イランに対する一方論 ― 2025年06月19日 19:56
【概要】
現在、イランは停戦とアメリカとの交渉再開を切望している兆候が複数報じられている。ウォール・ストリート・ジャーナルなどによると、イランはイスラエルに対し攻撃の緩和を求めるシグナルを送っているとされる。
トランプ大統領は、自らを優れた交渉者と見なしており、これを好機と捉えている可能性がある。しかし、彼が当初提示した解決案は曖昧すぎ、イランの核開発問題および地域におけるイスラエルとアラブ諸国への脅威を根本的に解決するものではないと筆者は指摘する。
一方、外交交渉の動きが報じられる中で、イランの体制幹部が秘密裏に国外へ脱出しているとの未確認情報もある。行き先はモスクワとの見方もあるが、確証はない。
イスラエルは現時点で攻撃の手を緩める様子はなく、政府機関や体制指導者(最高指導者ハメネイ師は除外されているとされる)を標的に攻撃を継続しているとされる。
アメリカは中東への軍備増強を進めており、南シナ海に展開していた空母「ニミッツ」打撃群を中東に向けて移動させている。同地域にはすでに空母「カール・ビンソン」打撃群が展開中である。
さらに、アメリカは多数の空中給油機を大西洋経由で配備しているが、最終的な目的地は公表されていない。アメリカ海軍はイスラエルによるイランのミサイルやドローンの迎撃を支援しているほか、イギリスも中東に空軍戦闘機を派遣すると発表している。
現時点では、イランとの交渉が実際に再開されるかは不明である。しかし仮に交渉が始まったとしても、当初のアメリカの枠組みでは、戦争を終結させるために必要な根本的問題の解決には至らないと筆者は述べる。
最優先課題はイランの核開発計画を完全に終わらせることである。ただし、単なる核施設の査察では、イスラエルは核兵器開発再開を防ぐ手段としては不十分と見なしている。トランプ政権は「ウラン濃縮の全面停止」という一線を示したが、それをどう実現するかは具体化されていない。
国際原子力機関(IAEA)による査察への依存は、過去の事例から信頼性に欠けるとされる。北朝鮮・イラン・シリアによる秘密核燃料炉建設をIAEAは見抜けず、これをイスラエルが空爆で破壊した例がある。イラクのフセイン政権下の核兵器計画もIAEAは把握できなかったとされる。
IAEAのイラン査察は、爆弾級ウランの濃縮準備が行われていたとされるフォルドウ(Fordow)複合施設や、最近発見されたトリチウム「レインボー」施設など、重要施設を網羅していないと指摘されている。このため、信頼できる唯一の方法は、国内すべての核関連施設を物理的に破壊し、残存する原子炉は査察ではなく厳格な国際管理下に置くことだとされる。
加えて、イランの弾道ミサイル計画にも制限が必要であると述べている。戦争勃発直前に、イランは未発表の中距離弾道ミサイルを試射したとされ、これは2トンの弾頭を搭載可能であり、核弾頭の搭載を目的としている可能性がある。この試験を目の当たりにしたイスラエルが、イランへの攻撃を決断した可能性が指摘されている。
したがって、包括的な合意には大型ミサイルの廃棄と、今後一切の製造禁止が含まれなければならないとされる。
さらに、イスラエルはハマスがガザ地区で拘束している全ての人質の即時解放と、ハマスやイスラム聖戦などへの武器供給の永久停止を求めると考えられる。イスラエルは、イランが崩壊すれば、武器供給が絶たれることでハマスは存続できなくなると見ている。
最後に、イエメンのフーシ派への武器供給も全面禁止とすることが不可欠である。イスラエルはフーシ派によるミサイル攻撃をイランからの直接攻撃同様に容認しない姿勢を示している。
総じて、もしトランプ政権が再び交渉に臨むならば、核問題、人質問題、フーシ派問題を含めて包括的に扱わなければ、意味のある合意にはならないと筆者は結論付けている。
【詳細】
背景
2025年6月17日付の記事で、筆者スティーブン・ブライエンは、イランとアメリカの間で新たな交渉が模索されつつある現状を報告している。背景には、イランが現状の軍事的圧力に耐えられず、イスラエルへの攻撃緩和を求める動きがあるとされる報道が複数存在することがある。
また、イラン国内の状況として、一部の体制幹部が秘密裏に国外へ脱出している可能性が指摘されているが、その詳細は不明であり、モスクワ行きとの情報があるものの確証はない。
イスラエルとアメリカの軍事動向
イスラエルはイランへの軍事攻撃を継続しており、政府機関や体制幹部を標的とする一方、最高指導者アリー・ハメネイ師については攻撃対象から外されていると報じられている。
アメリカは中東地域における軍事力を増強しており、南シナ海に配備されていた空母「ニミッツ」打撃群を中東へ向かわせたとされる。同地域にはすでに「カール・ビンソン」打撃群が展開している。また、大西洋を渡る形で多くの空中給油機が移動しているが、その目的地は明らかにされていない。
アメリカ海軍の艦船は、イスラエルによるイランのミサイル及びドローンの迎撃を支援しており、イギリスもこれに呼応し、空軍戦闘機を中東へ派遣することを決定したとされる。
当初のトランプ案の問題点
筆者は、トランプ大統領(当時)が提示した当初のイランとの取引案は内容が曖昧であり、イランの核開発問題及びイスラエルとアラブ近隣諸国に対する脅威を根本的に排除するものではないと指摘している。
交渉の第一の目標は、イランの核開発計画を完全に終わらせることである。しかし、「終わらせる」という言葉の具体的な手段が示されていないことが問題視されている。
トランプ政権が示した「ウラン濃縮の完全停止」という条件は、実現手段が示されておらず、現実には国際原子力機関(IAEA)の査察に頼る形になるが、この査察体制が過去において不十分だった事例があるとされる。
IAEA査察の限界
筆者は、IAEA査察には重大な限界があると述べている。その根拠として、以下の事例を挙げている。
・北朝鮮・イラン・シリアの秘密核燃料炉計画はIAEAの査察では発見されなかった。
・イラクのサダム・フセイン政権下での核兵器計画も同様に見抜けなかった。
・イランでは、フォルドウ(Fordow)複合施設や最近発見されたトリチウム関連施設など、IAEA査察の対象外の重要施設が存在する。
これらの事例から、IAEAに依存する形ではイランの核兵器開発を完全に抑止することは不可能と論じている。
核問題の「唯一の確実な方法」
筆者によれば、イランの核開発問題を完全に解決する唯一の現実的手段は、国内の全核関連施設を物理的に破壊することであるとされる。残存する核反応炉についても、査察に頼るのではなく、厳格な国際管理下に置くべきだと主張している。
弾道ミサイル問題
核問題に加えて、イランの弾道ミサイル計画の制限も必須事項であるとされる。イランは戦争勃発直前に、2トンの弾頭を搭載できる未発表の中距離弾道ミサイルを試射したとされている。この新型ミサイルは核弾頭搭載を目的としていると推測されており、これを見たイスラエルが先制攻撃に踏み切る一因となった可能性が示唆されている。
したがって、交渉においては大型弾道ミサイルの廃棄と、将来的な製造禁止を取り決める必要があると述べている。
ハマスとフーシ派への武器供給問題
イスラエルの立場として、ガザ地区でハマスに拘束されている人質全員の即時解放が必要条件となる。また、ハマス、イスラム聖戦などの武装組織への武器供給は完全に禁止されなければならないとする。
さらに、イエメンのフーシ派に対しても武器供給を一切禁止する必要があると指摘している。イスラエルは、フーシ派によるミサイル攻撃をイランの代理攻撃と見なし、これを許容しない立場を取っているためである。
結論
筆者は、もしトランプ政権が交渉を進めるのであれば、
1.イランの核開発計画の完全廃止と国際管理
2.弾道ミサイル計画の廃止
3.ハマスによる人質問題の解決
4.ハマス・イスラム聖戦・フーシ派への武器供給の永久停止
これらを包括的に扱わなければ、どのような合意も意味を成さないと結論付けている。
【要点】
イランの現状と交渉再開の兆候
・イランは戦況が悪化し、停戦とアメリカとの交渉再開を求めていると報じられている。
・ウォール・ストリート・ジャーナルなどが、イランがイスラエルに攻撃緩和を求めるシグナルを送ったと伝えている。
・一部のイラン政府高官が秘密裏に国外へ脱出しているとの情報があるが、行き先は不明(モスクワ説あり)。
イスラエルと米英の軍事動向
・イスラエルは攻撃を緩めておらず、政府機関や体制幹部を攻撃している(最高指導者ハメネイ師は対象外とされる)。
・アメリカは南シナ海に展開していた空母「ニミッツ」打撃群を中東へ移動させ、「カール・ビンソン」打撃群と合流させる予定。
・多数の空中給油機が大西洋を越えて移動しているが、目的地は不明。
・米軍艦船はイスラエルの迎撃を支援している。
・英国は空軍戦闘機を中東へ派遣すると発表。
当初のトランプ案の問題点
・トランプ大統領が示した取引案は内容が曖昧であり、イランの核開発と地域的脅威を十分に抑止できない。
・「ウラン濃縮の全面停止」という条件があるが、具体的な達成方法が示されていない。
IAEA査察の限界
・IAEA査察は信頼性に問題があると指摘されている。
・北朝鮮・イラン・シリアの秘密核燃料炉計画を把握できなかった。
・イラクのサダム・フセイン政権下の核兵器計画も見抜けなかった。
・イランのフォルドウ複合施設や最近発見されたトリチウム施設など、査察対象外の重要施設が存在する。
核開発計画を確実に終わらせる唯一の手段
・全核関連施設を物理的に破壊することが唯一の確実な方法。
・残存する核反応炉は査察ではなく厳格な国際管理下に置くべきである。
弾道ミサイル計画の問題
・イランは戦争直前に2トンの弾頭を搭載できる未発表の中距離弾道ミサイルを試射したとされる。
・これは核弾頭搭載用と見られ、イスラエルが先制攻撃を決断した一因となった可能性がある。
・合意には大型弾道ミサイルの廃棄と将来の製造禁止が含まれる必要がある。
ハマス・フーシ派への武器供給問題
・イスラエルはハマスが拘束する全人質の即時解放を要求すると考えられる。
・ハマス、イスラム聖戦などへの武器供給を完全に禁止することが不可欠。
・フーシ派への武器供給も全面禁止とする必要がある。
・イスラエルはフーシ派からのミサイル攻撃を容認しない。
筆者の結論
・交渉が行われる場合、以下の要素を含まなければ意味がないとする。
1.イランの核開発計画の完全廃止と国際管理
2.弾道ミサイル計画の廃止と製造禁止
3.ハマスによる人質の即時解放
4.ハマス、イスラム聖戦、フーシ派への武器供給の完全停止
【桃源寸評】🌍
Stephen Bryen の記事の論調に内在する偏見的要素を具体的に列挙し、
それぞれに反論(論駁)を示す。
文の表現と矛盾しない範囲で、記事に潜む一方的視点を洗い出す。
筆者の論調に含まれる偏見点と論駁
① イランを一方的に「地域の脅威」と断定
・筆者の主張
イランは核兵器と弾道ミサイルを用いて地域の安全を脅かす存在であり、その脅威を除去しない限り戦争は終わらないと述べる。
・論駁
そもそもイランの核開発は、隣国パキスタンやインド、そして核武装したイスラエルという現実の核保有国に囲まれているという安全保障上の恐怖心に基づいている。
加えて、米軍がイラクやアフガニスタンで示した先制攻撃の前例を見れば、非核国がどれだけ脆弱かは明らかである。
したがって、イランのみを「脅威」と言い切るのは、現実の地政学的バランスを無視した二重基準である。
② IAEAを全面否定し、破壊のみを唯一の解決策と主張
・筆者の主張
IAEA査察は信頼できないから、施設を物理的に破壊するしかないと断じる。
・論駁
IAEAは不完全であっても、国際的に核管理を実現するための唯一の枠組みであり、これを無視すれば無法状態を助長するだけである。
「破壊しかない」という発想は、外交の放棄であり、より多くの民間人を巻き込む結果しか生まない。
イスラエル自身がIAEA査察を拒み続けながら、他国にのみ破壊を強いるのは完全な自己矛盾である。
③ イスラエルの「自衛権」は無条件に正当化
・筆者の主張
イスラエルの攻撃は当然であり、核・ミサイル開発はイスラエルを脅かすから容認できないとする。
・論駁
イスラエルは歴史的に圧倒的軍事力を背景に、パレスチナやレバノンに対して過剰防衛を繰り返してきた事実がある。
しかも、国連決議を無視した入植地拡大が地域紛争の根源であり、武力だけで自己正当化できない。
よって、イスラエルの攻撃を「当然」と言い切るのは、加害と被害の構造を逆転させる論法である。
④ 「人質問題」と「武器供給」をイランの責任に一元化
・筆者の主張
ハマスの人質問題やフーシ派の武装も、すべてイランが武器を供給するせいだとする。
・論駁
ハマスやフーシ派の武装勢力が生まれた背景には、パレスチナ問題の放置、サウジアラビアなど他の湾岸諸国の内政干渉が複雑に絡んでいる。
イランが完全に武器供給を止めても、根本問題が解決しない限り別の形で対立は続く。
「すべてイランが悪」という単純化は、現実の複雑さを意図的に隠蔽している。
⑤ 外交の可能性を否定し、暴力を唯一の選択肢に
・筆者の主張
IAEAも無意味、交渉も不十分、結局は軍事力行使が正解とする。
・論駁
歴史的に見ても、イラン核合意(JCPOA)は一度は機能していた。
これを破棄したのはトランプ政権であり、その結果としてイランが核活動を再開したのは事実である。
よって、外交が「役に立たない」と結論づけるのは、合意破棄という米国の失策を棚上げしている。
軍事力依存こそ、問題を長期化させてきた元凶である。
⑥ 地域の他の武装勢力・国家の責任は無視
・筆者の主張
イランだけが周辺国に武器を送ると強調する。
・論駁
サウジアラビア、UAE、イスラエル自身が中東で武装勢力に支援をしてきた事例は多数ある。
イエメン内戦では、サウジアラビアが主導する連合軍が市民を大量虐殺し、国際的に非難されてきた。
これを無視してイランだけを非難するのは、事実の選択的引用でしかない。
総括
Stephen Bryen の論説は、
✅ イランを絶対悪とし、
✅ イスラエルと米国の行動を「防衛」と美化し、
✅ 軍事力以外の選択肢を排除し、
✅ 地域全体の歴史的責任を隠蔽する
という、極めて偏った論理構造で成り立っている。
現実の地域情勢を正しく理解するには、
・「イランの行動だけを糾弾するだけでは根本問題は解決しない」という視点が不可欠である。
「交渉」とは名ばかりの降伏勧告
今回の記事内容を正面から読めば、米国とイスラエルが求めているのは、「核開発の即時破棄」「弾道ミサイルの製造禁止」「敵対勢力への武器供給の全面停止」「拘束人質の全員解放」であり、これをイランが一方的にのみ履行する形となっている。
これは交渉ではなく、無条件降伏要求に等しい。なぜなら、相互の安全保障や地域の緊張緩和のために米国やイスラエル側が負担を負う条件が一切含まれていないからである。
事実として、「IAEA査察を信用できない」からと言って施設を物理的に破壊するとするなど、国家主権を正面から踏みにじる論理である。
米国とイスラエルの「核」に対する二重基準
1.イスラエル自身の核兵器保持
・イスラエルは公式には核保有を認めていないが、実際には長年にわたり核兵器を保有し、周辺国を威圧してきたことは公然の秘密である。
・国際査察を受けず、核拡散防止条約(NPT)にも未加盟。
・イランにはNPTに加盟し査察を受けろと言いながら、自国は国際管理を拒否してきた。
2.米国の核の行使歴史
・世界で唯一、核兵器を実戦使用した国家は米国である。
・自国の核戦力の近代化には巨額を投じ、他国には「核開発するな」と命じている。
・北朝鮮・パキスタンなどの事例では、政治的都合で黙認した一方、イランには制裁と爆撃をちらつかせている。
この「核保有は正義、敵の核は悪」という論理は、軍事力を握る者の一方的価値観の押し付けでしかない。
米国とイスラエルの武力行使と破壊の歴史
1.中東における米国の武力介入
・イラク戦争では「大量破壊兵器がある」と虚偽の理由で侵略し、結果的に数十万人の市民を犠牲にし、国家を崩壊させた。大量破壊兵器は発見されなかった。
・アフガニスタンでは20年以上軍事占領を続け、タリバンは結局再掌握し、民衆には荒廃しか残らなかった。
・シリアに対しても、直接介入や代理戦争を行い、ISの台頭を許した元凶とも言える。
2.イスラエルの周辺国への攻撃
・レバノンやガザ地区への度重なる大規模爆撃により、民間人死傷者が多数発生している。
・イスラエルは自衛を主張するが、その規模と手段は圧倒的軍事優位による一方的破壊であり、しばしば国際人道法違反が疑われている。
・パレスチナ人の土地没収や入植拡大は国際社会で非難されているが、米国が後ろ盾となり処罰されない。
3.実際の「脅威」の生み手
・米国とイスラエルは、自らが武力で中東の秩序を改造しようとし、現地の対米・対イスラエル感情を根底から悪化させた張本人である。
・イランが地域で影響力を拡大してきた背景には、アメリカがフセイン政権やタリバン政権を倒し、真空地帯を生んだ現実がある。
・つまり、「イランの脅威」とされるものの多くは、西側の介入政策の失敗が土壌である。
交渉ではなく暴力の論理
・この記事の論旨にある「核施設を破壊すべき」という主張は、実際には交渉どころか先制攻撃の正当化である。
・しかも、イランが核放棄しても、弾道ミサイルや代理勢力など他の理由を持ち出して圧力を続ける構図であり、降伏しても制裁と武力の恐怖からは解放されない。
・これは力による秩序であり、正義とは無縁の恫喝である。
結論:「力=正義」ではない
・核も弾道ミサイルも、もし廃絶すべきなら、まず核保有国自身が模範を示すべきである。
・「交渉」と称して相手に一方的な非武装と従属を強要するのは、正義ではなく支配の論理である。
・中東の混乱と破壊の根源には、米国とイスラエルの一貫した武力依存と、国際法無視の先制攻撃がある。
よって、イランだけを悪者とする論調は歴史を歪めており、根本的に不公正である。
真の平和は「相互の主権尊重」と「核廃絶の二重基準撤廃」なくして実現しない。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
Will there be a deal with Iran? ASIA TIMES 2025.06.17
https://asiatimes.com/2025/06/will-there-be-a-deal-with-iran/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=f9cf1fa7c3-DAILY_17_06_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-f9cf1fa7c3-16242795&mc_cid=f9cf1fa7c3&mc_eid=69a7d1ef3c#
現在、イランは停戦とアメリカとの交渉再開を切望している兆候が複数報じられている。ウォール・ストリート・ジャーナルなどによると、イランはイスラエルに対し攻撃の緩和を求めるシグナルを送っているとされる。
トランプ大統領は、自らを優れた交渉者と見なしており、これを好機と捉えている可能性がある。しかし、彼が当初提示した解決案は曖昧すぎ、イランの核開発問題および地域におけるイスラエルとアラブ諸国への脅威を根本的に解決するものではないと筆者は指摘する。
一方、外交交渉の動きが報じられる中で、イランの体制幹部が秘密裏に国外へ脱出しているとの未確認情報もある。行き先はモスクワとの見方もあるが、確証はない。
イスラエルは現時点で攻撃の手を緩める様子はなく、政府機関や体制指導者(最高指導者ハメネイ師は除外されているとされる)を標的に攻撃を継続しているとされる。
アメリカは中東への軍備増強を進めており、南シナ海に展開していた空母「ニミッツ」打撃群を中東に向けて移動させている。同地域にはすでに空母「カール・ビンソン」打撃群が展開中である。
さらに、アメリカは多数の空中給油機を大西洋経由で配備しているが、最終的な目的地は公表されていない。アメリカ海軍はイスラエルによるイランのミサイルやドローンの迎撃を支援しているほか、イギリスも中東に空軍戦闘機を派遣すると発表している。
現時点では、イランとの交渉が実際に再開されるかは不明である。しかし仮に交渉が始まったとしても、当初のアメリカの枠組みでは、戦争を終結させるために必要な根本的問題の解決には至らないと筆者は述べる。
最優先課題はイランの核開発計画を完全に終わらせることである。ただし、単なる核施設の査察では、イスラエルは核兵器開発再開を防ぐ手段としては不十分と見なしている。トランプ政権は「ウラン濃縮の全面停止」という一線を示したが、それをどう実現するかは具体化されていない。
国際原子力機関(IAEA)による査察への依存は、過去の事例から信頼性に欠けるとされる。北朝鮮・イラン・シリアによる秘密核燃料炉建設をIAEAは見抜けず、これをイスラエルが空爆で破壊した例がある。イラクのフセイン政権下の核兵器計画もIAEAは把握できなかったとされる。
IAEAのイラン査察は、爆弾級ウランの濃縮準備が行われていたとされるフォルドウ(Fordow)複合施設や、最近発見されたトリチウム「レインボー」施設など、重要施設を網羅していないと指摘されている。このため、信頼できる唯一の方法は、国内すべての核関連施設を物理的に破壊し、残存する原子炉は査察ではなく厳格な国際管理下に置くことだとされる。
加えて、イランの弾道ミサイル計画にも制限が必要であると述べている。戦争勃発直前に、イランは未発表の中距離弾道ミサイルを試射したとされ、これは2トンの弾頭を搭載可能であり、核弾頭の搭載を目的としている可能性がある。この試験を目の当たりにしたイスラエルが、イランへの攻撃を決断した可能性が指摘されている。
したがって、包括的な合意には大型ミサイルの廃棄と、今後一切の製造禁止が含まれなければならないとされる。
さらに、イスラエルはハマスがガザ地区で拘束している全ての人質の即時解放と、ハマスやイスラム聖戦などへの武器供給の永久停止を求めると考えられる。イスラエルは、イランが崩壊すれば、武器供給が絶たれることでハマスは存続できなくなると見ている。
最後に、イエメンのフーシ派への武器供給も全面禁止とすることが不可欠である。イスラエルはフーシ派によるミサイル攻撃をイランからの直接攻撃同様に容認しない姿勢を示している。
総じて、もしトランプ政権が再び交渉に臨むならば、核問題、人質問題、フーシ派問題を含めて包括的に扱わなければ、意味のある合意にはならないと筆者は結論付けている。
【詳細】
背景
2025年6月17日付の記事で、筆者スティーブン・ブライエンは、イランとアメリカの間で新たな交渉が模索されつつある現状を報告している。背景には、イランが現状の軍事的圧力に耐えられず、イスラエルへの攻撃緩和を求める動きがあるとされる報道が複数存在することがある。
また、イラン国内の状況として、一部の体制幹部が秘密裏に国外へ脱出している可能性が指摘されているが、その詳細は不明であり、モスクワ行きとの情報があるものの確証はない。
イスラエルとアメリカの軍事動向
イスラエルはイランへの軍事攻撃を継続しており、政府機関や体制幹部を標的とする一方、最高指導者アリー・ハメネイ師については攻撃対象から外されていると報じられている。
アメリカは中東地域における軍事力を増強しており、南シナ海に配備されていた空母「ニミッツ」打撃群を中東へ向かわせたとされる。同地域にはすでに「カール・ビンソン」打撃群が展開している。また、大西洋を渡る形で多くの空中給油機が移動しているが、その目的地は明らかにされていない。
アメリカ海軍の艦船は、イスラエルによるイランのミサイル及びドローンの迎撃を支援しており、イギリスもこれに呼応し、空軍戦闘機を中東へ派遣することを決定したとされる。
当初のトランプ案の問題点
筆者は、トランプ大統領(当時)が提示した当初のイランとの取引案は内容が曖昧であり、イランの核開発問題及びイスラエルとアラブ近隣諸国に対する脅威を根本的に排除するものではないと指摘している。
交渉の第一の目標は、イランの核開発計画を完全に終わらせることである。しかし、「終わらせる」という言葉の具体的な手段が示されていないことが問題視されている。
トランプ政権が示した「ウラン濃縮の完全停止」という条件は、実現手段が示されておらず、現実には国際原子力機関(IAEA)の査察に頼る形になるが、この査察体制が過去において不十分だった事例があるとされる。
IAEA査察の限界
筆者は、IAEA査察には重大な限界があると述べている。その根拠として、以下の事例を挙げている。
・北朝鮮・イラン・シリアの秘密核燃料炉計画はIAEAの査察では発見されなかった。
・イラクのサダム・フセイン政権下での核兵器計画も同様に見抜けなかった。
・イランでは、フォルドウ(Fordow)複合施設や最近発見されたトリチウム関連施設など、IAEA査察の対象外の重要施設が存在する。
これらの事例から、IAEAに依存する形ではイランの核兵器開発を完全に抑止することは不可能と論じている。
核問題の「唯一の確実な方法」
筆者によれば、イランの核開発問題を完全に解決する唯一の現実的手段は、国内の全核関連施設を物理的に破壊することであるとされる。残存する核反応炉についても、査察に頼るのではなく、厳格な国際管理下に置くべきだと主張している。
弾道ミサイル問題
核問題に加えて、イランの弾道ミサイル計画の制限も必須事項であるとされる。イランは戦争勃発直前に、2トンの弾頭を搭載できる未発表の中距離弾道ミサイルを試射したとされている。この新型ミサイルは核弾頭搭載を目的としていると推測されており、これを見たイスラエルが先制攻撃に踏み切る一因となった可能性が示唆されている。
したがって、交渉においては大型弾道ミサイルの廃棄と、将来的な製造禁止を取り決める必要があると述べている。
ハマスとフーシ派への武器供給問題
イスラエルの立場として、ガザ地区でハマスに拘束されている人質全員の即時解放が必要条件となる。また、ハマス、イスラム聖戦などの武装組織への武器供給は完全に禁止されなければならないとする。
さらに、イエメンのフーシ派に対しても武器供給を一切禁止する必要があると指摘している。イスラエルは、フーシ派によるミサイル攻撃をイランの代理攻撃と見なし、これを許容しない立場を取っているためである。
結論
筆者は、もしトランプ政権が交渉を進めるのであれば、
1.イランの核開発計画の完全廃止と国際管理
2.弾道ミサイル計画の廃止
3.ハマスによる人質問題の解決
4.ハマス・イスラム聖戦・フーシ派への武器供給の永久停止
これらを包括的に扱わなければ、どのような合意も意味を成さないと結論付けている。
【要点】
イランの現状と交渉再開の兆候
・イランは戦況が悪化し、停戦とアメリカとの交渉再開を求めていると報じられている。
・ウォール・ストリート・ジャーナルなどが、イランがイスラエルに攻撃緩和を求めるシグナルを送ったと伝えている。
・一部のイラン政府高官が秘密裏に国外へ脱出しているとの情報があるが、行き先は不明(モスクワ説あり)。
イスラエルと米英の軍事動向
・イスラエルは攻撃を緩めておらず、政府機関や体制幹部を攻撃している(最高指導者ハメネイ師は対象外とされる)。
・アメリカは南シナ海に展開していた空母「ニミッツ」打撃群を中東へ移動させ、「カール・ビンソン」打撃群と合流させる予定。
・多数の空中給油機が大西洋を越えて移動しているが、目的地は不明。
・米軍艦船はイスラエルの迎撃を支援している。
・英国は空軍戦闘機を中東へ派遣すると発表。
当初のトランプ案の問題点
・トランプ大統領が示した取引案は内容が曖昧であり、イランの核開発と地域的脅威を十分に抑止できない。
・「ウラン濃縮の全面停止」という条件があるが、具体的な達成方法が示されていない。
IAEA査察の限界
・IAEA査察は信頼性に問題があると指摘されている。
・北朝鮮・イラン・シリアの秘密核燃料炉計画を把握できなかった。
・イラクのサダム・フセイン政権下の核兵器計画も見抜けなかった。
・イランのフォルドウ複合施設や最近発見されたトリチウム施設など、査察対象外の重要施設が存在する。
核開発計画を確実に終わらせる唯一の手段
・全核関連施設を物理的に破壊することが唯一の確実な方法。
・残存する核反応炉は査察ではなく厳格な国際管理下に置くべきである。
弾道ミサイル計画の問題
・イランは戦争直前に2トンの弾頭を搭載できる未発表の中距離弾道ミサイルを試射したとされる。
・これは核弾頭搭載用と見られ、イスラエルが先制攻撃を決断した一因となった可能性がある。
・合意には大型弾道ミサイルの廃棄と将来の製造禁止が含まれる必要がある。
ハマス・フーシ派への武器供給問題
・イスラエルはハマスが拘束する全人質の即時解放を要求すると考えられる。
・ハマス、イスラム聖戦などへの武器供給を完全に禁止することが不可欠。
・フーシ派への武器供給も全面禁止とする必要がある。
・イスラエルはフーシ派からのミサイル攻撃を容認しない。
筆者の結論
・交渉が行われる場合、以下の要素を含まなければ意味がないとする。
1.イランの核開発計画の完全廃止と国際管理
2.弾道ミサイル計画の廃止と製造禁止
3.ハマスによる人質の即時解放
4.ハマス、イスラム聖戦、フーシ派への武器供給の完全停止
【桃源寸評】🌍
Stephen Bryen の記事の論調に内在する偏見的要素を具体的に列挙し、
それぞれに反論(論駁)を示す。
文の表現と矛盾しない範囲で、記事に潜む一方的視点を洗い出す。
筆者の論調に含まれる偏見点と論駁
① イランを一方的に「地域の脅威」と断定
・筆者の主張
イランは核兵器と弾道ミサイルを用いて地域の安全を脅かす存在であり、その脅威を除去しない限り戦争は終わらないと述べる。
・論駁
そもそもイランの核開発は、隣国パキスタンやインド、そして核武装したイスラエルという現実の核保有国に囲まれているという安全保障上の恐怖心に基づいている。
加えて、米軍がイラクやアフガニスタンで示した先制攻撃の前例を見れば、非核国がどれだけ脆弱かは明らかである。
したがって、イランのみを「脅威」と言い切るのは、現実の地政学的バランスを無視した二重基準である。
② IAEAを全面否定し、破壊のみを唯一の解決策と主張
・筆者の主張
IAEA査察は信頼できないから、施設を物理的に破壊するしかないと断じる。
・論駁
IAEAは不完全であっても、国際的に核管理を実現するための唯一の枠組みであり、これを無視すれば無法状態を助長するだけである。
「破壊しかない」という発想は、外交の放棄であり、より多くの民間人を巻き込む結果しか生まない。
イスラエル自身がIAEA査察を拒み続けながら、他国にのみ破壊を強いるのは完全な自己矛盾である。
③ イスラエルの「自衛権」は無条件に正当化
・筆者の主張
イスラエルの攻撃は当然であり、核・ミサイル開発はイスラエルを脅かすから容認できないとする。
・論駁
イスラエルは歴史的に圧倒的軍事力を背景に、パレスチナやレバノンに対して過剰防衛を繰り返してきた事実がある。
しかも、国連決議を無視した入植地拡大が地域紛争の根源であり、武力だけで自己正当化できない。
よって、イスラエルの攻撃を「当然」と言い切るのは、加害と被害の構造を逆転させる論法である。
④ 「人質問題」と「武器供給」をイランの責任に一元化
・筆者の主張
ハマスの人質問題やフーシ派の武装も、すべてイランが武器を供給するせいだとする。
・論駁
ハマスやフーシ派の武装勢力が生まれた背景には、パレスチナ問題の放置、サウジアラビアなど他の湾岸諸国の内政干渉が複雑に絡んでいる。
イランが完全に武器供給を止めても、根本問題が解決しない限り別の形で対立は続く。
「すべてイランが悪」という単純化は、現実の複雑さを意図的に隠蔽している。
⑤ 外交の可能性を否定し、暴力を唯一の選択肢に
・筆者の主張
IAEAも無意味、交渉も不十分、結局は軍事力行使が正解とする。
・論駁
歴史的に見ても、イラン核合意(JCPOA)は一度は機能していた。
これを破棄したのはトランプ政権であり、その結果としてイランが核活動を再開したのは事実である。
よって、外交が「役に立たない」と結論づけるのは、合意破棄という米国の失策を棚上げしている。
軍事力依存こそ、問題を長期化させてきた元凶である。
⑥ 地域の他の武装勢力・国家の責任は無視
・筆者の主張
イランだけが周辺国に武器を送ると強調する。
・論駁
サウジアラビア、UAE、イスラエル自身が中東で武装勢力に支援をしてきた事例は多数ある。
イエメン内戦では、サウジアラビアが主導する連合軍が市民を大量虐殺し、国際的に非難されてきた。
これを無視してイランだけを非難するのは、事実の選択的引用でしかない。
総括
Stephen Bryen の論説は、
✅ イランを絶対悪とし、
✅ イスラエルと米国の行動を「防衛」と美化し、
✅ 軍事力以外の選択肢を排除し、
✅ 地域全体の歴史的責任を隠蔽する
という、極めて偏った論理構造で成り立っている。
現実の地域情勢を正しく理解するには、
・「イランの行動だけを糾弾するだけでは根本問題は解決しない」という視点が不可欠である。
「交渉」とは名ばかりの降伏勧告
今回の記事内容を正面から読めば、米国とイスラエルが求めているのは、「核開発の即時破棄」「弾道ミサイルの製造禁止」「敵対勢力への武器供給の全面停止」「拘束人質の全員解放」であり、これをイランが一方的にのみ履行する形となっている。
これは交渉ではなく、無条件降伏要求に等しい。なぜなら、相互の安全保障や地域の緊張緩和のために米国やイスラエル側が負担を負う条件が一切含まれていないからである。
事実として、「IAEA査察を信用できない」からと言って施設を物理的に破壊するとするなど、国家主権を正面から踏みにじる論理である。
米国とイスラエルの「核」に対する二重基準
1.イスラエル自身の核兵器保持
・イスラエルは公式には核保有を認めていないが、実際には長年にわたり核兵器を保有し、周辺国を威圧してきたことは公然の秘密である。
・国際査察を受けず、核拡散防止条約(NPT)にも未加盟。
・イランにはNPTに加盟し査察を受けろと言いながら、自国は国際管理を拒否してきた。
2.米国の核の行使歴史
・世界で唯一、核兵器を実戦使用した国家は米国である。
・自国の核戦力の近代化には巨額を投じ、他国には「核開発するな」と命じている。
・北朝鮮・パキスタンなどの事例では、政治的都合で黙認した一方、イランには制裁と爆撃をちらつかせている。
この「核保有は正義、敵の核は悪」という論理は、軍事力を握る者の一方的価値観の押し付けでしかない。
米国とイスラエルの武力行使と破壊の歴史
1.中東における米国の武力介入
・イラク戦争では「大量破壊兵器がある」と虚偽の理由で侵略し、結果的に数十万人の市民を犠牲にし、国家を崩壊させた。大量破壊兵器は発見されなかった。
・アフガニスタンでは20年以上軍事占領を続け、タリバンは結局再掌握し、民衆には荒廃しか残らなかった。
・シリアに対しても、直接介入や代理戦争を行い、ISの台頭を許した元凶とも言える。
2.イスラエルの周辺国への攻撃
・レバノンやガザ地区への度重なる大規模爆撃により、民間人死傷者が多数発生している。
・イスラエルは自衛を主張するが、その規模と手段は圧倒的軍事優位による一方的破壊であり、しばしば国際人道法違反が疑われている。
・パレスチナ人の土地没収や入植拡大は国際社会で非難されているが、米国が後ろ盾となり処罰されない。
3.実際の「脅威」の生み手
・米国とイスラエルは、自らが武力で中東の秩序を改造しようとし、現地の対米・対イスラエル感情を根底から悪化させた張本人である。
・イランが地域で影響力を拡大してきた背景には、アメリカがフセイン政権やタリバン政権を倒し、真空地帯を生んだ現実がある。
・つまり、「イランの脅威」とされるものの多くは、西側の介入政策の失敗が土壌である。
交渉ではなく暴力の論理
・この記事の論旨にある「核施設を破壊すべき」という主張は、実際には交渉どころか先制攻撃の正当化である。
・しかも、イランが核放棄しても、弾道ミサイルや代理勢力など他の理由を持ち出して圧力を続ける構図であり、降伏しても制裁と武力の恐怖からは解放されない。
・これは力による秩序であり、正義とは無縁の恫喝である。
結論:「力=正義」ではない
・核も弾道ミサイルも、もし廃絶すべきなら、まず核保有国自身が模範を示すべきである。
・「交渉」と称して相手に一方的な非武装と従属を強要するのは、正義ではなく支配の論理である。
・中東の混乱と破壊の根源には、米国とイスラエルの一貫した武力依存と、国際法無視の先制攻撃がある。
よって、イランだけを悪者とする論調は歴史を歪めており、根本的に不公正である。
真の平和は「相互の主権尊重」と「核廃絶の二重基準撤廃」なくして実現しない。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
Will there be a deal with Iran? ASIA TIMES 2025.06.17
https://asiatimes.com/2025/06/will-there-be-a-deal-with-iran/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=f9cf1fa7c3-DAILY_17_06_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-f9cf1fa7c3-16242795&mc_cid=f9cf1fa7c3&mc_eid=69a7d1ef3c#