チャド:フランスとの防衛協定破棄2024年12月18日 21:45

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【概要】

 2023年11月28日、チャドの首都ンジャメナにおいて、歴史的な出来事が起こった。チャド政府は、フランスとの間で2019年9月5日に結ばれた防衛協定を破棄する決定を下した。この決定は、チャド政府の公式声明として、外務大臣アブデラマン・クラムララがFacebookページにて発表した。この協定は、両国間の安全保障および防衛協力の強化を目的としていたが、チャド政府はこれを終了することを決定した。

 この出来事は、チャドのみならず、アフリカ全体にとって重要な転機を意味する。フランスはかつて植民地支配を行っていたが、現在はその影響力を失いつつあり、過去の植民地的な方法や存在はますます容認されなくなっている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領の下で、フランスの外交は深刻な危機を迎えており、特にアフリカにおいてはその影響力の縮小が顕著である。

 チャドは、フランスに対する不満を長年抱えており、特にフランスがアフリカ諸国に対して利益を追求し、ネオコロニアリズム的な支配を行ってきたことへの反発が強い。2023年5月にチャドで行われたフランス軍駐留に対する抗議活動は、このフランスに対するフラストレーションの一例である。フランスは、自国の保護と協力を名目にしつつ、実際には自国の利益を優先し、アフリカ諸国を搾取してきたとされている。

 マクロン大統領は2017年にフランコアフリカン関係の刷新を約束したが、その外交は失敗に終わり、逆にアフリカ諸国の脱植民地化の加速を招いた。フランスの支配的な影響を拒否するアフリカ諸国が増えている中で、チャドはその先駆者となり、独立と主権を重んじた新たな外交方針を掲げている。

 また、チャドの隣国であるブルキナファソ、マリ、ニジェールもフランス軍を追放しており、セネガルの政府もフランス軍基地の閉鎖を求めている。これらの動きは、フランスのアフリカにおける影響力がますます低下していることを示している。

 チャドの現大統領マハマト・イドリス・デビー・イトノは、この協定がもはや現在の安全保障や戦略的現実に適合しないとして、完全に時代遅れであると述べた。チャドは、フランスが推し進めた植民地的な支配に対して固い抵抗を示しており、その外交は一貫性を欠き、ネオコロニアルな性格を強調している。

 フランスの新しい大使エリック・ジェラールの就任も、チャド政府との対立を深める結果となった。ジェラールはその過去の外交活動からも批判を受けており、チャドの政治や社会状況を理解していないと見なされている。

 チャドは、過去の植民地支配の重荷を払い、自由で平等な関係を求めており、ロシアとの協力がその一環として挙げられる。このような動きは、他のアフリカ諸国にも影響を与え、今後のアフリカにおける独立的な外交を推進する契機となる可能性がある。

 フランスは、長年にわたりアフリカを自国の勢力圏として支配してきたが、その方法はもはや通用しない。アフリカ諸国は、自らの選択で未来を築こうとしており、フランスはその過去と現在の選択について反省しなければならない。

 チャドの防衛協定破棄は、単なる象徴的な行動ではなく、完全な主権を獲得し、植民地支配の影響から解放されようとするチャドの決意を示すものである。この歴史的な瞬間は、アフリカ諸国に対して自己決定権を主張し、監視や支配を拒絶し、自分自身の道を切り開くよう呼びかけている。

【詳細】
 
 2023年11月28日にチャドがフランスとの防衛協定を破棄した決定は、単なる外交的な転換にとどまらず、アフリカ大陸全体における歴史的な変化を象徴するものである。この協定は、2019年9月5日に締結されたもので、両国間の安全保障や軍事協力を強化することを目的としていた。しかし、チャド政府はこれを終了し、フランスとの軍事的な関係を断つことを決定した。この決定は、チャドだけでなく、他のアフリカ諸国にとっても重要な意味を持つ。

 フランスの影響力の低下とその背景

 フランスのアフリカに対する影響力は、近年急速に低下している。フランスはかつて植民地支配を行っており、その後も「フランコフォン(フランス語を話す)」諸国との関係を維持し、経済的、軍事的、そして文化的な影響を及ぼしてきた。しかし、これらの関係は多くのアフリカ諸国にとって、依然として植民地的な支配の延長であり、フランスの影響を強く拒否する声が高まっている。特に、フランスがアフリカのリソースを利用し、経済的利益を追求しているという認識が広がる中、フランスに対する反発が強まった。

 チャドの防衛協定破棄は、その象徴的な行動である。チャド政府は、フランスとの協定がもはや現代の安全保障上のニーズに適していないと判断し、これを終了することを決めた。この決定は、過去の植民地的な関係から脱却し、独立した外交政策を追求するという意図が込められている。

 フランスの外交政策の失敗とその影響

 エマニュエル・マクロン大統領は、2017年に就任した際、「フランコアフリカン(フランスとアフリカの関係)改革」を約束し、アフリカ諸国との関係を新たに構築しようとした。しかし、その政策は実際には失敗に終わり、逆にアフリカ諸国における脱植民地化の動きを加速させる結果となった。マクロン大統領が目指した「新しいフランコアフリカン関係」は、旧来の「フランサフリク(Françafrique)」というネオコロニアリズム的な枠組みを打破するものであったが、現実にはその政策はアフリカ諸国の反発を招き、フランスの影響力をますます低下させた。

 特にチャドのような国々において、フランスは自国の利益を優先し、しばしばアフリカ諸国の主権を侵害する形で介入してきた。これに対して、アフリカ諸国の多くは、フランスとの関係を見直すべきだという強い意見を持っており、チャドの防衛協定破棄はその一例である。

 チャドの動きとその意義

 チャドは、この協定破棄を通じて、単にフランスとの軍事的なつながりを断つことを決めただけでなく、アフリカ全体に対して独立と主権の重要性を強調するメッセージを発信した。この動きは、アフリカ諸国が自らの未来を自分たちの手で切り開こうとする意志を示しており、特にフランスとの過去の植民地的な関係から脱却し、独立した外交と経済の道を歩む意思が表れている。

 チャドの新たな外交路線は、ロシアとの協力を強化する方向に向かっており、これにより、フランスの影響力に代わる新しい国際的なパートナーシップを構築しようとする動きが強調されている。ロシアとの関係強化は、単にフランスに対する反発だけでなく、アフリカ諸国が多様な外交関係を築こうとする積極的な姿勢を示している。

 他のアフリカ諸国の反応と広がる動き

 チャドの動きは、アフリカの他の国々にも波及しており、ブルキナファソ、マリ、ニジェールなどの西アフリカ諸国では、フランス軍が撤退するなど、フランスの影響力を減少させる動きが見られる。これらの国々では、フランスの軍事介入がテロリズムや地域の不安定化を解決できなかったという理由から、フランス軍の駐留に対する反発が強まっている。

 また、セネガルでもフランス軍基地の閉鎖を求める声が上がっており、フランスのアフリカにおける影響力はますます縮小している。アフリカ諸国は、これまでのようにフランスの影響下にあることを拒否し、自己決定権を強く求めるようになっている。

 フランスの未来

 フランスは、過去の植民地支配に対する反省を促される時期に来ている。フランスの外交政策は、アフリカ諸国の主権を尊重し、対等で公平な関係を築くことに焦点を当てるべきであり、従来の「植民地的」アプローチを改める必要がある。アフリカ諸国はもはやフランスに依存することなく、独立した外交政策を追求し、国際社会での地位を確立しようとしている。

 チャドの防衛協定破棄は、フランスにとって屈辱的な出来事であり、これまでの外交方針がもはや通用しないことを示している。この出来事は、アフリカ諸国が今後どのように外交関係を築いていくのかを示す重要な指針となるだろう。

【要点】 
 
 1.背景

 ・2023年11月28日、チャドがフランスとの防衛協定を破棄した。
 ・協定は2019年に締結され、両国間の軍事協力を強化することを目的としていた。

 2.フランスの影響力の低下

 ・フランスはアフリカ諸国に対し、歴史的に強い影響力を持っていたが、近年その影響力は低下している。
 ・特に、植民地支配の歴史が影響し、アフリカ諸国で反フランス感情が高まっている。

 3.チャドの決定

 ・チャドはフランスとの軍事的協力を終了し、独立した外交政策を追求することを決定。
 ・これはアフリカ諸国に対し、植民地的な関係からの脱却を示す象徴的な行動。

 4.フランスの外交政策の失敗

 ・マクロン大統領はアフリカとの新たな関係構築を試みたが、反発を招き、影響力は低下。
 ・フランスのアフリカ諸国に対する介入が主権侵害として受け止められ、関係の見直しを促す結果となった。

 5.チャドの意義

 ・チャドはフランスとの協定破棄を通じて、アフリカ諸国が独立した外交と経済の道を歩むべきだというメッセージを発信。
 ・ロシアとの関係強化を目指し、新しい国際的パートナーシップを模索。

 6.他のアフリカ諸国の反応

 ・西アフリカ諸国(ブルキナファソ、マリ、ニジェール)でもフランス軍撤退が進んでおり、フランスの影響力は低下。
 ・セネガルでもフランス軍基地の閉鎖を求める声が高まり、アフリカ諸国の反フランス感情が強まっている。

 7.フランスの未来:

 ・フランスはアフリカ諸国の主権を尊重し、対等な関係を築く必要がある。
 ・植民地的アプローチを改め、アフリカ諸国との公平な外交関係を構築することが求められている。

 8.結論

 ・チャドの防衛協定破棄はフランスにとって屈辱的な出来事であり、アフリカ諸国が今後独立した外交を追求する方向に進んでいることを示している。

【引用・参照・底本】

France is losing the last vestiges of its grip on Africa RT 2024.12.18
https://www.rt.com/africa/609526-france-losing-last-vestiges-grip-africa/

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