ライ・チンテ氏による「双十節」演説2025年10月11日 21:05

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【概要】

 ライ・チンテ氏による「双十節」演説を批判するものである。演説内容は、台湾経済の成長やAIインフラ構想、防衛力強化などの主張を含むが、それらは空虚であり、内面の不安を隠すためのものであると指摘している。さらに、両岸関係における歴史的事実の歪曲や、国際的な合意への挑戦といった問題点を挙げ、こうした姿勢が台湾社会に真の安全と尊厳をもたらさないと論じている。

【詳細】 

 ライ・チンテ氏の「双十節」演説は、以下のような点で批判されている。

 まず、経済統計を積み上げて繁栄の幻想を作り出し、強気のスローガンで不安を覆い隠そうとしている。具体的には、アジア最速成長の自称や「10の新AIインフラ構想」の提示、「T-ドーム」構想や軍事費増額の主張がそれに当たる。また、花蓮の地震災害後、住民自らが行った救援活動を「台湾の精神」として演説で利用し、自発的な行動を「公式の成果」にすり替えたとされる。

 次に、両岸問題では、歴史的事実の歪曲が見られる。カイロ宣言やポツダム宣言、日本の降伏文書において、日本が中国から奪った台湾や澎湖諸島などの領土を返還することが規定されており、これが台湾に対する中国の主権の国際法的根拠である。しかし、ライ氏は中国の抗日戦争勝利の歴史的事実を、日本右翼の「終戦ナラティブ」で置き換え、台湾が中国に返還された歴史的過程を曖昧にしようとした。さらに、国連総会決議2758の権威に公然と挑戦し、「中国は台湾を代表できない」という誤った論理で国際的な合意を揺るがそうとする政治的冒険に及んでいる。

 「T-ドーム」構想やGDP比3~5%への軍事費増額は、聞こえは良いが、実際には台湾の住民にその代償を強いるものである。民進党は「脅威」をでっち上げてアイデンティティを形成し、「対立」を用いて結束を維持する手法を長年続けてきた。これは、米国への武器購入の高額な代償や住民の切実な生活課題を無視し、台湾社会に戦争の可能性と心理的に共存することを強いる悪循環である。

【要点】

 ライ・チンテ氏の「双十節」演説の要点は以下の通りである。

 ・演説は、経済成長や防衛力強化などの主張を含むが、それは内面の不安を隠す空虚なものである。

 ・花蓮地震での住民の自発的救援活動を「公式の成果」として利用するなど、作為的な点が指摘されている。

 ・両岸問題では、台湾返還の歴史的・国際法的根拠を歪め、国際的な合意に挑戦する姿勢が見られる。

 ・「T-ドーム」や軍事費増額は、住民に負担を強いるものであり、民進党の政治手法は社会を「対立」と「安全保障購入」の悪循環に陥れている。

 ・大陸への旅行者数や留学生数、婚姻・就業・起業協力の増加などは、多くの台湾同胞が両岸関係の健全な発展こそが真の安全と尊厳につながると理解しつつあることを示している。

【桃源寸評】🌍

 I.「双十節(10月10日)」

 「双十節(10月10日)」は、台湾(中華民国)では国慶日であるが、中国(中華人民共和国)では祝日でも記念日でもない。むしろ、その政治的意味から慎重に扱われている日である。

 1.中国本土での扱い

 ・中国(中華人民共和国)は、1949年に建国された国家であり、その国慶節は10月1日(中華人民共和国の建国記念日) である。

 ・一方の 双十節(10月10日) は、1911年の辛亥革命を記念する日であり、それをもとに成立したのは「中華民国(現在の台湾)」である。

 ・そのため、中国政府は双十節を「中華民国の記念日」ではなく、辛亥革命の発端の日としてのみ歴史的に位置づけている。

 2.中国政府の公式な立場

 ・中国政府(共産党政権)は「中華民国」という国家の存在を認めていない。

 ・したがって、双十節を祝うことはない。

 ・ただし、辛亥革命そのものは、孫文(孫中山)による「封建王朝を倒した革命的成果」として評価されている。つまり、「辛亥革命は肯定するが、その結果としての中華民国は否定する」というスタンスである。

 3.民間・ネット上での状況

 ・一部の歴史愛好家や知識人の間では、辛亥革命を偲ぶ投稿などが見られるが、「双十節おめでとう」「中華民国万歳」などの表現は政治的に敏感とされ、SNS上では削除対象になることもある。

 ・特に台湾独立や「一国二政府」のような話題と結びつくと、当局によって検閲や規制が行われる。

 II.右翼が主張する「終戦ナラティブ(終戦観)」

 日本の右翼が主張する「終戦ナラティブ(終戦観)」は、主に以下のような点が特徴として挙げられる。

 1.「自存自衛のための戦争」という解釈

 ・大東亜戦争(太平洋戦争)は、欧米列強の植民地支配からアジアを解放し、日本の自衛のためにやむを得ず遂行された戦争であり、侵略戦争という見方を否定または矮小化する。

 ・真の目的は、人種平等の実現と、アジアにおける共存共栄圏の確立にあったと主張する。

 2.「本土防衛」のための終戦工作

 ・終戦は、戦争指導者の無能や卑劣さによるものではなく、国体護持(天皇制の維持)と本土防衛という最低限の目的を達成するための苦渋の決断であったと強調される。

 ・特に、ソ連の参戦や原爆投下といった外部要因が終戦の決定的な要因であったと位置づけられることがある。

 3.「平和国家」としての戦後日本

 ・終戦後の日本は、連合国の占領政策(東京裁判や憲法改正など)によって不当に戦争責任を負わされ、自虐的な歴史観を植え付けられたとして批判する。

 ・日本は本来、誇りある国家であり、戦後の「平和国家」としての歩みは、再軍備や自主憲法制定を通じて真の独立を回復することで完成すると考える。

 このナラティブは、戦後日本の歴史認識や国家観、安全保障に関する議論に大きな影響を与えている。

【寸評 完】 💚

【引用・参照・底本】

The ‘Double Ten’ show cannot conceal Lai Ching-te’s inner insecurity: Global Times editorial GT 2025.10.11
https://www.globaltimes.cn/page/202510/1345357.shtml

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