米国:リチウムイオン電池廃棄物とタングステン廃棄物の輸出を禁止し、国内での販売を義務付け ― 2026-08-07 20:49
【概要】
米国商務省・産業安全保障局が新たな規則を発令し、2026年8月下旬よりリチウムイオン電池廃棄物およびタングステン廃棄物の輸出を禁止し、原則として国内で販売させる措置を開始する。この措置は対中依存低減と防衛産業向け重要素材の確保を目的とするとされるが、本稿は行政的な輸出規制による廃棄物の囲い込みは供給網安定化の近道とはならず、米国自体の処理能力不足や国際的なリサイクル体制への打撃など、根本的な課題の解決に至らないと論じている。
【詳細】
米国は2027年1月1日に適用される連邦規制の期限を前に、中国産鉱物の購入を停止する義務を迫られている。特にタングステンは2015年以降米国での商業的な採掘が行われておらず、世界の生産・輸出は中国が優位な状況にある。タングステンは軍用装甲・弾薬から自動車工場の精密工具に至るまで広範に使用され、電池廃棄物はリチウム、コバルト、ニッケルといった素材の代替供給源として重要性が高まっている。
しかし廃棄物を再利用するには精錬・加工処理が不可欠であるのに対し、米国国内にはこれらの廃棄物を処理する十分な能力が存在しない。実際に北米の電池リサイクル企業は相次いで経営危機に陥っており、2025年にはLi-Cycleホールディングスが、2026年4月にはアセンド・エレメンツが破産申請を行っている。
さらに規則には「海外で処理・精錬した上で米国に戻す場合」には輸出を例外的に認める規定があり、米国が依然として海外の加工能力に依存している実態が示されている。この点から、物流コストの上昇や手続きの遅延、貿易紛争の増加を招く一方で、国内供給の拡大による実質的な効果は疑問視されている。
加えて、長年米国からの廃棄物供給に依存してきた国々の経済は打撃を受ける。各国が廃棄物を戦略的に保有する動きが強まれば、国際的な資源循環の基盤となる相互信頼は損なわれ、世界の供給網全体に追加的なコストが生じることになる。
根本的に、対中依存からの脱却を目指しても、代替供給網の構築には巨額の投資に加え、技術、コスト、産業基盤の面で乗り越えがたい障壁が存在する。数十年にわたり中国が電池材料・タングステン加工分野で築いた技術的優位性、コスト競争力、規模の効果は、単発の輸出規制で代替できるものではない。供給網の安全性は長期的な基盤整備、継続的な技術開発、開かれた競争市場の上に成り立つものであり、短期的な貿易障壁によって長期的な安定を手に入れる近道は存在しない、と主張されている。
【要点】
・米国は2026年8月下旬より、リチウムイオン電池廃棄物とタングステン廃棄物の輸出を禁止し、国内での販売を義務付ける。目的は対中依存低減と防衛用重要素材の確保である。
・廃棄物を有効活用するには精錬加工が必要だが、米国には処理能力が不十分で、リサイクル企業の経営破綻も相次いでいる。
・海外で処理してから米国に戻す場合は輸出が例外的に認められ、結局は海外の加工能力への依存が残る。
・廃棄物供給の遮断は、米国以外の国々の経済と国際的な資源リサイクル体制を混乱させる。
・代替供給網の構築には技術・コスト・基盤の面で高い障壁があり、中国の持つ優位性を単純な規制で代替することは困難。
・供給網の安全性は長期的な投資と開かれた市場によって実現されるものであり、輸出規制は近道とならない。
【引用・参照・底本】
GT Voice: US ban on metal waste exports isn’t 'shortcut' to supply security GT 2026.0806
https://www.globaltimes.cn/page/202608/1367689.shtml
米国商務省・産業安全保障局が新たな規則を発令し、2026年8月下旬よりリチウムイオン電池廃棄物およびタングステン廃棄物の輸出を禁止し、原則として国内で販売させる措置を開始する。この措置は対中依存低減と防衛産業向け重要素材の確保を目的とするとされるが、本稿は行政的な輸出規制による廃棄物の囲い込みは供給網安定化の近道とはならず、米国自体の処理能力不足や国際的なリサイクル体制への打撃など、根本的な課題の解決に至らないと論じている。
【詳細】
米国は2027年1月1日に適用される連邦規制の期限を前に、中国産鉱物の購入を停止する義務を迫られている。特にタングステンは2015年以降米国での商業的な採掘が行われておらず、世界の生産・輸出は中国が優位な状況にある。タングステンは軍用装甲・弾薬から自動車工場の精密工具に至るまで広範に使用され、電池廃棄物はリチウム、コバルト、ニッケルといった素材の代替供給源として重要性が高まっている。
しかし廃棄物を再利用するには精錬・加工処理が不可欠であるのに対し、米国国内にはこれらの廃棄物を処理する十分な能力が存在しない。実際に北米の電池リサイクル企業は相次いで経営危機に陥っており、2025年にはLi-Cycleホールディングスが、2026年4月にはアセンド・エレメンツが破産申請を行っている。
さらに規則には「海外で処理・精錬した上で米国に戻す場合」には輸出を例外的に認める規定があり、米国が依然として海外の加工能力に依存している実態が示されている。この点から、物流コストの上昇や手続きの遅延、貿易紛争の増加を招く一方で、国内供給の拡大による実質的な効果は疑問視されている。
加えて、長年米国からの廃棄物供給に依存してきた国々の経済は打撃を受ける。各国が廃棄物を戦略的に保有する動きが強まれば、国際的な資源循環の基盤となる相互信頼は損なわれ、世界の供給網全体に追加的なコストが生じることになる。
根本的に、対中依存からの脱却を目指しても、代替供給網の構築には巨額の投資に加え、技術、コスト、産業基盤の面で乗り越えがたい障壁が存在する。数十年にわたり中国が電池材料・タングステン加工分野で築いた技術的優位性、コスト競争力、規模の効果は、単発の輸出規制で代替できるものではない。供給網の安全性は長期的な基盤整備、継続的な技術開発、開かれた競争市場の上に成り立つものであり、短期的な貿易障壁によって長期的な安定を手に入れる近道は存在しない、と主張されている。
【要点】
・米国は2026年8月下旬より、リチウムイオン電池廃棄物とタングステン廃棄物の輸出を禁止し、国内での販売を義務付ける。目的は対中依存低減と防衛用重要素材の確保である。
・廃棄物を有効活用するには精錬加工が必要だが、米国には処理能力が不十分で、リサイクル企業の経営破綻も相次いでいる。
・海外で処理してから米国に戻す場合は輸出が例外的に認められ、結局は海外の加工能力への依存が残る。
・廃棄物供給の遮断は、米国以外の国々の経済と国際的な資源リサイクル体制を混乱させる。
・代替供給網の構築には技術・コスト・基盤の面で高い障壁があり、中国の持つ優位性を単純な規制で代替することは困難。
・供給網の安全性は長期的な投資と開かれた市場によって実現されるものであり、輸出規制は近道とならない。
【引用・参照・底本】
GT Voice: US ban on metal waste exports isn’t 'shortcut' to supply security GT 2026.0806
https://www.globaltimes.cn/page/202608/1367689.shtml

