小学校の水泳授業を民間委託することについて ― 2025年07月01日 16:20
【桃源閑話】小学校の水泳授業を民間委託することについて
【関連資料】
①【桃源閑話】水泳授業の民間委託 2024年09月11日 09:24
②総務省:全国の自治体一般職職員対象のカスハラ調査
2025年05月06日 22:26:「総務省:全国の自治体一般職職員対象のカスハラ調査」記事内【桃源寸評】https://koshimizu-tougen.asablo.jp/blog/2025/05/06/9773745
⓷なお、本回答内容は:070327別紙回答.pdfで作成されている。
https://momodesu.lovestoblog.com/070327%E5%88%A5%E7%B4%99%E5%9B%9E%E7%AD%94.pdf
④一部段落等を付加した。
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このたびは、本市の教育活動に対して御意見をいただき、ありがとうございました。
以下のとおり、先に回答した内容を再度整理するとともに、根拠となる資料名を追記させていただきましたので御確認ください。
問1 小学校の水泳授業を民間委託することについて
⑴ 指導の責任について
教員は、学校教育法第37条第11項の規定に基づき、児童の教育をつかさどる必要があります。
また、民間プールを活用した水泳授業を実施する際には、受託事業者と交わしている仕様書に「指導方法については、学校担当者と打合せを実施し、決定すること」と明記しております。(※ 当該仕様書が必要の場合には、お手数ですが別途情報公開請求をお願いします)
このため、プールでの水泳指導は、受託事業者のインストラクターが行いますが、児童の観察や評価は教員が行っているため、引き続き指導の責任は教員が果たしております。
⑵ 教育内容の一貫性について
小学校の教育課程に関する事項については、学校教育法第33条において文部科学大臣が定めております。また、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準については、学習指導要領で定めております。
なお、当該要領では、小学校、中学校、高等学校等ごとに、それぞれの教科等の目標や教育内容を定めておりますが、民間プールを活用した水泳授業を実施する際においても、それに則った対応が求められます。(※ 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説体育編:https://www.mext.go.jp/content/2024091
8-mxt_kyoiku01-100002607.pdf P53~P57、P91~P96、P135~P140を御参照ください)
⑶ 安全管理と責任の所在について
民間プールを活用した水泳授業も、学校の教育活動下にあるため、安全配慮義務は教員にあります。
また、その委託契約につきましては、「受託者が善良な管理者の注意義務を怠ったことにより生じた第三者への損害については、受託者が負担する」としたた別添の「尾張旭市業務委託契約約款(令和4年4月1日改正)」に基づき締結しています。
なお、当該授業の実施においては、何よりも児童の安全確保に配慮をし、事故の発生を未然に防止することが重要であると考えています。そうした中、民間プールの活用は、受託事業者のインストラター等を追加で配置できるため、さらなる安全性の向上につながっています。
⑷ 教員の役割の低下について
民間プールを活用した水泳授業は、受託事業者と交わしている仕様書に基づき「水泳指導に精通している者」が技術指導をしているため、児童はより専門性の高い指導を受けることができます。
なお、指導内容や指導方法の決定のほか、児童の評価の業務については、引き続き教員が担っているため、役割の低下にはつながりません。
⑸ 教育内容の確認、安全管理の徹底、責任の分担などを含む明確な契約について
民間プールを活用したとしても、「教員が水泳授業すること」に変わりはありませんので、当然その教育内容は確認できており、安全管理も徹底しております。
なお、受託事業者と交わしている仕様書でも、「高い安全性の確保」を業務目的に掲げ、安全管理の徹底や責任の分担などを明確化しております。
問2 教員資格のない者が学校で教授する際の法的根拠について
問1の⑴でお答えしましたとおり、プールでの水泳指導は、受託事業者のインストラクターが行いますが、児童の観察や評価は、引き続き教員が行っており、インストラクターが単独で水泳指導することはありません。このため、教員職員免許法第4条第4項及び第6項に定められた「臨時免許状」や「特別免許状」を付与する必要はない状況にあります。
問3 教員資格のない者を雇うことに関して、企業も該当するのかについて
⑴ 教員資格のない者が教育機関との連携や学校での教育活動に従事する場合について
学習指導要領では「社会に開かれた教育課程の実現」が重視されており、外部の方による教育プログラムを、学校の授業のほか、放課後や土日等の教育に取り入れる学校等が増えています。(※ 文部科学省「学校と地域でつくる学びの未来」:https://manabi-mirai.mext.go.jp/program/index.htmlを御参照ください)
本市においても、教員が教育上必要であると判断した場合には、出前講座や社会見学等といった形で外部から講師を招き、専門的な立場から御教授いただく機会を計画しています。ただしその場合、教員同席のもと、協働して教育活動を行っておりますので「外部講師の雇用」といった取扱いはしていません。
民間プールを活用した水泳授業も、これと同様の取扱いとなり、インストラクターが単独で授業を行っていませんので、教育職員免許法第3条第4項の規定に反することはありません。(※ 教育職員免許法第3条第4項:義務教育学校の教員(養護又は栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭、養護教諭、養護助教諭並びに栄養教諭を除く)については、第1項の規定にかかわらず、小学校の教員の免許状及び中学校の教員の免許状を有する者でなければならない)
⑵ 臨時免許状や特別免許状の交付を検討したかについて
⑶ 専門的な知識や経験をもつ人材に教育委員会が特定の条件下で許可を与えることを検討したかについて
⑷ 特定の教科を担当させる場合の教育委員会の許可付与について
本市と同様、教員と受託事業者のインストラクターがともに指導にあたっている千葉県佐倉市の取組事例などを踏まえて検討した結果、受託事業者のインストラクターが体育科の授業を単独で担当しない形での契約としております。
(※ 千葉県佐倉市の取組:https://www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2018/11/01/1410416_05.pdfを御参照ください)
⑸ 教員資格のない者を雇用する際、学校から教育委員会へ報告や許可申請があったかについて
⑹ 教育委員会への報告や企業内部での労働契約変更に関する報告について
問2でお答えしましたとおり、「臨時免許状」や「特別免許状」を付与する必要がないため、そうした報告や申請はありません。
問4 スイミングスクールとの契約形態について
⑴ 請負契約か派遣契約かについて
受託事業者であるスイミングスクールとの契約形態は、請負契約(業務委託契約)としております。このため、受託事業者のインストラクターに、教員が直接指示を行うことはありません。
⑵ 学生一人が利用する費用と、今回の委託契約一人分との比較について
令和6年度の契約では、児童1人当たり約9,000円(5回実施)としています。なお、受託事業者である市内のスイミングスクールの幼児学童クラスの個人レッスン代は、月額8,250円(週1回実施)となっております。
⑶ 教員の負担の軽減について
具体的な教員の負担軽減量は測定していませんが、学校での水泳指導の際に必要となる「塩素注入」や「PH・塩素濃度の測定」、「気温・水温の測定」や「プール日誌への記入」、「危険物の有無の確認」や「ごみの除去」等の作業が不要となりましたので、一定の負担軽減につながっていると考えております。
⑷ 教員の負担軽減について、教員増員は検討されているかについて
御承知のとおり、教員の定数は県が定めており、本市独自で対応することはできませんが、その増員については継続して要望しております。なお、愛知県は、教職員の定数を「教職員定数の標準に関する法律」に基づき定めることを基本としております。(※ 愛知県ホームページ:https://www.pref.aichi.jp/sos
hiki/zaimusisetsu/0000008245.htmlを御参照ください)
⑸ 年間でスイミングスクール時間(授業)はどれだけあるのかについて
令和6年度においては、教育課程の10時間分(2時間を1回とし、5回実施)の水泳授業を設定しております。
⑹ 学校でのプール管理を業者に頼めなかったのかについて
本市の小学校プールは老朽化が進行しており、これを継続的に活用するには、多大な補修費用が必要となります。
このため、今回の民間プールを活用した水泳授業の実施においては、教員の負担軽減だけでなく、多大な補修費用や維持管理経費の削減も、重要な目的の一つとしております。(※ 検討の経緯(令和元年度第2回尾張旭市総合教育会議会議録):https://www.city.owariasahi.lg.jp/uploaded/attachment/6682.pdfを御参照ください)
⑺ 学校でプールを維持した場合の費用について
日常の学校プールの保守費や水道料金、改修費用としましては、1校あたり約567万円ほど必要となります。また、本市の小学校のプールはいずれも老朽化が進んでいるため、近い将来「プールの建替え」が必要となりますが、その場合、1校あたり約2.5億円の費用が必要となります。(※ 費用算出根拠(令和5年度尾張旭市教育委員会(10月)定例会会議録):https://www.city.o
wariasahi.lg.jp/uploaded/attachment/21487.pdfを御参照ください)
⑻ 受託者の裁量について(問4⑴に関連)
受託事業者と交わしている仕様書に基づき「水泳指導(準備体操等を含む)及びプールサイドでの監視」、「学級単位での指導の実施」等の業務を委託しております。
なお、問4の⑴でお答えしましたとおり、受託事業者であるスイミングスクールとは、請負契約(業務委託契約)を締結しており、本市の教員が受託事業者のインストラクターに直接指示を行うことはありません。
⑼ 尾張旭市のスイミングスクールの数について
市内には、スイミングスクールが2か所(AIEIスイミングクラブ、スポーツシティ旭)立地しています。
問5 教員資格のない者が学校で教授する際の児童生徒の評価について
⑴⑵⑶ 評価者や通知表について
学習評価や通知表への記載は、免許状をもつ教員が行っており、それ以外の者が評価を行うことはありません。また、受託事業者と交わしている仕様書においても、評価に関しては委託業務に位置付けていません。
問6 民間にスイミング授業を委託することの教育上および法的問題について
⑴ 事故やトラブル時の責任の所在について
問1の⑶でお答えしましたとおり、民間プールを活用した水泳授業も、学校の教育活動下にあるため、安全配慮義務は教員にあります。
⑵ 教育指導要領との整合性について
民間プールを活用した水泳授業についても、文部科学省が定める学習指導要領に則って指導計画を立てており、当該要領と整合した指導を行っております。
⑶ 民間委託の指導者の労働条件や安全管理について
指導者の条件としては、受託事業者と交わしている仕様書において、「水泳指導に精通している者」、「1年以内に普通救命講習を受講したことのある者」としております。
また、労働条件としては「おおむね児童20人に対して指導員1名を配置」としております。
なお、令和6年度の受託事業者の指導者の状況とは次のとおりです。
【委託先①】:指導者全員が社内指導ライセンスと救命救急講習を受講
【委託先②】:指導者全員がインストラクター資格を保有し、救命救急講習を受講
【委託先③】:指導者全員が社内のA級インストラクターを保有し、救命救急講習を受講
⑷ 地域や学校ごとの経済的格差による教育の公平性について
民間プールを活用した水泳授業については、国からも、その促進に関する依頼があり、これに基づき全国各地で対応が進みつつあったため、本市においても慎重に検討を重ねてまいりました。
その結果、経済状況や施設の整備状況に左右されず、また教育の質にばらつきが出ないように、市内全小学校で実施することとしました。
(※ 文部科学省初等中等教育局長通知(学校における働き方改革に配慮した学校プールの管理の在り方について):https://www.mext.go.jp/content/20240717-mxt_syoto01-0
00037116_10.pdfを御参照ください)
⑸ 契約内容や指導者の資格確認、安全対策の強化、指導内容のチェックについ
て
問6の⑶でお答えしましたとおり、指導者の資格を事前確認しているとともに、安全対策や指導内容についても受諾事業者と事前に協議しております。
回答としましては、以上となります。
今後とも、本市の教育活動に御理解・御協力いただきますとともに、引き続き御指導・御鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
令和7年3月27日
尾張旭市教育委員会学校教育課
別添
尾張旭市業務委託契約約款
令和4年4月1日改正
(総則)
第1条 発注者(以下「甲」という。)及び受注者(以下「乙」という。)は、この約款(契約書を含む。以下同じ。)に基づき、設計図書(別冊の設計書、図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。以下同じ。)に従い、日本国の法令を遵守し、この契約(この約款及び設計図書を内容とする業務の委託契約をいう。以下同じ。)を履行しなければならない。
2 乙は、契約書記載の業務(以下「業務」という。)を契約書記載の履行期間(以下「履行期間」という。)内に完了し、契約の目的物(以下「成果物」という。)を甲に引き渡す、又は業務の内容、結果等を甲に報告するものとし、甲は、その業務委託料を支払うものとする。
3 甲は、業務に関する指示を乙に対して行うことができる。この場合において、乙は、当該指示に従い業務を行わなければならない。
4 乙は、この約款若しくは設計図書に特別の定めがある場合又は前項の指示若しくは甲乙協議がある場合を除き、業務を完了するために必要な一切の手段をその責任において定めるものとする。
5 乙は、業務を行う上で知り得た秘密を他人に漏らしてはならない。
6 この約款に定める指示、催告、請求、通知、報告、申出、承諾、質問、回答及び解除は、書面により行わなければならない。
7 この契約の履行に関して甲乙間で用いる言語は、日本語とする。
8 この約款に定める金銭の支払に用いる通貨は、日本円とする。
9 この契約の履行に関して甲乙間で用いる計量単位は、設計図書に特別の定めがある場合を除き、計量法(平成4年法律第51号)に定めるものとする。
10 この約款及び設計図書における期間の定めについては、民法(明治29年法律第89号)及び商法(明治32年法律第48号)の定めるところによるものとする。
11 この契約は、日本国の法令に準拠するものとする。
12 この契約に係る訴訟の提起又は調停(第52条の規定に基づき、甲乙協議の上選任される調停人が行うものを除く。)の申立てについては、日本国の裁判所をもって合意による専属的管轄裁判所とする。
13 乙が共同企業体を結成している場合においては、甲は、この契約に基づくすべての行為を共同企業体の代表者に対して行うものとし、甲が当該代表者に対して行ったこの契約に基づくすべての行為は、当該企業体のすべての構成員に対して行ったものとみなし、また、乙は、甲に対して行うこの契約に基づくすべての行為について当該代表者を通じて行わなければならない。
(個人情報の保護)
第2条 乙は、この契約による個人情報の取扱いに当たっては、個人の権利利益を侵害することのないよう努めなければならない。
2 乙は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)第2条第8項に規定する特定個人情報(以下「特定個人情報」という。)の取扱いに当たっては、この基準に定めるもののほか、市における特定個人情報の取扱いに関する規程等を遵守しなければならない。
3 乙は、この契約による業務に関して知ることのできた個人情報を他に漏らしてはならない。この契約が終了し、又は解除された後においても、同様とする。
4 乙は、その業務に従事している者に対して、在職中及び退職後においてもこの契約による業務に関して知ることのできた個人情報を他人に漏らし、又は不当な目的に使用してはならないこと等の個人情報の保護に必要な事項を周知するものとする。
5 乙は、この契約により個人情報を取り扱う従業者を明確にし、特定個人情報を取り扱う従業者のほか、甲が必要と認める場合については、書面により甲にあらかじめ報告するものとする。なお、変更する場合も同様とする。
6 乙は、この契約により個人情報を取り扱う従業者に対して、この契約により乙が負う個人情報の取扱いに関する義務を適切に実施するよう監督及び教育を行うものとする。
7 乙は、この契約により個人情報を取り扱う業務を自ら処理するものとし、やむを得ず他に再委託するときは甲の承諾を得るものとする。
8 乙は、甲の承諾により個人情報を取り扱う業務を第三者に委託するときは、この契約により乙が負う個人情報の取扱いに関する義務を再委託先にも遵守させるものとし、乙はそのために必要かつ適切な監督を行うものとする。
9 乙は、この契約による業務を処理するため、個人情報を収集し、又は利用するときは、受託業務の目的の範囲内で行うものとする。
10 乙は、この契約による業務を処理するために収集し、又は作成した個人情報が記録された資料等(電磁的記録を含む。以下同じ。)を、甲の承諾なしに第三者に提供してはならない。
11 乙は、この契約による業務を処理するため甲から提供を受けた個人情報が記録された資料等を、甲の承諾なしに複写し、又は複製してはならない。
12 乙は、この契約による業務を処理するために個人情報が記録された資料等を取り扱うに当たっては、その作業場所及び保管場所をあらかじめ特定し、甲の承諾なしにこれらの場所以外に持ち出してはならない。
13 乙は、この契約による業務を処理するため甲から提供を受けた個人情報が記録された資料等の滅失及び損傷の防止に努めるものとする。乙自らが当該事務を処理するために収集した個人情報が記録された資料等についても、同様とする。
14 乙がこの契約による業務を処理するために、甲から提供を受け、又は自らが収集し、若しくは作成した個人情報が記録された資料等は、この契約完了後直ちに甲に返還し、又は引き渡すものとする。ただし、甲が別に指示したときは当該方法によるものとする。
15 乙は、甲の指示により、個人情報を削除し、又は個人情報が記録された資料等を廃棄した場合は、削除又は廃棄した記録を作成し、甲に証明書等により報告するものとする。
16 乙が、個人情報が記録された資料等について、甲の承諾を得て再委託による提供をした場合又は甲の承諾を得て第三者に提供した場合、乙は、甲の指示により、当該再委託先又は当該第三者から回収するものとする。
17 甲は、この契約により乙が負う個人情報の取扱いに関する義務の遵守状況について、乙に対して必要な報告を求め、随時に立入検査若しくは調査をし、又は乙に対して指示を与えることができる。なお、乙は、甲から改善を指示された場合には、その指示に従わなければならない。
18 乙は、この契約に違反する事態が生じ、又は生じるおそれのあることを知ったときは、速やかに甲に報告し、甲の指示に従うものとする。この場合、甲は、乙に対して、個人情報保護のための措置(個人情報が記録された資料等の第三者からの回収を含む。)を指示することができる。
19 乙は、この契約により乙が負う個人情報の取扱いに関する義務に違反し、又は怠ったことにより甲が損害を被った場合、甲にその損害を賠償しなければならない。
(業務計画書の提出)
第3条 乙は、この契約締結後14日以内に設計図書に基づいて業務計画書を作成し、甲に提出しなければならない。ただし、甲が別に指示したときは、この限りでない。
2 この約款の他の条項の規定により履行期間又は設計図書が変更された場合において、甲は、必要があると認めるときは、乙に対して業務計画書の再提出を請求することができる。この場合において、前項中「この契約締結後」とあるのは「当該請求があった日から」と読み替えて、同項の規定を準用する。
3 業務計画書は、甲及び乙を拘束するものではない。
(契約の保証)
第4条 乙は、この契約の締結と同時に、次の各号のいずれかに掲げる保証を付さなければならない。ただし、第5号の場合においては、履行保証保険契約の締結後、直ちにその保険証券を甲に寄託しなければならない。なお、契約書の契約保証金欄に「免除」と記載されているときは、本条は適用しない。
⑴ 契約保証金の納付
⑵ 契約保証金に代わる担保となる有価証券等の提供
⑶ この契約による債務の不履行により生じる損害金の支払を保証する銀行、甲が確実と認める金融機関又は保証事業会社(公共工事の前払金保証事業に関する法律(昭和27年法律第184号)第2条第4項に規定する保証事業会社をいう。)の保証
⑷ この契約による債務の履行を保証する公共工事履行保証証券による保証
⑸ この契約による債務の不履行により生じる損害をてん補する履行保証保険契約の締結
2 前項の保証に係る契約保証金の額、保証金額又は保険金額(第5項において「保証の額」という。)は、業務委託料(単価契約の場合にあっては、業務委託料に予定数量を乗じた金額(第46条第4項第1号において「予定契約総額」という。)とする。)の10分の1以上としなければならない。
3 乙が第1項第3号から第5号までのいずれかに掲げる保証を付す場合は、当該保証は第46条第3項各号に規定する者による契約の解除の場合についても保証するものでなければならない。
4 第1項の規定により、乙が同項第2号又は第3号に掲げる保証を付したときは、当該保証は契約保証金に代わる担保の提供として行われたものとし、同項第4号又は第5号に掲げる保証を付したときは、契約保証金の納付を免除する。
5 業務委託料の変更があった場合には、保証の額が変更後の業務委託料(単価契約の場合にあっては、業務委託料の単価に予定数量を乗じた金額)の10分の1に達するまで、甲は、保証の額の増額を請求することができ、乙は、保証の額の減額を請求することができる。
(権利義務の譲渡等)
第5条 乙は、この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させてはならない。ただし、あらかじめ、甲の承諾を得た場合は、この限りでない。
2 乙は、成果物(未完成の成果物及び業務を行う上で得られた記録等を含む。)を第三者に譲渡し、貸与し、又は質権その他の担保の目的に供してはならない。ただし、あらかじめ、甲の承諾を得た場合は、この限りでない。
(著作権の譲渡等)
第6条 乙は、成果物(第31条第1項に規定する指定部分に係る成果物及び同条第2項に規定する引渡部分に係る成果物を含む。以下本条において同じ。)が著作権法(昭和45年法律第48号)第2条第1項第1号に規定する著作物(以下本条において「著作物」という。)に該当する場合には、当該著作物に係る乙の著作権(著作権法第21条から第28条までに規定する権利をいう。)を当該著作物の引渡し時に甲に無償で譲渡するものとする。
2 甲は、成果物が著作物に該当するとしないとにかかわらず、当該成果物の内容を乙の承諾なく自由に公表することができる。
3 甲は、成果物が著作物に該当する場合には、乙が承諾したときに限り、既に乙が当該著作物に表示した氏名を変更することができる。
4 乙は、成果物が著作物に該当する場合において、甲が当該著作物の利用目的の実現のためにその内容を改変するときは、その改変に同意する。
また、甲は、成果物が著作物に該当しない場合には、当該成果物の内容を乙の承諾なく自由に改変することができる。
5 乙は、成果物(業務を行う上で得られた記録等を含む。)が著作物に該当するとしないとにかかわらず、甲が承諾した場合には、当該成果物を使用又は複製し、また、第1条第5項の規定にかかわらず当該成果物の内容を公表することができる。
6 甲は、乙が成果物の作成に当たって開発したプログラム(著作権法第10条第1項第9号に規定するプログラムの著作物をいう。)及びデータベース(著作権法第12条の2に規定するデータベースの著作物をいう。)について、乙が承諾した場合には、別に定めるところにより、当該プログラム及びデータベースを利用することができる。
(一括再委託等の禁止)
第7条 乙は、業務の全部を一括して、又は甲が設計図書において指定した主たる部分を第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。
2 乙は、前項の主たる部分のほか、甲が設計図書において指定した部分を第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。
3 乙は、業務の一部を第三者に委任し、又は請け負わせようとするときは、あらかじめ、甲の承諾を得なければならない。ただし、甲が設計図書において指定した軽微な部分を委任し、又は請け負わせようとするときは、この限りでない。
4 甲は、乙に対して、業務の一部を委任し、又は請け負わせた者の商号又は名称その他必要な事項の通知を請求することができる。
(特許権等の使用)
第8条 乙は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権その他日本国の法令に基づき保護される第三者の権利(以下本条において「特許権等」という。)の対象となっている履行方法を使用するときは、その使用に関する一切の責任を負わなければならない。ただし、甲がその履行方法を指定した場合において、設計図書に特許権等の対象である旨の明示がなく、かつ、乙がその存在を知らなかったときは、甲は、乙がその使用に関して要した費用を負担しなければならない。
(監督)
第9条 甲は、必要があるときは立会い、指示その他の方法により、乙の履行状況を監督することができる。
(業務担当責任者等に対する措置請求)
第10条 甲は、業務担当責任者又は乙の使用人若しくは第7条の規定により乙から業務を委任され、若しくは請け負った者がその業務の実施につき著しく不適当と認められるときは、乙に対して、その理由を明示した書面により、必要な措置をとるべきことを請求することができる。
2 乙は、前項の規定による請求があったときは、当該請求に係る事項について決定し、その結果を請求を受けた日から10日以内に甲に通知しなければならない。
(履行報告)
第11条 乙は、設計図書に定めるところにより、この契約の履行について甲に報告しなければならない。
(貸与品等)
第12条 甲が乙に貸与し、又は支給する調査機械器具、図面その他業務に必要な物品等(以下「貸与品等」という。)の品名、数量、品質、規格又は性能、引渡場所及び引渡時期は、設計図書に定めるところによる。
2 乙は、貸与品等の引渡しを受けたときは、引渡しの日から7日以内に、甲に受領書又は借用書を提出しなければならない。
3 乙は、貸与品等を善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。
4 乙は、設計図書に定めるところにより、業務の完了、設計図書の変更等によって不用となった貸与品等を甲に返還しなければならない。
5 乙は、故意又は過失により貸与品等が滅失若しくはき損し、又はその返還が不可能となったときは、甲の指定した期間内に代品を納め、若しくは原状に復して返還し、又は返還に代えて損害を賠償しなければならない。
(設計図書と業務内容が一致しない場合の修補義務)
第13条 乙は、業務の内容が設計図書又は甲の指示若しくは甲乙協議の内容に適合しない場合には、これらに適合するよう必要な修補を行わなければならない。この場合において、当該不適合が甲の責めに帰すべき事由によるときは、甲は、必要があると認められるときは、履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(条件変更等)
第14条 乙は、業務を行うに当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに甲に通知し、その確認を請求しなければならない。
⑴ 設計書、図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと(これらの優先順位が定められている場合を除く。)。
⑵ 設計図書に誤謬又は脱漏があること。
⑶ 設計図書の表示が明確でないこと。
⑷ 履行上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な履行条件が実際と相違すること。
⑸ 設計図書に明示されていない履行条件について予期することのできない特別の状態が生じたこと。
2 甲は、前項の規定による確認を請求されたとき又は自ら同項各号に掲げる事実を発見したときは、乙の立会いの上、直ちに調査を行わなければならない。ただし、乙が立会いに応じない場合には、乙の立会いを得ずに行うことができる。
3 甲は、乙の意見を聴いて、調査の結果(これに対してとるべき措置を指示する必要があるときは、当該指示を含む。)をとりまとめ、調査の終了後14日以内に、その結果を乙に通知しなければならない。ただし、その期間内に通知できないやむを得ない理由があるときは、あらかじめ、乙の意見を聴いた上、当該期間を延長することができる。
4 前項の調査の結果により第1項各号に掲げる事実が確認された場合において、必要があると認められるときは、甲は、設計図書の訂正又は変更を行わなければならない。
5 前項の規定により設計図書の訂正又は変更が行われた場合において、甲は、必要があると認められるときは、履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(設計図書等の変更)
第15条 甲は、前条第4項の規定によるほか、必要があると認めるときは、設計図書又は業務に関する指示(以下本条及び第17条において「設計図書等」という。)の変更内容を乙に通知して、設計図書等を変更することができる。この場合において、甲は、必要があると認められるときは、履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(業務の中止)
第16条 甲は、必要があると認めるときは、業務の中止内容を乙に通知して、業務の全部又は一部を一時中止させることができる。
2 甲は、前項の規定により業務を一時中止した場合において、必要があると認められるときは、履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は乙が業務の続行に備え業務の一時中止に伴う増加費用を必要としたとき若しくは乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(業務に係る乙の提案)
第17条 乙は、設計図書等について、技術的又は経済的に優れた代替方法その他改良事項を発見し、又は発案したときは、甲に対して、当該発見又は発案に基づき設計図書等の変更を提案することができる。
2 甲は、前項に規定する乙の提案を受けた場合において、必要があると認めるときは、設計図書等の変更を乙に通知するものとする。
3 甲は、前項の規定により設計図書等が変更された場合において、必要があると認められるときは、履行期間又は業務委託料を変更しなければならない。
(適正な履行期間の設定)
第18条 甲は、履行期間の延長又は短縮を行うときは、この業務に従事する者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう、やむを得ない事由により業務の実施が困難であると見込まれる日数等を考慮しなければならない。
(乙の請求による履行期間の延長)
第19条 乙は、その責めに帰すことができない事由により履行期間内に業務を完了することができないときは、その理由を明示した書面により甲に履行期間の延長変更を請求することができる。
2 甲は、前項の規定による請求があった場合において、必要があると認められるときは、履行期間を延長しなければならない。甲は、その履行期間の延長が甲の責めに帰すべき事由による場合においては、業務委託料について必要と認められる変更を行い、又は乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(甲の請求による履行期間の短縮等)
第20条 甲は、特別の理由により履行期間を短縮する必要があるときは、履行期間の短縮変更を乙に請求することができる。
2 甲は、前項の場合において、必要があると認められるときは、業務委託料を変更し、又は乙に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(履行期間の変更方法)
第21条 履行期間の変更については、甲乙協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合には、甲が定め、乙に通知する。
2 前項の協議開始の日については、甲が乙の意見を聴いて定め、乙に通知するものとする。ただし、甲が履行期間の変更事由が生じた日(第19条の場合にあっては、甲が履行期間の変更の請求を受けた日、前条の場合にあっては、乙が履行期間の変更の請求を受けた日)から7日以内に協議開始の日を通知しない場合には、乙は、協議開始の日を定め、甲に通知することができる。
(業務委託料の変更方法等)
第22条 業務委託料の変更については、甲乙協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合には、甲が定め、乙に通知する。
2 前項の協議開始の日については、甲が乙の意見を聴いて定め、乙に通知するものとする。ただし、甲が業務委託料の変更事由が生じた日から7日以内に協議開始の日を通知しない場合には、乙は、協議開始の日を定め、甲に通知することができる。
3 この約款の規定により、乙が増加費用を必要とした場合又は損害を受けた場合に甲が負担する必要な費用の額については、甲乙協議して定める。
(臨機の措置)
第23条 乙は、災害防止等のため必要があると認めるときは、臨機の措置をとらなければならない。この場合において、必要があると認めるときは、乙は、あらかじめ、甲の意見を聴かなければならない。ただし、緊急やむを得ない事情があるときは、この限りでない。
2 前項の場合において、乙は、そのとった措置の内容を甲に直ちに通知しなければならない。
3 甲は、災害防止その他業務を行う上で特に必要があると認めるときは、乙に対して臨機の措置をとることを請求することができる。
4 乙が第1項又は前項の規定により臨機の措置をとった場合において、当該措置に要した費用のうち、乙が業務委託料の範囲において負担することが適当でないと認められる部分については、甲がこれを負担する。
(一般的損害)
第24条 成果物の引渡し前に、成果物に生じた損害その他業務を行うにつき生じた損害(次条第1項、第2項若しくは第3項又は第26条第1項に規定する損害を除く。)については、乙がその費用を負担する。ただし、その損害(設計図書に定めるところにより付された保険によりてん補された部分を除く。)のうち甲の責めに帰すべき事由により生じたものについては、甲が負担する。
(第三者に及ぼした損害)
第25条 業務を行うにつき第三者に及ぼした損害(第3項に規定する損害を除く。)について、当該第三者に対して損害の賠償を行わなければならないときは、乙がその賠償額を負担する。
2 前項の規定にかかわらず、同項に規定する賠償額(設計図書に定めるところにより付された保険によりてん補された部分を除く。)のうち、甲の指示、貸与品等の性状その他甲の責めに帰すべき事由により生じたものについては、甲がその賠償額を負担する。ただし、乙が、甲の指示又は貸与品等が不適当であること等甲の責めに帰すべき事由があることを知りながらこれを通知しなかったときは、この限りでない。
3 業務を行うにつき通常避けることができない騒音、振動、地下水の断絶等の理由により第三者に及ぼした損害(設計図書に定めるところにより付された保険によりてん補された部分を除く。)について、当該第三者に損害の賠償を行わなければならないときは、甲がその賠償額を負担しなければならない。ただし、業務を行うにつき乙が善良な管理者の注意義務を怠ったことにより生じたものについては、乙が負担する。
4 前3項の場合その他業務を行うにつき第三者との間に紛争を生じた場合においては、甲乙協力してその処理解決に当たるものとする。
(不可抗力による損害)
第26条 天災等(設計図書で基準を定めたものにあっては、当該基準を超えるものに限る。)の不可抗力により、重大な損害を受け、業務の履行が不可能となったときは、乙は、その事実の発生後直ちにその状況を甲に通知しなければならない。
2 甲は、前項の規定による通知を受けたときは、直ちに調査を行い、同項の損害(乙が善良な管理者の注意義務を怠ったことに基づくもの及び設計図書に定めるところにより付された保険によりてん補された部分を除く。次項において「損害」という。)の状況を確認し、その結果を乙に通知しなければならない。
3 乙は、前項の規定により損害の状況が確認されたときは、損害による費用の負担を甲に請求することができる。ただし、損害の額については甲乙協議して定める。
(業務委託料の変更に代える設計図書の変更)
第27条 甲は、第8条、第13条から第17条まで、第19条、第20条、第23条、第24条、前条、第30条又は第32条の規定により業務委託料を増額すべき場合又は費用を負担すべき場合において、特別の理由があるときは、業務委託料の増額又は負担額の全部又は一部に代えて設計図書を変更することができる。この場合において、設計図書の変更内容は、甲乙協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合には、甲が定め、乙に通知する。
2 前項の協議開始の日については、甲が乙の意見を聴いて定め、乙に通知しなければならない。ただし、甲が同項の業務委託料を増額すべき事由又は費用を負担すべき事由が生じた日から7日以内に協議開始の日を通知しない場合には、乙は、協議開始の日を定め、甲に通知することができる。
(検査及び引渡し)
第28条 乙は、業務を完了したときは、その旨及び成果物の引渡しを甲に通知するとともに、成果物を納入しなければならない。
2 甲は、前項の規定による通知を受けたときは、通知を受けた日から10日以内に乙の立会いの上、業務の完了を確認するための検査を完了しなければならない。この場合甲は、当該検査の結果を乙に通知しなければならない。
3 甲は、前項の検査によって業務の完了を確認した日をもって成果物の引渡しを受けなければならない。
4 乙は、業務が第2項の検査に合格しないときは、直ちに修補して甲の検査を受けなければならない。この場合においては、修補の完了を業務の完了とみなして前3項の規定を読み替えて準用する。
(業務委託料の支払)
第29条 乙は、前条第2項の検査に合格したときは、業務委託料の支払を請求することができる。
2 甲は、前項の規定による請求があったときは、適法な請求書を受理した日から30日以内に業務委託料を支払わなければならない。
(引渡し前における成果物の使用)
第30条 甲は、第28条第3項又は次条第1項若しくは第2項の規定による引渡し前においても、成果物の全部又は一部を乙の承諾を得て使用することができる。
2 前項の場合においては、甲は、その使用部分を善良な管理者の注意をもって使用しなければならない。
3 甲は、第1項の規定により成果物の全部又は一部を使用したことによって乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(部分引渡し)
第31条 成果物について、甲が設計図書において業務の完了に先だって引渡しを受けるべきことを指定した部分(以下「指定部分」という。)がある場合において、当該指定部分の業務が完了したときについては、第28条中「業務」とあるのは「指定部分に係る業務」と、「成果物」とあるのは「指定部分に係る成果物」と、第29条中「業務委託料」とあるのは「部分引渡しに係る業務委託料」と読み替えて、これらの規定を準用する。
2 前項に規定する場合のほか、成果物の一部分が完了し、かつ、可分なものであるときは、甲は、当該部分について、乙の承諾を得て引渡しを受けることができる。この場合において、第28条中「業務」とあるのは、「引渡部分に係る業務」と、「成果物」とあるのは「引渡部分に係る成果物」と、第29条中「業務委託料」とあるのは「部分引渡しに係る業務委託料」と読み替えて、これらの規定を準用する。
3 前2項の規定により準用される第29条第1項の規定により乙が請求することができる部分引渡しに係る業務委託料は、甲が定め、乙に通知する。
(部分引渡しに係る業務委託料の不払に対する業務中止)
第32条 乙は、甲が前条において読み替えて準用される第29条の規定に基づく支払を遅延し、相当の期間を定めてその支払を請求したにもかかわらず支払をしないときは、業務の全部又は一部を一時中止することができる。この場合においては、乙は、その理由を明示した書面により、直ちにその旨を甲に通知しなければならない。
2 甲は、前項の規定により乙が業務を一時中止した場合において、必要があると認められるときは履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は乙が増加費用を必要とし、若しくは乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(契約不適合責任)
第33条 甲は、引き渡された成果物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」という。)であるときは、乙に対し、成果物の修補、又は代替物の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
2 前項の場合において、乙は、甲に不相当な負担を課するものでないときは、甲が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
3 第1項の場合において、甲が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、甲は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
⑴ 履行の追完が不能であるとき。
⑵ 乙が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
⑶ 成果物の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、乙が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
⑷ 前3号に掲げる場合のほか、甲が本項の規定による催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
(履行遅滞の場合における申出)
第34条 乙は、乙の責めに帰すべき事由により履行期間内に業務を完了することができないときは、遅滞なく理由を甲に申し出なければならない。
(甲の任意解除権)
第35条 甲は、業務が完了するまでの間は、次条から第39条までの規定によるほか、必要があるときは、この契約を解除することができる。
2 甲は、前項の規定によりこの契約を解除した場合において、乙に損害を及ぼしたときは、その損害を賠償しなければならない。
(甲の催告による解除権)
第36条 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当するときは相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、この契約を解除することができるものとし、このため乙に損害が生じても、甲はその責めを負わないものとする。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がこの契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この契約を解除することができない。
⑴ 正当な理由なく、業務に着手すべき期日を過ぎても業務に着手しないとき。
⑵ 履行期間内に完了しないとき又は履行期間経過後相当の期間内に業務が完了する見込みがないと認められるとき。
⑶ 正当な理由なく、第33条第1項の履行の追完がなされないとき。
⑷ 第4条第1項の規定により保証を付さなければならない場合において、保証を付さなかったとき。
⑸ 契約の履行につき不正行為があったとき。
⑹ 甲又はその補助者が行う監督又は検査に際し、その職務執行を妨げたとき。
⑺ 前各号に掲げる場合のほか、この契約に違反したとき。
(甲の催告によらない解除権)
第37条 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当するときは、直ちにこの契約を解除することができるものとし、このため乙に損害が生じても、甲はその責めを負わないものとする。
⑴ 第5条第1項の規定に違反して業務委託料債権を譲渡したとき。
⑵ 履行期間内に業務を完了させることができないことが明らかであるとき。
⑶ 乙がこの業務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
⑷ 乙の債務の一部の履行が不能である場合又は乙がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達成することができないとき。
⑸ 契約の目的物の性質や当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、乙が履行をしないでその時期を経過したとき。
⑹ 前各号に掲げる場合のほか、乙がその債務の履行をせず、甲が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
⑺ 第41条又は第42条の規定によらないでこの契約の解除を申し出たとき。
(暴力団等排除に係る解除)
第38条 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当するとき(乙が共同企業体であるときは、その構成員のいずれかの者が該当する場合を含む。)は、直ちにこの契約を解除することができるものとし、このため乙に損害が生じても、甲はその責めを負わないものとする。
⑴ 法人等(法人又は団体若しくは個人をいう。以下同じ。)の役員等(法人にあっては非常勤を含む役員及び支配人並びに営業所の代表者、その他の団体にあっては法人の役員等と同様の責任を有する代表者及び理事等、個人にあってはその者及び支店又は営業所を代表する者をい
う。以下同じ。)に暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号。以下「暴対法」という。)第2条第6号に規定する暴力団員(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員ではないが暴対法第2条第2号に規定する暴力団(以下「暴力団」という。)と関係を持ちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為等を行う者(以下「暴力団関係者」という。)がいると認められるとき。
⑵ 暴力団員又は暴力団関係者(以下「暴力団員等」という。)がその法人等の経営又は運営に実質的に関与していると認められるとき。
⑶ 法人等の役員等又は使用人が、暴力団の威力若しくは暴力団員等又は暴力団員等が経営若しくは運営に実質的に関与している法人等を利用するなどしていると認められるとき。
⑷ 法人等の役員等又は使用人が、暴力団若しくは暴力団員等又は暴力団員等が経営若しくは運営に実質的に関与している法人等に対して資金等を供給し、又は便宜を供与するなど暴力団の維持運営に協力し、又は関与していると認められるとき。
⑸ 法人等の役員等又は使用人が、暴力団又は暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有していると認められるとき。
⑹ 再委託契約その他の契約に当たり、その相手方が前各号のいずれかに該当することを知りながら、当該者と契約を締結したと認められるとき。
⑺ 乙が、第1号から第5号までのいずれかに該当する者を再委託契約その他の契約の相手方としていた場合(前号に該当する場合を除く。)に、甲が乙に対して当該契約の解除を求め、乙がこれに従わなかったとき。
⑻ 暴力団又は暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる者に業務委託料債権を譲渡したとき。
⑼ 前3号のほか、法人等の役員等又は使用人が、第1号から第5号のいずれかに該当する法人等であることを知りながら、これを利用するなどしていると認められるとき。
(談合その他不正行為に係る解除)
第39条 甲は、乙がこの契約に関して、次の各号のいずれかに該当したときは、直ちにこの契約を解除することができるものとし、このため乙に損害が生じても、甲はその責めを負わないものとする。
⑴ 乙が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第3条の規定に違反し、又は乙が構成事業者である事業者団体が独占禁止法第8条第1号の規定に違反したことにより、公正取引委員会が乙に対し、独占禁止法第7条の2第1項(独占禁止法第8条の3において準用する場合を含む。)の規定に基づく課徴金の納付命令(以下「納付命令」という。)を行い、当該納付命令が確定したとき(確定した当該納付命令が独占禁止法第63条第2項の規定により取り消された場合を含む。以下本条において同じ。)。
⑵ 納付命令又は独占禁止法第7条若しくは第8条の2の規定に基づく排除措置命令(これらの命令が乙又は乙が構成事業者である事業者団体(以下「乙等」という。)に対して行われたときは、乙等に対する命令で確定したものをいい、乙等に対して行われていないときは、各名宛人に対する命令すべてが確定した場合における当該命令をいう。次号において同じ。)において、この契約に関し、独占禁止法第3条又は第8条第1号の規定に違反する行為の実行としての事業活動があったとされたとき。
⑶ 前号に規定する納付命令又は排除措置命令により、乙等に独占禁止法第3条又は第8条第1号の規定に違反する行為があったとされた期間及び当該違反する行為の対象となった取引分野が示された場合において、この契約が、当該期間(これらの命令に係る事件について、公正取引委員会が乙に対し納付命令を行い、これが確定したときは、当該納付命令における課徴金の計算の基礎である当該違反する行為の実行期間を除く。)に入札(見積書の提出を含む。)が行われたものであり、かつ、当該取引分野に該当するものであるとき。
⑷ 乙(法人にあっては、その役員又は使用人を含む。次号において同じ。)の刑法(明治40年法律第45号)第96条の6又は独占禁止法第89条第1項若しくは第95条第1項第1号に規定する刑が確定したとき。
⑸ 乙の刑法第198条の規定による刑が確定したとき。
2 乙が共同企業体である場合における前項の規定については、その構成員のいずれかの者が同項各号のいずれかに該当した場合に適用する。
(甲の責めに帰すべき事由による場合の解除の制限)
第40条 第36条各号、第37条各号又は第38条各号に定める場合が甲の責めに帰すべき事由によるものであるときは、甲は、第36条から第38条までの規定による契約の解除をすることができない。
(乙の催告による解除権)
第41条 乙は、甲がこの契約に違反したときは、相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、この契約を解除することができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がこの契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
(乙の催告によらない解除権)
第42条 乙は、次の各号のいずれかに該当するときは、この契約を解除することができる。
⑴ 第15条の規定により設計図書を変更したため業務委託料が3分の2以上減少したとき。
⑵ 第16条の規定による業務の中止期間が履行期間の10分の5(履行期間の10分の5が6か月を超えるときは、6か月)を超えたとき。ただし、中止が業務の一部のみの場合は、その一部を除いた他の部分の業務が完了した後3か月を経過しても、なおその中止が解除されないとき。
(乙の責めに帰すべき事由による場合の解除の制限)
第43条 第41条又は前条各号に定める場合が乙の責めに帰すべき事由によるものであるときは、乙は、前2条の規定による契約の解除をすることができない。
(解除の効果)
第44条 この契約が解除された場合には、第1条第2項に規定する甲及び乙の義務は消滅する。ただし、第31条に規定する部分引渡しに係る部分については、この限りでない。
2 甲は、前項の規定にかかわらず、この契約が業務の完了前に解除された場合において、乙が既に業務を完了した部分(第31条の規定により部分引渡しを受けている場合には、当該引渡部分を除くものとし、以下「既履行部分」という。)の引渡しを受ける必要があると認めたときは、既履行部分を検査の上、当該検査に合格した部分の引渡しを受けることができる。この場合において、甲は、当該引渡しを受けた既履行部分に相応する業務委託料(以下本条において「既履行部分委託料」という。)を乙に支払わなければならない。
3 前項に規定する既履行部分委託料は、甲が定め、乙に通知する。
(解除に伴う措置)
第45条 乙は、この契約が業務の完了前に解除された場合において、貸与品等があるときは、当該貸与品等を甲に返還しなければならない。この場合において、当該貸与品等が乙の故意または過失により滅失又はき損したときは、代品を納め、若しくは原状に復して返還し、又は返還に
代えてその損害を賠償しなければならない。
2 前項前段に規定する乙のとるべき措置の期限、方法等については、この契約の解除が第36条から第39条まで又は次条第3項の規定によるときは甲が定め、第35条、第41条又は第42条によるときは乙が甲の意見を聴いて定めるものとし、第1項後段及び第2項に規定する乙のとるべき措置の期限、方法等については、甲が乙の意見を聴いて定めるものとする。
3 業務の完了後にこの契約が解除された場合は、解除に伴い生じる事項の処理については甲及び乙が民法の規定に従って協議して決める。
(甲の損害賠償請求等)
第46条 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当する場合は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
⑴ 履行期限内に業務を完了することができないとき。
⑵ この契約の成果物に契約不適合があるとき。
⑶ 第36条から第38条までの規定により成果物の引渡し後にこの契約が解除されたとき。
⑷ 前3号に掲げる場合のほか、債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるとき。
2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の損害賠償に代えて、乙は、業務委託料の10分の1に相当する額を違約金として甲の指定する期間内に支払わなければならない。
⑴ 第36条から第38条までの規定により成果物の引渡し前にこの契約が解除されたとき。
⑵ 成果物の引渡し前に、乙がその債務の履行を拒否し、又は乙の責めに帰すべき事由によって乙の債務について履行不能となったとき。
3 次の各号に掲げる者がこの契約を解除した場合は、前項第2号に該当する場合とみなす。
⑴ 乙について破産手続開始の決定があった場合において、破産法(平成16年法律第75号)の規定により選任された破産管財人
⑵ 乙について更生手続開始の決定があった場合において、会社更生法(平成14年法律第154号)の規定により選任された管財人
⑶ 乙について再生手続開始の決定があった場合において、民事再生法(平成11年法律第225号)の規定により選任された再生債務者等4 第2項における業務委託料は、次の各号に掲げる契約の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。
⑴ 単価契約 予定契約総額。ただし、既履行部分について検査に合格した部分がある場合は、予定契約総額から当該部分に相応する額を控除した金額
⑵ 長期継続契約 契約を解除した日の属する年度の金額
⑶ その他の委託契約 業務委託料
5 第1項各号又は第2項各号に定める場合(前項の規定により第2項第2号に該当する場合とみなされる場合を除く。)がこの契約及び取引上の社会通念に照らして乙の責めに帰することができない事由によるものであるときは、第1項及び第2項の規定は適用しない。
6 第1項第1号に該当し、甲が損害金を請求する場合の請求額は、業務委託料から既履行部分に相応する業務委託料を控除した額(1,000円未満の端数金額及び1,000円未満の金額は切り捨てる。)につき、遅延日数に応じ、年14.5パーセントの割合で計算した額とする。
7 前項の損害金に100円未満の端数があるとき、又は損害金が100円未満であるときは、その端数金額又はその損害金は徴収しないものとする。
8 第2項の場合(第38条の規定により、この契約が解除された場合を除く。)において、第4条の規定により契約保証金の納付又はこれに代わる担保の提供が行われているときは、甲は、当該契約保証金の納付又は担保をもって同項の違約金に充当することができる。
9 第1項から、第3項まで又は第6項の場合において、乙が共同企業体であるときは、各構成員は、損害金等を連帯して甲に支払わなければならない。乙が既に共同企業体を解散しているときは、構成員であった者についても、同様とする。
(談合その他不正行為に係る賠償金の支払)
第47条 乙は、第39条第1項各号のいずれかに該当するときは、甲がこの契約を解除するか否かにかかわらず、賠償金として、業務委託料の10分の2に相当する額を甲が指定する期限までに支払わなければならない。乙がこの契約を履行した後も同様とする。
2 乙は、次の各号のいずれかに該当したときは、前項の規定に関わらず、業務委託料の10分の 3に相当する額を支払わなければならない。
⑴ 第39条第1項第1号に規定する確定した納付命令における課徴金について、独占禁止法第7条の3の規定の適用があるとき。
⑵ 第39条第1項第4号に規定する刑に係る確定判決において、乙が違反行為の首謀者であることが明らかになったとき。
⑶ 第39条第1項各号のいずれかに該当する場合において、乙が甲に独占禁止法等に抵触する行為を行っていない旨の誓約書を提出しているとき。
3 前2項の規定に関わらず、甲は、甲に生じた実際の損害額が同項に規定する賠償金の額を超える場合においては、乙に対しその超過分につき賠償を請求することができる。
4 前各項の場合において、乙が共同企業体であるときは、各構成員は、賠償金を連帯して甲に支払わなければならない。乙が既に共同企業体を解散しているときは、構成員であった者についても、同様とする。
(乙の損害賠償請求等)
第48条 乙は、甲が次の各号のいずれかに該当する場合はこれによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、当該各号に定める場合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして甲の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
⑴ 第41条又は第42条の規定によりこの契約が解除されたとき。
⑵ 前号に掲げる場合のほか、債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるとき。
2 第29条第2項(第31条において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による業務委託料の支払が遅れた場合においては、乙は、未受領金額につき、遅延日数に応じ、政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和24年法律第256号)第8条第1項の規定に基づき財務大臣が決定する率を乗じて計算した額の遅延利息の支払を甲に請求することができる。
(契約不適合責任期間等)
第49条 乙が種類又は品質において契約の内容に適合しない成果物を甲に引き渡した場合において、甲がその不適合を知った時から1年以内にその旨を乙に通知しないときは、甲は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求又は契約の解除(以
下本条において「請求等」という。)をすることができない。ただし、乙が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、甲の権利の行使ができる期間について設計書等で別段の定めをした場合は、その設計書等の定めるところによる。
3 前項の請求等は、具体的な契約不適合の内容、請求する損害額の算定の根拠等、当該請求等の根拠を示して、乙の契約不適合責任を問う意思を明確に告げることで行う。
4 甲が第1項又は第2項に規定する契約不適合に係る請求等が可能な期間(以下本項において「契約不適合責任期間」という。)の内に契約不適合を知り、その旨を乙に通知した場合において、甲が通知から1年が経過する日までに前項に規定する方法による請求等をしたときは、契約
不適合責任期間の内に請求等をしたものとみなす。
5 甲は、第1項又は第2項の請求等を行ったときは、当該請求等の根拠となる契約不適合に関し、民法の消滅時効の範囲で、当該請求等以外に必要と認められる請求等をすることができる。
6 前各項の規定は、契約不適合が乙の故意又は重過失により生じたものであるときには適用せず、契約不適合に関する乙の責任については、民法の定めるところによる。
7 甲は、成果物の引渡し(第31条第1項又は第2項の規定による部分引渡しを含む。次項において同じ。)の際に契約不適合があることを知ったときは、第1項の規定にかかわらず、その旨を直ちに乙に通知しなければ、当該契約不適合に関する請求等をすることはできない。ただし、乙がその契約不適合があることを知っていたときは、この限りでない。
8 引き渡された成果物の契約不適合が設計図書の記載内容、甲の指示又は貸与品等の性状により生じたものであるときは、甲は契約不適合を理由として、請求等をすることができない。ただし、乙がその記載内容、指示又は貸与品等が不適当であることを知りながらこれを通知しなかったときは、この限りでない。
(保険)
第50条 乙は、設計図書に基づき火災保険その他の保険を付したとき又は任意に保険を付しているときは、当該保険に係る証券又はこれに代わるものを直ちに甲に提示しなければならない。
(妨害等に対する報告義務等)
第51条 乙は、この契約の履行に当たって、妨害(不法な行為等で、業務履行の障害となるものをいう。)又は不当要求(金銭の給付等一定の行為を請求する権利若しくは正当な利益がないにもかかわらずこれを要求し、又はその要求の方法、態様若しくは程度が社会的に正当なものと認められないものをいう。)(以下本条において「妨害等」という。)を受けた場合は、速やかに市に報告するとともに警察へ被害届を提出しなければならない。
2 乙が妨害等を受けたにもかかわらず、前項の市への報告又は被害届の提出を怠ったと認められる場合は、市の調達契約からの排除措置を講ずることがある。
(紛争の解決)
第52条 この約款の各条項において甲乙協議して定めるものにつき協議が整わなかったときに甲が定めたものに乙が不服がある場合その他この契約に関して甲乙間に紛争を生じたときは、甲及び乙は、協議の上調停人を選任し、当該調停人のあっせん又は調停によりその解決を図る。こ
の場合において、紛争の処理に要する費用については、甲乙協議して特別の定めをしたものを除き、甲乙それぞれが負担する。
2 前項の規定にかかわらず、甲又は乙は、必要があると認めるときは、同項に規定する手続前又は手続中であっても同項の甲乙間の紛争について民事訴訟法(平成8年法律第109号)に基づく訴えの提起又は民事調停法(昭和26年法律第222号)に基づく調停の申立てを行うこと
ができる。
(契約外の事項)
第53条 この約款に定めのない事項については、必要に応じて甲乙協議して定める。
【関連資料】
①【桃源閑話】水泳授業の民間委託 2024年09月11日 09:24
②総務省:全国の自治体一般職職員対象のカスハラ調査
2025年05月06日 22:26:「総務省:全国の自治体一般職職員対象のカスハラ調査」記事内【桃源寸評】https://koshimizu-tougen.asablo.jp/blog/2025/05/06/9773745
⓷なお、本回答内容は:070327別紙回答.pdfで作成されている。
https://momodesu.lovestoblog.com/070327%E5%88%A5%E7%B4%99%E5%9B%9E%E7%AD%94.pdf
④一部段落等を付加した。
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このたびは、本市の教育活動に対して御意見をいただき、ありがとうございました。
以下のとおり、先に回答した内容を再度整理するとともに、根拠となる資料名を追記させていただきましたので御確認ください。
問1 小学校の水泳授業を民間委託することについて
⑴ 指導の責任について
教員は、学校教育法第37条第11項の規定に基づき、児童の教育をつかさどる必要があります。
また、民間プールを活用した水泳授業を実施する際には、受託事業者と交わしている仕様書に「指導方法については、学校担当者と打合せを実施し、決定すること」と明記しております。(※ 当該仕様書が必要の場合には、お手数ですが別途情報公開請求をお願いします)
このため、プールでの水泳指導は、受託事業者のインストラクターが行いますが、児童の観察や評価は教員が行っているため、引き続き指導の責任は教員が果たしております。
⑵ 教育内容の一貫性について
小学校の教育課程に関する事項については、学校教育法第33条において文部科学大臣が定めております。また、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準については、学習指導要領で定めております。
なお、当該要領では、小学校、中学校、高等学校等ごとに、それぞれの教科等の目標や教育内容を定めておりますが、民間プールを活用した水泳授業を実施する際においても、それに則った対応が求められます。(※ 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説体育編:https://www.mext.go.jp/content/2024091
8-mxt_kyoiku01-100002607.pdf P53~P57、P91~P96、P135~P140を御参照ください)
⑶ 安全管理と責任の所在について
民間プールを活用した水泳授業も、学校の教育活動下にあるため、安全配慮義務は教員にあります。
また、その委託契約につきましては、「受託者が善良な管理者の注意義務を怠ったことにより生じた第三者への損害については、受託者が負担する」としたた別添の「尾張旭市業務委託契約約款(令和4年4月1日改正)」に基づき締結しています。
なお、当該授業の実施においては、何よりも児童の安全確保に配慮をし、事故の発生を未然に防止することが重要であると考えています。そうした中、民間プールの活用は、受託事業者のインストラター等を追加で配置できるため、さらなる安全性の向上につながっています。
⑷ 教員の役割の低下について
民間プールを活用した水泳授業は、受託事業者と交わしている仕様書に基づき「水泳指導に精通している者」が技術指導をしているため、児童はより専門性の高い指導を受けることができます。
なお、指導内容や指導方法の決定のほか、児童の評価の業務については、引き続き教員が担っているため、役割の低下にはつながりません。
⑸ 教育内容の確認、安全管理の徹底、責任の分担などを含む明確な契約について
民間プールを活用したとしても、「教員が水泳授業すること」に変わりはありませんので、当然その教育内容は確認できており、安全管理も徹底しております。
なお、受託事業者と交わしている仕様書でも、「高い安全性の確保」を業務目的に掲げ、安全管理の徹底や責任の分担などを明確化しております。
問2 教員資格のない者が学校で教授する際の法的根拠について
問1の⑴でお答えしましたとおり、プールでの水泳指導は、受託事業者のインストラクターが行いますが、児童の観察や評価は、引き続き教員が行っており、インストラクターが単独で水泳指導することはありません。このため、教員職員免許法第4条第4項及び第6項に定められた「臨時免許状」や「特別免許状」を付与する必要はない状況にあります。
問3 教員資格のない者を雇うことに関して、企業も該当するのかについて
⑴ 教員資格のない者が教育機関との連携や学校での教育活動に従事する場合について
学習指導要領では「社会に開かれた教育課程の実現」が重視されており、外部の方による教育プログラムを、学校の授業のほか、放課後や土日等の教育に取り入れる学校等が増えています。(※ 文部科学省「学校と地域でつくる学びの未来」:https://manabi-mirai.mext.go.jp/program/index.htmlを御参照ください)
本市においても、教員が教育上必要であると判断した場合には、出前講座や社会見学等といった形で外部から講師を招き、専門的な立場から御教授いただく機会を計画しています。ただしその場合、教員同席のもと、協働して教育活動を行っておりますので「外部講師の雇用」といった取扱いはしていません。
民間プールを活用した水泳授業も、これと同様の取扱いとなり、インストラクターが単独で授業を行っていませんので、教育職員免許法第3条第4項の規定に反することはありません。(※ 教育職員免許法第3条第4項:義務教育学校の教員(養護又は栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭、養護教諭、養護助教諭並びに栄養教諭を除く)については、第1項の規定にかかわらず、小学校の教員の免許状及び中学校の教員の免許状を有する者でなければならない)
⑵ 臨時免許状や特別免許状の交付を検討したかについて
⑶ 専門的な知識や経験をもつ人材に教育委員会が特定の条件下で許可を与えることを検討したかについて
⑷ 特定の教科を担当させる場合の教育委員会の許可付与について
本市と同様、教員と受託事業者のインストラクターがともに指導にあたっている千葉県佐倉市の取組事例などを踏まえて検討した結果、受託事業者のインストラクターが体育科の授業を単独で担当しない形での契約としております。
(※ 千葉県佐倉市の取組:https://www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2018/11/01/1410416_05.pdfを御参照ください)
⑸ 教員資格のない者を雇用する際、学校から教育委員会へ報告や許可申請があったかについて
⑹ 教育委員会への報告や企業内部での労働契約変更に関する報告について
問2でお答えしましたとおり、「臨時免許状」や「特別免許状」を付与する必要がないため、そうした報告や申請はありません。
問4 スイミングスクールとの契約形態について
⑴ 請負契約か派遣契約かについて
受託事業者であるスイミングスクールとの契約形態は、請負契約(業務委託契約)としております。このため、受託事業者のインストラクターに、教員が直接指示を行うことはありません。
⑵ 学生一人が利用する費用と、今回の委託契約一人分との比較について
令和6年度の契約では、児童1人当たり約9,000円(5回実施)としています。なお、受託事業者である市内のスイミングスクールの幼児学童クラスの個人レッスン代は、月額8,250円(週1回実施)となっております。
⑶ 教員の負担の軽減について
具体的な教員の負担軽減量は測定していませんが、学校での水泳指導の際に必要となる「塩素注入」や「PH・塩素濃度の測定」、「気温・水温の測定」や「プール日誌への記入」、「危険物の有無の確認」や「ごみの除去」等の作業が不要となりましたので、一定の負担軽減につながっていると考えております。
⑷ 教員の負担軽減について、教員増員は検討されているかについて
御承知のとおり、教員の定数は県が定めており、本市独自で対応することはできませんが、その増員については継続して要望しております。なお、愛知県は、教職員の定数を「教職員定数の標準に関する法律」に基づき定めることを基本としております。(※ 愛知県ホームページ:https://www.pref.aichi.jp/sos
hiki/zaimusisetsu/0000008245.htmlを御参照ください)
⑸ 年間でスイミングスクール時間(授業)はどれだけあるのかについて
令和6年度においては、教育課程の10時間分(2時間を1回とし、5回実施)の水泳授業を設定しております。
⑹ 学校でのプール管理を業者に頼めなかったのかについて
本市の小学校プールは老朽化が進行しており、これを継続的に活用するには、多大な補修費用が必要となります。
このため、今回の民間プールを活用した水泳授業の実施においては、教員の負担軽減だけでなく、多大な補修費用や維持管理経費の削減も、重要な目的の一つとしております。(※ 検討の経緯(令和元年度第2回尾張旭市総合教育会議会議録):https://www.city.owariasahi.lg.jp/uploaded/attachment/6682.pdfを御参照ください)
⑺ 学校でプールを維持した場合の費用について
日常の学校プールの保守費や水道料金、改修費用としましては、1校あたり約567万円ほど必要となります。また、本市の小学校のプールはいずれも老朽化が進んでいるため、近い将来「プールの建替え」が必要となりますが、その場合、1校あたり約2.5億円の費用が必要となります。(※ 費用算出根拠(令和5年度尾張旭市教育委員会(10月)定例会会議録):https://www.city.o
wariasahi.lg.jp/uploaded/attachment/21487.pdfを御参照ください)
⑻ 受託者の裁量について(問4⑴に関連)
受託事業者と交わしている仕様書に基づき「水泳指導(準備体操等を含む)及びプールサイドでの監視」、「学級単位での指導の実施」等の業務を委託しております。
なお、問4の⑴でお答えしましたとおり、受託事業者であるスイミングスクールとは、請負契約(業務委託契約)を締結しており、本市の教員が受託事業者のインストラクターに直接指示を行うことはありません。
⑼ 尾張旭市のスイミングスクールの数について
市内には、スイミングスクールが2か所(AIEIスイミングクラブ、スポーツシティ旭)立地しています。
問5 教員資格のない者が学校で教授する際の児童生徒の評価について
⑴⑵⑶ 評価者や通知表について
学習評価や通知表への記載は、免許状をもつ教員が行っており、それ以外の者が評価を行うことはありません。また、受託事業者と交わしている仕様書においても、評価に関しては委託業務に位置付けていません。
問6 民間にスイミング授業を委託することの教育上および法的問題について
⑴ 事故やトラブル時の責任の所在について
問1の⑶でお答えしましたとおり、民間プールを活用した水泳授業も、学校の教育活動下にあるため、安全配慮義務は教員にあります。
⑵ 教育指導要領との整合性について
民間プールを活用した水泳授業についても、文部科学省が定める学習指導要領に則って指導計画を立てており、当該要領と整合した指導を行っております。
⑶ 民間委託の指導者の労働条件や安全管理について
指導者の条件としては、受託事業者と交わしている仕様書において、「水泳指導に精通している者」、「1年以内に普通救命講習を受講したことのある者」としております。
また、労働条件としては「おおむね児童20人に対して指導員1名を配置」としております。
なお、令和6年度の受託事業者の指導者の状況とは次のとおりです。
【委託先①】:指導者全員が社内指導ライセンスと救命救急講習を受講
【委託先②】:指導者全員がインストラクター資格を保有し、救命救急講習を受講
【委託先③】:指導者全員が社内のA級インストラクターを保有し、救命救急講習を受講
⑷ 地域や学校ごとの経済的格差による教育の公平性について
民間プールを活用した水泳授業については、国からも、その促進に関する依頼があり、これに基づき全国各地で対応が進みつつあったため、本市においても慎重に検討を重ねてまいりました。
その結果、経済状況や施設の整備状況に左右されず、また教育の質にばらつきが出ないように、市内全小学校で実施することとしました。
(※ 文部科学省初等中等教育局長通知(学校における働き方改革に配慮した学校プールの管理の在り方について):https://www.mext.go.jp/content/20240717-mxt_syoto01-0
00037116_10.pdfを御参照ください)
⑸ 契約内容や指導者の資格確認、安全対策の強化、指導内容のチェックについ
て
問6の⑶でお答えしましたとおり、指導者の資格を事前確認しているとともに、安全対策や指導内容についても受諾事業者と事前に協議しております。
回答としましては、以上となります。
今後とも、本市の教育活動に御理解・御協力いただきますとともに、引き続き御指導・御鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
令和7年3月27日
尾張旭市教育委員会学校教育課
別添
尾張旭市業務委託契約約款
令和4年4月1日改正
(総則)
第1条 発注者(以下「甲」という。)及び受注者(以下「乙」という。)は、この約款(契約書を含む。以下同じ。)に基づき、設計図書(別冊の設計書、図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。以下同じ。)に従い、日本国の法令を遵守し、この契約(この約款及び設計図書を内容とする業務の委託契約をいう。以下同じ。)を履行しなければならない。
2 乙は、契約書記載の業務(以下「業務」という。)を契約書記載の履行期間(以下「履行期間」という。)内に完了し、契約の目的物(以下「成果物」という。)を甲に引き渡す、又は業務の内容、結果等を甲に報告するものとし、甲は、その業務委託料を支払うものとする。
3 甲は、業務に関する指示を乙に対して行うことができる。この場合において、乙は、当該指示に従い業務を行わなければならない。
4 乙は、この約款若しくは設計図書に特別の定めがある場合又は前項の指示若しくは甲乙協議がある場合を除き、業務を完了するために必要な一切の手段をその責任において定めるものとする。
5 乙は、業務を行う上で知り得た秘密を他人に漏らしてはならない。
6 この約款に定める指示、催告、請求、通知、報告、申出、承諾、質問、回答及び解除は、書面により行わなければならない。
7 この契約の履行に関して甲乙間で用いる言語は、日本語とする。
8 この約款に定める金銭の支払に用いる通貨は、日本円とする。
9 この契約の履行に関して甲乙間で用いる計量単位は、設計図書に特別の定めがある場合を除き、計量法(平成4年法律第51号)に定めるものとする。
10 この約款及び設計図書における期間の定めについては、民法(明治29年法律第89号)及び商法(明治32年法律第48号)の定めるところによるものとする。
11 この契約は、日本国の法令に準拠するものとする。
12 この契約に係る訴訟の提起又は調停(第52条の規定に基づき、甲乙協議の上選任される調停人が行うものを除く。)の申立てについては、日本国の裁判所をもって合意による専属的管轄裁判所とする。
13 乙が共同企業体を結成している場合においては、甲は、この契約に基づくすべての行為を共同企業体の代表者に対して行うものとし、甲が当該代表者に対して行ったこの契約に基づくすべての行為は、当該企業体のすべての構成員に対して行ったものとみなし、また、乙は、甲に対して行うこの契約に基づくすべての行為について当該代表者を通じて行わなければならない。
(個人情報の保護)
第2条 乙は、この契約による個人情報の取扱いに当たっては、個人の権利利益を侵害することのないよう努めなければならない。
2 乙は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)第2条第8項に規定する特定個人情報(以下「特定個人情報」という。)の取扱いに当たっては、この基準に定めるもののほか、市における特定個人情報の取扱いに関する規程等を遵守しなければならない。
3 乙は、この契約による業務に関して知ることのできた個人情報を他に漏らしてはならない。この契約が終了し、又は解除された後においても、同様とする。
4 乙は、その業務に従事している者に対して、在職中及び退職後においてもこの契約による業務に関して知ることのできた個人情報を他人に漏らし、又は不当な目的に使用してはならないこと等の個人情報の保護に必要な事項を周知するものとする。
5 乙は、この契約により個人情報を取り扱う従業者を明確にし、特定個人情報を取り扱う従業者のほか、甲が必要と認める場合については、書面により甲にあらかじめ報告するものとする。なお、変更する場合も同様とする。
6 乙は、この契約により個人情報を取り扱う従業者に対して、この契約により乙が負う個人情報の取扱いに関する義務を適切に実施するよう監督及び教育を行うものとする。
7 乙は、この契約により個人情報を取り扱う業務を自ら処理するものとし、やむを得ず他に再委託するときは甲の承諾を得るものとする。
8 乙は、甲の承諾により個人情報を取り扱う業務を第三者に委託するときは、この契約により乙が負う個人情報の取扱いに関する義務を再委託先にも遵守させるものとし、乙はそのために必要かつ適切な監督を行うものとする。
9 乙は、この契約による業務を処理するため、個人情報を収集し、又は利用するときは、受託業務の目的の範囲内で行うものとする。
10 乙は、この契約による業務を処理するために収集し、又は作成した個人情報が記録された資料等(電磁的記録を含む。以下同じ。)を、甲の承諾なしに第三者に提供してはならない。
11 乙は、この契約による業務を処理するため甲から提供を受けた個人情報が記録された資料等を、甲の承諾なしに複写し、又は複製してはならない。
12 乙は、この契約による業務を処理するために個人情報が記録された資料等を取り扱うに当たっては、その作業場所及び保管場所をあらかじめ特定し、甲の承諾なしにこれらの場所以外に持ち出してはならない。
13 乙は、この契約による業務を処理するため甲から提供を受けた個人情報が記録された資料等の滅失及び損傷の防止に努めるものとする。乙自らが当該事務を処理するために収集した個人情報が記録された資料等についても、同様とする。
14 乙がこの契約による業務を処理するために、甲から提供を受け、又は自らが収集し、若しくは作成した個人情報が記録された資料等は、この契約完了後直ちに甲に返還し、又は引き渡すものとする。ただし、甲が別に指示したときは当該方法によるものとする。
15 乙は、甲の指示により、個人情報を削除し、又は個人情報が記録された資料等を廃棄した場合は、削除又は廃棄した記録を作成し、甲に証明書等により報告するものとする。
16 乙が、個人情報が記録された資料等について、甲の承諾を得て再委託による提供をした場合又は甲の承諾を得て第三者に提供した場合、乙は、甲の指示により、当該再委託先又は当該第三者から回収するものとする。
17 甲は、この契約により乙が負う個人情報の取扱いに関する義務の遵守状況について、乙に対して必要な報告を求め、随時に立入検査若しくは調査をし、又は乙に対して指示を与えることができる。なお、乙は、甲から改善を指示された場合には、その指示に従わなければならない。
18 乙は、この契約に違反する事態が生じ、又は生じるおそれのあることを知ったときは、速やかに甲に報告し、甲の指示に従うものとする。この場合、甲は、乙に対して、個人情報保護のための措置(個人情報が記録された資料等の第三者からの回収を含む。)を指示することができる。
19 乙は、この契約により乙が負う個人情報の取扱いに関する義務に違反し、又は怠ったことにより甲が損害を被った場合、甲にその損害を賠償しなければならない。
(業務計画書の提出)
第3条 乙は、この契約締結後14日以内に設計図書に基づいて業務計画書を作成し、甲に提出しなければならない。ただし、甲が別に指示したときは、この限りでない。
2 この約款の他の条項の規定により履行期間又は設計図書が変更された場合において、甲は、必要があると認めるときは、乙に対して業務計画書の再提出を請求することができる。この場合において、前項中「この契約締結後」とあるのは「当該請求があった日から」と読み替えて、同項の規定を準用する。
3 業務計画書は、甲及び乙を拘束するものではない。
(契約の保証)
第4条 乙は、この契約の締結と同時に、次の各号のいずれかに掲げる保証を付さなければならない。ただし、第5号の場合においては、履行保証保険契約の締結後、直ちにその保険証券を甲に寄託しなければならない。なお、契約書の契約保証金欄に「免除」と記載されているときは、本条は適用しない。
⑴ 契約保証金の納付
⑵ 契約保証金に代わる担保となる有価証券等の提供
⑶ この契約による債務の不履行により生じる損害金の支払を保証する銀行、甲が確実と認める金融機関又は保証事業会社(公共工事の前払金保証事業に関する法律(昭和27年法律第184号)第2条第4項に規定する保証事業会社をいう。)の保証
⑷ この契約による債務の履行を保証する公共工事履行保証証券による保証
⑸ この契約による債務の不履行により生じる損害をてん補する履行保証保険契約の締結
2 前項の保証に係る契約保証金の額、保証金額又は保険金額(第5項において「保証の額」という。)は、業務委託料(単価契約の場合にあっては、業務委託料に予定数量を乗じた金額(第46条第4項第1号において「予定契約総額」という。)とする。)の10分の1以上としなければならない。
3 乙が第1項第3号から第5号までのいずれかに掲げる保証を付す場合は、当該保証は第46条第3項各号に規定する者による契約の解除の場合についても保証するものでなければならない。
4 第1項の規定により、乙が同項第2号又は第3号に掲げる保証を付したときは、当該保証は契約保証金に代わる担保の提供として行われたものとし、同項第4号又は第5号に掲げる保証を付したときは、契約保証金の納付を免除する。
5 業務委託料の変更があった場合には、保証の額が変更後の業務委託料(単価契約の場合にあっては、業務委託料の単価に予定数量を乗じた金額)の10分の1に達するまで、甲は、保証の額の増額を請求することができ、乙は、保証の額の減額を請求することができる。
(権利義務の譲渡等)
第5条 乙は、この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させてはならない。ただし、あらかじめ、甲の承諾を得た場合は、この限りでない。
2 乙は、成果物(未完成の成果物及び業務を行う上で得られた記録等を含む。)を第三者に譲渡し、貸与し、又は質権その他の担保の目的に供してはならない。ただし、あらかじめ、甲の承諾を得た場合は、この限りでない。
(著作権の譲渡等)
第6条 乙は、成果物(第31条第1項に規定する指定部分に係る成果物及び同条第2項に規定する引渡部分に係る成果物を含む。以下本条において同じ。)が著作権法(昭和45年法律第48号)第2条第1項第1号に規定する著作物(以下本条において「著作物」という。)に該当する場合には、当該著作物に係る乙の著作権(著作権法第21条から第28条までに規定する権利をいう。)を当該著作物の引渡し時に甲に無償で譲渡するものとする。
2 甲は、成果物が著作物に該当するとしないとにかかわらず、当該成果物の内容を乙の承諾なく自由に公表することができる。
3 甲は、成果物が著作物に該当する場合には、乙が承諾したときに限り、既に乙が当該著作物に表示した氏名を変更することができる。
4 乙は、成果物が著作物に該当する場合において、甲が当該著作物の利用目的の実現のためにその内容を改変するときは、その改変に同意する。
また、甲は、成果物が著作物に該当しない場合には、当該成果物の内容を乙の承諾なく自由に改変することができる。
5 乙は、成果物(業務を行う上で得られた記録等を含む。)が著作物に該当するとしないとにかかわらず、甲が承諾した場合には、当該成果物を使用又は複製し、また、第1条第5項の規定にかかわらず当該成果物の内容を公表することができる。
6 甲は、乙が成果物の作成に当たって開発したプログラム(著作権法第10条第1項第9号に規定するプログラムの著作物をいう。)及びデータベース(著作権法第12条の2に規定するデータベースの著作物をいう。)について、乙が承諾した場合には、別に定めるところにより、当該プログラム及びデータベースを利用することができる。
(一括再委託等の禁止)
第7条 乙は、業務の全部を一括して、又は甲が設計図書において指定した主たる部分を第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。
2 乙は、前項の主たる部分のほか、甲が設計図書において指定した部分を第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。
3 乙は、業務の一部を第三者に委任し、又は請け負わせようとするときは、あらかじめ、甲の承諾を得なければならない。ただし、甲が設計図書において指定した軽微な部分を委任し、又は請け負わせようとするときは、この限りでない。
4 甲は、乙に対して、業務の一部を委任し、又は請け負わせた者の商号又は名称その他必要な事項の通知を請求することができる。
(特許権等の使用)
第8条 乙は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権その他日本国の法令に基づき保護される第三者の権利(以下本条において「特許権等」という。)の対象となっている履行方法を使用するときは、その使用に関する一切の責任を負わなければならない。ただし、甲がその履行方法を指定した場合において、設計図書に特許権等の対象である旨の明示がなく、かつ、乙がその存在を知らなかったときは、甲は、乙がその使用に関して要した費用を負担しなければならない。
(監督)
第9条 甲は、必要があるときは立会い、指示その他の方法により、乙の履行状況を監督することができる。
(業務担当責任者等に対する措置請求)
第10条 甲は、業務担当責任者又は乙の使用人若しくは第7条の規定により乙から業務を委任され、若しくは請け負った者がその業務の実施につき著しく不適当と認められるときは、乙に対して、その理由を明示した書面により、必要な措置をとるべきことを請求することができる。
2 乙は、前項の規定による請求があったときは、当該請求に係る事項について決定し、その結果を請求を受けた日から10日以内に甲に通知しなければならない。
(履行報告)
第11条 乙は、設計図書に定めるところにより、この契約の履行について甲に報告しなければならない。
(貸与品等)
第12条 甲が乙に貸与し、又は支給する調査機械器具、図面その他業務に必要な物品等(以下「貸与品等」という。)の品名、数量、品質、規格又は性能、引渡場所及び引渡時期は、設計図書に定めるところによる。
2 乙は、貸与品等の引渡しを受けたときは、引渡しの日から7日以内に、甲に受領書又は借用書を提出しなければならない。
3 乙は、貸与品等を善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。
4 乙は、設計図書に定めるところにより、業務の完了、設計図書の変更等によって不用となった貸与品等を甲に返還しなければならない。
5 乙は、故意又は過失により貸与品等が滅失若しくはき損し、又はその返還が不可能となったときは、甲の指定した期間内に代品を納め、若しくは原状に復して返還し、又は返還に代えて損害を賠償しなければならない。
(設計図書と業務内容が一致しない場合の修補義務)
第13条 乙は、業務の内容が設計図書又は甲の指示若しくは甲乙協議の内容に適合しない場合には、これらに適合するよう必要な修補を行わなければならない。この場合において、当該不適合が甲の責めに帰すべき事由によるときは、甲は、必要があると認められるときは、履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(条件変更等)
第14条 乙は、業務を行うに当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに甲に通知し、その確認を請求しなければならない。
⑴ 設計書、図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと(これらの優先順位が定められている場合を除く。)。
⑵ 設計図書に誤謬又は脱漏があること。
⑶ 設計図書の表示が明確でないこと。
⑷ 履行上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な履行条件が実際と相違すること。
⑸ 設計図書に明示されていない履行条件について予期することのできない特別の状態が生じたこと。
2 甲は、前項の規定による確認を請求されたとき又は自ら同項各号に掲げる事実を発見したときは、乙の立会いの上、直ちに調査を行わなければならない。ただし、乙が立会いに応じない場合には、乙の立会いを得ずに行うことができる。
3 甲は、乙の意見を聴いて、調査の結果(これに対してとるべき措置を指示する必要があるときは、当該指示を含む。)をとりまとめ、調査の終了後14日以内に、その結果を乙に通知しなければならない。ただし、その期間内に通知できないやむを得ない理由があるときは、あらかじめ、乙の意見を聴いた上、当該期間を延長することができる。
4 前項の調査の結果により第1項各号に掲げる事実が確認された場合において、必要があると認められるときは、甲は、設計図書の訂正又は変更を行わなければならない。
5 前項の規定により設計図書の訂正又は変更が行われた場合において、甲は、必要があると認められるときは、履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(設計図書等の変更)
第15条 甲は、前条第4項の規定によるほか、必要があると認めるときは、設計図書又は業務に関する指示(以下本条及び第17条において「設計図書等」という。)の変更内容を乙に通知して、設計図書等を変更することができる。この場合において、甲は、必要があると認められるときは、履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(業務の中止)
第16条 甲は、必要があると認めるときは、業務の中止内容を乙に通知して、業務の全部又は一部を一時中止させることができる。
2 甲は、前項の規定により業務を一時中止した場合において、必要があると認められるときは、履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は乙が業務の続行に備え業務の一時中止に伴う増加費用を必要としたとき若しくは乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(業務に係る乙の提案)
第17条 乙は、設計図書等について、技術的又は経済的に優れた代替方法その他改良事項を発見し、又は発案したときは、甲に対して、当該発見又は発案に基づき設計図書等の変更を提案することができる。
2 甲は、前項に規定する乙の提案を受けた場合において、必要があると認めるときは、設計図書等の変更を乙に通知するものとする。
3 甲は、前項の規定により設計図書等が変更された場合において、必要があると認められるときは、履行期間又は業務委託料を変更しなければならない。
(適正な履行期間の設定)
第18条 甲は、履行期間の延長又は短縮を行うときは、この業務に従事する者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう、やむを得ない事由により業務の実施が困難であると見込まれる日数等を考慮しなければならない。
(乙の請求による履行期間の延長)
第19条 乙は、その責めに帰すことができない事由により履行期間内に業務を完了することができないときは、その理由を明示した書面により甲に履行期間の延長変更を請求することができる。
2 甲は、前項の規定による請求があった場合において、必要があると認められるときは、履行期間を延長しなければならない。甲は、その履行期間の延長が甲の責めに帰すべき事由による場合においては、業務委託料について必要と認められる変更を行い、又は乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(甲の請求による履行期間の短縮等)
第20条 甲は、特別の理由により履行期間を短縮する必要があるときは、履行期間の短縮変更を乙に請求することができる。
2 甲は、前項の場合において、必要があると認められるときは、業務委託料を変更し、又は乙に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(履行期間の変更方法)
第21条 履行期間の変更については、甲乙協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合には、甲が定め、乙に通知する。
2 前項の協議開始の日については、甲が乙の意見を聴いて定め、乙に通知するものとする。ただし、甲が履行期間の変更事由が生じた日(第19条の場合にあっては、甲が履行期間の変更の請求を受けた日、前条の場合にあっては、乙が履行期間の変更の請求を受けた日)から7日以内に協議開始の日を通知しない場合には、乙は、協議開始の日を定め、甲に通知することができる。
(業務委託料の変更方法等)
第22条 業務委託料の変更については、甲乙協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合には、甲が定め、乙に通知する。
2 前項の協議開始の日については、甲が乙の意見を聴いて定め、乙に通知するものとする。ただし、甲が業務委託料の変更事由が生じた日から7日以内に協議開始の日を通知しない場合には、乙は、協議開始の日を定め、甲に通知することができる。
3 この約款の規定により、乙が増加費用を必要とした場合又は損害を受けた場合に甲が負担する必要な費用の額については、甲乙協議して定める。
(臨機の措置)
第23条 乙は、災害防止等のため必要があると認めるときは、臨機の措置をとらなければならない。この場合において、必要があると認めるときは、乙は、あらかじめ、甲の意見を聴かなければならない。ただし、緊急やむを得ない事情があるときは、この限りでない。
2 前項の場合において、乙は、そのとった措置の内容を甲に直ちに通知しなければならない。
3 甲は、災害防止その他業務を行う上で特に必要があると認めるときは、乙に対して臨機の措置をとることを請求することができる。
4 乙が第1項又は前項の規定により臨機の措置をとった場合において、当該措置に要した費用のうち、乙が業務委託料の範囲において負担することが適当でないと認められる部分については、甲がこれを負担する。
(一般的損害)
第24条 成果物の引渡し前に、成果物に生じた損害その他業務を行うにつき生じた損害(次条第1項、第2項若しくは第3項又は第26条第1項に規定する損害を除く。)については、乙がその費用を負担する。ただし、その損害(設計図書に定めるところにより付された保険によりてん補された部分を除く。)のうち甲の責めに帰すべき事由により生じたものについては、甲が負担する。
(第三者に及ぼした損害)
第25条 業務を行うにつき第三者に及ぼした損害(第3項に規定する損害を除く。)について、当該第三者に対して損害の賠償を行わなければならないときは、乙がその賠償額を負担する。
2 前項の規定にかかわらず、同項に規定する賠償額(設計図書に定めるところにより付された保険によりてん補された部分を除く。)のうち、甲の指示、貸与品等の性状その他甲の責めに帰すべき事由により生じたものについては、甲がその賠償額を負担する。ただし、乙が、甲の指示又は貸与品等が不適当であること等甲の責めに帰すべき事由があることを知りながらこれを通知しなかったときは、この限りでない。
3 業務を行うにつき通常避けることができない騒音、振動、地下水の断絶等の理由により第三者に及ぼした損害(設計図書に定めるところにより付された保険によりてん補された部分を除く。)について、当該第三者に損害の賠償を行わなければならないときは、甲がその賠償額を負担しなければならない。ただし、業務を行うにつき乙が善良な管理者の注意義務を怠ったことにより生じたものについては、乙が負担する。
4 前3項の場合その他業務を行うにつき第三者との間に紛争を生じた場合においては、甲乙協力してその処理解決に当たるものとする。
(不可抗力による損害)
第26条 天災等(設計図書で基準を定めたものにあっては、当該基準を超えるものに限る。)の不可抗力により、重大な損害を受け、業務の履行が不可能となったときは、乙は、その事実の発生後直ちにその状況を甲に通知しなければならない。
2 甲は、前項の規定による通知を受けたときは、直ちに調査を行い、同項の損害(乙が善良な管理者の注意義務を怠ったことに基づくもの及び設計図書に定めるところにより付された保険によりてん補された部分を除く。次項において「損害」という。)の状況を確認し、その結果を乙に通知しなければならない。
3 乙は、前項の規定により損害の状況が確認されたときは、損害による費用の負担を甲に請求することができる。ただし、損害の額については甲乙協議して定める。
(業務委託料の変更に代える設計図書の変更)
第27条 甲は、第8条、第13条から第17条まで、第19条、第20条、第23条、第24条、前条、第30条又は第32条の規定により業務委託料を増額すべき場合又は費用を負担すべき場合において、特別の理由があるときは、業務委託料の増額又は負担額の全部又は一部に代えて設計図書を変更することができる。この場合において、設計図書の変更内容は、甲乙協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合には、甲が定め、乙に通知する。
2 前項の協議開始の日については、甲が乙の意見を聴いて定め、乙に通知しなければならない。ただし、甲が同項の業務委託料を増額すべき事由又は費用を負担すべき事由が生じた日から7日以内に協議開始の日を通知しない場合には、乙は、協議開始の日を定め、甲に通知することができる。
(検査及び引渡し)
第28条 乙は、業務を完了したときは、その旨及び成果物の引渡しを甲に通知するとともに、成果物を納入しなければならない。
2 甲は、前項の規定による通知を受けたときは、通知を受けた日から10日以内に乙の立会いの上、業務の完了を確認するための検査を完了しなければならない。この場合甲は、当該検査の結果を乙に通知しなければならない。
3 甲は、前項の検査によって業務の完了を確認した日をもって成果物の引渡しを受けなければならない。
4 乙は、業務が第2項の検査に合格しないときは、直ちに修補して甲の検査を受けなければならない。この場合においては、修補の完了を業務の完了とみなして前3項の規定を読み替えて準用する。
(業務委託料の支払)
第29条 乙は、前条第2項の検査に合格したときは、業務委託料の支払を請求することができる。
2 甲は、前項の規定による請求があったときは、適法な請求書を受理した日から30日以内に業務委託料を支払わなければならない。
(引渡し前における成果物の使用)
第30条 甲は、第28条第3項又は次条第1項若しくは第2項の規定による引渡し前においても、成果物の全部又は一部を乙の承諾を得て使用することができる。
2 前項の場合においては、甲は、その使用部分を善良な管理者の注意をもって使用しなければならない。
3 甲は、第1項の規定により成果物の全部又は一部を使用したことによって乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(部分引渡し)
第31条 成果物について、甲が設計図書において業務の完了に先だって引渡しを受けるべきことを指定した部分(以下「指定部分」という。)がある場合において、当該指定部分の業務が完了したときについては、第28条中「業務」とあるのは「指定部分に係る業務」と、「成果物」とあるのは「指定部分に係る成果物」と、第29条中「業務委託料」とあるのは「部分引渡しに係る業務委託料」と読み替えて、これらの規定を準用する。
2 前項に規定する場合のほか、成果物の一部分が完了し、かつ、可分なものであるときは、甲は、当該部分について、乙の承諾を得て引渡しを受けることができる。この場合において、第28条中「業務」とあるのは、「引渡部分に係る業務」と、「成果物」とあるのは「引渡部分に係る成果物」と、第29条中「業務委託料」とあるのは「部分引渡しに係る業務委託料」と読み替えて、これらの規定を準用する。
3 前2項の規定により準用される第29条第1項の規定により乙が請求することができる部分引渡しに係る業務委託料は、甲が定め、乙に通知する。
(部分引渡しに係る業務委託料の不払に対する業務中止)
第32条 乙は、甲が前条において読み替えて準用される第29条の規定に基づく支払を遅延し、相当の期間を定めてその支払を請求したにもかかわらず支払をしないときは、業務の全部又は一部を一時中止することができる。この場合においては、乙は、その理由を明示した書面により、直ちにその旨を甲に通知しなければならない。
2 甲は、前項の規定により乙が業務を一時中止した場合において、必要があると認められるときは履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は乙が増加費用を必要とし、若しくは乙に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
(契約不適合責任)
第33条 甲は、引き渡された成果物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」という。)であるときは、乙に対し、成果物の修補、又は代替物の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
2 前項の場合において、乙は、甲に不相当な負担を課するものでないときは、甲が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
3 第1項の場合において、甲が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、甲は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
⑴ 履行の追完が不能であるとき。
⑵ 乙が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
⑶ 成果物の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、乙が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
⑷ 前3号に掲げる場合のほか、甲が本項の規定による催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
(履行遅滞の場合における申出)
第34条 乙は、乙の責めに帰すべき事由により履行期間内に業務を完了することができないときは、遅滞なく理由を甲に申し出なければならない。
(甲の任意解除権)
第35条 甲は、業務が完了するまでの間は、次条から第39条までの規定によるほか、必要があるときは、この契約を解除することができる。
2 甲は、前項の規定によりこの契約を解除した場合において、乙に損害を及ぼしたときは、その損害を賠償しなければならない。
(甲の催告による解除権)
第36条 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当するときは相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、この契約を解除することができるものとし、このため乙に損害が生じても、甲はその責めを負わないものとする。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がこの契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この契約を解除することができない。
⑴ 正当な理由なく、業務に着手すべき期日を過ぎても業務に着手しないとき。
⑵ 履行期間内に完了しないとき又は履行期間経過後相当の期間内に業務が完了する見込みがないと認められるとき。
⑶ 正当な理由なく、第33条第1項の履行の追完がなされないとき。
⑷ 第4条第1項の規定により保証を付さなければならない場合において、保証を付さなかったとき。
⑸ 契約の履行につき不正行為があったとき。
⑹ 甲又はその補助者が行う監督又は検査に際し、その職務執行を妨げたとき。
⑺ 前各号に掲げる場合のほか、この契約に違反したとき。
(甲の催告によらない解除権)
第37条 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当するときは、直ちにこの契約を解除することができるものとし、このため乙に損害が生じても、甲はその責めを負わないものとする。
⑴ 第5条第1項の規定に違反して業務委託料債権を譲渡したとき。
⑵ 履行期間内に業務を完了させることができないことが明らかであるとき。
⑶ 乙がこの業務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
⑷ 乙の債務の一部の履行が不能である場合又は乙がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達成することができないとき。
⑸ 契約の目的物の性質や当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、乙が履行をしないでその時期を経過したとき。
⑹ 前各号に掲げる場合のほか、乙がその債務の履行をせず、甲が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
⑺ 第41条又は第42条の規定によらないでこの契約の解除を申し出たとき。
(暴力団等排除に係る解除)
第38条 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当するとき(乙が共同企業体であるときは、その構成員のいずれかの者が該当する場合を含む。)は、直ちにこの契約を解除することができるものとし、このため乙に損害が生じても、甲はその責めを負わないものとする。
⑴ 法人等(法人又は団体若しくは個人をいう。以下同じ。)の役員等(法人にあっては非常勤を含む役員及び支配人並びに営業所の代表者、その他の団体にあっては法人の役員等と同様の責任を有する代表者及び理事等、個人にあってはその者及び支店又は営業所を代表する者をい
う。以下同じ。)に暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号。以下「暴対法」という。)第2条第6号に規定する暴力団員(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員ではないが暴対法第2条第2号に規定する暴力団(以下「暴力団」という。)と関係を持ちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為等を行う者(以下「暴力団関係者」という。)がいると認められるとき。
⑵ 暴力団員又は暴力団関係者(以下「暴力団員等」という。)がその法人等の経営又は運営に実質的に関与していると認められるとき。
⑶ 法人等の役員等又は使用人が、暴力団の威力若しくは暴力団員等又は暴力団員等が経営若しくは運営に実質的に関与している法人等を利用するなどしていると認められるとき。
⑷ 法人等の役員等又は使用人が、暴力団若しくは暴力団員等又は暴力団員等が経営若しくは運営に実質的に関与している法人等に対して資金等を供給し、又は便宜を供与するなど暴力団の維持運営に協力し、又は関与していると認められるとき。
⑸ 法人等の役員等又は使用人が、暴力団又は暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有していると認められるとき。
⑹ 再委託契約その他の契約に当たり、その相手方が前各号のいずれかに該当することを知りながら、当該者と契約を締結したと認められるとき。
⑺ 乙が、第1号から第5号までのいずれかに該当する者を再委託契約その他の契約の相手方としていた場合(前号に該当する場合を除く。)に、甲が乙に対して当該契約の解除を求め、乙がこれに従わなかったとき。
⑻ 暴力団又は暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる者に業務委託料債権を譲渡したとき。
⑼ 前3号のほか、法人等の役員等又は使用人が、第1号から第5号のいずれかに該当する法人等であることを知りながら、これを利用するなどしていると認められるとき。
(談合その他不正行為に係る解除)
第39条 甲は、乙がこの契約に関して、次の各号のいずれかに該当したときは、直ちにこの契約を解除することができるものとし、このため乙に損害が生じても、甲はその責めを負わないものとする。
⑴ 乙が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第3条の規定に違反し、又は乙が構成事業者である事業者団体が独占禁止法第8条第1号の規定に違反したことにより、公正取引委員会が乙に対し、独占禁止法第7条の2第1項(独占禁止法第8条の3において準用する場合を含む。)の規定に基づく課徴金の納付命令(以下「納付命令」という。)を行い、当該納付命令が確定したとき(確定した当該納付命令が独占禁止法第63条第2項の規定により取り消された場合を含む。以下本条において同じ。)。
⑵ 納付命令又は独占禁止法第7条若しくは第8条の2の規定に基づく排除措置命令(これらの命令が乙又は乙が構成事業者である事業者団体(以下「乙等」という。)に対して行われたときは、乙等に対する命令で確定したものをいい、乙等に対して行われていないときは、各名宛人に対する命令すべてが確定した場合における当該命令をいう。次号において同じ。)において、この契約に関し、独占禁止法第3条又は第8条第1号の規定に違反する行為の実行としての事業活動があったとされたとき。
⑶ 前号に規定する納付命令又は排除措置命令により、乙等に独占禁止法第3条又は第8条第1号の規定に違反する行為があったとされた期間及び当該違反する行為の対象となった取引分野が示された場合において、この契約が、当該期間(これらの命令に係る事件について、公正取引委員会が乙に対し納付命令を行い、これが確定したときは、当該納付命令における課徴金の計算の基礎である当該違反する行為の実行期間を除く。)に入札(見積書の提出を含む。)が行われたものであり、かつ、当該取引分野に該当するものであるとき。
⑷ 乙(法人にあっては、その役員又は使用人を含む。次号において同じ。)の刑法(明治40年法律第45号)第96条の6又は独占禁止法第89条第1項若しくは第95条第1項第1号に規定する刑が確定したとき。
⑸ 乙の刑法第198条の規定による刑が確定したとき。
2 乙が共同企業体である場合における前項の規定については、その構成員のいずれかの者が同項各号のいずれかに該当した場合に適用する。
(甲の責めに帰すべき事由による場合の解除の制限)
第40条 第36条各号、第37条各号又は第38条各号に定める場合が甲の責めに帰すべき事由によるものであるときは、甲は、第36条から第38条までの規定による契約の解除をすることができない。
(乙の催告による解除権)
第41条 乙は、甲がこの契約に違反したときは、相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、この契約を解除することができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がこの契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
(乙の催告によらない解除権)
第42条 乙は、次の各号のいずれかに該当するときは、この契約を解除することができる。
⑴ 第15条の規定により設計図書を変更したため業務委託料が3分の2以上減少したとき。
⑵ 第16条の規定による業務の中止期間が履行期間の10分の5(履行期間の10分の5が6か月を超えるときは、6か月)を超えたとき。ただし、中止が業務の一部のみの場合は、その一部を除いた他の部分の業務が完了した後3か月を経過しても、なおその中止が解除されないとき。
(乙の責めに帰すべき事由による場合の解除の制限)
第43条 第41条又は前条各号に定める場合が乙の責めに帰すべき事由によるものであるときは、乙は、前2条の規定による契約の解除をすることができない。
(解除の効果)
第44条 この契約が解除された場合には、第1条第2項に規定する甲及び乙の義務は消滅する。ただし、第31条に規定する部分引渡しに係る部分については、この限りでない。
2 甲は、前項の規定にかかわらず、この契約が業務の完了前に解除された場合において、乙が既に業務を完了した部分(第31条の規定により部分引渡しを受けている場合には、当該引渡部分を除くものとし、以下「既履行部分」という。)の引渡しを受ける必要があると認めたときは、既履行部分を検査の上、当該検査に合格した部分の引渡しを受けることができる。この場合において、甲は、当該引渡しを受けた既履行部分に相応する業務委託料(以下本条において「既履行部分委託料」という。)を乙に支払わなければならない。
3 前項に規定する既履行部分委託料は、甲が定め、乙に通知する。
(解除に伴う措置)
第45条 乙は、この契約が業務の完了前に解除された場合において、貸与品等があるときは、当該貸与品等を甲に返還しなければならない。この場合において、当該貸与品等が乙の故意または過失により滅失又はき損したときは、代品を納め、若しくは原状に復して返還し、又は返還に
代えてその損害を賠償しなければならない。
2 前項前段に規定する乙のとるべき措置の期限、方法等については、この契約の解除が第36条から第39条まで又は次条第3項の規定によるときは甲が定め、第35条、第41条又は第42条によるときは乙が甲の意見を聴いて定めるものとし、第1項後段及び第2項に規定する乙のとるべき措置の期限、方法等については、甲が乙の意見を聴いて定めるものとする。
3 業務の完了後にこの契約が解除された場合は、解除に伴い生じる事項の処理については甲及び乙が民法の規定に従って協議して決める。
(甲の損害賠償請求等)
第46条 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当する場合は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
⑴ 履行期限内に業務を完了することができないとき。
⑵ この契約の成果物に契約不適合があるとき。
⑶ 第36条から第38条までの規定により成果物の引渡し後にこの契約が解除されたとき。
⑷ 前3号に掲げる場合のほか、債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるとき。
2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の損害賠償に代えて、乙は、業務委託料の10分の1に相当する額を違約金として甲の指定する期間内に支払わなければならない。
⑴ 第36条から第38条までの規定により成果物の引渡し前にこの契約が解除されたとき。
⑵ 成果物の引渡し前に、乙がその債務の履行を拒否し、又は乙の責めに帰すべき事由によって乙の債務について履行不能となったとき。
3 次の各号に掲げる者がこの契約を解除した場合は、前項第2号に該当する場合とみなす。
⑴ 乙について破産手続開始の決定があった場合において、破産法(平成16年法律第75号)の規定により選任された破産管財人
⑵ 乙について更生手続開始の決定があった場合において、会社更生法(平成14年法律第154号)の規定により選任された管財人
⑶ 乙について再生手続開始の決定があった場合において、民事再生法(平成11年法律第225号)の規定により選任された再生債務者等4 第2項における業務委託料は、次の各号に掲げる契約の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。
⑴ 単価契約 予定契約総額。ただし、既履行部分について検査に合格した部分がある場合は、予定契約総額から当該部分に相応する額を控除した金額
⑵ 長期継続契約 契約を解除した日の属する年度の金額
⑶ その他の委託契約 業務委託料
5 第1項各号又は第2項各号に定める場合(前項の規定により第2項第2号に該当する場合とみなされる場合を除く。)がこの契約及び取引上の社会通念に照らして乙の責めに帰することができない事由によるものであるときは、第1項及び第2項の規定は適用しない。
6 第1項第1号に該当し、甲が損害金を請求する場合の請求額は、業務委託料から既履行部分に相応する業務委託料を控除した額(1,000円未満の端数金額及び1,000円未満の金額は切り捨てる。)につき、遅延日数に応じ、年14.5パーセントの割合で計算した額とする。
7 前項の損害金に100円未満の端数があるとき、又は損害金が100円未満であるときは、その端数金額又はその損害金は徴収しないものとする。
8 第2項の場合(第38条の規定により、この契約が解除された場合を除く。)において、第4条の規定により契約保証金の納付又はこれに代わる担保の提供が行われているときは、甲は、当該契約保証金の納付又は担保をもって同項の違約金に充当することができる。
9 第1項から、第3項まで又は第6項の場合において、乙が共同企業体であるときは、各構成員は、損害金等を連帯して甲に支払わなければならない。乙が既に共同企業体を解散しているときは、構成員であった者についても、同様とする。
(談合その他不正行為に係る賠償金の支払)
第47条 乙は、第39条第1項各号のいずれかに該当するときは、甲がこの契約を解除するか否かにかかわらず、賠償金として、業務委託料の10分の2に相当する額を甲が指定する期限までに支払わなければならない。乙がこの契約を履行した後も同様とする。
2 乙は、次の各号のいずれかに該当したときは、前項の規定に関わらず、業務委託料の10分の 3に相当する額を支払わなければならない。
⑴ 第39条第1項第1号に規定する確定した納付命令における課徴金について、独占禁止法第7条の3の規定の適用があるとき。
⑵ 第39条第1項第4号に規定する刑に係る確定判決において、乙が違反行為の首謀者であることが明らかになったとき。
⑶ 第39条第1項各号のいずれかに該当する場合において、乙が甲に独占禁止法等に抵触する行為を行っていない旨の誓約書を提出しているとき。
3 前2項の規定に関わらず、甲は、甲に生じた実際の損害額が同項に規定する賠償金の額を超える場合においては、乙に対しその超過分につき賠償を請求することができる。
4 前各項の場合において、乙が共同企業体であるときは、各構成員は、賠償金を連帯して甲に支払わなければならない。乙が既に共同企業体を解散しているときは、構成員であった者についても、同様とする。
(乙の損害賠償請求等)
第48条 乙は、甲が次の各号のいずれかに該当する場合はこれによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、当該各号に定める場合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして甲の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
⑴ 第41条又は第42条の規定によりこの契約が解除されたとき。
⑵ 前号に掲げる場合のほか、債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるとき。
2 第29条第2項(第31条において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による業務委託料の支払が遅れた場合においては、乙は、未受領金額につき、遅延日数に応じ、政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和24年法律第256号)第8条第1項の規定に基づき財務大臣が決定する率を乗じて計算した額の遅延利息の支払を甲に請求することができる。
(契約不適合責任期間等)
第49条 乙が種類又は品質において契約の内容に適合しない成果物を甲に引き渡した場合において、甲がその不適合を知った時から1年以内にその旨を乙に通知しないときは、甲は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求又は契約の解除(以
下本条において「請求等」という。)をすることができない。ただし、乙が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、甲の権利の行使ができる期間について設計書等で別段の定めをした場合は、その設計書等の定めるところによる。
3 前項の請求等は、具体的な契約不適合の内容、請求する損害額の算定の根拠等、当該請求等の根拠を示して、乙の契約不適合責任を問う意思を明確に告げることで行う。
4 甲が第1項又は第2項に規定する契約不適合に係る請求等が可能な期間(以下本項において「契約不適合責任期間」という。)の内に契約不適合を知り、その旨を乙に通知した場合において、甲が通知から1年が経過する日までに前項に規定する方法による請求等をしたときは、契約
不適合責任期間の内に請求等をしたものとみなす。
5 甲は、第1項又は第2項の請求等を行ったときは、当該請求等の根拠となる契約不適合に関し、民法の消滅時効の範囲で、当該請求等以外に必要と認められる請求等をすることができる。
6 前各項の規定は、契約不適合が乙の故意又は重過失により生じたものであるときには適用せず、契約不適合に関する乙の責任については、民法の定めるところによる。
7 甲は、成果物の引渡し(第31条第1項又は第2項の規定による部分引渡しを含む。次項において同じ。)の際に契約不適合があることを知ったときは、第1項の規定にかかわらず、その旨を直ちに乙に通知しなければ、当該契約不適合に関する請求等をすることはできない。ただし、乙がその契約不適合があることを知っていたときは、この限りでない。
8 引き渡された成果物の契約不適合が設計図書の記載内容、甲の指示又は貸与品等の性状により生じたものであるときは、甲は契約不適合を理由として、請求等をすることができない。ただし、乙がその記載内容、指示又は貸与品等が不適当であることを知りながらこれを通知しなかったときは、この限りでない。
(保険)
第50条 乙は、設計図書に基づき火災保険その他の保険を付したとき又は任意に保険を付しているときは、当該保険に係る証券又はこれに代わるものを直ちに甲に提示しなければならない。
(妨害等に対する報告義務等)
第51条 乙は、この契約の履行に当たって、妨害(不法な行為等で、業務履行の障害となるものをいう。)又は不当要求(金銭の給付等一定の行為を請求する権利若しくは正当な利益がないにもかかわらずこれを要求し、又はその要求の方法、態様若しくは程度が社会的に正当なものと認められないものをいう。)(以下本条において「妨害等」という。)を受けた場合は、速やかに市に報告するとともに警察へ被害届を提出しなければならない。
2 乙が妨害等を受けたにもかかわらず、前項の市への報告又は被害届の提出を怠ったと認められる場合は、市の調達契約からの排除措置を講ずることがある。
(紛争の解決)
第52条 この約款の各条項において甲乙協議して定めるものにつき協議が整わなかったときに甲が定めたものに乙が不服がある場合その他この契約に関して甲乙間に紛争を生じたときは、甲及び乙は、協議の上調停人を選任し、当該調停人のあっせん又は調停によりその解決を図る。こ
の場合において、紛争の処理に要する費用については、甲乙協議して特別の定めをしたものを除き、甲乙それぞれが負担する。
2 前項の規定にかかわらず、甲又は乙は、必要があると認めるときは、同項に規定する手続前又は手続中であっても同項の甲乙間の紛争について民事訴訟法(平成8年法律第109号)に基づく訴えの提起又は民事調停法(昭和26年法律第222号)に基づく調停の申立てを行うこと
ができる。
(契約外の事項)
第53条 この約款に定めのない事項については、必要に応じて甲乙協議して定める。
日本最大の発電会社であるJERA(ジェラ) ― 2025年07月01日 21:56
【概要】
日本最大の発電会社であるJERA(ジェラ)は、エネルギー供給の多様化を目的として、米国の4社と年間最大550万トン、期間20年以上にわたる液化天然ガス(LNG)の購入契約および基本合意書を締結した。供給開始は2029年から2030年であり、取引総額は7兆円から9兆円に達する見込みである。
JERAは既に米国市場に参入しており、2023年にはルイジアナ州のVenture Global社と年間約100万トンの契約を、2025年5月にはテキサス州のNext Decade社と年間200万トンの契約を結んでいる。これにより、米国からのLNG輸入量は年間最大1000万トンに拡大する見通しであり、同社のLNG調達先に占める米国産LNGの割合は現在の10%から30%へと上昇する。
今回の契約は、仕向地制限のないFOB(Free on Board=本船渡し)契約であり、需給の変動に柔軟に対応可能であることから、日本のエネルギー安定供給の強化に資するものとされている。経済産業省も本契約を歓迎し、価格の安定や国家のエネルギー供給信頼性確保に重要な役割を果たすと評価している。
ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所日本研究センターのコンスタンチン・コルネーエフ上級研究員は、この契約が日本にとって有益であると述べている。すなわち、長期契約はエネルギー市場の変動からの保護を可能とし、価格変動リスクの回避、供給の安定性と信頼性の向上、そして生産プロセスとリソースの最適化に寄与する。
同氏は、今回の契約には2つの側面があると指摘する。第一に、2030年にサハリン2プロジェクトからのLNG供給契約が終了する見込みであるが、日露関係が停滞しており、更新の可能性は低い。JERAの新たな米国との契約は、そのリスクに対するヘッジと見なすことができる。これは、調達量が日本のロシアからの輸入量とほぼ同等であることに起因する。
第二に、脱炭素社会への移行過程における戦略的対応である。LNGは他の化石燃料と比較してCO₂排出量が少ないため、石炭の代替エネルギーとして活用可能であり、カーボンニュートラル達成への過渡的手段として有効である。
2025年2月、石破首相はトランプ米大統領との会談で、貿易不均衡の是正のために米国産LNGの調達を増やす意向を表明していた。しかし、JERAの津軽亮介常務執行役員は、本契約が政府間の要請によるものではなく、独自の経営判断に基づくものであると説明している。それにもかかわらず、日本国内のメディアでは、本契約が今後の米国との関税交渉において日本側の交渉材料となる可能性があると報じられている。
これに対し、コルネーエフ氏は、今回の取引が米国との関税交渉で決定的な役割を果たす可能性は低いとする。契約の準備は15ヶ月前から進められており、トランプ大統領が新関税の導入を示唆する以前から計画されていた。さらに、JERAは既に米国のLNG生産者と取引関係にあり、一定量のガス確保については事前に合意していた可能性が高い。加えて、JERAは余剰LNG在庫をスポット市場で再輸出する手段も有している。
また、米国がアラスカで進めているLNG生産プロジェクトについて、津軽氏は、今後米国側から詳細が示され次第、地理的優位性と資源埋蔵量を考慮しつつ検討する方針を示している。
天然ガスは今後15年間で最も需要の高い化石燃料になると予測されており、中でもLNGは最も高い成長率を示すセグメントとされる。現在、日本の電力生産に占めるLNGの割合は約3分の1であり、日本は中国に次ぐ世界第2位のLNG輸入国である。
【詳細】
JERAによる米国産LNGの大規模調達契約について
日本最大の発電事業者であるJERA(ジェラ)は、エネルギー供給の安定性および調達先の多様化を目的として、米国のLNG(液化天然ガス)生産企業4社との間で、年間最大550万トンのLNGを20年以上にわたって購入する契約および基本合意書(Heads of Agreement)を締結した。本契約に基づくLNGの供給は、2029年から2030年に開始される予定であり、契約総額は7兆円から9兆円規模に達する見込みである。
JERAはこれまでにも米国のLNG市場に進出してきた実績を有しており、たとえば、2023年にはルイジアナ州のVenture Global社と年間約100万トン、2025年にはテキサス州のNext Decade社と年間200万トンの調達契約を結んでいる。これらの契約に今回の新規契約が加わることで、JERAによる米国産LNGの調達量は年間最大1000万トンに達することになる。これは、同社の全体LNG調達量に占める米国産の比率が現在の10%から一挙に30%まで引き上げられることを意味する。
FOB契約と供給の柔軟性
JERAが今回締結した契約は、FOB(Free On Board=本船渡し)契約形態である。これは、LNGを供給する側が出荷港で貨物を買い手に引き渡した時点で所有権が移転し、以降の輸送責任およびコストは買い手側が負担する契約形態である。この契約形態は、仕向地制限(LNGの到着地を制限する規定)がないため、需要の変動に応じて柔軟に販売先を変更でき、電力需要の変動が大きい日本にとって極めて有利である。また、需要が低迷する時期には余剰分を他国に再輸出できる可能性もあるため、柔軟性と経済的合理性の両面から評価される契約形態である。
経済産業省の評価
経済産業省は、今回の契約が日本の消費者に対する安定的なエネルギー供給と価格の安定に寄与し、国家のエネルギー安全保障上も極めて重要であるとの見解を示している。これにより、日本は供給の信頼性を高め、国際的なエネルギー市場における地政学的リスクに対する耐性を強化することが可能になる。
地政学的背景と長期契約の意義
ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所日本研究センターの上級研究員であるコンスタンチン・コルネーエフ氏は、長期契約の持つ意義について以下のように分析している。
価格と供給の安定
まず、長期契約はエネルギー市場の価格変動から日本を保護する役割を担う。スポット市場(短期売買)では需給の不均衡によって価格が大きく変動するが、長期契約では一定価格または価格指標に連動する形で取引されるため、企業はコストを予測しやすく、長期的な生産計画や投資判断を安定的に行うことができる。また、供給が長期間にわたり保証されるため、エネルギー供給に依存する産業にとっては極めて重要な基盤となる。
サハリン2契約終了とロシアリスクの回避
同氏はまた、2024年以降のロシアとのエネルギー関係の不透明さにも言及している。日本は現在、サハリン2プロジェクトからのLNG供給を受けているが、その契約は2030年に期限を迎える。日露関係がウクライナ情勢などを背景として停滞している中、日本がこれらの契約を更新できないリスクが高まっている。ロシアが供給先を中国に転換する可能性も排除できない。JERAが米国から新たに調達するLNGの量が、ロシアからの輸入量とほぼ同等であることから、今回の契約はロシアリスクへの対抗策(リスクヘッジ)としての意味合いも持つ。
脱炭素社会への移行とLNGの役割
さらに、コルネーエフ氏は、LNGがカーボンニュートラル社会への「移行期エネルギー」として重要な位置づけにある点も指摘している。LNGは石炭に比べて燃焼時のCO₂排出量が少なく、石炭火力を段階的に縮小する中間エネルギーとして最適である。特に再生可能エネルギーの導入が増える中、その不安定性を補うためのバックアップ電源として、柔軟に稼働できるLNG火力発電の重要性は高まっている。
米国との関税交渉における位置づけ
2025年2月、石破首相は米国・トランプ大統領との首脳会談において、日米間の貿易不均衡是正に向けた一環として、米国産LNGの輸入拡大の用意があると発言している。この発言を受けて、一部メディアは今回のJERAの契約が、日本側の「関税交渉における切り札」となりうる可能性を指摘している。
しかしながら、JERAの津軽亮介常務執行役員は、本件契約が政府の要請によるものではなく、民間企業としての経済的合理性に基づく独自の判断で締結されたものであると説明している。これは、エネルギー政策における市場主導の原則に則る姿勢を示している。
一方、コルネーエフ氏は、この契約が米国との通商交渉において決定的な影響を及ぼす可能性は低いと見る。その理由として、契約の交渉と準備が15ヶ月前から進められており、トランプ大統領が特定国への新関税を示唆するよりも遥か以前から計画されていたことを挙げている。また、米国のLNG生産者にとっては販売先の確保が極めて重要であり、長期契約によって生産および投資のリスクを軽減する狙いもある。JERAはこうした米国のLNG供給体制の信頼性向上にも寄与しているといえる。
また、LNGが過剰に供給された場合でも、JERAはスポット市場で再輸出を行える能力を備えており、LNGターミナルや貯蔵インフラを活用した柔軟なオペレーションが可能である。
今後の展望
現在、米国はアラスカで新たなLNGプロジェクトの開発を計画している。JERAの津軽氏は、このプロジェクトについて米国側から詳細が提供され次第、地理的優位性およびガス埋蔵量の豊富さを考慮したうえで、参画の可能性を検討するとしている。
また、IEA(国際エネルギー機関)など複数の予測によれば、今後15年間で天然ガスは最も需要の高い化石燃料であり、その中でもLNGは最も高い成長率を示す分野である。日本はすでに中国に次ぐ世界第2位のLNG輸入国であり、国内電力生産の約3分の1をLNG火力が占めていることから、その需給の安定は国民生活や産業活動に直結する。
【要点】
JERAによる米国産LNG調達の概要
・JERAは米国のエネルギー企業4社とLNG(液化天然ガス)の長期購入契約および基本合意書を締結した。
・年間最大550万トン、契約期間20年以上、総額7〜9兆円規模に達する。
・供給開始は2029年から2030年に予定されている。
JERAの米国LNG市場での既存契約と今後の構成比
・JERAは既に米Venture Global社(ルイジアナ州)と年間100万トン、Next Decade社(テキサス州)と年間200万トンの契約を締結済みである。
・新契約を含めると、米国からの調達量は年間最大1000万トンに達する。
・JERAの全体LNG調達量に占める米国産の比率は、現在の10%から30%に上昇する見込みである。
契約形態(FOB)と柔軟性の確保
・今回の契約は「FOB(Free On Board=本船渡し)」方式である。
・仕向地制限がないため、JERAは需要に応じて他国への再輸出も可能である。
・電力需給の変動に対して柔軟に対応でき、エネルギー供給の安定性を高める。
経済産業省の評価
・日本政府はこの契約が消費者の需要と価格安定に寄与すると評価している。
・国家レベルでのエネルギー供給の信頼性確保にも資するとして歓迎している。
ロシア研究者・コルネーエフ氏の見解
・長期契約は価格変動リスクの軽減に寄与し、企業の生産・投資計画を安定させる。
・エネルギー供給の安定性と信頼性を高め、特に供給停止で重大な損失を被る産業にとって重要である。
・供給量が事前に確定していることで、生産プロセスと資源配分の最適化が可能となる。
地政学的リスク回避(サハリン2との関係)
・日本は現在、ロシア「サハリン2」プロジェクトからLNGを輸入しているが、契約は2030年に終了する予定である。
・日露関係の停滞により、契約更新の見通しは不透明であり、ロシアが供給先を中国へ切り替える懸念がある。
JERAの米国産LNG調達量は、サハリン2からの調達量とほぼ一致しており、実質的なリスクヘッジとなり得る。
脱炭素社会への移行とLNGの意義
・LNGは石炭よりCO₂排出量が少なく、移行期のクリーンな化石燃料として評価されている。
・再生可能エネルギーと併用する「過渡的エネルギー」として、脱炭素戦略上の位置づけが明確である。
関税交渉との関連性とJERAの立場
・石破首相は2025年2月、トランプ大統領との会談で、米国産LNG輸入の拡大意向を表明した。
・日本の一部メディアは本契約を「関税交渉の切り札」と見なしている。
・しかし、JERAの津軽常務執行役員は「政府の要請によるものではない」と明言している。
コルネーエフ氏による通商交渉への影響評価
・契約準備は15ヶ月前から始まっており、トランプ氏の関税発言よりも前の段階で進行していた。
・JERAは既に米国の複数LNG事業者と取引実績があり、開発予定量を把握していた可能性がある。
・契約により供給者は販売保証を得られ、JERA側は余剰在庫の再販売(再輸出)による市場対応が可能である。
今後の展望と市場の見通し
・JERAは米国アラスカ州での新規LNG生産プロジェクトについても、今後の情報次第で参画を検討する意向である。
・今後15年間で天然ガスは最も需要の高い化石燃料と予測され、特にLNGは最も成長率が高い分野とされている。
・現在、日本の電力の約3分の1はLNGに依存しており、日本は中国に次ぐ世界第2位のLNG輸入国である。
【桃源寸評】🌍
JERAの米国産LNGに関する新たな長期契約は、エネルギー安全保障、脱炭素戦略、地政学的リスクヘッジ、民間主導の経済合理性、そして将来の通商政策との関係に至るまで、多層的な意味合いを持つ国家的に重要な契約であると位置づけられる。
JERAとは何か?
・正式名称:JERA株式会社(JERA Co., Inc.)
・設立:2015年
・本社:東京都中央区
・出資企業:東京電力フュエル&パワー(TEPCO)と中部電力の出資比率50:50の合弁会社
主な特徴
・発電規模 日本国内最大の発電能力(総出力約6,000万kW超)
・燃料取引 日本最大のLNG調達企業(年間約3,000万トン)
・取扱燃料 LNG、石炭、石油、再生可能エネルギー
・海外展開 東南アジア、米国、中東などでも発電所運営や投資を展開
・輸送・インフラ LNGタンカー・受入基地・再気化設備など保有または運営
事業の役割
・LNGの調達から輸送、保管、発電までを一貫して行う「燃料・発電統合モデル」
・日本の大規模火力発電所の多くを運営。
・日本の電力安定供給の中核を担う企業であり、政府とも密接に連携。
・JERAの発電量は、日本全体の約3割をカバーする。
名前が知られていない理由
・一般家庭向けではない:電力小売ではなく「発電・卸売」が中心
・名前に「東京電力」や「中部電力」が含まれていない:関連企業であっても独自ブランドで活動
・メディア露出が少ない:広告やプロモーションを積極的に行っていない
語源:JERAの名前の由来
・JERA = Japan's Energy for a New Era
・「新しい時代の日本のエネルギー」を意味する造語。
総括
JERAは表に出にくい存在ではるが、日本の電力の中枢を担う極めて重要な企業です。特にLNG輸入・火力発電・脱炭素戦略の面で国家的な役割を果たしており、国際的にも影響力があるエネルギー企業である。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
【視点】日本が米国産LNGの輸入増へ 関税交渉の切り札となるか?sputnik 日本
https://x.com/i/web/status/1938330526328492332
日本最大の発電会社であるJERA(ジェラ)は、エネルギー供給の多様化を目的として、米国の4社と年間最大550万トン、期間20年以上にわたる液化天然ガス(LNG)の購入契約および基本合意書を締結した。供給開始は2029年から2030年であり、取引総額は7兆円から9兆円に達する見込みである。
JERAは既に米国市場に参入しており、2023年にはルイジアナ州のVenture Global社と年間約100万トンの契約を、2025年5月にはテキサス州のNext Decade社と年間200万トンの契約を結んでいる。これにより、米国からのLNG輸入量は年間最大1000万トンに拡大する見通しであり、同社のLNG調達先に占める米国産LNGの割合は現在の10%から30%へと上昇する。
今回の契約は、仕向地制限のないFOB(Free on Board=本船渡し)契約であり、需給の変動に柔軟に対応可能であることから、日本のエネルギー安定供給の強化に資するものとされている。経済産業省も本契約を歓迎し、価格の安定や国家のエネルギー供給信頼性確保に重要な役割を果たすと評価している。
ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所日本研究センターのコンスタンチン・コルネーエフ上級研究員は、この契約が日本にとって有益であると述べている。すなわち、長期契約はエネルギー市場の変動からの保護を可能とし、価格変動リスクの回避、供給の安定性と信頼性の向上、そして生産プロセスとリソースの最適化に寄与する。
同氏は、今回の契約には2つの側面があると指摘する。第一に、2030年にサハリン2プロジェクトからのLNG供給契約が終了する見込みであるが、日露関係が停滞しており、更新の可能性は低い。JERAの新たな米国との契約は、そのリスクに対するヘッジと見なすことができる。これは、調達量が日本のロシアからの輸入量とほぼ同等であることに起因する。
第二に、脱炭素社会への移行過程における戦略的対応である。LNGは他の化石燃料と比較してCO₂排出量が少ないため、石炭の代替エネルギーとして活用可能であり、カーボンニュートラル達成への過渡的手段として有効である。
2025年2月、石破首相はトランプ米大統領との会談で、貿易不均衡の是正のために米国産LNGの調達を増やす意向を表明していた。しかし、JERAの津軽亮介常務執行役員は、本契約が政府間の要請によるものではなく、独自の経営判断に基づくものであると説明している。それにもかかわらず、日本国内のメディアでは、本契約が今後の米国との関税交渉において日本側の交渉材料となる可能性があると報じられている。
これに対し、コルネーエフ氏は、今回の取引が米国との関税交渉で決定的な役割を果たす可能性は低いとする。契約の準備は15ヶ月前から進められており、トランプ大統領が新関税の導入を示唆する以前から計画されていた。さらに、JERAは既に米国のLNG生産者と取引関係にあり、一定量のガス確保については事前に合意していた可能性が高い。加えて、JERAは余剰LNG在庫をスポット市場で再輸出する手段も有している。
また、米国がアラスカで進めているLNG生産プロジェクトについて、津軽氏は、今後米国側から詳細が示され次第、地理的優位性と資源埋蔵量を考慮しつつ検討する方針を示している。
天然ガスは今後15年間で最も需要の高い化石燃料になると予測されており、中でもLNGは最も高い成長率を示すセグメントとされる。現在、日本の電力生産に占めるLNGの割合は約3分の1であり、日本は中国に次ぐ世界第2位のLNG輸入国である。
【詳細】
JERAによる米国産LNGの大規模調達契約について
日本最大の発電事業者であるJERA(ジェラ)は、エネルギー供給の安定性および調達先の多様化を目的として、米国のLNG(液化天然ガス)生産企業4社との間で、年間最大550万トンのLNGを20年以上にわたって購入する契約および基本合意書(Heads of Agreement)を締結した。本契約に基づくLNGの供給は、2029年から2030年に開始される予定であり、契約総額は7兆円から9兆円規模に達する見込みである。
JERAはこれまでにも米国のLNG市場に進出してきた実績を有しており、たとえば、2023年にはルイジアナ州のVenture Global社と年間約100万トン、2025年にはテキサス州のNext Decade社と年間200万トンの調達契約を結んでいる。これらの契約に今回の新規契約が加わることで、JERAによる米国産LNGの調達量は年間最大1000万トンに達することになる。これは、同社の全体LNG調達量に占める米国産の比率が現在の10%から一挙に30%まで引き上げられることを意味する。
FOB契約と供給の柔軟性
JERAが今回締結した契約は、FOB(Free On Board=本船渡し)契約形態である。これは、LNGを供給する側が出荷港で貨物を買い手に引き渡した時点で所有権が移転し、以降の輸送責任およびコストは買い手側が負担する契約形態である。この契約形態は、仕向地制限(LNGの到着地を制限する規定)がないため、需要の変動に応じて柔軟に販売先を変更でき、電力需要の変動が大きい日本にとって極めて有利である。また、需要が低迷する時期には余剰分を他国に再輸出できる可能性もあるため、柔軟性と経済的合理性の両面から評価される契約形態である。
経済産業省の評価
経済産業省は、今回の契約が日本の消費者に対する安定的なエネルギー供給と価格の安定に寄与し、国家のエネルギー安全保障上も極めて重要であるとの見解を示している。これにより、日本は供給の信頼性を高め、国際的なエネルギー市場における地政学的リスクに対する耐性を強化することが可能になる。
地政学的背景と長期契約の意義
ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所日本研究センターの上級研究員であるコンスタンチン・コルネーエフ氏は、長期契約の持つ意義について以下のように分析している。
価格と供給の安定
まず、長期契約はエネルギー市場の価格変動から日本を保護する役割を担う。スポット市場(短期売買)では需給の不均衡によって価格が大きく変動するが、長期契約では一定価格または価格指標に連動する形で取引されるため、企業はコストを予測しやすく、長期的な生産計画や投資判断を安定的に行うことができる。また、供給が長期間にわたり保証されるため、エネルギー供給に依存する産業にとっては極めて重要な基盤となる。
サハリン2契約終了とロシアリスクの回避
同氏はまた、2024年以降のロシアとのエネルギー関係の不透明さにも言及している。日本は現在、サハリン2プロジェクトからのLNG供給を受けているが、その契約は2030年に期限を迎える。日露関係がウクライナ情勢などを背景として停滞している中、日本がこれらの契約を更新できないリスクが高まっている。ロシアが供給先を中国に転換する可能性も排除できない。JERAが米国から新たに調達するLNGの量が、ロシアからの輸入量とほぼ同等であることから、今回の契約はロシアリスクへの対抗策(リスクヘッジ)としての意味合いも持つ。
脱炭素社会への移行とLNGの役割
さらに、コルネーエフ氏は、LNGがカーボンニュートラル社会への「移行期エネルギー」として重要な位置づけにある点も指摘している。LNGは石炭に比べて燃焼時のCO₂排出量が少なく、石炭火力を段階的に縮小する中間エネルギーとして最適である。特に再生可能エネルギーの導入が増える中、その不安定性を補うためのバックアップ電源として、柔軟に稼働できるLNG火力発電の重要性は高まっている。
米国との関税交渉における位置づけ
2025年2月、石破首相は米国・トランプ大統領との首脳会談において、日米間の貿易不均衡是正に向けた一環として、米国産LNGの輸入拡大の用意があると発言している。この発言を受けて、一部メディアは今回のJERAの契約が、日本側の「関税交渉における切り札」となりうる可能性を指摘している。
しかしながら、JERAの津軽亮介常務執行役員は、本件契約が政府の要請によるものではなく、民間企業としての経済的合理性に基づく独自の判断で締結されたものであると説明している。これは、エネルギー政策における市場主導の原則に則る姿勢を示している。
一方、コルネーエフ氏は、この契約が米国との通商交渉において決定的な影響を及ぼす可能性は低いと見る。その理由として、契約の交渉と準備が15ヶ月前から進められており、トランプ大統領が特定国への新関税を示唆するよりも遥か以前から計画されていたことを挙げている。また、米国のLNG生産者にとっては販売先の確保が極めて重要であり、長期契約によって生産および投資のリスクを軽減する狙いもある。JERAはこうした米国のLNG供給体制の信頼性向上にも寄与しているといえる。
また、LNGが過剰に供給された場合でも、JERAはスポット市場で再輸出を行える能力を備えており、LNGターミナルや貯蔵インフラを活用した柔軟なオペレーションが可能である。
今後の展望
現在、米国はアラスカで新たなLNGプロジェクトの開発を計画している。JERAの津軽氏は、このプロジェクトについて米国側から詳細が提供され次第、地理的優位性およびガス埋蔵量の豊富さを考慮したうえで、参画の可能性を検討するとしている。
また、IEA(国際エネルギー機関)など複数の予測によれば、今後15年間で天然ガスは最も需要の高い化石燃料であり、その中でもLNGは最も高い成長率を示す分野である。日本はすでに中国に次ぐ世界第2位のLNG輸入国であり、国内電力生産の約3分の1をLNG火力が占めていることから、その需給の安定は国民生活や産業活動に直結する。
【要点】
JERAによる米国産LNG調達の概要
・JERAは米国のエネルギー企業4社とLNG(液化天然ガス)の長期購入契約および基本合意書を締結した。
・年間最大550万トン、契約期間20年以上、総額7〜9兆円規模に達する。
・供給開始は2029年から2030年に予定されている。
JERAの米国LNG市場での既存契約と今後の構成比
・JERAは既に米Venture Global社(ルイジアナ州)と年間100万トン、Next Decade社(テキサス州)と年間200万トンの契約を締結済みである。
・新契約を含めると、米国からの調達量は年間最大1000万トンに達する。
・JERAの全体LNG調達量に占める米国産の比率は、現在の10%から30%に上昇する見込みである。
契約形態(FOB)と柔軟性の確保
・今回の契約は「FOB(Free On Board=本船渡し)」方式である。
・仕向地制限がないため、JERAは需要に応じて他国への再輸出も可能である。
・電力需給の変動に対して柔軟に対応でき、エネルギー供給の安定性を高める。
経済産業省の評価
・日本政府はこの契約が消費者の需要と価格安定に寄与すると評価している。
・国家レベルでのエネルギー供給の信頼性確保にも資するとして歓迎している。
ロシア研究者・コルネーエフ氏の見解
・長期契約は価格変動リスクの軽減に寄与し、企業の生産・投資計画を安定させる。
・エネルギー供給の安定性と信頼性を高め、特に供給停止で重大な損失を被る産業にとって重要である。
・供給量が事前に確定していることで、生産プロセスと資源配分の最適化が可能となる。
地政学的リスク回避(サハリン2との関係)
・日本は現在、ロシア「サハリン2」プロジェクトからLNGを輸入しているが、契約は2030年に終了する予定である。
・日露関係の停滞により、契約更新の見通しは不透明であり、ロシアが供給先を中国へ切り替える懸念がある。
JERAの米国産LNG調達量は、サハリン2からの調達量とほぼ一致しており、実質的なリスクヘッジとなり得る。
脱炭素社会への移行とLNGの意義
・LNGは石炭よりCO₂排出量が少なく、移行期のクリーンな化石燃料として評価されている。
・再生可能エネルギーと併用する「過渡的エネルギー」として、脱炭素戦略上の位置づけが明確である。
関税交渉との関連性とJERAの立場
・石破首相は2025年2月、トランプ大統領との会談で、米国産LNG輸入の拡大意向を表明した。
・日本の一部メディアは本契約を「関税交渉の切り札」と見なしている。
・しかし、JERAの津軽常務執行役員は「政府の要請によるものではない」と明言している。
コルネーエフ氏による通商交渉への影響評価
・契約準備は15ヶ月前から始まっており、トランプ氏の関税発言よりも前の段階で進行していた。
・JERAは既に米国の複数LNG事業者と取引実績があり、開発予定量を把握していた可能性がある。
・契約により供給者は販売保証を得られ、JERA側は余剰在庫の再販売(再輸出)による市場対応が可能である。
今後の展望と市場の見通し
・JERAは米国アラスカ州での新規LNG生産プロジェクトについても、今後の情報次第で参画を検討する意向である。
・今後15年間で天然ガスは最も需要の高い化石燃料と予測され、特にLNGは最も成長率が高い分野とされている。
・現在、日本の電力の約3分の1はLNGに依存しており、日本は中国に次ぐ世界第2位のLNG輸入国である。
【桃源寸評】🌍
JERAの米国産LNGに関する新たな長期契約は、エネルギー安全保障、脱炭素戦略、地政学的リスクヘッジ、民間主導の経済合理性、そして将来の通商政策との関係に至るまで、多層的な意味合いを持つ国家的に重要な契約であると位置づけられる。
JERAとは何か?
・正式名称:JERA株式会社(JERA Co., Inc.)
・設立:2015年
・本社:東京都中央区
・出資企業:東京電力フュエル&パワー(TEPCO)と中部電力の出資比率50:50の合弁会社
主な特徴
・発電規模 日本国内最大の発電能力(総出力約6,000万kW超)
・燃料取引 日本最大のLNG調達企業(年間約3,000万トン)
・取扱燃料 LNG、石炭、石油、再生可能エネルギー
・海外展開 東南アジア、米国、中東などでも発電所運営や投資を展開
・輸送・インフラ LNGタンカー・受入基地・再気化設備など保有または運営
事業の役割
・LNGの調達から輸送、保管、発電までを一貫して行う「燃料・発電統合モデル」
・日本の大規模火力発電所の多くを運営。
・日本の電力安定供給の中核を担う企業であり、政府とも密接に連携。
・JERAの発電量は、日本全体の約3割をカバーする。
名前が知られていない理由
・一般家庭向けではない:電力小売ではなく「発電・卸売」が中心
・名前に「東京電力」や「中部電力」が含まれていない:関連企業であっても独自ブランドで活動
・メディア露出が少ない:広告やプロモーションを積極的に行っていない
語源:JERAの名前の由来
・JERA = Japan's Energy for a New Era
・「新しい時代の日本のエネルギー」を意味する造語。
総括
JERAは表に出にくい存在ではるが、日本の電力の中枢を担う極めて重要な企業です。特にLNG輸入・火力発電・脱炭素戦略の面で国家的な役割を果たしており、国際的にも影響力があるエネルギー企業である。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
【視点】日本が米国産LNGの輸入増へ 関税交渉の切り札となるか?sputnik 日本
https://x.com/i/web/status/1938330526328492332
アジア3カ国の首脳がNATO首脳会議欠席 ― 2025年07月01日 23:20
【概要】
アジア3カ国の首脳がNATO首脳会議への出席を取りやめた理由については、複数の要素が複合的に作用していると見られる。
まず、日本の石破首相は、オランダ・ハーグで開催されるNATO首脳会議への出席を見送った。日本外務省は出席取りやめの直前まで、石破氏がNATOと日本をはじめとするインド太平洋パートナーとの具体的な協力について議論する予定であると発表していたが、これを撤回した。出席見送りの理由として、中東情勢の緊迫化や、当初予定されていたインド太平洋パートナー4カ国(日・韓・豪・NZ)の会談が行われない見通しとなったことが挙げられている。
石破氏が不参加を表明する1日前には、韓国の李在明大統領とオーストラリアのアルバニージー首相が不参加を決定しており、アジア3カ国の首脳が揃って出席を見送ることとなった。また、米国のトランプ大統領も出席を見送る可能性が報道されていた。
今回のNATO首脳会議では、プログラム自体が大幅に縮小されており、歓迎朝食会と1回の会合のみとなることが明らかになっている。NATOウクライナ理事会は開催されず、また、米国が求めていた国防費をGDPの5%に引き上げるという議題が議論されるかどうかも不透明であった。
モスクワ国立大学アジア・アフリカ諸国大学のアンドレイ・フェシュン副学長は、石破首相の不参加は現実的な決断であると分析している。その理由として、日本政府はすでに防衛費を5%に引き上げる資金的余裕がなく、3.5%への増額も困難であると表明している点を挙げている。また、石破首相は韓国の李在明大統領との会談を予定していたが、李氏が出席を見送ったことにより、その意義も薄れたとされる。加えて、トランプ大統領の出席も確定しておらず、このような背景の中で首相自らが会議に出席する必要性は低いと判断された。
さらに、石破氏の代わりに岩屋毅外相が出席する予定であり、会議参加見送りの理由として「中東情勢の緊迫化」が掲げられている。これは口実である一方、極めて現実的な懸念に基づいている。日本はカタールから大量の液化天然ガス(LNG)を輸入しており、仮にイランがホルムズ海峡を封鎖すれば、日本のエネルギー供給に深刻な影響が及ぶ可能性がある。その結果として、日本はロシアからのガス購入を増やさざるを得なくなるおそれもある。
また、今回のNATO首脳会議ではウクライナ問題も取り上げられず、中東問題も議題に含まれないことが判明している。こうした状況の中で、日本の首相が出席する意義は薄れたと考えられる。
一方、モスクワ国際関係大学のアンドラニク・ミグラニャン教授は、NATO内部における意見の相違が深刻化しており、そのような状況では団結や重要議題の議論は不可能であると述べている。特に、国防費のGDP5%引き上げ問題については加盟国間に亀裂が生じ、議題から外された。加えて、ウクライナ問題や中東情勢も議論される見通しが立っていない。中東情勢は急速に変化しており、まだ適切な分析が行われていない段階にあるという。
さらに、トランプ大統領が会議に出席した場合、イランでの自身の行動に対する承認を他の参加者に求める可能性があるとの懸念も示されている。しかし、多くの参加国はそのような議論に応じる用意がなく、紛争の長期化が各国経済に深刻な影響を与えることを懸念しているとされる。
以上のように、NATO首脳会議の議題縮小、主要参加者の不在、国際情勢の複雑化といった複数の要因が重なり、日本、韓国、オーストラリアの首脳が出席を見送るに至ったものである。
【詳細】
1. NATO首脳会議の議題と構成の縮小
今回のNATO首脳会議は、当初予定されていた議題や会合が大幅に縮小されており、実質的には「歓迎朝食会」と「1回の会合」のみが開催される予定である。このように内容が簡素化された背景には、NATO内部の意見の対立があるとされる。
特に注目されていた「NATOウクライナ理事会」は開催されず、米国が提案していた「NATO加盟国の国防費をGDPの5%に引き上げる案」についても、議論されるかどうかすら不明であった。これは、会議の実質的な成果が期待しにくい状況にあることを示している。アンドラニク・ミグラニャン教授も「議論することは何もない」と明言しており、こうした状況が各国首脳の参加意欲を削ぐ要因となった。
2. インド太平洋パートナー4カ国会談の中止
日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドは、NATOにとって「インド太平洋地域のパートナー国」として位置づけられており、本来であればこの4カ国による会談も行われる予定であった。しかし、この会談が開催されない見通しとなった。日本の石破首相は、韓国の李在明大統領との初会談を予定していたが、李大統領が出席を見送ったことで、その意義は失われた。オーストラリアのアルバニージー首相も同様に不参加を決定しており、3カ国の首脳が揃って会談の機会を失った形となる。
このように、他国首脳との二国間・多国間会談の機会が失われたことは、会議に出席する外交的価値を著しく低下させる要因となった。
3. トランプ大統領の不確定な出席と懸念
米国のトランプ大統領も、NATO首脳会議への出席を見送る可能性が報じられており、これは会議の重要性そのものに影響を及ぼした。仮にトランプ氏が出席した場合でも、ミグラニャン教授が指摘するように、トランプ氏は「イランでの自身の行動について他国からの承認を求める可能性がある」とされており、NATO加盟国およびパートナー国はそのような展開に備える準備ができていない。
トランプ氏は、以前のG7サミットにおいても同盟国の首脳に対して強硬な態度を取り、多くの出席者を屈辱的な立場に置いたとされる。こうした背景から、各国首脳はトランプ氏と積極的に会談を望まない空気が漂っていた。すなわち、トランプ氏の不確定要素が会議全体の雰囲気と成果に悪影響を及ぼす懸念があったということである。
4. 日本の事情:中東情勢とエネルギー安全保障への懸念
石破首相の出席見送りについて、モスクワ国立大学のフェシュン副学長は、「中東情勢の緊迫化」がもっともらしい理由である一方で、実際には現実的で極めて妥当な判断であると指摘している。
日本は、カタールから大量の液化天然ガス(LNG)を輸入しており、その供給ルートはホルムズ海峡を通っている。イラン議会がこの海峡の封鎖を警告している中、もし封鎖が現実となれば、日本のエネルギー供給体制に重大な影響を及ぼす。フェシュン氏は、「日本はロシアからのガス購入を増やさざるを得なくなる可能性もある」と述べており、日本政府が中東情勢に深刻な関心を抱いていることは間違いない。
したがって、中東情勢に即応するために国内に留まり、外交的柔軟性を維持するという判断は、単なる口実ではなく実際的な政策判断といえる。
5. 財政的制約と防衛費の限界
日本政府は、米国が主張するGDP比5%への防衛費引き上げについて、すでに「そのような増額は不可能である」との立場を明確にしている。現在でも、日本の防衛費は3.5%程度に増額されつつあるが、それ以上の引き上げには財政的な余裕がない。この点についてフェシュン副学長は、「日本政府は5%どころか、3.5%でも困難であると明言している」と述べている。
つまり、会議の中心的議題の一つである防衛費引き上げについて、日本は実質的に交渉の余地を持たない立場にある。こうした状況下で首相自らが出席しても、建設的な議論を展開する余地は限られており、外交的成果を得ることが困難であると判断されたとみられる。
6. 国際会議としての意義の希薄化
全体として、今回のNATO首脳会議は、形式的な開催にとどまり、重要議題の討議や国際的合意形成といった本来的な機能が大きく後退している。ミグラニャン教授も「ウクライナ問題も中東問題も議題に含まれておらず、加盟国間の意見の対立も深刻である」としており、首脳会議そのものの意義が薄れている。
そのような中で、日本、韓国、オーストラリアといったインド太平洋パートナー国の首脳が出席を見送ったことは、外交的配慮と国益に基づく合理的な選択であったと評価される。
結論
以上の諸点を総合すると、日本、韓国、オーストラリアの首脳がNATO首脳会議への出席を取りやめたのは、表向きの「中東情勢の緊迫化」に加えて、以下の現実的かつ構造的な要因に基づいている:
・議題・会合の大幅な縮小
・パートナー4カ国会談の中止
・トランプ氏出席に関する不透明感
・防衛費引き上げへの非対応
・エネルギー安全保障への対応の必要性
・国際会議としての意義の喪失
これらの理由により、アジア3カ国首脳は、出席しても外交的成果が見込めず、むしろ国内対応を優先すべきと判断したと考えられる。
【要点】
1. 会議の実質的な縮小
・今回のNATO首脳会議は、予定されていた議題が大幅に縮小され、「歓迎朝食会」と「1回の会合」のみの構成となった。
・NATOウクライナ理事会は開催されず、米国が提案する「国防費のGDP比5%引き上げ」も議題に含まれるか不明である。
・このような形式的な会議では、出席する意義が乏しくなる。
2. インド太平洋パートナー4カ国会談の中止
・日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドによる会談が実施されない見通しとなった。
・石破首相は韓国の李在明大統領との会談を予定していたが、李氏の欠席により実現しなくなった。
・同様にオーストラリアのアルバニージー首相も出席を見送っており、4カ国間の対話の機会が失われた。
3. トランプ大統領の不参加または出席による不確実性
・トランプ大統領が首脳会議への出席を見送る可能性が報じられていた。
・仮に出席した場合、イランに関する自身の行動への承認を他国に求める懸念があった。
・各国はトランプ氏との対立を望まず、またそのような場に外交的リスクを感じている。
4. 中東情勢の緊迫化
・表向きの出席見送りの理由として、中東情勢の緊張が挙げられている。
・日本はカタールから大量のLNGを輸入しており、ホルムズ海峡が封鎖された場合の供給不安を懸念している。
・このため、石破首相は中東の安全保障情勢に即応するために国内に留まる判断を下したとされる。
5. 防衛費引き上げに対する財政的制約
・米国が主張するGDP比5%への防衛費増額に対し、日本政府は「資金の余裕がない」と明言している。
・すでに3.5%への増額にも苦慮しており、交渉の余地がない状態で首脳が参加する意味は薄い。
6. NATO加盟国間の意見対立
・加盟国間で国防費の増額をめぐる亀裂が生じており、会議の団結は困難である。
・ウクライナ問題や中東問題も議題に含まれておらず、深刻な国際課題を議論する見込みは低い。
7. 会議の外交的意義の低下
・G7サミットにおけるトランプ氏の言動も影響し、欧州諸国や他の指導者はトランプ氏と距離を置きたがっている。
・こうした背景から、首脳会議は形式的なものとなりつつあり、各国首脳にとって実利がないと判断された。
【桃源寸評】🌍
NATOの機能的限界と「多極化する国際秩序」におけるアジア戦略の再調整
1. NATOの欧州偏重とアジア太平洋諸国の関与の限界
NATOは北大西洋地域の集団安全保障を目的とした組織であり、インド太平洋地域の国々にとっては、本来的には「域外」の安全保障枠組である。日本や韓国、オーストラリアは「パートナー国」としての立場にあるが、正式な加盟国ではないため、政策形成に対する影響力は限定的である。
首脳レベルでの出席は政治的ジェスチャーとしての意義はあるものの、実質的な交渉のテーブルに加わるわけではなく、象徴的参加にとどまる。そのため、実利が伴わない会議への首脳の出席は、国内・地域外交との優先順位を天秤にかけた際、後回しにされやすい。
2. 多極化する国際秩序とアジアの外交的自律性
現在の国際秩序は米国一極から脱し、米中、ロシア、欧州、インド、中東などがそれぞれ独自の重心を持つ「多極化構造」に移行しつつある。この中で、日本、韓国、オーストラリアといった中堅国家は、特定の陣営に全面的に依存するのではなく、戦略的自律性(strategic autonomy)を模索する動きを強めている。
そのような背景において、NATOという「米欧中心」の安全保障体制に形式的に連なることよりも、地域的な枠組み(例:クアッド、IPEF、APEC、ASEAN+など)や二国間協議を重視する姿勢が強まっている。
3. 米国の不安定な指導力への不信
トランプ政権下における同盟軽視、対中対峙の一極主義、国際秩序への関与縮小といった動きは、米国の同盟国に対して不信感を植えつけた。特にアジア諸国にとっては、米国の外交姿勢が政権交代によって大きく揺れ動くことは、長期的な戦略の構築を困難にしている。
このため、トランプ氏の出席が確定したとしても、その場での発言や外交パフォーマンスが予測困難であり、首脳自らが巻き込まれるリスクを回避する判断が働いた可能性がある。
4. 地域リスクへの即応性の優先
中東や台湾情勢、北朝鮮の動向、南シナ海での対立激化といった、アジア太平洋地域における現実的な安全保障上のリスクは高まりを見せている。これらはNATOの主要議題から外れており、アジア首脳にとっては優先的に対処すべき地域課題が山積している。
外交資源には限りがあるため、単なる儀礼的な場ではなく、即応的かつ実質的な安全保障対応に軸足を置く方が合理的であるとの判断がなされた可能性が高い。
5. グローバル南との関係構築への重視
日本、韓国、オーストラリアはいずれも近年、グローバルサウス諸国(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)との経済・安全保障・技術協力を重視する姿勢を強めている。欧米主導の枠組みに一方的に付き従うのではなく、自国の外交の多軸化を図ることが国益につながるという認識が高まっている。
NATO会議への出席見送りは、こうした外交重心の変化を象徴する動きの一つと捉えることもできる。
結論
アジア3カ国の首脳がNATO首脳会議への出席を取りやめた背景には、表面的な日程や会議内容の縮小以上に、国際秩序の変化、米欧への警戒、地域優先外交、外交戦略の再定義といった構造的な要因が存在する。これは、米欧中心の安全保障モデルから距離を置きつつ、アジア的文脈に適合した独自の戦略的立場を確立しようとする兆候といえる。
参照:https://koshimizu-tougen.asablo.jp/blog/2025/06/26/9785081
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
【視点】アジア3カ国の首脳は、なぜNATO首脳会議への出席を取りやめたのか sputnik 日本 2025.06.25
https://x.com/i/web/status/1937618232719905173
アジア3カ国の首脳がNATO首脳会議への出席を取りやめた理由については、複数の要素が複合的に作用していると見られる。
まず、日本の石破首相は、オランダ・ハーグで開催されるNATO首脳会議への出席を見送った。日本外務省は出席取りやめの直前まで、石破氏がNATOと日本をはじめとするインド太平洋パートナーとの具体的な協力について議論する予定であると発表していたが、これを撤回した。出席見送りの理由として、中東情勢の緊迫化や、当初予定されていたインド太平洋パートナー4カ国(日・韓・豪・NZ)の会談が行われない見通しとなったことが挙げられている。
石破氏が不参加を表明する1日前には、韓国の李在明大統領とオーストラリアのアルバニージー首相が不参加を決定しており、アジア3カ国の首脳が揃って出席を見送ることとなった。また、米国のトランプ大統領も出席を見送る可能性が報道されていた。
今回のNATO首脳会議では、プログラム自体が大幅に縮小されており、歓迎朝食会と1回の会合のみとなることが明らかになっている。NATOウクライナ理事会は開催されず、また、米国が求めていた国防費をGDPの5%に引き上げるという議題が議論されるかどうかも不透明であった。
モスクワ国立大学アジア・アフリカ諸国大学のアンドレイ・フェシュン副学長は、石破首相の不参加は現実的な決断であると分析している。その理由として、日本政府はすでに防衛費を5%に引き上げる資金的余裕がなく、3.5%への増額も困難であると表明している点を挙げている。また、石破首相は韓国の李在明大統領との会談を予定していたが、李氏が出席を見送ったことにより、その意義も薄れたとされる。加えて、トランプ大統領の出席も確定しておらず、このような背景の中で首相自らが会議に出席する必要性は低いと判断された。
さらに、石破氏の代わりに岩屋毅外相が出席する予定であり、会議参加見送りの理由として「中東情勢の緊迫化」が掲げられている。これは口実である一方、極めて現実的な懸念に基づいている。日本はカタールから大量の液化天然ガス(LNG)を輸入しており、仮にイランがホルムズ海峡を封鎖すれば、日本のエネルギー供給に深刻な影響が及ぶ可能性がある。その結果として、日本はロシアからのガス購入を増やさざるを得なくなるおそれもある。
また、今回のNATO首脳会議ではウクライナ問題も取り上げられず、中東問題も議題に含まれないことが判明している。こうした状況の中で、日本の首相が出席する意義は薄れたと考えられる。
一方、モスクワ国際関係大学のアンドラニク・ミグラニャン教授は、NATO内部における意見の相違が深刻化しており、そのような状況では団結や重要議題の議論は不可能であると述べている。特に、国防費のGDP5%引き上げ問題については加盟国間に亀裂が生じ、議題から外された。加えて、ウクライナ問題や中東情勢も議論される見通しが立っていない。中東情勢は急速に変化しており、まだ適切な分析が行われていない段階にあるという。
さらに、トランプ大統領が会議に出席した場合、イランでの自身の行動に対する承認を他の参加者に求める可能性があるとの懸念も示されている。しかし、多くの参加国はそのような議論に応じる用意がなく、紛争の長期化が各国経済に深刻な影響を与えることを懸念しているとされる。
以上のように、NATO首脳会議の議題縮小、主要参加者の不在、国際情勢の複雑化といった複数の要因が重なり、日本、韓国、オーストラリアの首脳が出席を見送るに至ったものである。
【詳細】
1. NATO首脳会議の議題と構成の縮小
今回のNATO首脳会議は、当初予定されていた議題や会合が大幅に縮小されており、実質的には「歓迎朝食会」と「1回の会合」のみが開催される予定である。このように内容が簡素化された背景には、NATO内部の意見の対立があるとされる。
特に注目されていた「NATOウクライナ理事会」は開催されず、米国が提案していた「NATO加盟国の国防費をGDPの5%に引き上げる案」についても、議論されるかどうかすら不明であった。これは、会議の実質的な成果が期待しにくい状況にあることを示している。アンドラニク・ミグラニャン教授も「議論することは何もない」と明言しており、こうした状況が各国首脳の参加意欲を削ぐ要因となった。
2. インド太平洋パートナー4カ国会談の中止
日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドは、NATOにとって「インド太平洋地域のパートナー国」として位置づけられており、本来であればこの4カ国による会談も行われる予定であった。しかし、この会談が開催されない見通しとなった。日本の石破首相は、韓国の李在明大統領との初会談を予定していたが、李大統領が出席を見送ったことで、その意義は失われた。オーストラリアのアルバニージー首相も同様に不参加を決定しており、3カ国の首脳が揃って会談の機会を失った形となる。
このように、他国首脳との二国間・多国間会談の機会が失われたことは、会議に出席する外交的価値を著しく低下させる要因となった。
3. トランプ大統領の不確定な出席と懸念
米国のトランプ大統領も、NATO首脳会議への出席を見送る可能性が報じられており、これは会議の重要性そのものに影響を及ぼした。仮にトランプ氏が出席した場合でも、ミグラニャン教授が指摘するように、トランプ氏は「イランでの自身の行動について他国からの承認を求める可能性がある」とされており、NATO加盟国およびパートナー国はそのような展開に備える準備ができていない。
トランプ氏は、以前のG7サミットにおいても同盟国の首脳に対して強硬な態度を取り、多くの出席者を屈辱的な立場に置いたとされる。こうした背景から、各国首脳はトランプ氏と積極的に会談を望まない空気が漂っていた。すなわち、トランプ氏の不確定要素が会議全体の雰囲気と成果に悪影響を及ぼす懸念があったということである。
4. 日本の事情:中東情勢とエネルギー安全保障への懸念
石破首相の出席見送りについて、モスクワ国立大学のフェシュン副学長は、「中東情勢の緊迫化」がもっともらしい理由である一方で、実際には現実的で極めて妥当な判断であると指摘している。
日本は、カタールから大量の液化天然ガス(LNG)を輸入しており、その供給ルートはホルムズ海峡を通っている。イラン議会がこの海峡の封鎖を警告している中、もし封鎖が現実となれば、日本のエネルギー供給体制に重大な影響を及ぼす。フェシュン氏は、「日本はロシアからのガス購入を増やさざるを得なくなる可能性もある」と述べており、日本政府が中東情勢に深刻な関心を抱いていることは間違いない。
したがって、中東情勢に即応するために国内に留まり、外交的柔軟性を維持するという判断は、単なる口実ではなく実際的な政策判断といえる。
5. 財政的制約と防衛費の限界
日本政府は、米国が主張するGDP比5%への防衛費引き上げについて、すでに「そのような増額は不可能である」との立場を明確にしている。現在でも、日本の防衛費は3.5%程度に増額されつつあるが、それ以上の引き上げには財政的な余裕がない。この点についてフェシュン副学長は、「日本政府は5%どころか、3.5%でも困難であると明言している」と述べている。
つまり、会議の中心的議題の一つである防衛費引き上げについて、日本は実質的に交渉の余地を持たない立場にある。こうした状況下で首相自らが出席しても、建設的な議論を展開する余地は限られており、外交的成果を得ることが困難であると判断されたとみられる。
6. 国際会議としての意義の希薄化
全体として、今回のNATO首脳会議は、形式的な開催にとどまり、重要議題の討議や国際的合意形成といった本来的な機能が大きく後退している。ミグラニャン教授も「ウクライナ問題も中東問題も議題に含まれておらず、加盟国間の意見の対立も深刻である」としており、首脳会議そのものの意義が薄れている。
そのような中で、日本、韓国、オーストラリアといったインド太平洋パートナー国の首脳が出席を見送ったことは、外交的配慮と国益に基づく合理的な選択であったと評価される。
結論
以上の諸点を総合すると、日本、韓国、オーストラリアの首脳がNATO首脳会議への出席を取りやめたのは、表向きの「中東情勢の緊迫化」に加えて、以下の現実的かつ構造的な要因に基づいている:
・議題・会合の大幅な縮小
・パートナー4カ国会談の中止
・トランプ氏出席に関する不透明感
・防衛費引き上げへの非対応
・エネルギー安全保障への対応の必要性
・国際会議としての意義の喪失
これらの理由により、アジア3カ国首脳は、出席しても外交的成果が見込めず、むしろ国内対応を優先すべきと判断したと考えられる。
【要点】
1. 会議の実質的な縮小
・今回のNATO首脳会議は、予定されていた議題が大幅に縮小され、「歓迎朝食会」と「1回の会合」のみの構成となった。
・NATOウクライナ理事会は開催されず、米国が提案する「国防費のGDP比5%引き上げ」も議題に含まれるか不明である。
・このような形式的な会議では、出席する意義が乏しくなる。
2. インド太平洋パートナー4カ国会談の中止
・日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドによる会談が実施されない見通しとなった。
・石破首相は韓国の李在明大統領との会談を予定していたが、李氏の欠席により実現しなくなった。
・同様にオーストラリアのアルバニージー首相も出席を見送っており、4カ国間の対話の機会が失われた。
3. トランプ大統領の不参加または出席による不確実性
・トランプ大統領が首脳会議への出席を見送る可能性が報じられていた。
・仮に出席した場合、イランに関する自身の行動への承認を他国に求める懸念があった。
・各国はトランプ氏との対立を望まず、またそのような場に外交的リスクを感じている。
4. 中東情勢の緊迫化
・表向きの出席見送りの理由として、中東情勢の緊張が挙げられている。
・日本はカタールから大量のLNGを輸入しており、ホルムズ海峡が封鎖された場合の供給不安を懸念している。
・このため、石破首相は中東の安全保障情勢に即応するために国内に留まる判断を下したとされる。
5. 防衛費引き上げに対する財政的制約
・米国が主張するGDP比5%への防衛費増額に対し、日本政府は「資金の余裕がない」と明言している。
・すでに3.5%への増額にも苦慮しており、交渉の余地がない状態で首脳が参加する意味は薄い。
6. NATO加盟国間の意見対立
・加盟国間で国防費の増額をめぐる亀裂が生じており、会議の団結は困難である。
・ウクライナ問題や中東問題も議題に含まれておらず、深刻な国際課題を議論する見込みは低い。
7. 会議の外交的意義の低下
・G7サミットにおけるトランプ氏の言動も影響し、欧州諸国や他の指導者はトランプ氏と距離を置きたがっている。
・こうした背景から、首脳会議は形式的なものとなりつつあり、各国首脳にとって実利がないと判断された。
【桃源寸評】🌍
NATOの機能的限界と「多極化する国際秩序」におけるアジア戦略の再調整
1. NATOの欧州偏重とアジア太平洋諸国の関与の限界
NATOは北大西洋地域の集団安全保障を目的とした組織であり、インド太平洋地域の国々にとっては、本来的には「域外」の安全保障枠組である。日本や韓国、オーストラリアは「パートナー国」としての立場にあるが、正式な加盟国ではないため、政策形成に対する影響力は限定的である。
首脳レベルでの出席は政治的ジェスチャーとしての意義はあるものの、実質的な交渉のテーブルに加わるわけではなく、象徴的参加にとどまる。そのため、実利が伴わない会議への首脳の出席は、国内・地域外交との優先順位を天秤にかけた際、後回しにされやすい。
2. 多極化する国際秩序とアジアの外交的自律性
現在の国際秩序は米国一極から脱し、米中、ロシア、欧州、インド、中東などがそれぞれ独自の重心を持つ「多極化構造」に移行しつつある。この中で、日本、韓国、オーストラリアといった中堅国家は、特定の陣営に全面的に依存するのではなく、戦略的自律性(strategic autonomy)を模索する動きを強めている。
そのような背景において、NATOという「米欧中心」の安全保障体制に形式的に連なることよりも、地域的な枠組み(例:クアッド、IPEF、APEC、ASEAN+など)や二国間協議を重視する姿勢が強まっている。
3. 米国の不安定な指導力への不信
トランプ政権下における同盟軽視、対中対峙の一極主義、国際秩序への関与縮小といった動きは、米国の同盟国に対して不信感を植えつけた。特にアジア諸国にとっては、米国の外交姿勢が政権交代によって大きく揺れ動くことは、長期的な戦略の構築を困難にしている。
このため、トランプ氏の出席が確定したとしても、その場での発言や外交パフォーマンスが予測困難であり、首脳自らが巻き込まれるリスクを回避する判断が働いた可能性がある。
4. 地域リスクへの即応性の優先
中東や台湾情勢、北朝鮮の動向、南シナ海での対立激化といった、アジア太平洋地域における現実的な安全保障上のリスクは高まりを見せている。これらはNATOの主要議題から外れており、アジア首脳にとっては優先的に対処すべき地域課題が山積している。
外交資源には限りがあるため、単なる儀礼的な場ではなく、即応的かつ実質的な安全保障対応に軸足を置く方が合理的であるとの判断がなされた可能性が高い。
5. グローバル南との関係構築への重視
日本、韓国、オーストラリアはいずれも近年、グローバルサウス諸国(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)との経済・安全保障・技術協力を重視する姿勢を強めている。欧米主導の枠組みに一方的に付き従うのではなく、自国の外交の多軸化を図ることが国益につながるという認識が高まっている。
NATO会議への出席見送りは、こうした外交重心の変化を象徴する動きの一つと捉えることもできる。
結論
アジア3カ国の首脳がNATO首脳会議への出席を取りやめた背景には、表面的な日程や会議内容の縮小以上に、国際秩序の変化、米欧への警戒、地域優先外交、外交戦略の再定義といった構造的な要因が存在する。これは、米欧中心の安全保障モデルから距離を置きつつ、アジア的文脈に適合した独自の戦略的立場を確立しようとする兆候といえる。
参照:https://koshimizu-tougen.asablo.jp/blog/2025/06/26/9785081
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
【視点】アジア3カ国の首脳は、なぜNATO首脳会議への出席を取りやめたのか sputnik 日本 2025.06.25
https://x.com/i/web/status/1937618232719905173