【桃源閑話】二階からコメ一粒 ― 2025年06月10日 08:31
【桃源閑話】二階からコメ一粒
「コメ2週連続値下がり」と、トップページにゴシックでの見出し。
5キロ当たりの平均価格が4223円で、前週と比較し37円安くなったというのだ。備蓄米市場に拡大、という見出しも踊る。しかし、国民は37円や20円安を求めているのだろうか。
後述するが、高値に至る趨勢を観る。どうもメディアの報道姿勢は、まさに国民の生活実感から乖離した、ピント外れの報道と言わざるを得ないのではないだろうか。この見出しを掲げたメディアは、以下の点で厳しく批判されるべきであろう。
・国民の生活感覚との著しい乖離
25円とか37円安いと報道している。国民は安いのにこしたことはないが、しかし、何かが的を外れていないか。5kgで4223円という価格が2週連続で値下がりしたとしても、その値下がり幅が数十円程度であれば、一般家庭の家計に与える影響は微々たるものであろう。メディアは、あたかも大幅な値下げであるかのように報じることで、国民の金銭感覚を愚弄しているとさえ言えないか。物価高騰が続く中で、国民が本当に求めているのは、今や数千円単位、あるいはそれ以上の実質的な値下げであり、数十円程度の変動を「値下がり」として大きく取り上げる感覚は、完全に麻痺しているとしか思えない。
・「高値覚え、安値覚えではない」ではないが
株価変動の「高値覚え、安値覚え」で論じるような訳にはいかない。食料品の価格変動を同列に語ることはできない。食料品は日々の生活に不可欠なものであり、価格の絶対値が生活に直結する。メディアは、現在のコメの価格が、過去の「安値:安定した価格」と比べていかに高水準であるかという歴史的視点を完全に欠落させている。かつて5kgあたり1,924円であったコメが、今や4,223円で「値下がり」と報じられるのは、極めて異常な事態である。この価格水準自体が、国民にとっては「高値」であり、その高値からのわずかな値下がりを強調することに何の意味があるのだろうか。
・過去の価格との比較の欠如
小泉進次郎農相に代わってから、線香花火の様なパフォーマンスの価格に国民は長蛇の列であった。斯様な状況を知ってか知らでか、メディアが本来行うべき比較報道を怠っていることを浮き彫りにする。国民が群がったとされる5kgあたり2000の価格と、現在の4,223円という価格を比較することなく、単に「値下がり」という一面だけを強調し、切り取る報道は、情報の偏向と読者の誤導に他ならない。
メディアは、当時の価格水準と現在の価格水準を明確に示し、いかに現在の価格が高い水準にあるのか、そしてわずかな値下がりがどれほど意味のないものなのかを伝えるべきである。
・「備蓄米市場に拡大」という本質的な背景への言及不足
見出しに「備蓄米 市場に拡大」とあるにもかかわらず、その背景や影響について深掘りしている形跡がない。備蓄米の市場放出がなぜ行われているのか(需給調整、価格抑制策・随意契約の問題(この件については愛知県の大村知事が問題提起をしているなど)、それが長期的にコメ価格にどのような影響を与えるのか、そしてそれが如何に国民の食卓にどう反映されてくるのか、といった本質的な情報提供が不足している。単なる価格の騰落だけでなく、その背景にある政策や市場メカニズムに言及することで、読者はより多角的に情報を理解することができるだ。
・何処に此のメディアの視点はあるのだろうか
結局のところ、この報道からメディアがどのような視点を持っているのか、全く読み取ることができない。国民の生活の苦しみに寄り添う視点もなければ、食料価格の構造的な問題に切り込む視点もない。ただ単に数字の変動を表面上なぞるだけの、薄っぺらい報道に終始していると言わざるを得ない。
この「コメ2週連続値下がり」という見出しとその報道は、国民の生活実感と乖離し、過去の経緯や本質的な背景を無視した、極めて不適切かつ無責任なものである。メディアは、表面的な価格変動を報じるだけでなく、国民の生活に根差した視点、歴史的背景、そして政策的な影響まで含めて、多角的かつ深掘りした情報を提供すべきである。そうでなければ、メディアは国民からの信頼を失い、単なる「情報」の羅列に過ぎなくなってしまうか、政府発表の垂れ流しか、ヨイショ記事に陥るだろう。
米価の推移
・農林水産省による小売米価調査の結果、2020年から2025年にかけての日本のコメ(5kgあたり)の小売価格は上昇傾向にある。特に2023年後半から2024年にかけては、需給ひっ迫や生産コストの増加を背景に、価格が高騰した。直近の2025年5月時点では、平均価格は4,200円台で推移しており、政府備蓄米の放出などにより一部で安価な米が流通する動きも見られる。
・日本のコメ5kgあたり小売価格の推移と直近の価格(時系列)
以下に、日本のコメ5kgあたりの小売価格の過去5年間の推移と直近の価格を時系列でまとめる。
☞過去5年間の推移(2020年〜2024年)
2020年頃
一般的に、コシヒカリなどの主要銘柄で2,300円前後、その他の銘柄で2,000円前後が相場とされていた。
2021年
この時期の明確な平均価格データは見当たらないが、後述の2022年の価格と比較すると、比較的安定していたと考えられる。
2022年
農林水産省のPOSデータによると、2022年12月の小売価格平均は5kgあたり1,924円であった。
銘柄によっては、2022年8月にコシヒカリの最安値が2,125円を記録したという情報もある。
2023年
2023年9月の平均価格は2,188円であった。
2023年後半(10月以降)から価格上昇が顕著になり始めた。
2023年10月: 2,225円(前月比 +38円)
2023年11月: 2,279円(前月比 +54円)
2023年12月: 2,311円(前月比 +32円)
2024年
価格高騰が本格化した。
2024年1月: 2,283円
2024年2月: 2,300円
2024年3月: 2,306円
2024年4月: 2,347円
2024年5月: 2,403円
2024年6月: 2,483円
2024年7月: 2,602円
2024年8月: 2,772円
2024年9月: 平均価格は3,152円に達し、2023年9月と比較して約44%上昇した。
2024年産新米の店頭価格は、5kgあたり3,500円~4,000円が中心となり、前年同時期から1,000円~1,500円程度上昇した。
直近の価格(2025年)
2025年1月下旬: スポット取引価格(60kgあたり)が45,391円を記録するなど、卸売価格も高騰した。
2025年2月下旬: スポット取引価格(60kgあたり)が46,780円を記録した。
2025年4月: 主要銘柄であるコシヒカリの5kgあたりの最高値は4,632円を記録した。
2025年5月7日発表(4月21日〜27日調査分)
全国のスーパーで販売されたコメの5kgあたりの平均価格は4,233円であった。これは17週連続で最高値を更新したものである。
2025年5月20日発表(5月5日からの週調査分)
5kg精米の平均販売価格は4,268円で、前週より54円高くなった。
2025年5月下旬〜6月上旬
政府が備蓄米を市場に放出する方針を決定し、一部の大手スーパー(例: バロー、西友、楽天など)では5kgあたり2,160円(税込)程度の価格で政府備蓄米が販売され始めている。これは通常の小売価格より大幅に安い価格設定である。
まとめ
日本のコメの小売価格は、ここ数年で顕著な上昇トレンドにある。特に2023年後半から2024年にかけての価格高騰は、消費者の家計に大きな影響を与えている。直近では5kgあたり4,200円台が平均的な価格となっているが、政府による備蓄米の放出など、価格抑制に向けた動きも出てきている。ただし、これらの措置が市場全体の価格に与える影響は、今後の状況次第で変動する可能性がある。
典拠:農林水産省 (MAFF)POSデータ・総務省 統計局・日本農業新聞 / JA全農
農林水産省における米のPOSデータ活用
農林水産省は、全国のスーパーマーケットから提供されるPOSデータをもとに、米の小売価格や販売数量の推移を週次で公表している。これは、国民の食生活に直結する米の価格動向を把握し、政策立案や情報提供に役立てるために非常に重要なデータとなっている。特に、消費者が実際にスーパーで購入する際の価格を反映しているため、国民の「生活感覚」に近い情報として注目される。
孫引きになるが、「国に九年の蓄え無くば不足なりと曰う、六年の蓄え無くば急なりと曰う、三年の蓄え無くば国その国に非ずと曰う」。
つまり、「三年分の蓄えが無い場合は、飢饉が続けば餓死者がたくさん出て人民が離散してしまい、もはや国家として成り立たないので『国に非ず』というのである」とる(『松平定信』藤田 覚著 1993年7月25日発行 中公新書 51-52頁)
日本の備蓄米の推移とコメの消費量について
日本の備蓄米の推移
政府は、食料安全保障の観点から、米の供給が不足する事態に備えて「政府備蓄米」を保有している。適正備蓄水準は100万トン程度とされている。毎年約20万トンを買い入れ、5年ほど保有した後に飼料用などとして売却するローテーションで管理されている。
近年、特に2023年産米の作柄悪化や、世界的な穀物価格高騰の影響を受け、2024年に入って政府備蓄米の市場への放出が複数回行われている。
・適正備蓄水準: 100万トン程度(6月末時点)
これは、10年に1度の不作(作況92)や、通常程度の不作(作況94)が2年連続した場合にも国産米で対応できる水準とされている。
・運用方法: 毎年20万トン程度を買い入れ、5年程度保有した後に飼料用等として売却。
・最近の動き
・2023年産米の供給不足が顕在化し、2024年に入って政府備蓄米の放出が実施された。
・2024年4月: 最初の放出が発表され、21万トンが市場に放出された。
・2024年5月: 追加で10万トンの放出が発表され、合計で31万トンが放出されることになった。
・これにより、政府備蓄米の在庫量は、目標の100万トンから一時的に70万トン程度(最初の21万トン放出後)に減少し、さらに放出された場合は60万トン台にまで減少すると報じられている。
・これらの放出は、2023年産米の作柄が予想を下回ったことや、民間在庫が減少傾向にあることへの対応である。
出典:
農林水産省「米の備蓄運営について」関連資料(適正備蓄水準や運用方法について)
農林水産省の記者会見概要や報道発表資料(直近の備蓄米放出量や在庫状況について)
例: 江藤農林水産大臣記者会見概要(2025年4月11日会見など)
例: 令和6年産米の契約・販売状況、民間在庫の推移及び米穀販売事業者における販売数量・販売価格の動向について(令和7年4月末現在)など
具体的な過去10年間の毎年の期末在庫量のような詳細な時系列データは、農林水産省の「食料需給表」や関連統計資料に記載されていることがあるが、一般に公開されている資料では「適正備蓄水準」と直近の放出量に関する情報が中心となる。
日本のコメ消費量の推移(ここ10年ほど)
日本のコメの消費量は、長期的に減少傾向にある。食生活の洋風化、人口減少、高齢化などが主な要因である。
(1)一人当たりの年間消費量
1962年度のピーク時には年間118.3kgであったが、2022年度には年間50.9kgまで減少している。
過去10年間の具体的なデータは、農林水産省の「食料需給表」で確認できるが、傾向としては継続的な減少が見られる。
(2)主食用米の総需要量
・2010年度(平成22/23年)の820万トンから、2020年度(令和2/3年)には704万トンへと、約14%減少している。
・近年は、一人当たりの消費量の減少度合いは緩やかになっているものの、人口減少の影響が加わることで、年間10万トン程度の需要減が続いているとされている。
・農林水産省が2025年3月26日に発表した基本指針では、2024/2025年度の食用米の需要量を前年比31万トン減の674万トンと見込んでいる。
出典:
農林水産省「お米の1人当たりの消費量はどのくらいですか。」
農林水産省「米の消費及び生産の近年の動向について」(2024年8月27日資料)
農林水産省「食料需給表」
これらの資料では、年度ごとの主食用米の供給量や消費量の実績、一人当たりの消費量などが詳細に掲載されている。
ここ10年間の日本のコメ市場は、国民の消費量が減少傾向にある一方で、政府は食料安全保障のために一定量の備蓄米を維持してきた。しかし、2023年産米の作柄悪化を受け、2024年には市場価格の安定化と供給不足への対応として、政府備蓄米が異例の規模で市場に放出される事態となっている。これは、消費量の減少傾向とは異なる、短期的な需給バランスの変動が市場に大きな影響を与えていることを示している。
適正備蓄水準100万トン程度は、年々減少傾向にあるとはいえ、674万トンの消費量なのである。天明の一揆・打ちこわしが生んだ松平定信の「政の本は食にある」、「人食にあらざれば生ぜず、故に農業は政治の本なり」などの心構えからいうと、「三年の蓄え無くば国その国に非ず」の状況なのである。
安易に輸入米などと口走るが、また「「台湾有事は日本有事。すなわち日米同盟の有事でもある。この認識を習近平主席は断じて見誤るべきではない」(2021年12月1日に台湾のシンクタンクが主催したオンラインフォーラムでの安倍晋三元首相の発言)などというが、全く錯誤も甚だしい。「備えあれば患えなし」というが、この日本、"有事→パニック→餓死"と繋がるのだ。米国からの輸入米?四方海に囲まれた日本、届くことは無い。高性能ミサイルに狙われるのを承知で日本に運ぶ理由はない。
誇大妄想の上、有事の備えなど、なにも出来てはいないのだ。東日本震災時の原発事故、国民保護法制が機能すべき状況であったのに、何もせず拱手傍観に等しかったのだ。米国軍艦でさえ安全な四国沖の方に避難してしまった。
「トモダチ作戦」(Operation Tomodachi)」では、支援を放棄し米海軍艦船が一時的に被災地沖から離れ、四国沖などより南の海域に移動した。また「トモダチ」なのに、トモダチ作戦に参加した一部の米兵は、放射線被曝による健康被害を訴え、東京電力などを相手取った訴訟を起こしている。
日本は壊れやすいガラスの城に住む。そして、何よりも国民に逃げ場も無いのだ。有事など白昼夢であり、平和でなければ生きられないのだ。
戯言いう政治家は去れ、である。
有事を云うなら、After you!
【引用・参照・底本】
コメ 2週連続値下がり 中日新聞 2025.06.10
「コメ2週連続値下がり」と、トップページにゴシックでの見出し。
5キロ当たりの平均価格が4223円で、前週と比較し37円安くなったというのだ。備蓄米市場に拡大、という見出しも踊る。しかし、国民は37円や20円安を求めているのだろうか。
後述するが、高値に至る趨勢を観る。どうもメディアの報道姿勢は、まさに国民の生活実感から乖離した、ピント外れの報道と言わざるを得ないのではないだろうか。この見出しを掲げたメディアは、以下の点で厳しく批判されるべきであろう。
・国民の生活感覚との著しい乖離
25円とか37円安いと報道している。国民は安いのにこしたことはないが、しかし、何かが的を外れていないか。5kgで4223円という価格が2週連続で値下がりしたとしても、その値下がり幅が数十円程度であれば、一般家庭の家計に与える影響は微々たるものであろう。メディアは、あたかも大幅な値下げであるかのように報じることで、国民の金銭感覚を愚弄しているとさえ言えないか。物価高騰が続く中で、国民が本当に求めているのは、今や数千円単位、あるいはそれ以上の実質的な値下げであり、数十円程度の変動を「値下がり」として大きく取り上げる感覚は、完全に麻痺しているとしか思えない。
・「高値覚え、安値覚えではない」ではないが
株価変動の「高値覚え、安値覚え」で論じるような訳にはいかない。食料品の価格変動を同列に語ることはできない。食料品は日々の生活に不可欠なものであり、価格の絶対値が生活に直結する。メディアは、現在のコメの価格が、過去の「安値:安定した価格」と比べていかに高水準であるかという歴史的視点を完全に欠落させている。かつて5kgあたり1,924円であったコメが、今や4,223円で「値下がり」と報じられるのは、極めて異常な事態である。この価格水準自体が、国民にとっては「高値」であり、その高値からのわずかな値下がりを強調することに何の意味があるのだろうか。
・過去の価格との比較の欠如
小泉進次郎農相に代わってから、線香花火の様なパフォーマンスの価格に国民は長蛇の列であった。斯様な状況を知ってか知らでか、メディアが本来行うべき比較報道を怠っていることを浮き彫りにする。国民が群がったとされる5kgあたり2000の価格と、現在の4,223円という価格を比較することなく、単に「値下がり」という一面だけを強調し、切り取る報道は、情報の偏向と読者の誤導に他ならない。
メディアは、当時の価格水準と現在の価格水準を明確に示し、いかに現在の価格が高い水準にあるのか、そしてわずかな値下がりがどれほど意味のないものなのかを伝えるべきである。
・「備蓄米市場に拡大」という本質的な背景への言及不足
見出しに「備蓄米 市場に拡大」とあるにもかかわらず、その背景や影響について深掘りしている形跡がない。備蓄米の市場放出がなぜ行われているのか(需給調整、価格抑制策・随意契約の問題(この件については愛知県の大村知事が問題提起をしているなど)、それが長期的にコメ価格にどのような影響を与えるのか、そしてそれが如何に国民の食卓にどう反映されてくるのか、といった本質的な情報提供が不足している。単なる価格の騰落だけでなく、その背景にある政策や市場メカニズムに言及することで、読者はより多角的に情報を理解することができるだ。
・何処に此のメディアの視点はあるのだろうか
結局のところ、この報道からメディアがどのような視点を持っているのか、全く読み取ることができない。国民の生活の苦しみに寄り添う視点もなければ、食料価格の構造的な問題に切り込む視点もない。ただ単に数字の変動を表面上なぞるだけの、薄っぺらい報道に終始していると言わざるを得ない。
この「コメ2週連続値下がり」という見出しとその報道は、国民の生活実感と乖離し、過去の経緯や本質的な背景を無視した、極めて不適切かつ無責任なものである。メディアは、表面的な価格変動を報じるだけでなく、国民の生活に根差した視点、歴史的背景、そして政策的な影響まで含めて、多角的かつ深掘りした情報を提供すべきである。そうでなければ、メディアは国民からの信頼を失い、単なる「情報」の羅列に過ぎなくなってしまうか、政府発表の垂れ流しか、ヨイショ記事に陥るだろう。
米価の推移
・農林水産省による小売米価調査の結果、2020年から2025年にかけての日本のコメ(5kgあたり)の小売価格は上昇傾向にある。特に2023年後半から2024年にかけては、需給ひっ迫や生産コストの増加を背景に、価格が高騰した。直近の2025年5月時点では、平均価格は4,200円台で推移しており、政府備蓄米の放出などにより一部で安価な米が流通する動きも見られる。
・日本のコメ5kgあたり小売価格の推移と直近の価格(時系列)
以下に、日本のコメ5kgあたりの小売価格の過去5年間の推移と直近の価格を時系列でまとめる。
☞過去5年間の推移(2020年〜2024年)
2020年頃
一般的に、コシヒカリなどの主要銘柄で2,300円前後、その他の銘柄で2,000円前後が相場とされていた。
2021年
この時期の明確な平均価格データは見当たらないが、後述の2022年の価格と比較すると、比較的安定していたと考えられる。
2022年
農林水産省のPOSデータによると、2022年12月の小売価格平均は5kgあたり1,924円であった。
銘柄によっては、2022年8月にコシヒカリの最安値が2,125円を記録したという情報もある。
2023年
2023年9月の平均価格は2,188円であった。
2023年後半(10月以降)から価格上昇が顕著になり始めた。
2023年10月: 2,225円(前月比 +38円)
2023年11月: 2,279円(前月比 +54円)
2023年12月: 2,311円(前月比 +32円)
2024年
価格高騰が本格化した。
2024年1月: 2,283円
2024年2月: 2,300円
2024年3月: 2,306円
2024年4月: 2,347円
2024年5月: 2,403円
2024年6月: 2,483円
2024年7月: 2,602円
2024年8月: 2,772円
2024年9月: 平均価格は3,152円に達し、2023年9月と比較して約44%上昇した。
2024年産新米の店頭価格は、5kgあたり3,500円~4,000円が中心となり、前年同時期から1,000円~1,500円程度上昇した。
直近の価格(2025年)
2025年1月下旬: スポット取引価格(60kgあたり)が45,391円を記録するなど、卸売価格も高騰した。
2025年2月下旬: スポット取引価格(60kgあたり)が46,780円を記録した。
2025年4月: 主要銘柄であるコシヒカリの5kgあたりの最高値は4,632円を記録した。
2025年5月7日発表(4月21日〜27日調査分)
全国のスーパーで販売されたコメの5kgあたりの平均価格は4,233円であった。これは17週連続で最高値を更新したものである。
2025年5月20日発表(5月5日からの週調査分)
5kg精米の平均販売価格は4,268円で、前週より54円高くなった。
2025年5月下旬〜6月上旬
政府が備蓄米を市場に放出する方針を決定し、一部の大手スーパー(例: バロー、西友、楽天など)では5kgあたり2,160円(税込)程度の価格で政府備蓄米が販売され始めている。これは通常の小売価格より大幅に安い価格設定である。
まとめ
日本のコメの小売価格は、ここ数年で顕著な上昇トレンドにある。特に2023年後半から2024年にかけての価格高騰は、消費者の家計に大きな影響を与えている。直近では5kgあたり4,200円台が平均的な価格となっているが、政府による備蓄米の放出など、価格抑制に向けた動きも出てきている。ただし、これらの措置が市場全体の価格に与える影響は、今後の状況次第で変動する可能性がある。
典拠:農林水産省 (MAFF)POSデータ・総務省 統計局・日本農業新聞 / JA全農
農林水産省における米のPOSデータ活用
農林水産省は、全国のスーパーマーケットから提供されるPOSデータをもとに、米の小売価格や販売数量の推移を週次で公表している。これは、国民の食生活に直結する米の価格動向を把握し、政策立案や情報提供に役立てるために非常に重要なデータとなっている。特に、消費者が実際にスーパーで購入する際の価格を反映しているため、国民の「生活感覚」に近い情報として注目される。
孫引きになるが、「国に九年の蓄え無くば不足なりと曰う、六年の蓄え無くば急なりと曰う、三年の蓄え無くば国その国に非ずと曰う」。
つまり、「三年分の蓄えが無い場合は、飢饉が続けば餓死者がたくさん出て人民が離散してしまい、もはや国家として成り立たないので『国に非ず』というのである」とる(『松平定信』藤田 覚著 1993年7月25日発行 中公新書 51-52頁)
日本の備蓄米の推移とコメの消費量について
日本の備蓄米の推移
政府は、食料安全保障の観点から、米の供給が不足する事態に備えて「政府備蓄米」を保有している。適正備蓄水準は100万トン程度とされている。毎年約20万トンを買い入れ、5年ほど保有した後に飼料用などとして売却するローテーションで管理されている。
近年、特に2023年産米の作柄悪化や、世界的な穀物価格高騰の影響を受け、2024年に入って政府備蓄米の市場への放出が複数回行われている。
・適正備蓄水準: 100万トン程度(6月末時点)
これは、10年に1度の不作(作況92)や、通常程度の不作(作況94)が2年連続した場合にも国産米で対応できる水準とされている。
・運用方法: 毎年20万トン程度を買い入れ、5年程度保有した後に飼料用等として売却。
・最近の動き
・2023年産米の供給不足が顕在化し、2024年に入って政府備蓄米の放出が実施された。
・2024年4月: 最初の放出が発表され、21万トンが市場に放出された。
・2024年5月: 追加で10万トンの放出が発表され、合計で31万トンが放出されることになった。
・これにより、政府備蓄米の在庫量は、目標の100万トンから一時的に70万トン程度(最初の21万トン放出後)に減少し、さらに放出された場合は60万トン台にまで減少すると報じられている。
・これらの放出は、2023年産米の作柄が予想を下回ったことや、民間在庫が減少傾向にあることへの対応である。
出典:
農林水産省「米の備蓄運営について」関連資料(適正備蓄水準や運用方法について)
農林水産省の記者会見概要や報道発表資料(直近の備蓄米放出量や在庫状況について)
例: 江藤農林水産大臣記者会見概要(2025年4月11日会見など)
例: 令和6年産米の契約・販売状況、民間在庫の推移及び米穀販売事業者における販売数量・販売価格の動向について(令和7年4月末現在)など
具体的な過去10年間の毎年の期末在庫量のような詳細な時系列データは、農林水産省の「食料需給表」や関連統計資料に記載されていることがあるが、一般に公開されている資料では「適正備蓄水準」と直近の放出量に関する情報が中心となる。
日本のコメ消費量の推移(ここ10年ほど)
日本のコメの消費量は、長期的に減少傾向にある。食生活の洋風化、人口減少、高齢化などが主な要因である。
(1)一人当たりの年間消費量
1962年度のピーク時には年間118.3kgであったが、2022年度には年間50.9kgまで減少している。
過去10年間の具体的なデータは、農林水産省の「食料需給表」で確認できるが、傾向としては継続的な減少が見られる。
(2)主食用米の総需要量
・2010年度(平成22/23年)の820万トンから、2020年度(令和2/3年)には704万トンへと、約14%減少している。
・近年は、一人当たりの消費量の減少度合いは緩やかになっているものの、人口減少の影響が加わることで、年間10万トン程度の需要減が続いているとされている。
・農林水産省が2025年3月26日に発表した基本指針では、2024/2025年度の食用米の需要量を前年比31万トン減の674万トンと見込んでいる。
出典:
農林水産省「お米の1人当たりの消費量はどのくらいですか。」
農林水産省「米の消費及び生産の近年の動向について」(2024年8月27日資料)
農林水産省「食料需給表」
これらの資料では、年度ごとの主食用米の供給量や消費量の実績、一人当たりの消費量などが詳細に掲載されている。
ここ10年間の日本のコメ市場は、国民の消費量が減少傾向にある一方で、政府は食料安全保障のために一定量の備蓄米を維持してきた。しかし、2023年産米の作柄悪化を受け、2024年には市場価格の安定化と供給不足への対応として、政府備蓄米が異例の規模で市場に放出される事態となっている。これは、消費量の減少傾向とは異なる、短期的な需給バランスの変動が市場に大きな影響を与えていることを示している。
適正備蓄水準100万トン程度は、年々減少傾向にあるとはいえ、674万トンの消費量なのである。天明の一揆・打ちこわしが生んだ松平定信の「政の本は食にある」、「人食にあらざれば生ぜず、故に農業は政治の本なり」などの心構えからいうと、「三年の蓄え無くば国その国に非ず」の状況なのである。
安易に輸入米などと口走るが、また「「台湾有事は日本有事。すなわち日米同盟の有事でもある。この認識を習近平主席は断じて見誤るべきではない」(2021年12月1日に台湾のシンクタンクが主催したオンラインフォーラムでの安倍晋三元首相の発言)などというが、全く錯誤も甚だしい。「備えあれば患えなし」というが、この日本、"有事→パニック→餓死"と繋がるのだ。米国からの輸入米?四方海に囲まれた日本、届くことは無い。高性能ミサイルに狙われるのを承知で日本に運ぶ理由はない。
誇大妄想の上、有事の備えなど、なにも出来てはいないのだ。東日本震災時の原発事故、国民保護法制が機能すべき状況であったのに、何もせず拱手傍観に等しかったのだ。米国軍艦でさえ安全な四国沖の方に避難してしまった。
「トモダチ作戦」(Operation Tomodachi)」では、支援を放棄し米海軍艦船が一時的に被災地沖から離れ、四国沖などより南の海域に移動した。また「トモダチ」なのに、トモダチ作戦に参加した一部の米兵は、放射線被曝による健康被害を訴え、東京電力などを相手取った訴訟を起こしている。
日本は壊れやすいガラスの城に住む。そして、何よりも国民に逃げ場も無いのだ。有事など白昼夢であり、平和でなければ生きられないのだ。
戯言いう政治家は去れ、である。
有事を云うなら、After you!
【引用・参照・底本】
コメ 2週連続値下がり 中日新聞 2025.06.10