中・露共同声明 ― 2025年05月10日 23:25
【概要】
1. 中国とロシアの共同声明の意義
習近平国家主席とプーチン大統領は、「新時代における中露包括的戦略的協力パートナーシップのさらなる深化に関する共同声明」、「グローバル戦略的安定性に関する共同声明」、「国際法の権威維持に向けた協力強化に関する共同声明」など複数の文書に署名した。これらの声明は、単なる二国間関係を超えたものであり、第二次世界大戦(WWII)の歴史的遺産を守る責任、および国際統治と人類の進歩に貢献する共同責任を強調している。
2. 米国に対する批判と国連体制の擁護
米国は国連機関や国際組織からの脱退、貿易戦争による市場の混乱、いわゆる「ルールに基づく国際秩序」という名目による覇権主義の正当化などを通じ、国際社会に不信感を生じさせていると指摘されている。中国とロシアによる声明は、こうした動向に対抗し、国連を中核とする国際秩序と国際法の権威を擁護するものである。
3. 国際安全保障と平和の構築
第二次世界大戦以降の80年間で築かれた平和とグローバル化の成果が、単独行動主義や覇権主義によって損なわれつつあるとし、特に核保有国が他の核保有国の周辺に軍事基地を設けたり、宇宙空間の軍事利用を進めたりすることは、戦略的安定を破壊するものであると批判している。そのうえで、包括的かつ持続可能な安全保障を追求すべきと主張している。
4. 「ルールの私物化」への懸念
一部の国が「クラブのルール」や「家のルール」といった自国主導の基準を国際ルールに置き換えようとする動きや、二重基準の適用が、国際社会における分断と不安定を引き起こしていると警告している。これに対し、平等な協議と互恵的な協力こそが、平和と発展を実現する道であると論じている。
5. 多極化とグローバルサウスの台頭
中国とロシアは、上海協力機構(SCO)やBRICSの設立・発展に貢献し、国連やG20などの多国間枠組みにおいても協調を図っている。また、中国は600を超える国際条約の締約国であり、グローバル・サウス諸国とともに、公平で秩序ある多極的世界と、包摂的で均衡のとれた経済グローバル化の推進を図っている。
6. 中国の国際的立場と提唱する理念
中国は国連憲章に最初に署名した国であり、国連安全保障理事会の常任理事国として、国連中心の国際秩序の維持を一貫して支持している。習主席の「人類運命共同体」のビジョンや、「一帯一路」構想をはじめとする三大イニシアティブは、国際統治の改善と改革に対する中国の貢献として位置付けられている。
7. 歴史的教訓と今後の課題
80年前の戦勝は、軍事的勝利であると同時に正義の勝利、人類文明の前進であったと強調されている。国際社会がより平和で公平な世界を目指すには、国連憲章の原則に基づいた国際秩序と国際法を維持することが不可欠であり、「戦争の惨禍から後世を救う」という国連憲章の理念を実現することが共通の目標であると結ばれている。
【詳細】
2025年5月8日、中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、モスクワのクレムリンでの会談後、「新時代における中ロ包括的戦略協力パートナーシップの深化に関する共同声明」を含む複数の共同声明に署名した。翌9日には、両首脳に加え、20カ国以上の首脳や国際機関の代表が招かれ、旧ソ連における「大祖国戦争」勝利80周年の記念式典がモスクワで開催された。
この一連の共同声明には、以下の内容が含まれている。
1.中ロ包括的戦略協力パートナーシップの深化
両国は「新時代」において互いの信頼を強化し、広範な分野にわたる協力を深めることを確認した。
2.国際法の権威の擁護に関する声明
国連を中心とした国際秩序と国際法の基本原則の擁護を強調し、いわゆる「ルールに基づく国際秩序」に対する批判的立場を表明した。
3.グローバル戦略的安定に関する声明
核戦力の均衡や戦略的安定を損なう行為(他国の国境付近での恒久的な軍事基地設置、宇宙の軍事化など)に対する懸念を表明し、包括的で持続可能な安全保障体制の構築を呼びかけた。
共同声明が中ロ二国間の関係を超え、現代の国際秩序全体に影響を及ぼす意義を持つと位置づけている。主な論点は以下の通りである。
1.第二次世界大戦の教訓と国連の役割
第二次世界大戦(WWII)の敗戦国に対する勝利は、正義と平和の勝利であったとされ、その後に設立された国連は、国家の大小にかかわらず平等であるという理念を体現するものであったとする。中ロ両国は、この精神を継承し、国連中心の国際秩序の維持に責任を有していると強調されている。
2.「ルールに基づく国際秩序」への批判
一部の国(特に米国)が、自らの利益に応じて国際制度を利用したり、離脱したりしていると批判。これにより国際的な信頼や安定が損なわれているとする。中ロの声明は、こうした行動に対抗する「正当な声」であり、特にグローバル・サウス諸国の公平・正義への要請を代弁するものであるとされている。
3.戦略的均衡と安全保障
核保有国が他の核保有国の周辺に軍事的圧力をかけたり、宇宙空間を軍事利用することは、戦略的安定を脅かす行為であると指摘。こうした行為は、現在の国際体制の「統治赤字」や「正当性の危機」を悪化させる原因であると主張している。
4.多極化とグローバル・ガバナンス
中ロは、上海協力機構(SCO)、BRICS、G20などの枠組みを通じて多極的な国際秩序を支援してきた。中国は、600以上の国際条約・改正議定書に加盟しており、国際的な規範形成に積極的に関与している。
5.中国の国際的立場と貢献
中国は、国連憲章に最初に署名した国であり、安全保障理事会の常任理事国として、国際秩序の安定と平和の推進に取り組んできたとされる。また、「人類運命共同体」の構築、「一帯一路」構想の推進、「三大グローバル・イニシアティブ(発展、安全、文明)」の提唱などを通じて、中国式のグローバル・ガバナンスの改革案を提示している。
6.結語としての歴史観と未来志向
歴史から教訓を得るべきであり、国際法や国連憲章に基づく秩序こそが、平和と進歩の基盤であると再確認されている。中国は「歴史の正しい側」、「人類文明の進歩の側」に立ち続けると述べられている。
【要点】
1. 中ロ共同声明の要点(3本)
・中ロ包括的戦略協力パートナーシップの深化に関する声明
⇨「新時代」の中ロ関係を確認
⇨各分野における協力の深化を明記
・国際法の権威の擁護に関する共同声明
⇨国連中心の国際秩序を支持
⇨一部諸国が提唱する「ルールに基づく秩序」に懐疑的立場を表明
・グローバル戦略的安定に関する共同声明
⇨戦略的均衡の重要性を強調
・他国の国境付近での軍事基地設置や宇宙軍拡に反対
2. 主張(構成別)
A. 第二次世界大戦と国連の意義
・WWIIの勝利は「正義と平和」の勝利であると定義
・国連の設立は、すべての国家の平等原則を基礎とする
・中ロはその秩序の守護者とされる
B. 「ルールに基づく国際秩序」批判
・米国などが自国の利益で国際機関を利用・離脱していると非難
・こうした行為は秩序の信頼性を損なうと指摘
・中ロ声明は「グローバル・サウス」の声を反映していると主張
C. 安全保障・戦略的均衡
・核保有国が他国周辺に軍事展開することは危険と警告
・宇宙空間の軍事利用は均衡を崩すと批判
・現行国際体制の「統治赤字」と「正当性の危機」を指摘
D. 多極化とグローバル・ガバナンス
・中ロはSCO、BRICS、G20などを活用し秩序の多極化を推進
・中国は600以上の国際条約・協定に加盟し、制度設計に貢献
E. 中国の立場と貢献
・国連憲章の最初の署名国としての役割を強調
・「人類運命共同体」や「三大グローバル・イニシアティブ」を推進
⇨(発展、安全、文明を柱とする提唱)
F. 結論:歴史認識と今後の立場
・歴史から教訓を学び、国際法と国連憲章を基礎とする秩序を守るべきと主張
・中国は「歴史の正しい側」「文明進歩の側」に立つと表明
【引用・参照・底本】
These joint statements carry significance of the times beyond bilateral scope: Global Times editorial GT 2025.05.10
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1333712.shtml
1. 中国とロシアの共同声明の意義
習近平国家主席とプーチン大統領は、「新時代における中露包括的戦略的協力パートナーシップのさらなる深化に関する共同声明」、「グローバル戦略的安定性に関する共同声明」、「国際法の権威維持に向けた協力強化に関する共同声明」など複数の文書に署名した。これらの声明は、単なる二国間関係を超えたものであり、第二次世界大戦(WWII)の歴史的遺産を守る責任、および国際統治と人類の進歩に貢献する共同責任を強調している。
2. 米国に対する批判と国連体制の擁護
米国は国連機関や国際組織からの脱退、貿易戦争による市場の混乱、いわゆる「ルールに基づく国際秩序」という名目による覇権主義の正当化などを通じ、国際社会に不信感を生じさせていると指摘されている。中国とロシアによる声明は、こうした動向に対抗し、国連を中核とする国際秩序と国際法の権威を擁護するものである。
3. 国際安全保障と平和の構築
第二次世界大戦以降の80年間で築かれた平和とグローバル化の成果が、単独行動主義や覇権主義によって損なわれつつあるとし、特に核保有国が他の核保有国の周辺に軍事基地を設けたり、宇宙空間の軍事利用を進めたりすることは、戦略的安定を破壊するものであると批判している。そのうえで、包括的かつ持続可能な安全保障を追求すべきと主張している。
4. 「ルールの私物化」への懸念
一部の国が「クラブのルール」や「家のルール」といった自国主導の基準を国際ルールに置き換えようとする動きや、二重基準の適用が、国際社会における分断と不安定を引き起こしていると警告している。これに対し、平等な協議と互恵的な協力こそが、平和と発展を実現する道であると論じている。
5. 多極化とグローバルサウスの台頭
中国とロシアは、上海協力機構(SCO)やBRICSの設立・発展に貢献し、国連やG20などの多国間枠組みにおいても協調を図っている。また、中国は600を超える国際条約の締約国であり、グローバル・サウス諸国とともに、公平で秩序ある多極的世界と、包摂的で均衡のとれた経済グローバル化の推進を図っている。
6. 中国の国際的立場と提唱する理念
中国は国連憲章に最初に署名した国であり、国連安全保障理事会の常任理事国として、国連中心の国際秩序の維持を一貫して支持している。習主席の「人類運命共同体」のビジョンや、「一帯一路」構想をはじめとする三大イニシアティブは、国際統治の改善と改革に対する中国の貢献として位置付けられている。
7. 歴史的教訓と今後の課題
80年前の戦勝は、軍事的勝利であると同時に正義の勝利、人類文明の前進であったと強調されている。国際社会がより平和で公平な世界を目指すには、国連憲章の原則に基づいた国際秩序と国際法を維持することが不可欠であり、「戦争の惨禍から後世を救う」という国連憲章の理念を実現することが共通の目標であると結ばれている。
【詳細】
2025年5月8日、中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、モスクワのクレムリンでの会談後、「新時代における中ロ包括的戦略協力パートナーシップの深化に関する共同声明」を含む複数の共同声明に署名した。翌9日には、両首脳に加え、20カ国以上の首脳や国際機関の代表が招かれ、旧ソ連における「大祖国戦争」勝利80周年の記念式典がモスクワで開催された。
この一連の共同声明には、以下の内容が含まれている。
1.中ロ包括的戦略協力パートナーシップの深化
両国は「新時代」において互いの信頼を強化し、広範な分野にわたる協力を深めることを確認した。
2.国際法の権威の擁護に関する声明
国連を中心とした国際秩序と国際法の基本原則の擁護を強調し、いわゆる「ルールに基づく国際秩序」に対する批判的立場を表明した。
3.グローバル戦略的安定に関する声明
核戦力の均衡や戦略的安定を損なう行為(他国の国境付近での恒久的な軍事基地設置、宇宙の軍事化など)に対する懸念を表明し、包括的で持続可能な安全保障体制の構築を呼びかけた。
共同声明が中ロ二国間の関係を超え、現代の国際秩序全体に影響を及ぼす意義を持つと位置づけている。主な論点は以下の通りである。
1.第二次世界大戦の教訓と国連の役割
第二次世界大戦(WWII)の敗戦国に対する勝利は、正義と平和の勝利であったとされ、その後に設立された国連は、国家の大小にかかわらず平等であるという理念を体現するものであったとする。中ロ両国は、この精神を継承し、国連中心の国際秩序の維持に責任を有していると強調されている。
2.「ルールに基づく国際秩序」への批判
一部の国(特に米国)が、自らの利益に応じて国際制度を利用したり、離脱したりしていると批判。これにより国際的な信頼や安定が損なわれているとする。中ロの声明は、こうした行動に対抗する「正当な声」であり、特にグローバル・サウス諸国の公平・正義への要請を代弁するものであるとされている。
3.戦略的均衡と安全保障
核保有国が他の核保有国の周辺に軍事的圧力をかけたり、宇宙空間を軍事利用することは、戦略的安定を脅かす行為であると指摘。こうした行為は、現在の国際体制の「統治赤字」や「正当性の危機」を悪化させる原因であると主張している。
4.多極化とグローバル・ガバナンス
中ロは、上海協力機構(SCO)、BRICS、G20などの枠組みを通じて多極的な国際秩序を支援してきた。中国は、600以上の国際条約・改正議定書に加盟しており、国際的な規範形成に積極的に関与している。
5.中国の国際的立場と貢献
中国は、国連憲章に最初に署名した国であり、安全保障理事会の常任理事国として、国際秩序の安定と平和の推進に取り組んできたとされる。また、「人類運命共同体」の構築、「一帯一路」構想の推進、「三大グローバル・イニシアティブ(発展、安全、文明)」の提唱などを通じて、中国式のグローバル・ガバナンスの改革案を提示している。
6.結語としての歴史観と未来志向
歴史から教訓を得るべきであり、国際法や国連憲章に基づく秩序こそが、平和と進歩の基盤であると再確認されている。中国は「歴史の正しい側」、「人類文明の進歩の側」に立ち続けると述べられている。
【要点】
1. 中ロ共同声明の要点(3本)
・中ロ包括的戦略協力パートナーシップの深化に関する声明
⇨「新時代」の中ロ関係を確認
⇨各分野における協力の深化を明記
・国際法の権威の擁護に関する共同声明
⇨国連中心の国際秩序を支持
⇨一部諸国が提唱する「ルールに基づく秩序」に懐疑的立場を表明
・グローバル戦略的安定に関する共同声明
⇨戦略的均衡の重要性を強調
・他国の国境付近での軍事基地設置や宇宙軍拡に反対
2. 主張(構成別)
A. 第二次世界大戦と国連の意義
・WWIIの勝利は「正義と平和」の勝利であると定義
・国連の設立は、すべての国家の平等原則を基礎とする
・中ロはその秩序の守護者とされる
B. 「ルールに基づく国際秩序」批判
・米国などが自国の利益で国際機関を利用・離脱していると非難
・こうした行為は秩序の信頼性を損なうと指摘
・中ロ声明は「グローバル・サウス」の声を反映していると主張
C. 安全保障・戦略的均衡
・核保有国が他国周辺に軍事展開することは危険と警告
・宇宙空間の軍事利用は均衡を崩すと批判
・現行国際体制の「統治赤字」と「正当性の危機」を指摘
D. 多極化とグローバル・ガバナンス
・中ロはSCO、BRICS、G20などを活用し秩序の多極化を推進
・中国は600以上の国際条約・協定に加盟し、制度設計に貢献
E. 中国の立場と貢献
・国連憲章の最初の署名国としての役割を強調
・「人類運命共同体」や「三大グローバル・イニシアティブ」を推進
⇨(発展、安全、文明を柱とする提唱)
F. 結論:歴史認識と今後の立場
・歴史から教訓を学び、国際法と国連憲章を基礎とする秩序を守るべきと主張
・中国は「歴史の正しい側」「文明進歩の側」に立つと表明
【引用・参照・底本】
These joint statements carry significance of the times beyond bilateral scope: Global Times editorial GT 2025.05.10
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1333712.shtml