新型ミサイル「オレシュニク」2024年12月16日 22:33

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【概要】

 ロシアのプーチン大統領は2024年12月16日、国防省での会議において、アメリカによるミサイル配備の拡大に対抗するため、核兵器および通常兵器の強化が必要であると述べた。プーチン氏は、アメリカが中距離ミサイルシステムを開発し、ヨーロッパやアジアに配備しようとしていることがロシアの安全保障を脅かしていると指摘し、これに対抗する包括的な取り組みを進めていると述べた。その中で、新型ミサイル「オレシュニク」を例に挙げた。

 プーチン氏は、次のように述べている。「我々の最優先目標は、これらのミサイル発射を迅速に探知し、迎撃することである。同時に、国内で生産されるこれらの攻撃システム、特に極超音速兵器の量産および配備に関わる全ての問題を効率化する必要がある。」

 ロシアは11月にウクライナのドニエプル市にある軍事工場を目標に、「オレシュニク」ミサイルを用いた初の試験発射を行い、その能力を実証した。このミサイルは極超音速の通常弾頭を備えた弾道ミサイルである。

 また、アメリカとロシアはかつて中距離核戦力(INF)全廃条約に基づき、射程500kmから5,500kmの地上発射型ミサイルを開発しないことを約束していた。この条約は冷戦時代に締結され、核兵器による偶発的な衝突のリスクを軽減することを目的としていた。しかし、アメリカは2018年にこの条約からの離脱を表明し、ロシアによる違反の疑いと、中国との競争が必要であるという理由を挙げた。プーチン氏は、アメリカのこの行動が世界的な戦略的安定性を損なったと述べ、ロシアはアメリカの兵器配備に対して同様の措置で対応する準備があると警告した。

 国防相アンドレイ・ベロウソフ氏は同会議で、「オレシュニク」ミサイルの量産が2025年に開始される予定であると報告した。また、ロシアは他の先進兵器システムの開発にも取り組むとし、軍事調達計画に必要な変更を月末までに大統領に報告する予定であると述べた。

 さらに、アメリカ国防総省は先週、「ダークイーグル」と呼ばれる中距離兵器システムの最新の成功試験を報告した。このシステムは、地上移動型のブースターロケットに極超音速滑空体を搭載したもので、来年の運用開始が見込まれており、日本やヨーロッパへの配備が予定されているとされる。
 
【詳細】

 ロシアのプーチン大統領は2024年12月16日、国防省の会議で、アメリカが進めるミサイル配備の拡大に対抗するため、ロシアは核戦力と通常戦力の両面で能力を向上させると述べた。具体的には、アメリカが中距離ミサイルを含む新たな兵器システムを開発し、これをヨーロッパやアジアに配備する計画が、ロシアの安全保障を著しく脅かすものであると指摘した。この脅威に対してロシアは包括的な防衛戦略を採用しており、その一環として新型ミサイル「オレシュニク」の開発・配備を進めている。

 アメリカの中距離兵器開発とその影響

 プーチン大統領は、アメリカが冷戦時代の「中距離核戦力(INF)全廃条約」の枠組みから離脱したことに言及した。この条約は、射程500kmから5,500kmの地上発射型ミサイルの開発と配備を禁止し、偶発的な核衝突のリスクを軽減するための重要な合意であった。しかし、アメリカは2018年にこの条約から一方的に離脱し、理由として以下を挙げた。

 1.ロシアによる条約違反の疑い(具体的にはロシアの9M729ミサイルシステムが条約に違反しているとの主張)。
 2.中国の台頭に対抗する必要性(中国はINF条約の締約国ではなかったため、同射程のミサイルを自由に開発・配備していた)。

 アメリカはこの離脱以降、新型兵器の開発を加速させており、その中には「ダークイーグル」などの中距離極超音速ミサイルが含まれる。「ダークイーグル」は地上移動型の発射システムを採用し、極超音速滑空体を搭載している。このシステムはヨーロッパや日本への配備が計画されており、2025年には運用可能となる見込みである。

 ロシアの対応:オレシュニクミサイル

 ロシアの新型兵器「オレシュニク」は、極超音速弾頭を搭載した弾道ミサイルであり、その特徴として以下が挙げられる。

 ・極超音速飛行能力:敵の迎撃システムを突破可能。
 ・長射程:欧州やアジア地域での潜在的な脅威に対抗。
 ・精密攻撃:通常弾頭を搭載しつつも高精度での目標攻撃が可能。

 ロシアはこのミサイルを2024年11月、ウクライナのドニエプル市にある軍事工場を目標とする試験発射に用い、その実効性を実証した。この攻撃は、オレシュニクが実戦で使用可能な段階にあることを示しており、プーチン大統領はこのミサイルを対米戦略の重要な柱として位置づけている。

 戦略的防衛計画

 ・プーチン大統領は、アメリカの中距離ミサイルの脅威に対抗するため、以下の3つの防衛戦略を強調した。

 1.早期探知と迎撃能力の強化

 アメリカのミサイル発射を迅速に探知し、それを迎撃するシステムの強化を最優先課題とする。

 2.国内兵器システムの生産と配備

 国内での兵器製造能力を強化し、特に極超音速兵器を量産・配備するための体制を整備する。

 3.報復能力の維持

 アメリカや同盟国によるミサイル配備に対抗し、同等の兵器を用いる「対称的対応」を準備する。

 国防相アンドレイ・ベロウソフは、オレシュニクミサイルの量産が2025年に開始される予定であり、これに合わせて軍事調達計画を見直すことを表明した。また、他の先進兵器システムの開発も並行して進められ、月末までにその詳細が大統領に報告される予定である。

 グローバル戦略的安定への影響

 プーチン大統領は、アメリカのINF条約離脱とその後の兵器配備計画が、国際的な戦略的安定性を損なったと非難した。この動きは単にロシアのみならず、他の大国間の軍拡競争を誘発する可能性がある。ロシアはこのような状況に対し、防衛力を強化することで対応すると同時に、必要であれば外交的な解決手段も模索するとしている。

 アメリカとロシアのこのような動きは、世界的な核抑止バランスに影響を与える可能性があり、他国を巻き込んだ安全保障環境の変化を引き起こすと考えられる。  

【要点】 
 
 プーチン大統領の発言と対応策

 1.アメリカの脅威認識

 ・アメリカが中距離ミサイルを開発し、ヨーロッパやアジアに配備する計画はロシアの安全保障を脅かすものである。
 ・冷戦時代の「中距離核戦力(INF)全廃条約」からのアメリカの離脱が、国際的な戦略的安定を損なったと非難。

 2.オレシュニクミサイルの開発と試験

 ・新型の極超音速弾頭搭載ミサイル「オレシュニク」を開発。
 ・2024年11月、ウクライナ・ドニエプル市の軍事工場を目標に試験発射を実施し、性能を確認。
 ・2025年から量産を開始予定。

 3.対抗戦略

 ・早期探知と迎撃
   
  アメリカのミサイル発射を迅速に探知し迎撃する能力を強化。

 ・兵器システムの量産と配備

  国内での生産体制を整備し、オレシュニクを含む新兵器の配備を加速。

 ・対称的対応

  アメリカのミサイル配備に対抗するため、同等の兵器を開発・配備。

 4.軍事調達計画の見直し

 ・国防相ベロウソフが調達計画を年内に見直し、月末までに大統領へ報告予定。
 ・他の先進兵器の開発も進行中。

 アメリカの動向とその影響

 1.新型兵器「ダークイーグル」

 ・極超音速滑空体を搭載した中距離ミサイルを開発。
 ・2025年に運用開始予定で、ヨーロッパや日本に配備される可能性あり。

 2.INF条約の崩壊

 ・アメリカの離脱により、中距離ミサイルの規制が消滅。
 ・ロシアはこれを軍拡競争の再燃につながる動きと批判。

 戦略的安定への影響

 ・ロシアとアメリカの対立は国際的な核抑止バランスを揺るがし、他国を巻き込む可能性がある。
 ・ロシアは軍備拡大と外交手段を併用して対応する姿勢を示している。

【引用・参照・底本】

Oreshnik missiles necessary to deter Western build-up – Putin RT 2024.12.16
https://www.rt.com/russia/609427-putin-oreshnik-deterrence-capability/