ロシア:中距離ミサイル配備に関するモラトリアムを撤回 ― 2024年12月30日 18:53
【概要】
ロシア外相のセルゲイ・ラブロフは、短距離および中距離ミサイルの配備に関するモラトリアムを撤回する意向を示した。この発言は、ロシア国営通信RIAノーボスチとのインタビューにおいて行われたものである。ラブロフ外相は、アメリカ合衆国とNATOによる戦略的分野での行動を「不安定化させるもの」と評価し、それに伴う脅威の進展を考慮した結果であると述べている。
具体的には、ラブロフ外相は以下のように発言している。「今日の状況では、短距離および中距離ミサイルの配備に関するロシアのモラトリアムがもはや現実的ではないことが明白であり、それを放棄せざるを得ない。アメリカはロシアおよび中国からの警告を傲慢に無視し、実際にこの種の兵器を世界各地に配備し始めている。」と述べた。
アメリカは2019年に中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱している。ロシアはこれまで、アメリカが同種の兵器を配備しない限り、自国も配備しない方針を維持してきた。しかし、アメリカが各地域での配備を進めていることを受け、この方針を再検討するに至ったとみられる。
この決定は、特に短距離および中距離ミサイルの配備が戦略的安定性に及ぼす影響をめぐり、国際的な懸念を引き起こす可能性がある。
【詳細】
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が短距離および中距離ミサイルの配備に関するモラトリアムを撤回する方針を示した背景には、アメリカとNATOの戦略的な行動が関係している。この発言は、ロシアの安全保障政策にとって重要な転換点となる可能性がある。
モラトリアム撤回の背景
ラブロフ外相は、アメリカおよびNATOによる「不安定化させる行動」を問題視している。彼はこれらの行動がロシアの安全保障環境に新たな脅威をもたらしていると指摘しており、アメリカが世界各地で短距離および中距離ミサイルを配備していることを具体例として挙げている。特に、これらの兵器の配備がアジアやヨーロッパなどの戦略的に重要な地域で進んでいることを強調している。
中距離核戦力(INF)全廃条約の経緯
INF条約は、1987年にアメリカとソ連(当時)との間で締結され、500~5500キロメートルの射程を持つ地上発射型ミサイルの開発および配備を禁止するものであった。しかし、アメリカは2019年にこの条約を破棄した。破棄の理由として、ロシアが条約に違反しているとアメリカが主張した一方で、ロシアはこれを否定し、アメリカ側のミサイル防衛システムや兵器配備が条約の精神に反すると反論していた。この条約破棄以降、双方のミサイル開発と配備が制限を受けなくなった。
ロシアの対応
ロシアはINF条約破棄後も、自国のモラトリアムを維持する方針を示していた。これはアメリカが同様の兵器を配備しない限り、ロシアも配備しないという姿勢を取ることで、戦略的安定性を維持しようとするものであった。しかし、ラブロフ外相の発言によれば、アメリカがこの原則を無視し、短距離および中距離ミサイルを配備しているため、ロシア側もモラトリアムを維持する理由がなくなったという認識を示している。
軍事的・地政学的影響
短距離および中距離ミサイルは、その射程の特性上、特にヨーロッパやアジア太平洋地域での戦略的バランスに大きな影響を及ぼす。この種のミサイルは核弾頭を搭載可能であるため、抑止力としての役割を果たす一方、対立の激化や軍拡競争を引き起こすリスクがある。
ロシアがモラトリアムを撤回し、ミサイルを配備する場合、特にヨーロッパ諸国が影響を受けると考えられる。NATO加盟国にとっては、これが安全保障上の課題を増加させる一方、ロシア側はこれを自国の防衛と戦略的優位性を確保するための措置であると説明している。
今後の展開
ラブロフ外相の発言は、アメリカおよびNATOに対する強い警告として受け取られる可能性がある。また、ロシア国内では、この決定が軍事力を強化し、国家の安全保障を高めるものとして支持されるかもしれない。一方で、国際社会からは、ミサイル配備による緊張の高まりや軍拡競争の再燃を懸念する声が上がることが予想される。
この状況は、アメリカ、NATO、そしてロシアの間で新たな軍縮交渉を模索する契機となる可能性もあるが、現在の対立的な状況を考慮すると、進展は期待しにくい。
【要点】
モラトリアム撤回の背景
・ロシア外相ラブロフは短距離および中距離ミサイル配備に関するモラトリアムを撤回する意向を表明。
・アメリカおよびNATOの「不安定化行動」を理由に挙げ、これがロシアの安全保障環境に新たな脅威をもたらしていると指摘。
・アメリカが世界各地で短距離・中距離ミサイルを配備していることが具体的な理由とされた。
INF条約(中距離核戦力全廃条約)の経緯
・1987年にアメリカとソ連(当時)が締結し、500~5500キロメートルの地上発射型ミサイルの開発・配備を禁止。
・アメリカは2019年に条約を破棄し、理由としてロシアの条約違反を主張。
・ロシアはこれを否定し、アメリカの行動が条約精神に反していると反論していた。
ロシアの対応方針
・アメリカが同種の兵器を配備しない限り自国も配備しないとのモラトリアムを維持してきた。
・アメリカがこれを無視し、各地域で兵器を配備しているため、モラトリアム撤回を決定。
軍事的・地政学的影響
・短距離・中距離ミサイルはヨーロッパやアジア太平洋地域での戦略バランスに大きな影響を与える。
・核弾頭搭載可能なこれらのミサイルは、抑止力の向上や軍拡競争のリスクを伴う。
・NATO加盟国にとっては安全保障上の課題を増加させる一方、ロシア側は自国防衛の必要性を主張。
今後の展開
・ロシアのモラトリアム撤回は、アメリカおよびNATOへの強い警告とみなされる可能性。
・国際社会からは緊張の高まりや軍拡競争の再燃を懸念する声が上がる見通し。
・新たな軍縮交渉の可能性もあるが、現状の対立状況では進展は困難と予想される。
【引用・参照・底本】
Russia will abandon moratorium on deploying short- and medium-range missiles, FM says FRANCE24 2024.12.29
https://www.france24.com/en/europe/20241229-russia-will-abandon-moratorium-on-deploying-short-and-medium-range-missiles-fm-says?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020251229&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
ロシア外相のセルゲイ・ラブロフは、短距離および中距離ミサイルの配備に関するモラトリアムを撤回する意向を示した。この発言は、ロシア国営通信RIAノーボスチとのインタビューにおいて行われたものである。ラブロフ外相は、アメリカ合衆国とNATOによる戦略的分野での行動を「不安定化させるもの」と評価し、それに伴う脅威の進展を考慮した結果であると述べている。
具体的には、ラブロフ外相は以下のように発言している。「今日の状況では、短距離および中距離ミサイルの配備に関するロシアのモラトリアムがもはや現実的ではないことが明白であり、それを放棄せざるを得ない。アメリカはロシアおよび中国からの警告を傲慢に無視し、実際にこの種の兵器を世界各地に配備し始めている。」と述べた。
アメリカは2019年に中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱している。ロシアはこれまで、アメリカが同種の兵器を配備しない限り、自国も配備しない方針を維持してきた。しかし、アメリカが各地域での配備を進めていることを受け、この方針を再検討するに至ったとみられる。
この決定は、特に短距離および中距離ミサイルの配備が戦略的安定性に及ぼす影響をめぐり、国際的な懸念を引き起こす可能性がある。
【詳細】
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が短距離および中距離ミサイルの配備に関するモラトリアムを撤回する方針を示した背景には、アメリカとNATOの戦略的な行動が関係している。この発言は、ロシアの安全保障政策にとって重要な転換点となる可能性がある。
モラトリアム撤回の背景
ラブロフ外相は、アメリカおよびNATOによる「不安定化させる行動」を問題視している。彼はこれらの行動がロシアの安全保障環境に新たな脅威をもたらしていると指摘しており、アメリカが世界各地で短距離および中距離ミサイルを配備していることを具体例として挙げている。特に、これらの兵器の配備がアジアやヨーロッパなどの戦略的に重要な地域で進んでいることを強調している。
中距離核戦力(INF)全廃条約の経緯
INF条約は、1987年にアメリカとソ連(当時)との間で締結され、500~5500キロメートルの射程を持つ地上発射型ミサイルの開発および配備を禁止するものであった。しかし、アメリカは2019年にこの条約を破棄した。破棄の理由として、ロシアが条約に違反しているとアメリカが主張した一方で、ロシアはこれを否定し、アメリカ側のミサイル防衛システムや兵器配備が条約の精神に反すると反論していた。この条約破棄以降、双方のミサイル開発と配備が制限を受けなくなった。
ロシアの対応
ロシアはINF条約破棄後も、自国のモラトリアムを維持する方針を示していた。これはアメリカが同様の兵器を配備しない限り、ロシアも配備しないという姿勢を取ることで、戦略的安定性を維持しようとするものであった。しかし、ラブロフ外相の発言によれば、アメリカがこの原則を無視し、短距離および中距離ミサイルを配備しているため、ロシア側もモラトリアムを維持する理由がなくなったという認識を示している。
軍事的・地政学的影響
短距離および中距離ミサイルは、その射程の特性上、特にヨーロッパやアジア太平洋地域での戦略的バランスに大きな影響を及ぼす。この種のミサイルは核弾頭を搭載可能であるため、抑止力としての役割を果たす一方、対立の激化や軍拡競争を引き起こすリスクがある。
ロシアがモラトリアムを撤回し、ミサイルを配備する場合、特にヨーロッパ諸国が影響を受けると考えられる。NATO加盟国にとっては、これが安全保障上の課題を増加させる一方、ロシア側はこれを自国の防衛と戦略的優位性を確保するための措置であると説明している。
今後の展開
ラブロフ外相の発言は、アメリカおよびNATOに対する強い警告として受け取られる可能性がある。また、ロシア国内では、この決定が軍事力を強化し、国家の安全保障を高めるものとして支持されるかもしれない。一方で、国際社会からは、ミサイル配備による緊張の高まりや軍拡競争の再燃を懸念する声が上がることが予想される。
この状況は、アメリカ、NATO、そしてロシアの間で新たな軍縮交渉を模索する契機となる可能性もあるが、現在の対立的な状況を考慮すると、進展は期待しにくい。
【要点】
モラトリアム撤回の背景
・ロシア外相ラブロフは短距離および中距離ミサイル配備に関するモラトリアムを撤回する意向を表明。
・アメリカおよびNATOの「不安定化行動」を理由に挙げ、これがロシアの安全保障環境に新たな脅威をもたらしていると指摘。
・アメリカが世界各地で短距離・中距離ミサイルを配備していることが具体的な理由とされた。
INF条約(中距離核戦力全廃条約)の経緯
・1987年にアメリカとソ連(当時)が締結し、500~5500キロメートルの地上発射型ミサイルの開発・配備を禁止。
・アメリカは2019年に条約を破棄し、理由としてロシアの条約違反を主張。
・ロシアはこれを否定し、アメリカの行動が条約精神に反していると反論していた。
ロシアの対応方針
・アメリカが同種の兵器を配備しない限り自国も配備しないとのモラトリアムを維持してきた。
・アメリカがこれを無視し、各地域で兵器を配備しているため、モラトリアム撤回を決定。
軍事的・地政学的影響
・短距離・中距離ミサイルはヨーロッパやアジア太平洋地域での戦略バランスに大きな影響を与える。
・核弾頭搭載可能なこれらのミサイルは、抑止力の向上や軍拡競争のリスクを伴う。
・NATO加盟国にとっては安全保障上の課題を増加させる一方、ロシア側は自国防衛の必要性を主張。
今後の展開
・ロシアのモラトリアム撤回は、アメリカおよびNATOへの強い警告とみなされる可能性。
・国際社会からは緊張の高まりや軍拡競争の再燃を懸念する声が上がる見通し。
・新たな軍縮交渉の可能性もあるが、現状の対立状況では進展は困難と予想される。
【引用・参照・底本】
Russia will abandon moratorium on deploying short- and medium-range missiles, FM says FRANCE24 2024.12.29
https://www.france24.com/en/europe/20241229-russia-will-abandon-moratorium-on-deploying-short-and-medium-range-missiles-fm-says?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020251229&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D