プーチン大統領の提案 ― 2025年05月12日 16:05
【概要】
2025年5月11日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して、トルコで直接会談を行う用意があると表明した。会談の日時としては5月15日(木)を提案しており、これに先立って5月12日(月)から30日間の停戦を実施するようロシアに求めた。
ゼレンスキー大統領の提案は、プーチン大統領が同日早朝に発表した「イスタンブールでの交渉再開」提案を受けて行われた。プーチン大統領は、2022年3月にイスタンブールで行われたロシア・ウクライナ間の和平交渉の再開を主張し、「いかなる前提条件も設けずに」話し合いを始めることを求めた。また、協議の中で新たな停戦について合意できる可能性も示唆したが、ウクライナとその同盟国が提案した30日間の即時停戦案には具体的な言及を避けた。
ゼレンスキー大統領はSNS「X」で、「殺戮を引き延ばす意味はない。私は木曜日にトルコでプーチンを待つ。今回はロシアが言い訳を探さないことを望む」と述べ、個人的に会談に臨む意志を明確にした。一方で、ロシアが停戦に同意しなかった場合でも出席するかどうかは明言していない。
トランプ米大統領も自身のSNS「Truth Social」で、「プーチン大統領は停戦協定を望んでおらず、代わりに木曜日にトルコで会って交渉したいと考えている。ウクライナはこれに直ちに同意すべきである」と述べ、直接対話を支持した。
西側諸国の首脳、特にフランス、英国、ドイツ、ポーランドの指導者らは、5月10日のキーウ訪問時にロシアに対して無条件の停戦を求めた。マクロン仏大統領も声明の中で「交渉の前提として停戦が必要である」との立場を示した。ゼレンスキー大統領の側近であるアンドリー・イェルマーク氏も、ウクライナ側は停戦が発効されることを前提に交渉に応じる可能性があると発言した。
2022年3月にイスタンブールで行われた最後の和平交渉では、ウクライナが中立化しNATO加盟を放棄する案が取り上げられたが、最終的に頓挫した。それ以降、両国間の接触は捕虜交換や遺体引き渡しなど人道的なやり取りに限定されてきた。
プーチン大統領は、交渉再開の提案と並行して、西側諸国の「最後通牒」や「反ロシア的なレトリック」を批判し、ウクライナ支援国が戦争継続を望んでいると非難した。
トルコのエルドアン大統領はプーチン大統領との電話会談で、持続的な和平解決を目指す交渉の開催についてトルコが用意があると表明した。
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、ロシアによる交渉提案を「良い兆候」としながらも、「停戦の約束がなければ不十分である」として、ロシアにさらなる譲歩を求めた。
【詳細】
背景
2022年2月にロシアがウクライナに全面侵攻して以来、両国の間で正式な対面交渉は同年3月のイスタンブール会談を最後に停止していた。当時、両国は一定の和平案に近づいたとされるが、最終合意には至らず、戦闘は継続されてきた。その後の両国間の直接的な接触は、捕虜交換や遺体の引き渡しなどの人道的措置に限定されていた。
今回の提案の概要
プーチン大統領の提案
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2025年5月11日未明に声明を発表し、以下の提案を行った。
・2025年5月15日(木)にトルコ・イスタンブールで直接交渉を再開する。
・交渉は無条件で開始する。すなわち、交戦停止やその他の政治的条件を交渉前に設けない。
・交渉の中で「新たな停戦」について合意できる可能性があるとも示唆した。
この提案では、ウクライナとその同盟国が要求する30日間の無条件停戦(5月12日開始)には明確な返答をしていない。
また、プーチン大統領は発言の中で、「欧州の最後通牒的態度」や「反ロシア的言動」に言及し、西側諸国が和平よりも戦争継続を望んでいると批判した。
ゼレンスキー大統領の反応
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は同日、以下のように応じた。
・2025年5月15日にトルコでプーチン大統領と「個人的に」会談する用意があると表明した。
・その条件として、ロシアに5月12日から30日間の即時停戦に応じることを求めた。
・SNS「X」にて、「殺戮を延ばす理由はない。私は木曜日にプーチンをトルコで待っている。今回は言い訳を探さないことを願う」と述べた。
ただし、ロシアが停戦に応じなかった場合に会談に応じるか否かは明言しなかった。
ゼレンスキー大統領の首席補佐官アンドリー・イェルマーク氏も、「ロシアが5月12日からの停戦に合意することが交渉の前提である」と述べた。
各国の反応
米国
ドナルド・トランプ米大統領は、自身のSNS「Truth Social」で以下のように発言した。
・「プーチン大統領は停戦協定を望まず、代わりに直接会談を望んでいる」。
・「ウクライナは即座にこの交渉に応じるべきである。少なくとも合意の可能性があるか否かが明確になる」と主張。
トランプ大統領は和平交渉に対する前向きな姿勢を示したが、ウクライナ側の停戦条件に言及せず、むしろ交渉の即時開始を重視した。
欧州主要国
5月10日には、フランス、イギリス、ドイツ、ポーランドの首脳がキーウを訪問し、ロシアに対し即時無条件の停戦を求めた。
・フランスのマクロン大統領は、「交渉には停戦が必要不可欠である」との立場を堅持した(エリゼ宮の声明による)。
・ドイツのメルツ首相は、ロシアの交渉再開提案について「前進の兆しであるが、依然として不十分である」とし、ロシアに対しまず停戦に合意するよう求めた。
トルコの立場
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、プーチン大統領との電話会談で「持続的な和平解決に向けた交渉の場をトルコが提供する用意がある」と述べた。トルコは2022年のイスタンブール会談でも仲介役を果たしており、今回も中立的立場から和平推進に意欲を示している。
まとめと今後の焦点
・プーチン大統領は「即時・無条件の交渉再開」を提案しているが、ウクライナとその同盟国は「停戦の確約」を交渉参加の前提条件としている。
・ゼレンスキー大統領は、停戦が実施されれば5月15日にトルコで会談に応じる用意を明言しているが、停戦が実施されない場合の対応は不明。
・今後数日間で、ロシアが停戦に応じるか否かが、会談実現と和平プロセス再始動の鍵となる。
【要点】
プーチン大統領の提案内容
・提案日時:2025年5月11日未明
・提案内容
⇨2025年5月15日(木)にトルコ・イスタンブールで直接交渉を再開する。
⇨交渉は無条件で開始(停戦や他の条件なし)。
⇨停戦については交渉の中で検討可能とするが、即時停戦には同意せず。
・発言の背景
⇨西側諸国の停戦要求に反発。
⇨欧州や米国の「最後通牒的な態度」を批判。
ゼレンスキー大統領の対応
・提案受諾の姿勢
⇨プーチンとの会談には応じる用意がある(2025年5月15日、トルコ)。
・条件
⇨5月12日から30日間の停戦実施をロシア側に要求。
・発言内容
⇨「殺戮を延ばす理由はない」。
⇨「今回は言い訳を探さないことを願う」。
・補佐官の補足:
⇨停戦実施が交渉の前提条件であると明言。
トルコの立場
・エルドアン大統領の対応
⇨トルコは和平交渉の仲介に意欲。
⇨イスタンブールを交渉の場として再び提供する用意を表明。
欧州諸国の反応(5月10日時点)
・訪問国:フランス、イギリス、ドイツ、ポーランドの首脳がキーウを訪問。
・要求内容:ロシアに対し「即時・無条件の停戦」を要請。
・各国の立場
⇨フランス(マクロン):停戦が和平交渉の前提。
⇨ドイツ(メルツ):プーチン提案は不十分、まず停戦せよ。
アメリカ(トランプ大統領)の立場
・主張
⇨「ロシアは停戦を望まず、直接交渉を望んでいる」。
⇨「ウクライナはすぐに交渉に応じるべき」。
・トーン
⇨ロシア寄りとも取れる姿勢。
⇨停戦条件には触れず、交渉開始を優先。
今後の焦点
・最大の争点:ロシアが5月12日からの停戦に応じるかどうか。
・会談の成否:停戦が実施されなければ、ゼレンスキーが交渉に応じるか不透明。
・トルコでの和平会談実現可否が今後の情勢を左右する。
【引用・参照・底本】
Putin agrees to 'direct' talks with Ukraine, Zelensky offers to meet him ‘personally’FRANCE24 2025.05.11
https://www.france24.com/en/europe/20250511-putin-wants-russia-to-hold-direct-talks-with-ukraine-on-may-15?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250511&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
2025年5月11日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して、トルコで直接会談を行う用意があると表明した。会談の日時としては5月15日(木)を提案しており、これに先立って5月12日(月)から30日間の停戦を実施するようロシアに求めた。
ゼレンスキー大統領の提案は、プーチン大統領が同日早朝に発表した「イスタンブールでの交渉再開」提案を受けて行われた。プーチン大統領は、2022年3月にイスタンブールで行われたロシア・ウクライナ間の和平交渉の再開を主張し、「いかなる前提条件も設けずに」話し合いを始めることを求めた。また、協議の中で新たな停戦について合意できる可能性も示唆したが、ウクライナとその同盟国が提案した30日間の即時停戦案には具体的な言及を避けた。
ゼレンスキー大統領はSNS「X」で、「殺戮を引き延ばす意味はない。私は木曜日にトルコでプーチンを待つ。今回はロシアが言い訳を探さないことを望む」と述べ、個人的に会談に臨む意志を明確にした。一方で、ロシアが停戦に同意しなかった場合でも出席するかどうかは明言していない。
トランプ米大統領も自身のSNS「Truth Social」で、「プーチン大統領は停戦協定を望んでおらず、代わりに木曜日にトルコで会って交渉したいと考えている。ウクライナはこれに直ちに同意すべきである」と述べ、直接対話を支持した。
西側諸国の首脳、特にフランス、英国、ドイツ、ポーランドの指導者らは、5月10日のキーウ訪問時にロシアに対して無条件の停戦を求めた。マクロン仏大統領も声明の中で「交渉の前提として停戦が必要である」との立場を示した。ゼレンスキー大統領の側近であるアンドリー・イェルマーク氏も、ウクライナ側は停戦が発効されることを前提に交渉に応じる可能性があると発言した。
2022年3月にイスタンブールで行われた最後の和平交渉では、ウクライナが中立化しNATO加盟を放棄する案が取り上げられたが、最終的に頓挫した。それ以降、両国間の接触は捕虜交換や遺体引き渡しなど人道的なやり取りに限定されてきた。
プーチン大統領は、交渉再開の提案と並行して、西側諸国の「最後通牒」や「反ロシア的なレトリック」を批判し、ウクライナ支援国が戦争継続を望んでいると非難した。
トルコのエルドアン大統領はプーチン大統領との電話会談で、持続的な和平解決を目指す交渉の開催についてトルコが用意があると表明した。
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、ロシアによる交渉提案を「良い兆候」としながらも、「停戦の約束がなければ不十分である」として、ロシアにさらなる譲歩を求めた。
【詳細】
背景
2022年2月にロシアがウクライナに全面侵攻して以来、両国の間で正式な対面交渉は同年3月のイスタンブール会談を最後に停止していた。当時、両国は一定の和平案に近づいたとされるが、最終合意には至らず、戦闘は継続されてきた。その後の両国間の直接的な接触は、捕虜交換や遺体の引き渡しなどの人道的措置に限定されていた。
今回の提案の概要
プーチン大統領の提案
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2025年5月11日未明に声明を発表し、以下の提案を行った。
・2025年5月15日(木)にトルコ・イスタンブールで直接交渉を再開する。
・交渉は無条件で開始する。すなわち、交戦停止やその他の政治的条件を交渉前に設けない。
・交渉の中で「新たな停戦」について合意できる可能性があるとも示唆した。
この提案では、ウクライナとその同盟国が要求する30日間の無条件停戦(5月12日開始)には明確な返答をしていない。
また、プーチン大統領は発言の中で、「欧州の最後通牒的態度」や「反ロシア的言動」に言及し、西側諸国が和平よりも戦争継続を望んでいると批判した。
ゼレンスキー大統領の反応
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は同日、以下のように応じた。
・2025年5月15日にトルコでプーチン大統領と「個人的に」会談する用意があると表明した。
・その条件として、ロシアに5月12日から30日間の即時停戦に応じることを求めた。
・SNS「X」にて、「殺戮を延ばす理由はない。私は木曜日にプーチンをトルコで待っている。今回は言い訳を探さないことを願う」と述べた。
ただし、ロシアが停戦に応じなかった場合に会談に応じるか否かは明言しなかった。
ゼレンスキー大統領の首席補佐官アンドリー・イェルマーク氏も、「ロシアが5月12日からの停戦に合意することが交渉の前提である」と述べた。
各国の反応
米国
ドナルド・トランプ米大統領は、自身のSNS「Truth Social」で以下のように発言した。
・「プーチン大統領は停戦協定を望まず、代わりに直接会談を望んでいる」。
・「ウクライナは即座にこの交渉に応じるべきである。少なくとも合意の可能性があるか否かが明確になる」と主張。
トランプ大統領は和平交渉に対する前向きな姿勢を示したが、ウクライナ側の停戦条件に言及せず、むしろ交渉の即時開始を重視した。
欧州主要国
5月10日には、フランス、イギリス、ドイツ、ポーランドの首脳がキーウを訪問し、ロシアに対し即時無条件の停戦を求めた。
・フランスのマクロン大統領は、「交渉には停戦が必要不可欠である」との立場を堅持した(エリゼ宮の声明による)。
・ドイツのメルツ首相は、ロシアの交渉再開提案について「前進の兆しであるが、依然として不十分である」とし、ロシアに対しまず停戦に合意するよう求めた。
トルコの立場
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、プーチン大統領との電話会談で「持続的な和平解決に向けた交渉の場をトルコが提供する用意がある」と述べた。トルコは2022年のイスタンブール会談でも仲介役を果たしており、今回も中立的立場から和平推進に意欲を示している。
まとめと今後の焦点
・プーチン大統領は「即時・無条件の交渉再開」を提案しているが、ウクライナとその同盟国は「停戦の確約」を交渉参加の前提条件としている。
・ゼレンスキー大統領は、停戦が実施されれば5月15日にトルコで会談に応じる用意を明言しているが、停戦が実施されない場合の対応は不明。
・今後数日間で、ロシアが停戦に応じるか否かが、会談実現と和平プロセス再始動の鍵となる。
【要点】
プーチン大統領の提案内容
・提案日時:2025年5月11日未明
・提案内容
⇨2025年5月15日(木)にトルコ・イスタンブールで直接交渉を再開する。
⇨交渉は無条件で開始(停戦や他の条件なし)。
⇨停戦については交渉の中で検討可能とするが、即時停戦には同意せず。
・発言の背景
⇨西側諸国の停戦要求に反発。
⇨欧州や米国の「最後通牒的な態度」を批判。
ゼレンスキー大統領の対応
・提案受諾の姿勢
⇨プーチンとの会談には応じる用意がある(2025年5月15日、トルコ)。
・条件
⇨5月12日から30日間の停戦実施をロシア側に要求。
・発言内容
⇨「殺戮を延ばす理由はない」。
⇨「今回は言い訳を探さないことを願う」。
・補佐官の補足:
⇨停戦実施が交渉の前提条件であると明言。
トルコの立場
・エルドアン大統領の対応
⇨トルコは和平交渉の仲介に意欲。
⇨イスタンブールを交渉の場として再び提供する用意を表明。
欧州諸国の反応(5月10日時点)
・訪問国:フランス、イギリス、ドイツ、ポーランドの首脳がキーウを訪問。
・要求内容:ロシアに対し「即時・無条件の停戦」を要請。
・各国の立場
⇨フランス(マクロン):停戦が和平交渉の前提。
⇨ドイツ(メルツ):プーチン提案は不十分、まず停戦せよ。
アメリカ(トランプ大統領)の立場
・主張
⇨「ロシアは停戦を望まず、直接交渉を望んでいる」。
⇨「ウクライナはすぐに交渉に応じるべき」。
・トーン
⇨ロシア寄りとも取れる姿勢。
⇨停戦条件には触れず、交渉開始を優先。
今後の焦点
・最大の争点:ロシアが5月12日からの停戦に応じるかどうか。
・会談の成否:停戦が実施されなければ、ゼレンスキーが交渉に応じるか不透明。
・トルコでの和平会談実現可否が今後の情勢を左右する。
【引用・参照・底本】
Putin agrees to 'direct' talks with Ukraine, Zelensky offers to meet him ‘personally’FRANCE24 2025.05.11
https://www.france24.com/en/europe/20250511-putin-wants-russia-to-hold-direct-talks-with-ukraine-on-may-15?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250511&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D