【桃源閑話】『浮世絵の価値と鑑賞』2025-10-26 15:17

浮世絵の価値と鑑賞から
【桃源閑話】『浮世絵の価値と鑑賞』


 『浮世絵の価値と鑑賞』 著作兼發行者 矢田三千男 大正十年八月三十日發行

                 序

 人は生存慾と所有慾との爲に、益々激甚なる競爭を續けて居る、これ或は世界的風潮なるが故に、人力の如何ともする能はざる所であるかも知れぬ、けれども、人間(の幸福は必ずしも然うした競爭によつてのみ齊さるゝものではない、否、寧ろ其が殺伐なる物質的競爭を融和し、自他共に徹底的に覺醒して、眞に平和の生活を持續せむが爲めに努力する方が、遥かに有意義がある 謂はなければならない。

 若し、飽くまでも物質萬能主義を謳歌して、各自に富を爭ひ、表面を糊塗 し、巧遅よりも拙速を尊び奸智に長けたる者のみが勝を制するとせば、其の結果は如何であらう?恐らくは、宗教も哲學も、あらゆる藝術も、悉く影を潜めて、世はさながら蒙昧なる未開の狀態と擇ぶ所が無くなるであらう、乃ち人類に幸福を齊すへき文明も、こゝに至つて逆に一大不幸を醸す事と成るは、凡そ想像に難くない所である。

 斯の如き不幸を未然に防ぐには、固より祟高なる宗教や深遠なる哲學の力に俟つへき點が尠なくないであらう、併し、吾々が居常知らず知らずの問に感化を受け、しかも容易に理解、し得らるゝものとしては先づ第一に美術を擧げなければならない、一言に美術と云つても可なり範圍が廣いが、其の中で吾々日本人として最も親しみの深いものは所謂浮世繪である。

 浮世繪は、我が國民性を發現して、人物、風景、其他あらゆる對象の眞を捉み、すへて現實的生命を躍動せしむる點に於て、畫界に嶄然として一頭地を抽いて居る、概して創作的分子に富み、謂はれ無き摸做は、其の社會に於いて自から屑しとせざる所であつた、かるが故に單なる肉筆畫と雖、其處に一脈の現實性を傳へて居るが、版畫に於ては、ヨリ多く審美的特長を有つて居る。

 浮世繪版畫の有つ藝術的價値は、他の凡ての絵畫とiは全然異つた點に見出されるのであつて、他派の傳統的に墨守した用筆上に重きを置いて論じたり、或は流布の稀有なるを唯一の誇りと認むるが如きは、浮世繪版畫を鑑賞する上に何等の意義を成さない事である•、要するに浮世繪は民衆的に發達して來たのであるから、他の骨董品の如く一部分に局限せられたものでなく、極めて普遍的の性質を有し、且つ最も通俗的に鑑賞さるへきものと謂ひ得られやう。

 今や浮世繪版畫は世界的に布名になつて居る、一面から觀れは、欺米人が我國に理解を懐くやうになつたのは、此の特色に富んだ版畫に惹きつけられたからでもあらう、兎に角、物質文明の弊害を蒙りつゝ、ある現代に於て、國の内外を問はす、せめて精神上にだけでも一種の淨化法を施す必要を認める、其の淨化法は、 盖し、浮世繪版畫によつて實現さるゝ所が僅少であるまい 事を私は確信する。

 矢田君は私の未見の人てあるが、 爾來、浮世繪を賣買さるゝ傍ら、其の研究に熱心であるといふ事は知つて居る、此度同君が本書を發表せらるゝのは、寔に時宜に適した企てであつて、しかも、從來未だ盡されざりし鑑賞上の要點を明示されたのは、斯界に於ける一美擧と稱すへきである。茲に 聊か所感を述べて序に代ふることゝした。

  大正十年八月中旬 東京   渡 邊 庄 三 郎 

【閑話 完】

【引用・参照・底本】

矢田三千男 著『浮世絵の価値と鑑賞』,矢田商会出版部,大正10. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/927280 (参照 2025-10-26)

米国陸軍退役軍人で反帝国主義活動家:イスラエルのガザ海上封鎖に異議2025-10-26 15:58

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【概要】

 米国陸軍退役軍人で反帝国主義活動家のズー・ヤーンステットは、イスラエルのガザ海上封鎖に異議を唱え、人道支援物資を届けるための「グローバル・スムード船団」の退役軍人船「オーワヒラ」号に乗船した。国際水域で船団が拿捕された後、彼女は悪名高いイスラエル刑務所に拘束され、虐待を経験した。本記事は、ヤーンステット氏が兵士から連帯活動家になった経緯、航海、拿捕、拘束中の状況、そして海上からの支援活動の政治的な意味合いについて語るインタビューである。彼女は現在、米国に戻り、イスラエルへの軍事援助停止を求める活動を続けている。

【詳細】 

 ヤーンステット氏は、ガザへの人道支援とイスラエルによる海上封鎖への挑戦のため、船団への参加を決意した。退役軍人船があるという話を聞き、元米陸軍兵としてすぐに参加を表明したという。船団参加前は、ウェストバンクで国際連帯運動(ISM)に所属し、農民や羊飼いに付き添い、不法入植者によるハラスメントを記録する「保護的立ち会い」活動を行っていた。

 彼女が米国が帝国であることを自覚したのは、アフガニスタンでの展開中であり、10年かけて自身の考えを再構築し、プロパガンダに立ち向かったと述べている。ガザでのジェノサイドが始まってからは、米国の税金がイスラエルへの資金援助に使われている現状に対し、行動を起こすことは容易な決断であった。

 船団はバルセロナを出発し、32日間の航海であった。チュニスでは船が2度爆撃され、イタリアを出るときもドローンによる攻撃を受けた。ヤーンステット氏の船は最初に被弾したが、負傷者は出なかった。クレタ島で船の修理と人員再編成が行われた後、船団はインターセプトされるまで直進した。

 イスラエル当局による拿捕は、6時間半にわたる追跡の末に行われた。ヤーンステット氏らは米軍供与の軍艦からの追跡を回避し、彼らを嘲笑した後、高速ボートに挟まれて拿捕された。拿捕は国際水域で行われ、彼らは「第四ジュネーブ条約」と「国際人道法」に違反する違法な誘拐であると主張している。

 船上で約20時間過ごした後、アシュドッド港に到着し、拘留が始まった。イスラエル国家安全保障大臣のイタマル・ベン=グヴィルが彼らに向かって叫び、彼らをテロリスト呼ばわりした。拘束下では、上を向くことを許されず、頭を上げると叩きつけられたという。彼女は、ストレス体勢で5、6時間拘束された後、兵士に腕を強く引っ張られて肩を脱臼したと述べている。

 処理センターでは、女性兵士による身体検査が行われ、生体認証が行われた。彼女の退役軍人病院からの処方薬は笑われながら捨てられたほか、スケッチブックもゴミ箱に投げ込まれるなど、当局の嫌がらせ行為があった。渡された書類には、不法入国を認め、裁判を受ける権利を放棄する内容が書かれていたため、署名を拒否した。 

 その後、ヤーンステット氏は悪名高いテロリスト刑務所であるクツィオットに移送された。拘束中、彼女はハンガーストライキを行い、持病の薬を急に止められたことによる体調不良に苦しんだ。他の女性被拘束者も同様に体調を崩したが、医療は提供されなかった。彼らが囚人の権利について尋ねると、「あなた方は囚人ではなく、人質だ」と告げられたという。

 拘束中に彼女は、スウェーデンの国会議員ロレナ・デルガド=ヴァラスや活動家のレナズ・エブラヒミ、ハワイ先住民のジャスミン・イケダら、多様な背景を持つ人々に出会った。

 彼らは10月7日に釈放された。ヤーンステット氏は、イスラエルが自らの人質について叫びながら、彼らを人質として拘束し続けることはできないと考えたためだと推測している。釈放前に会った医師は彼女にアスピリンを渡し、「申し訳ない」と言ったが、ヤーンステット氏は「これはすべて計画的なものだ」と返した。

 ヨルダン国境で、彼らは在ヨルダン米国領事館の職員に会った。その職員は「あなた方のベビーシッターではない」と述べ、旅費の支援を拒否し、高利子のローンを提案するなど、米国領事館の対応は冷淡で失望させるものであった。結局、彼らは他の船団メンバーと合流し、ヨルダン人から医療や食料、宿泊の支援を受けた。

 ヤーンステット氏は、現在の停戦を「虐殺後の土地の強奪」と見ており、「プエルトリコ・モデル」のようなビジネス取引であり、米国の「お家芸」に基づいていると考えている。船団のような活動が無駄であるという意見に対し、彼女はガザの人々にとって、命を危険に晒して連帯を示す行為は大きな意味を持つと反論する。また、船団が追跡されている間、ガザの人々は2日間漁をすることが許され、多くの食料を得ることができたという具体的な効果も指摘している。彼女は、一回の失敗で諦めるのではなく、公民権運動や南アフリカのアパルトヘイト崩壊のように、継続的な努力が重要であると強調している。 

【要点】

 ・活動家の背景と動機: 元米陸軍兵のズー・ヤーンステット氏は、米国の帝国主義への気づきとガザでのジェノサイドへの抗議から、人道支援と海上封鎖打破を目指す「グローバル・スムード船団」に参加した。

 ・航海と拿捕: 船団は32日間航海し、チュニスやイタリアで爆撃・ドローン攻撃を受けた。国際水域でイスラエル当局に拿捕され、彼女はこれを国際法違反の「誘拐」と見なしている。

 ・拘束と虐待: 拘束中、彼女はストレス体勢で長時間拘束され、肩を脱臼した。当局は彼女の処方薬を破棄し、書類への署名を拒否すると、悪名高いクツィオット刑務所に収監された。被拘束者は「囚人ではなく人質だ」と告げられ、適切な医療は提供されなかった。

 ・釈放と米国の対応: 船団メンバーは10月7日に釈放されたが、在ヨルダン米国領事館の職員は冷淡で非協力的であった。

 ・活動の意義: 彼女は現在の停戦を「土地の強奪」と見ており、船団の試みはたとえ失敗しても、ガザの人々への連帯を示すこと、また封鎖を一時的に緩める効果があることから、継続することが重要であると強調している。

【桃源寸評】🌍

 「プエルトリコ・モデル」とは、プエルトリコが第二次世界大戦後に採用した経済開発モデル、特に優遇税制と外部資本の誘致を中心とする開発戦略を指す場合が多い。

 このモデルの主要な特徴は以下の通りである。

 ・税制優遇措置: 米国本土の企業や富裕層に対し、法人税や所得税などの大幅な優遇措置を提供することで、外国からの直接投資や本土企業の進出を促した。

 ・輸出主導型産業の育成: 特に製造業、中でもライフサイエンス産業(製薬、医療機器など)**を誘致し、プエルトリコの経済成長の柱とした。これにより、GDPの多くを製造業が占めるに至った。

 ・観光業の振興: 豊かな自然や気候を活かし、観光産業も重要な経済部門として開発された。

 ・米国市場への特権的アクセス: 米領自治連邦区であるため、米国市場へのアクセスが保証されている点が優位性となった。

 背景と評価

 このモデルは、特に1960年代には経済成長を牽引し、プエルトリコをカリブ海地域で最も高い一人当たりGDPを持つ地域の一つに押し上げることに成功した。しかし、長期的には、低賃金労働力への依存や、税制優遇が終了した後の企業撤退、財政状況の悪化、高い失業率といった問題を引き起こした。

 元の記事の文脈では、ヤーンステット氏が「プエルトリコ・モデル」を土地の強奪と開発に関連付けていることから、イスラエルがガザを再建・開発する際に、このモデルを外資誘致や税制優遇を通じて、実質的に経済的植民地化あるいは外部主導の開発を行う手法の比喩として用いている可能性が考えられる。つまり、地元住民の利益よりも、外部の企業や富裕層の利益を優先する開発の形態を指すものと解釈できる。

【寸評 完】 💚

【引用・参照・底本】

A US Veteran’s ‘Sumud’ Voyage Into Israeli Abuse Consortium News 2025.10.24
https://consortiumnews.com/2025/10/24/a-us-veterans-sumud-voyage-into-israeli-abuse/?eType=EmailBlastContent&eId=395dbaf8-b354-4bfc-9988-497ba7e05072

事務総長:安保理は「覇権国や帝国のためではない」2025-10-26 18:11

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【概要】
 
 グテーレス事務総長は、国連創設80周年を記念する国連デーに、安全保障理事会(安保理)の「脆弱な」正当性が世界の平和を危うくする可能性があると警告した。安保理が機能不全に陥り、その主要な目的を達成できなければ、世界は重大な危険にさらされると訴えた。

 事務総長は、安保理の構造が不均衡であり、アフリカやラテンアメリカなどの地域が常任理事国としての発言権を持たない現状を指摘し、拡大されたメンバーシップと拒否権の制限に関する議論を促した。

 この議論には、安保理の常任理事国(ロシア、米国)と非常任理事国(ガイアナ)が参加し、それぞれが安保理の機能や国連の方向性について意見を述べた。ロシアは西側諸国の行動を批判し、ガイアナは安保理の非代表性を批判し改革を主張した。米国は、国連の「肥大化した官僚主義」からの脱却と、メリットに基づく次期事務総長選出を要求した。

【詳細】 

 グテーレス事務総長の警告と訴え

 グテーレス事務総長は、国連創設80周年を記念する国連デーに、ベトナムのハノイからビデオリンクで安保理大使たちに演説し、安保理の「脆弱な」正当性が世界の平和を危険にさらす可能性があると警告した。安保理が機能不全に陥り、その主要な目的を達成できない場合、「世界は重大な危険にさらされる」と述べた。

 事務総長は、安保理が平和維持、紛争解決、国際法遵守において中心的な役割を果たしてきた一方で、拒否権制度がしばしば行動を停滞させ、批判を招いてきたことに言及した。また、安保理の構造は非代表的と見なされており、アフリカやラテンアメリカなどの地域が恒久的な発言権を持たない現状を強調した。

 事務総長は、安保理は「覇権国や帝国のためではない」とし、「死者の亡霊に囲まれながらも、その傍らには生きる者の希望がある」と述べ、安保理メンバーに対し、平和を訴える市民の声や安全を願う家族のささやきに耳を傾けるよう促した。

 安保理の正当性は脆弱であると強調し、一部の加盟国による国連憲章違反が信頼を蝕み、世界の安定を危険にさらしているとした。

 彼は、世界の人口構成をより良く反映するため、アフリカ、ラテンアメリカおよびカリブ海諸国への常任代表権を含むメンバーシップの拡大を要求した。また、拒否権の行使を制限するための提案についての議論も奨励した。

 参加国の主な意見

 ロシア

 ロシアのネベンジア大使は、国連の成果を称賛しつつ、西側諸国の行動に注意を促した。西側諸国が「衰退する影響力を維持しようとする中で、世界を『私たち』と『彼ら』、『民主主義国』と『独裁主義国』に分断した」と述べた。その結果、国連憲章の多くの原則が概念に留まり、現実になっていないとした。また、イラク侵攻やカラー革命、「最近のイラン侵略」などの「冒険」は悲劇しかもたらしていないと主張した。

 ガイアナ

 非常任理事国であるガイアナのロドリゲス=バーケット大使は、安保理の現行の構成は非代表的であるとし、改革の呼びかけに同調した。「安保理は改革されなければならない」と述べ、国連全体の成功または失敗は、大部分において安保理の行動、あるいはその欠如によって判断されるという現実を強調した。アフリカとラテンアメリカへの常任理事国枠と、小島嶼開発途上国のための輪番制議席を要求し、国益と国際協力は相補的であると強調した。

 米国

 米国のシェイ大使は、説明責任に焦点を当てた。国連が「肥大化した官僚主義」となり、道を見失ったと述べ、明確な政治的目的と測定可能な基準を持つ任務を要求した。「国連は、加盟国が説明責任のない官僚主義に服従するのではなく、加盟国に奉仕すべきである」と主張した。

 次期事務総長については、国連をその創設目的に回復させるリーダーを求めるとし、国家主権を尊重し、説明責任と透明性を優先するよう述べた。選出プロセスは、地域持ち回りではなく、すべての地域グループからの候補者を募るメリットに基づくものであるべきだと付け加えた。

【要点】

 ・安保理の正当性の危機: グテーレス事務総長は、安保理の「脆弱な」正当性が世界の平和を危うくし、機能不全が続けば世界は「重大な危険」にさらされると警告した。

 ・構造的な非代表性: 拒否権制度による行動の停滞と、アフリカやラテンアメリカなどの地域が常任理事国としての恒久的な発言権を持たない非代表的な構造が批判の焦点となっている。

 ・改革の要求: 事務総長は、世界の人口構成を反映するためのメンバーシップの拡大(特にアフリカ、ラテンアメリカおよびカリブ海諸国の常任代表権)と、拒否権の行使を制限するための議論を促した。

 主要国の立場

 ・ロシア: 西側諸国の行動を批判し、「民主主義国」と「独裁主義国」への世界分断が国連憲章の原則実現を妨げていると主張した。

 ・ガイアナ: 安保理の構成の非代表性を指摘し、アフリカとラテンアメリカへの常任理事国枠と、小島嶼開発途上国の輪番制議席を要求した。

 ・米国: 国連の「肥大化した官僚主義」と「説明責任のない官僚主義」からの脱却、任務の明確化を要求した。次期事務総長は、地域持ち回りではなく、メリットに基づく選出をすべきだと主張した。

【桃源寸評】🌍

 国連改革における米国の立場と実効性への批判論

 米国の主張は、自国の国益を優先し、安保理改革の核心である構造的な不公正の是正を回避するものであり、真の改革の端緒にはつきえない。

 米国が主張する「肥大化した官僚主義」の是正や、次期事務総長の「メリットに基づく選出」などは、国連の運営効率と透明性の向上という点で一定の意義を持つが、それは安保理改革という最大の課題から目をそらすための「操作的改革論」に過ぎない。シェイ大使が「説明責任のない官僚主義」からの脱却を訴える一方で、最も「説明責任のない」構造である常任理事国による拒否権については、その制限に言及せず、自国の特権を守ることに主眼が置かれている。

 構造改革の回避と特権の維持

 グテーレス事務総長は、「脆弱な」安保理の正当性を回復するために、世界の人口構成を反映したメンバーシップの拡大、特にアフリカ、ラテンアメリカおよびカリブ海諸国への常任代表権の付与を明確に要求している。また、拒否権の行使を制限する提案に関する議論を奨励している。これこそが、安保理が長年にわたり抱えてきた非民主的かつ非代表的な構造の是正であり、国際社会の多数派、特にグローバルサウス諸国が最も強く求めている改革の本質である。

 これに対し、米国の主張は運営上の効率化と事務総長選出プロセスの透明化という「ソフトな改革」に終始しており、「ハードな改革」である権力構造の変更を意図的に回避している。安保理の機能不全の最大の原因は、その非代表性と、常任理事国(P5)の拒否権乱用による意思決定の麻痺にあることは明白である。拒否権制度は、国連憲章違反や大規模な人権侵害に対しても、安保理の行動を阻止し続け、これが安保理の「正当性の危機」の根源となっている。事務総長が指摘するように、一部の加盟国による国連憲章違反が信頼を蝕む最大の要因であり、この「一部の加盟国」にはP5が含まれる。

 自利的な「国連回帰」と国際協力の矛盾

 米国は、次期事務総長に対し「国連をその創設目的に回復させるリーダー」を求め、「国家主権の尊重」を強調している。これは、国連の介入を抑制し、自国の外交政策の自由度を確保したいという自利的な思惑が透けて見える。

 外交専門家や国際法の観点から見ると、国連の最大の目的は集団安全保障であり、単なる事務手続きの効率化ではない。安保理の非代表性の是正なくしては、ガイアナ大使が述べたように、国際協力は達成できず、安保理は常に「非代表的」として国際社会の評価を失い続ける。

 米国の改革論は、安保理における特権的地位の温存を前提とし、国際協力よりも自国の主権尊重を優先する点で、グテーレス事務総長が訴える「希望の実現」とは真逆の方向を向いている。安保理が「覇権国や帝国のためではない」という事務総長の言葉は、拒否権を絶対的な特権として固守する P5 諸国に対する痛烈な批判として機能している。真の改革は、米国の主張するような局所的な改善ではなく、事務総長が促すような権力分配の変更と、非特権国への公平な代表権付与から始まるのである。米国の立場が続く限り、安保理は「フィット・フォー・パーパス(目的に適う)」な組織にはなりえず、世界の平和は「 grave danger(重大な危険)」に晒され続けると言える。

 The U.S. Position on U.N. Reform and Criticism of Its Effectiveness

 The United States’ position prioritizes its own national interests and avoids addressing the structural injustices that lie at the core of Security Council reform, thereby failing to serve as the starting point for genuine reform.

 While the U.S. advocacy for correcting a “bloated bureaucracy” and selecting the next Secretary-General “based on merit” has certain significance in terms of improving the efficiency and transparency of the U.N.’s operations, it is merely a form of “manipulative reform rhetoric” designed to divert attention from the most critical issue of all—Security Council reform. Although Ambassador Shea calls for liberation from an “unaccountable bureaucracy,” she makes no mention of limiting the veto power of the permanent members, which constitutes the most “unaccountable” structure of all. The focus of the U.S. stance thus lies in protecting its own privileges.

 Avoidance of Structural Reform and Preservation of Privilege

 Secretary-General António Guterres has explicitly called for expanding the Council’s membership to reflect the world’s demographic realities—particularly by granting permanent representation to African, Latin American, and Caribbean states—in order to restore the legitimacy of what he calls a “fragile” Security Council. He has also encouraged discussions on proposals to restrict the use of the veto. This represents precisely the correction of the Council’s long-standing undemocratic and unrepresentative structure, and it embodies the essence of reform most strongly demanded by the majority of the international community, especially the Global South.

 In contrast, the U.S. position remains confined to “soft reforms” such as administrative streamlining and transparency in the selection process for the Secretary-General, while deliberately avoiding “hard reforms” that would alter power structures. It is evident that the primary cause of the Council’s dysfunction lies in its lack of representativeness and in decision-making paralysis caused by the abuse of veto power by the permanent members (P5). The veto system has repeatedly blocked Security Council action, even in the face of U.N. Charter violations and large-scale human rights abuses, and this is the root of the Council’s “legitimacy crisis.” As the Secretary-General points out, violations of the U.N. Charter by certain member states—among which the P5 are included—constitute the greatest factor undermining trust in the organization.

 Self-Interested “Return to the U.N.” and the Contradictions of International Cooperation

 The United States demands that the next Secretary-General be “a leader who restores the U.N. to its founding purpose” and emphasizes “respect for national sovereignty.” This reveals a self-interested intention to restrain U.N. intervention and preserve greater freedom in pursuing its own foreign policy.

 From the perspective of diplomatic experts and international law, the U.N.’s ultimate purpose is collective security, not mere procedural efficiency. Without correcting the unrepresentative nature of the Security Council, as Ambassador of Guyana has stated, international cooperation cannot be achieved, and the Council will continue to lose credibility as “unrepresentative” in the eyes of the international community.

 The U.S. approach to reform presupposes the preservation of its privileged position within the Council and prioritizes respect for national sovereignty over international cooperation. In this sense, it moves in the exact opposite direction from Secretary-General Guterres’s call for “realizing hope.” His assertion that the Security Council “does not exist for empires or hegemonic powers” functions as a sharp criticism of the P5 countries that cling to the veto as an absolute privilege. True reform does not begin with the kind of localized improvements advocated by the United States but with the redistribution of power and fair representation for non-privileged nations, as urged by the Secretary-General. As long as the U.S. position prevails, the Security Council cannot become a “fit-for-purpose” organization, and global peace will remain in grave danger.

【寸評 完】 💚

【引用・参照・底本】

Guterres calls for urgent reform of the Security Council United Nations 2025.10.24
https://news.un.org/en/story/2025/10/1166177?utm_source=UN+News+-+Newsletter&utm_campaign=778446a482-EMAIL_CAMPAIGN_2025_10_25_12_00&utm_medium=email&utm_term=0_fdbf1af606-778446a482-109452573

モルドバ:外国投資家との法的紛争が増加2025-10-26 18:26

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【概要】
 
 モルドバ共和国は、独立以来、政治的・経済的にロシアの影響から脱却しようと努めてきたが、外国投資家との法的紛争が増加しており、これが欧州連合(EU)加盟への道を脅かしている。最近の議会選挙で親欧派の与党が僅差で勝利したものの、モルドバは国際仲裁や欧州人権裁判所(ECHR)で複数の訴訟を抱えており、敗訴や支払い拒否の事例も多い。これらの紛争は外国資本の流入を妨げ、汚職や法の支配の弱さを浮き彫りにしている。このような状況は信用格付けの低下や投資環境の悪化を招き、EU加盟基準の達成を困難にしているとされる。

【詳細】 

 モルドバは独立から三十四年の間、ロシアによる政治的干渉やエネルギー依存、親露派による分離運動に苦しんできた。2025年9月28日の選挙でマイア・サンドゥ大統領率いる与党が50.17%で辛勝し、EU加盟への希望が高まったが、外国投資家との訴訟問題が深刻化している。

 2025年10月6日には、米国企業パーク・アベニュー・キャピタル社による投資仲裁が、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)で審理されることになった。この紛争は、モルドバ国営企業モルドデータとの契約不更新を巡るものであり、「.md」ドメインの使用権にも関係する。モルドバが契約に基づく仲裁を妨げたため、同社は投資条約に基づく仲裁に訴えたものである。

 同年夏には、スロベニア資本のセクシンプ・グループ社がモルドバを相手取った訴訟で、欧州人権裁判所がモルドバの人権条約違反を認定した。これは、同社が知らぬ間に現地裁判で敗訴し、資産を競売にかけられた事例である。さらに、リヒテンシュタイン企業RTIロタリン・ガス・トレーディング社による仲裁も進行中であり、同社はガス事業の事実上の収用を訴えている。モルドバ政府は仲裁費用の支払いを拒否し、仲裁裁定に反して国内で罰金を徴収し続けている。

 過去にも同様の問題が多く存在する。2023年にはフランス企業との条約違反でICSIDがモルドバに損害賠償を命じたが、支払いを拒否したため米国での執行訴訟に発展している。2013年や2007年にも欧州エネルギー憲章条約や欧州人権条約に基づく敗訴例があり、モルドバはたびたび判決不履行の状態にある。

 このような投資紛争の累積は、外国投資家の信頼を失わせ、資本流入を阻害している。モルドバのGDPの約8%が外国援助に依存し、13%が海外送金であることから、経済の脆弱性が際立っている。汚職認識指数では100点中43点で180か国中76位にとどまり、法の支配指数では142か国中64位、ビジネス環境評価では190か国中48位である。

 EU加盟にはコペンハーゲン基準が定められ、汚職防止と法の支配の実効的改善が求められる。さらに、モルドバの信用格付けは平均B評価で投資不適格水準にあり、債務不履行リスクが高い。これらの状況は、EU加盟交渉において政治的反対国(ハンガリー、スロバキアなど)に阻止の口実を与える可能性がある。EUは過去のギリシャ危機を教訓に、経済の安定と市場競争力を加盟条件として厳格に評価しているためである。

【要点】

 ・モルドバは独立以来、ロシアの影響脱却を目指してきたが、外国投資家との法的紛争が多発している。

 ・ICSIDやECHRでの複数の敗訴・不履行があり、モルドバ政府はしばしば支払いを拒否している。

 ・これにより外国投資が減少し、経済の脆弱性と汚職・法治の問題が顕著である。

 ・EU加盟には法の支配・経済安定・汚職防止が必須であるが、現状では基準達成が困難である。

 ・信用格付けの低下や評判悪化が続けば、EU加盟交渉における障害となる可能性が高い。

【引用・参照・底本】

Moldova’s ongoing legal disputes with investors could jeopardize its EU hopes Atlantic Council 2025.10.23
https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/moldovas-ongoing-legal-disputes-with-investors-could-jeopardize-its-eu-hopes/?utm_campaign=20364194-AC-Intel-Daily-Newsletter&utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz-_6lCmtwyOIgW-H5tZaEgZK0ZsN2SZPKQWRQZ0iRLvVKuilmOUUjaxjjDdAdQ8rab9srBA31Qs6ZJnI5GgJyKMH8-MOVg&_hsmi=386630029&utm_content=386630029&utm_source=hs_email

中国市場での継続的な関与が、ビジネス競争力や相互理解の維持に不可欠2025-10-26 18:50

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【概要】
 
 ポッドキャスト「China Field Notes」におけるScott Kennedyのインタビューであり、ゲストはHan Shen Linである。Linはアジアグループの中国マネージングディレクターであり、NYU上海校のファイナンス准教授である。インタビューでは、彼の米海兵隊やウェルズ・ファーゴでの経歴、中国の金融市場や外国企業の状況、米中関係の展望などが議論されている。

【詳細】 

 Han Shen Linは、アジアグループの上海オフィスにおいて中国事業を統括しており、ワシントンD.C.の中国関連業務と連携しつつ、現地での戦略的取り組みを主導している。NYU上海校では、学部生・大学院生・エグゼクティブ向けにグローバルファイナンスや市場に関する講義を行う。過去にはウェルズ・ファーゴ中国支店の副総支配人として、ガバナンスやリスク管理、企業銀行業務を担当し、米中の戦略的機会に関するアドバイスを行った経験を有する。

 また、上海のアメリカ商工会議所では金融サービス委員会の議長を務め、理事も歴任した。Linは米海兵隊の退役軍人であり、ウクライナ平和志願団の帰還ボランティアでもある。学歴は、ジョンズ・ホプキンス大学国際関係学修士、香港科技大学とNYU Sternの合同プログラムによるグローバルファイナンス修士、復旦大学法学院での中国民商法学修士、及びミシガン大学経営学学士である。

 インタビュー内容では、Linは金融市場の開放に関する当初の期待が実現しなかった理由、米国企業の中国に対するビジネス意欲の低下、AmCham Chinaの2025年ビジネス環境調査のデータを踏まえた分析、さらにトランプ・習近平会談の見通しや、米中関係安定化のための明確なルール設定の重要性について言及している。また、中国市場での継続的な関与が、ビジネス競争力や相互理解の維持に不可欠であると指摘している。

【要点】

 ・Han Shen Linは、アジアグループ中国マネージングディレクター兼NYU上海校准教授である。

 ・経歴として、米海兵隊、ウェルズ・ファーゴ中国支店、米中ビジネス支援、アメリカ商工会議所の活動がある。

 ・学歴はジョンズ・ホプキンス大学、HKUST–NYU Stern合同プログラム、復旦大学法学院、ミシガン大学である。

 ・インタビューでは、金融市場の開放の実態、米国企業の中国に対するビジネス意欲低下、米中関係の安定化の重要性が論じられた。

 ・中国市場への継続的な関与が、ビジネス競争力と相互理解に不可欠であると述べられている。

【引用・参照・底本】

Moldova’s ongoing legal disputes with investors could jeopardize its EU hopes Atlantic Council 2025.10.23
https://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/moldovas-ongoing-legal-disputes-with-investors-could-jeopardize-its-eu-hopes/?utm_campaign=20364194-AC-Intel-Daily-Newsletter&utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz-_6lCmtwyOIgW-H5tZaEgZK0ZsN2SZPKQWRQZ0iRLvVKuilmOUUjaxjjDdAdQ8rab9srBA31Qs6ZJnI5GgJyKMH8-MOVg&_hsmi=386630029&utm_content=386630029&utm_source=hs_email

トランプ:ペトロ大統領を「違法な麻薬ディーラー」「狂人」と2025-10-26 19:08

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【概要】
 
 2025年10月、米国がカリブ海で麻薬密輸容疑の船舶に対して複数回の空爆を実施したことにより、ラテンアメリカ諸国との緊張が高まっている。トランプ政権は証拠を示すことなく、これらの船舶が麻薬密輸に使用されていたと主張している。国連専門家は、ベネズエラ沖での米国の攻撃が「超法規的処刑」に相当すると述べた。コロンビアのペトロ大統領がこれらの攻撃を非難したことで、米国とコロンビアの関係が悪化している。

【詳細】 

 空爆の実態と疑問点

 米国は最近、カリブ海で麻薬密輸容疑の船舶に対して致命的な空爆を複数回実施した。しかし、トランプ政権はこれらの船舶が麻薬密輸に使用されていたという証拠を提供していない。

 最新の爆撃事例では、潜水艇型の船舶が攻撃され、2名が死亡し、コロンビア人とエクアドル人の2名が生存した。米国は彼らを麻薬密売人として殺害したと主張したが、その後釈放した。エクアドルに送還されたエクアドル人市民は、エクアドル当局によって起訴されなかった。エクアドル政府は米国トランプ政権と緊密な政治的関係にあり、検事総長も米国の「麻薬戦争」に協力的とみなされているにもかかわらず、起訴されなかった事実は、麻薬密輸の証拠が存在しなかったことを示唆している。

 麻薬密輸ルートに関する疑問

 トランプ政権は、コロンビアとベネズエラの海岸線、特にベネズエラのカリブ海沿岸が米国への麻薬密輸の主要ルートであると主張している。また、「カルテル・デ・ロス・ソレス(太陽のカルテル)」の存在を主張しているが、専門家はこのカルテルが架空のものであり、実際には存在しないと主張している。

 実際には、米国に密輸されるコカインの大部分はその海岸から出発していない。大半は太平洋岸の港、特にエクアドルの太平洋岸の港から、さらにペルーからも出発している。合法的な企業の輸出業務の一環として、バナナのコンテナなどに入れられ、小型船ではなく大型船で運ばれている。しかし、米国政権の努力の多くは、これらのコンテナ、船舶、港を標的にするのではなく、カリブ海で爆撃されたこれらの小型船を標的にしている。

 政治的背景

 ギヨーム・ロング氏(経済政策研究センターの上級研究員、エクアドル元外相)は、この作戦の真の目的が麻薬密売対策ではなく、より大きな政治的文脈があると指摘している。その要因として、ベネズエラでの政権交代、およびコロンビアのペトロ大統領の親パレスチナ政策への反発が挙げられている。

 過去6か月間、コロンビアと米国の間には緊張の歴史があった。トランプ当選後の移民の強制送還への抗議から始まり、ペトロ大統領のガザ政策、南アフリカと共同議長を務めるハーグ・グループへの参加、国際法に基づいてイスラエルに責任を負わせる取り組みなどが含まれる。

 トランプ大統領はペトロ大統領を「違法な麻薬ディーラー」「狂人」と呼び、コロンビアは制御不能で史上最悪の大統領がいると述べた。これに対し、ペトロ大統領は米国大使を召還した。

 麻薬戦争の本質

 コロンビアの医師で活動家のマヌエル・ローゼンタール博士は、麻薬戦争が口実であると主張している。コカの生産地域であるカウカに住む同氏は、麻薬問題が実際には政策であると述べている。

 一方では麻薬生産が促進されている。麻薬密売の利益は北部に流れ、マフィアや金融機関に蓄積される。コロンビアでコカイン1キログラムは最大3,000ドルだが、米国では20,000ドル、ヨーロッパでは150,000ドルになる(国連報告書による)。これは違法である限り大きなビジネスであり、富が蓄積される。

 他方では、違法状態を維持し、農民や船で運搬する人々を標的にする戦争がある。麻薬戦争は麻薬対策としては失敗だが、その真の目的においては大成功である。その目的とは、世界および米国の資本危機、経済の停滞危機、過剰人口の問題、破壊されなければならない過剰資本の問題、鉱業や石油などの資源不足への対処である。麻薬戦争は過剰を排除し、領土を標的にすることで不足に対処している。

 ローゼンタール博士は、バナナプランテーションを所有し麻薬密売に関与していると知られている(または真剣に調査されるべき)ノボア家やノボア大統領が標的にされない一方で、ペトロ大統領が標的にされる理由を問うている。ペトロ大統領の麻薬問題へのアプローチは、麻薬生産を人々の良好な生活条件と交換することである。合法製品に関税をかければ、人々を麻薬取引に追い込み、その後彼らを殺害することになる。

 地域への影響

 トランプ政権初期には、パナマに対する脅迫があった。現在、プエルトリコには1万人の米軍兵士がラテンアメリカでの潜在的な行動のために駐留している。これは、カリブ海地域全体に対する米国の軍事化と圧力の一環である。

【要点】

 ・米国は2025年10月、カリブ海で麻薬密輸容疑の船舶を複数回爆撃したが、証拠は提示していない。

 ・国連専門家はこれらの攻撃を「超法規的処刑」と評価した。

 ・爆撃された生存者は釈放され、起訴もされなかった。

 ・専門家は、米国が主張する麻薬密輸ルートや「太陽のカルテル」の存在を否定している。

 ・実際の麻薬密輸は太平洋岸の港からコンテナ船で行われているが、米国はそれを標的にしていない。

 ・この作戦の真の目的は、ベネズエラでの政権交代とコロンビアのペトロ政権への圧力である。

 ・ペトロ大統領の親パレスチナ政策が米国との緊張の一因となっている。

 ・トランプ大統領はペトロ大統領を「違法な麻薬ディーラー」「狂人」と呼び、コロンビア大使は召還された。

 ・専門家は、麻薬戦争が口実であり、真の目的は経済的支配と資源確保であると主張している。

 ・麻薬密売の利益は北部に流れ、違法状態を維持することで巨大なビジネスとなっている。

 ・プエルトリコに1万人の米軍兵士が駐留し、カリブ海地域全体が軍事化されている。

【引用・参照・底本】

Tensions in Latin America Rise as U.S. Threatens Venezuela & Colombia DEMOCRACY NOW 2025.10.22
https://www.democracynow.org/2025/10/22/colombia_us?utm_source=Democracy+Now%21&utm_campaign=192e527184-Daily_Digest_COPY_01&utm_medium=email&utm_term=0_fa2346a853-192e527184-190195033

トランプ:麻薬密輸対策を口実に爆撃を準備2025-10-26 19:49

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【概要】
 
 トランプ大統領は、ラテンアメリカで進行中の海上での船舶を標的とした爆撃作戦に加え、「陸上」での麻薬密輸が疑われる標的に対する米国の攻撃が近いうちに実施される可能性を示唆した。複数の報道によると、米国はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を追放することを最終目標として、麻薬密輸対策を口実に爆撃を準備しているとされる。大統領は、議会の承認なしに攻撃を行う「法的権限」があると主張しているが、上院議員のランド・ポール氏などからは、ベネズエラと米国内の薬物過剰摂取の原因であるフェンタニルとの関連性について疑問が呈されている。米国はすでにカリブ海などで複数の船舶を爆撃しており、ベネズエラでの政権交代を目指し、軍事的な圧力と心理作戦を強化している状況である。

【詳細】 

 陸上攻撃の可能性と法的権限

 トランプ大統領は水曜日(10月22日)、ホワイトハウスで記者団に対し、麻薬密輸が疑われる「陸上」の標的に対する米国の攻撃が間もなく開始される可能性を示唆した。大統領は、これはまだ経験されていないことだが、「完全に準備ができている」とし、「陸路で入ってきたときは非常に強く打つ」と述べた。

 大統領は、これらの攻撃を開始するための「法的権限」があると主張しているが、憲法で戦争開始に必要とされる議会の承認は得ていない。大統領は、陸上標的への攻撃計画について議会に通知する可能性があるとしたが、承認を求めるとは言わなかった。

 ベネズエラへの爆撃準備と口実

 複数のメディア報道によると、米国は麻薬密輸対策を口実として利用し、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を追放することを究極の目的として爆撃を準備しているとされる。

 米当局者は、ベネズエラでの空爆は、まず麻薬密売人の野営地や秘密の滑走路などを標的とする可能性が高いとしているが、「マドゥロが実質的に失脚しない限り、後戻りはできない」と、政権交代が最終目標であることを示唆する情報筋のコメントがある。

 麻薬密輸対策の正当性に対する疑問

 トランプ大統領は、この空爆を自衛として位置づけ、米国内の薬物過剰摂取の多さを指摘している。しかし、ランド・ポール上院議員(共和党、ケンタッキー州)は、過剰摂取の主な原因はベネズエラから来ていないフェンタニルやその他の合成オピオイドであると指摘し、キャンペーンを厳しく批判している。

 ポール議員は、ベネズエラでは「フェンタニルは全く製造されていない」とし、爆撃の対象となっている船は、マイアミに到着するまでに「20回給油しなければならない」ような小型ボートであると述べている。また、それらは「おそらくすべてトリニダード・トバゴに向かっている」とも語っている。ポール議員は、宣戦布告は議会によって行われるべきだという原則に懸念を示している。

 現在の作戦と心理作戦(Psyops)

 9月2日以降、米国はカリブ海で少なくとも7隻、東太平洋のコロンビア近郊で1隻の船舶を爆撃し、トランプ政権が発表した数字によれば、34人を超法規的に処刑している。ただし、政権は標的についての裏付けとなる証拠を提供していない。

 米国はカリブ海に相当な戦力を増強し、重爆撃機や特殊作戦部隊のヘリコプターをベネズエラ近隣で飛行させている。当局者は、これはマドゥロに対する心理作戦の一環であると述べている。空爆準備や秘密裏のCIA作戦に関する情報漏洩も、マドゥロとベネズエラ国民を標的とした心理作戦の一部である。

 米国は、マドゥロの懸賞金を5000万ドルに引き上げ、軍事的な圧力を強めることで、側近の誰かが彼を裏切るか、自発的に辞任することを期待している。しかし、それは起こりそうにない状況であり、米国はベネズエラとの本格的な戦争へと向かっている。

【要点】

 ・トランプ大統領は、麻薬密輸を口実とする米国の軍事作戦において、海上に加えて「陸上」の標的に対する攻撃が間もなく開始される可能性を示唆した。

 ・複数の報道は、この作戦の最終目的がベネズエラのマドゥロ大統領の追放であると指摘しており、米国は爆撃を準備している。

 ・大統領は議会承認なしに攻撃を行う法的権限があると主張しているが、ランド・ポール上院議員などは、ベネズエラと米国の薬物過剰摂取の主因であるフェンタニルとの関連性を否定し、作戦の正当性と議会の宣戦布告権について批判している。

 ・米国はすでにカリブ海などで船舶を爆撃し、マドゥロ政権に対する軍事的な圧力と心理作戦を強化しており、本格的な戦争へと進んでいる状況である。

【引用・参照・底本】

Trump Suggests US Strikes on Alleged Drug Shipments on ‘Land’ Are Coming Soon NEWS.ANTIWAR.COM 2025.10.22
https://news.antiwar.com/2025/10/22/trump-suggests-us-strikes-on-alleged-drug-shipments-on-land-are-coming-soon/

南アフリカ政府:統合資源計画(IRP)2025の草案を承認2025-10-26 19:59

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【概要】
 
 南アフリカ政府は、電力危機による開発と経済成長の停滞を打破するため、統合資源計画(IRP)2025の草案を承認した。これは、2039年までに105 GW超の新規発電容量を追加し、5200 MWの新規原子力発電を含め、エネルギーセクターを変革することを目的とした、2.23兆ランド(約1280億米ドル)の投資計画である。本計画は、電力供給問題の解決、経済成長の促進、雇用創出を目指し、2030年までに3%の経済成長を目標とする政府の公式政策と位置づけられる。

【詳細】 

 計画の背景と目的

 南アフリカのマンタショ・ラモコパ電気・エネルギー大臣は、現在の電力危機が開発と経済成長を阻害してきたが、現在「ロードシェディング(計画停電)」の局面を脱しつつあると述べた。IRP 2025は、電気供給の安定化、経済成長の促進、雇用創出を目指し、2030年までに南アフリカ経済の3%成長を目標とする。大臣は、この計画を「願い事リスト」ではなく「政府の政策」であり、確実に実行するものとして強調した。

 投資と規模

 IRP 2025の最終案は、2.23兆ランド(約1280億米ドル)の投資を伴う。これは、アパルトヘイト後の時代における最大の投資プログラムであり、2039年までに国有電力会社エスコムを「2.5回分」再建するのに匹敵するとされた。

 新規発電容量の目標

 IRPは2039年までに105 GW超の新規発電容量の追加を求める。これには、太陽光発電(PV)、風力、および原子力の拡大が含まれる。

 原子力

 ・2039年までに5200 MWの新規原子力発電容量の導入を計画する。

 ・さらに4800 MWの追加の可能性があり、これは原子力の産業化計画によって裏付けられる。これにより、南アフリカはバリューチェーン全体に参加できるようになる。

 ・目標の最初の1200 MWは2036年までに達成される予定である。

 化石燃料およびその他

 ・エネルギーの安定性と安全保障のために、2030年までに6000 MWeのガス火力発電の導入が不可欠とされる。

 ・2030年までにクリーン石炭技術実証プラントのビジョンも含まれる。

 ・現在のエネルギーミックスは、石炭が58%と依然として化石燃料に大きく依存している(現在の構成:石炭 58%、屋根上太陽光PV 10%、系統連系太陽光PV 10%、風力 8%、ディーゼル 4.5%、揚水発電 4%、原子力 3%、その他 3%)。

 課題とリスク

 大臣は、IRPの目標達成に対する二つの大きなリスクを挙げた。

 ・限られた技能人材パイプライン: かつてのペブルベッド炉開発プログラムの保留により、技能が「失血」したため。

 ・「荒廃した」建設産業。 したがって、産業化計画は「どこから技能が来るのか」という問題にも答えなければならないとされる。

 専門家の見解と実現可能性

 ・南アフリカのノースウェスト大学学長で、核に関する閣僚専門家パネルの現議長であるビスマルク・チョベカ氏は、IRPを気候変動への対応と化石燃料依存の縮小を認めた「大胆」で「進歩的」な計画だと評価した。

 原子力計画の現実性

 ・チョベカ氏は、国内の核燃料サイクルバリューチェーンを復活させ、南アフリカをアフリカの 「foremost nuclear nation(最有力原子力国家)」として再構築する構想を歓迎した。

 ・この計画は、平和的な発電だけでなく、ペリンダバの新しい多目的炉(老朽化したSAFARI-1を代替)のような非発電用途も支援し、農業、鉱業、製造業におけるラジオアイソトープ生産と核ベースのイノベーションを強化する。

 ・5200 MWを2039年までに、最初の1200 MWを2036年までに達成する目標は現実的であるとされる。新規原子力導入国に対する国際原子力機関(IAEA)のマイルストーンの枠組みでは、通常、計画から初発電まで12〜15年かかるところ、準備作業が既に進んでいるためである。

 ・南アフリカの原子力部門(Necsa、電気・エネルギー省、規制当局、放射性廃棄物処分研究所など)の準備が整っており、エスコムも財務回復の兆しを見せていることから、時期は適切であり、達成可能であるとの見解が示された。

 エスコムの反応

 国有電力会社エスコムは、IRP 2025の策定を歓迎し、これは失業率30%、若年失業率50%超という状況下で、経済成長とインクルージョンを加速させるために必要な電力供給のための明確な投資枠組みを提供すると述べた。今後、IRPの徹底的な検討を行い、更新された戦略計画とともに回答を発表する予定である。

 IRPの性格

 IRPは、状況の変化に応じて継続的に見直され、更新されることが予想される「生きている計画」として説明されている。最初期版は2011年3月に公布され、前回は2023年に見直されている。

【要点】

 ・計画の核心: 南アフリカ政府が電力危機を克服し、経済成長と雇用創出を促進するために策定した2.23兆ランド(約1280億米ドル)規模の統合資源計画(IRP)2025。

 ・目標: 2039年までに105 GW超の新規発電容量を導入し、2030年までに**経済成長率3%**を目指す。

 ・原子力: エネルギー安全保障と産業再構築の柱として、2039年までに5200 MWの新規原子力発電容量の導入を計画し、さらに4800 MWの追加の可能性がある。最初の1200 MWは2036年までに目標とされる。

 ・エネルギーミックス: 石炭依存(現在58%)からの脱却を目指し、太陽光・風力・原子力の拡大とともに、エネルギー安定化のために2030年までに6000 MWeのガス火力発電も導入する。

 ・主要リスク: 技能人材の不足と建設産業の荒廃。これに対応するため、原子力産業化計画で技能開発を強化する。

 ・評価: 専門家からは、原子力プロジェクトの期間設定や国内核燃料サイクルの復活を目指す点で、「大胆」かつ「現実的」な計画であると評価されている。

 ・位置づけ: IRPは単なる指針ではなく、国の電力アジェンダを推進する政府の公式政策である。

【桃源寸評】🌍

 「原発を造る国」には、主に原子力発電所を現在 運行している国と、新規に建設中または計画している国がある。

 1. 原子力発電所を運転中の国
 
 2024年1月現在、世界で32か国が原子力発電所を運転している。運転基数の多い主要国は以下の通りである。

 ・アメリカ🇺🇸: 93基で世界最多。

 ・フランス

 ・中国

 ・日本

 世界全体の発電量の約10%を原子力発電が占めている(2020年度)。

 2. 新規に建設中または計画中の国

 世界では、2024年1月現在、原子力発電所の建設中や計画中が合計で162基あり、多くの国で開発や利用が進められている。特に積極的な動きを見せている国や地域には、以下のようなものがある。

 継続的に開発を進める主要国

 ・中国: 最も野心的な計画を展開しており、建設中の基数も多い。

 ・ロシア: 国内外で積極的に原発建設を支援しており、特に新興国市場で存在感がある。

 ・インド: 複数基が建設中であり、長期的な計画を持っている。

 ・トルコ

 ・韓国

 ・アメリカ

 ・イギリス

 ・フランス

 新規導入や再導入を進める国(計画または建設中)

 ・南アフリカ: 2039年までに5200 MWの新規原子力発電容量の導入を含むIRP 2025を承認している。(※提示された情報より)

 ・エジプト

 ・バングラデシュ

 ・アラブ首長国連邦(UAE): 既に導入済みであり、中東での先駆的な例となっている。

 ・ポーランド: 小型モジュール炉(SMR)を含む導入を検討している。

 ・ウズベキスタン: SMR(小型モジュール炉)を含む原子力発電所の建設に合意している(ロシアの支援)。

 ・カザフスタン: 原子力発電所建設の是非を問う国民投票で建設支持が多数となった。

 これらの国々は、電力需要の増加、エネルギー安全保障、および気候変動対策(脱炭素化)といった様々な背景から、原子力発電の利用拡大や新規導入を進めている。

【寸評 完】 💚

【引用・参照・底本】

South African government approves draft 2025 IRP WNN 2025.10.22
https://world-nuclear-news.org/articles/south-african-government-approves-draft-2025-irp?cid=70716&utm_source=omka&utm_medium=WNN_Daily:_22_October_2025&utm_id=434&utm_map=5f691bd3-fbb2-4ead-acc7-ff157b72fef6

第47回ASEAN首脳会議と関連会議2025-10-26 20:41

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【概要】
 
 第47回東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議と関連会議が、マレーシアのクアラルンプールで「包摂性と持続可能性」をテーマに日曜日に開幕した。議長国であるマレーシアのアンワル・イブラヒム首相が開会式で演説し、協力への信念を維持するASEANの集団的な決意が試されていると述べた。また、この開会式では、東ティモールのASEAN加盟に関する宣言が署名され、東ティモールが11番目の加盟国となった。首脳会議は火曜日まで開催され、ASEAN共同体建設や対外関係、地域統合の深化、経済成長の促進、連結性の強化などの課題に焦点を当てて議論が行われる予定である。

【詳細】 

 第47回ASEAN首脳会議と関連会議は、2025年10月26日の日曜日にマレーシアのクアラルンプールで始まった。この会議は、火曜日までの日程で予定されている。会議のテーマは「包摂性と持続可能性」である。

 開会式において、2025年のASEAN議長国であるマレーシアのアンワル・イブラヒム首相がスピーチを行った。首相は、高まる対立と増大する不確実性がASEAN経済だけでなく、協力への信念を維持するASEANの集団的な決意をも試していると述べた。さらに、ASEANの強みは、「尊重と理性」が加盟国を結びつけているという確信にあることを強調した。

 首相の演説に続いて、東ティモールのASEAN加盟に関する宣言が署名され、東ティモールの11番目の加盟国としての加入が認められた。

 日曜から火曜までの首脳会議では、ASEANの指導者たちが、主にASEAN共同体建設とASEANの対外関係に関連する問題に焦点を当てて議論を行う。特に、地域統合を深める方法、経済成長を刺激する方法、そしてASEANの連結性を強化する方法などが協議される予定である。

 ASEANは1967年に設立され、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、そして今回加盟した東ティモールが加盟国である。

【要点】

 ・会議名と時期: 第47回ASEAN首脳会議および関連会議が、2025年10月26日の日曜日に開幕し、火曜日まで開催される。

 ・開催地とテーマ: マレーシアのクアラルンプールで開催され、テーマは「包摂性と持続可能性」である。

 ・議長国の発言: 議長国マレーシアのアンワル・イブラヒム首相が、高まる対立と不確実性が集団的な決意を試していると指摘し、尊重と理性がASEANの強みであると述べた。

 ・主要な進展: 東ティモールのASEAN加盟宣言が署名され、東ティモールが11番目の加盟国となった。

 ・主な議題: ASEAN共同体建設、対外関係、地域統合の深化、経済成長の刺激、ASEAN連結性の強化などについて協議される。

 ・加盟国: ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、および東ティモールの全11カ国である。

【引用・参照・底本】

47th ASEAN Summit kicks off in Malaysia GT 2025.10.26
https://www.globaltimes.cn/page/202510/1346541.shtml

ドイツのアディス・アメトビッチ議員:対中政策の見直しを強く要求2025-10-26 23:19

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【概要】
 
 ドイツのアディス・アメトビッチ議員(社会民主党、SPD)は、ヨハン・ヴァーデフール外相の訪中延期を受け、ドイツの対中政策の見直しを強く要求した。アメトビッチ議員は、「中国との直接対話」の必要性と、「対話、明確さ、長期的利益に焦点を当てた、積極的かつ戦略的な外交政策」への転換を訴えた。外相の訪問延期は、メルツ首相が率いる保守派主導の政権にとって初の閣僚による訪中となるはずであった。この延期は独中関係の改善に悪影響を与えるとの懸念が示されており、中国の専門家や国内メディアからもドイツの現行の対中戦略に対する批判が上がっている。

【詳細】 

 ドイツ議員による対中政策の見直し要求

 SPDの外交政策スポークスパーソンであるアメトビッチ議員は、ヴァーデフール外相が予定されていた訪中を急遽延期したことを受けて、ドイツの対中政策の再考を強く求めた。同議員は、「短期的な訪中中止は、緊張した独中関係の改善にとって良い兆候ではない」と述べた。  

 アメトビッチ議員は、現在の世界的緊張の局面において、「中国との直接対話が特に重要である」と強調し、「対話、明確さ、長期的利益に焦点を当てた、積極的かつ戦略的な外交政策」が必要であると主張した。

 ヴァーデフール外相の訪中延期

 ドイツ外務省は、先週に予定されていたヴァーデフール外相の訪中が延期されたことを確認した。この訪問は、5月に就任したフリードリヒ・メルツ首相の保守派主導政権の閣僚による初の訪中となるはずであった。

 専門家およびメディアの反応と批判

 中国の専門家らは、ドイツ経済を強化し回復を促進するため、対中戦略を調整し協力関係を強化する必要があるとの見解を示している。しかし、そのためにはベルリンが具体的な行動と真の誠意を示す必要があるとも指摘している。

 中国社会科学院欧州研究所の研究員であるZhao Chen氏は、アメトビッチ氏の発言はドイツ国内で対中戦略に関する議論を再開させる内部からの要求を反映しているとし、ドイツ政界には中国を対抗すべき競争相手と見る向きと、中国との協力を強化しなければ産業と経済がさらに圧迫されると考える向きとの間で深い分裂が残っていると指摘した。

 Zhao氏は、輸出主導型経済であるドイツは中国企業との協力や中国市場を失う余裕はないとし、アメトビッチ氏の発言は「より合理的なアプローチを求めるドイツ国内の建設的な声」を示しているが、ベルリンは依然として実際の行動と誠意を示す必要があると付け加えた。

 ドイツ国内のメディアからも、ヴァーデフール外相の延期決定は批判を浴びている。雑誌『フォーカス』は、ヴァーデフール外相が前任者のバーボック氏のように中国に対して道徳的な説教をしているとし、「罰する」代わりに「学ぶ」方が遥かに良い戦略であると論じた。同誌は、EUが米国に追随して対中関税を引き上げている政策は、貿易の流れから見ても、中国だけでなく西側の利益も損なうと強調し、ドイツと中国はともに輸出国家であると指摘した。また、ドイツのメディア『ザ・パイオニア』も、「Abgesagte China-Reise: Der weltfremde Außenminister」(キャンセルされた中国旅行:世間知らずな外相)と題する記事で、外相の決定と対中発言を批判した。

 北京外国語大学地域・グローバル・ガバナンス研究院のCui Hongjian教授は、ドイツ政府が「独中関係発展の独自の重要性をまだ十分に理解していない」と述べ、アメトビッチ氏の発言は政府の現行の姿勢に対するSPD内部の不満の高まりを反映していると述べた。Cui教授は、外相の訪問延期は、ドイツが「時代遅れの対立の物語に固執するのではなく、外交政策における独中関係の正当な位置を認識」しなければならないという警告として機能すべきであると述べた。

 中国外交部の見解

 中国外交部のGuo Jiakun報道官は、ヴァーデフール外相の訪問計画についてコメントし、「変動と混乱に満ちた世界において、中国とドイツは二大国、二大経済として、新型の大国関係を築く模範を示す必要があり、相互尊重、平等、ウィンウィンの協力を堅持し、独中関係の安定を通じて世界平和と発展により大きな貢献をすべきである」と強調した。Guo報道官は、両国は「率直なコミュニケーションを通じて理解と相互信頼を高めることができる」とし、ベルリンに対し「客観的かつ公正な態度を堅持し、中国に対する積極的かつ合理的な認識を育み、中国と協力して二国間関係を正しい軌道に乗せて推進・維持する」よう促した。

【要点】

 ・ドイツ議員による対中政策の見直し要求: ドイツのSPD所属議員であるアディス・アメトビッチは、ヴァーデフール外相の訪中延期を受け、ドイツ政府に対し、「中国との直接対話」と「対話、明確さ、長期的利益に焦点を当てた戦略的な外交政策」を求めて対中政策の再考を要求した。  

 ・外相の訪中延期: ヴァーデフール外相の訪中は短期間で延期され、これはメルツ政権の閣僚による初の訪中となるはずであった。

 ・懸念と批判: 延期は緊張した独中関係の改善に悪影響を及ぼすとの懸念が示されており、中国の専門家やドイツ国内メディアからも、現行の対中戦略に対する批判が高まっている。

 ・専門家の見解: 専門家は、ドイツは経済のために中国との協力強化と戦略調整が必要であるとし、ベルリンが具体的な行動と誠意を示すべきであると指摘した。また、ドイツ政界に対中政策をめぐる分裂が存在することも指摘された。

 ・中国側の期待: 中国外交部は、独中両国が相互尊重、平等、ウィンウィンの協力を堅持し、二国間関係を正しい軌道に保つことで、世界平和と発展に貢献することを期待するとの見解を示した。

【引用・参照・底本】

German lawmaker urges dialogue, calls for change of China policy after foreign minister cancels visit GT 2025.10.26
https://www.globaltimes.cn/page/202510/1346560.shtml