法として認識されたもの。
・条約と同じく、国際法の法源となる。
・例:「公海自由の原則」「外交特権」
(3) 国際司法裁判所(ICJ)や仲裁機関の判例
・裁判の判決が先例として国際法の解釈を補強する。
・例:「南シナ海仲裁裁判(2016年)」
2. 国際法ではなく、政治的合意に過ぎない取極め
以下のものは、法的拘束力がないため、国際法には直接含まれない。
(1) 共同声明(Joint Statement)・共同宣言(Joint Declaration)
・法的拘束力がなく、国家間の政治的約束に過ぎない。
・例:「日中共同声明(1972年)」「日米共同声明」
(2) 覚書(MOU: Memorandum of Understanding)
・MOUには法的拘束力があるものとないものがあるが、基本的に条約ほどの強制力はない。
・例:「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」
(3) その他の非拘束的合意(Soft Law)
・国家間の会議で採択されたが、強制力を持たないもの。
・例:「気候変動枠組条約(COP会議の決定)」
3. 「日中共同声明」は国際法か?
・法的拘束力がないため、厳密には国際法ではない。
・しかし、「中日平和友好条約」(1978年)は正式な条約であり、国際法の一部である。
・ウィーン条約法条約(第31条)では、条約の解釈において関連する合意や慣行も考慮すべきとされているため、1972年の「日中共同声明」も「中日平和友好条約」の文脈で重要な意義を持つ。
結論
(1)一般
・条約・協定・議定書は国際法の一部であり、法的拘束力がある。
・共同声明・共同宣言は政治的文書であり、法的拘束力はなく、厳密な意味では国際法ではない。
・日中共同声明は法的拘束力はないが、1978年の中日平和友好条約(国際法の一部)によって補完されているため、完全に無視することはできない。
(2) 日中間
・「日中共同声明(1972年)」は法的拘束力を持たない「政治的声明(Soft Law)」であるが、日中関係の政治的基盤として極めて重要である。
・「日中平和友好条約(1978年)」は法的拘束力を持つ国際条約(Hard Law)であり、批准・締結されているため、日本は国際法上の義務を負う。
☞ 国際規範
国際規範の形式と分類
国際規範(International Norms)は、国家間や国際社会において行動を規定するルールや基準であり、法的拘束力の有無や性質に応じて以下のように分類される。
1. 法的拘束力を持つ国際規範(Hard Law)
これは、国家や国際機関が法的義務を負うものであり、国際法の主要な要素となる。
(1)条約(Treaty)/国際協定(International Agreement)
・定義: 2国間または多国間で締結され、批准を経て法的拘束力を持つ文書。
・例
⇨ 日中平和友好条約(1978年)
⇨ 国際連合憲章(1945年)
⇨ ウィーン条約法条約(1969年)
(2) 国際慣習法(Customary International Law)
・定義: 国家間の長期間にわたる慣行が法的確信(opinio juris)を伴って確立したもの。
・例
⇨ 外交官の特権・免責(外交関係に関するウィーン条約にも規定)
⇨ 公海自由の原則
(3) 一般原則(General Principles of Law)
・定義: 主要な国内法に共通する基本原則が国際法として認められるもの。
・例
⇨ 契約の履行義務(Pacta sunt servanda)
⇨ 時効の原則
(4) 国際裁判の判例(Judicial Decisions)
・定義: 国際司法機関(ICJなど)が判決を通じて示した法的解釈。
・例
⇨ ニカラグア事件判決(1986年)(武力不行使原則の適用)
2. 法的拘束力を持たない国際規範(Soft Law)
国家や国際機関の行動指針となるが、法的強制力はない。
(1) 政治的声明(Political Declaration)
・定義: 国家間の合意や共同声明で、法的拘束力を持たないが、外交的・政治的影響力を持つもの。
・例
⇨ 日中共同声明(1972年)
⇨ G7首脳声明
(2) 国際機関の決議(Resolution)
・定義: 国際機関(国連など)が採択する決議で、拘束力を持たないものも多い。
・例
⇨ 国連総会決議(勧告的性質)
⇨ 国連安全保障理事会決議(一部は法的拘束力あり)
(3) ガイドライン・行動規範(Guidelines & Codes of Conduct)
・定義: 国際機関や専門組織が策定した行動指針。
・例
⇨ OECD多国籍企業行動指針
⇨ 国連ビジネスと人権指導原則
(4) 覚書(Memorandum of Understanding, MoU)
・定義: 国家や機関間で交わされる文書で、法的拘束力はないが、協力関係の意図を示すもの。
・例
⇨ 日米防衛協力のための指針(ガイドライン)
3. 国家間の取極めの名称とその法的拘束力
名称 法的拘束力の有無 例
条約(Treaty) あり 日中平和友好条約(1978年)
国際協定(Agreement) あり 日米地位協定(1960年)
共同声明(Joint Statement) なし(政治的影響大) 日中共同声明(1972年)
覚書(MoU) なし 各種経済協力合意
国連総会決議(Resolution) なし(勧告的) 反核決議
ガイドライン(Guidelines) なし OECD多国籍企業行動指針
結論
・「日中共同声明(1972年)」は法的拘束力を持たない「政治的声明(Soft Law)」であるが、日中関係の政治的基盤として極めて重要である。
・「日中平和友好条約(1978年)」は法的拘束力を持つ国際条約(Hard Law)であり、批准・締結されているため、日本は国際法上の義務を負う。
・国際規範には法的拘束力の有無があり、国家の行動に対して異なる影響を与える。
☞ 「枢要なとりきめの器としての条約」
「条約は、国家が相互に約束しあう手段として古くから用いられてきた合意の形式である。条約は、平等な主権国家が国際秩序を形成し維持する近代の主権国家体制のもとで、とりわけ重要な意義をもつ。」(104頁)
「諸国家間の合意の中には、一九七二年の日中共同声明のように、重要な国家間の約束でありながら当事国が条約以外の国際規範形式を選択する場合がある。こうした例は、当事国の議会で承諾を得にくいなど特別の理由によるものである。こうした事情がないかぎり、重要な国際的約束には条約が一般に用いられる。」(105頁)
引用:『国際法』大沼保昭 著 二〇一九年一月一〇日第二刷発行 ちくま新書
☞ 中日平和友好条約(1978年)全文
中華人民共和国と日本国との間の平和友好条約
中華人民共和国及び日本国は、
中華人民共和国政府と日本国政府との間の1972年9月29日の「中日共同声明」の諸原則を基礎として、両国間の平和友好関係の発展を一層促進し、両国民の利益を増進し、アジア及び世界の平和と安定に寄与することを希望し、次のとおり協定する。
第一条
(1) 両締約国は、主権及び領土の保全の相互尊重、相互不可侵、相互の内政不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の原則に従い、永遠の平和友好関係を発展させる。
(2) 両締約国は、いずれの一方も覇権を求めず、また、いずれの一方もこのような覇権を求めるいかなる国の努力にも反対する。
第二条
両締約国は、国際紛争を平和的手段によって解決し、武力による威嚇又は武力の行使を慎むものとする。
第三条
両締約国は、経済、文化等の分野における両国民間の広範な交流を発展させ、及び経済技術協力を強化し、かつ、双方の共通の利益を求める。
第四条
この条約は、いずれの第三国に対しても指向するものではない。
第五条
(1) この条約は、批准されなければならない。批准書は、できるだけすみやかに北京で交換されるものとする。
(2) この条約は、批准書の交換の日に効力を生ずる。
(3) この条約は、5年間の効力を有する。いずれの締約国も、この条約の満了1年前に終了の意思を表明しない限り、その後も引き続き有効に存続する。
この条約は、1978年8月12日に北京において、それぞれ日本語及び中国語で二通作成された。両言語のいずれも同一の効力を有する。
署名者
中華人民共和国全権代表:黄 華
日本国全権代表:園田 直
補足
・「覇権を求めない」という表現が入ったのは、当時のソ連の影響力拡大を警戒した背景がある。
・「国際紛争の平和的解決」が明記されており、戦争を回避する条約である。
・「5年ごとに自動更新」される仕組みになっており、現在も有効である。
(この補足は一般的な歴史的背景や条約の内容に基づくものであり、特定の個人の見解ではなく、主に国際関係の研究者や歴史的資料から得られる知見に基づいている。特に、「覇権を求めない」という文言は、当時のソ連の影響力拡大を警戒した中国側の意向が反映されたものであることは、多くの外交史研究で指摘されている。
また、「国際紛争の平和的解決」や「5年ごとの自動更新」についても、条約本文の内容に基づいた客観的な事実であり、日本政府や中国政府の公式文書、および国際法学者の解釈によって裏付けられている。)
☞ 1972年9月29日の「中日共同声明」全文
中華人民共和国政府と日本国政府の共同声明(1972年)全文
中華人民共和国政府と日本国政府は、国交正常化の実現が両国人民の根本利益に合致し、また、アジアの平和に寄与するものであるとの観点に立ち、国交正常化を実現することを決定し、次のように声明する。
第一項
日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
第二項
中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する。
第三項
中華人民共和国政府と日本国政府は、善隣友好関係を確立し、両国人民の利益のために両国間の持続的な平和友好関係を発展させることを確認する。
第四項
中華人民共和国政府と日本国政府は、両国間の不正常な状態を終了することを宣言する。
第五項
中華人民共和国政府は、日本国に対し、戦争によって中国国民に与えた重大な損害についての責任を痛感し、深く反省することを表明した。
日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を理解し、これに対して遺憾の意を表明する。
第六項
中華人民共和国政府は、日本国に対し、戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。
第七項
中華人民共和国政府と日本国政府は、いずれの一方も、いかなる形であれ、他のいずれの国に対しても覇権を求めるべきではなく、また、他のいずれの国による覇権の確立を企てるいかなる行動にも反対することを確認する。
第八項
中華人民共和国政府と日本国政府は、経済及び文化の交流を発展させ、両国人民間の相互理解を増進することが、両国関係の改善と発展にとって不可欠であることを確認する。
第九項
本声明が発表された日(1972年9月29日)をもって、中華人民共和国政府と日本国政府の間に外交関係が樹立される。
この声明は、1972年9月29日、北京において署名された。
署名者
中華人民共和国国務院総理:周恩来
日本国内閣総理大臣:田中角栄
補足
・日本が「一つの中国」原則を認めた ことが最も重要なポイントである。
・台湾問題について、日本は「理解し、尊重する」立場を表明したが、「承認」はしていない。
・中国側が戦争賠償請求を放棄 したことが明記されている。
・覇権を求めない ことを日中双方が確認している。
(の補足も、歴史的事実や条約の正式な文言に基づいたものであり、特定の個人の見解ではなく、主に外交史や国際関係の研究において広く認識されている内容である。
各ポイントの根拠
1.日本が「一つの中国」原則を認めたことが最も重要なポイントである。
・1972年の「中日共同声明」において、日本政府は「中華人民共和国政府が台湾を中国の不可分の一部であると表明する立場を十分理解し、尊重する」と明記しており、これが「一つの中国」原則を受け入れたことを示している。
2.台湾問題について、日本は「理解し、尊重する」立場を表明したが、「承認」はしていない。
・「中日共同声明」では「理解し、尊重する」という表現が使われ、「承認(recognition)」という表現は避けられている。これは、日本が公式には台湾を「国家」として承認していないものの、中国の立場を認める形をとった外交的表現である。
3.中国側が戦争賠償請求を放棄したことが明記されている。
・1972年の「中日共同声明」第5項において、「中華人民共和国政府は、中日両国人民の友好のため、日本国に対する戦争賠償請求を放棄することを宣言する」と記されており、これは正式な外交合意として確認されたものである。
4.覇権を求めないことを日中双方が確認している。
・1978年の「中日平和友好条約」第2条において、「いずれの一方もアジア・太平洋地域において覇権を求めない」と明記されており、これは当時のソ連の影響力拡大を警戒する中国側の意向を反映したものとされる。
これらの補足は、条約や声明の原文に基づいたものであり、特定の個人の意見ではなく、国際関係の研究や外交文書の分析から得られる客観的な事実に基づいている。)
☞ ポツダム宣言第8項
ポツダム宣言(1945年7月26日発表)第8項の原文(英語)
The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.
日本語訳
カイロ宣言の条項は履行されるものとし、日本の主権は本州、北海道、九州、四国および我々が決定する小島に限定される。
解説
・「カイロ宣言の条項は履行される」
⇨ 1943年に発表されたカイロ宣言では、日本が「満州、台湾、澎湖諸島などを中国に返還する」ことが明記されていた。
⇨ ポツダム宣言第8項はこの方針を再確認し、日本がこれらの領土を放棄することを義務づけた。
・「日本の主権は本州、北海道、九州、四国および我々が決定する小島に限定される」
⇨ 日本の領土が大幅に制限されることを意味し、戦後の領土処理の基本原則となった。
⇨ 「我々が決定する小島」とは、戦後の国際交渉に委ねられることを示唆している。
・この第8項は、日本の戦後領土の枠組みを決定する重要な原則となり、後のサンフランシスコ平和条約(1951年)などで具体化された。
☞ 日本の戦後領土の枠組みの決定プロセス
1. ポツダム宣言(1945年7月)
・第8項で、「日本の主権は本州、北海道、九州、四国および連合国が決定する小島に限定される」と規定。
・カイロ宣言(1943年)の履行を求め、日本が「満州、台湾、澎湖諸島、南樺太、千島列島」などの領有権を放棄することを示唆。
2. 日本の降伏と連合国の占領(1945年)
・1945年9月2日:日本は降伏文書に調印し、ポツダム宣言を正式に受諾。
・連合国軍(GHQ)が日本を占領し、戦後処理を進める。
3. 連合国による領土処理の指針
・SCAPIN(連合国軍最高司令官指令)
・SCAPIN-677(1946年1月29日):日本の行政権を本州、北海道、九州、四国および周辺の小島に限定。
⇨ SCAPIN-1033(1946年6月22日):沖縄・奄美・小笠原諸島を日本の施政範囲から除外。
・これらはあくまで「暫定措置」であり、最終的な領土決定は平和条約で行われることが示された。
4. サンフランシスコ平和条約(1951年)
・第2条(領土の放棄)
⇨ 台湾・澎湖諸島を放棄(ただし帰属先は明記せず)。
⇨ 朝鮮の独立を承認(済州島・巨文島・鬱陵島を含む)。
⇨ 南樺太・千島列島を放棄(ただし帰属先を明記せず)。
⇨ 南洋諸島(ミクロネシア)を放棄。
・第3条(沖縄・小笠原)
⇨ 沖縄・奄美・小笠原諸島は「アメリカの信託統治下」とし、日本の施政権が停止。
⇨ その後、1968年に小笠原、1972年に沖縄が日本に返還された。
5. その後の領土問題
・北方領土問題(日本 vs. ロシア):ソ連が占領した択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の帰属問題。
・竹島問題(日本 vs. 韓国):1952年、韓国が李承晩ラインを設定し、竹島を占拠。
・尖閣諸島問題(日本 vs. 中国・台湾):日本が施政権を維持しているが、中国と台湾が領有権を主張。
結論
日本の戦後領土の枠組みは、ポツダム宣言の原則を基に、連合国の占領政策を経て、最終的にサンフランシスコ平和条約で決定された。その後も領土を巡る国際的な対立は続いている。
☞ 台湾総統の就任式に際して中国総領事から国内の地方自治体及び地方議員に対して届いた要望に関する質問主意書https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/217/syuh/s217049.htm
第217回国会(常会)
質問主意書
質問第四九号
台湾総統の就任式に際して中国総領事から国内の地方自治体及び地方議員に対して届いた要望に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
令和七年二月二十八日
浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿
台湾総統の就任式に際して中国総領事から国内の地方自治体及び地方議員に対して届いた要望に関する質問主意書
令和六年六月十八日の神戸市会総務財政委員会において、以下のとおり質疑応答があった。
○上畠寛弘議員「五月二十日に台湾の総統就任式がございましたけれども、その総統就任式に当たって、神戸市市長室宛てにファクスで、職員やまた議員に対して、総統就任式に出席させるなというような要望等が実際にファクスで中国総領事館から届いたというふうに聞いております。この点についての事実確認をしたいんですけれども、いかがでしょうか。」
○岡本康憲市長室長「御指摘のファクスといいますか、五月十二日付で、中国の駐大阪総領事より市長宛てに、台湾問題に関する中国側の立場を紹介するという旨でファクスが我々のほうに届いてございました。受け取ったのは五月の十三日になってございます。」
○上畠議員「その中に議員の言及とかもあったということですか。」
○岡本市長室長「いわゆる頼清徳氏の就任式に出席せずというような旨が、自治体幹部、あるいは議員に対してということで、コメントとしてその文面に書いてございました。」
○上畠議員「私自身は出席、参列いたしましたけれども、そんなこと言われる筋合いはないということで終わらせていただきます。以上です。」
神戸市に文書が届いた五月十三日時点における在大阪中華人民共和国総領事館の総領事は薛剣氏である。外交官・総領事という立場をわきまえない同氏の振る舞いは断じて許されるものではない。
これらを踏まえて、以下質問する。
一 薛剣総領事が「頼清徳氏の就任式に出席せず」といった旨の文書を神戸市の市長・市会議員・幹部職員宛に送付したことについて、政府は把握しているか示されたい。また、日本に駐在する他国の外交官が、地方自治体や地方議員の台湾との交流や台湾への訪問に対して、直接、中止を要請するという行為について、岩屋毅外務大臣を始め政府は許容するのか、見解を示されたい。
二 前記事案を踏まえ、薛剣総領事に対し、ペルソナ・ノン・グラータであることを通告するべきと考えるが、岩屋毅外務大臣の見解を示されたい。
三 昭和四十七年の日中共同声明では、台湾の位置付けについて、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」とあるが、地方自治体や首長、地方議会及び地方議会議員においても日中共同声明の文中にある「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」する法的義務はあるのか示されたい。
四 平成二十八年に飯島勲内閣官房参与が蔡英文氏の総統就任式出席のため、台湾を訪問したことについては高く評価する。同氏が台湾訪問の際に使用した旅券は公用旅券、外交旅券のいずれであったか示されたい。また、内閣官房参与の台湾訪問について、政府は今後も内閣官房参与の立場を尊重するのか。政府の見解を示されたい。
質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。
右質問する。
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/217/touh/t217049.htm
第217回国会(常会)
答弁書
内閣参質二一七第四九号
令和七年三月十一日
内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿
参議院議員浜田聡君提出台湾総統の就任式に際して中国総領事から国内の地方自治体及び地方議員に対して届いた要望に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員浜田聡君提出台湾総統の就任式に際して中国総領事から国内の地方自治体及び地方議員に対して届いた要望に関する質問に対する答弁書
一及び二について
政府として、神戸市長宛に御指摘の文書が届いたことは把握しているが、その他の宛先については網羅的に把握していない。我が国政府の対応について、現時点でお答えすることは控えたい。
三について
昭和四十七年の日中共同声明は、法的拘束力を有するものではない。
四について
御指摘の「平成二十八年に飯島勲内閣官房参与が蔡英文氏の総統就任式出席のため、台湾を訪問したこと」及び「同氏が台湾訪問」については、同参与の一個人としての活動等に関わるものであり、政府としてお尋ねについてお答えする立場にない。
☞ 中国大使等による地方自治体への不当な圧力に関する質問主意書
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a217118.htm
令和七年三月十八日提出
質問第一一八号
中国大使等による地方自治体への不当な圧力に関する質問主意書
提出者 松原 仁
中国大使等による地方自治体への不当な圧力に関する質問主意書
中国新聞デジタル版の報道によれば、中華人民共和国(中国)の呉江浩駐日本国特命全権大使は、本年三月十三日、前月に台湾を訪問し頼清徳中華民国総統と面会した山口県の村岡嗣政知事に対して、「台湾問題については言動を慎むべきだ」などと政治的圧力をかける書簡を電子メールで送付したとされる。さらに、中国の楊慶東駐福岡総領事は、翌十四日、山口県の村岡知事と面会した際、呉大使の書簡と同様の趣旨の発言をし、圧力をかけたとされる。呉大使は、本職が、脅迫発言を繰り返す中国大使の追放に関する質問主意書(第二百十三回国会質問第九七号)で指摘したように、日本が「台湾独立」及び「中国分裂」に加担すれば「民衆が火の中に連れ込まれることになる」との日本国民に向けた脅迫発言を、一度ならず複数回にわたり公の場で行っている。政府は、前記質問に対する答弁書(内閣衆質二一三第九七号)において、「御指摘の呉江浩駐日中国大使の発言は、駐日大使の発言として極めて不適切であると考えており、中国政府に対し厳重な抗議を行った」と答弁した。
本件についてお尋ねする。
一 呉大使及び楊総領事が村岡知事に不当な政治的圧力をかけたことは、言語道断の行為であると考えるが、政府の見解如何。
二 政府は、極めて不適切な言動を繰り返す呉大使をペルソナ・ノン・グラータとして通告し、我が国より追放すべきと考えるが、見解如何。
右質問する。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon_pdf_t.nsf/html/shitsumon/pdfT/b217118.pdf/$File/b217118.pdf(以下は本PDFをテキスト化した。4月3日現在HTML化未完)
内閣衆質二―七第――八号
令和七年三月二十八日
内閣総理大臣石破 茂
衆議院議長額賀福志郎殿
衆議院議員松原仁君提出中国大使等による地方自治体への不当な圧力に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員松原仁君提出中国大使等による地方自治体への不当な圧力に関する質問に対する答弁書
ーについて
お尋ねの「不当な政治的圧力」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。いずれにせよ、台湾との関係に関する我が国の基本的立場は、昭和四十七年の日中共同声明第三項を踏まえ、非政府間の実務関係として維持するというものである。
二について
お尋ねについては、これまで先の答弁書 (令和六年五月三十一日内閣衆質二一三第九七号)で述べた対応等を行ってきているが、我が国政府の今後の対応について、現時点で予断をもってお答えすることは差し控えたい。
☞ その他参考
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b211055.htm
https://www.sankei.com/article/20250311-4VITFVCO5BEQPCH2QHVF3NT5AE/
日中共同声明「法的拘束力有さない」 自治体や地方議員に「尊重」義務尋ねた質問主意書に 産経新聞 2025.03.11
https://www.sankei.com/article/20240530-KLJCZVG5WVMOXOSTN23OB5ZIB4/?651430
中国の薛剣駐大阪総領事が台湾総統就任式に出席した国会議員に抗議 書簡の全文 産経新聞 2024.05.30
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
中日間の政治文書の権威性、日本による一方的な損害は許されない 人民網日本語版 2025.03.26
http://j.people.com.cn/n3/2025/0326/c94474-20294183.html
北朝鮮:新鴨緑江大橋周辺の建設活動 ― 2025年04月03日 19:12
【概要】
2025年3月22日の商業衛星画像によると、中朝友誼橋の南側に位置する新鴨緑江大橋の北朝鮮側に複数の小規模な建造物が確認された。
2020年春、この橋に近い区域で土地が整地され、建設の準備が進められていた。同時に、新鴨緑江大橋から新義州市へと続く道路が舗装されたが、これまでの間、建物の建設やその他の活動は確認されていなかった。しかし、先月以降、この区域で建設活動が再開されたことが観測されている。
2025年2月26日の衛星画像では、建物の建設が始まり、青い屋根の構造物が最初に出現したことが確認された。3月3日までに、およそ20棟の建造物が新たに建設された。その後、3月上旬にかけてさらなる建物が建設され、隣接する2つの区画で新たな建物の基礎工事が進められている様子が確認された。
3月22日時点の衛星画像では、これらの建設作業が橋の近辺で行われていることから、税関および入国管理施設の整備が進められている可能性がある。長期間の停滞を経て、北朝鮮側がこの橋を近い将来、あるいは中期的に利用開始する意図を示している可能性がある。また、この動きは中朝友誼橋と並行して使用する計画の一環である可能性も考えられる。さらに、ロシアとの間で進められている豆満江を越える新橋の建設と並行して、国境管理の強化を目的とした活動の一環である可能性もある。
【詳細】
北朝鮮側における新鴨緑江大橋周辺の建設活動の詳細
1. 衛星画像による建設活動の確認
2025年3月22日に撮影された商業衛星画像により、新鴨緑江大橋の北朝鮮側で複数の小規模な建造物が出現していることが確認された。この橋は、中朝友誼橋の南側に位置し、中国・丹東市と北朝鮮・新義州市を結ぶものである。
この地域では、2020年春に土地が整地され、建設準備が進められた形跡があった。当時、新鴨緑江大橋から新義州市へ続く道路が舗装されたが、その後の建物建設や大規模な工事の進展は観測されていなかった。しかし、2025年2月26日の衛星画像では、青い屋根を持つ建物の建設が開始され、3月3日までに約20棟の建物が確認された。さらに3月上旬には、新たな建造物の建設が進み、2つの隣接する区画で基礎工事が進められている様子が観測された。
2. 新鴨緑江大橋の建設とこれまでの経緯
新鴨緑江大橋は、2014年に中国側で完成したが、北朝鮮側のインフラ整備の遅れにより、長期間にわたり未使用の状態が続いていた。特に北朝鮮側では、橋に接続する道路や税関・入国管理施設の整備が進まず、開通の目処が立たない状況であった。しかし、2020年には橋に接続する道路が舗装され、土地の整備が始まったものの、その後の進展は見られなかった。
2025年2月から3月にかけての建設活動は、この橋の開通に向けた重要な進展を示唆しており、北朝鮮側が新鴨緑江大橋を利用する準備を進めている可能性を示している。
3. 建設中の施設の用途について
現時点では、建設が進められている施設の正確な用途は不明である。しかし、以下の点から、税関や入国管理施設としての役割を持つ可能性が高いと考えられる。
・建物の位置が橋のすぐ近くにあること
・青い屋根を持つ小規模な建物が多数建設されていること
・隣接する区画で基礎工事が進められていること
これらの要素は、税関や入国管理業務に必要なインフラの整備に一致しており、新鴨緑江大橋の運用開始に向けた準備である可能性がある。
4. 今回の建設活動の背景と目的
この建設活動の背景には、北朝鮮が中国との経済関係を強化し、貿易の円滑化を図る意図があると考えられる。北朝鮮は2020年以降、新型コロナウイルスの影響で厳格な国境管理を実施しており、中朝間の貿易も大幅に制限されていた。しかし、近年の北朝鮮と中国の関係改善に伴い、貿易の再開に向けた準備が進んでいる可能性がある。
また、2024年以降、北朝鮮はロシアとの経済・軍事協力を強化しており、豆満江を越える北朝鮮・ロシア間の新橋建設も進行中である。このような動きと並行して、中国との国境管理を強化し、貿易ルートの拡大を図る狙いがあると考えられる。
5. 今後の見通し
・新鴨緑江大橋の開通
今回の建設活動が順調に進めば、近い将来、新鴨緑江大橋の利用が開始される可能性がある。これは、現在主に利用されている中朝友誼橋と並行して使用されることになると考えられる。
・国境管理の強化
近年、北朝鮮は国境管理の強化を進めており、中国との貿易拡大と同時に、入国管理の厳格化や監視体制の強化が行われる可能性がある。
・経済的影響
新鴨緑江大橋の開通により、中国と北朝鮮の物流が活発化し、北朝鮮の経済に一定の影響を与える可能性がある。しかし、現在の国際制裁の影響を考慮すると、貿易の拡大には一定の制約が伴うと考えられる。
結論
2025年2月以降、新鴨緑江大橋の北朝鮮側で建設活動が活発化している。これは、橋の運用開始に向けた準備の一環と考えられ、税関・入国管理施設の整備が進んでいる可能性が高い。今後、北朝鮮が中国との貿易を拡大するために、新たな国境インフラを整備し、物流の円滑化を図る動きが進むと予想される。
【要点】
北朝鮮側における新鴨緑江大橋周辺の建設活動の詳細
1. 衛星画像による建設活動の確認
・2025年3月22日の商業衛星画像により、新鴨緑江大橋の北朝鮮側に複数の小規模な建造物が確認された。
・2020年春に土地の整地と橋から新義州市へ続く道路の舗装が行われたが、その後の建設活動は確認されていなかった。
・2025年2月26日の衛星画像では、青い屋根を持つ建物が建設され始めた。
・3月3日までに約20棟の建造物が確認され、その後も建設が進行。
・3月上旬には、2つの隣接する区画で新たな基礎工事が行われていることが観測された。
2. 新鴨緑江大橋の建設経緯とこれまでの状況
・新鴨緑江大橋は2014年に中国側が完成させたが、北朝鮮側のインフラ整備の遅れにより、未使用の状態が続いていた。
・2020年に橋に接続する道路の舗装が完了したが、その後の進展はなかった。
・2025年に入り、再び建設活動が活発化。
3. 建設中の施設の用途について
・建設されている建物は橋の近辺に位置。
・青い屋根の小規模な建造物が多数建設されている。
・隣接する区画で基礎工事が進行中。
・これらの要素から、税関や入国管理施設としての用途が考えられる。
4. 建設活動の背景と目的
・中国との貿易再開の準備
⇨ 2020年以降、新型コロナウイルス対策で国境管理が厳格化されていたが、現在は緩和の兆し。
⇨ 北朝鮮が中国との貿易回復を目指し、税関施設の整備を進めている可能性。
・国境管理の強化
⇨ ロシアとの経済・軍事協力が進む中、豆満江を越える北朝鮮・ロシア間の新橋建設も進行中。
⇨ 国境インフラを整備し、中国との貿易管理を強化する動きと考えられる。
5. 今後の見通し
・新鴨緑江大橋の開通
⇨ 建設が進めば、橋の利用が開始される可能性が高い。
⇨ 現在主に使用されている中朝友誼橋と並行して利用される可能性。
・国境管理の厳格化
⇨ 貿易の拡大と同時に、監視体制の強化も行われる可能性。
・経済的影響
⇨ 中国との貿易活性化による北朝鮮経済への一定の影響。
⇨ ただし、国際制裁の影響により貿易の拡大には制約があると考えられる。
結論
・2025年2月以降、新鴨緑江大橋の北朝鮮側で建設活動が活発化。
・これは橋の運用開始準備の一環であり、税関・入国管理施設の整備が進められている可能性が高い。
・北朝鮮が中国との貿易拡大に向けて国境インフラを強化し、物流の円滑化を図る動きが進行中と考えられる。
【引用・参照・底本】
Quick Take: Construction Activity on North Korean Side of Sino-North Korea Bridge 38NORTH 2025.03.25
https://www.38north.org/2025/03/quick-take-construction-activity-on-north-korean-side-of-sino-north-korea-bridge/
2025年3月22日の商業衛星画像によると、中朝友誼橋の南側に位置する新鴨緑江大橋の北朝鮮側に複数の小規模な建造物が確認された。
2020年春、この橋に近い区域で土地が整地され、建設の準備が進められていた。同時に、新鴨緑江大橋から新義州市へと続く道路が舗装されたが、これまでの間、建物の建設やその他の活動は確認されていなかった。しかし、先月以降、この区域で建設活動が再開されたことが観測されている。
2025年2月26日の衛星画像では、建物の建設が始まり、青い屋根の構造物が最初に出現したことが確認された。3月3日までに、およそ20棟の建造物が新たに建設された。その後、3月上旬にかけてさらなる建物が建設され、隣接する2つの区画で新たな建物の基礎工事が進められている様子が確認された。
3月22日時点の衛星画像では、これらの建設作業が橋の近辺で行われていることから、税関および入国管理施設の整備が進められている可能性がある。長期間の停滞を経て、北朝鮮側がこの橋を近い将来、あるいは中期的に利用開始する意図を示している可能性がある。また、この動きは中朝友誼橋と並行して使用する計画の一環である可能性も考えられる。さらに、ロシアとの間で進められている豆満江を越える新橋の建設と並行して、国境管理の強化を目的とした活動の一環である可能性もある。
【詳細】
北朝鮮側における新鴨緑江大橋周辺の建設活動の詳細
1. 衛星画像による建設活動の確認
2025年3月22日に撮影された商業衛星画像により、新鴨緑江大橋の北朝鮮側で複数の小規模な建造物が出現していることが確認された。この橋は、中朝友誼橋の南側に位置し、中国・丹東市と北朝鮮・新義州市を結ぶものである。
この地域では、2020年春に土地が整地され、建設準備が進められた形跡があった。当時、新鴨緑江大橋から新義州市へ続く道路が舗装されたが、その後の建物建設や大規模な工事の進展は観測されていなかった。しかし、2025年2月26日の衛星画像では、青い屋根を持つ建物の建設が開始され、3月3日までに約20棟の建物が確認された。さらに3月上旬には、新たな建造物の建設が進み、2つの隣接する区画で基礎工事が進められている様子が観測された。
2. 新鴨緑江大橋の建設とこれまでの経緯
新鴨緑江大橋は、2014年に中国側で完成したが、北朝鮮側のインフラ整備の遅れにより、長期間にわたり未使用の状態が続いていた。特に北朝鮮側では、橋に接続する道路や税関・入国管理施設の整備が進まず、開通の目処が立たない状況であった。しかし、2020年には橋に接続する道路が舗装され、土地の整備が始まったものの、その後の進展は見られなかった。
2025年2月から3月にかけての建設活動は、この橋の開通に向けた重要な進展を示唆しており、北朝鮮側が新鴨緑江大橋を利用する準備を進めている可能性を示している。
3. 建設中の施設の用途について
現時点では、建設が進められている施設の正確な用途は不明である。しかし、以下の点から、税関や入国管理施設としての役割を持つ可能性が高いと考えられる。
・建物の位置が橋のすぐ近くにあること
・青い屋根を持つ小規模な建物が多数建設されていること
・隣接する区画で基礎工事が進められていること
これらの要素は、税関や入国管理業務に必要なインフラの整備に一致しており、新鴨緑江大橋の運用開始に向けた準備である可能性がある。
4. 今回の建設活動の背景と目的
この建設活動の背景には、北朝鮮が中国との経済関係を強化し、貿易の円滑化を図る意図があると考えられる。北朝鮮は2020年以降、新型コロナウイルスの影響で厳格な国境管理を実施しており、中朝間の貿易も大幅に制限されていた。しかし、近年の北朝鮮と中国の関係改善に伴い、貿易の再開に向けた準備が進んでいる可能性がある。
また、2024年以降、北朝鮮はロシアとの経済・軍事協力を強化しており、豆満江を越える北朝鮮・ロシア間の新橋建設も進行中である。このような動きと並行して、中国との国境管理を強化し、貿易ルートの拡大を図る狙いがあると考えられる。
5. 今後の見通し
・新鴨緑江大橋の開通
今回の建設活動が順調に進めば、近い将来、新鴨緑江大橋の利用が開始される可能性がある。これは、現在主に利用されている中朝友誼橋と並行して使用されることになると考えられる。
・国境管理の強化
近年、北朝鮮は国境管理の強化を進めており、中国との貿易拡大と同時に、入国管理の厳格化や監視体制の強化が行われる可能性がある。
・経済的影響
新鴨緑江大橋の開通により、中国と北朝鮮の物流が活発化し、北朝鮮の経済に一定の影響を与える可能性がある。しかし、現在の国際制裁の影響を考慮すると、貿易の拡大には一定の制約が伴うと考えられる。
結論
2025年2月以降、新鴨緑江大橋の北朝鮮側で建設活動が活発化している。これは、橋の運用開始に向けた準備の一環と考えられ、税関・入国管理施設の整備が進んでいる可能性が高い。今後、北朝鮮が中国との貿易を拡大するために、新たな国境インフラを整備し、物流の円滑化を図る動きが進むと予想される。
【要点】
北朝鮮側における新鴨緑江大橋周辺の建設活動の詳細
1. 衛星画像による建設活動の確認
・2025年3月22日の商業衛星画像により、新鴨緑江大橋の北朝鮮側に複数の小規模な建造物が確認された。
・2020年春に土地の整地と橋から新義州市へ続く道路の舗装が行われたが、その後の建設活動は確認されていなかった。
・2025年2月26日の衛星画像では、青い屋根を持つ建物が建設され始めた。
・3月3日までに約20棟の建造物が確認され、その後も建設が進行。
・3月上旬には、2つの隣接する区画で新たな基礎工事が行われていることが観測された。
2. 新鴨緑江大橋の建設経緯とこれまでの状況
・新鴨緑江大橋は2014年に中国側が完成させたが、北朝鮮側のインフラ整備の遅れにより、未使用の状態が続いていた。
・2020年に橋に接続する道路の舗装が完了したが、その後の進展はなかった。
・2025年に入り、再び建設活動が活発化。
3. 建設中の施設の用途について
・建設されている建物は橋の近辺に位置。
・青い屋根の小規模な建造物が多数建設されている。
・隣接する区画で基礎工事が進行中。
・これらの要素から、税関や入国管理施設としての用途が考えられる。
4. 建設活動の背景と目的
・中国との貿易再開の準備
⇨ 2020年以降、新型コロナウイルス対策で国境管理が厳格化されていたが、現在は緩和の兆し。
⇨ 北朝鮮が中国との貿易回復を目指し、税関施設の整備を進めている可能性。
・国境管理の強化
⇨ ロシアとの経済・軍事協力が進む中、豆満江を越える北朝鮮・ロシア間の新橋建設も進行中。
⇨ 国境インフラを整備し、中国との貿易管理を強化する動きと考えられる。
5. 今後の見通し
・新鴨緑江大橋の開通
⇨ 建設が進めば、橋の利用が開始される可能性が高い。
⇨ 現在主に使用されている中朝友誼橋と並行して利用される可能性。
・国境管理の厳格化
⇨ 貿易の拡大と同時に、監視体制の強化も行われる可能性。
・経済的影響
⇨ 中国との貿易活性化による北朝鮮経済への一定の影響。
⇨ ただし、国際制裁の影響により貿易の拡大には制約があると考えられる。
結論
・2025年2月以降、新鴨緑江大橋の北朝鮮側で建設活動が活発化。
・これは橋の運用開始準備の一環であり、税関・入国管理施設の整備が進められている可能性が高い。
・北朝鮮が中国との貿易拡大に向けて国境インフラを強化し、物流の円滑化を図る動きが進行中と考えられる。
【引用・参照・底本】
Quick Take: Construction Activity on North Korean Side of Sino-North Korea Bridge 38NORTH 2025.03.25
https://www.38north.org/2025/03/quick-take-construction-activity-on-north-korean-side-of-sino-north-korea-bridge/
トランプは習主席の「統治スタイル」が気に入っている ― 2025年04月03日 19:26
【概要】
元ウクライナ外務大臣ドミトリー・クレバは、ドナルド・トランプ米大統領がロシアとの関係において「大きなことを成し遂げることができる」と信じていると述べた。クレバは、トランプがウクライナを批判することについて、彼がロシアの代理人であるとする主張を否定した。
トランプは就任以来、前大統領ジョー・バイデンの政策を逆転させ、モスクワとの直接交渉を再開した。これにより、トランプとロシアとの背後での関係が存在するという以前の憶測が再燃した。
クレバは、トランプが「クレムリンから指示を受けているわけではない」と強調したうえで、「トランプは自分の周囲の人々とロシアと共に多くの良いことができると信じており、ロシアが必要だと考えている」と述べた。ウクライナは必要だとは考えていないという。
クレバは、トランプの周囲のメディアに積極的な人物たちが「親ロシア的なナラティブ」を推進しており、トランプ支持者がそれをソーシャルメディアで拡散していると指摘した。しかし、トランプがロシアの代理人として行動しているわけではなく、彼自身が異なる現実を信じていると述べた。
さらに、クレバは、トランプがロシアのウラジーミル・プーチン大統領や中国の習近平国家主席のリーダーシップに深い敬意を抱き、共に「大きなことを成し遂げたい」と考えていると述べた。また、トランプは習主席の「統治スタイル」が気に入っており、精神的に一致していると指摘した。
トランプは2025年2月にウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙なしの独裁者」と呼び、ロシアとの現在の紛争の原因はゼレンスキーにあると非難した。これに対し、ゼレンスキーはトランプが「デマ情報の泡に閉じ込められている」と反論した。
【詳細】
ドミトリー・クレバ氏は、トランプ大統領がロシアとの関係において「偉大なことを成し遂げることができる」と信じているという見解を述べた。この発言は、トランプがウクライナへの関心を薄め、ロシアとの協力を重視しているという指摘を背景にしている。クレバは、トランプがロシアの「代理人」であるという批判を否定した上で、トランプが自らの信念に基づいて行動していると主張した。
クレバは、トランプがロシアと良い関係を築くことができると信じている一方で、ウクライナに対してはあまり関心を持っていないと述べた。彼は、トランプの政策がロシアに対して好意的であり、ウクライナに対しては無関心であると考えている。これは、トランプがウクライナ問題に関して明確に示す姿勢とは裏腹に、ロシアとの協力関係を重視しているという点に帰結している。
クレバによれば、トランプの周囲にはメディアに積極的に露出している人物が多く、その人物たちは「親ロシア的なナラティブ」を広めており、その考えがトランプ支持者によってソーシャルメディアで拡散されているという。これは、トランプ自身の考え方と無関係ではないとされ、彼の信念や世界観に影響を与えている可能性がある。
クレバはさらに、トランプがロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席を尊敬し、彼らとの関係を築くことに強い意欲を持っていると述べた。トランプは、習主席の「統治スタイル」を気に入っており、二人は「精神的に一致している」とクレバは指摘している。これは、トランプがこれらのリーダーとの関係を重要視していることを示唆しており、彼の外交的なアプローチが一貫していることを示す一例である。
また、トランプはウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙のない独裁者」と呼び、ウクライナがロシアとの対立を引き起こしたと非難した。この発言は、トランプのウクライナに対する批判的な姿勢を示している。ゼレンスキー大統領はこれに反応し、トランプが「デマ情報の泡に閉じ込められている」として、トランプの見解に異議を唱えた。
クレバの発言は、トランプがロシアとの関係を重要視する一方で、ウクライナとの関係が相対的に希薄であることを強調しており、その結果、トランプの外交政策に対する評価が分かれることを浮き彫りにしている。また、クレバはトランプがロシアの影響下にあるわけではなく、彼が信じる世界観に基づいて行動していると主張しているが、トランプの発言や態度は、特にウクライナ問題に関して、ロシア寄りに見えるという点では注目に値する。
【要点】
1.トランプのロシアとの関係
・ドナルド・トランプはロシアとの関係を重視し、「偉大なことを成し遂げることができる」と信じていると元ウクライナ外務大臣ドミトリー・クレバが述べた。
・クレバは、トランプがロシアの「代理人」であるとの批判を否定し、トランプが自らの信念に基づいて行動していると主張。
2.ウクライナに対する態度
・トランプはウクライナに対してあまり関心を持っていないとクレバは指摘。
・トランプはロシアとの協力関係を重視し、ウクライナを必要としていないと考えている。
3.トランプ支持者と親ロシア的ナラティブ
・トランプの周囲にはメディアに露出する人物が多く、その人物たちが親ロシア的なナラティブを広めている。
・これらのナラティブがトランプ支持者によってソーシャルメディアで拡散されている。
4.ロシアと中国のリーダーとの関係
・トランプはロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席を深く尊敬している。
・トランプは習主席の「統治スタイル」を気に入っており、二人は精神的に一致しているとクレバは述べた。
5.ゼレンスキー大統領への批判
・トランプはウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙のない独裁者」と呼び、ウクライナがロシアとの対立を引き起こしたと非難。
・ゼレンスキー大統領はトランプの発言に反応し、「デマ情報の泡に閉じ込められている」と述べた。
6.クレバの見解
・クレバは、トランプがロシアの影響を受けているわけではなく、彼自身の世界観に基づいて行動していると述べた。
【引用・参照・底本】
Trump believes he needs Russia – ex-Ukrainian foreign minister RT 2025.04.03
https://www.rt.com/news/615164-trump-needs-russia-interview/
元ウクライナ外務大臣ドミトリー・クレバは、ドナルド・トランプ米大統領がロシアとの関係において「大きなことを成し遂げることができる」と信じていると述べた。クレバは、トランプがウクライナを批判することについて、彼がロシアの代理人であるとする主張を否定した。
トランプは就任以来、前大統領ジョー・バイデンの政策を逆転させ、モスクワとの直接交渉を再開した。これにより、トランプとロシアとの背後での関係が存在するという以前の憶測が再燃した。
クレバは、トランプが「クレムリンから指示を受けているわけではない」と強調したうえで、「トランプは自分の周囲の人々とロシアと共に多くの良いことができると信じており、ロシアが必要だと考えている」と述べた。ウクライナは必要だとは考えていないという。
クレバは、トランプの周囲のメディアに積極的な人物たちが「親ロシア的なナラティブ」を推進しており、トランプ支持者がそれをソーシャルメディアで拡散していると指摘した。しかし、トランプがロシアの代理人として行動しているわけではなく、彼自身が異なる現実を信じていると述べた。
さらに、クレバは、トランプがロシアのウラジーミル・プーチン大統領や中国の習近平国家主席のリーダーシップに深い敬意を抱き、共に「大きなことを成し遂げたい」と考えていると述べた。また、トランプは習主席の「統治スタイル」が気に入っており、精神的に一致していると指摘した。
トランプは2025年2月にウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙なしの独裁者」と呼び、ロシアとの現在の紛争の原因はゼレンスキーにあると非難した。これに対し、ゼレンスキーはトランプが「デマ情報の泡に閉じ込められている」と反論した。
【詳細】
ドミトリー・クレバ氏は、トランプ大統領がロシアとの関係において「偉大なことを成し遂げることができる」と信じているという見解を述べた。この発言は、トランプがウクライナへの関心を薄め、ロシアとの協力を重視しているという指摘を背景にしている。クレバは、トランプがロシアの「代理人」であるという批判を否定した上で、トランプが自らの信念に基づいて行動していると主張した。
クレバは、トランプがロシアと良い関係を築くことができると信じている一方で、ウクライナに対してはあまり関心を持っていないと述べた。彼は、トランプの政策がロシアに対して好意的であり、ウクライナに対しては無関心であると考えている。これは、トランプがウクライナ問題に関して明確に示す姿勢とは裏腹に、ロシアとの協力関係を重視しているという点に帰結している。
クレバによれば、トランプの周囲にはメディアに積極的に露出している人物が多く、その人物たちは「親ロシア的なナラティブ」を広めており、その考えがトランプ支持者によってソーシャルメディアで拡散されているという。これは、トランプ自身の考え方と無関係ではないとされ、彼の信念や世界観に影響を与えている可能性がある。
クレバはさらに、トランプがロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席を尊敬し、彼らとの関係を築くことに強い意欲を持っていると述べた。トランプは、習主席の「統治スタイル」を気に入っており、二人は「精神的に一致している」とクレバは指摘している。これは、トランプがこれらのリーダーとの関係を重要視していることを示唆しており、彼の外交的なアプローチが一貫していることを示す一例である。
また、トランプはウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙のない独裁者」と呼び、ウクライナがロシアとの対立を引き起こしたと非難した。この発言は、トランプのウクライナに対する批判的な姿勢を示している。ゼレンスキー大統領はこれに反応し、トランプが「デマ情報の泡に閉じ込められている」として、トランプの見解に異議を唱えた。
クレバの発言は、トランプがロシアとの関係を重要視する一方で、ウクライナとの関係が相対的に希薄であることを強調しており、その結果、トランプの外交政策に対する評価が分かれることを浮き彫りにしている。また、クレバはトランプがロシアの影響下にあるわけではなく、彼が信じる世界観に基づいて行動していると主張しているが、トランプの発言や態度は、特にウクライナ問題に関して、ロシア寄りに見えるという点では注目に値する。
【要点】
1.トランプのロシアとの関係
・ドナルド・トランプはロシアとの関係を重視し、「偉大なことを成し遂げることができる」と信じていると元ウクライナ外務大臣ドミトリー・クレバが述べた。
・クレバは、トランプがロシアの「代理人」であるとの批判を否定し、トランプが自らの信念に基づいて行動していると主張。
2.ウクライナに対する態度
・トランプはウクライナに対してあまり関心を持っていないとクレバは指摘。
・トランプはロシアとの協力関係を重視し、ウクライナを必要としていないと考えている。
3.トランプ支持者と親ロシア的ナラティブ
・トランプの周囲にはメディアに露出する人物が多く、その人物たちが親ロシア的なナラティブを広めている。
・これらのナラティブがトランプ支持者によってソーシャルメディアで拡散されている。
4.ロシアと中国のリーダーとの関係
・トランプはロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席を深く尊敬している。
・トランプは習主席の「統治スタイル」を気に入っており、二人は精神的に一致しているとクレバは述べた。
5.ゼレンスキー大統領への批判
・トランプはウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙のない独裁者」と呼び、ウクライナがロシアとの対立を引き起こしたと非難。
・ゼレンスキー大統領はトランプの発言に反応し、「デマ情報の泡に閉じ込められている」と述べた。
6.クレバの見解
・クレバは、トランプがロシアの影響を受けているわけではなく、彼自身の世界観に基づいて行動していると述べた。
【引用・参照・底本】
Trump believes he needs Russia – ex-Ukrainian foreign minister RT 2025.04.03
https://www.rt.com/news/615164-trump-needs-russia-interview/
ロシアの核動力型破氷船 ― 2025年04月03日 19:41
【概要】
ロシアの核動力型破氷船は、同国の極寒の北極地域での航行能力を強化し、世界的に見ても最も強力な破氷船群を構成している。ロシアはすでに、世界最大の核動力破氷船艦隊を保有しており、これをさらに拡大する意向を示している。2023年3月、ロシアのプーチン大統領は、ムルマンスクで開催された第6回北極フォーラムで、ロシアが進める核動力型破氷船の拡充計画を発表した。
ロシアの最新の破氷船の一つである「ヤクーチヤ」は、2023年3月に試験航海を終え、北海航路(NSR)での運航に向けて出航した。この船は、プロジェクト22220の一部であり、同プロジェクトの核動力型破氷船は、特に3メートルの厚さの氷を砕く能力を有しており、極寒の条件下でも高い操縦性能を発揮する。これらの破氷船は、2基の原子炉を搭載し、合計60メガワットの出力を提供し、数か月間にわたって自律的に運航可能である。
プロジェクト22220に基づく破氷船は、2013年に建造が始まり、現在までに「アルクティカ」(2020年就航)、 「シベリア」(2021年就航)、 「ウラル」(2022年就航)の3隻が運用を開始している。また、現在「チュコトカ」や「カムチャツカ」の建造が進められており、7隻目となる「サハリン」の建造も予定されている。これらの破氷船は、サンクトペテルブルクのバルティック造船所で建造され、ロサトムのアトムフロート社の支援を受けている。
これらの核動力型破氷船は、従来型の破氷船と比較して高い効率性と能力を持ち、ロシアの北極圏における航行能力を大きく向上させている。また、船の設計は、以前の破氷船の強みを活かし、海上と河川航行の両方に対応できるようになっている。これにより、ロシアは北極地域の重要な航路を支配し、年中無休での航行を確保することが可能となる。
一方、アメリカ合衆国は、ロシアと同等の核動力型破氷船艦隊を持っておらず、従来型の破氷船でも限られた能力しか発揮できないため、北極地域での競争において後れを取っている。アメリカは2020年に新たな核動力型破氷船の建造計画を発表したものの、ロシアに対する優位性を確保するには長期的な投資が必要であり、すぐに追いつくことは難しい。
このように、北極地域は戦略的に重要な資源と航路が集中している場所であり、ロシアの核動力型破氷船の役割はますます重要になっている。ロシアの破氷船は、単に北極圏での航行を支えるだけでなく、資源開発や貿易ルートの確保にも寄与しており、今後の国際的な影響力を強化するための重要な資産である。
【詳細】
ロシアの核動力型破氷船は、極寒の北極地域での航行を支えるために非常に重要な役割を果たしており、特にロシアの北極開発計画において中心的な存在である。これらの破氷船は、単に氷を砕くだけでなく、ロシアの国際的な影響力を強化するための戦略的な資産としても位置付けられている。以下に、ロシアの核動力型破氷船の詳細な機能や意義についてさらに詳述する。
ロシアの核動力型破氷船の特徴と技術的詳細
ロシアは、世界最大の核動力型破氷船艦隊を保有しており、その艦隊は非常に強力で効率的である。核動力型破氷船は、従来のディーゼルエンジンを搭載した破氷船と異なり、非常に高い出力と長期間の自律運航能力を誇っている。これにより、長期間にわたる極寒の北極海でも、氷を砕きながら安定した航行を行うことができる。
例えば、プロジェクト22220に基づく「ヤクーチヤ」は、3メートルの厚さの氷を砕く能力を持ち、2基の原子炉を搭載しており、合計60メガワットの出力を提供する。これにより、核動力型破氷船は数か月間、燃料補給なしで運航することができる。加えて、船の設計は従来の破氷船の強みを活かし、特に海上と河川の両方で運航できる能力を持っているため、極端な条件下でも高い機動性を発揮する。
また、これらの船は、氷の厚さや海況に応じてバラストタンクを調整することができ、より深い喫水で氷を砕くことが可能となる。この設計の柔軟性により、北極圏を越えて、ロシアの他の水域やさらには商業用の航路でも運用が可能となっている。
ロシアの北極開発と国際的な影響力
ロシアにとって、北極地域は非常に重要な戦略的領域であり、膨大な資源が埋蔵されていると考えられている。石油、天然ガス、鉱物、さらには豊富な漁業資源などが北極圏に広がっており、これらの資源へのアクセスを確保することは、ロシアにとって経済的な利益のみならず、国際的な影響力を強化する手段でもある。
ロシアの核動力型破氷船は、これらの資源開発を支えるために必要不可欠である。北極圏では氷の厚さが非常に大きく、従来型の破氷船では十分に対応できない場合が多いため、核動力型破氷船が極寒の海を通行するために必要不可欠となる。これにより、ロシアは北極圏の航路を支配し、資源開発の拠点となることができる。
また、北極圏における航行可能な航路が確保されることは、ロシアの貿易にも大きな利点をもたらす。特に、ロシアの北海航路(NSR)は、ヨーロッパとアジアを繋ぐ重要な貿易ルートであり、この航路を利用することで、ロシアは国際的な貿易で有利な地位を確保することができる。この点において、核動力型破氷船の存在は、航行安全を確保し、貿易をスムーズに行うための重要な要素である。
他国との競争と協力の可能性
ロシアがこの核動力型破氷船艦隊を拡大する中で、アメリカや中国などの他の大国も北極圏における存在感を強化しようとしている。しかし、アメリカは現在、核動力型破氷船を運用していないため、ロシアの核動力型破氷船艦隊にはまだ大きな差がある。アメリカは2020年に新たな核動力型破氷船の建造計画を発表したが、ロシアの破氷船艦隊の規模には遠く及ばないのが現状である。
一方で、アメリカのような国々とロシアが協力する可能性もある。北極圏の航行は非常に過酷な環境であり、各国が単独で対応するのは難しいため、国際協力が不可欠となる可能性がある。しかし、ロシアが北極圏での主導権を確立している現状では、協力がどのように進展するかは不透明である。
まとめ
ロシアの核動力型破氷船は、同国の北極圏での航行能力を大きく強化しており、その重要性は経済的な資源開発や国際貿易の面でますます増している。ロシアはすでに世界最大の核動力型破氷船艦隊を保有しており、その技術と能力は他国に対して優位性を持っている。今後、この艦隊はますます重要な役割を果たし、北極圏におけるロシアの影響力を一層強化するだろう。
【要点】
1.ロシアの核動力型破氷船
・世界最大の核動力型破氷船艦隊を保有。
・高い出力と長期間自律運航可能な能力を持つ。
・「ヤクーチヤ」など、最新型破氷船は3メートルの氷を砕く能力。
・2基の原子炉(合計60メガワット)で数か月間運航可能。
2.核動力型破氷船の特徴
・海上・河川両方で運航可能。
・可変バラストタンクで氷の厚さに応じた運航が可能。
・従来の破氷船より高い機動性と効率を誇る。
・国内製部品が92%を占め、自給自足を目指している。
3.北極圏の重要性
・石油、天然ガス、鉱物、漁業資源など豊富な資源を有する。
・ロシアの北海航路(NSR)は、ヨーロッパとアジアを結ぶ貿易路として重要。
・核動力型破氷船は、安全な航行を確保し、商業航路を開拓するために不可欠。
4.ロシアの北極開発計画
・破氷船は北極圏での資源開発と貿易に必要な支援を提供。
・航行安全を確保し、貿易のスムーズな運営を促進。
5.他国との競争と協力
・アメリカは核動力型破氷船をまだ運用していないが、新たな破氷船の建造計画を発表(2020年)。
・ロシアと他国(特にアメリカ)との北極圏での協力の可能性はあるが、ロシアが主導権を握っている現状。
まとめ
・ロシアの核動力型破氷船は、北極圏における戦略的優位性を確立し、同国の影響力を強化する重要な資産である。
【引用・参照・底本】
Breaking the ice: How Russia’s nuclear fleet outpaces rivals RT 2025.04.02
https://www.rt.com/russia/615149-no-one-has-comparable-fleet/
ロシアの核動力型破氷船は、同国の極寒の北極地域での航行能力を強化し、世界的に見ても最も強力な破氷船群を構成している。ロシアはすでに、世界最大の核動力破氷船艦隊を保有しており、これをさらに拡大する意向を示している。2023年3月、ロシアのプーチン大統領は、ムルマンスクで開催された第6回北極フォーラムで、ロシアが進める核動力型破氷船の拡充計画を発表した。
ロシアの最新の破氷船の一つである「ヤクーチヤ」は、2023年3月に試験航海を終え、北海航路(NSR)での運航に向けて出航した。この船は、プロジェクト22220の一部であり、同プロジェクトの核動力型破氷船は、特に3メートルの厚さの氷を砕く能力を有しており、極寒の条件下でも高い操縦性能を発揮する。これらの破氷船は、2基の原子炉を搭載し、合計60メガワットの出力を提供し、数か月間にわたって自律的に運航可能である。
プロジェクト22220に基づく破氷船は、2013年に建造が始まり、現在までに「アルクティカ」(2020年就航)、 「シベリア」(2021年就航)、 「ウラル」(2022年就航)の3隻が運用を開始している。また、現在「チュコトカ」や「カムチャツカ」の建造が進められており、7隻目となる「サハリン」の建造も予定されている。これらの破氷船は、サンクトペテルブルクのバルティック造船所で建造され、ロサトムのアトムフロート社の支援を受けている。
これらの核動力型破氷船は、従来型の破氷船と比較して高い効率性と能力を持ち、ロシアの北極圏における航行能力を大きく向上させている。また、船の設計は、以前の破氷船の強みを活かし、海上と河川航行の両方に対応できるようになっている。これにより、ロシアは北極地域の重要な航路を支配し、年中無休での航行を確保することが可能となる。
一方、アメリカ合衆国は、ロシアと同等の核動力型破氷船艦隊を持っておらず、従来型の破氷船でも限られた能力しか発揮できないため、北極地域での競争において後れを取っている。アメリカは2020年に新たな核動力型破氷船の建造計画を発表したものの、ロシアに対する優位性を確保するには長期的な投資が必要であり、すぐに追いつくことは難しい。
このように、北極地域は戦略的に重要な資源と航路が集中している場所であり、ロシアの核動力型破氷船の役割はますます重要になっている。ロシアの破氷船は、単に北極圏での航行を支えるだけでなく、資源開発や貿易ルートの確保にも寄与しており、今後の国際的な影響力を強化するための重要な資産である。
【詳細】
ロシアの核動力型破氷船は、極寒の北極地域での航行を支えるために非常に重要な役割を果たしており、特にロシアの北極開発計画において中心的な存在である。これらの破氷船は、単に氷を砕くだけでなく、ロシアの国際的な影響力を強化するための戦略的な資産としても位置付けられている。以下に、ロシアの核動力型破氷船の詳細な機能や意義についてさらに詳述する。
ロシアの核動力型破氷船の特徴と技術的詳細
ロシアは、世界最大の核動力型破氷船艦隊を保有しており、その艦隊は非常に強力で効率的である。核動力型破氷船は、従来のディーゼルエンジンを搭載した破氷船と異なり、非常に高い出力と長期間の自律運航能力を誇っている。これにより、長期間にわたる極寒の北極海でも、氷を砕きながら安定した航行を行うことができる。
例えば、プロジェクト22220に基づく「ヤクーチヤ」は、3メートルの厚さの氷を砕く能力を持ち、2基の原子炉を搭載しており、合計60メガワットの出力を提供する。これにより、核動力型破氷船は数か月間、燃料補給なしで運航することができる。加えて、船の設計は従来の破氷船の強みを活かし、特に海上と河川の両方で運航できる能力を持っているため、極端な条件下でも高い機動性を発揮する。
また、これらの船は、氷の厚さや海況に応じてバラストタンクを調整することができ、より深い喫水で氷を砕くことが可能となる。この設計の柔軟性により、北極圏を越えて、ロシアの他の水域やさらには商業用の航路でも運用が可能となっている。
ロシアの北極開発と国際的な影響力
ロシアにとって、北極地域は非常に重要な戦略的領域であり、膨大な資源が埋蔵されていると考えられている。石油、天然ガス、鉱物、さらには豊富な漁業資源などが北極圏に広がっており、これらの資源へのアクセスを確保することは、ロシアにとって経済的な利益のみならず、国際的な影響力を強化する手段でもある。
ロシアの核動力型破氷船は、これらの資源開発を支えるために必要不可欠である。北極圏では氷の厚さが非常に大きく、従来型の破氷船では十分に対応できない場合が多いため、核動力型破氷船が極寒の海を通行するために必要不可欠となる。これにより、ロシアは北極圏の航路を支配し、資源開発の拠点となることができる。
また、北極圏における航行可能な航路が確保されることは、ロシアの貿易にも大きな利点をもたらす。特に、ロシアの北海航路(NSR)は、ヨーロッパとアジアを繋ぐ重要な貿易ルートであり、この航路を利用することで、ロシアは国際的な貿易で有利な地位を確保することができる。この点において、核動力型破氷船の存在は、航行安全を確保し、貿易をスムーズに行うための重要な要素である。
他国との競争と協力の可能性
ロシアがこの核動力型破氷船艦隊を拡大する中で、アメリカや中国などの他の大国も北極圏における存在感を強化しようとしている。しかし、アメリカは現在、核動力型破氷船を運用していないため、ロシアの核動力型破氷船艦隊にはまだ大きな差がある。アメリカは2020年に新たな核動力型破氷船の建造計画を発表したが、ロシアの破氷船艦隊の規模には遠く及ばないのが現状である。
一方で、アメリカのような国々とロシアが協力する可能性もある。北極圏の航行は非常に過酷な環境であり、各国が単独で対応するのは難しいため、国際協力が不可欠となる可能性がある。しかし、ロシアが北極圏での主導権を確立している現状では、協力がどのように進展するかは不透明である。
まとめ
ロシアの核動力型破氷船は、同国の北極圏での航行能力を大きく強化しており、その重要性は経済的な資源開発や国際貿易の面でますます増している。ロシアはすでに世界最大の核動力型破氷船艦隊を保有しており、その技術と能力は他国に対して優位性を持っている。今後、この艦隊はますます重要な役割を果たし、北極圏におけるロシアの影響力を一層強化するだろう。
【要点】
1.ロシアの核動力型破氷船
・世界最大の核動力型破氷船艦隊を保有。
・高い出力と長期間自律運航可能な能力を持つ。
・「ヤクーチヤ」など、最新型破氷船は3メートルの氷を砕く能力。
・2基の原子炉(合計60メガワット)で数か月間運航可能。
2.核動力型破氷船の特徴
・海上・河川両方で運航可能。
・可変バラストタンクで氷の厚さに応じた運航が可能。
・従来の破氷船より高い機動性と効率を誇る。
・国内製部品が92%を占め、自給自足を目指している。
3.北極圏の重要性
・石油、天然ガス、鉱物、漁業資源など豊富な資源を有する。
・ロシアの北海航路(NSR)は、ヨーロッパとアジアを結ぶ貿易路として重要。
・核動力型破氷船は、安全な航行を確保し、商業航路を開拓するために不可欠。
4.ロシアの北極開発計画
・破氷船は北極圏での資源開発と貿易に必要な支援を提供。
・航行安全を確保し、貿易のスムーズな運営を促進。
5.他国との競争と協力
・アメリカは核動力型破氷船をまだ運用していないが、新たな破氷船の建造計画を発表(2020年)。
・ロシアと他国(特にアメリカ)との北極圏での協力の可能性はあるが、ロシアが主導権を握っている現状。
まとめ
・ロシアの核動力型破氷船は、北極圏における戦略的優位性を確立し、同国の影響力を強化する重要な資産である。
【引用・参照・底本】
Breaking the ice: How Russia’s nuclear fleet outpaces rivals RT 2025.04.02
https://www.rt.com/russia/615149-no-one-has-comparable-fleet/
中国軍:「台湾独立」に対する抑止を目的 ― 2025年04月03日 19:54
【概要】
中国軍は今週初め、台湾近海で行われた2日間の軍事演習を公開した。この演習は、「台湾独立」に対する抑止を目的としているとされている。演習は、人民解放軍(PLA)の東部戦区(ETC)が実施したもので、名称は「海峡雷霆」(Strait Thunder)である。演習には中国の複数の軍種が参加し、指揮官の石毅(Shi Yi)報道官は、この訓練が「目標の識別と確認、警告と排除、そして迎撃と拘束」に焦点を当てていたことを述べた。訓練は、台湾封鎖の準備を整えることを目的としている。
演習には、2022年に就役した中国製の「遼寧」空母艦隊が参加しており、その艦載機として、主力戦闘機であるJ-15戦闘機を搭載している。この戦闘機は、演習中に公開されたビデオに登場した。
別のビデオには、軍営での早朝の警戒態勢が描かれ、その後、ロケット発射システムの配置と実弾射撃訓練が行われている様子が映し出された。この映像は、武器が実際に台湾の沿岸を直接攻撃するために使用される可能性を示唆している。
また、PLA空軍の航空機も演習に参加したことが映像で確認されている。
台湾は、1940年代の中国内戦で共産党に敗れた国民党の政府が統治している。ワシントンは公式には北京の台湾に対する主権を認めているが、台北に対して軍事支援を行っている。北京は、この軍事支援が台湾の独立を目指す動きを助長していると見なしており、台湾の独立を追求することが台湾を危険な状況に追い込み、台湾の人々を困難な状況に陥れると強調している。
中国国防省の報道官、張小剛(Zhang Xiaogang)は、台湾独立と台湾海峡の平和は両立しないと述べ、「台湾独立を追求することは、台湾を危険な状況に追い込み、台湾の人々を困難に陥れるだけだ」と警告した。
【詳細】
中国軍は、台湾近海で行われた「海峡雷霆」(Strait Thunder)という名の2日間の軍事演習を公開した。この演習は、中国政府が台湾独立を試みることに対する抑止力を高める目的で実施されたとされている。演習は、人民解放軍(PLA)の東部戦区(ETC)によって実施され、台湾周辺海域における中国軍の実力を示すものとなった。
演習の目的と内容
演習の主な目的は、台湾独立を試みる動きを防ぐことにある。具体的には、台湾に対する封鎖の準備や、台湾独立を宣言しようとする動きに対する抑止力を強化することが挙げられる。指揮官の石毅報道官は、今回の演習が「識別と確認」「警告と排除」「迎撃と拘束」といった一連の軍事的対応に重点を置いて行われたことを明らかにした。これらの戦術は、台湾が独立の道を進むことを防ぐための準備を意図している。
参加した兵器と部隊
演習には、人民解放軍の空母艦隊も参加しており、特に注目すべきは、2019年に就役した中国製の「遼寧」空母である。この空母は、最新の戦闘機であるJ-15を24機搭載しており、その航空機が演習の動画に登場している。これにより、台湾周辺海域での空軍と海軍の連携による強力な軍事力がアピールされた。
さらに、別のビデオでは、台湾侵攻のシナリオを想定した「実弾射撃訓練」が行われる様子が公開された。映像には、軍営での早朝警戒態勢から、ロケット発射システムの配置とそれに続く実弾射撃の様子が映し出されている。この射撃訓練は、実際に台湾の沿岸をターゲットにした攻撃の準備として解釈されており、台湾の防衛ラインに対する威嚇と見なされる。
また、空軍の戦闘機も演習に参加しており、空中での戦闘能力や、台湾上空での優位性を維持するための訓練が行われた。
台湾と中国の歴史的背景
台湾は、1940年代の中国内戦において共産党に敗北した国民党(KMT)政府によって統治されており、その後、事実上の独立状態にある。中国は、台湾を自国の一部として見なしており、「一国二制度」や「平和的統一」を掲げて台湾を取り込もうと試みている。しかし、台湾政府は独立を目指しているわけではなく、主に現状維持を望んでいる。
アメリカは、公式には台湾に対する中国の主権を認めているが、台湾に対して軍事的支援を行っていることが知られている。アメリカは、台湾海峡の平和と安定を支持しており、そのため中国の台湾に対する圧力や軍事的行動を懸念している。これに対して、中国はアメリカの支援を「台湾独立」を促進するものとみなし、台湾の独立を追求すればするほど、台湾が危険な状況に直面すると警告している。
中国政府の立場
中国政府は、台湾の統一を目指しており、「平和的統一」を提案しているが、台湾側が独立を目指す動きを取る場合、武力行使も辞さないという立場を示している。中国国防省の報道官である張小剛は、「台湾独立と台湾海峡の平和は両立しない」とし、台湾が独立を追求することが、台湾自身を危険な状況に追い込み、台湾住民を困難な立場に置くと強調している。また、中国は、現在の台湾政府を「危機の創出者」「問題を引き起こす者」として批判している。
今回の演習は、台湾独立に対する強い警告の意図が込められており、中国が台湾の統一を実現するためには、どんな手段も講じる覚悟があることを示すものとなった。
【要点】
1.演習の目的: 台湾の独立を抑止し、台湾封鎖の準備を整えるための軍事訓練。
2.実施主体: 演習は人民解放軍(PLA)の東部戦区(ETC)が実施した。
3.演習名: 「海峡雷霆」(Strait Thunder)。
4.参加部隊
・遼寧空母艦隊: 中国製の空母「遼寧」、搭載機はJ-15戦闘機24機。
・空軍: PLA空軍も演習に参加し、空中戦闘能力を示す。
・ロケット発射システム: 実弾射撃訓練が行われ、台湾沿岸を標的にする可能性を示唆。
5.演習内容
・目標の「識別と確認」「警告と排除」「迎撃と拘束」の訓練。
・台湾独立を防ぐための軍事的対応の準備。
・実弾射撃訓練が公開され、実際の攻撃能力を示す。
6.台湾と中国の関係
・台湾は1940年代の中国内戦で敗れた国民党政府が統治。
・中国は台湾を自国の一部と主張し、統一を目指す。
・アメリカは台湾を軍事的に支援し、中国に対する警戒感を持つ。
7.中国政府の立場:
・「平和的統一」を目指すが、台湾が独立を宣言すれば武力行使も辞さない。
・台湾の独立を追求することは、台湾を危険な状況に追い込み、台湾住民を困難にすると警告。
・現在の台湾政府は「危機の創出者」「問題を引き起こす者」と批判。
【引用・参照・底本】
China showcases military drill near Taiwan (VIDEOS) RT 2025.04.02
https://www.rt.com/news/615141-chaina-taiwan-drill-videos/
中国軍は今週初め、台湾近海で行われた2日間の軍事演習を公開した。この演習は、「台湾独立」に対する抑止を目的としているとされている。演習は、人民解放軍(PLA)の東部戦区(ETC)が実施したもので、名称は「海峡雷霆」(Strait Thunder)である。演習には中国の複数の軍種が参加し、指揮官の石毅(Shi Yi)報道官は、この訓練が「目標の識別と確認、警告と排除、そして迎撃と拘束」に焦点を当てていたことを述べた。訓練は、台湾封鎖の準備を整えることを目的としている。
演習には、2022年に就役した中国製の「遼寧」空母艦隊が参加しており、その艦載機として、主力戦闘機であるJ-15戦闘機を搭載している。この戦闘機は、演習中に公開されたビデオに登場した。
別のビデオには、軍営での早朝の警戒態勢が描かれ、その後、ロケット発射システムの配置と実弾射撃訓練が行われている様子が映し出された。この映像は、武器が実際に台湾の沿岸を直接攻撃するために使用される可能性を示唆している。
また、PLA空軍の航空機も演習に参加したことが映像で確認されている。
台湾は、1940年代の中国内戦で共産党に敗れた国民党の政府が統治している。ワシントンは公式には北京の台湾に対する主権を認めているが、台北に対して軍事支援を行っている。北京は、この軍事支援が台湾の独立を目指す動きを助長していると見なしており、台湾の独立を追求することが台湾を危険な状況に追い込み、台湾の人々を困難な状況に陥れると強調している。
中国国防省の報道官、張小剛(Zhang Xiaogang)は、台湾独立と台湾海峡の平和は両立しないと述べ、「台湾独立を追求することは、台湾を危険な状況に追い込み、台湾の人々を困難に陥れるだけだ」と警告した。
【詳細】
中国軍は、台湾近海で行われた「海峡雷霆」(Strait Thunder)という名の2日間の軍事演習を公開した。この演習は、中国政府が台湾独立を試みることに対する抑止力を高める目的で実施されたとされている。演習は、人民解放軍(PLA)の東部戦区(ETC)によって実施され、台湾周辺海域における中国軍の実力を示すものとなった。
演習の目的と内容
演習の主な目的は、台湾独立を試みる動きを防ぐことにある。具体的には、台湾に対する封鎖の準備や、台湾独立を宣言しようとする動きに対する抑止力を強化することが挙げられる。指揮官の石毅報道官は、今回の演習が「識別と確認」「警告と排除」「迎撃と拘束」といった一連の軍事的対応に重点を置いて行われたことを明らかにした。これらの戦術は、台湾が独立の道を進むことを防ぐための準備を意図している。
参加した兵器と部隊
演習には、人民解放軍の空母艦隊も参加しており、特に注目すべきは、2019年に就役した中国製の「遼寧」空母である。この空母は、最新の戦闘機であるJ-15を24機搭載しており、その航空機が演習の動画に登場している。これにより、台湾周辺海域での空軍と海軍の連携による強力な軍事力がアピールされた。
さらに、別のビデオでは、台湾侵攻のシナリオを想定した「実弾射撃訓練」が行われる様子が公開された。映像には、軍営での早朝警戒態勢から、ロケット発射システムの配置とそれに続く実弾射撃の様子が映し出されている。この射撃訓練は、実際に台湾の沿岸をターゲットにした攻撃の準備として解釈されており、台湾の防衛ラインに対する威嚇と見なされる。
また、空軍の戦闘機も演習に参加しており、空中での戦闘能力や、台湾上空での優位性を維持するための訓練が行われた。
台湾と中国の歴史的背景
台湾は、1940年代の中国内戦において共産党に敗北した国民党(KMT)政府によって統治されており、その後、事実上の独立状態にある。中国は、台湾を自国の一部として見なしており、「一国二制度」や「平和的統一」を掲げて台湾を取り込もうと試みている。しかし、台湾政府は独立を目指しているわけではなく、主に現状維持を望んでいる。
アメリカは、公式には台湾に対する中国の主権を認めているが、台湾に対して軍事的支援を行っていることが知られている。アメリカは、台湾海峡の平和と安定を支持しており、そのため中国の台湾に対する圧力や軍事的行動を懸念している。これに対して、中国はアメリカの支援を「台湾独立」を促進するものとみなし、台湾の独立を追求すればするほど、台湾が危険な状況に直面すると警告している。
中国政府の立場
中国政府は、台湾の統一を目指しており、「平和的統一」を提案しているが、台湾側が独立を目指す動きを取る場合、武力行使も辞さないという立場を示している。中国国防省の報道官である張小剛は、「台湾独立と台湾海峡の平和は両立しない」とし、台湾が独立を追求することが、台湾自身を危険な状況に追い込み、台湾住民を困難な立場に置くと強調している。また、中国は、現在の台湾政府を「危機の創出者」「問題を引き起こす者」として批判している。
今回の演習は、台湾独立に対する強い警告の意図が込められており、中国が台湾の統一を実現するためには、どんな手段も講じる覚悟があることを示すものとなった。
【要点】
1.演習の目的: 台湾の独立を抑止し、台湾封鎖の準備を整えるための軍事訓練。
2.実施主体: 演習は人民解放軍(PLA)の東部戦区(ETC)が実施した。
3.演習名: 「海峡雷霆」(Strait Thunder)。
4.参加部隊
・遼寧空母艦隊: 中国製の空母「遼寧」、搭載機はJ-15戦闘機24機。
・空軍: PLA空軍も演習に参加し、空中戦闘能力を示す。
・ロケット発射システム: 実弾射撃訓練が行われ、台湾沿岸を標的にする可能性を示唆。
5.演習内容
・目標の「識別と確認」「警告と排除」「迎撃と拘束」の訓練。
・台湾独立を防ぐための軍事的対応の準備。
・実弾射撃訓練が公開され、実際の攻撃能力を示す。
6.台湾と中国の関係
・台湾は1940年代の中国内戦で敗れた国民党政府が統治。
・中国は台湾を自国の一部と主張し、統一を目指す。
・アメリカは台湾を軍事的に支援し、中国に対する警戒感を持つ。
7.中国政府の立場:
・「平和的統一」を目指すが、台湾が独立を宣言すれば武力行使も辞さない。
・台湾の独立を追求することは、台湾を危険な状況に追い込み、台湾住民を困難にすると警告。
・現在の台湾政府は「危機の創出者」「問題を引き起こす者」と批判。
【引用・参照・底本】
China showcases military drill near Taiwan (VIDEOS) RT 2025.04.02
https://www.rt.com/news/615141-chaina-taiwan-drill-videos/