【概要】

　マダガスカルの大統領アンドリ・ラジョエリナは、権力奪取のクーデター未遂が進行中であると発表した。これは、エリート軍事部隊が彼の辞職を求めるデモ参加者に公然と加わった翌日のことである。大統領府は、この事態が憲法と民主的原則に矛盾すると述べ、全国の勢力に憲法秩序と国家主権を守るために団結するよう呼びかけた。

【詳細】　

　マダガスカルの大統領アンドリ・ラジョエリナは日曜日に、権力を力ずくで奪うクーデター未遂が進行中であることを発表した。

　大統領府の声明は、この動きが「憲法と民主的原則に矛盾する」と述べている。ラジョエリナは9月に始まった電力と水の供給不足をめぐる若者主導のデモと、その後広がった反政府集会の高まる圧力に直面していた。

　土曜日には、2009年にラジョエリナを権力に導いた陸軍支援部隊CAPSATの兵士たちが、仲間の兵士に命令に従わず蜂起に加わるよう呼びかけた。ラジョエリナが国を離れたという噂がソーシャルメディアで広がったが、大統領府は後にフェイスブック声明で、彼と首相が「国の事務を完全にコントロール下に置いている」と述べた。ただし彼の所在は公開されていない。

　ラジョエリナは9月末に公開集会からの圧力を受けて政府を解散し、陸軍将軍ルフィン・フォルトゥナ・ザフィサンボを新首相に任命した。9月25日に始まったデモは、若者主導の運動「ジェネレーションZ マダガスカル」の下、首都アンタナナリボとその他の都市で数千人が集結した。警察は催涙ガスとゴム弾を使用して群衆を散らし、略奪と商業施設への攻撃の報告がある。

　当局は首都に夜間外出禁止令を敷き、主要道路をふさいだが、不安定な状況は続いている。国連の数字によると、デモ最初の5日間で少なくとも22人が殺害され、100人以上が負傷した。

【要点】

　・マダガスカルの大統領ラジョエリナは権力奪取のクーデター未遂が進行中であると発表した。

　・軍事部隊がデモ参加者に加わり、9月から続く若者主導の反政府デモが激化している。政府を解散した後、新首相が任命された。デモにより22人が殺害され、100人以上が負傷している。

【桃源寸評】🌍

　マダガスカルの最新情勢は、政治的な安定と経済発展への期待がある一方で、依然として深刻な貧困問題と治安の悪化が課題である。

　1.政治・内政の動向

　・大統領選挙の結果：2023年11月に行われた大統領選挙では、現職のアンドリー・ラジョエリナ氏が勝利し、再選を果たした。これにより、政治的な空白期間は避けられた。

　・反政府デモの発生：2025年9月頃には、首都アンタナナリボなどの主要都市で、政府の対応能力の低さ(特に慢性的な停電・断水など)に抗議する大規模な反政府デモが多発した。これを受け、大統領は内閣を解散する事態となった。政治的な不安定要素は根強く残っている。

　・人権問題：2024年には、児童レイプ犯に対する去勢法案が両院を通過し、人権団体などから批判を浴びた。

　2.経済と社会の現状

　・経済成長の予測：マダガスカル経済は、2024年に4.3%程度の成長が推定されている。これは、農業、エコツーリズム、鉱業(黒鉛、クロムなど)に依存する構造である。

　・国際機関の支援延期：一部の主要部門における改革の遅れなどから、IMF(国際通貨基金)や世界銀行が財政支援を延期する事態も発生しており、経済回復には課題が残る。

　・深刻な貧困：マダガスカルは世界最貧国の一つであり、人口の70%以上が貧困ライン以下で生活している。この貧困が社会問題の大きな根源となっている。

　・食料危機と医療アクセス：特に南部地域では、干ばつやサイクロンの影響もあり、食料・栄養危機が深刻である。また、医療アクセスが困難な「医療砂漠」と化している地域も存在する。

　3.治安と安全対策

　・治安の悪化：マダガスカル全土に対し、日本政府は危険レベル1(十分注意)を発出している。

　・貧困に起因するスリ、ひったくり、置き引きなどの一般犯罪が多発しており、外国人観光客も標的とされやすい。

　・誘拐事件の増加：身代金目的の誘拐事件が依然として高い水準で推移しており、インド・パキスタン系実業家や富裕層が主な標的であるが、外国人が狙われる可能性もある。

　・デモへの警戒：前述の通り、首都アンタナナリボなどでの反政府デモが激化しており、群衆に近づかないなど、不測の事態への警戒が必要である。

【寸評　完】 💚

【引用・参照・底本】

Attempted coup underway – Madagascar president RT 2025.10.12
https://www.rt.com/news/626264-rajoelina-resignation-attempted-coup/