ノルド・ストリーム攻撃容疑者の引き渡し判決:自家撞着に陥るか2025年10月23日 13:33

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【概要】
 
 ポーランドの裁判官がノルド・ストリーム攻撃の容疑者について、この行為が「正当な防衛戦争」の文脈で行われたことなどを理由に、ドイツへの身柄引き渡しを拒否した。この判決に対し、ハンガリーのペテル・シヤルト外務大臣は激しく反発し、判決が「欧州でのテロ攻撃に事前許可を与えた」と非難した。

 ハンガリーがこれほど強く反発する背景には、この判決によって確立された前例が、ハンガリーの主要なエネルギー供給源であるドルジバ・パイプラインに対するウクライナの攻撃を、将来的にEU加盟国の裁判所が正当化するために利用される可能性という間接的な利害が存在する。

 この問題は、一つのNATO・EU加盟国が別の加盟国への攻撃を法的に正当化する事態となり、両ブロックのさらなる分裂と欧州秩序の不確実性を深めるものである。

【詳細】 

 ポーランドのダリウシュ・ルボフスキ裁判官は、ノルド・ストリーム爆破攻撃の容疑者について、ドイツへの身柄引き渡しを認めない判決を下した。この判決の根拠は主に三点である。第一に、このサボタージュ行為はウクライナの対ロシアの「正当な防衛戦争」という文脈で発生した。第二に、事件が発生した公海においてドイツは管轄権を有しない。第三に、もしウクライナ国家が攻撃を組織したとすれば、責任は実行犯ではなくウクライナ国家に帰属する、というものである。

 ハンガリーのシヤルト外務大臣は、この判決を「スキャンダラス」とし、「ヨーロッパのインフラが気に入らなければ爆破してよいというものだ。これにより、欧州でのテロ攻撃に事前許可が与えられた」とX(旧Twitter)で強く非難した。

 ハンガリーの激怒には、単なる原理的な懸念だけでなく、間接的な利害が絡んでいる。ハンガリーはロシアのドルジバ・パイプラインを経由して石油供給の大部分を受け取っているが、シヤルト大臣は過去にウクライナがハンガリーの国益重視の姿勢への報復としてこの重要インフラを攻撃したと非難し、関与したとされるロベルト・“マジャル”・ブロヴディ司令官を制裁した経緯がある。

 今回のポーランドの判決が確立した「ウクライナの戦いは正当な防衛戦争である」という前例は、EU加盟国の裁判官によって悪用される可能性がある。彼らはこの前例を盾に、ウクライナによるハンガリーのエネルギー安全保障を損なう行為の責任を免除することが可能となる。さらに、ルボフスキ裁判官がドイツの公海での管轄権を否定したように、ドルジバ・パイプラインが爆破されたロシアに対するハンガリーの管轄権がないと主張されることもあり得る。

 実際に、ポーランドのラデク・シコルスキ外務大臣は、シヤルト大臣へのツイートで「プーチンの戦争マシーンに燃料を供給する石油パイプラインをあなたの勇敢な同胞、マジャール少佐がついに叩きのめすことを願っている」と述べており、ポーランドがウクライナのエネルギー攻撃を支持し、ハンガリーがEU入域を禁じたブロヴディ氏を歓迎する可能性が示唆されている。

 ノルド・ストリーム爆破がNATOおよびEU加盟国であるドイツに対する攻撃であったのと同様に、ドルジバ・パイプラインへの攻撃はNATOおよびEU加盟国であるハンガリーに対する攻撃である。もしドイツでさえノルド・ストリームの件で自国の利益を推進できないのであれば、比較的重要性の低いハンガリーがドルジバ・パイプラインを巡る自国の利益を推進することは不可能である。

 要するに、ポーランドの判決が設定した前例は、ハンガリーに対する武器として利用されかねないため、ハンガリーを激怒させた。この事態は、一つのNATO・EU加盟国が、別の加盟国に対する攻撃を法的に正当化することに繋がり、両ブロックの分裂をさらに深める可能性がある。ポーランドの失われた大国としての地位の緩やかな復活が、不安定な欧州大陸において新たな不確実性を生み出している、と論じている。

【要点】

 ・ポーランドの判決内容:ポーランドの裁判官は、ノルド・ストリーム攻撃容疑者の引き渡しを、行為がウクライナの「正当な防衛戦争」の文脈で行われたこと、およびドイツに公海での管轄権がないことなどを理由に却下した。

 ・ハンガリーの反応:ハンガリーのシヤルト外務大臣は、この判決を「テロ攻撃への事前許可」であり「テロリストを祝福している」と非難し、欧州の法の支配への懸念を表明した。

 ・ハンガリーの利害:この判決が確立した「正当防衛戦争」という前例が、ロシアからハンガリーへの主要な石油供給路であるドルジバ・パイプラインに対するウクライナの攻撃を、EU内で法的に正当化するために悪用される可能性がある。

 ・外交的な影響:この件は、NATOおよびEU加盟国に対する攻撃を、別の加盟国が法的に正当化するという事態を生じさせ、両ブロックの団結を脅かし、欧州秩序における不確実性を増大させている。

 ・ポーランドの役割:ポーランドの行動は、同国の「失われた大国としての地位の緩やかな復活」の一環であり、欧州秩序を揺るがす要因の一つであると論じられている。

【引用・参照・底本】

Hungary Has Good Reason To Be Enraged About Poland’s Ruling On The Nord Stream Suspect Andrew Korybko's Newsletter 2025.10.23
https://korybko.substack.com/p/hungary-has-good-reason-to-be-enraged?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=176892588&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

「ヌセイラトの虐殺」と米国の関与2025年10月23日 14:00

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【概要】
 
 2024年6月8日、イスラエル軍によるガザでの人質救出作戦、通称「ヌセイラトの虐殺」で、パレスチナ人276人が殺害された。当時のホワイトハウス国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリバン氏は、米国が「軍事的にこの作戦に参加しなかった」と主張した。

 しかし、デクラシファイドUK誌は、米海軍のMH-60ブラックホーク・ヘリコプターが、人質が救出された直後にイスラエル国内の降下地点近くを飛行していたことを明らかにした。このヘリコプターは、米国の援助桟橋建設の隠れ蓑のもと、2024年5月に未確認の艦船で東地中海に輸送され、虐殺後にイスラエル国内を飛行することはなくなった。

 この事実は、ホワイトハウスの公式見解と矛盾し、米国が作戦に直接的な軍事介入をした可能性を示唆している。以前の報道では、作戦全体がCIA職員と共に活動する特殊部隊セルが提供した情報を使用して計画されたことが示されている。米国防総省と米特殊作戦軍は、このヘリコプターと飛行に関する質問への回答を拒否した。

【詳細】 

 米海軍ヘリコプターの関与の可能性

 デクラシファイドUK誌は、オープンソースの飛行追跡データベースを使用し、米海軍のブラックホーク・ヘリコプター(登録番号166597)が、人質降下地点からわずか4分の飛行距離にある場所で、現地時間16時34分から16時36分までの2分間、短時間の位置情報を送信していたことを検出した。これは、最後の捕虜がイスラエル軍によって救出されたと報じられてからわずか2時間後であり、同機が作戦中に戦術的な航空支援や後方支援を提供していた可能性を示唆している。

 イスラエル空軍のパイロット「R」によると、当初、人質の一人ノア・アルガマニ氏を「運び出す」予定だった3機目のヘリコプターが「作戦中に能力を損傷した」という。この証言は、米海軍のブラックホーク・ヘリコプターが最後の捕虜を救出する予定であったが、作戦中に損傷した可能性を提起している。

 ヘリコプターの輸送ルート

 このブラックホーク・ヘリコプターは、米国が建設したガザの援助桟橋の運用が開始された数週間後に発生したヌセイラトの虐殺に先立ち、未確認の艦船でガザ援助桟橋ミッションに参加する船と共に輸送された。

 5月13日、同機は地中海からイスラエルへ初めて飛行した後、海に戻り、明確な着陸地点は特定されなかった。

 2日後の5月15日、同機は艦船からイスラエルへ飛行し、ガザから数マイル離れた空域に入った後、トランスポンダーをオフにしたガザ海岸線から50km離れた未確認の艦船に着陸した。

 この期間中、少なくとも2隻の米海軍艦艇(USSアーレイ・バークとUSSポール・イグナティウス、いずれもブラックホーク・ヘリコプターの着陸能力を持つアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦)が、援助桟橋を保護するためにガザに配備されていた。衛星画像で観測された、MH-60ブラックホークが着陸したとされる艦船の長さは、これらの駆逐艦の長さと一致している。

 虐殺の18日前である5月20日、このヘリコプターはイスラエル上空、人質が救出されたシェバ医療センターから北東にわずか7キロメートル(MH-60ヘリコプターで1〜3分の飛行)を飛行しているのが目撃された。

 虐殺後、このヘリコプターはイスラエルでの飛行は確認されず、6月13日にエジプトから東地中海に飛行し、トランスポンダーをオフにして、5月15日に着陸したのと同じ長さの未確認の艦船の上空を低空飛行した。

【要点】

 ・出来事: 2024年6月8日、ガザでの人質救出作戦中にパレスチナ人276人が死亡(ヌセイラトの虐殺)。

 ・米国の公式見解: 当時米国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリバン氏は「軍事的にこの作戦に参加しなかった」と主張。

 ・新情報: 米海軍のMH-60ブラックホーク・ヘリコプターが、最後の捕虜救出報道からわずか2時間後、人質降下地点に極めて近い場所を短時間飛行していた。

 ・矛盾の示唆: このヘリコプターの存在と飛行は、ホワイトハウスの「不参加」の主張と矛盾し、米国による直接的な戦術的航空支援の可能性を示唆する。

 ・背景: ヘリコプターは、援助桟橋建設を隠れ蓑に5月にガザ付近に輸送され、作戦前後にのみイスラエル空域に出現し、その後は活動を停止した。

 ・公式対応: 米国防総省および米特殊作戦軍は、このヘリコプターや飛行に関する質問への回答を拒否した。

 ・補足情報: 作戦の計画には、CIA職員と共に活動する米特殊部隊セルが提供した情報が利用されたと以前報じられている。

【引用・参照・底本】

Did the US Participate in a Gaza Massacre? Consortium News 2025.10.21
https://consortiumnews.com/2025/10/21/did-us-participate-in-gaza-massacre/?eType=EmailBlastContent&eId=38287a6e-b597-41c3-a9cb-e89f9d4ae09a

またぞろの中国「過剰生産能力」論2025年10月23日 18:00

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【概要】
 
 中国は、「世界の工場」として電気自動車(EV)、バッテリー、太陽光パネルなどのグリーン技術製品を大量生産し、世界市場に供給している。しかし、この過剰生産能力(オーバーキャパシティ)が、中国経済および国際貿易関係における深刻な構造的欠陥として露呈している。米国や欧州連合(EU)は、中国の安価な輸出品に対し、補助金による不公正競争だとして高関税を課すなど対抗措置を取っている。

 過去の過剰生産能力は、高すぎる政府投資と低すぎる家計消費の不均衡に起因するとされてきた。しかし、今日のグリーンテック分野の過剰生産は、国内需要の低迷や過剰な中央政府補助金の結果ではなく、制御不能な供給の急増に根本的な原因がある。これは、中国の政治経済システムの内的な仕組み、すなわち、生産量、スピード、規模を重視し、生産性や差別化を軽視するインセンティブ構造に深く根差している。

 この過剰生産は、貿易摩擦を引き起こすだけでなく、国内の企業利益の急落、デフレ圧力、イノベーションの制約、雇用の凍結・削減による家計支出の弱体化など、中国経済全体の成長を阻害する要因となっている。北京当局は是正を試みているものの、問題の根本にある地方政府の評価システム、税制、金融システムに本格的な改革を加えなければ、過剰生産能力の連鎖を断ち切ることはできないと筆者は指摘している。

【詳細】 

 過剰生産能力の背景と現状

 中国はEV、バッテリー、太陽光パネルなどの分野でグリーン技術製品を大量生産しており、例えば、EVは1万ドル以下のモデルを製造し、世界の太陽光サプライチェーンの約80%を支配している。これに対し、米国は最大100%の関税引き上げを、EUはEVに対する関税賦課を行い、「人為的に低い価格の輸出」や「不公平な政府補助金」を非難している。

 過去の過剰生産は鉄鋼やセメントなどで見られたが、現在のグリーンテックにおける過剰生産は性質が異なると指摘される。太陽光発電やEV・バッテリー分野では、いまだに中国国内で需要が旺盛であり、中央政府による直接的な購入補助金も既に段階的に廃止されている。したがって、今日の過剰生産は、需要の不足や中央政府の過剰な補助金ではなく、統制のきかない供給の急増に起因すると結論づけられる。中央政府は「盲目的な拡大」を繰り返し警告し、価格競争の抑制を試みているが、過剰生産の主な担い手が国有企業ではなく民間企業であるため、大規模な工場閉鎖や統合は失業増加と地域経済の停滞リスクから避けられている状況にある。

 構造的な要因

 過剰生産能力を生み出す中国の政治経済システムの「内部の仕組み」は、主に以下の3点に集約される。

 税制と地方政府のインセンティブ

 地方政府幹部は、主に成長、雇用、税収に基づいて評価・昇進される。

 中国最大の税である付加価値税(VAT)は、生産された場所の地方政府と中央政府で均等に分割される。この税制は、地方政府が税基盤を拡大するために、産業クラスターの誘致と工業生産の規模拡大を競うインセンティブとなる。

 不動産バブル崩壊により、地方政府の主要な収入源であった土地使用権販売収入が激減(2021年の1.3兆ドルから2024年には6,700億ドルへ)し、財政の穴埋め手段として産業能力の拡大が唯一信頼できる手段となった。その結果、全国の地方政府が中央政府の推奨する「戦略的新興産業」のクラスター形成に一斉に乗り出し、重複投資を招いている。

 金融システムの偏り:

 中国の銀行システムは、担保となる物理的資産を持ち、政府の承認を得た低リスクプロジェクトを好み、工場やインフラへの融資に資本が偏る。これは、薄い利益率にもかかわらず、生産能力の急速な拡大を可能にする。

 需要が軟化したり市場が過密になったりすると、企業は生産維持のために価格を大幅に下げて輸出を拡大し、利益率をさらに低下させる。

 低い利益率は、製品開発や雇用への再投資を抑制し、家計所得の伸びと消費者需要を抑制し、過剰生産が経済全体の足かせとなる悪循環を生む。

 銀行は損失計上を避けるため、生産性の低い**「ゾンビ企業」**の借り換えを続ける傾向があり、資本が非効率な部門に留まる。

 民間企業、特にイノベーションを目指す企業は、政府支援のない分野では、2020年後半からの規制強化によりベンチャーキャピタルなどの資金調達が急減し、資本アクセスが困難になっている。

 企業レベルのインセンティブ:

 企業の高い税金と社会保険料の負担(典型的な中堅企業で利益の59.2%)はリスクテイクを抑制し、迅速なコピーと規模の拡大を促す。

 迅速な規模拡大は、サプライヤーとの価格交渉力を高め、地方政府や融資元からの優遇措置獲得に繋がる。

 市場シェア防衛のための価格戦争が連鎖的に発生し、利益率をさらに押し下げている(例:EV業界では価格カットモデルが2022年の95から2024年末には227に増加)。

地方政府は、赤字であってもVATや雇用関連税収をもたらすため、企業の市場退出を渋り、非効率な企業が存続するのを支援している。

 必要な改革
 
 北京当局は、アルゴリズムによる価格調整の禁止や、不当な低価格販売の禁止を盛り込んだ価格法の改正案など、表面的な是正措置を試みているに過ぎない。過剰生産の根本的な原因を解決するには、以下の構造改革が必要となる。

 地方政府の評価システム改革: 成長率だけでなく、新規企業の設立と生存率など、質の高い成長を反映する指標で幹部を評価する仕組みへ移行する必要がある。

 税制の抜本的見直し: 地方政府の財源を土地販売や工場誘致に依存させないよう、中央政府から地方への税収配分を変更したり、地方政府債務の再構築を行ったりする必要がある。

 金融システムの再構築: 大手銀行に対し、技術企業への長期融資ポートフォリオを義務付け、株式・債券市場の承認プロセスを迅速化し、会計規則や投資家保護を強化して、担保依存の銀行融資に代わる資金調達チャネルを成熟させる必要がある。また、転換社債やベンチャーデットなど、革新的な資金調達ツールの開発も必要である。

 競争政策の設計と施行: 模倣ではなくオリジナリティを報いるため、知的財産権の保護と公正競争法の執行を強化する必要がある。

 これらの改革は、かつて中国の驚異的な成長を支えたシステムそのものを変えることを意味し、北京当局にとって究極の「自己修正能力」の試練となると筆者は結んでいる。

【要点】

 ・問題の核心: 中国のEV、バッテリー、太陽光パネルなどのグリーンテック分野における過剰生産能力は、規模とスピードを追求し、生産性や差別化を軽視する中国の政治経済システムの内的なインセンティブ構造に起因する構造的な欠陥である。

 ・従来の解釈との相違: 国内需要の不足や中央政府による過剰な補助金ではなく、地方政府の行動と金融システムの偏りが生み出す制御不能な供給の急増が主因である。

 構造的要因

 ・地方政府のインセンティブ: 成長・税収を重視する幹部評価システムと、生産地で課税される付加価値税(VAT)の配分構造により、地方が産業クラスターの拡大と重複投資を競い合う。不動産収入の激減が、この傾向を加速させている。

 ・金融システムの偏り: 銀行が物理的資産を担保とする低リスクの製造業プロジェクトを優先し、資本が工場建設に偏る結果、利益率が低く、非効率な「ゾンビ企業」が存続し続ける。イノベーションを目指す民間企業へのリスクマネーの供給は不足している。

 ・企業行動: 高い税負担と市場競争により、企業はリスクを避け、迅速な模倣と規模拡大、そして市場シェア維持のための激しい価格競争に陥る。

 ・影響: 過剰生産は、国際的な貿易摩擦だけでなく、国内のデフレ圧力、企業利益の低下、イノベーションの制約、雇用・消費の弱体化を通じて、中国経済全体の持続的成長を阻害する。

 ・解決策: 価格規制などの対症療法ではなく、地方政府の評価指標、税制、金融システム、競争政策の抜本的な改革が必要であり、これは中国モデルそのものの変革を意味する。

【桃源寸評】🌍

 中国「過剰生産能力」論の欺瞞性

 西側の政治的無能と保護主義のレトリックに対する厳重な反論

 はじめに

 既視感が示す西側レトリックの再燃と論点のすり替え

 中国の電気自動車(EV)、バッテリー、太陽光パネルといったグリーン技術製品の台頭を巡る「過剰生産能力(オーバーキャパシティ)」批判は、その根底において経済原則を無視し、政治的な都合の良い解釈に立脚した西側のレッテルの貼り付けに過ぎない。本論において「既視感」という言葉が持つ意味は、米国のジャネット・イエレン財務長官やEUのウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長らが2024年頃に主導したこの批判が、一時的に沈静化したにもかかわらず、本記事によって再び蘇ったという、西側保護主義レトリックの反復性を指す。

 このレトリックは、中国企業が技術革新と効率の追求を重ねた結果を「構造的脅威」と見なし、自国の産業衰退から目を背けるための政治的無能の露呈である。本論は、この批判の欺瞞性を暴き、批判の先陣を切った西側政治家の主張を論破し、真に構造的分析を向けるべきは、競争力を失った西側諸国の内部構造であることを強く主張するものである。

 第1章:市場原理と技術革新の成果としての中国の優位性

 記事は、中国のグリーン技術製品の大量供給を「世界が受け止めきれないほどの生産」と見なし、それを「過剰生産能力」という否定的な枠組みで捉えているが、これは需要と供給の市場原理を意図的に無視した見方である。

 1.1.コスト競争力の正当性と「創造的破壊」

 中国企業は、垂直統合と大規模生産によって学習効果(Learning Curve)を最大化し、極めてコストパフォーマンスの高い製品を生み出している。記事が指摘するように、中国はEVモデルを「1万ドル以下」で販売できるのに対し、米国では「3万ドル」から始まるのが一般的である。この価格差は、中国の生産性、サプライチェーンの効率性、および技術革新の成果に他ならない。

 中国が「太陽光サプライチェーンの約80パーセントを支配」しているのも、かつて西側諸国が担っていた生産コスト削減の努力を、中国企業が桁違いのスピードで実現した結果である。これは市場経済における「創造的破壊」であり、消費者に利益をもたらし、世界の気候変動対策を加速させる要因となっている。

 現に、中国のEVは消費者に広く受け入れられ、売れていることが何よりの証拠である。いかなる屁理屈を述べようとも、コストパフォーマンスに優れ、革新的な中国製品に対抗できないという西側の現実は、消費者の選択によって示されている。

 1.2.補助金批判の欺瞞性と西側自身の保護主義

 中国の優位性が「不公平な政府補助金」の結果であるとする西側の批判は、補助金の役割と、西側自身の保護主義的措置の現実から目を背けている。中国の補助金は、その主な目的が「湯水のごとく」資金を垂れ流して海外市場を破壊することではなく、国内産業の育成、技術の自立、そして雇用創出のためであり、現在の圧倒的な競争力は、補助金が撤廃された後も持続している技術力と効率に根ざしている。

 一方で、補助金問題を殊更強調する米国やEU自身が、より差別的で排他的な巨額の国家補助金を自国産業に投入している事実は、この批判の欺瞞性を露呈している。米国のインフレ削減法(IRA)やCHIPS法は、多額の税控除や補助金を通じて、実質的に中国製品を市場から排除し、「Buy American」を強制するあからさまな保護主義である。

 問われるべきは、中国を見習ってイノベーションと効率化の努力を怠り、その結果を「補助金」という政治的口実に託けて報復に走っている西側の姿勢である。

 第2章:過剰生産能力論の主導者たちへの批判と論点の誤り

 過剰生産能力論は、米国のイエレン財務長官やEUのフォン・デア・ライエン委員長によって政治的中心議題に押し上げられたが、彼らの主張は、自国の構造的課題を中国の内部欠陥にすり替える詭弁に過ぎない。

 2.1.イエレン財務長官の主張への批判:構造的問題のすり替え

 ジャネット・イエレン米財務長官は2024年3月、中国のグリーン技術サプライチェーンにおける「超過生産能力が世界に波及する可能性」について懸念を表明した。彼女は、過去の鉄鋼・アルミニウム産業で生じた問題がグリーン技術分野で再発していると警告し、関税措置の正当化を主導した。

 批判: イエレン長官の主張は、中国の優位性を「安値輸出」という不公平な行為としてのみ捉えることに終始している。米国が鉄鋼やアルミニウムで競争圧力を受けたのは、中国の補助金だけでなく、米国内の製造コスト高、硬直した労働市場、そして米国企業のイノベーションの停滞という、米国の内部構造的課題が主因であった。イエレン長官は、この米国の内部構造の問題を看過し、「過剰生産能力」という中国の内部欠陥に責任を転嫁することで、米国の構造改革の必要性から国民の目を逸らしている。

 2.2.フォン・デア・ライエン委員長の主張への批判:市場原理の否定

 ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は2023年9月、中国製EVに対する反補助金調査の開始を宣言し、これが2024年10月の暫定関税賦課へと繋がった。この措置は、「不公平な政府補助金」がEU生産者に「経済的損害の脅威」を与えているという根拠に基づいている。

 批判: フォン・デア・ライエン委員長の主張は、消費者に受け入れられ、気候変動対策に貢献する安価な製品の流入を、「経済的損害」と見なすことで、自由貿易と市場原理を否定している。EUの自動車産業が中国EVに対抗できないのは、高コスト体質とEVへの戦略的転換の遅れに起因する。この問題の解決策は、中国の補助金を理由に関税という保護主義的手段に頼ることではなく、EU域内の企業が中国製品を技術的・コスト的に「凌駕する製品」を生み出すための競争環境を整備することである。

 2.3.優位な製品を生み出せない西側の構造的課題

 中国の生産物が市場を席巻しているのは、中国の補助金や不公平な競争の結果であるとする西側の批判は、自国の産業が「凌駕する製品」を輩出できていないという、より深刻な現実から目を逸らしている。

 真の市場原理に基づけば、西側諸国が取るべき道は、中国の「欠陥」を探すことではなく、中国製品を技術的・コスト的に凌駕する製品(Super-Product)を生み出すことである。それが不可能であるならば、高関税という保護主義に走るのではなく、中国が常に主張するように、相互補完・相互協力の枠組みで、世界のグリーン・トランジションを進めるべきである。

 第3章:西側の「過剰生産能力」:レトリックの再燃と構造的失策

 本論で指摘する「既視感」とは、ジャネット・イエレン長官らのレッテルの貼り付けが一度フェイドアウトしたにもかかわらず、本記事によって再び蘇ったという、西側保護主義レトリックの反復性にある。この「過剰生産能力」という言葉が、西側自身の過去の経済的失策に対する既視感を伴うという点は、更に論理的に重要である。

 3.1.過去の西側諸国の「過剰在庫・過剰供給」問題

 「過剰生産能力」は、中国固有の問題ではなく、景気循環や技術進歩の過程で常に発生してきた現象である。特に過去1〜2年(2022年後半~2023年)において、西側諸国自身がパンデミック後の需要の誤算による過剰在庫や過剰供給に苦しんできた。

 半導体産業: 米国の主要な半導体メーカーは、需要の急減速により深刻な在庫調整と設備稼働率の低下に見舞われ、巨額の評価損を計上した。これは、需要を過大に見積もった結果の「過剰生産能力」の一種であった。

 小売・アパレル業界: 米国や欧州の小売業者は、記録的な過剰在庫を抱え込み、大幅な値引き販売(デフレ圧力)に直面した。

 これらの事例は、「過剰」が資本主義経済において普遍的に発生する現象であることを示している。故に、西側の政治家が「過剰生産能力」を声高に叫び、これを中国の「構造的脅威」として再定義する行為は、普遍的に存在する経済現象を、政治的な目的のために利用していることを意味する。それは、自国の経済的失敗、すなわち中国に競争で打ち負かされた事実から国民の目を逸らすための、最も安易な政治的手段として機能しているのである。

 3.2.中国EVの成功とテスラの苦境が示す西側の限界

 中国のEVメーカーがコスト競争力で市場を席巻する一方、米国のEV業界の旗手であるテスラの状況は、西側の限界を象徴している。

 ・テスラの収益力低下: 最新の情報として、米テスラは、EV購入を巡る税制優遇措置の終了前の駆け込み需要で売上高は過去最高を記録した一方で、部品のコスト増などに伴い収益力が低下し、営業利益が前年同期比で40%も減少した。

 ・示唆される構造的問題: この事実は、イノベーションで先行したはずの米国企業でさえ、中国の圧倒的なサプライチェーンと低コスト生産体制の波に飲まれ、収益性を維持できていないことを示す。これは、中国の内部欠陥を批判するよりも、西側の製造業のサプライチェーン、労働コスト、そして投資環境そのものに、根本的な構造的欠陥が存在することを示唆している。

 第4章:分析のベクトルを転換せよ

 政治的無能と保護主義の構造

 本記事の分析は、中国の「政治経済の内部の仕組み」を詳細に批判しているが、これは論点の主客転倒である。過剰生産が中国の内部問題であろうと、それが世界市場に受け入れられている限り、国際貿易上の問題として政治化する行為は、西側の「政治的無能と保護主義の内部の仕組み」の表れとしてしか見なされない。

 4.1.西側の真の構造的欠陥への視座転換

 本記事が真に分析すべきは、中国の政治経済ではなく、以下の西側の構造的欠陥である。

 (1)政治的決断力の欠如: 米欧の政治家は、国内の既存産業(例:自動車産業や労働組合)からの圧力に屈し、痛みを伴う国内構造改革(高コスト産業の再編や大規模な技術投資)を避け、高関税という手っ取り早い「対症療法」に逃げている。記事が批判する中国の長期的な国家戦略は、西側の短期主義的な政治サイクルの限界を浮き彫りにしていると言える。

 (2)短期主義の金融資本主義: 西側の資本市場は、中国のような数十年にわたる国家戦略的な産業投資を支えることができず、四半期ごとの利益を追求する短期主義が支配的である。この金融システムこそが、西側の製造業のイノベーション能力と競争力を根本的に損なっている真の原因である。

 結論:中国の「過剰生産能力」論は西側の敗北宣言である

 中国の「過剰生産能力」論は、西側が技術競争と効率化の努力に敗北したことを覆い隠すための政治的修辞である。中国は、世界が必要とする製品を、世界が求める価格で供給しており、これはイノベーションと生産効率の勝利である。

 イエレン長官やフォン・デア・ライエン委員長が展開する他国の制度を批判するレトリックは、自国の無能力と衰退を糊塗し、国内の不満を中国への非難という形で逸らすための政治的装置として機能しているに過ぎない。

 真の構造的欠陥は、中国の地方政府のインセンティブではなく、自国の競争力回復のための政治的決断力を欠いた西側の内部構造にこそ存在する。「過剰生産能力」を批判する行為こそが、西側の「致命的な欠陥」であると断定できる。

 The Fallacy of the Western “Overcapacity” Argument Against China

 A Firm Rebuttal to the Rhetoric of Political Incompetence and Protectionism

 Introduction

 The Revival of Familiar Western Rhetoric and the Distortion of the Debate

 The criticism of China’s so-called “overcapacity” in green technology products such as electric vehicles (EVs), batteries, and solar panels is, at its core, a politically expedient label that disregards economic principles. The term “déjà vu” in this context refers to how this rhetoric—led by U.S. Treasury Secretary Janet Yellen and European Commission President Ursula von der Leyen around 2024—has resurfaced despite a temporary lull, illustrating the repetitive nature of Western protectionist discourse.

 This rhetoric regards the outcomes of Chinese firms’ technological innovation and pursuit of efficiency as a “structural threat,” thereby exposing Western political incompetence that seeks to deflect attention from their own industrial decline. This paper exposes the fallacy of such criticism, refutes the arguments made by leading Western politicians, and asserts that structural analysis should instead focus on the internal weaknesses of Western economies that have lost competitiveness.

 Chapter 1: China’s Advantage as a Result of Market Principles and Technological Innovation

 The article in question interprets China’s large-scale supply of green technology products as “production beyond what the world can absorb,” framing it negatively as “overcapacity.” This view deliberately ignores the principles of supply and demand that underpin market economies.

 1.1. The Legitimacy of Cost Competitiveness and “Creative Destruction”

 Chinese companies have maximized learning effects through vertical integration and mass production, thereby achieving exceptional cost performance. As noted in the article, China can sell EV models for “under $10,000,” while in the United States prices typically start around “$30,000.” This price gap is the direct result of China’s productivity, supply chain efficiency, and technological progress.

 China’s control of “about 80 percent of the solar-power supply chain” is likewise the result of achieving cost reductions at a speed unmatched by Western firms that once dominated the sector. This is a case of “creative destruction” in a market economy—benefiting consumers and accelerating global climate change mitigation.

 Indeed, the fact that Chinese EVs are widely accepted and selling strongly provides undeniable proof of this. No matter what sophistry is offered, the reality remains that Western producers cannot compete with China’s cost-efficient, innovative products—a reality made clear by consumer choice itself.

 1.2. The Fallacy of Subsidy Criticism and Western Protectionism

 Western claims that China’s advantage stems from “unfair government subsidies” overlook both the true role of subsidies and the protectionist measures in their own economies. Chinese subsidies are not about “flooding” foreign markets with cheap products but about nurturing domestic industry, achieving technological independence, and creating employment. Moreover, China’s current competitive edge is rooted in technological capacity and efficiency that persist even after subsidies are phased out.

 Meanwhile, the United States and the EU, which loudly denounce Chinese subsidies, are themselves injecting massive and discriminatory state aid into domestic industries. The U.S. Inflation Reduction Act (IRA) and CHIPS Act provide huge tax credits and subsidies that, in effect, exclude Chinese products and enforce “Buy American” protectionism.

 What should be questioned is not China’s policy but the West’s failure to emulate China’s drive for innovation and efficiency, hiding behind “subsidies” as a political excuse while resorting to retaliatory measures.

 Chapter 2: Critique of the Proponents of the Overcapacity Argument and Their Logical Errors

 The “overcapacity” argument was politically elevated by figures such as U.S. Treasury Secretary Janet Yellen and EU Commission President Ursula von der Leyen. Yet their claims amount to rhetorical sleight-of-hand—transferring their own structural problems onto China.

 2.1. Critique of Secretary Yellen: Deflecting Structural Problems

 In March 2024, Treasury Secretary Janet Yellen voiced concerns about China’s “excess capacity” in green-tech supply chains and its potential spillover effects worldwide. She warned that issues similar to those in steel and aluminum could re-emerge in green industries, using this to justify new tariff measures.

 Critique: Yellen’s claim fixates on portraying China’s competitiveness merely as “unfair low-price exports.” The decline of U.S. steel and aluminum was not solely caused by Chinese subsidies but by internal American factors: high production costs, a rigid labor market, and stagnating innovation. By ignoring these domestic structural problems and blaming an “overcapacity” issue within China, Yellen diverts public attention from the urgent need for structural reform in the United States.

 2.2. Critique of President von der Leyen: Denial of Market Principles

 In September 2023, EU Commission President Ursula von der Leyen announced an anti-subsidy investigation into Chinese EVs, leading to provisional tariffs in October 2024. The stated rationale was that “unfair government subsidies” posed a “threat of economic harm” to EU producers.

 Critique: Von der Leyen’s argument rejects free trade and market principles by defining the influx of affordable, climate-friendly products as “economic harm.” The inability of European automakers to compete with Chinese EVs stems from high cost structures and a delayed strategic shift toward electrification. The remedy lies not in imposing protectionist tariffs under the guise of anti-subsidy measures, but in creating conditions that allow EU firms to produce technologically and cost-wise superior products.

 2.3. The Structural Weakness of the West’s Innovation Capacity

 The Western claim that China’s market dominance is the product of “unfair competition” ignores the deeper issue—that Western industries have failed to create truly superior products.

 If market principles are to be upheld, Western countries should seek to develop “super-products” that surpass Chinese offerings in technology and cost, rather than hunting for “flaws” in China’s system. Failing that, they should not resort to protectionism through high tariffs, but, as China advocates, pursue mutual complementarity and cooperation to advance the global green transition.

 Chapter 3: The West’s Own “Overcapacity”: The Recurrence of Rhetoric and Structural Failure

 The “déjà vu” discussed here refers to the reappearance of Western protectionist rhetoric—led by Yellen and others—that had once faded. More importantly, the phrase “overcapacity” itself evokes the West’s own past economic missteps, which carry genuine structural significance.

 3.1. The West’s Historical “Overstock and Oversupply” Problems

 “Overcapacity” is not unique to China but a phenomenon that has always arisen in capitalist economies due to business cycles and technological change. Over the past one to two years (late 2022–2023), Western economies themselves have suffered from excessive inventories and oversupply caused by post-pandemic demand miscalculations.

 Semiconductor industry: Major U.S. semiconductor makers experienced steep inventory adjustments and lower capacity utilization, incurring massive write-downs—an unmistakable form of “overcapacity.”

Retail and apparel industries: Retailers in the U.S. and Europe were saddled with record inventories, forced into deep discounting, and faced deflationary pressures.

 These cases demonstrate that “excess” is an inherent feature of capitalist economies. Thus, when Western politicians loudly decry “overcapacity” and redefine it as a uniquely Chinese “structural threat,” they are exploiting a universal economic phenomenon for political purposes—to deflect domestic attention from their own failure to compete with China. It is the most convenient political tactic to conceal industrial decline.

 3.2. The Success of Chinese EVs and the Predicament of Tesla: A Symbol of Western Limits

 While Chinese EV manufacturers dominate global markets through cost competitiveness, Tesla—the flagship of the American EV industry—illustrates Western structural limits.

 ・Decline in profitability: Recently, Tesla recorded record revenues due to pre-deadline demand before tax incentives expired, yet its operating profit fell 40% year-on-year because of rising component costs.

 ・Structural implications: Even an American company that once led in innovation can no longer sustain profitability against China’s overwhelming supply-chain and low-cost production ecosystem. This underscores that the real structural defects lie not in China’s system but in the West’s own supply chains, labor costs, and investment environment.

 Chapter 4: Redirecting the Analytical Lens

 Political Incompetence and the Architecture of Protectionism

 The article in question analyzes China’s “internal political economy” in detail, but this represents a reversal of analytical priorities. Whether or not overproduction exists in China, as long as global markets accept its products, politicizing the issue as a trade problem only exposes the “internal mechanisms of political incompetence and protectionism” within the West.

 4.1. Shifting the Focus to the West’s Structural Flaws

 The true focus of analysis should not be China’s political economy but the following structural deficiencies in the West:

 (1)Lack of political decisiveness: Western politicians, constrained by pressure from entrenched industries (e.g., automakers and labor unions), avoid painful structural reforms such as high-cost industrial restructuring and large-scale technological investment. Instead, they resort to the quick fix of tariffs. China’s long-term strategic planning exposes the limits of the West’s short-term political cycles.

(2)Short-term financial capitalism: Western capital markets, dominated by quarterly profit imperatives, cannot sustain the kind of decades-long industrial investment that China pursues. This short-termism within the financial system is the true root of the West’s declining industrial innovation and competitiveness.

 Conclusion: The “Overcapacity” Argument Is the West’s Declaration of Defeat

 The Western “overcapacity” argument is nothing more than political rhetoric to obscure the West’s defeat in the race for technological and efficiency-driven competitiveness. China provides the products the world needs—at prices the world wants—representing a triumph of innovation and production efficiency.

 The rhetoric advanced by figures such as Secretary Yellen and President von der Leyen, which targets the institutional structure of another country, serves merely as a political device to disguise their own incapacity and decline, diverting domestic frustration into anti-China sentiment.

 The true structural defect lies not in China’s local government incentives but in the West’s lack of political resolve to restore competitiveness through reform. The act of criticizing “overcapacity” itself can therefore be regarded as the West’s fatal flaw.

【寸評 完】 💚

【引用・参照・底本】

The China Model’s Fatal Flaw FOREIGN AFFAIRS 2025.10.21
https://www.foreignaffairs.com/china/china-models-fatal-flaw-lizzi-lee?s=EDZZZ005ZX&utm_medium=newsletters&utm_source=fatoday&utm_campaign=The%20China%20Model%E2%80%99s%20Fatal%20Flaw&utm_content=20251022&utm_term=EDZZZ005ZX

中国:「電化国家」として経済的に主要超大国になる可能性2025年10月23日 18:43

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【概要】
 
 歴史学者であるジュアン・コール教授がデイビッド・リンのポッドキャスト「The David Lin Report」に出演し、ガザ紛争、米国の中東政策、米中対立、そして今後の世界情勢について解説した内容である。コール教授は、ガザの現状、米国の関与、和平の可能性、パレスチナ国家の必要性、石油市場への影響、そして米中の経済的および戦略的関係について意見を述べている。

【詳細】 

 ガザ紛争と米国の関与

 ガザでは過去2年間にわたりイスラエルによる激しい爆撃とインフラ破壊が行われ、食糧・医療支援も阻まれている。国連は飢餓状態と認定し、一部からはジェノサイドの可能性も指摘されている。

 米国はイスラエルへの兵器供給を通じ、紛争の事実上の「共犯者」となっており、戦争を早期に止めることは可能であったとコール教授は指摘する。和平の障害は、ネタニヤフ首相とその極右閣僚であるとされる。

 和平交渉とガザの統治

 ハマスは武装解除には同意しておらず、撤退後のガザ統治が焦点となる。今後、暫定行政にトニー・ブレア元英首相やPLO、あるいはアラブ・トルコ連合の介入の可能性が議論されている。

 永続的な平和には、パレスチナ国家の確立が不可欠である。現状では、ガザやヨルダン川西岸のパレスチナ人はイスラエル軍事支配下にあり、土地や財産の権利が保護されていない。

 石油市場への影響

 ガザ紛争そのものは主要な石油生産地から遠いため直接的影響は限定的である。むしろ、紅海・スエズ運河の航路封鎖やペルシャ湾諸国の生産状況、イランの制裁状況が石油市場に大きく影響する。

 コール教授は、ガザ和平が維持されれば、ホウティ派の船舶攻撃が減少し、輸送コストが下がる可能性を指摘している。

 米中関係と世界経済

 中国はイランとの関係を慎重に扱っており、地域紛争に積極的に介入する意図はないとされる。米中対立は過去の米ソ冷戦とは異なり、経済的結びつきが深く、貿易や技術競争が主要な争点となる。

 中国は電気自動車(EV)や太陽光パネルで世界市場をリードし、長期的には石油需要を減少させ、経済面で優位に立つ可能性がある。

 今後50年の展望

 ・コール教授は、中国が「電化国家」として経済的に世界の主要超大国になる可能性を指摘する。

 ・米国は科学研究や技術投資の停滞によって相対的地位が低下する恐れがある。

 ・気候変動による移住や資源分布の変化が世界秩序に大きな影響を与えるとされる。

【要点】

 ・ガザ紛争はイスラエルとハマスの軍事的対立だけでなく、米国の兵器供給によって影響を受けている。

 ・永続的平和にはパレスチナ国家の確立が不可欠である。

 ・現在の和平は不安定であり、ネタニヤフ政権や地域勢力が和平破壊のリスク要因となる。

 ・石油市場への直接影響は限定的で、主要な要因はペルシャ湾やスエズ運河の状況である。

 ・米中関係は冷戦型の軍事対立ではなく、貿易・技術競争が主軸である。

 ・中国のEV・再生可能エネルギー技術は、長期的に世界経済と石油需要に大きな影響を与える可能性がある。

 ・気候変動や人口移動が、今後の国際秩序に深刻な影響を及ぼすと考えられる。

【引用・参照・底本】

Juan Cole on Gaza, U.S. Policy, and the Future of the Middle East INFORMED COMMENT 2025.10.21
https://www.foreignaffairs.com/china/china-models-fatal-flaw-lizzi-lee?s=EDZZZ005ZX&utm_medium=newsletters&utm_source=fatoday&utm_campaign=The%20China%20Model%E2%80%99s%20Fatal%20Flaw&utm_content=20251022&utm_term=EDZZZ005ZX

「報道の自由にとって暗黒の日」と非難2025年10月23日 19:52

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【概要】
 
 2025年10月15日、国防総省(ペンタゴン)は、ピート・ヘグセス戦争長官が発令した新たな取材方針への署名を拒否したほぼすべての主要メディアの記者たちの報道資格を剥奪した。新しい規則は、機密情報や漏洩情報を求めたり入手したりしないことを誓約させるものであり、報道機関側は、この文書が記者を訴追の可能性に晒すと懸念した。

 その結果、Fox News、NBC、ABC、CNN、NPR、AP、Washington Post、New York Timesなど、大手メディアの記者団はペンタゴンから退去した。これに対し、One America News(OAN)のみが署名している。ペンタゴン報道協会は、この日を「報道の自由にとって暗黒の日」と非難した。

【詳細】 

 新たな規則とメディアの反応

 国防総省は、ヘグセス戦争長官の下で、記者向けの新たな取材規則と方針を導入した。以前は1ページの規則であったものが、21ページに及ぶ詳細な内容となり、記者たちの行動を厳しく制限している。特に問題となったのは、機密、機微、あるいは漏洩した資料を求めたり、入手したりしないと誓約させる項目である。署名しなかった報道機関は、この誓約がジャーナリストを潜在的な訴追にさらす危険性があると考えた。

 新たな規則はまた、アクセスを大幅に制限し、「公益に関わる事項に関する情報を単純に要求した」だけでも、資格剥奪を含む懲罰の可能性を高める内容を成文化した。ナショナルニュース組織の弁護士たちは、数週間にわたりペンタゴン当局者とこの厳格な規制について交渉を続けてきた。

 資格剥奪と退去

 当局は、報道機関に対し、この誓約書に火曜日の午後5時までに署名するか、さもなくば24時間以内に報道資格を返上するよう要求した。期限となった水曜日の終わりに、Axiosを含む多くの主要メディア(前述の各社)が署名を拒否した結果、記者たちは報道資格を没収され、荷物を持ってペンタゴン敷地外へ退去する事態となった。

 ペンタゴン報道協会は、「報道の自由にとって暗黒の日であり、ガバナンスにおける米国の透明性へのコミットメント、ペンタゴンにおける公的説明責任、そして万人の言論の自由の弱体化に関する懸念を引き起こす」との声明を発表した。一方、One America News(OAN)は、この新しい方針に署名した数少ない、あるいは唯一の主要ネットワークであった。

 ヘグセス長官の対応

 戦争長官のピート・ヘグセスは、メディアの退去と声明に対し、ソーシャルメディア上で手を振る(dismissive wave)絵文字で応じた。その後、「Press Credentialing FOR DUMMIES(プレス・クレデンシャリングのための入門書)」と題するリストを投稿し、バッジの視認性の要件や「犯罪行為の勧誘」の禁止といった新たな制限を概説した。皮肉にも、ヘグセス自身は過去に「イエメンのグループチャットのシグナル問題」で物議の中心に置かれていた経緯がある。

【要点】

 ・問題の発生: 2025年10月15日、ペンタゴンは、戦争長官ピート・ヘグセスによる新しい21ページの取材方針への署名を拒否した主要メディアの記者たちの報道資格を剥奪した。  

 ・規則の内容: 新方針は、記者に機密情報や漏洩情報を求めない誓約をさせ、アクセスを厳しく制限し、情報要求だけでも処罰の可能性を上げるものであった。

 ・メディアの拒否理由: 報道機関側は、この誓約がジャーナリストを潜在的な訴追に晒すとして署名を拒否し、報道の自由と透明性の後退を懸念した。

 ・結果と退去: Fox News、NBC、CNN、NYTなど、ほぼすべての主要メディアの記者が資格を剥奪され、ペンタゴンから退去した。  

 ・署名した唯一の主要メディア: One America News (OAN)は、この新しい方針に署名した数少ない(あるいは唯一の)主要ネットワークであった。  

 ・長官の反応: ヘグセス戦争長官は、この事態に対し、ソーシャルメディアで絵文字による冷淡な反応を示し、新たな制限事項を投稿した。

【引用・参照・底本】

Reporters Leave Pentagon En Masse After All But One Outlet Rejects New Rules ZeroHedge 2025.10.17
https://www.zerohedge.com/geopolitical/reporters-leave-pentagon-en-masse-after-all-one-outlet-rejects-new-rules

中国人研究者の帰国動向2025年10月23日 20:43

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【概要】
 
 本論文(「トランプ政権下の中国人研究者の帰国ラッシュ」)は、第二期トランプ政権下における中国人研究者の帰国動向とその影響を分析したものである。米国の研究環境悪化が中国人研究者を押し出す「プッシュ要因」と、中国政府の戦略的人材獲得政策が引き寄せる「プル要因」が相互に作用し、大規模な人材移動が生じている。この結果、Nature Indexなどの指標では中国が米国を上回る成果を示すようになり、世界の科学技術勢力図が塗り替えられつつある。帰国した研究者は基礎科学から応用技術まで幅広い分野で貢献しており、21世紀の科学技術競争における米中関係に根本的な変化をもたらしている。

【詳細】 

 プッシュ要因:米国からの押し出し

 第二期トランプ政権下では、複数の要因が中国人研究者の米国離れを促している。
科学研究予算の削減では、インフラ投資雇用法、インフレ抑制法、CHIPSおよび科学法などの予算凍結と見直しが進められている。国立科学財団や国立衛生研究所の予算も大幅削減案が提示され、研究運営の不確実性が高まっている。公衆衛生、気候科学、クリーンエネルギーなど多岐にわたる分野で助成金削減が発生し、若手研究者の雇用不安定化が懸念されている。Nature誌の2025年3月調査では、米国在住研究者の約75%が米国を離れることを検討していると回答した。

 米中対立の激化も深刻な影響を与えている。2018年の第一期トランプ政権下で導入された「チャイナ・イニシアティブ」は、起訴された被告の9割弱が中国系であり、その後遺症が残っている。2024年に改訂された米中科学技術協定では、AI、量子技術、半導体など最先端分野が協力対象から除外され、気象学や地質学などの基礎科学に限定された。

 移民・ビザ政策の制約強化として、STEM分野の大学院生やポスドクに対するビザの有効期間短縮や拒否率上昇が続いている。第二期トランプ政権下ではH-1Bビザの新規申請に10万ドルの申請手数料が新設され、無作為抽選方式から賃金水準などに基づく優先順位付け方式への移行が打ち出された。

 プル要因:中国への引き寄せ

 中国政府は多面的な戦略で研究者の帰国を促している。

 経済的要因として、2008年の「千人計画」開始以降、海外人材獲得を国家戦略として位置づけている。地方政府も北京の「海外人材聚集工程」、上海の「浦江人材計画」、深圳の「孔雀計画」など独自の支援制度を展開している。2024年の中国のR&D支出額は3.61兆元で対GDP比2.7%に達し、世界水準の研究設備が整備されている。華為、アリババ、テンセントなどの企業も大規模研究所を設立している。

 「大衆創業・万衆創新」政策により起業環境が改善され、企業登録手続きのオンライン化、ベンチャーキャピタル市場の成長、科創板などの新興企業向け市場創設が実現した。2025年10月1日には新たに「Kビザ」が導入され、STEM分野の若手専門家や海外研究者を対象にスポンサー不要で申請可能な長期滞在・数次入国ビザが提供されるようになった。

 社会的要因として、中国文化と帰属意識、家族とのつながりが作用している。国際学校の増設や海外大学の中国キャンパス設立により子どもの教育環境が改善されている。帰国研究者は国内で評価を受け、学術界だけでなく産業界や政策形成の場に関与する機会が与えられている。

 頭脳の逆流の実態

 中国教育部の統計によると、2001年の留学生帰国率は14.6%にとどまったが、2019年には82.5%に上昇した。2020年以降は統計が発表されていないが、コロナ禍の影響もあり、帰国者数が出国者数を上回る状況が続いていると伝えられている。

 研究者レベルでも帰国が加速している。Asian American Scholar Forumの2021年12月から2022年3月の調査では、在米中国系科学者・技術者の61%が米国から離れたいと考えている。中国人科学者の帰国者数は2000−2021年に累計11,259人に達し、その43.9%に当たる4,940人が2018−2021年に集中している。

 帰国研究者の貢献事例

 基礎科学分野では、数学のフィールズ賞受賞者・邱成桐が2022年に清華大学教授として本格的に帰国し、中国の数学教育システムの近代化に貢献している。物理学では、1957年ノーベル物理学賞受賞者の楊振寧が2003年に清華大学に迎えられ、量子物理学の潘建偉は2001年に中国科学技術大学に移り、2016年に世界初の量子通信衛星「墨子号」の打ち上げを成功させた。

 化学・材料工学では、ナノテクノロジーの王中林が2024年に中国科学院北京ナノエネルギー・ナノシステム研究所のディレクターに就任し、材料力学の高華健が2024年に清華大学に着任した。生命科学では、構造生物学の施一公が2008年に清華大学に迎えられ、2018年に西湖大学の学長に就任し、RNA生物学の付向東が2023年に西湖大学に着任した。

 応用・産業技術分野では、AIのチューリング賞受賞者・姚期智が2004年に清華大学に移り、学際情報研究院を設立した。半導体技術の張汝京が2000年に上海で中芯国際集成電路製造を設立し、中国半導体産業の基礎を築いた。新エネルギー技術の施正栄が2001年に帰国して無錫尚徳太陽能電力を創業し、世界最大の太陽電池メーカーへと成長させた。

 ITプラットフォーム分野では、李彦宏が2000年に帰国して百度を創業し中国最大の検索エンジンを構築した。王興が2010年に美団を創業し、多岐にわたる生活関連サービスを統合するプラットフォームへと成長させた。黄峥が2015年に拼多多を設立し、共同購入とSNS的要素を融合させたソーシャルECモデルで急成長し、「Temu」を通じて欧米市場にも進出した。

 科学技術勢力図の変化

 2024年時点で、米国における科学分野の博士号取得者のうち中国人留学生は13.3%を占め、外国人留学生の36.5%に達している。そのうちの78.0%が卒業後も米国に残っており、中国人留学生は米国にとって重要な人材源となっている。

 米国のハイテク産業は長年、海外からの優秀な人材の流入に依存してきた。グーグルの共同創設者セルゲイ・ブリン、テスラとスペースXのイーロン・マスク、エヌビディアのジェンスン・フアンなど移民科学者・技術者が米国経済の競争優位を支えてきた。米国科学者連盟は、頭脳流出が米国の「磁力」の弱まり、若い科学者世代全体の喪失の危険性、イノベーションや産業競争力の低下を招くと警告している。

 一方、Nature Indexによると、中国の値は2013年には米国の3分の1程度だったが、2022年に初めて米国を抜き、2024年には米国を45.5%上回るようになった。研究機関ランキングでは、2024年時点でトップ10のうち8機関を中国が占めている。中国科学院、中国科学技術大学、浙江大学、北京大学、中国科学院大学、清華大学などが上位を独占し、中国以外では米国のハーバード大学とドイツのマックス・プランク研究所のみとなった。分野別では、中国は化学、物理科学、地球・環境科学で世界1位となっている。

 今後の展望

 米国の科学技術政策の後退と中国政府による積極的な人材・資金投入は、従来の「米国中心」の国際研究秩序を大きく揺るがしている。今後は中国人研究者以外の研究者の中国への流入も加速すると予想される。実際、米国や欧州の研究環境に不安を抱いた研究者が、より安定した資金と大規模プロジェクトへの参加機会を求めて中国に渡るケースは増えつつある。

 帰国研究者が持ち込んだ国際的ネットワークと中国国内の豊富な資金・インフラが結びつくことで、中国は単なる研究集積地にとどまらず、世界の学術交流の「ハブ」として機能し始めている。国際学会の開催地や大規模共同研究の中枢が中国へと移行しつつあり、研究テーマの優先順位の設定並びに科学研究および技術開発に関する国際的規格・指針の策定においても、中国の影響力が増大している。

【要点】

 ・背景:第二期トランプ政権下での政策環境変化により、中国人研究者の大規模な帰国が進んでいる。

 ・プッシュ要因:米国では科学研究予算の大幅削減、対中強硬政策の継続、移民・ビザ政策の制約強化により研究環境が悪化し、在米研究者の75%が米国を離れることを検討している。

 ・プル要因:中国は「千人計画」などの経済的インセンティブ、R&D支出の拡大(2024年に対GDP比2.7%)、起業環境の改善、新設の「Kビザ」などにより研究者を戦略的に獲得している。

 ・人材移動の実態:中国人留学生の帰国率は2001年の14.6%から2019年には82.5%に上昇し、2000−2021年に累計11,259人の科学者が帰国し、その43.9%が2018−2021年に集中している

 ・帰国研究者の貢献:基礎科学(数学の邱成桐、物理学の潘建偉など)から応用・産業技術(AIの姚期智、半導体の張汝京、ITの李彦宏・王興・黄峥など)まで幅広い分野で活躍している。

 ・勢力図の変化:Nature Indexで中国は2022年に初めて米国を抜き、2024年には45.5%上回り、研究機関ランキングトップ10のうち8機関を中国が占めるようになった。

 ・米国への影響:米国の博士号取得者の13.3%が中国人留学生であり、頭脳流出により米国の「磁力」の弱まり、若い科学者世代の喪失、イノベーション能力の低下が懸念されている。

 今後の展望:中国は研究集積地から世界の学術交流の「ハブ」へと転換しつつあり、国際的な科学技術の規格・指針策定における影響力が増大し、世界の科学技術勢力図の歴史的転換が進行している。

【引用・参照・底本】

トランプ政権下の中国人研究者の帰国ラッシュ -塗り替えられる世界の科学技術勢力図- RIETI 経済産業研究所 2025.10.17
https://www.zerohedge.com/geopolitical/reporters-leave-pentagon-en-masse-after-all-one-outlet-rejects-new-rules

エアバス:中国天津に2本目のA320ファミリー最終組立ライン2025年10月23日 21:11

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【概要】
 
 欧州の航空機メーカーであるエアバスが2025年10月22日、中国天津に2本目のA320ファミリー最終組立ライン(FAL)を開設した。これは中国航空市場の繁栄に対するエアバスの信頼と、サプライチェーンの強固な能力を示すものである。2025年はエアバスと中国民間航空部門の協力開始から40周年に当たり、1985年に最初のエアバス機A310が納入された。新ラインは2026年初頭の本格稼働を目指しており、エアバスが2027年に月産75機のA320ファミリー機を組み立てる計画に必要な柔軟性と生産能力を提供する。

【詳細】 

 開設の背景と意義

 エアバスCEOのギヨーム・フォーリ氏は天津での式典で、新型コロナウイルスや地政学的課題などの困難にもかかわらず、「我々はここにいて、投資を続け、増産を続けている」と述べた。

 中国のWang Wentao商務相は10月21日にフォーリ氏と会談し、近年中国の市場規模が着実に拡大し、世界第2位の消費市場および輸入市場になったことを指摘した。Wang商務相は、中国が中国式現代化を推進し、新質生産力を発展させることで、エアバスを含む外資企業に広範な発展空間を提供すると述べた。また、エアバスが天津の2本目のA320最終組立ラインの稼働を機に、中国との協力を強化し、中国と世界に高品質な航空製品とサービスを提供することを期待すると表明した。

 フォーリ氏は、中国市場に根を張り続け、中仏間および中欧間の経済貿易協力の促進に貢献する意向を示した。

 生産体制の拡充

 新ラインにより、エアバスは中国およびその他の顧客に近い場所で生産を大幅に増やすことが可能になる。これは世界のエアバス生産ネットワークを補完するもので、ドイツ・ハンブルクに4ライン、フランス・トゥールーズに2ライン、米国モービルに2ライン、そして天津に2ラインの計10本の最終組立ラインを構成する。

 最初の機体の組立準備が進行中で、施設の本格稼働は2026年初頭を目標としている。

 国家発展改革委員会のイノベーション・ハイテク産業政策担当のBai Jingyu氏は、式典で「これは中欧航空産業協力の新たなレベルを示し、深化した協力の新たなページを開き、ハイテク産業における戦略的パートナーシップの新たな成果を表している」と述べた。

 フォーリ氏は、「天津の2本目のラインが世界生産システムに加わることを歓迎する。これにより、2027年に月間75機のA320ファミリー機を組み立てる計画を実現するために必要な柔軟性と生産能力が提供される」と語った。

 A320ファミリーの実績

 フォーリ氏は、「A320ファミリーは、市場参入がボーイング737ファミリーより20年遅かったにもかかわらず、総納入数でそれを上回り、史上最も売れた最も成功した民間航空機になった」と述べた。

 エアバス・チャイナのジョージ・XuCEOは、「エアバスの中国における産業貢献は、天津で組み立てられた航空機の輸出を超えるものである」と指摘した。これには、多くのA320ファミリー機の翼が中国で製造されており、一部の大型エアバス部品のシステム統合も中国で完成していることが含まれる。

 Xu氏は、このアプローチがまさにエアバスが中国の航空サプライチェーンの世界進出と輸出目標の達成を支援している方法であると強調した。

 国際展開

 「特筆すべきは、2023年以降、エアバスが天津生産の航空機の非中国顧客への納入を拡大し始めたことである」とXu氏は付け加えた。「中国製エアバス機の納期遵守と製品品質に関する国際顧客からのフィードバックは極めて高い」と述べた。

 エアバス・チャイナのデータによると、2008年に生産を開始した天津の最初の最終組立ラインでは、これまでに約780機が組み立てられ、今年末までに800機という節目に達する見込みである。2本目の最終組立ラインは生産能力を倍増させる。

 昨年、天津で組み立てられた航空機の25%が、欧州、アジア、中東を含む中国国外に納入された。2本目の最終組立ラインは、エアバスが2027年に月間75機を納入するというA320ファミリーの世界的な増産計画の重要な促進要因である。

 サプライチェーン協力の強化

 式典では、複数の講演者が中国とEUの間のサプライチェーン協力の重要性を強調した。

 北京に本社を置く国営航空宇宙コングロマリットである中国航空工業集団(AVIC)のWei Yingbiao総経理は、「2本目の最終組立ラインの円滑で安定した運営を支援するため、我々はAVIC天津会社に投資・設立し、主要翼部品と胴体システムのドア・ツー・ドア生産・供給サービスを提供している。この取り組みは、最終組立プロセスに対してより効率的で合理化された支援を提供する」と述べた。

 Wei氏は、エアバスの2本目の最終組立ラインの開設は、中欧航空産業協力における画期的な成果であるだけでなく、その回復力とパートナー間の強固な信頼の力強い証明でもあると述べた。さらに、中国航空産業の開放へのコミットメントと世界のサプライチェーンへの積極的な統合の生きた例であるとした。

 専門家の見解

 ベテラン市場ウォッチャーのQi Qi氏は、「中国におけるエアバスの2本目の最終組立ラインの開設は、A320ファミリーの世界的需要に対する同社の信頼を裏付けている」と述べた。

 Qi氏の見解では、航空機の最終組立には、約1,000のサプライヤーから調達された1万点以上の中核部品の体系的な統合が必要である。

 Qi氏は、エアバスの観点から見ると、中国での生産能力拡大により、中国の航空機製造部門のより多くの企業がその上流・下流の産業チェーンに参加することが期待され、これは天津の2本の組立ラインの生産能力を支援・確保するために極めて重要であると述べた。

【要点】

 ・開設時期と場所: 2025年10月22日、中国天津に2本目のA320ファミリー最終組立ラインを開設。

 ・協力の節目: 2025年はエアバスと中国民間航空部門の協力開始40周年(1985年に最初のA310納入)。

 ・生産体制: 世界10本の最終組立ラインの一つ。2026年初頭の本格稼働を目標。

 ・生産目標: 2027年に月産75機のA320ファミリー機を組み立てる計画に必要な柔軟性と生産能力を提供。

 ・天津での実績: 最初のライン(2008年開始)は約780機を組み立て、今年末に800機到達見込み。2本目のラインで生産能力が倍増。

 ・国際展開: 2023年以降、天津生産機の非中国顧客への納入を拡大。昨年は天津組立機の25%が中国国外(欧州、アジア、中東)に納入。

 ・A320の地位: 市場参入がボーイング737より20年遅かったにもかかわらず、総納入数で上回り史上最も成功した民間航空機に。

 ・中国での産業貢献: 多くのA320ファミリー機の翼が中国で製造され、大型部品のシステム統合も中国で実施。

 ・サプライチェーン: 航空機組立には約1,000のサプライヤーから1万点以上の部品が必要。中国企業の上流・下流産業チェーンへの参加を促進。

 ・中欧協力: 中欧航空産業協力の新たなレベルを示し、ハイテク産業における戦略的パートナーシップの成果。

【引用・参照・底本】

Airbus opens second Final Assembly Line in Tianjin for A320 Family aircraft GT 2025.10.22
https://www.globaltimes.cn/page/202510/1346277.shtml

四つの政治文書の原則・歴史や台湾などの重要問題の約束を果たすこと2025年10月23日 22:16

Geminiで作成
【概要】
 
 中国外交部のGuo Jiakun報道官は、日本の新首相である高市早苗氏への祝電送付の有無について、外交上の規範に従い適切な手配を行ったと発言した。また、中国は日本との関係における基本的立場が一貫しており明確であるとし、日本に対し、両国間の四つの政治文書の原則を遵守し、歴史や台湾などの重要問題における政治的約束を果たすよう希望を表明した。

【詳細】 

 中国外交部のGuo Jiakun報道官は、木曜日(2025年10月23日)に、新しく日本の首相に就任した高市早苗氏へ中国が祝電を送るかという質問に対し、外交規範に則り適切な手配を既に行ったと述べた。

 同報道官は、中国と日本が近隣国であるという事実を指摘し、中国の日中関係に対する基本的な立場は常に一貫しており明確であると付け加えた。

 さらに、報道官は日本側に対し、中国と同じ方向性で協力すること、両国間の四つの政治文書に定められた原則を堅持すること、そして歴史や台湾などの重大な問題について政治的約束を順守することを希望すると表明した。

 これは、二国間関係の政治的基礎を維持し、中国と日本の戦略的互恵関係を包括的に推進するためであるとしている。

【要点】

 ・中国外交部のGuo Jiakun報道官は、日本の新首相である高市早苗氏への祝電について、外交上の規範に基づき適切な手配済みであると述べた。

 ・報道官は、日中両国が近隣国であり、中国の基本的立場は一貫して明確であると強調した。

 ・日本に対し、四つの政治文書の原則を守り、歴史や台湾などの重要問題における政治的約束を果たすよう希望した。

 ・これらの行動の目的は、二国間関係の政治的基礎を維持し、戦略的互恵関係を包括的に推進することにある。

【桃源寸評】🌍

 四つの政治文書

 日本と中国(中華人民共和国)の間には、国交正常化以来、四つの政治文書が存在し、両国関係の基本原則と政治的約束が示されている。一般的に「四つの政治文書」と呼ばれるのは以下である。

 1.1972年の日中国交正常化共同声明

 ・中国側首席:周恩来

 ・日本側首相:田中角栄

 ・日中双方の国交正常化を宣言。

 ・「一つの中国」原則を尊重することを確認。

 ・台湾との公式関係を終えることなどを含む。

 【参考】
 日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html?utm_source=chatgpt.com

 2.1978年の日中平和友好条約

 ・中国側首席:華国鋒(当時の中華人民共和国首相)

 ・日本側首相:福田赳夫

 ・日中間の恒久的な平和と友好関係を確認。

 ・武力による威嚇や行使を行わないことなどを約束。

 【参考】
 日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_heiwa.html?utm_source=chatgpt.com

 3.1982年の日中共同声明

 ・中国側首相:趙紫陽(当時の中国国務院総理)

 ・日本側首相:中曽根康弘

 ・これは1978年条約を補完する政治声明として扱われることがある。

 ・両国間の協力や信頼関係強化に関する内容。

 【参考】

 4.1998年の日中共同声明(戦略的互恵関係に関する声明)

 ・中国側首相:朱鎔基

 ・日本側首相:橋本龍太郎

 ・経済・政治・安全保障分野での協力を強化する意思を表明。

 ・両国の平和的発展と互恵関係を推進することを確認。

 注:文献や文脈によっては、1982年や1998年の声明ではなく、1972年の共同声明と1978年条約を基にした「三つの政治文書」として語られる場合もあるが、一般には「四つ」とされることも多い。

 【参考】
 平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_sengen.html?utm_source=chatgpt.com

 歴史や台湾など重要問題における政治的約束

 四つの政治文書で明示された政治的約束の中で、日本に特に求められるものは以下である。

 1.一つの中国原則の尊重

 ・中国は台湾を自国領土の一部と主張しており、日本は公式に「台湾は中国の一部」と認めることを約束。

 2.歴史問題に関する慎重な対応

 ・侵略戦争や歴史認識に関して、中国の立場を尊重すること。

 ・教科書記述や政治発言で歴史問題を軽視しないこと。

 3.公式な台湾との関係を持たないこと

 ・日本は台湾との公式外交関係を持たず、経済や文化交流に限定。

 4.平和友好・安全保障に関する約束

 ・中国に対する軍事的威嚇を行わない。

 ・日中間の友好関係を維持するための協力。

 まとめ

 ・四つの政治文書:1972年共同声明・1978年平和友好条約・1982年共同声明・1998年共同声明

 ・重要政治的約束:一つの中国原則尊重、歴史問題への慎重対応、台湾との公式関係回避、平和友好の維持

 四つの文書と重要政治的約束

 「四つの政治文書」とそれぞれに含まれる日本の重要政治的約束(すなわち「一つの中国原則の尊重」「台湾との公式関係回避」「歴史問題への慎重対応」「平和友好の維持」)について、説明する。

 1. 日中共同声明(1972年)

 1972年9月29日に署名された日中共同声明は、日中両国の国交を正常化し、両国関係の基本原則を定めた最初の政治文書である。

 本声明において、日本政府は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と明確に表明し、台湾が中国の領土の不可分の一部であるという中国の立場を「十分理解し尊重する」とした。これにより、日本は台湾との間で締結していた「日華平和条約」を終了させ、台湾との公式関係を断絶した。

 したがって、「一つの中国原則の尊重」と「台湾との公式関係回避」という二つの政治的約束は、この声明において初めて明文化されたものである。

 また、声明には「日本国政府は、過去において中国国民に対して与えた損害について深く反省する」との表現があり、戦争責任への一定の認識が示された。これは後の歴史問題への慎重な対応の基礎となったものである。さらに、両国が「覇権を求めず、平和共存を志向する」としたことにより、平和友好関係の維持が日中関係の根本理念として位置づけられた。

 2.日中平和友好条約(1978年)

 1978年8月12日に署名された日中平和友好条約は、1972年共同声明を法的に補完する性格を有する条約である。

 本条約は、共同声明に示された諸原則、すなわち「平和共存五原則」を再確認し、両国が「武力による威嚇または武力の行使を行わない」ことを明記した。これにより、両国間の平和友好関係が国際法上の拘束力をもつものとして確立された。

 また、条約は「一方が覇権を求めることに反対する」との条項を設け、アジア地域における平和と安定を共同で維持する意志を示した。したがって、この条約は「平和友好の維持」という政治的約束を制度的に裏付けた文書である。

 3.日中共同宣言(1998年)

 1998年11月26日に署名された日中共同宣言は、両国が「平和と発展のための友好協力パートナーシップ」を構築することを目的としている。

 この文書では、1972年共同声明および1978年平和友好条約を基礎とすることが再確認され、「一つの中国原則」および「台湾との公式関係を持たない」立場が引き続き確認された。

 さらに、本宣言の特徴は、日本側が初めて明確な言葉で過去の歴史に対する反省と謝罪を表明した点にある。日本は「過去の植民地支配と侵略によりアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えたことに対し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明する」と述べ、歴史問題への慎重な姿勢を明確にした。

 この点において、1998年共同宣言は歴史認識の問題を正式に政治文書に組み込んだ初めての事例である。加えて、両国は21世紀に向けて協力関係を深化させることを確認し、平和友好関係の一層の強化を図ることを誓約した。

 4.日中共同声明(2008年)

 2008年5月7日に署名された日中共同声明は、「戦略的互恵関係の包括的推進」に関する合意文書であり、前記三つの政治文書および1998年共同宣言を基礎として作成されたものである。

 本声明は、歴史、台湾、平和友好といった主要課題に直接新たな原則を加えたものではないが、従来の政治的約束をすべて継承し、両国が「平和的発展を相互に支え、地域と世界の安定に寄与する」ことを確認した。これにより、「一つの中国原則の尊重」「台湾との公式関係の回避」「歴史問題への慎重な対応」「平和友好の維持」という一連の政治的約束が、包括的かつ持続的な日中関係の基本方針として再確認された。

 結語

 以上のように、「一つの中国原則の尊重」と「台湾との公式関係回避」は1972年共同声明において確立され、「平和友好の維持」は1978年平和友好条約により法的に裏付けられ、「歴史問題への慎重対応」は1998年共同宣言において明文化された。これら四つの政治的約束は、2008年共同声明によって改めて確認され、今日に至るまで日中関係の根幹を成しているものである。

 日中間の平和共存五原則

 「日中間の平和共存五原則」とは、中国が提唱した平和共存五原則(互恵・主権尊重・不干渉など)を、日中両国の関係原則として正式に確認したものである。これは、1972年の日中共同声明および1978年の日中平和友好条約に明記され、以後の日中関係の基本的政治理念となっている。

 以下に、その内容と位置づけを順序立てて説明する。

 1.平和共存五原則の基本内容

 日中両国が確認した「平和共存五原則」は、一般に次の五項目から成る。

 ・互いの主権と領土の一体性を尊重すること

 ・互いに侵略を行わないこと(相互不可侵)

 ・互いに内政に干渉しないこと(相互不干渉)

 ・平等と互恵の原則に基づくこと

 ・平和共存を実現すること

 これらはもともと1954年に中国とインドの間で確認された外交原則であるが、日本との関係においても外交の基礎として採用された。

 2.1972年日中共同声明における位置づけ

 1972年9月29日に発表された日中共同声明において、両国は「平和共存五原則を基礎として国交を正常化し、友好関係を発展させる」ことを明記した。

 声明の第7項において、次のように述べられている。

 「日本国政府と中華人民共和国政府は、両国の関係を正常化するに当たり、互いに主権及び領土の一体性を尊重し、互いに侵略しない、互いに内政に干渉しない、平等互恵、平和共存の諸原則を基礎として、両国間の関係を確立することに同意した。」

 この記述により、平和共存五原則が日中関係の外交的・政治的基礎として正式に採択されたのである。

 日本にとっては、アジアの隣国・中国との関係を平和的に構築するうえでの基本理念となった。

 3.1978年日中平和友好条約での確認

 1978年に締結された日中平和友好条約は、この共同声明で確認された平和共存五原則を法的拘束力のある条約として明文化したものである。

 条約第1条では、次のように規定されている。

 「両締約国は、平和共存五原則に基づき、恒久的な平和と友好の関係を発展させる。」

 さらに、条約第2条では「武力による威嚇または武力の行使を行わないこと」を明記し、第3条では「いずれの国も覇権を求めないこと」を確認した。

 これにより、平和共存五原則は外交理念から国際法上の約束へと昇格した。

 4.意義

 日中間の平和共存五原則は、単に両国関係の基礎であるのみならず、東アジアの平和と安定を支える理念でもある。

 この原則は、①相互尊重、②相互不干渉、③平等互恵という精神を通じて、政治的体制の違いを超えて平和的共存を追求するという理念を体現している。

 5.結語

 したがって、「日中間の平和共存五原則」とは、1972年共同声明で確認され、1978年平和友好条約で法的に確立された、日中関係の根本原則である。

 それは「互いに主権を尊重し、干渉せず、平等で互恵的に、平和的に共存する」という理念であり、今日に至るまで日中外交の根幹をなすものである。

【寸評 完】 💚

【引用・参照・底本】

China has made appropriate arrangements in accordance with diplomatic norms: FM on whether to send congratulatory message to Sanae Takaichi GT 2025.10.23
https://www.globaltimes.cn/page/202510/1346339.shtml