ロシアは特別軍事作戦において「誤ちを犯すように煽動された」2025年05月05日 23:30

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【概要】

 2025年5月4日、ロシアのプーチン大統領は、TV局「ロシア」によるドキュメンタリー映画の撮影の中で、特別軍事作戦(いわゆるウクライナ侵攻)に関して以下のように述べた。

 まず、ロシアは特別軍事作戦において「誤ちを犯すように煽動された」が、国家として冷静さを保つことができたと主張した。これは、外部勢力または対立国による挑発や心理的圧力を受けたことを示唆しており、その中でもロシアは戦略的な落ち着きを維持したとの見解である。

 次に、同大統領は、ロシアが特別軍事作戦において「核兵器を使用する必然性」を感じたことは一度もなく、今後についても「その必要性が生じないことを希望する」と語った。この発言は、核の使用に関する国際的な懸念に対して、現時点でのロシア政府の立場を示すものであり、抑止力としての核の存在を前提にしつつも、実際の使用には否定的な姿勢を強調している。

 さらに、プーチン大統領は「ロシアとウクライナは必ず和解する」との見通しを述べ、「それは時間の問題である」とした。この言葉は、長期的視野におけるロシアとウクライナの関係修復の可能性を示している。ただし、和解がどのような条件下で、いかなる形式を取るのかについての具体的言及はなかった。

 総じて、この発言はロシア政府が特別軍事作戦を国家の戦略に則って実行し、終了の「筋」を通す用意があり、それに必要な力も国家として備えているという自己評価を示している。

【詳細】

 1. 「ロシアは、特別軍事作戦で誤ちを犯すように煽動されたが、冷静さを保つことができた」

 この部分は、ロシアがウクライナに対する「特別軍事作戦」において、外部勢力――おそらくは西側諸国やNATO諸国――によって過剰な軍事反応や不適切な戦術判断に誘導されかねない状況にあったことを示唆している。つまり、ロシアは軍事的・政治的挑発を受けながらも、衝動的な行動に出ることなく、国家の判断力を維持し、計画通りの行動を取ったという自己評価である。

 この発言は、ロシア政府が国際社会から非難される一方で、あくまで「自制的」で「戦略的」であったという姿勢を強調するものであり、国内外に対してロシアの行動の正当性を主張する狙いがあると考えられる。

 2. 「特別軍事作戦で核を使用する必然性はロシアにはなかった。そして、必要性は生じないだろうという希望もある」

 この発言は、核兵器の使用可能性に関する懸念を背景としたものである。ロシアは以前から、「国家の存在が脅かされる場合に限って核兵器の使用はあり得る」とする核ドクトリンを掲げてきた。しかし、今回の発言では、現段階においてそのような「必然性」、すなわち核使用に正当性があるとする状況は発生していないと明言している。

 加えて、「必要性が生じないだろうという希望もある」という表現には、将来的に状況が悪化し、核使用が選択肢に入ることを完全には否定していないが、それは望ましい事態ではないという認識が含まれている。すなわち、核抑止の論理を維持しながらも、実際の使用には否定的であるというメッセージである。

 3. 「ロシアとウクライナはかならず和解する。これは時間の問題だ」

 この発言は、現在の敵対的関係が永続するものではなく、将来的には和解、すなわち外交的または政治的関係の正常化がなされるとの信念を示すものである。ただし、「時間の問題だ」と述べているのみで、その時期や条件、和解の形式については具体的には触れていない。

 このような言い回しは、和解がロシア主導の政治的秩序の下で実現されることを前提としている可能性がある。つまり、ロシアが現在の特別軍事作戦を通じて得た支配地、あるいは国際的影響力を保持した上での「和解」を想定していると解釈できる。

 4. 「特別軍事作戦は筋を通して終了する。その力は国に十分にある」

 「筋を通す」という表現は、目的・正当性・戦略上の整合性を持った形で作戦を終結させるという意味合いを持つ。これは、ロシア側が掲げた目標――ウクライナの「非ナチ化」「非軍事化」「ロシア語話者の保護」など――が一定程度達成されたと見なされた段階で、作戦を終える準備が整っているという趣旨である。

 「その力は国に十分にある」という部分は、国内の経済力・軍事力・政治的安定性が戦争終結まで維持可能であることを強調しており、長期戦も辞さない構えであるとともに、早期終結も可能であるという柔軟性を示している。
 
【要点】

 1.ロシアは誤ちを犯すように煽動されたが、冷静さを保った

 ・外部勢力(主に西側諸国)によって、ロシアが過剰反応や誤った軍事判断をするよう挑発されたことを示唆している。

 ・それにもかかわらず、ロシアは戦略的自制を保ち、計画に沿った行動を維持したと強調。

 ・作戦の正当性と慎重な進行を国内外に訴える意図がある。

 2.核兵器の使用は「必然ではなかった」、今後も「必要ないことを望む」

 ・特別軍事作戦において、ロシアが核兵器を使うべき状況には一度も至っていないと明言。

 ・将来的にもそのような必要性が「生じないことを望む」としており、核使用の否定を基本姿勢として表明。

 ・ただし「希望」という表現には、状況によっては選択肢が残されているという含意もある(核抑止の継続を示唆)。

 3.ロシアとウクライナは「必ず和解する」、それは「時間の問題」

 ・現在の対立は恒久的なものではなく、将来的には何らかの形で両国関係が正常化すると見ている。

 ・和解の具体的条件・形式には言及しておらず、ロシア側に都合の良い形での「和解」が前提とされている可能性がある。

 ・国際社会に向けた柔軟姿勢のアピール、および国内世論に対する将来展望の提示と考えられる。

 4.特別軍事作戦は「筋を通して終了」させる。その「力は十分にある」

 ・作戦は場当たり的ではなく、戦略的目標に基づき一貫して遂行されていると主張。

 ・「筋を通す」とは、ロシアの掲げた目的(非ナチ化・非軍事化・ロシア系住民の保護など)を達成した形で終結することを意味する。

 ・ロシアはそのために必要な軍事的・経済的・政治的基盤を十分に保持していると強調。

【桃源寸評】

 プーチン大統領の今回の発言は、以下の3つの軸で解釈されるべきか。

 1.対外的なメッセージ:核使用や暴走の可能性を否定し、ロシアは一貫して自制的・合理的に行動してきたと主張している。

 2.対内的なメッセージ:国民に対して「特別軍事作戦は計画通り進行している」「国家は揺るぎない」との安心感を与えることを狙っている。

 3.戦後の布石:将来的なウクライナとの和解の可能性を示唆し、完全な敵対関係の継続を望まないという柔軟姿勢も見せている。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

特別軍事作戦は筋を通して終了 その力は国に十分にある=プーチン大統領 sputnik 日本 2025.05.04
https://sputniknews.jp/20250504/19856678.html