フランス政府は約60年ぶりに倒れる2024年12月08日 18:36

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【概要】  

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ミシェル・バルニエ首相および政府が不信任決議により倒れた後、困難な状況に直面している。バルニエ首相は、社会保障予算を議会の承認なしで強行しようとしたことが原因で、左派連合と極右の国民連合の両方から不信任決議を受け、その結果、首相の座を失った。この不信任決議により、フランス政府は約60年ぶりに倒れることとなった。

 マクロン大統領は、新たな首相を任命し、2025年度予算を議会で通過させる必要がある。大統領は今後数日以内に新たな首相を任命する意向を示しているが、具体的な候補者については明言していない。現在、マクロンは自派の中道勢力、社会党、保守派「共和党」のリーダーと妥協案を模索しているが、極右の国民連合、極左のフランス・アンブーなどは協議に応じていない。

 マクロンが今後選択できる選択肢としては、以下のようなものが考えられる。

 1.バルニエの再任または類似の人物の起用
 
 マクロンはバルニエを再任することができるが、これには極左と極右からの反発が予想される。代わりに、バルニエと同様の保守的・中道的な人物を選ぶ可能性もある。例として、保守派のフランソワ・バロワンやブルノ・ルテイヨーなどが挙げられているが、これらの人物も不信任決議の対象となる可能性がある。

 2.信頼できる近親者の任命

 マクロンは信頼できる側近を任命する可能性もある。例えば、バルニエ政権下で防衛大臣を務めたセバスチャン・ルコルヌが候補として浮上している。ルコルヌは、マクロンに忠実な人物であり、極右のマリーン・ルペンとも協力する可能性がある。

 3.センター派の人物を選ぶ

 フランソワ・バイロウのような中道派の人物も選択肢に挙がっている。バイロウは、社会党の一部を引き寄せる可能性があり、極右とは距離を置いているため、議会での支持を得やすいと考えられている。

 4.左派の人物の起用

 左派の人物を選ぶことも一つの方法だが、マクロンはこれを避けたいと考えている。社会党出身のベルナール・カズヌーブのような人物を選ぶことで、左派の議員を味方につけることは可能だが、税制改革や年金改革についての対立が生じる可能性が高い。

 新しい首相の選任は、フランスの政治危機を収束させ、2025年度予算を通過させるための重要な一手となる。しかし、どの選択肢を取っても、議会での反発や不信任決議のリスクは避けられない。

【詳細】

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、2024年12月に発生した政治危機に直面している。この危機は、ミシェル・バルニエ首相およびその政府が不信任決議により倒れたことから始まった。この不信任決議は、左派の「新しい共産主義連合」(NUPES)と極右の「国民連合」(RN)によって提出され、いずれも可決された結果、バルニエ首相とその内閣は崩壊した。フランスでは60年ぶりに政府が不信任決議で倒れたこととなる。

 1. 政治的背景

 バルニエ首相は、2019年から2024年にかけての欧州議会選挙で、極右勢力が大勝した後、マクロン大統領が国民議会(下院)の解散を決定し、早期選挙を実施した結果、政治的な混乱が生じた。選挙の結果、左派の「新しい共産主義連合」が多数の議席を獲得したが、単独で過半数を確保することはできなかった。この状況下で、マクロンはバルニエを首相に任命し、新たな政府を組織したが、バルニエの政策推進に関する立場が分裂し、最終的に政府は不信任決議を受けて倒れることとなった。

 2. 不信任決議の経緯

 バルニエ首相は、議会での支持を欠いたまま、社会保障予算案の提出を強行しようとした。この予算案は、議会での承認を得ることなく推し進められたため、左派と極右の両勢力から強い反発を受け、最終的に両勢力が共同で不信任決議を提出した。この決議は可決され、バルニエ政権は崩壊した。

 3. マクロン大統領の対応と選択肢

 現在、フランスには首相が不在であり、マクロン大統領は新たな首相を任命し、政治的混乱を収束させる必要がある。最も重要なのは、2025年度予算を議会で通過させることであり、そのためには安定した政府を構築する必要がある。マクロンは、以下のような選択肢を持っている。

 3.1 バルニエ再任または類似の人物を選ぶ

 マクロンは、バルニエを再任することができる。しかし、バルニエが推進した予算案は議会で反発を招き、再任した場合、再度不信任決議を受けるリスクがある。代わりに、バルニエと似たような政治的スタンスを持つ人物を選ぶことも考えられる。例えば、保守派のフランソワ・バロワン(共和党)やブルノ・ルテイヨー(元内務大臣)などが挙げられ、これらの人物は、マクロンの中道政策に沿った人物として適任とされる。しかし、両者も不信任決議の対象となる可能性があり、問題は依然として解決しない。

 3.2 マクロンの忠実な側近を任命

 マクロンが、自らの忠実な側近を選ぶ可能性もある。セバスチャン・ルコルヌ(元防衛大臣)はその一例であり、マクロンの2017年の大統領選挙からの支持者で、現在もその側近として知られている。ルコルヌは、マクロンの政策を強力に支持し、かつ左派や極右との対立を避けることができる人物として、政局を安定させる可能性がある。しかし、この選択肢もまた、議会での支持を得るためには慎重な調整が必要となる。

 3.3 センター派のベテラン政治家を起用

 フランソワ・バイロウは、マクロンの中道連合におけるベテラン政治家であり、これまで何度も大統領選に挑戦してきたが、未だに当選には至っていない。バイロウは、社会党や極右を相手にバランスを取る能力を持ち、議会で一定の支持を集める可能性がある。また、マクロンが求める「妥協の象徴」として、バイロウは適任と考えられている。

 3.4 左派の人物を任命

 マクロンは、左派の人物を任命することも考えられるが、この選択肢は避けたいと考えている。特に、社会党のベルナール・カズヌーブ(元首相)などは、左派の一部議員を取り込む可能性があるが、税制改革や年金改革を巡る対立が再燃する恐れがある。特に、マクロンが税制や年金改革を巡る左派の要求に応じることは難しく、左派を積極的に取り込むことは政権の安定性を損ねる可能性がある。

 4. 今後の課題

 マクロン大統領が新たな首相を任命することは、単に政治的な安定をもたらすだけでなく、2025年度の予算案を通過させるためにも重要である。もし、議会で予算案が通らなければ、フランスの国家財政は危機に直面し、公共サービスの運営に深刻な影響が及ぶ可能性がある。

 また、フランスの経済状況も懸念されており、政府の混乱が続くことで、国の債務が増加するリスクも高まっている。最終的には、マクロンがどのような人物を選び、政治的な合意を得るかが、フランスの未来を大きく左右することになる。

【要点】 

 ・フランスの政治危機: 2024年12月、エマニュエル・マクロン大統領の首相ミシェル・バルニエ政権が不信任決議により崩壊。
 ・不信任決議の原因: バルニエ首相が強行した社会保障予算案に対し、左派の「新しい共産主義連合」(NUPES)と極右の「国民連合」(RN)が反発し、不信任決議を提出。
 ・議会の反応: 不信任決議が可決され、バルニエ政権が崩壊。60年ぶりの政府崩壊となる。
 
 ・マクロン大統領の選択肢:

 1.バルニエ再任: 再任しても不信任決議を受けるリスクがある。
 2.似た人物の選任: バルニエに似た政治スタンスを持つ人物(例:フランソワ・バロワン、ブルノ・ルテイヨー)を任命する可能性。
 3.マクロンの忠実な側近の選任: セバスチャン・ルコルヌなどの側近を任命する可能性。
 4.センター派のベテラン政治家: フランソワ・バイロウなどのベテランを選び、政局を安定させる。
 5.左派の人物の任命: 左派の人物を任命する選択肢もあるが、税制改革や年金改革で対立が予想される。

 ・課題

 ・新首相の任命による政治的安定の確保。
 ・2025年度予算案の通過が必要。
 ・財政危機の回避と公共サービスの運営の維持が重要。

【引用・参照・底本】

France’s PM and government have fallen, so what are Macron’s next options? FRANCE24 2024.12.06
https://www.france24.com/en/europe/20241206-france-s-pm-and-government-have-fallen-so-what-are-macron-s-next-options?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020241206&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

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