人工知能と人権、民主主義及び法の支配に関する欧州評議会枠組条約2025-02-12 19:25

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【概要】

 2025年2月11日(現地時間)、フランス・パリで開催されたAIアクション・サミットの際に、「人工知能と人権、民主主義及び法の支配に関する欧州評議会枠組条約」の署名式が行われた。この条約は、昨年5月に欧州評議会閣僚委員会で採択されたもので、AIシステムのライフサイクル全体にわたる活動が人権、民主主義、法の支配に適合することを目的としている。日本は、アジアで唯一の欧州評議会オブザーバー国として、この条約の起草作業に貢献し、安全で信頼できるAIの実現に向けた国際的な取り組みを主導してきた。

 この条約は、AI活動が人権、民主主義、法の支配に適合することを確保することを目的としており、特に公的機関のAI活動に適用される。民間のAI活動に関しては、条約の規定の適用やその他の適切な措置を講じることが求められ、国防に関する事項は対象外である。また、条約はAI活動に関する原則として、人間の尊厳、透明性、監督、責任、平等、無差別、プライバシー保護、安全なイノベーションなどを掲げている。

 さらに、条約はAI活動による危険性や影響の評価を行い、それに基づいて必要な措置を採ることを求めている。また、AIシステムによる人権侵害に対する実効的な救済措置を設け、国際協力を促進することも重要な内容である。監督機関の設置も義務づけられ、適切な権限・専門知識・資源を備えた独立した機関が義務遵守を監視する役割を担う。

 この条約は、署名国が5か国(欧州評議会加盟国3か国を含む)に達し、署名から3か月後に効力を発する。現時点では、条約は未発効であり、署名国の数が要件を満たす必要がある。

【詳細】

 「人工知能と人権、民主主義及び法の支配に関する欧州評議会枠組条約」は、人工知能(AI)の発展と利用における倫理的・法的基準を定めることを目的とした国際的な枠組みである。この条約は、AI活動が人権、民主主義及び法の支配に適合することを保証することを主眼としており、AI技術が引き起こす可能性のある危険性や影響を予測し、これに対処するための措置を各国が講じることを求めている。以下に、この条約の詳細について説明する。

 背景

 この条約の交渉は、2022年4月に欧州評議会の人工知能(AI)に関する委員会で開始された。日本は、欧州評議会のオブザーバー国として、この交渉に参加し、条約の起草過程にも関与している。条約は2024年5月に欧州評議会閣僚委員会で採択され、2024年9月から署名が開放され、2025年2月11日にフランス・パリで行われたAIアクション・サミットの場で正式に署名された。

 主な目的

 この条約の主目的は、AIシステムがそのライフサイクル全体にわたって、人権、民主主義及び法の支配に合致するように確保することである。これには、AIの設計、開発、運用における透明性、公正性、責任を確保し、AI技術が社会に与える影響を管理することが含まれる。

 適用範囲

 この条約は、主に公的機関によるAI活動に適用される。公的機関には、政府機関や公共部門を指し、民間企業が代行する場合も含まれる。また、民間のAI活動については、その危険性や影響に応じて、条約の規定の適用またはその他の適切な措置を取ることが求められている。これには、AIの使用による潜在的な人権侵害を防止するための措置や、個人情報保護などの責任が含まれる。なお、国防に関するAI活動は、この条約の適用外となる。

 AI活動に関する原則

 条約は、AIシステムが遵守すべき基本的な原則を定めている。これらの原則には以下が含まれる:

 ・人間の尊厳:AIの使用が人間の基本的な権利と尊厳を侵害しないこと。
 ・透明性:AIシステムの仕組みや運用に関して、説明責任を果たすこと。
 ・監督と責任:AIシステムの使用に関する監視と管理を徹底し、責任の所在を明確にすること。
 ・平等と無差別:AIが偏見を助長することなく、公正で平等に運用されること。
 ・プライバシーと個人情報保護:AI活動が個人のプライバシーを尊重し、個人情報を適切に保護すること。
 ・安全なイノベーション:AI技術が安全で信頼性のあるものであること。

 危険性・影響評価

 条約は、AI活動が人権、民主主義及び法の支配に及ぼす危険性や影響を特定し、それに対する評価、予防、緩和措置を講じることを求めている。具体的には、AI活動が社会に与えるリスクや影響を定期的に評価し、これに基づいて対策を採ることが求められる。

 実効的な救済措置

 AIシステムの使用によって人権侵害が発生した場合に、被害者が実効的な救済を受けられるよう、条約は実効的な救済手段を規定している。これには、AIシステムに関する情報の記録や、権限を有する当局に対して申立を行う権利が含まれる。

 国際協力

 条約は、締約国が協力し、情報交換や人権保護の強化を図ることを奨励している。特に、AI活動におけるリスクの防止に関して、国際的な連携を強化することが求められる。

 監督機関

 条約は、各国にAI活動が条約に適合しているかどうかを監視する機関の設置を義務付けている。監督機関は、義務遵守を監視するために独立して機能し、必要な権限、専門知識、および資源を備えていることが求められる。

 効力の発生

 本条約は、署名国のうち5か国が締結を表明し、その後3か月間の期間が満了した後に効力を生じる。現時点ではまだ未発効であり、締結国の数が要件を満たす必要がある。

 日本の立場

 日本は、アジアで唯一の欧州評議会オブザーバー国として、この条約の起草作業に貢献してきた。AIを利用した技術革新のリーダーシップを取ることを目指しており、この条約への署名は、国際的なAI枠組みの構築における日本の積極的な姿勢を示すものである。日本は、引き続き安全で信頼できるAI技術の実現を目指し、国際協力を推進していく方針である。

 以上のように、人工知能と人権、民主主義及び法の支配に関する欧州評議会枠組条約は、AIの利用が人権や社会に与える影響を管理し、倫理的な基準を設けることを目的としている。各国が共同でその実現に向けた努力を行い、国際的な協力と監督の仕組みを通じて、AI技術が人類に利益をもたらすようにすることを目指している。

【要点】

 ・目的: 人工知能(AI)の発展と利用における倫理的・法的基準を定め、人権、民主主義及び法の支配に適合することを確保する。

 ・背景: 欧州評議会で交渉が開始され、2024年9月に署名が開放され、2025年2月11日にパリで正式に署名。

 ・適用範囲: 公的機関(政府機関や公共部門)によるAI活動に主に適用され、民間のAI活動もリスクに応じて規制。

 ・原則

  ⇨ 人間の尊厳: 基本的人権を侵害しないこと。
  ⇨ 透明性: AIシステムの仕組みや運用に関する説明責任。
  ⇨ 監督と責任: 運用における監視と責任の所在明確化。
  ⇨ 平等と無差別: 偏見なく公正に運用。
  ⇨ プライバシー保護: 個人情報の適切な保護。
  ⇨ 安全なイノベーション: 信頼性の高いAI技術。

 ・危険性・影響評価: AI活動が人権や民主主義に与える影響を予測し、必要な対策を講じる。

 ・救済措置: 人権侵害が発生した場合、被害者が実効的な救済を受ける権利を保障。

 ・国際協力: 各国間で情報交換し、リスク管理の強化を目指す。

 ・監督機関: 各国にAI活動が条約に適合しているかを監視する独立した機関を設置。

 ・効力発生: 署名国の5か国が締結し、3か月後に効力発生。

 ・日本の立場: 欧州評議会オブザーバー国として、AI技術革新のリーダーシップを取ることを目指している。

【参考】

 ☞ AIアクション・サミットは2025年2月にフランス・パリで開催されたもので、初回の開催となる。このサミットでは、人工知能(AI)の責任ある使用に関する国際的な議論が行われ、同時に「人工知能と人権、民主主義及び法の支配に関する欧州評議会枠組条約」の署名式も行われた。

AIアクション・サミットは、人工知能(AI)に関連する国際的な課題に取り組むための重要なイベントであり、特にAI技術の発展とその倫理的・社会的影響を管理するための枠組みを議論する場となっている。このサミットは、AI技術の進展に伴い、各国政府、国際機関、業界リーダーが集まり、AIの倫理的利用、人権、法の支配、民主主義への影響などについて議論し、国際的な合意形成を目指す重要な機会である。

以下は、AIアクション・サミットの主な目的と特徴である。

 1.目的: AI技術の倫理的な利用とその管理を推進し、AIがもたらす課題に対する国際的な枠組みを構築すること。

 2.議題

 ・AI技術の進展が人権や民主主義に与える影響。
 ・AIの透明性、説明責任、信頼性、安全性の向上。
 ・AIによるリスクや潜在的な悪用に対処するための国際的なガイドライン。
 ・AIシステムのライフサイクル全体を通じた倫理的管理。

 3.参加者: 世界各国の政府代表、国際機関、AIの研究者、業界のリーダーが一堂に会する。

 4.成果:

 ・AIに関する法的・倫理的枠組みの確立。
 ・各国の政策を調整し、AIに関連するリスク管理や規制の強化。
 ・国際的な協力関係を強化し、AI技術の普及を安全かつ公平に進める。

 5.開催場所: 通常、主要な国際都市で開催されるが、2025年2月にはフランス・パリで開催された。

 6.重要性: 世界中のAI技術の利用とその影響を協調して管理し、各国が協力してより公平で安全なAI技術の運用を推進するための重要な会議である。

 AIアクション・サミットは、AI技術の未来を形作る上で中心的な役割を果たし、特に国際的な協力と規制の枠組み作りに向けた進展を促進する。

 ☞ 2025年2月のAIアクション・サミットに参加した国々は以下の通り
 
 1.日本
 2.カナダ
 3.ジョージア
 4.アイスランド
 5.イスラエル
 6.モルドバ
 7.モンテネグロ
 8.ノルウェー
 9.サンマリノ
 10.イギリス
 11.アメリカ合衆国
 12.中国
 13.欧州連合(EU)も参加している。

 これらの国々は、人工知能に関する国際的な協力や規制の枠組みを進めるために集まり、AI技術の倫理的な利用や影響について議論している。

[参考]

・AI Action Summit kicks off in Paris with aim of harnessing potential while improving governance GT 2024.02.10
https://www.globaltimes.cn/page/202502/1328204.shtml

・US, EU, UK, and others sign legally enforceable AI treatyThe global treaty lays out a set of principles that signatories commit to enforcing.
https://www.theverge.com/2024/9/5/24236980/us-signs-legally-enforceable-ai-treaty?utm_source=chatgpt.com

・日本が欧州のAI条約に署名 人https://www.excite.co.jp/news/article/impress_watch_1262291435053203548/権や法の支配を遵守

・日本が欧州のAI条約に署名 人権や法の支配を遵守
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1662175.html

・AI並びに人権、民主主義及び法の支配に関する欧州評議会枠組み条約
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/news/legal-news/legal-20240828-1.html

・Council of Europe Framework Convention on Artificial Intelligence and Human
Rights, Democracy and the Rule of Law
https://rm.coe.int/1680afae3c?_ga=2.230250847.27750668.1739355365-1280588389.1739355365

・Council of Europe adopts first international treaty on artificial intelligence
https://www.coe.int/en/web/portal/-/council-of-europe-adopts-first-international-treaty-on-artificial-intelligence?_ga=2.230250847.27750668.1739355365-1280588389.1739355365

・欧州評議会AIに関する委員会(CAI)AI条約交渉の概要
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/2022_008_03_00.pdf?_ga=2.268055117.27750668.1739355365-1280588389.1739355365 

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

人工知能と人権、民主主義及び法の支配に関する欧州評議会枠組条約の署名 日本外務省 2024.02.11
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_01725.html

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