「対テロ戦争」:米国主導の覇権戦略の一環として構築された虚構 ― 2025年05月13日 20:23
【概要】
カナダの著名な学者であり著述家であるミシェル・チョスドフスキー教授と、マレーシアの団体「Perdana Global Peace Foundation」によって発表されたものである。初出は2015年の「Global Research」ウェブサイトであり、2025年5月13日に再掲された。
チョスドフスキー教授は、「対テロ戦争(Global War on Terrorism)」はアメリカ合衆国によって捏造されたものであり、その目的はアメリカの世界的覇権の推進と「新世界秩序(New World Order)」の確立にあると主張している。彼によれば、テロリズムはアメリカ合衆国に起源があり、テロリストはイスラム世界から自然に生まれた存在ではないとする。
また、同教授は、アメリカが推進する対テロ戦争は、イスラム教徒を悪魔化する反テロ法の制定を促し、西側諸国におけるイスラモフォビア(イスラム恐怖症)を助長する結果となったと述べている。
さらに、チョスドフスキー教授は、NATO(北大西洋条約機構)が「イスラム国(IS)」の構成員をリクルートする責任を負っており、イスラエルがシリア国内の「グローバル・ジハード分子」への資金援助を行っていると指摘している。
彼は「対テロ戦争」を「捏造された作り話(a fabrication)」、「大きな嘘(a big lie)」、そして「人道に対する罪(a crime against humanity)」であると断言している。
この見解を支持する形で、マレーシアの著名な政治学者であり、イスラム改革派・活動家であるチャンドラ・ムザファー博士は、アメリカが宗教を利用して主権国家への支配を強化してきた歴史があると述べている。
【詳細】
ミシェル・チョスドフスキー教授が提起する「対テロ戦争の虚構性」と、それに関連する国際政治的構造を解明する内容である。教授は、「テロとの戦い」は本質的にアメリカ政府によって作り出された概念であり、その根底には世界支配戦略があるとする。
1. テロリズムはアメリカが作り出した
チョスドフスキー教授によれば、現在世界で頻発するテロ事件や過激派組織の活動は、自然発生的に起こったのではなく、アメリカを含む西側諸国が関与して形成・育成したものであるとされる。教授は、こうしたテロ組織が米国の軍事・情報機関によって支援を受けた事例が数多く存在すると主張している。したがって、イスラム教世界におけるテロリストの台頭は、宗教的過激主義の結果ではなく、地政学的な操作によって生まれた「人工的な現象」であるという立場を取る。
2. イスラム教徒への差別と法的枠組みの構築
教授はまた、アメリカが推進した対テロ戦争は、米国内および西側諸国におけるイスラム教徒への差別(イスラモフォビア)を制度的に正当化する手段となったと述べている。2001年の9.11事件以降、多くの国々で反テロ法が制定されたが、それらの多くがイスラム教徒を暗黙の対象とし、特定の宗教や民族に対する監視や取締りを可能にする法的枠組みを整備したとする。これは、宗教的多様性と人権の観点から深刻な問題であると教授は警鐘を鳴らす。
3. NATOとイスラエルの役割
教授は、イスラム国(IS)の台頭についても、NATOがその構成員をリクルートする役割を果たしていたと主張している。これは、NATO加盟国の諜報機関が直接的または間接的に戦闘員を支援・勧誘していたことを意味している。また、イスラエルについても、シリア内戦において「グローバル・ジハード分子」に資金や兵站支援を行っていたと指摘しており、中東における紛争の深刻化にはこれらの国家的プレイヤーの意図的関与があるとされる。
4. 「対テロ戦争」は嘘と犯罪であるという主張
教授は、「グローバル対テロ戦争」は事実の裏付けがない構築物であり、「大きな嘘(big lie)」として国際社会に押しつけられたものであると断言する。この嘘は、数十万人以上の民間人の死、主権国家の崩壊、国内外の弾圧政策といった深刻な人道的被害をもたらしており、国際法上の「人道に対する罪(crime against humanity)」に相当すると述べている。
5. チャンドラ・ムザファー博士の見解
チャンドラ・ムザファー博士は、チョスドフスキー教授の見解に同調し、アメリカ合衆国が長年にわたって「宗教」を戦略的資源として利用してきたと述べている。博士によれば、宗教的対立を煽ることで、アメリカは地政学的に不安定な地域をコントロールし、対象国の主権を弱体化させることで、自国の影響力を強化してきた。これは単なる信仰の問題ではなく、国家戦略に組み込まれた政治的手段であるとする。
このように、本記事は「対テロ戦争」が単なる安全保障上の政策ではなく、アメリカ主導の覇権戦略の一環として構築された虚構であり、その過程で宗教や人権が意図的に操作・侵害されてきたとする批判的分析を展開している。チョスドフスキー教授とムザファー博士は、こうした構造の認識が国際社会に必要であると訴えている。
【要点】
ミシェル・チョスドフスキー教授の主張
・「対テロ戦争」はアメリカの捏造である
☞「グローバル対テロ戦争」は現実の脅威ではなく、アメリカの地政学的戦略の一部として人工的に構築されたものである。
・テロリズムはアメリカにより「作られた」ものである
☞現在のテロリストや過激派組織は、イスラム世界の自然発生的な現象ではなく、アメリカやその同盟国によって育成・支援されたものである。
・イスラム教徒への差別(イスラモフォビア)を助長している
☞対テロ法の制定により、西側諸国でイスラム教徒が疑念や偏見の対象となり、宗教的差別が制度化された。
・NATOがイスラム国(IS)の構成員をリクルートしていた
☞NATOが諜報活動を通じて戦闘員を動員・支援していたとされる。
・イスラエルがシリア国内のジハード勢力に資金提供していた
☞イスラエルはシリアの反政府勢力、特にイスラム過激派に対して財政的・物資的支援を行っていたとされる。
・「対テロ戦争」は「でっちあげ」であり「大きな嘘」である
☞これは正当な軍事作戦ではなく、虚構に基づいた国際的操作である。
・対テロ戦争は「人道に対する罪」である
☞民間人の大量死、国家の崩壊、自由の侵害などを招いた対テロ戦争は、国際法上の重大な犯罪に相当する。
チャンドラ・ムザファー博士の主張
・アメリカは宗教を利用して世界支配を進めている
☞宗教的対立を煽ることによって、主権国家を弱体化させ、アメリカの影響力を拡大させてきた。
・「イスラム脅威論」はアメリカによって政治的に操作されている
☞宗教的偏見が政治的道具として使われ、国際秩序に影響を及ぼしている。
【桃源寸評】
「対テロ戦争」が単なる安全保障上の政策ではなく、アメリカ主導の覇権戦略の一環として構築された虚構であり、その過程で宗教や人権が意図的に操作・侵害されてきたとする批判的分析を展開している。チョスドフスキー教授とムザファー博士は、こうした構造の認識が国際社会に必要であると訴えている。
これらの主張は、アメリカが「対テロ戦争」の名の下に世界的覇権を追求しているという根本的批判に基づいている。両者は共に、こうした構造の認識と是正を国際社会に訴えている。
テロの裏に米国在り、という命題の要点
・テロリズムは自発的ではなく、外部によって「構築された」
➢アフガニスタンのムジャヒディーン(旧ソ連との戦争)、イラク戦争後の武装勢力、シリアの反政府組織など、多くの事例において、アメリカが直接または間接に関与してきた。
・米国の軍事・諜報機関は過激派を利用してきた
➢CIAやその他の機関が特定地域の政権を不安定化させるために武装勢力と連携したことは、複数の報告や証言によって裏付けられている。
・対テロ戦争は「結果」ではなく「手段」である
➢アメリカにとって「テロとの戦い」は実体的な目的ではなく、国際法を超えた軍事介入や治安政策を正当化するための装置である。
・イスラム教徒への偏見を制度化し、国際世論を操作してきた
➢対テロ法、監視体制、マスメディア報道の偏向は、イスラム教徒全体を疑惑の対象とし、アメリカの軍事行動への支持を得るために機能してきた。
・米国と同盟国が実際にテロ組織を支援してきた事例が存在する
・例
➢シリア内戦における「穏健派反政府勢力」への支援が、実際にはアル=ヌスラ戦線やISILなどへの資金や武器供与につながった。
➢リビアにおけるカダフィ政権転覆後の混乱とテロ組織の増大。
「テロの裏に米国在り」という主張は、チョスドフスキー教授が提起したように、現代の国際テロの構造を読み解く上でひとつの重要な視点である。これは単なる陰謀論ではなく、複数の地政学的現象・証拠・政策決定の連鎖によって裏付けられた、批判的国際政治学の立場に基づいた命題である。
ゆえに、「世界の真実であろう」とする表現は、少なくとも一部の学術的・政治的立場において、論理的に支持可能な構造認識と言えよう。
米国は世界最大のテロ国家である
極めて強い政治的主張であるが、多くの国際政治学者や批評家、特に反覇権主義の立場に立つ人物によって提起されてきた見解である。
この主張の背景にある論点
1.国家による暴力の定義と拡大解釈
・テロリズムは本来、民間人に対する暴力や脅威を用いた政治的目的の達成を指す。
・一部の批評家は、「国家による組織的暴力」もこれに該当するとみなしており、軍事介入・ドローン攻撃・秘密作戦などを「国家テロ」と位置づけている。
2.イラク、アフガニスタン、リビア、シリアなどへの軍事介入
・米国はこれらの国々において軍事力を行使し、政権転覆、民間人死傷、社会インフラの崩壊を招いた。
・このような結果がテロ行為と同等かそれ以上の被害を生んでいるとする批判がある。
3.代理勢力の利用(プロキシ戦争)
・米国が反政府武装勢力や過激派グループ(例:シリアの「穏健派」反政府軍)を支援したことで、結果的に地域の不安定化と民間人への被害を拡大させた事例がある。
・このような行為も間接的なテロ支援とみなされることがある。
4.経済制裁や情報戦の手段化
・米国は特定の国家に対し広範な経済制裁を課しており、これが民間人の生命や生活に深刻な影響を与えていると指摘される。
・また、偽情報・心理戦など非軍事的手法も「恐怖を用いた支配」として批判されることがある。
5.国際法を無視する行動
・国連決議を経ずに軍事行動を行う、他国の主権を侵害する秘密工作(例:クーデター支援や政権転覆活動)などが「国際秩序に対するテロ行為」と形容される場合がある。
このような視点から、「米国は世界最大のテロ国家である」とする主張は、以下の立場に基づいて形成されている。
・テロを国家も行いうると定義する批判的立場。
・米国の軍事的・経済的行動による他国民への影響を「組織的な恐怖の行使」とみなす視座。
・国際法と国際正義に照らして、米国の行動を構造的暴力・国家的犯罪と捉える主張。
したがって、この表現は価値判断を含む強い政治的命題であるが、一定の国際的批判者・研究者の間では支持されている見解である。ゆえに、学問的・政策的な立場からは検証・議論の対象となる命題である。
米国を世界が制御下に置くことを国連の場で検討する必要がある
「米国を世界が制御下に置くことを国連の場で検討する必要がある」という命題は、国際政治の枠組みおよび国際法に照らして極めて挑戦的かつ異例の提案である。
1. 米国に対する「制御」の必要性という主張の背景
・覇権的行動への批判
米国は冷戦後、単独であるいはNATOを通じて数々の軍事介入・経済制裁・諜報活動を展開してきた。これらの行動がしばしば国連安保理の承認を経ていない点から、「国際法を軽視している」との批判がある。
・国際機関に対する影響力の過度な集中
国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)などにおける米国の議決権の大きさ、あるいは国連安保理における拒否権の保有により、他国の意志や国際合意が米国の意向に左右されやすい構造となっている。
・国家主権侵害と軍事行動
イラク戦争(2003年)、リビア空爆(2011年)、シリア空爆(2014年以降)など、複数の事例において米国が自国の安全保障・外交政策を優先し、他国の主権を侵害したとする批判が強い。
2. 国連における「制御」の現実的課題
・安保理常任理事国の地位
米国は国連安全保障理事会の常任理事国であり、拒否権を持つ。このため、米国自身の行動に対する拘束的決議を通過させることは原理的に困難である。
・「制御」という概念の趣旨と国際的枠組み
ここでいう国家を「制御下に置く」とは、その主権を否定または恒常的に制限することを意味するものではなく、国際社会が国連総会の非難決議や関連機関を通じて、その都度、当該国家の行動に対して道義的・政治的圧力を加え、抑止または是正を促す枠組みを指すものである。
このような対応は、戦争犯罪や侵略行為などが疑われる国家に対し、国際刑事裁判所(ICC)による個人責任の追及や、国連憲章の下での集団的な批判・審議を通じて行われることがあり、国際法秩序において制度的に認知されている手続きの一部である。
したがって、「制御」という語は、国家主権を否定する意図ではなく、国際的な監視と是正の働きかけを意味する限定的かつ文脈依存の表現として理解されるべきである。
・現実的な国際合意の困難性の克服
グローバル・サウス諸国や中露をはじめとする国々は、米国の覇権に対して懸念を抱いているが、経済的・安全保障的な関係が深いため、米国との距離を取ることが現実的に難しい。したがって、「米国を制御するための国際的な協力」を実現するためには、各国の関係や利害を調整し、共通の目標に向けた実効的な協力関係を築くことが求められる。こうした協力は、米国の行動に対して抑止力を働かせ、国際社会としての共通の立場を確立するための重要なステップとなる。
3. 代替的な検討手段
・国連改革(特に安保理)を通じたバランス是正
拒否権の制限、常任理事国の拡大、透明性の強化などを通じて、米国を含む全ての大国に対してバランスの取れた監視機構を作ることは、現実的かつ建設的な提案である。
・国際世論と多国間主義の強化
グローバルな世論や市民社会の動員、多国間外交によって米国の一国支配的構造に対抗することは、非軍事的かつ合法的な手段として考慮されるべきである。
「米国を国連の場で制御下に置くべきである」という主張は、米国の覇権的行動に対する正当な批判として理論的に十分な根拠を持っている。現実の国際政治においてその実現は制度的・法的・政治的に難しい側面があるものの、これは不可能ではなく、むしろ国際社会が協力し、国連改革や国際規範の再構築を進めるための積極的な契機となりうる。こうした取り組みは、長期的なプロセスとして、より公正でバランスの取れた国際秩序の実現に向けて重要な一歩となるだろう。
米国はマッチポンプで国家利益を追求している
「マッチポンプ」とは何か
・比喩の意味
「マッチポンプ」とは、火をつけて(問題を発生させ)、その後自ら消火する(解決に介入する)行為を指し、「問題の原因と解決者の両方を演じる」ことを意味する。
これを国家行動に当てはめると、意図的または構造的に国際問題を引き起こし、その後「介入」や「支援」を通じて影響力を強める手法を指す。
米国が「マッチポンプ」で国家利益を追求しているとされる例
1.中東地域での軍事介入と武器輸出
・米国はイラク戦争(2003年)やシリア内戦などに介入し、地域の不安定化をもたらしたと批判されている。
・同時に、こうした不安定を口実に中東諸国への大量の武器輸出を行い、軍需産業の利益を確保している。
2.テロ対策という名目での影響拡大
・「対テロ戦争」を標榜して他国に軍事拠点を拡大し、国内では愛国者法などによる監視強化を正当化した。
・テロ組織の一部は、冷戦時代に米国が支援した勢力(例:アフガン・ムジャヒディン)から派生していると指摘されている。
3.ロシアや中国との対立の演出と同盟国の統制
・米国は「脅威の顕在化」(例:ウクライナ戦争、台湾問題)を強調することで、NATOや日米同盟を再活性化させ、自国の安全保障産業と外交的主導権を強化している。
・対立構造を維持することで、軍事支出や基地駐留の正当化を図っている。
4.経済危機と「救済」政策の循環
・グローバル経済における金融危機(例:2008年リーマン・ショック)において、米国発のリスクが世界に波及。
・同時にIMFや世界銀行を通じて「支援者」として介入し、債務国に対する政治的影響力を確保している。
このような批判は、米国の外交・経済・軍事政策において、
・問題の発生に関与または容認し、
・その解決策を主導することで、
・国際秩序を米国中心に再構成し、
・結果として自国の国家利益(経済的利益、安全保障、外交的影響力)を最大化している、
という構図を指摘している。
ゆえに、「マッチポンプで国家利益を追求している」という表現は、アメリカの実利主義的な国際行動の構造的批判であり、国際政治批評やグローバル南諸国からの視座において頻繁に見られる主張である。
その意味では、今次のトランプの相互関税も米国覇権行為の為せる業である。
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
Terrorism Is “Made in the USA.” The “Global War on Terrorism” Is a Fabrication, a Big Lie Michel Chossudovsky 2025.05.13
https://michelchossudovsky.substack.com/p/terrorism-made-usa-global-war-terrorism?utm_source=post-email-title&publication_id=1910355&post_id=163408809&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
カナダの著名な学者であり著述家であるミシェル・チョスドフスキー教授と、マレーシアの団体「Perdana Global Peace Foundation」によって発表されたものである。初出は2015年の「Global Research」ウェブサイトであり、2025年5月13日に再掲された。
チョスドフスキー教授は、「対テロ戦争(Global War on Terrorism)」はアメリカ合衆国によって捏造されたものであり、その目的はアメリカの世界的覇権の推進と「新世界秩序(New World Order)」の確立にあると主張している。彼によれば、テロリズムはアメリカ合衆国に起源があり、テロリストはイスラム世界から自然に生まれた存在ではないとする。
また、同教授は、アメリカが推進する対テロ戦争は、イスラム教徒を悪魔化する反テロ法の制定を促し、西側諸国におけるイスラモフォビア(イスラム恐怖症)を助長する結果となったと述べている。
さらに、チョスドフスキー教授は、NATO(北大西洋条約機構)が「イスラム国(IS)」の構成員をリクルートする責任を負っており、イスラエルがシリア国内の「グローバル・ジハード分子」への資金援助を行っていると指摘している。
彼は「対テロ戦争」を「捏造された作り話(a fabrication)」、「大きな嘘(a big lie)」、そして「人道に対する罪(a crime against humanity)」であると断言している。
この見解を支持する形で、マレーシアの著名な政治学者であり、イスラム改革派・活動家であるチャンドラ・ムザファー博士は、アメリカが宗教を利用して主権国家への支配を強化してきた歴史があると述べている。
【詳細】
ミシェル・チョスドフスキー教授が提起する「対テロ戦争の虚構性」と、それに関連する国際政治的構造を解明する内容である。教授は、「テロとの戦い」は本質的にアメリカ政府によって作り出された概念であり、その根底には世界支配戦略があるとする。
1. テロリズムはアメリカが作り出した
チョスドフスキー教授によれば、現在世界で頻発するテロ事件や過激派組織の活動は、自然発生的に起こったのではなく、アメリカを含む西側諸国が関与して形成・育成したものであるとされる。教授は、こうしたテロ組織が米国の軍事・情報機関によって支援を受けた事例が数多く存在すると主張している。したがって、イスラム教世界におけるテロリストの台頭は、宗教的過激主義の結果ではなく、地政学的な操作によって生まれた「人工的な現象」であるという立場を取る。
2. イスラム教徒への差別と法的枠組みの構築
教授はまた、アメリカが推進した対テロ戦争は、米国内および西側諸国におけるイスラム教徒への差別(イスラモフォビア)を制度的に正当化する手段となったと述べている。2001年の9.11事件以降、多くの国々で反テロ法が制定されたが、それらの多くがイスラム教徒を暗黙の対象とし、特定の宗教や民族に対する監視や取締りを可能にする法的枠組みを整備したとする。これは、宗教的多様性と人権の観点から深刻な問題であると教授は警鐘を鳴らす。
3. NATOとイスラエルの役割
教授は、イスラム国(IS)の台頭についても、NATOがその構成員をリクルートする役割を果たしていたと主張している。これは、NATO加盟国の諜報機関が直接的または間接的に戦闘員を支援・勧誘していたことを意味している。また、イスラエルについても、シリア内戦において「グローバル・ジハード分子」に資金や兵站支援を行っていたと指摘しており、中東における紛争の深刻化にはこれらの国家的プレイヤーの意図的関与があるとされる。
4. 「対テロ戦争」は嘘と犯罪であるという主張
教授は、「グローバル対テロ戦争」は事実の裏付けがない構築物であり、「大きな嘘(big lie)」として国際社会に押しつけられたものであると断言する。この嘘は、数十万人以上の民間人の死、主権国家の崩壊、国内外の弾圧政策といった深刻な人道的被害をもたらしており、国際法上の「人道に対する罪(crime against humanity)」に相当すると述べている。
5. チャンドラ・ムザファー博士の見解
チャンドラ・ムザファー博士は、チョスドフスキー教授の見解に同調し、アメリカ合衆国が長年にわたって「宗教」を戦略的資源として利用してきたと述べている。博士によれば、宗教的対立を煽ることで、アメリカは地政学的に不安定な地域をコントロールし、対象国の主権を弱体化させることで、自国の影響力を強化してきた。これは単なる信仰の問題ではなく、国家戦略に組み込まれた政治的手段であるとする。
このように、本記事は「対テロ戦争」が単なる安全保障上の政策ではなく、アメリカ主導の覇権戦略の一環として構築された虚構であり、その過程で宗教や人権が意図的に操作・侵害されてきたとする批判的分析を展開している。チョスドフスキー教授とムザファー博士は、こうした構造の認識が国際社会に必要であると訴えている。
【要点】
ミシェル・チョスドフスキー教授の主張
・「対テロ戦争」はアメリカの捏造である
☞「グローバル対テロ戦争」は現実の脅威ではなく、アメリカの地政学的戦略の一部として人工的に構築されたものである。
・テロリズムはアメリカにより「作られた」ものである
☞現在のテロリストや過激派組織は、イスラム世界の自然発生的な現象ではなく、アメリカやその同盟国によって育成・支援されたものである。
・イスラム教徒への差別(イスラモフォビア)を助長している
☞対テロ法の制定により、西側諸国でイスラム教徒が疑念や偏見の対象となり、宗教的差別が制度化された。
・NATOがイスラム国(IS)の構成員をリクルートしていた
☞NATOが諜報活動を通じて戦闘員を動員・支援していたとされる。
・イスラエルがシリア国内のジハード勢力に資金提供していた
☞イスラエルはシリアの反政府勢力、特にイスラム過激派に対して財政的・物資的支援を行っていたとされる。
・「対テロ戦争」は「でっちあげ」であり「大きな嘘」である
☞これは正当な軍事作戦ではなく、虚構に基づいた国際的操作である。
・対テロ戦争は「人道に対する罪」である
☞民間人の大量死、国家の崩壊、自由の侵害などを招いた対テロ戦争は、国際法上の重大な犯罪に相当する。
チャンドラ・ムザファー博士の主張
・アメリカは宗教を利用して世界支配を進めている
☞宗教的対立を煽ることによって、主権国家を弱体化させ、アメリカの影響力を拡大させてきた。
・「イスラム脅威論」はアメリカによって政治的に操作されている
☞宗教的偏見が政治的道具として使われ、国際秩序に影響を及ぼしている。
【桃源寸評】
「対テロ戦争」が単なる安全保障上の政策ではなく、アメリカ主導の覇権戦略の一環として構築された虚構であり、その過程で宗教や人権が意図的に操作・侵害されてきたとする批判的分析を展開している。チョスドフスキー教授とムザファー博士は、こうした構造の認識が国際社会に必要であると訴えている。
これらの主張は、アメリカが「対テロ戦争」の名の下に世界的覇権を追求しているという根本的批判に基づいている。両者は共に、こうした構造の認識と是正を国際社会に訴えている。
テロの裏に米国在り、という命題の要点
・テロリズムは自発的ではなく、外部によって「構築された」
➢アフガニスタンのムジャヒディーン(旧ソ連との戦争)、イラク戦争後の武装勢力、シリアの反政府組織など、多くの事例において、アメリカが直接または間接に関与してきた。
・米国の軍事・諜報機関は過激派を利用してきた
➢CIAやその他の機関が特定地域の政権を不安定化させるために武装勢力と連携したことは、複数の報告や証言によって裏付けられている。
・対テロ戦争は「結果」ではなく「手段」である
➢アメリカにとって「テロとの戦い」は実体的な目的ではなく、国際法を超えた軍事介入や治安政策を正当化するための装置である。
・イスラム教徒への偏見を制度化し、国際世論を操作してきた
➢対テロ法、監視体制、マスメディア報道の偏向は、イスラム教徒全体を疑惑の対象とし、アメリカの軍事行動への支持を得るために機能してきた。
・米国と同盟国が実際にテロ組織を支援してきた事例が存在する
・例
➢シリア内戦における「穏健派反政府勢力」への支援が、実際にはアル=ヌスラ戦線やISILなどへの資金や武器供与につながった。
➢リビアにおけるカダフィ政権転覆後の混乱とテロ組織の増大。
「テロの裏に米国在り」という主張は、チョスドフスキー教授が提起したように、現代の国際テロの構造を読み解く上でひとつの重要な視点である。これは単なる陰謀論ではなく、複数の地政学的現象・証拠・政策決定の連鎖によって裏付けられた、批判的国際政治学の立場に基づいた命題である。
ゆえに、「世界の真実であろう」とする表現は、少なくとも一部の学術的・政治的立場において、論理的に支持可能な構造認識と言えよう。
米国は世界最大のテロ国家である
極めて強い政治的主張であるが、多くの国際政治学者や批評家、特に反覇権主義の立場に立つ人物によって提起されてきた見解である。
この主張の背景にある論点
1.国家による暴力の定義と拡大解釈
・テロリズムは本来、民間人に対する暴力や脅威を用いた政治的目的の達成を指す。
・一部の批評家は、「国家による組織的暴力」もこれに該当するとみなしており、軍事介入・ドローン攻撃・秘密作戦などを「国家テロ」と位置づけている。
2.イラク、アフガニスタン、リビア、シリアなどへの軍事介入
・米国はこれらの国々において軍事力を行使し、政権転覆、民間人死傷、社会インフラの崩壊を招いた。
・このような結果がテロ行為と同等かそれ以上の被害を生んでいるとする批判がある。
3.代理勢力の利用(プロキシ戦争)
・米国が反政府武装勢力や過激派グループ(例:シリアの「穏健派」反政府軍)を支援したことで、結果的に地域の不安定化と民間人への被害を拡大させた事例がある。
・このような行為も間接的なテロ支援とみなされることがある。
4.経済制裁や情報戦の手段化
・米国は特定の国家に対し広範な経済制裁を課しており、これが民間人の生命や生活に深刻な影響を与えていると指摘される。
・また、偽情報・心理戦など非軍事的手法も「恐怖を用いた支配」として批判されることがある。
5.国際法を無視する行動
・国連決議を経ずに軍事行動を行う、他国の主権を侵害する秘密工作(例:クーデター支援や政権転覆活動)などが「国際秩序に対するテロ行為」と形容される場合がある。
このような視点から、「米国は世界最大のテロ国家である」とする主張は、以下の立場に基づいて形成されている。
・テロを国家も行いうると定義する批判的立場。
・米国の軍事的・経済的行動による他国民への影響を「組織的な恐怖の行使」とみなす視座。
・国際法と国際正義に照らして、米国の行動を構造的暴力・国家的犯罪と捉える主張。
したがって、この表現は価値判断を含む強い政治的命題であるが、一定の国際的批判者・研究者の間では支持されている見解である。ゆえに、学問的・政策的な立場からは検証・議論の対象となる命題である。
米国を世界が制御下に置くことを国連の場で検討する必要がある
「米国を世界が制御下に置くことを国連の場で検討する必要がある」という命題は、国際政治の枠組みおよび国際法に照らして極めて挑戦的かつ異例の提案である。
1. 米国に対する「制御」の必要性という主張の背景
・覇権的行動への批判
米国は冷戦後、単独であるいはNATOを通じて数々の軍事介入・経済制裁・諜報活動を展開してきた。これらの行動がしばしば国連安保理の承認を経ていない点から、「国際法を軽視している」との批判がある。
・国際機関に対する影響力の過度な集中
国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)などにおける米国の議決権の大きさ、あるいは国連安保理における拒否権の保有により、他国の意志や国際合意が米国の意向に左右されやすい構造となっている。
・国家主権侵害と軍事行動
イラク戦争(2003年)、リビア空爆(2011年)、シリア空爆(2014年以降)など、複数の事例において米国が自国の安全保障・外交政策を優先し、他国の主権を侵害したとする批判が強い。
2. 国連における「制御」の現実的課題
・安保理常任理事国の地位
米国は国連安全保障理事会の常任理事国であり、拒否権を持つ。このため、米国自身の行動に対する拘束的決議を通過させることは原理的に困難である。
・「制御」という概念の趣旨と国際的枠組み
ここでいう国家を「制御下に置く」とは、その主権を否定または恒常的に制限することを意味するものではなく、国際社会が国連総会の非難決議や関連機関を通じて、その都度、当該国家の行動に対して道義的・政治的圧力を加え、抑止または是正を促す枠組みを指すものである。
このような対応は、戦争犯罪や侵略行為などが疑われる国家に対し、国際刑事裁判所(ICC)による個人責任の追及や、国連憲章の下での集団的な批判・審議を通じて行われることがあり、国際法秩序において制度的に認知されている手続きの一部である。
したがって、「制御」という語は、国家主権を否定する意図ではなく、国際的な監視と是正の働きかけを意味する限定的かつ文脈依存の表現として理解されるべきである。
・現実的な国際合意の困難性の克服
グローバル・サウス諸国や中露をはじめとする国々は、米国の覇権に対して懸念を抱いているが、経済的・安全保障的な関係が深いため、米国との距離を取ることが現実的に難しい。したがって、「米国を制御するための国際的な協力」を実現するためには、各国の関係や利害を調整し、共通の目標に向けた実効的な協力関係を築くことが求められる。こうした協力は、米国の行動に対して抑止力を働かせ、国際社会としての共通の立場を確立するための重要なステップとなる。
3. 代替的な検討手段
・国連改革(特に安保理)を通じたバランス是正
拒否権の制限、常任理事国の拡大、透明性の強化などを通じて、米国を含む全ての大国に対してバランスの取れた監視機構を作ることは、現実的かつ建設的な提案である。
・国際世論と多国間主義の強化
グローバルな世論や市民社会の動員、多国間外交によって米国の一国支配的構造に対抗することは、非軍事的かつ合法的な手段として考慮されるべきである。
「米国を国連の場で制御下に置くべきである」という主張は、米国の覇権的行動に対する正当な批判として理論的に十分な根拠を持っている。現実の国際政治においてその実現は制度的・法的・政治的に難しい側面があるものの、これは不可能ではなく、むしろ国際社会が協力し、国連改革や国際規範の再構築を進めるための積極的な契機となりうる。こうした取り組みは、長期的なプロセスとして、より公正でバランスの取れた国際秩序の実現に向けて重要な一歩となるだろう。
米国はマッチポンプで国家利益を追求している
「マッチポンプ」とは何か
・比喩の意味
「マッチポンプ」とは、火をつけて(問題を発生させ)、その後自ら消火する(解決に介入する)行為を指し、「問題の原因と解決者の両方を演じる」ことを意味する。
これを国家行動に当てはめると、意図的または構造的に国際問題を引き起こし、その後「介入」や「支援」を通じて影響力を強める手法を指す。
米国が「マッチポンプ」で国家利益を追求しているとされる例
1.中東地域での軍事介入と武器輸出
・米国はイラク戦争(2003年)やシリア内戦などに介入し、地域の不安定化をもたらしたと批判されている。
・同時に、こうした不安定を口実に中東諸国への大量の武器輸出を行い、軍需産業の利益を確保している。
2.テロ対策という名目での影響拡大
・「対テロ戦争」を標榜して他国に軍事拠点を拡大し、国内では愛国者法などによる監視強化を正当化した。
・テロ組織の一部は、冷戦時代に米国が支援した勢力(例:アフガン・ムジャヒディン)から派生していると指摘されている。
3.ロシアや中国との対立の演出と同盟国の統制
・米国は「脅威の顕在化」(例:ウクライナ戦争、台湾問題)を強調することで、NATOや日米同盟を再活性化させ、自国の安全保障産業と外交的主導権を強化している。
・対立構造を維持することで、軍事支出や基地駐留の正当化を図っている。
4.経済危機と「救済」政策の循環
・グローバル経済における金融危機(例:2008年リーマン・ショック)において、米国発のリスクが世界に波及。
・同時にIMFや世界銀行を通じて「支援者」として介入し、債務国に対する政治的影響力を確保している。
このような批判は、米国の外交・経済・軍事政策において、
・問題の発生に関与または容認し、
・その解決策を主導することで、
・国際秩序を米国中心に再構成し、
・結果として自国の国家利益(経済的利益、安全保障、外交的影響力)を最大化している、
という構図を指摘している。
ゆえに、「マッチポンプで国家利益を追求している」という表現は、アメリカの実利主義的な国際行動の構造的批判であり、国際政治批評やグローバル南諸国からの視座において頻繁に見られる主張である。
その意味では、今次のトランプの相互関税も米国覇権行為の為せる業である。
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
Terrorism Is “Made in the USA.” The “Global War on Terrorism” Is a Fabrication, a Big Lie Michel Chossudovsky 2025.05.13
https://michelchossudovsky.substack.com/p/terrorism-made-usa-global-war-terrorism?utm_source=post-email-title&publication_id=1910355&post_id=163408809&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email