カリフォルニア州の飲料水規制:安全性よりもコストを優先2024年09月10日 09:36

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【概要】

 カリフォルニア州の飲料水規制が安全性よりもコストを優先しているという問題が述べられている。特に、汚染物質の規制を強化しようとする試みが、汚染者や公益事業団体によって妨げられていると指摘されている。

 カリフォルニアでは、発がん性物質である六価クロム、PFAS(有機フッ素化合物)、ヒ素などが低所得層や有色人種コミュニティに大きな影響を与えている。例として、六価クロムの規制に関しては、当初より基準が厳しく設定されるべきだったものの、企業や団体が費用の負担を理由に反対し、基準が緩和された。

 水質基準の設定方法についても、空気汚染物質に比べ科学的データに基づいていないと批判され、経済的な制約が基準決定に大きく影響しているとされている。その結果、規制が遅れ、特に貧困層や有色人種コミュニティが不利な状況に置かれていることが強調されている。

 また、PFASやヒ素、硝酸塩汚染も問題視されており、特に農業活動が原因となっている硝酸塩汚染に関しては、厳しい規制が必要であるとされている。

【詳細】

 カリフォルニア州における飲料水の安全性に関する問題を掘り下げ、特に汚染物質の規制がコスト優先で行われている状況を批判的に述べている。主な論点は、汚染者や公益事業団体が厳しい水質基準の導入を妨害し、最も被害を受けるのは低所得者層や有色人種コミュニティであるという点である。以下に、詳細を説明する。

 1. 六価クロム問題の経緯と影響

 六価クロムは、発がん性物質として広く知られており、エリン・ブロコビッチによって問題が初めて広く認知された。カリフォルニア州の規制当局は、2024年に六価クロムの飲料水中の最大濃度を定めたが、その基準は、健康へのリスクを評価する州の専門機関が「理想的」とする基準よりも500倍も緩和されている。これにより、長年にわたる規制闘争が再燃し、環境保護活動家や公衆衛生の専門家からは批判を受けている。

 2001年に六価クロムが規制対象として選定され、2014年には初めて10ppb(10億分の1)の基準が設けられたが、業界団体がこの基準は財政的に過度な負担になると訴え、裁判所がその主張を支持した。その結果、規制が一旦撤回され、再度10ppbの基準が導入されるまでには10年の年月がかかっている。

 2. コスト優先の規制決定

 飲料水に含まれる汚染物質に対する規制基準は、空気汚染に対する基準と比較して科学的データに乏しいと指摘されている。カリフォルニア州の環境健康危険評価局(OEHHA)が各化学物質の公衆衛生目標を設定するが、州法はその目標を基準にすることを義務付けていない。代わりに、経済的かつ技術的に可能な範囲で設定することが求められている。これにより、多くの水道事業者、特に資金の限られた小規模な地方自治体の水道システムは、基準を達成するためのコスト負担に苦しんでいる。

 州内では386の水道システムが「失敗」しているとされ、これらのシステムは73万6千人以上の人々に対し、基準を満たさない水を供給している。全ての住民に安全な水を提供するには、今後5年間で160億ドルが必要と見積もられており、その資金の大部分は不足している。

 3. PFASの汚染とその影響

 PFAS(ペルフルオロアルキル化合物)は、カーペット、食品包装、消防製品などの日用品に広く使用されてきた化学物質で、がんや肝臓損傷、不妊症、喘息、甲状腺疾患などと関連している。これらの化学物質は長年にわたり使用されており、米国民のほぼ全員の血液中に存在している。

 2024年、EPA(米国環境保護庁)はPFASの6種類に対する飲料水基準を設定したが、カリフォルニア水道協会(ACWA)などの団体は、基準に従うためのコストが高すぎるとして反対している。いくつかの水道事業者や化学企業は、規制に対して訴訟を起こしており、その影響でこれらの基準が現場で実施されるまでには長い法廷闘争が続く見通しである。

 PFAS汚染が深刻な影響を与えているのは、特に歴史的に有害廃棄物が捨てられ、工場が集中している貧困地域や有色人種コミュニティである。これらの地域では、多層的な環境汚染が健康被害をさらに悪化させている。

 4. ヒ素、硝酸塩などの他の汚染物質

 ヒ素は、カリフォルニア州で飲料水に含まれる主な汚染物質の一つで、肺がんや膀胱がん、糖尿病、皮膚疾患などの健康被害を引き起こす。州は20年前にヒ素の飲料水基準を改定したが、今再度基準を見直す過程にある。ヒ素は自然に発生することもあるが、工業や農業の排水によっても水道システムに流入するため、特にラテン系コミュニティに悪影響を及ぼしている。ヒ素を水から除去するには高額な費用がかかるが、公衆衛生専門家は、長期的な曝露は安全ではないと警告している。

 硝酸塩汚染は主に農業に起因し、過剰な肥料の使用が原因である。硝酸塩の飲料水基準は1990年代に制定されたが、新たな研究では、さらに厳しい基準が必要とされている。特に、カリフォルニア州の農業地帯である中央海岸地域では、硝酸塩汚染が深刻であり、貧困地域の人々が最も大きな影響を受けている。

 州は硝酸塩汚染に対応するプログラムを実施しており、中央海岸では数十年にわたって徐々に硝酸塩の排出を削減する計画がある。しかし、2023年には産業団体の要請により、規制当局が硝酸塩の排出制限を緩和した。これに対して、地域住民の擁護団体は、厳しい規制がなければ地域の水資源がさらに汚染されると警告している。

 5. 政策の改善と課題

 記事では、カリフォルニア州の飲料水規制が「逆行している」とし、特に小規模で不利な水道システムに資金を供給するプログラムの拡充や、低所得者層の料金補助プログラムが必要だと指摘している。しかし、2024年には新たな料金補助プログラムが州議会で否決された。

 全体的に、記事は水質基準が健康を保護するためにもっと厳格であるべきだと強調し、すべての住民が安全で清潔な飲料水にアクセスできる権利を守るために、必要な資源を確保することの重要性を訴えている。
 
【要点】

 ・六価クロム問題: 発がん性物質六価クロムに対する飲料水規制が、業界団体の圧力で緩和され、最も影響を受けるのは低所得者層や有色人種コミュニティ。

 ・コスト優先の規制決定: 規制基準は経済的な要因が優先されており、多くの水道システムが基準を満たせず、160億ドルの資金が不足。

 ・PFAS汚染: 有害化学物質PFASが健康に悪影響を及ぼすが、コストを理由に水道事業者や化学企業が規制に反対し、法廷闘争が続いている。

 ・ヒ素と硝酸塩汚染: ヒ素や硝酸塩が飲料水を汚染し、特にラテン系コミュニティなどの貧困地域に深刻な影響。除去には高額な費用がかかる。

 ・政策の改善の必要性: 水道システムへの資金拡充や料金補助プログラムが必要であり、すべての住民が安全な飲料水にアクセスする権利を強調。

【参考】

 ☞ 米国では、水道事業は主に公共事業であり、水道システムの85%以上を地方自治体が管理している。しかし、民営化はここ数十年で拡大している。最近の評価では、米国人口の約10〜15%が、民間所有または民間が管理する公益事業から水道サービスを受けている。民営化には、官民パートナーシップ(PPP)や民間企業による完全所有など、さまざまなモデルがある。スエズやアメリカンウォーターなどの大手企業は、この分野の主要なプレーヤーである。

 民営化の推進は、多くの場合、インフラストラクチャの老朽化、高い運用コスト、および限られた地方自治体のリソースによって推進される。ニュージャージー州バイヨンヌのような一部の都市では、民間企業が前払い金と引き換えに水道サービスを引き継ぐ長期コンセッション契約を結んだ。民営化は効率を向上させ、自治体の財政負担を減らすことができるが、多くの場合、消費者の水道料金が増加する。料金の引き上げは、企業が収益目標を達成し、株主に還元する必要があるため、システムが公的に管理されている場合と比較して水が高価になることに起因する。
 
Why Ratepayers Protections are Needed in the U. S. Water Utility Privatization Push
https://www.aeanj.org/why-ratepayers-protections-are-needed-in-the-u-s-water-utility-privatization-push/

Privatization of Water Services in the United States
https://nap.nationalacademies.org/catalog/10135/privatization-of-water-services-in-the-united-states-an-assessment

 ☞ 日本では、水道事業のほとんどが自治体で運営されているが、一部地域では民営化が進んでいる。2023年現在、約20の自治体が水道サービスの一部または全部を民間企業に譲渡することを選択している。この動きは、特に人口減少とインフラの老朽化に直面している地域において、効率性、コスト、公衆衛生上の懸念のバランスに関する広範な議論の一部である。

最重要インフラ「水道」の民営化は本当に必要なのか…杉並区の初の女性区長が研究者として訴えていたこと
https://president.jp/articles/-/59230

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

California Drinking Water Regulations Are Putting Cost Over People’s Safety truthout 2024.09.09
https://truthout.org/articles/california-drinking-water-regulations-are-putting-cost-over-peoples-safety/?utm_source=feedotter&utm_medium=email&utm_campaign=FO-09-09-2024&utm_content=httpstruthoutorgarticlescaliforniadrinkingwaterregulationsareputtingcostoverpeoplessafety&utm_source=Truthout&utm_campaign=f43c6b3326-EMAIL_CAMPAIGN_2024_09_09_08_53&utm_medium=email&utm_term=0_bbb541a1db-f43c6b3326-%5BLIST_EMAIL_ID%5D

米国の水道事業の民営化に対する批判2024年09月10日 15:40

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 米国の水道事業の民営化に対する批判と、それが利用者(レートペイヤー:atepayer)に与える悪影響について説明している。主に次の点が論じられている。

 民営化の背景と現状: 多くの米国の水道および下水道システムは政府所有であるが、民間企業による買収や運営への関心が高まっている。特に、老朽化したインフラの修繕が必要な状況で、民間企業はこの分野への投資を成長機会と見なし、自治体に民営化を促している。地方自治体は資金不足に悩まされ、民営化による一時的な資金注入に引き寄せられることが多い。

 料金上昇の問題: 民営化された水道システムでは、利用者が「民営化プレミアム」と呼ばれる追加費用を負担することが多く、民間企業による料金設定は、公共サービスよりも高額になる傾向がある。研究によれば、民営化された水道システムの年間平均料金は公共システムよりも186ドル高いとされている。これは、民間企業が投資家の利益を優先し、利用者に高額の料金を課すためである。

 法的な変更とその影響: 一部の州では、水道システムの売却に「公正市場価値(FMV)」を適用する法律が導入されている。この法律により、システムの売却価格が上昇し、その結果として利用者が負担する料金も増加する。また、ニュージャージー州などでは、この売却プロセスにおいて住民投票が省略される場合もあり、透明性が欠如している。

 インフラコストの負担: 民間企業はしばしばインフラ改善のための費用を迅速に回収する仕組みを求めるが、これにより公共料金の上昇が避けられなくなる。例えば、ペンシルバニア州では、インフラ修繕のために「配水システム改善費用」(DSIC)という追加料金を導入し、事前承認なしに料金を引き上げることが可能になっている。このような制度は、料金を上げるための手段として批判されている。

 民営化のデメリット: 民営化は短期的にはインフラの改善をもたらすこともあるが、長期的には利用者が高い料金を支払うことになり、企業の利益が優先される。公共部門が管理する場合の方が、より低コストでサービスを提供できる可能性が高いとされている。

 地域解決策の提案: 公共システムが民営化に頼らずに問題を解決するための方法として、公共間のパートナーシップや、低利の資金を活用したインフラ整備が提案されている。これにより、利用者が民間企業の利益のために余分な負担を負わずに済むとされている。

 結論: 民営化は、公共の利益を犠牲にして企業の利益を優先するものであり、民主的なプロセスや透明性を欠いている。料金が上昇し、特に低所得者層に大きな負担を強いるため、利用者保護のための政策が強化されるべきだと述べられている。

 全体として、この記事は、水道事業の民営化が利用者に与える経済的負担や、民主的な手続きが軽視される問題に焦点を当てている。

【詳細】

 米国の水道事業の民営化に対する批判と、それが利用者(レートペイヤー)に与える悪影響について説明している。主に次の点が論じられている。

 1.民営化の背景と現状: 多くの米国の水道および下水道システムは政府所有であるが、民間企業による買収や運営への関心が高まっている。特に、老朽化したインフラの修繕が必要な状況で、民間企業はこの分野への投資を成長機会と見なし、自治体に民営化を促している。地方自治体は資金不足に悩まされ、民営化による一時的な資金注入に引き寄せられることが多い。

 2.料金上昇の問題: 民営化された水道システムでは、利用者が「民営化プレミアム」と呼ばれる追加費用を負担することが多く、民間企業による料金設定は、公共サービスよりも高額になる傾向がある。研究によれば、民営化された水道システムの年間平均料金は公共システムよりも186ドル高いとされている。これは、民間企業が投資家の利益を優先し、利用者に高額の料金を課すためである。

 3.法的な変更とその影響: 一部の州では、水道システムの売却に「公正市場価値(FMV)」を適用する法律が導入されている。この法律により、システムの売却価格が上昇し、その結果として利用者が負担する料金も増加する。また、ニュージャージー州などでは、この売却プロセスにおいて住民投票が省略される場合もあり、透明性が欠如している。

 4.インフラコストの負担: 民間企業はしばしばインフラ改善のための費用を迅速に回収する仕組みを求めるが、これにより公共料金の上昇が避けられなくなる。例えば、ペンシルバニア州では、インフラ修繕のために「配水システム改善費用」(DSIC)という追加料金を導入し、事前承認なしに料金を引き上げることが可能になっている。このような制度は、料金を上げるための手段として批判されている。

 5.民営化のデメリット: 民営化は短期的にはインフラの改善をもたらすこともあるが、長期的には利用者が高い料金を支払うことになり、企業の利益が優先される。公共部門が管理する場合の方が、より低コストでサービスを提供できる可能性が高いとされている。

 6.地域解決策の提案: 公共システムが民営化に頼らずに問題を解決するための方法として、公共間のパートナーシップや、低利の資金を活用したインフラ整備が提案されている。これにより、利用者が民間企業の利益のために余分な負担を負わずに済むとされている。

 7.結論: 民営化は、公共の利益を犠牲にして企業の利益を優先するものであり、民主的なプロセスや透明性を欠いている。料金が上昇し、特に低所得者層に大きな負担を強いるため、利用者保護のための政策が強化されるべきだと述べられている。

 全体として、水道事業の民営化が利用者に与える経済的負担や、民主的な手続きが軽視される問題に焦点を当てている。
 
【要点】

 1.背景と現状

 ・米国の多くの水道・下水道システムは政府所有。
 ・民間企業の投資関心が高まる中、民営化が進行中。
 ・地方自治体は資金不足から民営化に引き寄せられることが多い。

 2.料金上昇

 ・民営化された水道システムでは、「民営化プレミアム」と呼ばれる追加費用が発生。
 ・民営化されたシステムの年間料金は公共システムより186ドル高い。
 ・低所得者層にとって負担が大きい。

 3.法的な変更と影響

 ・一部の州で「公正市場価値(FMV)」の評価法が導入され、システムの売却価格が上昇。
 ・ニュージャージー州などでは、住民投票が省略される場合があり、透明性が不足。

 3.インフラコストの負担

 ・民間企業は「配水システム改善費用(DSIC)」などの制度を導入し、事前承認なしに料金を引き上げることが可能。
 ・これにより利用者が高い料金を支払うことになる。

 4.民営化のデメリット

 ・短期的にはインフラの改善が期待できるが、長期的には料金が高くなり、企業の利益が優先される。
 ・公共部門が管理する方が低コストで提供できる可能性が高い。

 5.地域解決策の提案

 ・公共間のパートナーシップや低利資金の活用が提案されている。
 ・民間企業の利益を排除し、利用者への負担を軽減する方法。

 6.結論

 ・民営化は公共の利益を犠牲にし、民主的なプロセスが軽視される。
 ・利用者保護のための政策強化が必要。

【引用・参照・底本】

Why Ratepayers Protections are Needed in the U. S. Water Utility Privatization Push AEANJ.org 2021.10.21
https://www.aeanj.org/why-ratepayers-protections-are-needed-in-the-u-s-water-utility-privatization-push/

水道の民営化に関する議論2024年09月10日 16:59

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【概要】

 水道の民営化に関する議論は、世界中でさまざまな角度から検討されている。特に日本では、2018年の改正水道法の成立により、水道事業の民営化が可能となり、これが大きな議論の的となっている。

 杉並区長であり、公共政策研究者でもある岸本聡子さんは、この民営化に対して強い懸念を抱いている。彼女は「民営化すれば必ずしも料金が下がり、サービスが向上するわけではない」と指摘している。むしろ、民営化によって市民の金銭的負担が増加し、企業が利益を優先することで公共サービスの質が低下するリスクがあると主張している。

 岸本さんは、世界の水道事業における「再公営化」が増加していることにも注目している。フランスやドイツ、アメリカなどでは、かつて民営化された水道事業が公営に戻されており、これは民営化が必ずしも成功していないことを示すものである。

 特に日本においては、政府が水道事業を外資系企業に売却する動きもあり、このような背景から市民の権利が脅かされる可能性があると警鐘を鳴らしている。

【詳細】

 水道の民営化は、世界中で議論されている重要な問題である。日本でも近年、この問題が注目を浴びているが、特に2018年に改正水道法が成立し、一部地域で水道事業の民営化が始まった。この動きに対して、公共政策研究者であり、2024年7月に女性として初の杉並区長となった岸本聡子さんは強い懸念を示している。彼女は「民営化が必ずしも料金の低下やサービスの向上を保証するものではない」と警告している。

 民営化の背景と岸本聡子さんの主張

 民営化の推進背景

 1.新自由主義の影響

 ・1980年代以降、イギリスやアメリカで新自由主義が台頭し、公共サービスの民営化が進行した。これは、公的セクターは非効率的で、民間の効率化が必要という考えに基づいている。
 ・日本でもこの影響を受け、公共サービスの民営化が推進されるようになった。

 2.改正水道法の成立

 ・2018年の改正水道法により、自治体が水道事業の運営権を民間企業に売却できるようになった。この手法は「コンセッション方式」と呼ばれている。

 岸本聡子さんの懸念

 1.料金とサービスの問題

 ・民営化が進むと、企業は利益を追求するため、かえって料金が上昇する可能性がある。また、サービスの質が必ずしも向上するわけではない。

 2.再公営化のトレンド

 ・世界では、フランスやドイツ、アメリカなどで、水道事業を再び公営化する動きが広がっている。これは、民営化によって生じた問題(料金の上昇やサービスの低下など)を解決するための措置である。

 3.民主主義への影響

 ・水は人々の基本的な権利であり、その運営に関する決定は民主的なプロセスを経るべきである。しかし、麻生太郎元副総理がワシントンで水道民営化を既定路線のように宣言したことは、日本国内での議論を軽視するものであり、民主主義への冒涜であると岸本さんは指摘している。

 具体的な問題事例

 1.フランスの水メジャー社員の内閣府出向

 ・フランスの巨大企業ヴェオリア社の社員が、日本の内閣府のPPP/PFI推進室に出向していた事例が報告されている。これにより、民営化推進の政策が企業に有利に働く可能性があると懸念されている。

 2.コンセッション方式の問題

 ・コンセッション方式は、自治体が水道施設の所有権を保持しつつ、運営権を民間企業に売却する手法である。しかし、企業が運営権を他の企業に売却することも可能であり、安定した水の供給が脅かされるリスクがある。

 結論と提言

 岸本聡子さんは、水道の民営化がもたらすリスクについて警鐘を鳴らし、再公営化の必要性を訴えている。彼女の主張は、民営化による料金の上昇やサービスの低下、そして民主主義への影響を考慮し、公共サービスの運営においては市民の利益を最優先すべきであるという点に集約されている。日本でも、再公営化の動きを注視し、民営化の影響を慎重に評価することが求められている。
 
【要点】

 1.水道の民営化の背景

 ・新自由主義の影響で公共サービスの民営化が進行。
 ・2018年の改正水道法により、自治体が水道事業の運営権を民間企業に売却可能に。

 2.岸本聡子さんの懸念

 ・料金とサービス: 民営化による料金の上昇やサービスの質の低下の懸念。
 ・再公営化のトレンド: フランスやドイツで、民営化の問題から再び公営化する動きが広がっている。 
 ・民主主義への影響: 民営化における企業主導の決定が市民の意思を軽視している可能性。

 3.具体的な問題事例

 ・フランス企業ヴェオリアの影響: ヴェオリア社員が内閣府に出向し、民営化推進政策が企業に有利に進むリスク。
 ・コンセッション方式の問題: 運営権の売却により、水の安定供給が脅かされる可能性。

 4.提言

 ・民営化のリスクを考慮し、市民利益を優先する再公営化の必要性を訴えている。

【参考】

 ☞ 日本の2018年の改正水道法は、老朽化が進む水道インフラの持続的な運営を目指して改正された。主な内容は以下の通り。

 1.コンセッション方式の導入

 地方自治体が水道施設の所有権を保持したまま、運営権を民間企業に委託できるようにする制度である。これにより、運営の効率化やコスト削減を図ることが期待された。

 2.広域化の推進

 地方の水道事業を広域化することで、効率的な運営や費用の削減を目指す。特に人口減少や水道施設の老朽化が進む地方での安定供給を確保するため、複数の自治体が連携して水道事業を運営することが奨励された。

 3.持続的な水道運営の確保

 水道事業の計画的な維持管理を強化するために、各自治体に対して「水道事業の経営戦略」を策定することが義務付けられた。これにより、長期的な財政的安定や、施設の老朽化対策が進められる。

 4.民間のノウハウの活用

 水道事業において、民間企業の技術やノウハウを活用することで、事業の効率化やサービスの向上を図ることが目的とされている。

 この改正により、水道事業の運営に民間の参加が拡大し、特にコンセッション方式が注目される一方で、公共の利益やサービスの質の確保について懸念の声も上がっている。

 ☞ PPP(Public-Private Partnership、官民パートナーシップ)は、公共サービスやインフラ事業を政府と民間企業が共同で進める手法を指す。PPPは、公共部門がインフラやサービスの提供において、民間企業の資金やノウハウを活用することを目的としている。

 PPPの特徴

 ・官民の協力: 公共部門(政府・自治体)と民間企業がそれぞれの役割を分担し、プロジェクトを進める。
 ・リスクと利益の共有: 公共部門と民間企業がリスクや利益を分担。たとえば、建設費用や運営費用、利益の配分などが協定で定められる。
 ・多様な形式: PPPにはいくつかの形式があり、プロジェクトごとに適切な形が選ばれる。たとえば、コンセッション方式もPPPの一種。

 PPPの形式

 ・DB(Design-Build): 設計と建設を民間企業が担当し、公共部門が資金を提供。
 ・DBO(Design-Build-Operate): 設計、建設、運営までを民間が担当し、所有権は公共部門に残る。
 ・DBFM(Design-Build-Finance-Maintain): 民間企業が設計、建設、資金調達、維持管理を行うが、資産の所有権は公共部門にある。
 ・BOT(Build-Operate-Transfer): 民間企業が建設、運営を行い、一定期間後に公共部門へ移管する。
 ・PFI(Private Finance Initiative): 民間が資金を調達して、設計、建設、運営を行う形式。特にイギリスで広まった手法。

 PPPのメリット

 ・資金調達の多様化: 民間企業が資金を提供するため、政府の財政負担が軽減される。
 ・効率の向上: 民間の技術や運営ノウハウを活用することで、効率的なプロジェクト運営が期待できる。
 ・リスク分散: リスクを民間と公共部門で分担することで、プロジェクトの失敗リスクが軽減される。

 PPPのデメリット

 ・契約の複雑さ: 公共部門と民間企業の間での契約が複雑で、プロジェクトの管理や監督が難しくなる。
 ・透明性の低下: 民間企業が関与することで、公共サービスに対する透明性やアカウンタビリティが低下する可能性がある。
 ・コスト上昇のリスク: 長期契約の場合、予期せぬコスト増加やサービス品質の低下が発生する可能性がある。

 PPPの具体例

 ・交通インフラ: 道路、空港、鉄道などの整備・運営にPPPが利用されることが多い。
 ・公共施設: 学校、病院、水道などのインフラ整備にもPPPが活用されている。
エネルギー供給: 発電所や送電網の整備にもPPPが利用される。
 ・PPPは、公共部門が民間の効率や資金を活用しながら、公共の利益を最大限に確保する手法として、多くの国で採用されている。

 ☞ PFI(Private Finance Initiative、プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)は、PPP(官民パートナーシップ)の一形態であり、公共サービスやインフラ事業を民間資本で賄い、運営も含めて長期契約で行う方式である。PFIでは、民間企業が資金を調達し、設計・建設・運営を担い、政府がそのサービスの提供を受ける形をとる。

 PFIの特徴

 ・民間資金調達: 民間企業が資金を調達し、プロジェクトを進めるため、政府の初期負担が軽減される。
 ・長期契約: 通常20〜30年の長期契約で、建設後も民間企業が維持管理・運営を行う。
 ・リスク分担: 建設リスク、運営リスクは主に民間企業が負うが、政府も一定のリスクを共有する。

 PFIの仕組み

 1.設計・建設: 民間企業が施設の設計・建設を行う。
 2.資金調達: 民間企業が自己資金や融資でプロジェクトの資金を調達する。
 3.運営・維持管理: 民間企業が建設後も運営・メンテナンスを担当。
 4.政府の支払い: 政府は施設の使用料やサービスの提供に対する支払いを、長期にわたって行う。

 PFIのメリット

 ・財政負担の軽減: 民間資金の利用により、政府の初期投資を抑えられる。
 ・効率性の向上: 民間企業のノウハウを活用することで、効率的な運営が期待できる。
 ・コストの予測可能性: 長期契約により、政府は将来的な支出を計画しやすくなる。

 PFIのデメリット

 ・長期的コスト増加: 民間企業に支払う使用料やメンテナンス費用が高くなる場合がある。
 ・契約の柔軟性不足: 長期契約のため、予期しない環境変化に対応しづらい。
 ・サービスの質が低下する可能性もある。民間企業は利益を追求するため、コスト削減が優先され、公共サービスの質が十分に確保されないリスクがある。また、契約内容によっては、民間企業が提供するサービスが必ずしも公共の利益に最適化されないことも考えられる。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

最重要インフラ「水道」の民営化は本当に必要なのか…杉並区の初の女性区長が研究者として訴えていたこと PRESIDENT Online 2022.07.11
https://president.jp/articles/-/59230?page=7

パキスタンの最近の反民主的弾圧2024年09月10日 20:10

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【概要】

 パキスタンの最近の反民主的弾圧に関するアンドリュー・コリブコの分析から得られる5つのポイントは以下の通り。

 1.弾圧にもかかわらずPTIの回復力:2022年4月以降、野党メンバーの誘拐、拷問、さらには暗殺など、大規模な弾圧に直面しているにもかかわらず、パキスタン・テヘリーク・エ・インサフ(PTI)党は無傷で人気を保っている。これは、イムラン・カーン元首相を支持する最近の平和的な集会によって証明されており、PTIの反汚職と開発推進のアジェンダに対する継続的な支持を示している。

 2.エスタブリッシュメントによる分極化:パキスタンでは「エスタブリッシュメント」として知られる強力な軍と諜報機関が、社会の分極化の中心だ。彼らの承認は、PTIとその支持者に対する弾圧に必要だ。このアプローチは、彼らの支配に対する国民の支持と信頼の喪失につながっている。

 3.米国の限定的な対応:米国は、弾圧に対して民主主義と法の支配に関する一般的な声明のみを発表することが期待されている。これは、アメリカとパキスタン支配体制との間の戦略的理解によるものだ。過去の証拠は、パキスタンが国際援助と引き換えに、ウクライナへの武器販売などの行動に関与してきたことを示している。

 4.大衆の動員に対する恐怖:エスタブリッシュメントは、PTIの動員力と、パキスタン国民のかなりの部分を結集するその能力を恐れている。この恐怖には、軍や諜報機関内の潜在的な同調者に対する懸念が含まれ、それが元ISI長官ファイズ・ハミードの迫害を含む弾圧の強化につながっている。

 5.偽旗作戦の可能性:エスタブリッシュメントが偽旗作戦を演出したり、PTIをテロと結びつける陰謀論をでっち上げる可能性があるという懸念がある。これは、政敵の信用を落とすために使われた過去の戦術と似ており、支配を維持するために世論の認識を操作するパターンを反映している。

 要するに、PTIとその支持者に対する弾圧は、支配を失うことに対するエスタブリッシュメントの根深い恐怖と、PTIの継続的な人気と大衆の支持によってもたらされる課題を浮き彫りにしている。

【詳細】

 Andrew Korybkoによる「Pakistan’s Latest Anti-Democratic Crackdown」の詳細な解説である。

 1.PTIの弾圧への耐性

 ・背景: 2022年4月の「米国支援によるポスト・モダン・クーデター」以降、PTI(パキスタン・テリーク・エ・インサフ)は、誘拐、拷問、国家による迫害、さらにはジャーナリストのArshad Sharifのような暗殺を受けている。
 ・現状: それにもかかわらず、PTIは依然として強い支持を集めており、最近のデモでは多くの支持者が集まった。これはPTIの反腐敗や開発推進のメッセージが依然として魅力的であることを示している。また、PMLN(パキスタン・ムスリム・リーグ・ナワズ)とPPP(パキスタン人民党)の二大政党と、その強力な軍事・情報機関の支持者たちに対する不満が高まっていることを反映している。

 2.エスタブリッシュメントの社会の分裂

 ・背景: パキスタンにおける「エスタブリッシュメント」とは、軍や情報機関を指し、実質的に国を裏で操っている。
 ・影響: エスタブリッシュメントの政策や弾圧が社会の分裂を引き起こしており、これらの措置は彼らの承認なしには実行でない。PTIに対する敵対的な政策は、エスタブリッシュメントがそのアメリカとの合意に基づいて進めているものであり、結果的に多数の人々の支持を失っている。

 3.米国の対応の限界

 ・背景: 米国は、パキスタンの弾圧に対して、民主主義や法の支配についての一般的な声明しか出さないと予想される。これは、米国とパキスタンのエスタブリッシュメントとの戦略的な理解に起因している。
 ・具体例: パキスタンがIMFからの支援と引き換えにウクライナに武器を売ったという事実もあり、米国はパキスタンのエスタブリッシュメントを見捨てることはないと考えられる。

 4.エスタブリッシュメントのパキスタン国民の力に対する恐怖

 ・背景: PTIは広範な国民の動員能力を持ち、その力をエスタブリッシュメントが恐れているとされている。
 ・対策: PTIの支援者が軍や情報機関内にいる可能性があることもエスタブリッシュメントの恐れを増している。このため、Imran Khanの元ISI(パキスタンの情報機関)長官Faiz Hameedの迫害など、内部 dissent(反抗)を抑え込むための措置が取られている。

 5.偽旗作戦や陰謀論の可能性

 ・背景: 上記の状況から、エスタブリッシュメントが偽旗作戦を行ったり、PTIとテロリズムを結びつける陰謀論を作り出す可能性がある。
 ・例: 「Taliban Khan」というレッテルを使ってImran Khanを貶めるための策が再び使われる可能性がある。これは、アメリカの民主党が最近行った「Russiagate」陰謀論に似た、政治的に自己利益を追求するための手段である。

 このように、パキスタンの最近の反民主主義的な弾圧は、エスタブリッシュメントがPTIの支持を恐れていることを示しており、今後もより厳しい弾圧が続く可能性があると考えられる。PTIの支持者や国民の力に対するエスタブリッシュメントの恐怖が、弾圧をさらに激化させる要因となっていると見られる。
 
【要点】

 Andrew Korybkoによる「Pakistan’s Latest Anti-Democratic Crackdown」の詳細な説明を箇条書きでまとめたものである。

 1.PTIの弾圧への耐性

 ・PTIは、誘拐や拷問、国家による迫害を受けているにもかかわらず、依然として強い支持を集めている。
 ・最近の平和的なデモには多くの支持者が集まり、PTIの反腐敗と開発推進のメッセージが依然として魅力的であることを示している。

 2.エスタブリッシュメントによる社会の分裂

 ・エスタブリッシュメント(軍や情報機関)が社会の分裂を引き起こしている。
 ・彼らの政策は、彼らの承認なしには実行できず、PTIに対する敵対的な措置が公衆の支持を失う原因となっている。

 3.米国の対応の限界

 ・米国はパキスタンの弾圧に対して一般的な声明しか出さないと予想される。
 ・過去には、パキスタンがIMFからの支援と引き換えにウクライナに武器を売ったことが示されており、米国はパキスタンのエスタブリッシュメントを見捨てることはないと考えられる。

 4.エスタブリッシュメントの国民の力に対する恐怖

 ・PTIは広範な国民の動員能力を持ち、その力をエスタブリッシュメントが恐れている。
 ・PTI支持者が軍や情報機関内にいる可能性もあり、これがエスタブリッシュメントの恐れを増している。

 5.偽旗作戦や陰謀論の可能性

 ・エスタブリッシュメントが偽旗作戦や陰謀論を用いてPTIとテロリズムを結びつける可能性がある。
 ・過去には「Taliban Khan」といったレッテルを使った策があり、同様の手段が再び用いられる可能性がある。 

【参考】

 ☞ 「米国支援によるポスト・モダン・クーデター」
 
 1.背景

 ・これは、2022年4月に発生したパキスタンの政治的な変動を指し、特にパキスタン・テリーク・エ・インサフ(PTI)政権からの政権交代を含む。
 ・PTIのImran Khan首相が失脚し、PMLN(パキスタン・ムスリム・リーグ・ナワズ)やPPP(パキスタン人民党)が主導する政権が成立した。

2.米国の関与

 ・このクーデターは、米国の支援または影響力が関与しているとされる。具体的には、米国がパキスタンの政治に対して圧力をかけ、政権交代を促したという主張がある。
 ・特に、米国の外交政策や国際的な圧力が背景にあるとされており、パキスタンの政治的な変動を促進するための支援があったとされる。

 3.ポスト・モダン・クーデターの特徴

 ・通常の軍事クーデターとは異なり、政治的手法や非軍事的手段を用いて政権を変える手法を指す。
 ・情報操作、外交的圧力、政治的工作などが含まれる。

 4.影響

 ・このクーデターにより、Imran KhanのPTI政権が崩壊し、PMLNとPPPが主導する新政権が樹立された。
 ・政治的な弾圧やPTI支持者への取り締まりが強化されるなど、国内の政治的状況が大きく変化した。

 このように、「米国支援によるポスト・モダン・クーデター」は、米国の影響力がパキスタンの政治的変動に関連しているという視点で説明されている。

 ☞ 「ポスト・モダン・クーデター」(Post-Modern Coup)とは、以下のような政治的変動や権力掌握の手法を指す。

 1.定義

 ・ポスト・モダン・クーデターは、従来の軍事的なクーデターとは異なり、非軍事的手段や巧妙な政治的手法を用いて政権を転覆させる方法である。
 ・従来の物理的な暴力や軍事介入に依存せず、情報操作、メディア戦争、経済的圧力、外交的工作などを通じて権力を掌握または変更することを含む。

 2.特徴

 ・非軍事的手法: 軍事力を使わず、情報操作、経済制裁、政治的工作などの手法を用いる。
 ・メディアと情報戦: メディアや情報を利用して、世論を操作したり、政権や政治家を貶める。
 ・外交的圧力: 外国勢力の支援や圧力を利用して、政権転覆を図る。
 ・経済的手段: 経済制裁や金融的圧力を通じて、政権を不安定にする。

 3.目的

 ・政権転覆: 直接的な暴力を伴わずに、既存の政権を転覆させること。
 ・政治的目標の達成: 政治的な目標を達成するために、非従来型の手法を利用する。
 ・国際的な影響力の拡大: 他国の政権に影響を及ぼし、自国の利益を推進する。

 4.実例

 ・近年の政権交代: 一部の国々で、情報操作やメディア戦争を通じて政権交代が促された事例があり、これがポスト・モダン・クーデターの一例とされることがある。
 ・外国勢力の関与: 外国の影響力や支援が、政権転覆の要因となることがあり、これはポスト・モダン・クーデターの一環と見なされることがある。

 5.影響

 ・ポスト・モダン・クーデターは、従来の軍事的手段に比べて影響力を持ち、より巧妙で広範な方法で政権転覆を試みるため、政治的、経済的、社会的な影響が大きい。
 ・この手法は、非暴力的でありながらも、結果的に政権や国家に対する大きな変化を引き起こす可能性がある。

 ポスト・モダン・クーデターは、現代の政治戦略において重要な概念であり、従来の軍事クーデターに代わる新たな権力掌握の手法として注目されている。

 ☞ 「post」という単語にはいくつかの異なる意味があるが、文脈に応じて以下のように使われる。


 1.位置や場所を示す

 ・郵便局: "post office"(郵便局)や「ポスト」(郵便受け)など。
 ・位置: 軍隊などでの「ポスト」は、特定の位置や任務を意味する。

 2.職務や役職を示す

 ・職位: 会社や組織での「ポスト」は、役職や職務を指す(例:"She holds the post of manager" - 彼女はマネージャー職にある)。

 3.発表や投稿を示す

 ・投稿: SNSやブログなどに情報や意見を投稿すること(例:"I made a post on social media" - ソーシャルメディアに投稿した)。

 4.時代や段階を示す

 ・時代区分: 「ポスト」は、特定の時代や段階を示すことがある。例えば、「ポスト・モダン」は「現代以降の時代」を指し、「ポスト・クーデター」は「クーデター後の段階」を意味する。

 この文脈では、「ポスト・モダン・クーデター」の「ポスト」は、「モダン(近代)」の後、つまり「近代以降の」または「近代の次の段階における」という意味で使われている。

 ☞ 「偽旗作戦」(False Flag Operation)とは、以下のような操作や戦術を指す。

 1.定義

 ・偽旗作戦とは、実際には異なる組織や国が行った行動や攻撃を、別の組織や国が行ったものとして偽装する戦術である。
 ・この作戦の目的は、他者に責任を押し付けたり、意図的に混乱や誤解を生じさせることである。

 2.目的

 ・責任転嫁: 自分たちの行動や目的を隠すために、他の勢力や国に責任を負わせる。
 ・プロパガンダ: 特定のイデオロギーや政治的目標を推進するために、敵を悪者として描く。
 ・国際的支持の獲得: 偽装された攻撃や事件を利用して、国際的な支持を得るための根拠を作る。
 ・敵対勢力の排除: 偽旗作戦を通じて、敵対する勢力を困難な状況に追い込む。

 3.実例

 ・歴史的事例

  ⇨ グリュイエールの事件(1939年): 第二次世界大戦勃発のきっかけとなった事件で、ナチス・ドイツがポーランドに対して偽装攻撃を行い、ポーランドが攻撃したかのように偽装した。
  ⇨ ノルマンディー上陸作戦: 1944年、連合軍がドイツ軍を欺くために、ノルマンディーではなく他の地点に上陸するように見せかけるための偽旗作戦を実施した。

 4.現代の事例

 ・政治的なスキャンダルやテロ攻撃の背後にあるとされる偽旗作戦が、特定の政府や組織によって利用されることがある。

 5.影響

 ・偽旗作戦は、国際的な信頼関係を損ね、誤解や対立を生む可能性がある。
 ・この作戦が成功することで、当該組織や国は自身の目的を達成する一方で、他者を不当にも非難したり、悪化した状況を利用することが可能になる。

 偽旗作戦は、戦争や政治的な争いにおいて非常に狡猾で危険な戦術であり、国家や組織がその目的を達成するために利用されることがある。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Five Takeaways From Pakistan’s Latest Anti-Democratic Crackdown Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.110
https://korybko.substack.com/p/five-takeaways-from-pakistans-latest?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148717103&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

イランのザンゲズル回廊への反対2024年09月10日 21:04

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【概要】

 イランのザンゲズル回廊への反対姿勢について、以下の説明がされている。

 1.イランの反対理由

 イランは、アゼルバイジャンが提案するザンゲズル回廊が地域の国境を再編するとの見解を示している。しかし、この回廊は、2020年11月のロシア仲介の停戦合意に基づく経済プロジェクトであり、領土的な変更を伴うものではなく、イランの主権に直接的な脅威を与えるものではない。それにもかかわらず、イランは代替案として北部を通る自国のルートを提案している可能性がある。

 2.競争的な背景

 イランは、アゼルバイジャンとの関係を悪化させることなく、アルメニアへの影響力を強化するために、回廊計画への反対を強めている可能性がある。これにより、西側諸国との競争が激化し、ロシアにとってはアルメニアの西側への傾倒を遅らせる効果も期待されが、イランとアゼルバイジャンの関係がさらに複雑化するリスクがある。

 3.イランとロシアの関係

 イランは、ロシアからの見返りとしてザンゲズル回廊の支持を控えることを期待していた可能性があるが、その期待は裏切られた。ロシアは引き続きこのプロジェクトを支持しており、イランはロシア大使を召喚し不満を表明している。

 4.パイプライン計画への影響

 ロシアは南に向けたエネルギー輸送ルートを強化する計画を進めており、アゼルバイジャンがその重要な役割を担うことが期待されている。しかし、この計画が実現するためには、アゼルバイジャンとイランの間での安全保障上の対立が解消される必要がある。ザンゲズル回廊を巡る緊張が、このプロジェクトに影響を及ぼす可能性がある。

 5.トルコとの関係

 トルコもこの回廊計画に強い関心を持っており、特に中央アジアとの貿易促進を期待している。したがって、イランの反対姿勢はトルコとの関係を悪化させる可能性があり、最悪の場合、トルコがイランを抑えるために西側諸国との関係を再強化する事態が生じるかもしれない。

 この対立は長引く可能性があり、イランがロシアをアゼルバイジャン側に付いたと見なしているため、今後もこの問題が進展する見込みは低い。

【詳細】

 イランのザンゲズル回廊への反対姿勢を詳しく説明すると、以下の点が重要である。

 1. イランの懸念と主張

 イランは、ザンゲズル回廊が地域の国境を変更し、イランの国益を損なう可能性があると懸念している。特に、回廊がイランとアルメニアの直接的な陸路接続を失わせ、イランが地域での影響力を減少させる可能性があるとみている。しかし、実際にはザンゲズル回廊は2020年11月のロシア仲介の停戦協定の一部であり、経済的なプロジェクトとして位置付けられている。この回廊を守るのはロシアのFSB国境警備隊であり、領土変更やイランの安全保障を直接脅かすものではないとされている。イランは、回廊がイランの北部を通る代替ルートを提供する可能性を残したいとも考えていると推測されている。

 2. 地域における競争とアルメニアへの影響
 
 イランの反対には、アルメニアとの関係強化という意図がある可能性がある。特に、アゼルバイジャンとの対立を利用し、アルメニアが西側諸国(特にEUやアメリカ)へ接近する傾向を緩和することを狙っていると考えられる。アルメニアは過去数年で西側諸国との関係を強化し、特に停戦以降その動きは加速しているため、イランはこの傾向を逆転させたい意図があるかもしれない。このような背景から、イランは自国を西側諸国よりも信頼できるパートナーとして位置付けようとしている可能性がある。

 3. イランとロシアの関係悪化の可能性

 イランは、ロシアとの軍事技術協力の見返りとして、ロシアがザンゲズル回廊への支持を控えるのではないかと期待していた可能性がある。イランはロシアに対してドローンやミサイルの供給を行っており、それを通じてロシアがイランの立場に配慮することを期待していたかもしれない。しかし、実際にはロシアはこの回廊を引き続き支持しており、イランの期待は裏切られた。ロシア大使が召喚されたことからもわかるように、この問題はイランにとって重要であり、イランとロシアの関係に新たな緊張をもたらす可能性がある。

 4. ロシアの南向けパイプライン計画への影響

 ロシアはエネルギー輸送の面で新たな戦略を検討しており、中国向けの東方ルートに加えて、南方へのエネルギー輸送を強化しようとしている。この計画では、アゼルバイジャン、イラン、インドが重要な役割を果たすことが期待されている。しかし、アゼルバイジャンとイランの間で安全保障上の対立が存在する限り、ロシアのパイプライン計画が実現するのは難しいかもしれない。アゼルバイジャンは、イランがザンゲズル回廊への反対を撤回することを条件に、このプロジェクトを支援する可能性がある。一方で、イランはザンゲズル回廊の廃止を求めることで、南向けエネルギー輸送計画への支持を交渉材料にするかもしれない。このように、ザンゲズル回廊を巡る対立がエネルギー輸送にまで影響を及ぼす可能性がある。

 5. トルコとの関係への影響

 トルコはザンゲズル回廊に対して強い支持を示しており、このプロジェクトが中央アジアや中国との貿易を促進することを期待している。現在、トルコの貿易ルートはバクー・トビリシ・カルス鉄道に依存しているため、ザンゲズル回廊が完成すればより効率的なルートが確立されると考えている。そのため、イランの反対はトルコとの関係を悪化させる可能性が高い。トルコとイランの関係は歴史的に複雑であり、協力と対立が交錯してきたが、この問題によってさらに緊張が高まる可能性がある。最悪の場合、トルコはイランを経済的に孤立させるために西側諸国との関係を再強化する可能性も考えられる。

 総括
 
 イランのザンゲズル回廊への反対姿勢は、単なる経済プロジェクトに対する懸念を超え、地域の安全保障や国際関係に深い影響を与えている。ロシア、アゼルバイジャン、アルメニア、トルコとの関係において、イランの立場は今後も微妙なバランスを保つ必要があり、ザンゲズル回廊を巡る対立がさらなる地域的緊張を引き起こす可能性がある。また、この対立がエネルギー輸送や地域の安全保障に与える影響は無視できないものとなっており、解決には時間がかかる。
 
【要点】

 イランのザンゲズル回廊への反対姿勢について、以下の通り箇条書きで説明する。

 1.イランの懸念

 ・ザンゲズル回廊が地域の国境を変更し、イランの国益を損なうと主張しているが、実際は経済プロジェクトで領土的な変更はない。
 ・イランは回廊の代替ルートとして、北部を通る自国経由のルートを望んでいる可能性がある。

 2.アルメニアへの影響

 ・イランは、アルメニアが西側諸国(特にEUやアメリカ)に接近する傾向を抑え、アルメニアとの関係を強化しようとしている。
 ・ザンゲズル回廊への反対は、アルメニアを信頼できるパートナーとして引き寄せるための手段となっている。

 3.ロシアとの関係

 ・イランは、ロシアがイランの軍事技術協力(ミサイルやドローンの供給)の見返りとして、ザンゲズル回廊への支持を控えることを期待していたが、実現しなかった。
 ・ロシア大使を召喚して不満を表明するなど、イランとロシアの関係に緊張が生じている。

 4.ロシアのパイプライン計画への影響

 ・ロシアはエネルギー輸送の南方ルート(アゼルバイジャン、イラン、インド)を強化しようとしているが、ザンゲズル回廊を巡るイランとアゼルバイジャンの対立がこの計画に影響を与える可能性がある。
 ・アゼルバイジャンはイランがザンゲズル回廊への反対を撤回することを条件にパイプライン計画を支持する可能性がある。

 5.トルコとの関係

 ・トルコはザンゲズル回廊を通じて中央アジアや中国との貿易を拡大することを期待しており、イランの反対に強い不満を抱いている。
 ・イランとトルコの関係が悪化し、最悪の場合、トルコが西側諸国と協力してイランを経済的に孤立させる可能性がある。

 総括

 ・イランのザンゲズル回廊への反対は、単なる経済プロジェクトに対する懸念を超え、地域の安全保障や国際関係に深刻な影響を与えている。
 ・解決には時間がかかり、地域の緊張がさらに高まる可能性がある。

【参考】

 ☞ ザンゲズル回廊は、アゼルバイジャンとその飛び地であるナヒチェヴァン自治共和国を繋ぐ経済回廊である。この回廊は、2020年11月のナゴルノ・カラバフ紛争後に締結されたロシア仲介の停戦合意に基づいて提案されたもので、アゼルバイジャン、アルメニア、そしてロシアが協定に署名した。

この回廊の主な目的は、アゼルバイジャン本土とナヒチェヴァンを直接結び、さらにはトルコとの貿易ルートを強化することである。ザンゲズル回廊が完成すれば、アゼルバイジャンはアルメニアを経由して直接ナヒチェヴァンおよびトルコと繋がることができ、地域全体の経済活動が活発化すると期待されている。

 しかし、このプロジェクトに対してイランは強く反対している。イランは、ザンゲズル回廊がアルメニアとの国境を分断し、イランの地域的影響力や経済的利害を損なう可能性があると懸念している。特に、アルメニアとイランを繋ぐ唯一の陸路が影響を受けることが主な懸念事項である。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Elaborating On Iran’s Continued Opposition To The Zangezur Corridor Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.110
https://korybko.substack.com/p/elaborating-on-irans-continued-opposition?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148714038&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email