【桃源閑話】日本経済の国際的位置付けの再考――「統計上の先進国」から「衰退途上の周辺国」へ2026-01-13 14:37

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 【桃源閑話】日本経済の国際的位置付けの再考――「統計上の先進国」から「衰退途上の周辺国」へ 

 序論:揺らぐ「先進国」の自画像

 1990年代初頭のバブル経済崩壊以降、日本経済は「失われた30年」と称される長期的停滞の時代を歩んできた。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と謳われ、世界第二位の経済大国として君臨した日本は、今や経済成長率の鈍化、賃金の構造的停滞、中間層の崩壊、そして街に溢れる外国人労働者といった、かつての発展途上国を想起させる光景に直面している。

 特に2024年から2025年にかけて公表された最新の統計は、日本の地位低下がもはや一時的な現象ではなく、国家の根幹を揺るがす構造的欠陥であることを露呈させた。本論の目的は、日本が国際社会においていかように分類・位置付けられるべきかを、国際機関の厳密な定義と、現実に進行しているマクロ・ミクロの経済指標、そして知的基盤の脆弱化を照らし合わせることで明らかにすることにある。日本は依然として「先進国」の看板を掲げているが、その実態は「先進国クラブの中の発展途上国」あるいは「知的生産性を喪失した衰退国家」と呼ぶべき特異なフェーズに移行している。

 第一章 国際分類の不確実性と相対的地位

 1.1 「発展途上国」という概念の多義性

 日本を分類するための基準となる「発展途上国」の定義は多義的である。国際機関による厳密な統一定義は存在しない。世界銀行は一人当たり国民総所得(GNI)に基づき「高所得国」以外を分類し、国連は「後発開発途上国(LDC)」を所得、人的資源、経済脆弱性の三指標で認定している。

 一般的な解釈によれば、発展途上国とは工業基盤が未発達で、人間開発指数(HDI)が低く、低所得・高貧困率・第一次産業依存といった特徴を持つ国を指す。しかし、これらは絶対的な壁ではない。中国のように世界第二位の経済大国でありながら、地政学的利点や国内格差を理由に「発展途上国」の地位に固執し、WTO等で特別待遇を享受する例も存在する。また、かつての「NIEs(新興工業経済地域)」である韓国や台湾は、急速な成長を経て今や日本を追い抜く勢いを見せており、国際的分類は常に流動的である。

 1.2 日本の公式な位置付けと現状

 日本は依然として、国際統計上は「先進国」である。世界銀行の高所得国リストに含まれ、IMFの先進国カテゴリに属し、OECD開発援助委員会(DAC)の加盟国としてグローバルノース(先進国側)の地位を占めている。HDI(人間開発指数)も世界19位(2023年時点)に位置し、インフラ完備や高度なサービス業中心の経済構造は、LDCや一般的な途上国の基準とは対極にある。

 しかし、この「公式な分類」が、国民一人一人の生活実感や、他国との相対的な経済力の推移を覆い隠している。2024年以降の日本の順位下落は、公式分類の枠組み自体を無効化しかねないほどの深刻さを見せている。

 第二章 統計が示す日本経済の地盤沈下――2024年の衝撃

 2.1 一人当たりGDPの歴史的転落
 
 2025年12月に公表された内閣府の発表は、日本社会に衝撃を与えた。2024年における日本の一人当たり名目GDPはドル換算で3万3785ドルとなり、OECD38カ国中24位にまで下落した。これは比較可能な1994年以降で最低の順位であり、2023年の22位からさらに二つ順位を下げたことになる。さらに深刻なのは、生活実感に近い購買力平価(PPP)ベースの一人当たりGDPの推移である。日本は既に2010年代後半から韓国や台湾、さらには一部の東欧諸国を下回る傾向にあり、為替相場の変動を除いた実効的な生活水準の地盤沈下は、名目値の順位低下以上に構造的かつ深刻な局面を迎えている。

 特筆すべきは、かつて「これから先進国に収束する途上国」と見なされていたスペインやスロベニアに追い抜かれた事実、そして21位の韓国(3万6239ドル)との差が明確に開いたことである。少子高齢化や慢性的な低成長に加え、為替相場の円安進行がこの凋落に拍車をかけた。首位のルクセンブルク(13万7491ドル)やG7トップの米国(8万5836ドル)と比較すれば、日本はもはや「先進国の中核」とは言い難く、OECD内部で「周辺部」へと追いやられた中下位所得国としての実態を呈している。

 2.2 「働いても豊かにならない」賃金の異常停滞

 先進国としてのアイデンティティを最も根底から揺さぶっているのが、賃金の長期停滞である。日本の平均実質賃金は1990年代前半からほぼ横ばいであり、2023年時点でのフルタイム労働者の実質賃金は約490万円程度と、30年前と大差がない。

 OECDの雇用アウトルックによれば、2021年から2025年にかけて日本の実質賃金は累積で約2%のマイナスとなっている。世界的なインフレ局面において、他国が物価上昇を上回る賃上げを実現しているのに対し、日本は物価高に賃金が追いつかず、実質購買力が毀損され続けている。この「働いても豊かにならない」経済構造は、かつての高度成長期の日本とは無縁のものであり、むしろ所得の伸び悩みと物価高に苦しむ「新興国の中所得層」が直面する課題と酷似している。

 2.3 構造的病理としての労働生産性の低迷

 賃金停滞の背景にあるのは、日本の労働生産性の歴史的低迷である。日本生産性本部の調査(2024年発表)によれば、日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟38カ国中30位前後を推移しており、G7(主要7カ国)の中では1970年以来、不動の最下位に甘んじている。

 特にサービス業におけるデジタル化(DX)の遅れと、付加価値の低い定型業務への過剰な労働力固執が、経済全体の効率を著しく阻害している。先進国が「高付加価値・高賃金」のサイクルへ移行する中で、日本は「低付加価値・低賃金」のまま雇用を維持するという、いわば「衰退の安定」を選択してきた。この生産性の欠如こそが、実質賃金上昇を阻む構造的要因であり、日本が「先進国」としての実質を喪失し、周辺国化している最大の内的要因である。

 第三章 知的基盤の崩壊――STEM分野と博士課程の危機

 3.1 科学技術立国の看板の偽り

 経済的凋落と並行して進行しているのが、未来の成長を支える「高度人材」の育成不全である。2025年10月に公表されたOECDの教育報告書は、日本の深刻な知的不毛を浮き彫りにした。

 報告書によると、博士課程修了者のうちSTEM(科学、技術、工学、数学)分野を専攻した割合は、OECD平均の43%に対し、日本は35%と大きく下回った。一方で、修士課程修了者では平均を上回っていることから、「学生が博士課程に進まず、高度な研究者育成が進んでいない」という特異な構造が浮かび上がる。最も高いフランスやルクセンブルクの67%という数字と比較すれば、日本の技術革新力の衰退は必然的である。

 3.2 経済的困窮とキャリアパスの欠如

 なぜ学生は博士課程を避けるのか。そこには日本が抱える「経済的後進性」が直結している。博士課程進学を希望する院生の約半数が「進学後の経済的見通しが立たない」と回答し、約4割が「修了後の就職が心配」という不安を抱えている。

 先進国において博士号保持者は、産業界の高付加価値化を担う「宝」とされるべき存在だが、日本では依然として「博士=就職難」という歪んだ認識や、低賃金でのポスドク雇用といった冷遇が続いている。理数系人材が育たない国に、第四次産業革命をリードする力はなく、この「知的資本の蓄積不全」こそが、日本を、高付加価値化に失敗し成長が止まる「中所得国の罠」を想起させる、「高所得国の罠(衰退の均衡)」へと引きずり込む最大の要因となっている。

 3.3 研究開発費の「質の変容」とイノベーションの枯渇

 高度人材の育成不全と並行して深刻化しているのが、研究開発投資の「質の劣化」である。日本の研究開発費総額は、対GDP比で約3.3%(2023年度実績)と、数値上は主要国の上位に位置する。しかし、その政府負担割合はG7諸国がGDP比で概ね0.6〜0.9%を維持する中、日本は0.5%台に留まっており、公的資金による基礎研究への支援が慢性的に不足している。

 この投資の歪みは、「質の高い論文数(Top 10%論文数)」に顕著に現れている。かつて1990年代半ばには世界4位を誇った日本だが、最新の文部科学省・科学技術指標(2024年版)では、過去最低の13位へと転落した。特に1位の中国、2位の米国との差は、もはや統計誤差では済まされない「知的分断」と呼ぶべき規模にまで拡大している。民間投資の約8割が既存事業の改良を目的とした「開発」に充てられ、破壊的イノベーションの源泉となる「基礎研究」が冷遇される構造は、日本を「技術を創る国」から「他国の標準を追認するだけの周辺国」へと確実に変質させている。

 第四章 社会構造の「途上国化」――二極化と後進性

 4.1 中間層の崩壊と所得分布の歪み

 かつての日本は「一億総中流」を誇ったが、現在の所得構造は変質している。国税庁の調査によれば、平均年収約460万円に対し、中央値は約396万円にとどまる。平均値が中央値を大きく上回る事実は、一部の高所得層が数値を引き上げる一方で、大多数の国民が平均以下の所得で生活している「二極化」を反映している。

 発展途上国の特徴の一つは、都市部の富裕層と大多数の低所得層の間の巨大な乖離であるが、日本でもこれと同種の構造的問題が現れている。中央値の低迷は、中間層の購買力を奪い、国内市場の活力を失わせる。もはや日本は「分厚い中間層を持つ安定した先進国」というモデルを維持できていない。

 4.2 労働市場の「途上国型モデル」への依存

 労働市場の後進性も無視できない。日本の最低賃金は、フルタイム労働者の中央値賃金に対する比率で47%にとどまり、OECD平均の57%を大きく下回る。加えて、労働者の約4割を占める非正規雇用の存在が、低賃金・不安定雇用の基盤を形成している。

 これは「低賃金を前提として価格競争力を維持する」という、典型的な発展途上国型の輸出モデルに近い。先進国が本来目指すべき「高付加価値化と高賃金の好循環」から逸脱し、労働コストを切り下げることで延命を図る構造は、制度的な「後進性」の表れである。この構造が「ワーキングプア」を固定化させ、社会のダイナミズムを奪っている。

 第五章 マクロとミクロの解離――「中所得国の罠」への類似

 5.1 「大きいが豊かではない」国家

 日本は依然として世界第4位のGDP規模を維持し、対外純資産も世界トップクラスである。しかし、このマクロの巨大さは、もはや国民一人一人の「豊かさ」を保証していない。

 日本は「統計上の先進国、生活実感の中所得国」という二重構造に陥っている。これは新興国が経済成長の過程で直面する「中所得国の罠」の、先進国版とも言える状況である。人口減少と少子高齢化という重石、そして制度の硬直性が、生産性向上を阻み、かつての蓄積を切り崩してマクロの数字を維持しているに過ぎない。

 5.2 インフラと街景の変容

 問題意識として挙げられた「街に溢れる外国人」という現象も、この文脈で理解される。かつての日本における外国人は、高度な専門職や観光客が中心であったが、現在は建設、介護、農業、サービス業などの現業職を担う「不可欠な労働力」としての側面が強まっている。

 これは、自国通貨の価値低下(円安)と賃金停滞により、日本人が敬遠する労働を外国人に頼らざるを得ない、かつての西欧諸国が経験した周辺国化のプロセスである。一方で、インフラの老朽化が進む中で、都市部だけが外国人観光客で賑わう光景は、発展途上国の「不均衡な発展」のメタファーとして機能し始めている。

 5.3 地方経済の空洞化と「消滅可能性」の拡大

 「街に溢れる外国人」という現象が都市部の変容を象徴する一方で、地方においてはさらに深刻な「静かなる崩壊」が進行している。東京一極集中の加速により、地方経済は現役世代の流出と市場の縮小という負のスパイラルに陥っている。2024年4月に「人口戦略会議」が公表した報告書は、日本社会に戦慄を与えた。全国1,729自治体のうち、約43%に相当する744自治体が「消滅可能性自治体」(20〜39歳の若年女性が2050年までに50%以上減少する自治体)として名指しされたのである。

 これは単なる過疎化の問題ではない。公共インフラの維持コストが耐用限界を迎え、全国の水道料金が2040年までに平均で約40%値上げされるとの試算が出るなど、生活の最低ラインそのものが崩壊しつつある。都市部がインバウンド消費や安価な外国人労働力による「局所的な賑わい」を見せる一方で、地方の生産基盤が根底から消失していく地理的な二極化は、もはや国家としてのレジリエンス(復元力)を奪っている。中所得層の崩壊は、この「住めなくなる地方」の拡大という空間的な空洞化によって、最終的な段階へと押し進められている。

 第六章 国際政治における地政学的地位の変容

 6.1 グローバルサウスと日本の距離
 
 近年「グローバルサウス」という呼称が台頭し、先進国(グローバルノース)との政治的連帯の対立軸となっている。日本は地理的にはアジア(南側)に位置しながらも、政治・経済的には一貫してノース側に属してきた。

 しかし、韓国、台湾、シンガポールが所得水準で日本を凌駕、あるいは並ぶ状況において、日本の「アジアのリーダー」という自負は過去のものとなった。むしろ、成長著しいグローバルサウス諸国から見れば、日本は「かつての繁栄にすがる、解決策を持たない衰退モデル」と映っている可能性がある。

 6.2 西側諸国の「呼称一本化」戦略と日本

 西側諸国は、援助の責任や貿易交渉の優位性を保つため、「先進国」という枠組みを維持しようとする。日本もこの枠組みに守られ、形式的なステータスを保持しているが、サウス側が主張する「内部格差」や「特別待遇の必要性」は、実は現在の日本国内の窮状とも共鳴する部分がある。

 皮肉にも、日本は「先進国としての義務(援助や排出責任)」を負いながら、その中身は「支援が必要なほど困窮する層」を国内に抱えるという、矛盾した地位に置かれている。

 第七章 財政破綻リスク――「債務国家」としての構造的脆弱性

 7.1 国債累積の歴史的推移と構造的問題

 日本経済の衰退を語る上で看過できないのが、財政の持続可能性の危機である。政府当初予算(一般会計)の推移を見ると、歳出総額は2015年度の96.34兆円から2026年度予算案の122.3兆円へと、わずか11年間で約27%増加している。この増加の主因は、少子高齢化に伴う社会保障費の急増と、防衛費の拡大という、構造的かつ不可避的な要因である。

 一方で国債発行額は、2015年度の36.86兆円から2025年度当初予算では25.30兆円へと一時的に減少したものの、2026年度予算案では再び29.6兆円程度へと増加に転じている。国債依存度は2015年度の38.3%から2025年度当初の22.0%へと改善傾向を示したかに見えたが、2026年度は約24.2%と再び悪化する見込みである。

 最も深刻なのは、年度末国債残高の累積的増加である。2015年度末の1,029兆円から2025年度末には1,350兆円程度へと、10年間で約31%増加している。この累積債務は、名目GDPの約240%に達し、先進国の中で突出して高い水準にある。イタリアやギリシャといった財政危機を経験した国々の債務対GDP比率を大きく上回る数値である。

 7.2 「財政健全化の放棄」と将来世代への負担転嫁

 国債発行に依存する財政運営は、本質的には「将来世代からの前借り」である。日本政府は2025年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化目標を掲げたものの、2026年度予算案では再び歳出拡大へと舵を切り、実質的に財政健全化目標を放棄した形となっている。

 物価高や人件費上昇への対応という名目で政策経費を膨らませ続ける構造は、先進国が本来備えるべき「財政規律」の欠如を示している。税収増で賄えない支出を国債発行で埋め合わせる手法は、短期的には政治的摩擦を回避できるが、長期的には国家の信用力を蝕み、金利上昇リスクや通貨価値の不安定化を招く。

 発展途上国が陥りがちな「財政赤字の累積→対外債務危機→IMF管理」という負のスパイラルと、構造的には類似した脆弱性を、日本は内包し始めている。唯一の違いは、日本の国債が円建てであり、国内で大半が消化されているという点である。しかし、これは財政破綻リスクを解消するものではなく、単に破綻の形態が「対外的デフォルト」ではなく「国内の急激なインフレや金融システムの混乱」という形を取る可能性を示唆しているに過ぎない。

 7.3 社会保障費の膨張と世代間不公平

 歳出増加の最大の要因である社会保障費は、高齢化の進行により今後も増え続けることが確実視されている。2026年度予算案において社会保障費は約38兆円規模に達し、歳出総額の約3割を占める。この構造は、現役世代の負担を重くし、可処分所得を圧迫することで、消費の低迷と経済成長の抑制をもたらしている。

 現在の社会保障制度は、人口増加と経済成長を前提に設計されたものであり、人口減少と低成長が恒常化した状況では持続不可能である。にもかかわらず、選挙で多数を占める高齢層への配慮から、抜本的な制度改革は先送りされ続けている。これは「政治的決断力の欠如」という、発展途上国がしばしば直面する統治の問題と同質である。

 7.4 国債市場の脆弱性と「日本売り」のリスク

 現在、日本国債の大半は国内金融機関や日本銀行が保有しており、市場は安定している。しかし、人口減少により国内貯蓄率が低下し、金融機関の国債購入余力が縮小すれば、この均衡は容易に崩れる。また、日銀の大規模な国債保有(量的緩和の遺産)は、出口戦略の困難さを意味しており、金融政策の選択肢を狭めている。

 国際金融市場において、日本国債の信用格付けは主要先進国の中で最も低い水準にあり、格付け機関は日本の財政状況を「先進国としては異例の脆弱性」と評価している。もし市場参加者の間で「日本の財政は持続不可能」という認識が広がれば、国債価格の暴落(金利の急騰)と円の急落という「ダブルショック」が発生し、経済は壊滅的打撃を受ける。

 この構造的脆弱性は、日本が「形式上の先進国」でありながら、「実質的には財政破綻予備軍」であることを示している。

 第八章 「衰退先進国」という新たなカテゴリー

 8.1 「発展を止めた国」としての再定義
 
 現在の日本は「発展途上国」へ逆戻りしたのではない。しかし、標準的な「先進国」からも逸脱しつつある。ここで提唱すべき概念は「衰退先進国(Declining Developed Country)」である。

 これは単なる経済的衰退のみならず、社会システム全体が高度成長期の前提(人口増加、右肩上がりの経済)のまま硬直化し、新たな環境に適応できなくなっている状態を指す。社会保障負担の増大が労働世代の可処分所得を奪い、教育や研究開発への投資が滞り、結果として生産性が上がらないという「負の均衡」に陥っている。

 財政面から見れば、日本は「債務累積国家」として、先進国としての財政規律を喪失し、将来世代への負担転嫁によって現在の社会システムを延命させているに過ぎない。2015年から2026年にかけての国債残高の増加(約320兆円)は、この11年間に日本が「成長」ではなく「借金」によって社会を維持してきたことの証左である。

 8.2 「再発展国」への転換可能性

 日本をいかに位置づけるかという問いに対し、現在の「沈みゆく周辺国」という評価を覆すためには、自己認識の転換が必要である。日本はもはや「支援する側」の余裕を失い、自国の社会的・経済的再構築を必要とする「再発展国(Re-developing Country)」であると定義し直すべきである。

 2024年のGDP順位の歴史的低迷、そしてSTEM分野の高度人材育成における敗北。これらの冷酷なデータは、日本が「先進国の標準的生活水準」および「知的水準」から乖離していることを証明している。そして財政データは、この衰退が一時的な景気循環ではなく、構造的かつ不可逆的な危機であることを突きつけている。

 第九章 結論:日本経済の現在地と未来の分類

 本論での考察を総括すれば、日本経済の現状は以下のように結論付けられる。

 第一に、国際的な制度上の分類において、日本は依然として「先進国」であり「グローバルノース」の一員である。しかし、一人当たりGDPがOECD加盟38カ国中24位にまで下落し、スペインやスロベニアといった「収束途上」にあった国々に追い抜かれた事実は、形式的な分類と実態の乖離が臨界点に達したことを示している。

 第二に、高度人材育成の失敗(博士課程のSTEM割合がOECD平均を大きく下回る状況)は、日本が「科学技術立国」としてのアイデンティティを喪失し、単なる「労働集約型の衰退国家」へと変質しつつあることを裏付けている。経済的困窮が学生を研究から遠ざけ、そのことがさらなる経済停滞を招くという悪循環は、途上国がしばしば抱える「構造的貧困の罠」に似た影を先進国の内部に落としている。

 第三に、財政面における構造的脆弱性は、日本が「先進国としての財政規律」を完全に喪失したことを示している。2015年から2026年にかけて国債残高は約320兆円増加し、累積債務は1,350兆円規模に達する見込みである。歳出総額は122.3兆円へと膨張し続け、そのうち約24%を国債発行で賄うという財政構造は、先進国としては異例の脆弱性を示している。

 この財政依存は、「成長による税収増」という健全な経済発展のメカニズムが機能していないことを意味する。むしろ、借金によって社会システムを延命させる構造は、発展途上国が陥る「債務の罠」と本質的に同じである。唯一の違いは、円建て国債が国内で消化されているという点であり、これは危機の顕在化を遅らせているに過ぎない。

 したがって、日本は現在、国際社会において「形式上の先進国地位を保持しながら、実質的にはOECDの周辺部へと漂流し、知的再生産機能を失い、財政破綻リスクを内包する「衰退先進国」」として位置付けられる。かつての成長モデルは崩壊し、2024年の順位下落と2026年の財政拡大はその終焉を告げる警鐘である。

 日本がいかように国際社会で分類されるべきかという問いに対する最終的な答えは、単なる既存のカテゴリーへの当てはめではなく、「かつての繁栄の遺産を食いつぶし、未来への投資(高度人材)を放棄し、財政規律を喪失したことで、先進国から周辺国へと歴史的な階層下降を始めている国家」という、極めて深刻な危機の中にある存在としての評価である。

 この現実を直視し、制度的・構造的硬直性を打破し、財政健全化と人材育成への本格的な投資を実行することなしに、日本が再び「先進国の中核」としての地位を取り戻すことは不可能である。しかし、累積債務1,350兆円という巨大な負債を抱えた状態で、そのような転換が可能なのか。この問いに対する答えは、日本の未来そのものを決定づけるものとなるであろう。

 日本が直面しているのは、物理的な資本の欠如ではなく、「成功体験に基づく制度の硬直性」という形での衰退である。かつての成功モデルが現在の足枷となる「制度的サンクコストSunk Cost:(埋没費用)」をいかに廃棄できるか。日本が「衰退先進国」という新カテゴリを脱し、再起できるか否かは、統計上の数値を操作することではなく、この目に見えない構造的腐朽を直視する勇気にかかっている。

【閑話 完】

衆議院の早期選挙:毛寧報道官は「これは日本の内政問題である。私はコメントしない」2026-01-13 18:16

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【概要】

 2026年1月13日、中国外交部の定例記者会見において、高市早苗日本首相が衆議院の早期選挙を検討しているとの報道に関して質問があった。毛寧報道官は、これは日本の内政問題であり、コメントしないと述べた。

【詳細】 

 中国外交部の定例記者会見が2026年1月13日午後3時32分に開催された。会見において、ある記者が日本の高市早苗首相が衆議院の早期選挙を検討していることについて、中国側の見解を尋ねた。この質問に対し、毛寧報道官は「これは日本の内政問題である。私はコメントしない」と回答した。

【要点】

 ・日付:2026年1月13日

 ・場所:中国外交部定例記者会見

 ・質問内容:高市早苗日本首相の早期選挙検討について

 ・回答者:毛寧報道官

 ・回答内容:日本の内政問題であり、コメントしない

【引用・参照・底本】

Takaichi's consideration of early election is Japan's internal affair, China has no comment on it: FM GT 2026.01.13
https://www.globaltimes.cn/page/202601/1353066.shtml

トランプ:イランと取引する国に対して25%の関税引き上げ2026-01-13 18:28

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【概要】

 トランプ米大統領がイランと取引する国に対して25%の関税引き上げを表明したことについて、中国外務省の毛寧報道官が火曜日の定例記者会見で応答した。毛寧報道官は、関税戦争に勝者はなく、中国は自国の正当な権利と利益を断固として守ると述べた。

【詳細】 

 月曜日、ドナルド・トランプ米大統領は、イランとビジネスを行っているいかなる国に対しても、米国とのビジネスに25%の関税引き上げを課すと主張した。これに対し、中国外務省報道官の毛寧は火曜日の記者会見で応答した。毛寧報道官は、関税問題に関する中国の立場は非常に明確であると述べた。その立場とは、関税戦争には勝者がいないということ、そして中国は自国の正当かつ合法的な権利と利益を断固として守るということである。

【要点】

 ・トランプ米大統領がイランとビジネスを行う国に対し、米国とのビジネスに25%の関税引き上げを表明。

 ・中国外務省の毛寧報道官が火曜日の会見で応答。

 ・毛寧報道官の発言内容は以下の通り。

 ⇨ 関税問題に関する中国の立場は非常に明確である。

 ⇨ 関税戦争には勝者がいない。

 ⇨ 中国は自国の正当かつ合法的な権利と利益を断固として守る。

【引用・参照・底本】

Chinese FM responds to Trump's 25% tariff hike on Iran's trading partners GT 2026.01.13
https://www.globaltimes.cn/page/202601/1353064.shtml

米国や欧州が中国を「軍事的脅威」「資源略奪者」「ルール違反者」との位置づけに反対2026-01-13 19:04

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【概要】

 西側メディアが中国の北極圏における科学研究や海運活動を軍事的意図があるものとして報道していることに対し、強く反論している。中国は北極圏に軍事展開を行っていないという事実を強調し、米国や欧州が中国を「軍事的脅威」「資源略奪者」「ルール違反者」と位置づけようとする試みに反対を表明している。

【詳細】 

 西側メディアが中国とロシアの「北極軍事推進」を誇張し、米国と欧州がグリーンランド問題で対立する中でも、NATOが「ロシアと中国からの脅威に対抗」すべきだという主張が頻繁になされていると指摘している。

 中国の北極圏における立場について、記事は以下の論点を展開している。第一に、過去30年以上にわたり北極圏の気温上昇と夏季海氷の縮小が続いており、北極圏の保護と統治は北極圏諸国だけでなく国際社会全体の利益に関わる問題であると述べている。

 中国は国際条約に従って北極圏の科学研究を実施し、研究データと協力成果を積極的に公開し、透明性によって西側の主張の罠を払拭していると主張している。中国の研究活動は国際法に完全に合致しており、北極圏諸国や国際機関との科学、環境、保全協力を深めることで、北極研究にデータ支援と公共財を提供し、責任ある大国の役割を示しているとしている。

 第二に、北極圏には8つの北極圏国家(カナダとデンマークを含む)の領土と合法的に管理された海域に加えて、公海と国際海底地域も含まれると説明している。北極圏において領土主権を持たない国家も、北極海の公海における科学研究、航行、上空飛行、漁業、海底ケーブルとパイプラインの敷設などの権利、および国際海底地域における資源探査と開発の権利を合法的に有していると述べている。

 中国は北極評議会や国際北極科学委員会などの多国間メカニズムへの参加において、協力枠組みの改善に一貫して取り組み、地政学的安全保障の対立に反対し、グローバルガバナンスを提唱してきたとしている。陸上で北極圏に最も近い国の一つとして、中国が法に従って北極圏で活動を行う権利と自由は完全に尊重されるべきだと主張している。

 歴史的文脈として、冷戦時代、北極海は米国とソ連の戦略的対立の「前線」であり、両国の原子力潜水艦が北極の氷冠の下に潜み、海上戦略核抑止の主要な舞台の一つであったと記している。21世紀に入ってから、北極圏は再び地政学的安全保障競争の焦点となっており、一部の国は「ブルー・グラビング」と呼ばれる行動を通じて北極点に向けて管轄権を北方に拡大し、軍事展開を加速させ、ブロック対立を煽り、北極問題における規制権限と言説権を競っていると批判している。

 2024年に米国が発表した新しい北極戦略は、北極圏における中国とロシアの協力を「脅威」と位置づけているが、これは本質的に米国自身の北極圏における拡張の口実であり、北極地域の安全保障と発展に極めて有害であると非難している。これは気候と生態系の保護を妨げるだけでなく、北極の資源と航路を開発・利用しようとする人類の集団的努力をも阻害すると述べている。

 米国の意図について、米国が喧伝する「中国の北極脅威」は、本質的に国民を混乱させ、自らの軍事拡張、一方的な資源採掘、北極圏における覇権追求を隠蔽しようとする試みであると主張している。米国は「中国脅威」論を利用してグリーンランドへの野心のための口実を作り、注意をそらそうとしており、その真の目的はグリーンランドを中国とロシアに対抗する戦略的前進基地に変え、「アメリカ第一」の戦略的利益に奉仕させることにあると分析している。

 「中国の経済的略奪」や「軍事的存在」を裏付ける証拠は一切なく、むしろ近年の中国の資本、技術、市場、知識、経験は北極開発において建設的な役割を果たしてきたと反論している。

 中国は北極問題における重要な利害関係者であり、長年にわたり北極の多国間統治の参加者であるだけでなく、地域の持続可能な開発への貢献者でもあり、その役割は大多数の北極圏国家および非北極圏国家から広く認められていると述べている。中国の北極圏における活動は、国連憲章、国連海洋法条約、スピッツベルゲン諸島に関する条約を含む国際条約および一般国際法を遵守しており、北極問題への関与において「越権も不在もしない」という原則に従っていると強調している。中国がすべての当事者と共同で構築することを提唱する「極地シルクロード」は、広く歓迎される国際公共財になりつつあるとしている。

 中国の北極政策は明確かつ一貫しており、「尊重、協力、ウィンウィンの結果、持続可能性」という基本原則に従って、北極圏を理解し、保護し、開発し、統治に参加することであると述べている。この明確性と決意は、北極問題の性質に対する中国の深い理解だけでなく、大国としての責任感からも生まれていると主張している。

 最後に、北極圏は誰かの私的な庭園ではなく、その未来は北極圏国家と非北極圏国家の両方、そして全人類の福祉に関わるものであり、すべての利害関係者によって共同で守られるべきであると結んでいる。

【要点】

 ・西側メディアが中国の北極圏活動を軍事的意図があるものとして報道していることに対し、中国は北極圏に軍事展開していないと反論。

 ・中国は国際法に従って北極圏で科学研究を実施し、データを公開し、透明性を確保していると主張。

 ・北極圏の公海において、領土主権を持たない国家も科学研究、航行などの合法的権利を有すると説明。

 ・冷戦時代から21世紀にかけて、北極圏が地政学的対立の焦点となってきた歴史的経緯を指摘。

 ・米国の新北極戦略を、自国の北極圏拡張の口実として批判。

 ・米国の「中国脅威」論は、グリーンランドを戦略的前進基地にする野心を隠蔽する試みであると分析。

 ・中国の北極政策は「尊重、協力、ウィンウィン、持続可能性」の原則に基づくと強調。

 ・中国が提唱する「極地シルクロード」は国際公共財になりつつあると主張。

 ・北極圏は全人類の福祉に関わるものであり、すべての利害関係者が共同で守るべきであると結論。

【引用・参照・底本】

Hyping the ‘China threat in the Arctic’ an attempt to mislead the public: Global Times editorial GT 2026.01.13
https://www.globaltimes.cn/page/202601/1353017.shtml

米国:ケニアに対し、中国との貿易協定締結を進めないよう圧力2026-01-13 19:22

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【概要】

 米国がケニアに対し、中国との貿易協定締結を進めないよう圧力をかけている。ケニアは米国のAGOA(アフリカ成長機会法)への参加延長を求めている一方で、中国との貿易協定を両者間の選択を迫られる状況に置かれている。この記事は、米国の圧力がアフリカの自律的発展を損なうものであり、中国がアフリカの真のパートナーであると主張している。

【詳細】 

 ブルームバーグが1月12日に報じたところによれば、ケニアの新聞The Standardを引用し、ケニアと中国の貿易協定締結が米国の圧力により保留されている。この圧力は、ケニアがAGOAへの参加延長を求めている時期に行われており、ケニアは実質的に二つの協定のどちらかを選ぶよう求められている。

 米国の圧力が標的としているのは、茶、コーヒー、アボカド、魚などケニアの主要輸出品に対する中国の関税を撤廃する貿易協定である。Business Insider Africaによれば、AGOAは2025年9月30日に失効した。プログラムが失効して以来、年間6億ドル以上の価値があるケニアの米国向けアパレル輸出は最大28%の関税を課されている。このため、ケニアは中国との協定をAGOA失効の影響に対する緩衝材と見なしている。

 AGOAはクリントン政権下で開始されたアフリカ向け優遇貿易プログラムである。失効から3カ月以上経過したが、米国はプログラム延長の可否を明確にしていない。その代わり、ケニアに中国との貿易協定を進めないよう圧力をかけている。

 北京外国語大学国際関係外交学院のSong Wei教授は、米国がAGOAの見直しと更新の可能性を主要な手段として、アフリカに戦略的利益を押し付け、ケニアに大国間での選択を強要していると指摘した。この手法はケニアの発展余地をさらに制約するリスクがあるだけでなく、すでに複数の課題に直面しているアフリカ経済に新たな打撃を与え、米国政策の一方主義と覇権的性質を露呈していると述べた。

 ワシントンの説明では、中国とアフリカの通常の協力がしばしば「地政学的拡張」と解釈され、ケニアへの米国の圧力は決して初めてではない。昨年、米国上院外交委員会委員長のジム・リッシュは、ケニアの「主要非NATO同盟国」としての地位を再評価する修正案を提出し、ケニアと中国の関係深化に対するワシントンの不満を示した。

 同時に、アフリカに対する米国の政策は、いわゆる「貿易の相互性」と重要鉱物の安全保障をますます強調しているが、この枠組みは実際にはアフリカの発展ニーズよりもワシントン自身の戦略的利益を優先している。Song教授は、米国が最近発表した国家安全保障戦略報告がこの転換をさらに確認していると指摘した。報告書は米国とアフリカの関係を一方的な「援助」と見なすべきではないと主張する一方で、アフリカの重要鉱物へのアクセス確保に不釣り合いな重点を置いている。このような「相互性」の概念を構造的に不平等な経済に適用することは本質的に不合理であり、アフリカを単なる原材料供給者に貶める、植民地主義に根ざした長年の西洋的論理を再現しているに過ぎない。

 対照的に、中国は一貫してアフリカの発展を促進する真のパートナーであり、特にケニアとの長年の協力においてそうである。長年にわたり、中国はケニアにとって主要な投資源、重要な貿易パートナー、主導的な請負業者であり、同国の経済社会発展に具体的な貢献をしてきた。これらの成果は、現在ワシントンが採用している圧力戦術とは鋭い対照をなしている。

 中国とアフリカの協力は決して閉鎖的でも排他的でもなく、アフリカ諸国に選択を迫ったこともない。アフリカ諸国は発展の道筋と国際的パートナーを独立して選択する完全な権利を有している。ますます予測不可能になっている米国の貿易経済政策を背景に、ケニアを含むアフリカ諸国が中国との協力を深化させることは合理的かつ実際的である。

 中国の発展は「誰のチーズも動かしていない」。アフリカはアフリカ人のものであり、アフリカ諸国に中国と米国の間でいわゆる「選択」を迫る努力は、アフリカ人の福祉を犠牲にして、アフリカの発展をワシントンの地政学的自己利益に従属させようとするさらなる露骨な試みである。

【要点】

 ・米国はケニアに対し、中国との貿易協定を進めないよう圧力をかけている。

 ・ケニアはAGOA参加延長を求めており、実質的に米中のどちらかを選ぶよう迫られている。

 ・AGOAは2025年9月に失効し、ケニアのアパレル輸出は最大28%の関税を課されている。

 ・ケニアは中国との協定をAGOA失効の影響に対する緩衝材と見なしている。

 ・米国はAGOAを手段としてケニアに戦略的利益を押し付け、大国間での選択を強要している。

 ・米国の政策は一方主義と覇権的性質を示し、アフリカの発展ニーズより自国の戦略的利益を優先している。

 ・米国の「相互性」概念は構造的に不平等な経済に適用され、植民地主義的論理を再現している。

 ・中国は一貫してアフリカの発展を促進する真のパートナーであり、ケニアの経済社会発展に具体的な貢献をしてきた。

 ・アフリカ諸国は発展の道筋とパートナーを独立して選択する権利を有している。

 ・アフリカ諸国に選択を迫ることは、アフリカの発展を米国の地政学的利益に従属させる試みである。

【引用・参照・底本】

Africa's development autonomy should not be compromised by US pressure GT 2026.01.13
https://www.globaltimes.cn/page/202601/1353016.shtml

中国・カナダ関係発展:カナダの現実的で安定した対中政策が鍵2026-01-13 19:56

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【概要】

 カナダのマーク・カーニー首相の訪中を前に、中国とカナダの双方から関係改善に向けた前向きな動きが見られると述べている。記事は、両国が経済・貿易関係を安定的かつ実務的に発展させるには、カナダがより現実的で安定した対中政策を採ることが重要であると指摘するものである。

【詳細】 

 中国財政部のLiao Min副部長は元カナダ首相のジャン・クレティエン氏と北京で会談し、両国関係や経済・貿易協力、相互投資などについて意見を交換した。Liao副部長は、両国首脳間で達成された重要な共通認識を実施し、経済・金融などの分野での対話と協力を再開・推進し、健全で安定的かつ持続的な発展を促進する意向を示したとされる。一方、カナダの議員コディ・ブロイス氏は、カーニー首相が中国政府との関係を「再調整」し、経済分野での機会を模索したいと述べたとCBCニュースが報じている。

 これらの動きは、訪中を控えた時点で両国関係に対する期待感を高め、今後の協力の可能性に想像力を与えるものであると論じている。ただし、実質的な協力の進展は、カナダがより実務的で安定的な政策姿勢を取るかどうかにかかっていると指摘している。過去数年間、カナダは米国の対中政策に歩調を合わせた結果、経済的利益を得られず、むしろ国内産業に不安定さを招いたとされる。また、鉄鋼・アルミニウムの関税問題や電気自動車供給網などにおける米加間の摩擦が、カナダの不利な立場を強めたと述べている。

 記事はまた、関係が最も困難であった時期でさえ、中国が依然としてカナダの第二位の貿易相手国であった点を強調する。これは市場原理と経済的補完性が両国関係の基盤であることを示しているとする。中国は巨大な消費市場と総合的な産業体系、強力な製造力を持つ一方、カナダは天然資源、農業技術、高度製造業で優位にある。そのため、農業、エネルギー、製造業、技術革新といった分野において協力の余地が広いと述べている。

 カーニー首相は訪中において、貿易、エネルギー、農業などの経済分野について協議する予定であり、これらは最も有望な協力分野と一致しているとする。例えば、農業分野ではカナダは長年にわたり中国への農産物輸出国であり、またエネルギー分野ではLNG(液化天然ガス)の主要生産国であり、クリーンエネルギー開発でも豊富な経験を有する。一方、中国は「デュアルカーボン」目標を推進し、低炭素技術やグリーンエネルギーへの需要が増大しているため、双方の協力余地は大きいと述べる。

 記事はさらに、保護主義や世界経済の不確実性が高まる中で、安定した対中関係はカナダ経済の繁栄と産業発展の実際的な必要性に合致すると論じる。中国は重要な輸出市場であると同時に、技術革新や産業連携、バリューチェーン協力の重要な参加者でもある。安定した経済関係は、カナダ企業により確実な発展の機会をもたらし、農業、エネルギー、科学技術などの長期的な協力を支える基盤となると述べている。

 最後に記事は、カーニー政権による関係「再調整」への意欲と訪中の好機を前提にしつつも、長期的な関係発展は政治的発言を実際的で安定的・予測可能な協力体制に転換できるかにかかっていると結論づけている。カナダが双方の合理的な懸念に建設的に対応し、中国と歩み寄る姿勢を示せば、経済的補完性の潜在力を十分に引き出すことができ、両国関係は低迷期を脱し、より安定的かつ持続的な軌道へと向かう可能性があると述べる。

【要点】

 ・カーニー首相の訪中を前に、中国とカナダ双方が関係改善に向けた前向きな姿勢を示している。

 ・両国の関係発展には、カナダの現実的で安定した対中政策が鍵である。

 ・経済構造の補完性が強く、農業・エネルギー・製造業・技術革新などで協力余地が大きい。

 ・安定した経済関係はカナダの経済的利益と産業発展に資する。

 ・長期的な協力の実現には、政治的意思を具体的で予測可能な協力メカニズムに転化することが重要である。

【引用・参照・底本】

GT Voice: Pragmatic and stable mechanisms key to China-Canada cooperation GT 2026.01.12
https://www.globaltimes.cn/page/202601/1353010.shtml

月の初期に発生した大型衝突が月内部にどのような影響を2026-01-13 22:43

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【概要】

 中国の嫦娥6号探査機が月の裏側から採取した玄武岩サンプルの分析により、約42億5千万年前に月の南極—エイトケン(SPA)盆地を形成した巨大衝突が、月の裏側の深部物質を強く加熱し、揮発性元素の一部を失わせたことが明らかとなった。この研究は、中国科学院地質与地球物理研究所(IGG)の科学者によって行われたものであり、巨大衝突が月内部に及ぼした影響を実証的に示した初めての成果である。

【詳細】 

 研究は、月の初期に発生した大型衝突が月内部にどのような影響を与えたかという長年の課題に取り組むものである。IGGの研究者は、嫦娥6号が採取した玄武岩試料を用い、高精度の同位体分析を実施した。特にカリウム、亜鉛、ガリウムなどの中程度に揮発性のある元素は、高温環境で揮発や同位体分別を起こすことが知られており、その同位体組成が衝突時の温度、圧力、物質の起源を反映するため、衝突由来の「同位体指紋」として価値を持つ。

 分析の結果、嫦娥6号の玄武岩サンプルは、アポロ計画で地球に持ち帰られた月の表側のサンプルと比べ、カリウムの重い同位体であるカリウム41の割合が顕著に高いことが判明した。研究者は、宇宙線照射、マグマ活動、衝突体の影響などの要因を系統的に排除した結果、この違いは初期の大規模衝突によって月の深部マントルの同位体組成が変化したためであると結論づけた。

 衝突の瞬間に生じた極めて高温・高圧の条件下で、軽いカリウム39同位体が揮発し逃れたことで、残留物質中でカリウム41が相対的に濃縮されたとされる。また、このような揮発性元素の喪失は、その後の月裏側での火山活動を抑制する要因にもなった可能性がある。この発見は、月の巨大衝突がその後の進化に与えた影響を理解し、月表・裏での地質進化の非対称性を説明する重要な手がかりとなる。

 2024年に嫦娥6号は、月裏側のSPA盆地から1,935.3グラムのサンプルを地球へ持ち帰り、月の表裏での組成差やその起源を明らかにする貴重な機会を提供した。これまでに中国の科学者らは、このサンプル研究を通じて月裏側の火山活動、古代磁場、水分含有量、地球化学的特徴などに関して複数の先駆的成果を挙げており、月の「暗い側」の進化史解明において重要な進展を遂げている。

【要点】

 ・約42億5千万年前の巨大衝突が月南極—エイトケン盆地を形成し、深部物質を加熱した。

 ・衝突により揮発性元素が失われ、カリウム41の割合が増加した。

 ・この変化は巨大衝突による同位体分別の結果であることが確認された。

 ・揮発性元素の喪失は月裏側の火山活動を抑制した可能性がある。

 ・嫦娥6号の試料分析は月の表裏の非対称な地質進化の理解に新たな証拠を提供した。

【引用・参照・底本】

Chang'e-6 study reveals early massive impact heated deep materials on lunar far side: report GT 2026.01.13

企業が最近の株価上昇が実態を上回る「非合理的」なものであると警告2026-01-13 23:07

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【概要】

 中国の商用ロケット製造関連企業の株価が2026年1月13日に急落した。これは複数の企業が最近の株価上昇が実態を上回る「非合理的」なものであると警告を発したことによるものである。アナリストは同セクターの長期的見通しは「非常に有望」だが、短期的な市場は「主に投機的なセンチメントに駆動されている」と述べている。

【詳細】 

 Hunan Aerospace Huanyu通信技術は火曜日に最大20%下落し、China Spacesatは一時10%下落した後反発した。ロケットスタートアップのLandSpace Technologyに出資する金風科技は13%以上下落した。

 China Aerospace Times電子技術、CICT移動通信技術、Beijing LeiKe Defense技術などは月曜日の夜に株価の過度な上昇について警告を発表した。

 Shanghai Chengzhou投資管理の最高投資責任者であるFu Zhifeng氏は「商用宇宙産業の長期的見通しは非常に有望だが、短期的な市場は主に投機的なセンチメントに駆動されている」と述べた。同氏は、昨夜の企業発表に基づくと、規制当局が投機的な熱狂を冷まそうとしているようだと指摘した。

 企業による警告は、商用宇宙セクターへのより強力な政策支援への楽観論と技術的ブレークスルーへの期待に煽られた株価の急騰に続くものである。湖南航天の株価は12月初旬から90%以上上昇し、China Spacesat通信は135%急騰した。比較として、国内のベンチマーク指数であるCSI300指数は12月1日以降約5%上昇した。

 デジタル地球応用プラットフォームを開発するGeovis Technologyは届出書で「市場センチメントの過熱と非合理的な投機の潜在的リスク」があると述べた。同社は「すべての投資家に流通市場での取引リスクを認識し、合理的な決定を下し、慎重な投資判断を行うよう強く求める」と表明した。

【要点】

 ・中国の商用ロケット関連株が1月13日に急落した。

 ・Hunan Aerospace Huanyu通信技術は最大20%下落、China Spacesatは一時10%下落、金風科技は13%以上下落。

 ・複数の企業が月曜夜に株価の過度な上昇について警告を発表。

 ・アナリストは長期見通しは有望だが短期市場は投機的と分析。

 ・湖南航天株は12月初旬から90%超上昇、China Spacesat通信は135%急騰していた。

 ・企業は投資家に市場リスクを認識し慎重な判断を求めている。

【引用・参照・底本】

Chinese rocket shares slump after warnings on ‘irrational’ rally GT 2026.01.13
https://www.scmp.com/business/markets/article/3339752/chinese-rocket-shares-slump-after-warnings-irrational-rally?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-china&utm_content=20260113&tpcc=enlz-china&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&next_article_id=3339743&article_id_list=3339752,3339743&tc=3