中国海警局:台湾島周辺海域で法執行パトロール実施2024年10月14日 21:47

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【概要】

 2024年10月14日、中国海警局(CCG)は、台湾島周辺海域で法執行パトロールを実施したことを発表した。パトロールに参加したのは、2901、1305、1303、2102の艦隊で、これは「一つの中国」の原則に基づいて台湾島を法的に支配するための具体的な行動であると、CCGの報道官であるLiu Dejunが述べている。

 同日に、福建海警局も東引島と馬祖島付近の海域で法執行パトロールを実施した。これらのパトロールは、認証、身元確認、登船検査、制圧および排除作業などの訓練を中心に行われ、迅速な対応と緊急事態処理能力を評価することが目的とされている。

 匿名の専門家は、中国海警局が台湾島周辺で複数の艦隊を動員し、多方面からの訓練を行ったことを説明しており、これは島の周囲の統制を強化するための動きであると指摘している。さらに、中国人民解放軍(PLA)の東部戦区司令部による台湾島周辺の重要港や地域の封鎖と併せて、海上法執行機関の関与が、民間目的を装った非典型的な軍事標的を検査し、「台湾独立」勢力が制裁を回避するのを防ぐことに貢献するとしている。

 CCGが発表した図には、台湾島周辺を航行するCCGの艦隊の位置が示されており、島を効果的に取り囲んでいることがわかる。この図には正確な緯度経度の情報はなく、矢印によって大まかな航路が示されている。これは、固定された巡航線に従っていないことを示しており、島周辺の広範囲な地域をカバーしていることが示唆されている。

 また、このパトロールは今後も頻度が増し、台湾独立勢力の行動範囲を制限し、国家法に基づいて台湾島周辺の統制を強化することで、台湾の平和的な統一を促進し、台湾海峡の平和と安定を維持するために実施される予定である。

 2901艦は台湾島に関わる任務に初めて参加し、この船は排水量1万トン以上、最高速度25ノット、76mm速射砲を搭載しており、衝突耐性、航続力、自己補給能力、総合的な海上法執行能力を備えているとされている。この船は、台湾独立勢力の逃亡を防ぎ、東部海域での長期間の統制任務を遂行できる能力を持つ。

 さらに、CCGが馬祖島周辺の海域に進入したことは、台湾島に近い外縁地域の統制を強化する意義があると専門家は述べている。今後は、馬祖島周辺での定期的な法執行パトロールが実施される可能性が高い。

 同日、PLA東部戦区司令部は「聯剣-2024B」という名称の合同軍事訓練を台湾海峡および台湾島の北、南、東の地域で実施した。この訓練は、「台湾独立」勢力の分離主義活動に対する厳しい警告であると、PLA東部戦区司令部の広報官である李希上級大尉が声明で述べている。
 
【詳細】

 2024年10月14日、中国海警局(CCG)は、台湾島周辺の海域で大規模な法執行パトロールを実施した。このパトロールには、CCGの複数の艦船、具体的には2901、1305、1303、2102の4つの艦隊が参加しており、台湾島を取り巻く広範な海域で活動を行った。これについて、CCGの報道官であるLiu Dejunは、台湾島に対する中国の主権を強調するために「一つの中国」原則に基づいた法的な措置であると述べた。

 同日、福建海警局も台湾に近い東引島と馬祖島の周辺海域で別途パトロールを行い、これには船舶の認証や身元確認、登船検査、排除作業などの訓練が含まれていた。これにより、迅速な対応と緊急時の処理能力が評価されており、CCG全体として海上での統制能力を強化する目的が明確になっている。

 この行動について、匿名の専門家が「CCGが台湾島周辺での多艦隊によるパトロールや訓練を強化しており、台湾島の周辺海域に対する支配力を強めている」と指摘している。特に、台湾独立勢力が制裁を回避して逃亡しないようにするために、中国人民解放軍(PLA)の東部戦区司令部と連携して、台湾の重要な港湾や地域を封鎖する戦略の一環として、CCGの海上法執行活動が重要な役割を果たしている。

 さらに、CCGが公開したパトロール図には、艦隊が台湾島周辺を広く航行している様子が示されているが、正確な緯度経度は記されておらず、一般的な航路を示す矢印が使われている。これにより、CCGのパトロールが固定されたルートに従うものではなく、広範囲に渡る海域をカバーしていることが示されている。

 今後もこのような活動は継続される見込みであり、CCGは法執行の頻度を増加させるとともに、台湾島周辺での統制力をさらに強化していくとされている。この統制強化により、台湾独立を主張する勢力の活動範囲はますます制限される見通しであり、最終的には「一つの中国」の原則に基づく台湾の平和的な統一を促進することが目的である。

 特に注目されるのは、2901艦の役割である。この船は台湾島に関連する作戦に初めて参加しており、排水量が1万トンを超える非常に大型の艦船である。2901艦は、25ノットという高速を出すことが可能で、76mm速射砲を装備しているため、軍事作戦にも十分対応できる。また、この船は航続距離や自己補給能力に優れ、長期間にわたって東部海域でのパトロールや統制任務を遂行できるため、台湾独立勢力が逃亡することを防ぐだけでなく、海域での統制を持続的に維持できる総合的な海上プラットフォームとしての役割を担っている。

 さらに、CCGが馬祖島周辺の海域に進入したことについても、専門家は重要な意義があると述べている。馬祖島は台湾本島に比較的近く、中国本土からも距離が近いことから、CCGがこの地域で法執行活動を強化することで、台湾島に対する外縁地域の統制力がさらに強化されるという見方がされている。今後は馬祖島周辺での定期的なパトロールが行われる可能性が高い。

 また、これらのパトロールや訓練は、台湾独立勢力が海上ルートを使って逃亡しようとする動きを封じるために行われているとも指摘されている。特に、PLAが台湾島周辺での統制を強化する際、民間人を装った勢力が海上から秘密裏に島に侵入することを防ぐための対策としても30*30機能している。

 同日、中国人民解放軍の東部戦区司令部も、「聯剣-2024B」という名称の合同軍事訓練を台湾海峡および台湾島の北、南、東の海域で実施している。この訓練には、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍の各部隊が参加しており、台湾独立勢力に対する厳しい警告として位置づけられている。PLA東部戦区司令部の広報官である李希上級大尉は、この訓練が「台湾独立」勢力の分離主義活動に対して強いメッセージを送るものであると声明で述べている。 

【要点】

 ・2024年10月14日、中国海警局(CCG)は台湾島周辺の海域で法執行パトロールを実施。
 ・参加した艦隊は2901、1305、1303、2102で、台湾島の統制強化が目的。
 ・同日に福建海警局も東引島と馬祖島周辺の海域で法執行パトロールを実施し、船舶認証や登船検査などを実施。
 ・専門家によると、CCGのパトロールは台湾島の周囲に対する統制力を強化するためのもの。
 ・中国人民解放軍(PLA)東部戦区司令部の台湾周辺の封鎖作戦と連携し、「台湾独立」勢力の逃亡を防ぐ狙いがある。
 ・CCGの発表した図には、正確な航路は示されていないが、台湾島周辺の広範な海域をカバーすることが示唆されている。
 ・CCGは今後も台湾島周辺での法執行パトロールを強化し、台湾独立勢力の活動を制限する見通し。
 ・2901艦は台湾関連の任務に初参加であり、大型船で強力な法執行能力を持つ。
2901艦は76mm速射砲を搭載し、長期間のパトロール任務が可能で、逃亡や侵入を防止する能力がある。
 ・CCGは馬祖島周辺での法執行活動も強化し、今後は定期的なパトロールが予想される。
 ・パトロールは「台湾独立」勢力の海上ルートによる逃亡を防ぐ目的もある。
同日、PLA東部戦区司令部は「聯剣-2024B」という合同軍事訓練を台湾海峡および周辺で実施し、台湾独立勢力への警告を発信。 

【参考】

 ☞ 76mm速射砲は、主に艦艇に搭載される中口径の自動砲で、速射性能に優れており、対空・対艦・対地攻撃など多目的に使用される。特徴として、短時間で大量の弾薬を発射できるため、敵のミサイルや航空機に対する防空能力に加え、小型艦艇や地上目標に対する攻撃力も備えている。

 中国海警局の2901艦に搭載されている76mm速射砲は、敵の小型船舶や航空機に対する抑止力を発揮するだけでなく、海上パトロール中の脅威に迅速に対応するための重要な装備とされている。また、高速かつ長期間にわたるパトロール任務において、戦闘や防御を行う際の自衛手段としても非常に有効である。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

CCG conducts law enforcement patrols around Taiwan island; expert says drills aim to prevent separatists from fleeing GT 2024.10.14
https://www.globaltimes.cn/page/202410/1321175.shtml

米国のサイバー諜報活動および偽情報操作を暴露2024年10月14日 22:01

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【概要】

 この報告書は、2024年10月14日に中国の国家コンピュータウイルス緊急対応センター(National Computer Virus Emergency Response Center)が発表したもので、アメリカ政府が行っているとされるサイバー諜報活動および偽情報操作を暴露している。特に、アメリカが「Volt Typhoon」と呼ばれるサイバー攻撃を中国などの他国に対する攻撃であると捏造し、他国を攻撃者として陥れるために使用する「Marble」というサイバー兵器の存在が指摘されている。

 報告書では、Volt Typhoonはアメリカの国家安全保障局(NSA)や中央情報局(CIA)などの機関が開発した「Marble」フレームワークというツールを用いて、他国のサイバー攻撃であるかのように見せかけるための「False Flag(偽装工作)」作戦を実行しているとしている。このフレームワークは、サイバー攻撃の証拠を消去し、プログラムコード内の特定の言語(中国語、ロシア語、韓国語、ペルシャ語、アラビア語など)の文字列を挿入して、調査者を誤解させ、他国を攻撃者と見なすように仕向けることが可能である。

 報告書は、Volt Typhoonの捏造について、アメリカやその他のファイブ・アイズ(Five Eyes)諸国が主導しているとし、これらの国々が中国、ドイツなどを標的にしたサイバー諜報活動を行っていると告発している。また、アメリカ政府が世界中の通信とインターネット利用者に対して無差別な監視を行っているとし、これによりアメリカ政府が政治的・経済的利益を得ていると指摘している。

 さらに、報告書ではアメリカが主要なインターネットの「チョークポイント」となる大西洋や太平洋の海底ケーブルの監視拠点を複数構築しており、それを通じて全世界のインターネットデータを監視していることも強調されている。また、NSAが特定地域で大規模なサイバースパイ活動を展開し、世界中の50,000以上のスパイウェアをインストールしているとも述べられている。

 報告書の最後には、アメリカ政府とその同盟国がサイバーセキュリティ問題を政治的に利用していることが批判され、今後も国際的なサイバーセキュリティに関する協力が不可欠であると強調されている。
 
【詳細】

 この報告書は、アメリカが国際的に行っているとされる大規模なサイバー諜報活動と、それを隠蔽するために使用されている技術的な手法について詳述している。特に注目されているのが、アメリカ政府が「Volt Typhoon」と呼ばれるサイバー攻撃を中国政府の仕業であるかのように描くことで、他国に責任を転嫁しようとしているという指摘である。

 背景

 Volt Typhoonは、2023年5月24日にアメリカを含むファイブ・アイズ諸国(アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド)の共同サイバーセキュリティ諮問によって、中国政府が主導したとされるサイバー攻撃として発表された。この攻撃は、アメリカの重要インフラに関連するネットワークに影響を与えたとされている。しかし、中国の国家コンピュータウイルス緊急対応センターは、このアメリカの主張が根拠のない捏造であると報告している。

 Marbleフレームワークの概要

 報告書の中心的な要素として紹介されているのが、アメリカのNSAとCIAが開発したとされる「Marble」というコードネームを持つツールキットである。このツールキットは、サイバー攻撃を行う際にプログラムのコード内にある痕跡(開発者の署名や識別可能な文字列)を消去し、攻撃が他国から行われたかのように見せかけるための技術的手法を提供する。

 ・オブフスケーション機能: Marbleフレームワークは、プログラムコード内に残る痕跡を「ぼかす(obfuscate)」ことができ、コードを解析する際に開発者の特定を難しくする機能がある。これにより、サイバー攻撃の出所を追跡することが困難になる。

 ・他国への偽装: Marbleフレームワークには「言語挿入機能」があり、攻撃コードに中国語、ロシア語、韓国語、ペルシャ語、アラビア語などを含む文字列を挿入して、攻撃がこれらの国々から発信されたかのように見せかけることが可能である。このようにして、アメリカが他国に対して行ったサイバー攻撃を他国の仕業であると偽装する、いわゆる「False Flag(偽旗)作戦」が実行されると報告されている。

 サイバー諜報活動と「False Flag」作戦

 報告書によると、アメリカ政府は「Defend Forward(前方防御)」および「Hunt Forward(前方狩猟)」と呼ばれるサイバー戦略を推進しており、これにより敵対国の周辺地域にサイバー戦力を展開し、近接偵察やネットワーク侵入を行っている。これを実行するための戦術的なニーズに応じて、「Marble」フレームワークが開発された。

 アメリカのサイバー兵器開発に関与している機関は、このフレームワークを用いて他国のインフラを攻撃し、その責任を中国やロシア、イラン、北朝鮮などの敵対国に転嫁することを目的としている。報告書によると、このような「False Flag」作戦は、アメリカとファイブ・アイズ諸国が共有している「EFFECTS Operation(効果作戦)」の一部であり、この作戦には「情報操作」および「技術的妨害作戦」が含まれる。EFFECTS Operationの四つの原則(否認、妨害、劣化、欺瞞)に基づいて、サイバー攻撃の痕跡を他国に押し付けるための工作が行われているとされている。

 アメリカによる世界規模の監視

 報告書はさらに、アメリカがインターネットの重要な「チョークポイント」(データの通過点)である大西洋および太平洋の海底ケーブルの監視拠点を少なくとも7か所設置しており、これらの拠点を通じて全世界の通信データをリアルタイムで傍受していることを指摘している。これらの監視拠点は、NSA、FBI、そしてイギリスのNCSC(国家サイバーセキュリティセンター)によって運営されており、各データパケットが詳細に検査されているとされている。

 また、アメリカのNSAが「Office of Tailored Access Operations(TAO)」と呼ばれる部署を通じて世界中で大規模なコンピュータネットワーク侵入(CNE)作戦を実施し、特にアジア、東ヨーロッパ、アフリカ、中東、南アメリカの主要な都市や組織に対して50,000以上のスパイウェアを展開していることも報告されている。中国の主要な都市や組織もこの監視対象に含まれており、多くのネットワーク資産がNSAによって侵害されているとされている。

 同盟国へのスパイ活動

 アメリカのサイバー監視は敵対国だけでなく、フランスやドイツ、日本といった同盟国にも及んでいると報告されている。例えば、2004年から2012年にかけて、アメリカはフランスに対して長期的な諜報活動を行い、政府の政策、外交、財政、国際交流、インフラ建設、ビジネスなどに関する情報を収集していたとされている。この情報は、ファイブ・アイズ諸国とも共有されていたことが明らかにされている。

 アメリカのサイバー攻撃の政治的利用

 報告書では、アメリカ政府や企業(MicrosoftやCrowdStrikeなど)が、サイバー攻撃の責任を中国や他国に転嫁し、政治的利益を得るためにサイバー攻撃の帰属問題を意図的に歪めていると批判している。これらの企業は、米国政府や政治家に媚びるために、サイバー攻撃グループに「Typhoon」や「Panda」、「Dragon」などの地政学的な特徴を持つ名前を付けていると指摘されている。十分な証拠や技術的な分析に基づかないこうした命名は、政治的・商業的利益のために行われているとされている。

 国際的なサイバーセキュリティ協力の重要性

 報告書の最後では、サイバーセキュリティ分野における国際的な協力がますます重要であることが強調されている。地政学的な状況が複雑化する中、サイバーセキュリティの分野ではより多くの国際的な連携が必要であり、業界や研究機関がサイバー脅威の防止技術の研究に取り組むことが不可欠であると述べられている。

【要点】

 ・アメリカは「Volt Typhoon」というサイバー攻撃を中国の仕業として発表したが、中国はこれを捏造と主張。
 ・アメリカのNSAとCIAが開発した「Marble」フレームワークは、サイバー攻撃の痕跡を隠し、他国に責任を転嫁する技術を持つ。
 ・Marbleは、プログラムコード内の痕跡を消去し、中国語やロシア語などを挿入して攻撃を他国のものに見せかける機能がある。
 ・アメリカは「Defend Forward」および「Hunt Forward」戦略で他国にサイバー攻撃を仕掛け、False Flag(偽旗)作戦を実行している。
 ・アメリカは大西洋・太平洋の海底ケーブル監視拠点を設置し、世界中の通信データを監視している。
 ・NSAは世界中にスパイウェアを展開し、中国や他の国々に対して大規模なネットワーク侵入を行っている。
 ・アメリカは同盟国(フランス、ドイツ、日本)にもスパイ活動を行っており、政策やビジネス情報を収集していた。
 ・MicrosoftやCrowdStrikeなどの企業は、政治的利益のためにサイバー攻撃を中国などに帰属させる命名を行っている。
 ・国際的なサイバーセキュリティ協力が今後ますます重要になると報告書は強調している。

【引用・参照・底本】

GT Exclusive: Latest report shows US cyber weapon can ‘frame other countries’ for its own espionage operations GT 2024.10.14
https://www.globaltimes.cn/page/202410/1321156.shtml

中国:シリコンフォトニクス技術の開発において重要なマイルストーン2024年10月14日 23:48

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【概要】

 中国の国営半導体研究所「JFS Laboratory」は、シリコンフォトニクス技術の開発において重要な「マイルストーン」を達成したと発表した。これにより、現在のチップ設計技術における技術的な障壁を克服し、米国の制裁に直面している中国が自給自足を実現するための一歩を踏み出した。

 この研究所は、中国のフォトニクス研究の中心地である湖北省武漢に拠点を置き、政府から82億元(約12億米ドル)の資金を受けて2021年に設立された。JFS Laboratoryは、シリコンベースのチップにレーザー光源を統合して点灯させることに初めて成功したと報告している。これにより、中国は光エレクトロニクス技術の「いくつかの空白」を埋めたとされている。

 シリコンフォトニクスは、電気信号の代わりに光信号を利用して信号を伝送する技術であり、現在の技術が抱える物理的限界を解決することを目指している。この技術は、データやグラフィックス処理、人工知能(AI)のためのより優れたチップを作るための将来の技術と考えられており、世界の主要半導体企業もシリコンフォトニクスの進展に資源を投入している。しかし、科学的な進展を商業製品に変えることには依然として課題が残っている。
 
【詳細】

 中国の国営研究所であるJFS Laboratoryは、シリコンフォトニクス技術の分野で大きな成果を挙げた。この技術的成果は、米国による半導体分野での制裁に直面する中で、中国が自国のチップ設計技術における自立を目指すための重要な一歩となる可能性がある。

 1. JFS Laboratoryの背景

 JFS Laboratoryは、2021年に82億元(約12億米ドル)の政府資金で設立された研究機関で、武漢に拠点を置いている。武漢は中国のフォトニクス研究の主要な拠点であり、JFSはここでシリコンフォトニクス技術に関する研究を進めている。この研究所は、中国が半導体分野で技術的な突破口を切り開くための国家戦略の一環として設立された。シリコンフォトニクスは、その中でも特に注目される技術であり、現在の電子機器や通信技術の限界を突破する可能性がある。

 2. シリコンフォトニクス技術の意義

 シリコンフォトニクスとは、従来の電子信号ではなく光信号を用いてデータを伝送する技術であり、現在の電子機器におけるデータ処理や通信速度の限界を克服することが期待されている。具体的には、電気信号によるデータ伝送はその物理的制約により速度やエネルギー効率に限界があるが、光信号を用いることで大容量のデータを高速かつ低消費電力で伝送できるようになる。これにより、データセンターやスーパーコンピューター、さらにはAIチップに至るまで、多くの分野で技術的進化をもたらすことが期待されている。

 3. 今回の技術的ブレークスルー

 今回、JFS Laboratoryが達成した技術的ブレークスルーは、シリコンチップにレーザー光源を統合して点灯させることに成功したことである。この「レーザー光源の統合」は、中国において初めて成功したものであり、シリコンフォトニクス技術における重要な進展であるとされている。光エレクトロニクス技術において、レーザー光源をシリコンチップに組み込むことは、データ伝送における光信号の活用に不可欠なステップであり、これまで中国では達成されていなかった。

 この成功により、中国はシリコンフォトニクス技術の研究開発において他国と競争するための基盤を強化した。国営メディア「人民日報」は、この成果が光エレクトロニクス技術における「いくつかの空白を埋める」ものだと強調している。

 4. 米国の制裁と技術自立

 米国は中国に対して半導体関連の技術や製品の輸出制限を強化しており、特に高度なチップ設計技術や製造装置に対する依存を減らすことが中国の優先課題となっている。今回の技術的な進展は、こうした制裁の影響を回避し、自国での半導体技術の自給自足を目指す動きの一環として位置づけられている。

 5. シリコンフォトニクスの世界的動向

 シリコンフォトニクスは、グローバルな半導体産業においても注目されている技術であり、多くの企業が研究開発に取り組んでいる。特に、データ処理、グラフィックス処理、AIにおいてシリコンフォトニクス技術は、次世代のチップ製造技術として期待されている。しかし、技術的なブレークスルーを商業的な製品に転換することは依然として課題であり、各国の企業や研究機関がこの領域でしのぎを削っている。

 JFS Laboratoryの発表は、中国がこの競争の中で存在感を示し、技術的なリーダーシップを強化するための重要なステップであるといえる。

【要点】

1.JFS Laboratoryの背景

 ・2021年に武漢で設立された国営研究所。
 ・82億元(約12億米ドル)の政府資金で運営されている。
 ・シリコンフォトニクス技術の研究が主要な活動。

 2.シリコンフォトニクス技術の概要

 ・電気信号ではなく光信号を用いてデータを伝送する技術。
 ・高速かつ低消費電力のデータ伝送が可能で、従来の電気信号技術の物理的限界を克服する。
 ・データセンター、AIチップ、スーパーコンピューターなどに応用可能。

 3.技術的ブレークスルーの内容

 ・JFS Laboratoryは、シリコンチップにレーザー光源を統合して点灯させることに成功。
 ・これは中国における初めての成功であり、シリコンフォトニクス技術の重要な進展。
 ・人民日報は「光エレクトロニクス技術におけるいくつかの空白を埋めた」と報じた。

 4.米国の制裁と技術自立

 ・米国の半導体関連の制裁により、中国は技術自立を目指している。
 ・今回の成果は、制裁を克服し、自給自足を進めるための一歩。

 5.シリコンフォトニクスの世界的な競争状況

 ・世界の半導体業界でもシリコンフォトニクスは注目されている技術。
 ・データ処理やAI向けの次世代チップ製造に重要。
 ・科学的な進展を商業製品に変えることが依然として課題。

【引用・参照・底本】

Chip war: China claims breakthrough in silicon photonics that could clear technical hurdle SCMP 2024.10.06
https://www.scmp.com/tech/tech-war/article/3281156/chip-war-china-claims-breakthrough-silicon-photonics-could-clear-technical-hurdle?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-focus_sea_ru&utm_content=20241010&tpcc=enlz-focus_sea&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&tc=15