プーチン大統領は習主席を「親愛なる友人」と2025年05月09日 15:41

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【概要】

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、第二次世界大戦の対ナチス・ドイツ勝利80周年を記念する「戦勝記念日」パレードを2025年5月9日にモスクワで開催した。パレードは例年通り赤の広場で実施され、ロシア国内の愛国心を鼓舞しつつ、国外には軍事的強さを誇示することを目的としている。モスクワがウクライナに対して全面侵攻を開始してから4回目の開催であり、中国の習近平国家主席やブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領を含む20カ国以上の外国首脳が出席した。

 プーチン大統領は戦勝記念日の期間中に「人道的」な停戦を宣言したが、ウクライナ側はこれを偽善的だとして否定し、ロシア軍がすでに多数回にわたり停戦を破ったと主張している。また、ウクライナ政府はこの式典を「皮肉のパレード」と呼び、赤の広場を行進する兵士らがウクライナに対する戦争犯罪に関与している可能性があると警告した。

 パレードではT-90M戦車をはじめとする軍事装備が登場し、ロシア軍兵士による行進が行われた。プーチン大統領は演説で、第二次世界大戦中にナチス・ドイツと戦った旧ソ連兵士と現在のロシア軍を重ね合わせる表現を用いた。式典後、プーチン大統領は出席した外国首脳との晩餐会を開き、「勝利」に乾杯を捧げた。

 安全対策として、モスクワ市当局は電子タバコや電動スクーター、動物の持ち込みを禁止し、モバイルインターネットの通信も妨害された。ウクライナによる攻撃の懸念が理由とされている。

 今回の出席者のうち、特に注目されたのは習近平国家主席とルーラ大統領である。EU加盟国の中では、スロバキアのロベルト・フィツォ首相が唯一出席した。セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領も出席している。

 パレード前日の5月8日、プーチン大統領と習近平国家主席はクレムリンで3時間以上にわたって会談を行い、共同で「歴史認識」を擁護する姿勢を示した。プーチン大統領は習主席を「親愛なる友人」と呼び、西側諸国への対抗姿勢を鮮明にした。

 ロシアにおいて第二次世界大戦は「大祖国戦争」と呼ばれ、1941年にドイツがソ連に侵攻した日を起点とし、1945年のドイツ降伏で終結したとされる。1939年から1941年のソ連とナチス・ドイツの不可侵条約期間は、公式の歴史教育ではあまり触れられていない。

 この戦争はソ連にとって甚大な被害をもたらし、死者は2,000万人以上にのぼるとされる。プーチン政権下ではこの歴史が積極的に活用されており、5月9日は国家最大の祝日とされている。ロシア軍は「反ファシズムの戦士」として称揚されている。

 ウクライナ侵攻後、ロシアでは軍への批判が法律で禁じられ、数千人が起訴されるなど、ソビエト崩壊以降最大の国内弾圧が行われている。新たに導入された教科書では、ウクライナを「極端な民族主義国家」と表現し、1941年から1944年のナチス支配下の政権になぞらえている。

 プーチン大統領は侵攻開始時の演説において、ロシア軍の目標は「ウクライナの非ナチ化」であると述べたが、ウクライナのゼレンスキー大統領はこれを「理解不能」と評している。

【詳細】

 2025年5月9日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、モスクワの赤の広場において第2次世界大戦の対独戦勝80周年を記念する軍事パレードを実施した。これは、ナチス・ドイツに対するソビエト連邦の勝利を祝うものであり、プーチン政権下においてロシア国内で最も重要な国家的祝祭と位置づけられている。

 本年のパレードには、20か国以上の外国首脳が出席した。中でも注目されたのは、中国の習近平国家主席およびブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領の出席であり、この二者が最も重要な来賓と見なされている。また、欧州連合(EU)加盟国の中で唯一、スロバキアのロベルト・フィツォ首相が出席したことも注目された。

 プーチン大統領はパレードに合わせ、5月8日から10日までの3日間にわたり「人道的停戦(ヒューマニタリアン・トゥルース)」を一方的に発表した。これはロシア側の軍事行動を一時的に停止するとの趣旨であったが、ウクライナ政府はこの措置を「欺瞞的な演出」に過ぎないとして否定的に評価し、同期間中にロシアが停戦を数百回にわたり破ったと非難した。また、ウクライナ政府は、このような記念行事がナチズムへの勝利とは無関係であり、赤の広場を行進する兵士らがウクライナ国民への犯罪に関与している可能性があると主張した。

 パレードは、T-90M主力戦車を含む軍用車両や兵士らによる行進で構成され、最後にプーチン大統領による演説が行われた。同大統領は、ロシアの現在の軍隊と、かつてナチス・ドイツと戦った赤軍兵士とを重ね合わせる歴史的修辞を繰り返した。演説の後、外国要人を迎えた晩餐会において、プーチン大統領は「勝利に乾杯」と述べた。

 パレード前日の5月8日には、クレムリンでプーチン大統領と習近平国家主席が3時間以上にわたり会談を行い、両首脳は「歴史的真実」の保護と西側諸国に対する共同の姿勢を強調した。プーチン大統領は習主席に対し「親愛なる友人」と呼びかけ、両国の関係の強固さを印象づけた。

 治安対策も厳重に講じられた。当局は、パレード会場への電子タバコ、電動スクーター、さらには動物の持ち込みを禁止し、また、ウクライナによる攻撃の可能性を理由に、モスクワ市内のモバイルインターネット回線を遮断した。

 この対独戦勝記念日(ロシアでは「大祖国戦争勝利の日」)は、1941年のナチス・ドイツによる奇襲(バルバロッサ作戦)以降の戦争を記念するものであり、1945年のドイツ無条件降伏によって終結した。ロシアの公的歴史記述では、1939年から1941年のソ連とナチス・ドイツの不可侵条約(モロトフ=リッベントロップ協定)の時期は意図的に言及されない傾向がある。

 ソ連はこの戦争で2,000万人以上の死者を出したとされており、この国家的悲劇はプーチン政権下でナショナリズム強化の重要な素材となってきた。ウクライナ侵攻開始以降、ロシア国内では軍批判が法的に禁止され、数千人が取り締まりの対象となるなど、ポスト・ソビエト時代で最大の国内弾圧が進行している。加えて、新しい教科書ではウクライナを「超国家主義国家」と規定し、1941~1944年のナチス占領政権との類似性が強調されている。

 プーチン大統領は、ウクライナ侵攻の演説において同国の「非ナチ化」を目的としたと主張したが、ウクライナのゼレンスキー大統領はこれを「理解不能」として一蹴している。
 
【要点】

 基本情報

 ・日付:2025年5月9日

 ・場所:ロシア・モスクワ、赤の広場

 ・行事名:対独戦勝80周年記念軍事パレード(通称:大祖国戦争勝利記念日)

 出席者

 ・ロシア大統領:ウラジーミル・プーチン

 ・主な外国要人

  ⇨中国国家主席・習近平(最重要来賓)

  ⇨ブラジル大統領・ルーラ

  ⇨スロバキア首相・フィツォ(EU加盟国で唯一)

  ⇨参加国数:20か国以上の首脳または代表団が参加

 軍事パレード

 ・登場装備:T-90M戦車などの軍用車両

 ・兵士行進:ウクライナ戦争に関与する兵士を含む可能性あり

 ・演説:プーチン大統領が赤軍兵士と現在の兵士を結びつける歴史修辞を使用

 ・晩餐会:外国要人との夕食会で「勝利に乾杯」と発言

 停戦措置とその実態

 ・発表:プーチンが「人道的停戦(ヒューマニタリアン・トゥルース)」を宣言(5月8~10日)

 ・ウクライナの反応

  ⇨停戦を欺瞞的と批判

  ⇨実際には数百回の停戦違反があったと報告

  ⇨パレードを「犯罪者の行進」と非難

 中露関係

 ・前日会談(5月8日):プーチンと習近平が3時間以上会談

 ・会談の要点

  ⇨「歴史的真実」の保護を強調

  ⇨対西側連携の強化を確認

  ⇨プーチンが習を「親愛なる友人」と呼称

 治安対策

 ・制限措置:電子タバコ、電動スクーター、動物の持ち込み禁止

 ・通信対策:ウクライナの攻撃リスクを理由にモスクワ市内のモバイル通信遮断

 ・歴史観とプロパガンダ
記念日背景:1945年の対ナチス・ドイツ勝利(欧州戦勝記念日)

 ・ソ連の死者数:推定2,000万人以上

 ・歴史教育の変化

  ⇨1939~41年の独ソ不可侵条約期は意図的に言及されず

  ⇨現行教科書ではウクライナを「超国家主義国家」と記述

  ⇨ナチス占領政権との類似を主張

 ・侵攻理由の一つとしての「非ナチ化」:国際的には理解されず、ウクライナ側はこれを否定

【引用・参照・底本】

Putin hosts world leaders at lavish army parade amid Ukraine war FRANCE24 2025.05.09
https://www.france24.com/en/europe/20250509-putin-world-leaders-army-parade-ukraine?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250509&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

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