「パキスタン・ストリーム・ガスパイプライン(PSGP)」プロジェクト ― 2024年12月28日 23:30
【概要】
パキスタンのエネルギー大臣アワイス・レガリがロシアが資金提供し建設を希望する「パキスタン・ストリーム・ガスパイプライン(PSGP)」プロジェクトに関する南アジア諸国の参加可能性について述べたことに対する批判的な視点を提供している。レガリは、交渉がまだ完了していない理由の一つとして、他の南アジア諸国がプロジェクトに参加する可能性を挙げている。しかし、この記事では、この考えが地理的理由から実現が難しいと指摘されている。
インドはすでにLNGターミナルや精製所、既存のパイプラインインフラを持っており、パキスタンとのエネルギー協力には政治的な障害がある。また、パキスタンはアフガニスタンとしか国境を接しておらず、アフガニスタンとの関係は緊張している。さらに、ロシアはアフガニスタンを経由してパキスタンやインド向けの石油・ガス輸出のためのパイプライン計画を持っており、これがPSGPとは異なるルートとして機能する可能性がある。
ネパール、バングラデシュ、ブータンにPSGPを拡張することは、インドを通過する必要があるため、政治的・経済的に非現実的であり、モルディブやスリランカは島嶼国家であるため、他の南アジア諸国が参加する可能性は低い。したがって、レガリの発言は事実とは異なり、パキスタンとロシアの間に存在する可能性のある深刻な違いを隠すための言い訳であるとする見解が示されている。
PSGPが他国に拡大することは現実的ではなく、パキスタンとロシアの間で価格やアメリカの圧力といった政治的障害が存在する可能性を指摘している。最終的には、アメリカの影響力がパキスタンの軍事・政治エリートに対して強いため、PSGPの実現が難しいと結論づけている。
【詳細】
パキスタンのエネルギー大臣アワイス・レガリの発言に対して批判的な視点が示されている。レガリは、ロシアが支援し建設を希望する「パキスタン・ストリーム・ガスパイプライン(PSGP)」プロジェクトについて、南アジア諸国が参加する可能性を示唆した。しかし、その可能性が地理的・政治的な理由から非常に低いと指摘されている。
1. インドの現状と政治的障害
インドはすでに、液化天然ガス(LNG)のターミナルや精製所、パイプラインインフラを整備しており、エネルギーの供給網が既に確立されている。これにより、インドは自国内でのエネルギー供給を確保しているため、PSGPのような新たなガスパイプラインに対する需要は低いと考えられる。さらに、インドとパキスタンは長年にわたる政治的な対立を抱えており、エネルギー協力を進めるための政治的意志が存在しない。したがって、インドがPSGPに参加する可能性は極めて低い。
2. アフガニスタンとパキスタンの関係
パキスタンはアフガニスタンと国境を接しており、アフガニスタンを経由してロシアからのエネルギー輸送が行われる可能性がある。このため、アフガニスタンはPSGPのルートとして重要な位置を占めるが、両国の関係は政治的に緊張している。アフガニスタンとの安定した協力が前提となるため、ここでも大きな障害が存在する。
3. 他の南アジア諸国の参加は非現実的
ネパール、バングラデシュ、ブータンといった南アジア諸国にPSGPを拡大することは、インドを通過しなければならないため、政治的・経済的に非現実的である。これらの国々はインフラが整備されておらず、インドを通過することに関して多くの障害がある。また、モルディブやスリランカは島嶼国家であるため、PSGPのような大規模な陸上パイプラインを利用することは不可能である。
4. ロシアのアフガニスタン経由計画
ロシアはすでにアフガニスタンを経由してパキスタン向けの石油・ガス輸出パイプラインを計画しているとされており、これによりロシアからパキスタンへのエネルギー供給が実現する可能性がある。この計画が実行されると、PSGPとは別のルートでエネルギーが供給されることになる。
5. アメリカの影響と制裁
アメリカがパキスタンに対して持つ影響力にも触れている。アメリカは、パキスタンがロシアとのエネルギー協力を進めることを阻止するために制裁を加える可能性があり、これがPSGPの進展に大きな影響を与えると考えられる。特に、パキスタンが自国の高価なLNGを輸出することを優先する場合、ロシアからの安価なガスを受け入れることに対して抵抗がある可能性がある。このような状況では、PSGPの実現は困難になる。
6. 政治的障害と価格問題
パキスタンとロシアの間での価格交渉や、アメリカからの政治的圧力が、PSGPの進展を遅らせている可能性がある。特に、価格問題やアメリカの制裁が、両国間での合意形成を妨げていると考えられている。パキスタンは安価で信頼性の高いエネルギー供給を必要としているが、アメリカの影響力がそれを実現することを難しくしている。
結論
パキスタンとロシアの間にある政治的・地理的な障害が、PSGPプロジェクトの実現を妨げる大きな要因であると指摘されている。特に、インドとの関係やアメリカの影響力が、他の南アジア諸国の参加を実現不可能にしていると述べられている。また、価格交渉や制裁問題が進展を遅らせていることも強調されており、PSGPが将来的に実現するかどうかは依然として不確実であると結論付けられている。
【要点】
・インドのエネルギーインフラ: インドはすでにLNGターミナルやパイプラインが整備されており、PSGPに参加する必要がない。また、インドとパキスタンの間には政治的な対立があり、エネルギー協力は難しい。
・アフガニスタンとの関係: パキスタンとアフガニスタンは国境を接しており、アフガニスタン経由でロシアのエネルギーを輸送する可能性があるが、両国の関係は緊張している。
・他の南アジア諸国の参加は非現実的: ネパール、バングラデシュ、ブータンはインフラが整備されていないため、インドを通過する必要があり、参加は現実的でない。また、モルディブやスリランカは島嶼国家であり、パイプラインの利用が不可能。
・ロシアの別ルート計画: ロシアはアフガニスタン経由でパキスタン向けの石油・ガスパイプラインを計画しており、PSGPとは別のルートでエネルギー供給が可能。
・アメリカの影響と制裁: アメリカはパキスタンに対して制裁を加える可能性があり、これがPSGPの進展を妨げる要因となる。また、パキスタンは自国の高価なLNGを輸出したいため、ロシアからの安価なガス受け入れに抵抗がある。
・価格交渉と政治的障害: パキスタンとロシア間で価格や制裁に関する交渉が障害となっており、PSGPの進展に影響を与えている。
・結論: 地理的・政治的障害やアメリカの影響により、PSGPが他の南アジア諸国に拡大する可能性は低く、プロジェクトの実現は依然として不確実である。
【引用・参照・底本】
Fact Check: Other South Asian States Are Unlikely To Join The Pakistan Stream Gas Pipeline Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.28
https://korybko.substack.com/p/fact-check-other-south-asian-states?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153707156&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
パキスタンのエネルギー大臣アワイス・レガリがロシアが資金提供し建設を希望する「パキスタン・ストリーム・ガスパイプライン(PSGP)」プロジェクトに関する南アジア諸国の参加可能性について述べたことに対する批判的な視点を提供している。レガリは、交渉がまだ完了していない理由の一つとして、他の南アジア諸国がプロジェクトに参加する可能性を挙げている。しかし、この記事では、この考えが地理的理由から実現が難しいと指摘されている。
インドはすでにLNGターミナルや精製所、既存のパイプラインインフラを持っており、パキスタンとのエネルギー協力には政治的な障害がある。また、パキスタンはアフガニスタンとしか国境を接しておらず、アフガニスタンとの関係は緊張している。さらに、ロシアはアフガニスタンを経由してパキスタンやインド向けの石油・ガス輸出のためのパイプライン計画を持っており、これがPSGPとは異なるルートとして機能する可能性がある。
ネパール、バングラデシュ、ブータンにPSGPを拡張することは、インドを通過する必要があるため、政治的・経済的に非現実的であり、モルディブやスリランカは島嶼国家であるため、他の南アジア諸国が参加する可能性は低い。したがって、レガリの発言は事実とは異なり、パキスタンとロシアの間に存在する可能性のある深刻な違いを隠すための言い訳であるとする見解が示されている。
PSGPが他国に拡大することは現実的ではなく、パキスタンとロシアの間で価格やアメリカの圧力といった政治的障害が存在する可能性を指摘している。最終的には、アメリカの影響力がパキスタンの軍事・政治エリートに対して強いため、PSGPの実現が難しいと結論づけている。
【詳細】
パキスタンのエネルギー大臣アワイス・レガリの発言に対して批判的な視点が示されている。レガリは、ロシアが支援し建設を希望する「パキスタン・ストリーム・ガスパイプライン(PSGP)」プロジェクトについて、南アジア諸国が参加する可能性を示唆した。しかし、その可能性が地理的・政治的な理由から非常に低いと指摘されている。
1. インドの現状と政治的障害
インドはすでに、液化天然ガス(LNG)のターミナルや精製所、パイプラインインフラを整備しており、エネルギーの供給網が既に確立されている。これにより、インドは自国内でのエネルギー供給を確保しているため、PSGPのような新たなガスパイプラインに対する需要は低いと考えられる。さらに、インドとパキスタンは長年にわたる政治的な対立を抱えており、エネルギー協力を進めるための政治的意志が存在しない。したがって、インドがPSGPに参加する可能性は極めて低い。
2. アフガニスタンとパキスタンの関係
パキスタンはアフガニスタンと国境を接しており、アフガニスタンを経由してロシアからのエネルギー輸送が行われる可能性がある。このため、アフガニスタンはPSGPのルートとして重要な位置を占めるが、両国の関係は政治的に緊張している。アフガニスタンとの安定した協力が前提となるため、ここでも大きな障害が存在する。
3. 他の南アジア諸国の参加は非現実的
ネパール、バングラデシュ、ブータンといった南アジア諸国にPSGPを拡大することは、インドを通過しなければならないため、政治的・経済的に非現実的である。これらの国々はインフラが整備されておらず、インドを通過することに関して多くの障害がある。また、モルディブやスリランカは島嶼国家であるため、PSGPのような大規模な陸上パイプラインを利用することは不可能である。
4. ロシアのアフガニスタン経由計画
ロシアはすでにアフガニスタンを経由してパキスタン向けの石油・ガス輸出パイプラインを計画しているとされており、これによりロシアからパキスタンへのエネルギー供給が実現する可能性がある。この計画が実行されると、PSGPとは別のルートでエネルギーが供給されることになる。
5. アメリカの影響と制裁
アメリカがパキスタンに対して持つ影響力にも触れている。アメリカは、パキスタンがロシアとのエネルギー協力を進めることを阻止するために制裁を加える可能性があり、これがPSGPの進展に大きな影響を与えると考えられる。特に、パキスタンが自国の高価なLNGを輸出することを優先する場合、ロシアからの安価なガスを受け入れることに対して抵抗がある可能性がある。このような状況では、PSGPの実現は困難になる。
6. 政治的障害と価格問題
パキスタンとロシアの間での価格交渉や、アメリカからの政治的圧力が、PSGPの進展を遅らせている可能性がある。特に、価格問題やアメリカの制裁が、両国間での合意形成を妨げていると考えられている。パキスタンは安価で信頼性の高いエネルギー供給を必要としているが、アメリカの影響力がそれを実現することを難しくしている。
結論
パキスタンとロシアの間にある政治的・地理的な障害が、PSGPプロジェクトの実現を妨げる大きな要因であると指摘されている。特に、インドとの関係やアメリカの影響力が、他の南アジア諸国の参加を実現不可能にしていると述べられている。また、価格交渉や制裁問題が進展を遅らせていることも強調されており、PSGPが将来的に実現するかどうかは依然として不確実であると結論付けられている。
【要点】
・インドのエネルギーインフラ: インドはすでにLNGターミナルやパイプラインが整備されており、PSGPに参加する必要がない。また、インドとパキスタンの間には政治的な対立があり、エネルギー協力は難しい。
・アフガニスタンとの関係: パキスタンとアフガニスタンは国境を接しており、アフガニスタン経由でロシアのエネルギーを輸送する可能性があるが、両国の関係は緊張している。
・他の南アジア諸国の参加は非現実的: ネパール、バングラデシュ、ブータンはインフラが整備されていないため、インドを通過する必要があり、参加は現実的でない。また、モルディブやスリランカは島嶼国家であり、パイプラインの利用が不可能。
・ロシアの別ルート計画: ロシアはアフガニスタン経由でパキスタン向けの石油・ガスパイプラインを計画しており、PSGPとは別のルートでエネルギー供給が可能。
・アメリカの影響と制裁: アメリカはパキスタンに対して制裁を加える可能性があり、これがPSGPの進展を妨げる要因となる。また、パキスタンは自国の高価なLNGを輸出したいため、ロシアからの安価なガス受け入れに抵抗がある。
・価格交渉と政治的障害: パキスタンとロシア間で価格や制裁に関する交渉が障害となっており、PSGPの進展に影響を与えている。
・結論: 地理的・政治的障害やアメリカの影響により、PSGPが他の南アジア諸国に拡大する可能性は低く、プロジェクトの実現は依然として不確実である。
【引用・参照・底本】
Fact Check: Other South Asian States Are Unlikely To Join The Pakistan Stream Gas Pipeline Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.28
https://korybko.substack.com/p/fact-check-other-south-asian-states?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153707156&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email