イギリス国防大臣ジョン・ヒーリーの発言 ― 2025年08月07日 20:14
【概要】
2025年7月28日に掲載されたものであり、イギリスの国防大臣ジョン・ヒーリーが台湾を巡る紛争に際してイギリスが戦う用意があると発言したことを報じている。この発言は、イギリスの代表者としては台湾問題に関してこれまでで最も強硬なものであると、英紙『テレグラフ』が伝えた。
ヒーリーは、オーストラリアのダーウィン港に停泊中の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」艦上で、オーストラリア副首相リチャード・マールズと共に記者団に語ったものである。同艦は米国などとの合同軍事演習に参加するため、シンガポールからオーストラリア北部に向けて航行していた。
ヒーリーは、「我々はこれまでにも戦ってきたように、戦わなければならない状況になれば、オーストラリアとイギリスは共に戦う国である。共に演習を行い、戦う準備を進めることで、より強力に抑止することができる」と述べたとされている。ただしその後、彼は「一般論」として述べたものであり、イギリスはインド太平洋におけるいかなる紛争も「平和的かつ外交的に」解決されることを望むと付け加えた。また、台湾との関係についての明確な変化は無いとし、イギリスの立場は従来通りであると述べた。
これに対して中国側は強く反発しており、中国外交部は台湾問題は中国の内政であり、いかなる外部の干渉も許さないという立場を繰り返し表明している。中国は、台湾をいかなる形でも中国から分離しようとする行為を断固として阻止し、国家主権と領土の一体性を守るためにあらゆる必要な措置を講じるとしている。
中国の軍事専門家であるZhang Junsheは、ヒーリーの発言はイギリスが同盟国に対して忠誠を誓う姿勢を見せただけの恥ずべきものであると述べた。
「プリンス・オブ・ウェールズ」は最新鋭のF-35戦闘機を搭載し、1997年以来初めてシンガポールからオーストラリア北部に向けて航行しており、今後は日本に向かい、台湾近海を通過する可能性があると『テレグラフ』は伝えている。
同紙によると、イギリス政府は今年初めに発表した国家安全保障戦略において「台湾周辺の情勢は特にエスカレーションのリスクが高い」と認識しており、「プリンス・オブ・ウェールズ」を含む最大規模の空母打撃群を9か月間にわたり太平洋に派遣する決定は、その脅威認識を示すものである。
Zhang Junsheはさらに、一部の西側諸国の政治家は「中国脅威論」をでっち上げ、地域の対中対立を煽ることに執着しており、このような行動は極めて有害であるため、中国は常に警戒を怠ってはならないと述べた。
また、『UKディフェンス・ジャーナル』によると、イギリスは米国の「戦略的曖昧さ」政策を正式には採用していないものの、ヒーリーの発言はイギリスが「統合レビュー」やAUKUSの枠組みの下でインド太平洋への関与を強化していることを示している。
東華師範大学オーストラリア研究センターの主任であるChen Hong教授は、これを「イギリスの植民地主義的残滓」の一例であるとし、指摘している。
さらに、中国とオーストラリアの関係が改善し、7月にはオーストラリア首相が中国を訪問して成果を挙げたばかりであることを踏まえ、イギリス国防高官の発言は、オーストラリアを難しい立場に置こうとするものであり、イギリスやアメリカへの全面的な同調は賢明ではないとの見解も示されている。
【詳細】
2025年7月28日付の報道に基づいており、イギリスのジョン・ヒーリー国防大臣が台湾情勢に関連して、イギリスが軍事的に関与する用意があるかのような発言を行ったことに対して、中国側が強く反発している内容である。
1. 発言の文脈と内容
ヒーリー国防相は、オーストラリア北部ダーウィン港に寄港中のイギリス空母「HMSプリンス・オブ・ウェールズ」艦上において、オーストラリア副首相リチャード・マールズと共に記者団の質問に応じた場面で、台湾有事におけるイギリスの立場について言及した。
『テレグラフ』によれば、ヒーリーは記者から「中国による台湾へのエスカレーションに対して、イギリスは台湾をどう支援するのか」という趣旨の質問を受け、「もし戦わねばならないときが来れば、オーストラリアとイギリスは共に戦う国である」と述べた。また、「共同で演習することで、戦う準備が整い、より強力に抑止力を発揮できる」と語った。
この発言は、イギリス政府高官としては異例の、極めて強硬な姿勢の表明であり、イギリスの対中・対台湾政策において新たな段階を示唆するものと捉えられかねない発言であった。
しかしその後、ヒーリーはこの発言について「一般論として述べた」と説明し、イギリスはインド太平洋における紛争が「平和的かつ外交的に」解決されることを望むとの方針を強調した。また、イギリスの台湾政策には何ら変更は無いとも述べている。
2. 中国側の反応と立場
この発言に対して、中国政府および専門家は即座に強く反発した。中国外交部は、台湾問題は「完全に中国の内政」であり、外部勢力によるいかなる干渉も「断固として拒否する」との基本方針を改めて表明している。中国は、台湾を中国から分離しようとするいかなる個人・勢力に対しても、国家主権と領土保全を守るため「必要なあらゆる措置を講じる」方針を明言している。
また、中国の軍事専門家であるZhang Junsheは、ヒーリーの発言を「イギリスの同盟国への忠誠を示すための、みじめなジェスチャーに過ぎない」とし、イギリスが独自の戦略的立場を持たず、米国やオーストラリアへの追従姿勢に終始していると批判した。
3. イギリス空母の派遣とその意図
「プリンス・オブ・ウェールズ」空母打撃群は、F-35戦闘機を搭載し、1997年以来初めてシンガポールからオーストラリア北部への航行を行ったと報じられている。さらに、この打撃群はその後、日本へと向かい、航路の中で台湾周辺海域を通過する可能性もあるとされている。
この長期派遣は、2025年初頭にイギリス政府が発表した国家安全保障戦略において「台湾周辺にはエスカレーションのリスクが存在する」と明記されたことに基づく措置であり、イギリスがインド太平洋地域の安全保障環境を深刻に捉えていることの証左とされている。
また、『UKディフェンス・ジャーナル』の報道では、イギリスは米国が採用する「戦略的曖昧さ」政策には追従していないが、ヒーリーの発言は「統合レビュー」やAUKUS(米英豪三国による安全保障枠組み)を通じて、イギリスがインド太平洋地域への関与を強化している現状を象徴するものであると位置付けられている。
4. 植民地主義的思考への批判
東華師範大学のChen Hong教授は、このようなイギリスの姿勢を「植民地主義の残滓(ざんし)」と表現しており、現代の国際秩序や国際法の枠組みを無視して、かつての覇権的立場を取り戻そうとするような考え方の表れであると非難している。
加えて、2025年7月にオーストラリア首相が中国を訪問し、両国関係が改善している最中での今回の発言は、オーストラリアに対して外交的な圧力をかけるものであり、イギリスと米国の路線に完全に同調することは、オーストラリアにとって賢明な選択ではないとの指摘もなされている。
以上のように、この記事は、イギリス国防大臣の発言を契機として、台湾問題における西側諸国の軍事的関与の可能性、中国の反発、そしてインド太平洋をめぐる地政学的緊張の構図を示すものである。また、中国側は、今回の発言に「干渉主義」や「植民地主義的思考」の継続を見出し、強く警戒している状況である。
【要点】
1.発言の概要
・2025年7月28日付で、英紙『テレグラフ』が報道。
・英国防大臣ジョン・ヒーリーが、台湾有事に際し「必要であれば戦う」と発言。
・発言は、オーストラリア北部ダーウィン港に停泊中の空母「HMSプリンス・オブ・ウェールズ」艦上で行われた。
・ヒーリーは「オーストラリアとイギリスは共に戦う国であり、共同演習を通じて抑止力を強化している」と述べた。
・後にヒーリーは「一般論として述べた」と釈明し、外交的解決を希望すると補足。
・台湾との関係に関しては「英国の方針に変更はない」と明言。
2.中国側の反応
・中国外交部は、台湾問題は中国の内政であり、外部からの干渉は許されないとの立場を改めて表明。
・中国は、台湾を中国から分離しようとするいかなる行為に対しても必要な措置を講じると強調。
・中国の軍事専門家・Zhang Junsheは、ヒーリーの発言を「同盟国への忠誠を示すみじめな行為」と批判。
3.英空母の派遣と戦略的背景
・「プリンス・オブ・ウェールズ」打撃群は、F-35戦闘機を搭載し、シンガポールからオーストラリア北部へ航行。
・同艦隊はその後、日本に向かい、台湾近海を通過する可能性があると報じられている。
・2025年の英国家安全保障戦略では、台湾周辺の緊張が「特にリスクが高い」と明記されていた。
・空母打撃群の9か月にわたる太平洋派遣は、英国の脅威認識と地域関与を示す動きである。
4.英国のインド太平洋政策とAUKUS
・英国は米国の「戦略的曖昧さ」政策は採用していない。
・ヒーリーの発言は、AUKUSや「統合レビュー」に基づくインド太平洋重視の姿勢を反映。
・『UKディフェンス・ジャーナル』は、英国の地域への軍事的関与が強化されていると指摘。
5.中国側専門家の評価
・Chen Hong(東華師範大学教授)は、ヒーリーの発言を「英国の植民地主義的残滓」と表現。
・発言は、中国とオーストラリアの関係改善を意図的に妨げるものであると批判。
・英米路線への全面同調は、オーストラリアにとって賢明ではないとの見解も示されている。
総括
・英国防大臣の発言は、西側諸国の対中姿勢の強硬化を象徴。
・台湾問題に関する中国の主権主張と、外部勢力の軍事的関与の動きが正面から衝突する構図。
・中国は、外的干渉を「極めて有害」とみなし、引き続き警戒を強めている状況である。
【桃源寸評】🌍
⬇️英国の様な二枚舌外交、おっと失礼、三枚舌でしたね
英国の今回の言動は、典型的な三枚舌外交の極致である。まず軍艦をインド太平洋に派遣して軍事的圧力を誇示し、次に「共に戦う覚悟がある」と勇ましく喚き立て、最後には「いや、あれは一般論だった」「平和的解決を望んでいる」と言い逃れる――これがまさにイギリス式「曖昧戦略」、いや「ご都合主義外交」の真骨頂である。
中国の内政問題である台湾に対し、わざわざ空母を引っ提げて遠路はるばる顔を突っ込み、「何かあったら戦うぞ」と挑発的に口を出し、しかし批判が来れば急に腰を引き、「誤解だ、変わってない」とすり替える――この自作自演・自己否定・自己免責の三段構えには、もはや苦笑すら通り越して呆れざるを得ない。
冷静に見れば、英国は自国の実力や国際的立場に見合わぬ「過去の栄光」の幻影にすがり、米豪との同調行動を装って「まだ影響力がある」と国内向けにアピールしているだけである。その根底には、かつての植民地帝国としての慢心と過去の覇権に対する未練が色濃く滲んでいる。だが、21世紀のアジアは、もはやロンドンから指図を受けるような舞台ではない。
また、オーストラリアとの共闘を勝手に口にした点も見逃せない。他国の立場や戦略的判断を顧みず、自国の意図に巻き込もうとするその姿勢は、まさにかつての宗主国気取りそのものであり、今の時代においては極めて無礼で危険な振る舞いである。
結局のところ、今回のヒーリー発言は、自信なき国家が、過去の威光を盾に空疎な威嚇を繰り返す姿に他ならない。強くもなく、賢くもなく、誠実でもない――ただ、空虚にして軽薄。
このような筋の通らぬ三枚舌の外交術に対しては、遠慮も礼節も必要ない。率直に言おう――信用に値せず、信頼もされず、歴史の影で吠えるのみ。それが今の英国外交の現実である。
⬇️中国脅威論も台湾有事と同様、空語・隠語・西側だけに通ずる合言葉である
「中国脅威論」とは、西側諸国、特にアングロサクソン世界において編み出された政治的パスワードのようなものであり、内実を伴わぬまま、「防衛費拡張」「軍事演習正当化」「兵器輸出推進」など、あらゆる目的に都合よく使われる便利なレトリックに過ぎない。
しかもこれは、「台湾有事」と対で扱われることが多く、両者はまるで暗号のように意味が自動変換される合言葉として機能している。「中国の脅威が増している」→「台湾有事が現実味を帯びてきた」→「我々は備えなければならない」→「空母を出す」「合同演習をする」→「しかし平和を望んでいる」と、始まりも終わりも自作自演である。
つまり、「中国脅威論」も「台湾有事」も、現実に発生していない脅威を、仮定に仮定を重ねて既成事実のように仕立て上げるプロパガンダ構文である。
そして重要なのは、この構文は西側内部でしか通用しない合言葉であり、第三国やグローバル・サウスの国々にとっては極めて不誠実かつ一方的な「物語の押しつけ」である。なぜなら、そこには実際の脅威分析も、バランスある外交姿勢も、国際法的整合性もない。ただただ、「我々が不安だから、お前たちが悪い」という倒錯した因果関係にすぎない。
一言で言えば、「中国脅威論」とは、西側が自らの軍事的行動を正当化し、自国民に恐怖心を植え付け、外交的優位を図るための精神的麻薬であり、冷静さと理性を奪う情報兵器である。
よってこれに対しては、事実をもって、冷徹に否定し、嗤い飛ばすべきである。
恐れる理由はない。「脅威」は、語る者自身の心に棲む幻影なのだから。
【寸評 完】 💚
【引用・参照・底本】
British defense secretary reportedly boasts readiness to 'fight in conflict over Taiwan;' experts slam remarks as showing UK's residual colonial mentality GT 2025.07.28
https://www.globaltimes.cn/page/202507/1339477.shtml?id=11
2025年7月28日に掲載されたものであり、イギリスの国防大臣ジョン・ヒーリーが台湾を巡る紛争に際してイギリスが戦う用意があると発言したことを報じている。この発言は、イギリスの代表者としては台湾問題に関してこれまでで最も強硬なものであると、英紙『テレグラフ』が伝えた。
ヒーリーは、オーストラリアのダーウィン港に停泊中の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」艦上で、オーストラリア副首相リチャード・マールズと共に記者団に語ったものである。同艦は米国などとの合同軍事演習に参加するため、シンガポールからオーストラリア北部に向けて航行していた。
ヒーリーは、「我々はこれまでにも戦ってきたように、戦わなければならない状況になれば、オーストラリアとイギリスは共に戦う国である。共に演習を行い、戦う準備を進めることで、より強力に抑止することができる」と述べたとされている。ただしその後、彼は「一般論」として述べたものであり、イギリスはインド太平洋におけるいかなる紛争も「平和的かつ外交的に」解決されることを望むと付け加えた。また、台湾との関係についての明確な変化は無いとし、イギリスの立場は従来通りであると述べた。
これに対して中国側は強く反発しており、中国外交部は台湾問題は中国の内政であり、いかなる外部の干渉も許さないという立場を繰り返し表明している。中国は、台湾をいかなる形でも中国から分離しようとする行為を断固として阻止し、国家主権と領土の一体性を守るためにあらゆる必要な措置を講じるとしている。
中国の軍事専門家であるZhang Junsheは、ヒーリーの発言はイギリスが同盟国に対して忠誠を誓う姿勢を見せただけの恥ずべきものであると述べた。
「プリンス・オブ・ウェールズ」は最新鋭のF-35戦闘機を搭載し、1997年以来初めてシンガポールからオーストラリア北部に向けて航行しており、今後は日本に向かい、台湾近海を通過する可能性があると『テレグラフ』は伝えている。
同紙によると、イギリス政府は今年初めに発表した国家安全保障戦略において「台湾周辺の情勢は特にエスカレーションのリスクが高い」と認識しており、「プリンス・オブ・ウェールズ」を含む最大規模の空母打撃群を9か月間にわたり太平洋に派遣する決定は、その脅威認識を示すものである。
Zhang Junsheはさらに、一部の西側諸国の政治家は「中国脅威論」をでっち上げ、地域の対中対立を煽ることに執着しており、このような行動は極めて有害であるため、中国は常に警戒を怠ってはならないと述べた。
また、『UKディフェンス・ジャーナル』によると、イギリスは米国の「戦略的曖昧さ」政策を正式には採用していないものの、ヒーリーの発言はイギリスが「統合レビュー」やAUKUSの枠組みの下でインド太平洋への関与を強化していることを示している。
東華師範大学オーストラリア研究センターの主任であるChen Hong教授は、これを「イギリスの植民地主義的残滓」の一例であるとし、指摘している。
さらに、中国とオーストラリアの関係が改善し、7月にはオーストラリア首相が中国を訪問して成果を挙げたばかりであることを踏まえ、イギリス国防高官の発言は、オーストラリアを難しい立場に置こうとするものであり、イギリスやアメリカへの全面的な同調は賢明ではないとの見解も示されている。
【詳細】
2025年7月28日付の報道に基づいており、イギリスのジョン・ヒーリー国防大臣が台湾情勢に関連して、イギリスが軍事的に関与する用意があるかのような発言を行ったことに対して、中国側が強く反発している内容である。
1. 発言の文脈と内容
ヒーリー国防相は、オーストラリア北部ダーウィン港に寄港中のイギリス空母「HMSプリンス・オブ・ウェールズ」艦上において、オーストラリア副首相リチャード・マールズと共に記者団の質問に応じた場面で、台湾有事におけるイギリスの立場について言及した。
『テレグラフ』によれば、ヒーリーは記者から「中国による台湾へのエスカレーションに対して、イギリスは台湾をどう支援するのか」という趣旨の質問を受け、「もし戦わねばならないときが来れば、オーストラリアとイギリスは共に戦う国である」と述べた。また、「共同で演習することで、戦う準備が整い、より強力に抑止力を発揮できる」と語った。
この発言は、イギリス政府高官としては異例の、極めて強硬な姿勢の表明であり、イギリスの対中・対台湾政策において新たな段階を示唆するものと捉えられかねない発言であった。
しかしその後、ヒーリーはこの発言について「一般論として述べた」と説明し、イギリスはインド太平洋における紛争が「平和的かつ外交的に」解決されることを望むとの方針を強調した。また、イギリスの台湾政策には何ら変更は無いとも述べている。
2. 中国側の反応と立場
この発言に対して、中国政府および専門家は即座に強く反発した。中国外交部は、台湾問題は「完全に中国の内政」であり、外部勢力によるいかなる干渉も「断固として拒否する」との基本方針を改めて表明している。中国は、台湾を中国から分離しようとするいかなる個人・勢力に対しても、国家主権と領土保全を守るため「必要なあらゆる措置を講じる」方針を明言している。
また、中国の軍事専門家であるZhang Junsheは、ヒーリーの発言を「イギリスの同盟国への忠誠を示すための、みじめなジェスチャーに過ぎない」とし、イギリスが独自の戦略的立場を持たず、米国やオーストラリアへの追従姿勢に終始していると批判した。
3. イギリス空母の派遣とその意図
「プリンス・オブ・ウェールズ」空母打撃群は、F-35戦闘機を搭載し、1997年以来初めてシンガポールからオーストラリア北部への航行を行ったと報じられている。さらに、この打撃群はその後、日本へと向かい、航路の中で台湾周辺海域を通過する可能性もあるとされている。
この長期派遣は、2025年初頭にイギリス政府が発表した国家安全保障戦略において「台湾周辺にはエスカレーションのリスクが存在する」と明記されたことに基づく措置であり、イギリスがインド太平洋地域の安全保障環境を深刻に捉えていることの証左とされている。
また、『UKディフェンス・ジャーナル』の報道では、イギリスは米国が採用する「戦略的曖昧さ」政策には追従していないが、ヒーリーの発言は「統合レビュー」やAUKUS(米英豪三国による安全保障枠組み)を通じて、イギリスがインド太平洋地域への関与を強化している現状を象徴するものであると位置付けられている。
4. 植民地主義的思考への批判
東華師範大学のChen Hong教授は、このようなイギリスの姿勢を「植民地主義の残滓(ざんし)」と表現しており、現代の国際秩序や国際法の枠組みを無視して、かつての覇権的立場を取り戻そうとするような考え方の表れであると非難している。
加えて、2025年7月にオーストラリア首相が中国を訪問し、両国関係が改善している最中での今回の発言は、オーストラリアに対して外交的な圧力をかけるものであり、イギリスと米国の路線に完全に同調することは、オーストラリアにとって賢明な選択ではないとの指摘もなされている。
以上のように、この記事は、イギリス国防大臣の発言を契機として、台湾問題における西側諸国の軍事的関与の可能性、中国の反発、そしてインド太平洋をめぐる地政学的緊張の構図を示すものである。また、中国側は、今回の発言に「干渉主義」や「植民地主義的思考」の継続を見出し、強く警戒している状況である。
【要点】
1.発言の概要
・2025年7月28日付で、英紙『テレグラフ』が報道。
・英国防大臣ジョン・ヒーリーが、台湾有事に際し「必要であれば戦う」と発言。
・発言は、オーストラリア北部ダーウィン港に停泊中の空母「HMSプリンス・オブ・ウェールズ」艦上で行われた。
・ヒーリーは「オーストラリアとイギリスは共に戦う国であり、共同演習を通じて抑止力を強化している」と述べた。
・後にヒーリーは「一般論として述べた」と釈明し、外交的解決を希望すると補足。
・台湾との関係に関しては「英国の方針に変更はない」と明言。
2.中国側の反応
・中国外交部は、台湾問題は中国の内政であり、外部からの干渉は許されないとの立場を改めて表明。
・中国は、台湾を中国から分離しようとするいかなる行為に対しても必要な措置を講じると強調。
・中国の軍事専門家・Zhang Junsheは、ヒーリーの発言を「同盟国への忠誠を示すみじめな行為」と批判。
3.英空母の派遣と戦略的背景
・「プリンス・オブ・ウェールズ」打撃群は、F-35戦闘機を搭載し、シンガポールからオーストラリア北部へ航行。
・同艦隊はその後、日本に向かい、台湾近海を通過する可能性があると報じられている。
・2025年の英国家安全保障戦略では、台湾周辺の緊張が「特にリスクが高い」と明記されていた。
・空母打撃群の9か月にわたる太平洋派遣は、英国の脅威認識と地域関与を示す動きである。
4.英国のインド太平洋政策とAUKUS
・英国は米国の「戦略的曖昧さ」政策は採用していない。
・ヒーリーの発言は、AUKUSや「統合レビュー」に基づくインド太平洋重視の姿勢を反映。
・『UKディフェンス・ジャーナル』は、英国の地域への軍事的関与が強化されていると指摘。
5.中国側専門家の評価
・Chen Hong(東華師範大学教授)は、ヒーリーの発言を「英国の植民地主義的残滓」と表現。
・発言は、中国とオーストラリアの関係改善を意図的に妨げるものであると批判。
・英米路線への全面同調は、オーストラリアにとって賢明ではないとの見解も示されている。
総括
・英国防大臣の発言は、西側諸国の対中姿勢の強硬化を象徴。
・台湾問題に関する中国の主権主張と、外部勢力の軍事的関与の動きが正面から衝突する構図。
・中国は、外的干渉を「極めて有害」とみなし、引き続き警戒を強めている状況である。
【桃源寸評】🌍
⬇️英国の様な二枚舌外交、おっと失礼、三枚舌でしたね
英国の今回の言動は、典型的な三枚舌外交の極致である。まず軍艦をインド太平洋に派遣して軍事的圧力を誇示し、次に「共に戦う覚悟がある」と勇ましく喚き立て、最後には「いや、あれは一般論だった」「平和的解決を望んでいる」と言い逃れる――これがまさにイギリス式「曖昧戦略」、いや「ご都合主義外交」の真骨頂である。
中国の内政問題である台湾に対し、わざわざ空母を引っ提げて遠路はるばる顔を突っ込み、「何かあったら戦うぞ」と挑発的に口を出し、しかし批判が来れば急に腰を引き、「誤解だ、変わってない」とすり替える――この自作自演・自己否定・自己免責の三段構えには、もはや苦笑すら通り越して呆れざるを得ない。
冷静に見れば、英国は自国の実力や国際的立場に見合わぬ「過去の栄光」の幻影にすがり、米豪との同調行動を装って「まだ影響力がある」と国内向けにアピールしているだけである。その根底には、かつての植民地帝国としての慢心と過去の覇権に対する未練が色濃く滲んでいる。だが、21世紀のアジアは、もはやロンドンから指図を受けるような舞台ではない。
また、オーストラリアとの共闘を勝手に口にした点も見逃せない。他国の立場や戦略的判断を顧みず、自国の意図に巻き込もうとするその姿勢は、まさにかつての宗主国気取りそのものであり、今の時代においては極めて無礼で危険な振る舞いである。
結局のところ、今回のヒーリー発言は、自信なき国家が、過去の威光を盾に空疎な威嚇を繰り返す姿に他ならない。強くもなく、賢くもなく、誠実でもない――ただ、空虚にして軽薄。
このような筋の通らぬ三枚舌の外交術に対しては、遠慮も礼節も必要ない。率直に言おう――信用に値せず、信頼もされず、歴史の影で吠えるのみ。それが今の英国外交の現実である。
⬇️中国脅威論も台湾有事と同様、空語・隠語・西側だけに通ずる合言葉である
「中国脅威論」とは、西側諸国、特にアングロサクソン世界において編み出された政治的パスワードのようなものであり、内実を伴わぬまま、「防衛費拡張」「軍事演習正当化」「兵器輸出推進」など、あらゆる目的に都合よく使われる便利なレトリックに過ぎない。
しかもこれは、「台湾有事」と対で扱われることが多く、両者はまるで暗号のように意味が自動変換される合言葉として機能している。「中国の脅威が増している」→「台湾有事が現実味を帯びてきた」→「我々は備えなければならない」→「空母を出す」「合同演習をする」→「しかし平和を望んでいる」と、始まりも終わりも自作自演である。
つまり、「中国脅威論」も「台湾有事」も、現実に発生していない脅威を、仮定に仮定を重ねて既成事実のように仕立て上げるプロパガンダ構文である。
そして重要なのは、この構文は西側内部でしか通用しない合言葉であり、第三国やグローバル・サウスの国々にとっては極めて不誠実かつ一方的な「物語の押しつけ」である。なぜなら、そこには実際の脅威分析も、バランスある外交姿勢も、国際法的整合性もない。ただただ、「我々が不安だから、お前たちが悪い」という倒錯した因果関係にすぎない。
一言で言えば、「中国脅威論」とは、西側が自らの軍事的行動を正当化し、自国民に恐怖心を植え付け、外交的優位を図るための精神的麻薬であり、冷静さと理性を奪う情報兵器である。
よってこれに対しては、事実をもって、冷徹に否定し、嗤い飛ばすべきである。
恐れる理由はない。「脅威」は、語る者自身の心に棲む幻影なのだから。
【寸評 完】 💚
【引用・参照・底本】
British defense secretary reportedly boasts readiness to 'fight in conflict over Taiwan;' experts slam remarks as showing UK's residual colonial mentality GT 2025.07.28
https://www.globaltimes.cn/page/202507/1339477.shtml?id=11