米国の傲慢で覇権的な意図→「フォークでスープを飲む」2025年04月22日 20:08

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【桃源寸評】

 米国の態度は世界貿易機関(WTO)のルールに反する可能性がある。以下に、WTO協定の条項に照らして、米国の行動が違反していると考えられる点を列挙する。

✅米国の行動とWTO違反の可能性(条項別)

①最恵国待遇(MFN)原則違反

 ✓該当条項:GATT第1条(最恵国待遇)

 米国が「中国と貿易を制限すれば関税を免除する」と他国に持ちかけている行為は、特定国(中国)との関係を理由に他国への待遇を差別的に変えるものであり、全加盟国を平等に扱うMFN原則に違反する可能性がある。

 ② 貿易制限の不当な誘導(圧力)

 ✓該当条項:GATT第11条(数量制限の一般的禁止)および第23条(WTOの精神違反)

 他国に対し、「中国との貿易を減らせ」という政治的・経済的圧力をかけること自体が、数量的制限(Quota)や輸出入制限の誘発を目的とした第三国への干渉とみなされるおそれがある。

 ③ 差別的関税政策の強要

 ✓該当条項:関税・貿易に関する一般協定(GATT)第24条、GATT第28条(関税譲許)

 関税の免除を政治的な見返りとする行為は、関税の透明性および非差別性を求める原則に違反する可能性がある。WTOでは関税の改定には正当な手続きと多国間協議が必要である。

 ④ 不透明な貿易政策

 ✓該当条項:WTO設立協定附属書2「貿易政策レビュー機構(TPRM)」の趣旨

 関税免除の条件として非公式・非公開の圧力を用いることは、貿易政策の透明性を損なう行為であり、TPRMの精神に反する。

 ⑤ 単独措置による経済的報復の試み

 ✓該当条項:DSU(紛争解決了解)第23条

 WTO加盟国は、紛争がある場合にはまずWTOを通じた協議と手続を経る義務がある。これを無視して一方的な関税免除・課税の操作を行うのは「自己救済の禁止」原則に違反する。

 ❌以上のように、米国が示唆する「関税免除と引き換えに中国との貿易制限を求める」という行動は、WTOの基本的な原則(非差別、公平、透明性、協議義務)に違反している疑いが濃厚である。

 ✅道義的面での問題点

 ① 他国の主権・判断を軽視する行為

 各国は自国の国益に基づいて独自に貿易政策を決定する権利を有している。米国が経済的な力を用いて、他国の政策選択を事実上強制することは主権の侵害に等しく、倫理的に不当である。

 ② 経済的利益を盾にした「恫喝的交渉」

 「中国との関係を断てば特権的な利益を与える」とする姿勢は、取引相手に対する圧力・脅しに近い行為であり、道義的なフェアネス(公正さ)を著しく欠いている。

 ③ グローバル経済における信頼関係の破壊

 国際貿易は、信頼と相互尊重に基づく多国間の協調によって成り立っている。これを政治的意図で操作・利用することは、ルールベースの国際秩序を損なう行為であり、道徳的責任に欠ける。

 ④ 経済的分断を助長する不道徳性

 米国のような影響力の大きい国が分断・排除を助長するような政策をとると、グローバルサウスや新興国を含む多くの国々の発展の機会を奪うことになりかねない。これは道義的に容認され難い。

 ⑤ 共通善の理念に反する

 「全体の利益(共通善)」を目指すべき国際社会において、自国の利益のために他国同士の対立や競争を煽る行為は、公共善や持続可能な共存という倫理原則に反する。

❌米国が経済的な圧力を通じて他国の対中貿易関係を制限させようとする態度は、国際的な倫理規範・道徳的価値観の観点からも大きな問題を孕んでおり、信義、正義、公平、尊重といった原則を著しく損なう行為と評価できる。

 ✅まとめ

 1.国際法上の問題点(WTO法・国際通商法に基づく)

 ① 最恵国待遇(MFN: Most-Favored-Nation Treatment)原則違反

 ・WTO協定のGATT第1条は、加盟国が他国に与える貿易上の優遇(関税の引き下げ等)をすべての加盟国に平等に適用することを義務づけている。

 ・米国が「中国との貿易を制限した国にのみ関税免除を与える」というのは、一部の国への優遇であり、他の国に同等の待遇を与えないことから最恵国待遇義務に違反する可能性が高い。

 ② 貿易の自由原則への抵触

 ・WTO体制下では、各国の貿易相手を自由に選ぶ権利が保障されている。

 ・米国の提案は、他国に対して貿易相手(中国)を制限するよう求めるものであり、各国の貿易自由の原則を実質的に侵害している。

 ③ 恣意的・差別的な措置の禁止

 ・WTOのGATT第11条では数量制限の原則禁止、GATT第13条では輸出入の制限が恣意的・差別的であってはならないとされている。

 ・「中国との貿易関係に応じて他国に制裁的な措置を取る」行為は、恣意的で差別的な貿易制限に当たる可能性がある。

 ④ 貿易交渉における善意(Good Faith)の原則違反

 ・国際法(ウィーン条約など)においては、交渉において誠実に対応する義務(善意原則)が認められている。

 ・米国が事前に政治的条件を付けた「恫喝的交渉」を行うことは、善意に基づく協議義務を軽視するものであり、国際慣習法に反する行為とみなされる可能性がある。

 ⑤ WTO紛争解決制度(DSU: Dispute Settlement Understanding)に抵触しうる

 ・他国がこのような米国の行動に対してWTOの紛争解決手続きを通じて提訴した場合、不当な差別や報復措置に該当するとして米国に対する是正命令が出される可能性がある。

 ❌米国のこのような政策は、WTO体制の根幹をなす「差別の禁止」「自由貿易の尊重」「交渉の誠実性」などの基本原則に明確に反するおそれがある。国際法上、制度的違法性が問われる正当な根拠が複数存在する。

 2.各国の主権侵害に当たる側面

 ① 経済主権(economic sovereignty)の侵害

 ・各国には、自国の経済政策・貿易政策を自律的に決定する主権がある。

 ・米国が他国に対して「中国との取引を制限せよ」という政治的圧力をかける行為は、貿易政策決定の自由を侵害し、他国の経済主権に干渉するものである。

 ② 外交自主権の侵害

 ・各国は、自らの国益と判断に基づいて外交・通商関係を選択する権利を有する。

 ・米国のように、特定国(中国)との関係を制限するよう他国に要求する行為は、自国以外の国家の外交方針に干渉しようとする行為であり、国連憲章第2条の「内政不干渉原則」に反する可能性がある。

 ③ 通商政策における威圧・強要(coercion)

 ・主権国家間の関係において、威圧的手段を用いて他国に特定の政策をとらせることは、慣習国際法上も違法とされることが多い。

 ・米国が「関税免除」という恩恵を引き合いにして、実質的に他国の対中政策に変更を迫るのは、経済的な強要(economic coercion)として、法的・倫理的に非難されうる。

 ④ WTOの「貿易主権尊重」原則との抵触

 ・WTOは、加盟国の主権を尊重しつつ、自主的な貿易政策の枠内で多国間ルールを共有する制度である。

 ・米国の要求は、多国間ルールの枠外で自国の意図を押し付け、他国の政策決定に干渉するものであり、制度の根幹を揺るがす。

 ❌米国によるこうした「条件付き関税緩和」の提案は、形式的には二国間交渉のように見えても、実質的には主権侵害・他国の内政干渉に等しい。

 特に、小国や中堅国に対しては経済的圧力が相対的に強く作用するため、国際社会における平等主義や主権尊重の原則を損なう危険性が高い。

【寸評 完】

【概要】

 最近、複数のメディアが、アメリカ政府が進行中の関税交渉を利用して貿易相手国に圧力をかけ、中国との貿易を制限することを条件に関税免除を要求する計画を報じた。これに対し、月曜日に中国商務省の報道官は記者会見で、アメリカの行動は「相互主義」の名の下で覇権政治や一方的な強圧を追求するものであると指摘した。また、「宥和は平和をもたらさず、妥協は尊敬を得られない」と強調し、「他国の利益を犠牲にして関税免除を取引しようとする試みは失敗に終わり、最終的に全ての関係者に害をもたらす」と述べた。この発言は世界的に広く注目を集めた。

 中国の反応は理解しやすい。ワシントンが交渉相手に「どちらかの側を選べ」と強制し、中国を封じ込めて孤立させようとする試みは、その傲慢で覇権的な意図をあからさまに示しており、世界経済・貿易秩序を無視するものである。中国の立場は、単に自国の利益と尊厳を守るだけでなく、国際経済・貿易秩序および国際的な公平と正義を守るための立ち上がりである。同時に、中国は、国際貿易が「ジャングルの掟」に戻るべきではなく、強者が弱者を食い物にするような状態になってはならないと明言している。すべての国が、この重要な国際貿易秩序を守るために貢献しなければならない。

 アメリカは、世界最大の消費市場としての優位性を活用し、脅迫と誘因をもって数十の交渉相手を操ろうとしているが、これらの国々はアメリカが繰り返し約束を破り言を翻していることを明確に認識しており、また、中国が一貫して覇権に反対し、公正を守っていることも理解している。今回、アメリカは「関税免除」の餌をちらつかせ、貿易相手に中国との貿易を制限することを要求しているが、これはアメリカ自身の力を過信し、中国を過小評価し、状況を誤解している。

 中国は、150以上の国や地域と貿易関係を持つ主要な貿易相手国であり、その総貿易額は8年連続で世界一である。これらの経済・貿易関係は、世界中の企業や消費者に利益をもたらしてきた。一方、中国は世界経済やグローバルな生産・供給チェーンの「安定したアンカー」であり、中国との経済・貿易関係の断絶は、自己の市場を放棄することに等しく、グローバル経済の発展の中で徐々に孤立することにつながる。したがって、アメリカが中国との経済・貿易関係を「断ち切る」試みは「フォークでスープを飲む」ようなものであり、必ず失敗に終わる。

 イギリスの財務大臣レイチェル・リーブスは、アメリカでの貿易交渉に出発する前に、中国市場とのビジネス関係を断つことは「非常に愚かだ」と述べ、中国との関係強化を支持する立場を示した。この実務的な立場は、国際社会の感情を反映している。さらに、ASEAN、EU、日本、韓国の政治家、経済学者、企業経営者は、アメリカと中国のどちらかを選ぶことに反対している。

 より具体的な例として、広東省で開催されている第137回広州交易会には、216カ国・地域から約15万人の海外バイヤーが参加しており、これは昨年の同時期より20.2%の増加を示している。これは、政治的な圧力が経済のグローバル化や多国間主義の本来の勢いを抑えることができないことを明確に示している。

 世界貿易機関(WTO)は、加盟国に非差別の原則を遵守することを明確に求めている。これは、国際社会の数十年にわたる実践に基づいており、すべての経済が共有する最大の利益を追求するための共通の基盤である。中国の立場は、単独主義や保護主義に直面しても、国際経済・貿易のルールと多国間貿易体制を守ることであり、これは論理的にも世界の潮流にも沿ったものである。

 今日の高度に相互接続された生産・供給チェーンに組み込まれたすべての経済にとって、公正で合理的なルールは不可欠である。これは、国際貿易が法的枠組みによって守られ続けるかどうかに関わる問題である。もし世界貿易が「声の大きい者が最後に決定する」という時代に戻るならば、その結果は混乱と秩序の崩壊を招くだろう。さらに重要なのは、ルールの制約がなければ、覇権的な大国がますます攻撃的になり、世界の発展に長期的な損害を与えることになる。

 オックスフォード経済学の研究は、「分断された世界」のシナリオをモデル化し、保護主義が増大し、グローバリゼーションが後退し、政府が経済ナショナリズムを掲げて自己依存を促進する中で貿易制限が強化されることを予測した。その結果、最も影響を受けるのは新興市場国であるとされている。

 著名な経済学者N・グレゴリー・マンキューと1000人以上の署名者による最近の「反関税宣言」には、「健全な経済原則、実証的証拠、そして歴史の警告が、保護主義的神話に勝利するだろう」と記されている。交渉当事者とワシントンがどのような合意に至るか、またどのような矛盾する信頼できないバージョンが現れるかについては、各当事者が自身の考慮と判断を持つであろう。しかし、もし誰かが中国の利益を犠牲にしてアメリカに屈するようなことがあれば、中国はそれを受け入れない。

 中国はすべての当事者が発展の特急列車に乗り続けることを歓迎するが、これは自国の核心的利益に妥協することを意味しない。一方的な主義や保護主義に屈することは、単に多国間貿易体制を損なうだけでなく、世界経済秩序の根底を脅かすことになる。すべての当事者が長期的な視野を持ち、正しい判断を下すことを期待している。

【詳細】

 この「グローバル・タイムズ」の社説は、アメリカが関税交渉を利用して貿易相手国に圧力をかけ、対中貿易を制限するよう求めているという報道を受けて、中国の立場を詳述している。アメリカは、貿易相手国に対して中国との貿易を制限する見返りに関税免除を提供するという方法で圧力をかけているとされ、中国政府はこのアメリカの行動を一方的で覇権主義的な態度として強く批判している。

 中国の反応

 中国商務省の報道官は、アメリカの行動が「相互主義」の名の下に覇権政治を推し進め、国際経済や貿易の場における一方的な圧力であると述べた。中国側は「宥和」や「妥協」が平和や尊敬をもたらすことはなく、他国の利益を犠牲にして関税免除を得ようとする試みは失敗し、最終的にすべての関係者に害を及ぼすと警告している。この中国の立場は国際的に注目を集めている。

 アメリカの意図と誤算

 アメリカはその経済力を利用し、数十の交渉相手国に対して脅しや誘引を行い、中国との貿易を制限するよう求めている。しかし、中国はそのような圧力に屈せず、国際的な公正と秩序を守る立場を崩していない。アメリカの立場は、中国が長年築いてきた信頼や公正に基づく関係を過小評価しているという点で誤っている。

 中国の貿易地位とその重要性

 中国は150か国以上と貿易を行っており、世界で最も多くの貿易額を誇る国であり、その貿易関係は世界中の企業や消費者に利益をもたらしている。また、中国は世界経済やグローバルな生産・供給チェーンにおける「安定のアンカー」としての役割を果たしており、これから中国との経済的な「切り離し」を試みることは、自らを世界経済の波に乗り遅れさせることになると指摘している。

 世界的な支持

 英国の財務大臣であるレイチェル・リーブスは、中国市場とのビジネス関係を断つことは「非常に愚かなことだ」と述べ、むしろ中国との関係強化を支持している。この発言は国際社会の実務的な立場を反映しており、ASEAN(東南アジア諸国連合)、EU(欧州連合)、日本、韓国などの政治家や経済人たちも、アメリカと中国のどちらかを選ぶことには消極的であることを示している。

 広東省の実例

 広東省で開催された第137回広州交易会(広東省の広州で行われる国際貿易展示会)には、216カ国・地域から15万人以上の海外バイヤーが参加し、昨年同期比で20.2%増加している。この事実は、政治的圧力が経済のグローバル化や多国間主義の本来の勢いを抑えることができないことを証明している。

 WTO(世界貿易機関)の立場

 WTOは、加盟国に対して差別のない貿易を促進するという原則を守るよう求めている。この原則は国際社会の長年の実践に基づき、全ての経済圏にとって最大の共有利益を実現するための共通の基盤である。中国は、一方的な保護主義や関税主義に対して反対し、国際経済および貿易規則を守る立場を堅持している。

 結論

 現在のような強く結びついた生産・供給チェーンにおいて、フェアで合理的なルールは不可欠であり、もし国際貿易が「声が最も大きい者が最終的に決定する」といった状態に戻ることになれば、世界は混乱し秩序が崩壊するであろうと警告している。歴史的な証拠や経済的な原則に基づいて、保護主義の神話は打破されるべきであるとの立場を示している。

【要点】 

 1.アメリカの圧力:アメリカは貿易交渉を通じて、貿易相手国に対して中国との貿易を制限するよう求めている、見返りとして関税免除を提供。

 2.中国の立場

 ・中国商務省の報道官は、アメリカの行動を「覇権政治」や「一方的な圧力」として批判。

 ・「宥和」や「妥協」では平和や尊敬は生まれないと強調。

 ・他国の利益を犠牲にして関税免除を得ることは失敗に終わると警告。

 3.アメリカの誤算

 ・アメリカは自国の経済力を過信し、中国を過小評価している。

 ・アメリカは自国の強さを背景に数十の交渉相手国に圧力をかけているが、これは失敗する見込み。

 4.中国の貿易の重要性

 ・中国は150以上の国や地域と貿易を行い、世界一の貿易額を誇る。

 ・中国は世界経済やグローバル供給チェーンの「安定のアンカー」として重要な役割を果たしている。

 5.国際社会の反応

 ・英国財務大臣のレイチェル・リーブスは、アメリカが中国市場との関係を断つことを「愚かなこと」とし、むしろ中国との関係強化を支持。

 ・ASEAN、EU、日本、韓国なども、アメリカと中国のどちらかを選ぶことに消極的な姿勢を示している。

 6.広東省の実例

 ・第137回広州交易会では、前年比20.2%増の15万人以上の海外バイヤーが参加。

 ・政治的圧力が経済のグローバル化や多国間主義の流れを止めることはできない。

 7.WTOの原則

 ・WTOは加盟国に対して、差別のない貿易を求める原則を守るように義務付けている。

 ・中国は一方的な保護主義に反対し、国際貿易規則と多国間貿易システムの守護を強調。

 8.結論

 ・国際貿易は「声の大きい者が決定する」という混乱状態に戻ってはならない。

 ・保護主義は経済的に破綻し、歴史的な証拠と経済的原則に基づいて打破すべきである。

【引用・参照・底本】

Faced with tariff extortion, appeasement and compromise will only be like 'bargaining with a tiger for its hide': Global Times editorial GT 2025.02.22
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1332573.shtml

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