インドとパキスタンの空中交戦:中国の軍事技術の拡散と実効性2025年05月09日 20:59

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【概要】

 2025年5月9日付のStephen Bryenによる報道であり、印パ間の最新の空中戦闘において、インド空軍が大きな損失を被ったとされる内容である。

 報道によれば、インド空軍の主力戦闘機であるフランス製のラファールEH(Rafale EH)3機が撃墜された。また、少なくともスホイ戦闘機1機、MiG戦闘機1機、イスラエル製の大型偵察ドローン1機も撃墜されたとされる。これらはパキスタン空軍によるものであり、パキスタン首相シャバズ・シャリフがこの事実を公表した。

 インドはこれまでに34機のラファールを導入しており、これらは多用途戦闘機として、制空任務、防空、近接航空支援、深部打撃、偵察、対艦攻撃、核抑止任務に対応可能な機体である。

 今回の戦闘では、インド側のラファールがイギリスではストームシャドウ(Storm Shadow)として知られるSCALP巡航ミサイルを搭載していた。また、空対空用のMICAミサイルも装備していた。撃墜された最初のラファール機の墜落現場では、MICAミサイルの一部が発見されており、その機体番号「BS-001」は、インドが導入した最初の単座型ラファールであることを示している。

 戦闘は視認外距離(BVR: beyond visual range)で行われ、いわゆる接近戦ではなかった。パキスタンは中国と共同生産したJ-10戦闘機を用い、そこから中国製のPL-15空対空ミサイルを発射した。PL-15ミサイルの一部がインド領内で回収されており、その中にはAESA(アクティブ電子走査アレイ)レーダー部品も含まれていた。

 PL-15ミサイルは、米国のAIM-120D AMRAAM(先進中距離空対空ミサイル)に相当するものであり、200〜300kmの射程を有するとされる。輸出型は145kmとされ、パキスタンが保有しているのはこの輸出モデルと見られる。発射後の速度はマッハ5(約6,173km/h)であり、非常に高速である。

 これに対して、フランス製のMICAミサイルの射程は60〜80km程度とされ、射程において大きく劣る。したがって、今回の交戦においては、PL-15の長距離性能が有利に働いたと分析されている。

 米空軍も、F-22やF-35のようなステルス機の導入と、BVR戦闘に特化した長距離空対空ミサイルの運用に注力しており、これにより機動性を犠牲にする代わりにステルス性を高めている。

 ラファールはステルス機ではなく、技術的には先進的ではあるが、BVR戦闘においては中国製戦闘機やミサイルに劣ると見なされている。また、米国製のAMRAAMも現状ではPL-15より射程で劣っており、これを上回る新型の空対空ミサイルが求められている。

 米国は次世代ミサイルとしてAIM-260 JATM(Joint Advanced Tactical Missile)を開発しているが、まだ初期生産段階にあり、実戦配備には至っていない。射程はおよそ200kmとされるが、それでもPL-15の上限には及ばない。

 ロシアもR-77空対空ミサイルの改良型(R-77M)を開発しており、これにはPL-15同様のデュアルパルスモーターやAESAレーダーが搭載されていると見られる。さらに極超音速(スクラムジェット)推進型も存在する可能性があるが、その射程などの詳細は不明である。

 この一連の空中戦は、インド空軍にとって大きな打撃であり、NATO諸国にもBVR戦闘能力の遅れを突きつける警鐘とされている。今後、さらなる情報が明らかになれば、追加の損害が判明する可能性もある。

【詳細】

 1. 背景と発端

 2025年4月22日、インドのジャンムー・カシミール州パハルガムで発生したテロ攻撃により、27名の民間人が死亡した。この事件を受けて、インドは5月7日に「オペレーション・シンドゥール(Operation Sindoor)」と名付けた報復作戦を実施し、パキスタンおよびパキスタン管理下のカシミール地域にあるとされるテロ組織の拠点9箇所を空爆した。インド側は、これらの攻撃がテロリストの拠点を標的としたものであり、民間人への被害は最小限に抑えられたと主張している。

 一方、パキスタンはこれを主権侵害と捉え、報復としてインド領内へのミサイルおよびドローン攻撃を行った。この一連の応酬により、両国間の緊張が急激に高まり、空中戦闘へと発展した。

 2. 空中戦闘の詳細

 5月7日、インドとパキスタンの空軍は、カシミール地方のライン・オブ・コントロール(LoC)上空で大規模な空中戦闘を展開した。この戦闘には、インド空軍のラファール(Rafale)、Su-30MKI、MiG-29戦闘機、およびパキスタン空軍のJ-10C、JF-17、F-16戦闘機が参加した。戦闘は約1時間にわたり、視認外射程(BVR)での交戦が中心となった。

 パキスタン側は、インドの戦闘機5機(ラファール3機、Su-30MKI 1機、MiG-29 1機)を撃墜したと主張している。これに対し、インド側はラファール1機の損失を認めているが、その他の損失については確認していない。また、インド側はパキスタンの戦闘機(F-16およびJF-17)を撃墜したと主張しているが、パキスタン側はこれを否定している。

 3. 使用された兵器と技術

 インド空軍

 ・ラファール戦闘機:フランス製の多用途戦闘機で、SCALP巡航ミサイルおよびMICA空対空ミサイルを搭載。

 ・Su-30MKIおよびMiG-29戦闘機:ロシア製の戦闘機で、主に空対空および空対地任務に使用。

 ・イスラエル製ハロップ(Harop)ドローン:自爆型ドローンで、敵の防空システムや高価値目標を攻撃するために使用。

 パキスタン空軍

 ・J-10C戦闘機:中国製の第4.5世代戦闘機で、AESAレーダーとPL-15空対空ミサイルを搭載。

 ・JF-17およびF-16戦闘機:それぞれ中国・パキスタン共同開発およびアメリカ製の戦闘機で、多様な任務に対応。

 ・PL-15空対空ミサイル:中国製の長距離ミサイルで、射程は200km以上、速度はマッハ5以上。AESAレーダーによる誘導と高い抗ジャミング性能を持つ。

 4. 技術的評価と戦術的影響

 ・今回の空中戦闘では、パキスタン空軍のJ-10C戦闘機とPL-15ミサイルの組み合わせが、インド空軍のラファール戦闘機に対して優位性を示したとされる。特に、PL-15の長射程と高速度により、インド側のMICAミサイル(射程60〜80km)よりも有利な交戦距離を確保できた可能性がある。

 ・また、インド空軍のラファール戦闘機は、ステルス性能を持たないため、BVR戦闘においては不利な状況に置かれたと考えられる。これに対し、J-10Cはステルス性を高めた設計とAESAレーダーの搭載により、敵機の早期探知と長距離からの攻撃が可能となっている。

 5. 国際的な影響と今後の展望

 この空中戦闘は、インドとパキスタンの軍事バランスに大きな影響を与えるだけでなく、国際社会にも波紋を広げている。特に、中国製兵器の実戦での有効性が示されたことで、他国の軍事戦略や兵器開発に影響を及ぼす可能性がある。また、アメリカやヨーロッパ諸国も、自国の空対空ミサイル技術の見直しや改良を迫られることとなるだろう。

 さらに、今回の事例は、ステルス性能や長距離ミサイルの重要性を再認識させるものであり、今後の空中戦闘における戦術や兵器開発の方向性に影響を与えると考えられる。
 
【要点】

 1. 発端と背景
 
 ・2025年4月22日:インド・ジャンムー・カシミール州でテロ攻撃(死者27名)。

 ・インド政府はパキスタン支援のテロ組織による犯行と断定。

 ・5月7日:インド空軍が「オペレーション・シンドゥール」を実行、パキスタン領およびパキスタン支配地域の標的を空爆。

 ・パキスタンは報復としてミサイルおよびドローン攻撃を実施。

 2. 空中戦闘の概要

 ・空中戦はカシミール地方のLoC(実効支配線)上空で発生。

 ・交戦期間は約1時間、視認外射程(BVR)戦闘が中心。

 ・参加機種(インド)

  ⇨ラファール、Su-30MKI、MiG-29。

 ・参加機種(パキスタン)

  ⇨J-10C、JF-17、F-16。

 ・パキスタンの主張:インド機5機を撃墜(ラファール3機含む)。

 ・インドの主張:パキスタン機を撃墜(F-16等)し、ラファール1機のみ損失。

 3. 主要兵器と戦術

 ・インド側

  ⇨SCALP巡航ミサイル(ラファール搭載)。

  ⇨MICA空対空ミサイル(射程約60〜80km)。

  ⇨イスラエル製Harop自爆型ドローンを投入。

 ・パキスタン側

  ⇨J-10C戦闘機(中国製、AESAレーダー搭載)。

  ⇨PL-15空対空ミサイル(射程200km以上、マッハ5以上)。

  ⇨JF-17(中パ共同開発)、F-16(米国製)も参加。

 4. 戦術的・技術的評価

 ・PL-15ミサイルの射程と速度により、パキスタン側がBVR戦闘で優勢。

 ・ラファールはステルス性がなく、探知・追尾に不利。

 ・J-10Cは高いステルス性・電子戦能力を備える。

 ・インドのMICAはPL-15に比べ射程が短く、劣勢。

 5. 国際的な波及効果

 ・中国製ミサイル(PL-15)の実戦投入により、中国の武器輸出に有利な材料。

 ・米欧の兵器メーカーは空対空ミサイル技術の見直しを迫られる。

 ・長距離ミサイルとステルス性能の重要性が改めて浮き彫りに。

 ・地域安全保障(南アジア)の緊張が高まり、国際社会も警戒。

【桃源寸評】

 この空中戦闘は、単なる一時的な軍事衝突ではなく、以下の観点からインドとパキスタンの軍事技術の進展および戦術の変化を象徴する重要な事例であり、今後の地域安全保障や国際軍事戦略において注視されるべき出来事であると位置づけられる。

 1. 技術進展の象徴

 ・中国製PL-15ミサイルの実戦使用は、中距離BVR戦闘の質的転換を示している。

 ・パキスタンのJ-10CやJF-17 Block IIIは、AESAレーダーや電子戦装備を有し、第4.5世代戦闘機の域に達している。

 ・一方、インドは高性能機であるラファールを保有しているが、ミサイル性能での劣位が露呈した。

 2. 戦術の変化

 ・可視範囲内での格闘戦(ドッグファイト)から、視認外射程(BVR)中心の交戦様式へ移行。

 ・長距離ミサイル+電子戦+情報優勢を前提とした戦術運用が主流となりつつある。

 ・ステルス性の欠如やネットワーク連携の弱さが、生存性に直結している。

 3. 地域安全保障への影響

 ・核保有国同士の空中交戦が発生したこと自体、エスカレーション・リスクの実例である。

 ・今後の国境管理や監視体制において、ドローンやミサイルの役割が一層拡大する可能性。

 ・インドは兵器体系の再編を迫られ、他国との軍事協力(特に米・仏・イスラエル)を加速させる可能性がある。

 4. 国際軍事戦略への示唆

 ・BVR戦闘における優劣が戦局を決する新たな現実が証明された。

 ・米国製AMRAAMの限界と、新世代ミサイル(AIM-260 JATMなど)の早期導入の必要性が明らかに。

 ・中国の兵器が実戦で「有効である」と証明されたことで、グローバル兵器市場や同盟国の調達戦略に影響を及ぼす。

 総じて、この事例はインド・パキスタン間の緊張のみならず、中国の軍事技術の拡散と実効性、ならびに米欧の軍事的優位への挑戦という大きな構図の一環であるといえる。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

​​India loses top fighter jet – bad news for its future air combat
ASIA TIMES 2025.05.09
https://asiatimes.com/2025/05/india-loses-top-fighter-jet-bad-news-for-its-future-air-combat/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=dd545b15c6-DAILY_08_05_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-dd545b15c6-16242795&mc_cid=dd545b15c6&mc_eid=69a7d1ef3c#

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