米国:自虐的制裁2025年01月11日 19:45

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【桃源寸評】

 米国、<肉を斬らせて骨を斬る>積りが、何故か<骨折り損の草臥儲け>のようだ。

 まぁ、右倣えの事なかれ主義日本も、同様である。資源の無い国が、資源のある国を制裁するなんて、滑稽な話である。

 よって国民はインフレに苦しめられている。

【寸評 完】

【概要】

 アメリカがウクライナ問題に関連してロシアに課した制裁が、アメリカ経済にどのような影響を及ぼしたかを分析している。具体的には、ロシアの外貨準備資産を差し押さえたことが、外国の中央銀行によるアメリカ国債の保有削減を引き起こし、それがアメリカ財務省債券(Treasuries)の利回り上昇を招いたという内容である。

 以下、記事の主なポイントを忠実に記述する。

 1.アメリカ国債利回りの上昇

 アメリカ国債利回りの上昇は、株価の下落、ドル高、住宅建設など金利に依存する経済活動の停滞を引き起こしている。利回り上昇により、アメリカ政府の財政赤字(GDP比6%以上)も拡大し、2021年には4000億ドルだった連邦債務の利払いが1兆ドルに増加した。

 2.外国中央銀行のアメリカ国債売却

 ロシアの外貨準備資産6000億ドルの半分を差し押さえたことにより、中国、インド、サウジアラビア、トルコを含む諸外国の中央銀行がドル資産から金など他の資産に資金を移した。この動きがアメリカ国債利回りを約0.8%(80ベーシスポイント)押し上げたとされている。

 3.制裁の経済的影響

 ロシア資産の差し押さえは、ドル準備資産システムの信頼を損ない、アメリカ財務省債務の信用を揺るがした。外国中央銀行によるアメリカ国債保有削減は、予想外のインフレやドルの減価に対する保険としての金の価値を高め、金価格がアメリカ国債利回りの上昇にもかかわらず上昇する結果を招いた。

 4.過去との比較

 2007年から2012年の金融危機時には、中国をはじめとする外国中央銀行がアメリカ国債の保有を2兆ドルから4兆ドルに増やし、アメリカ経済を支えた。しかし、新型コロナウイルス危機以降、外国中央銀行はアメリカ国債の保有を減らし、これが現在の金利上昇の一因となっている。

 5.経済学的検証

 外国中央銀行のアメリカ国債保有削減は、インフレ連動債(TIPS)の利回り上昇に直接的な影響を与えている。統計的に有意な相関が確認されており、この変化が利回り上昇を予測する要因となっている。

 結論

 ロシア資産の差し押さえを含む制裁は、ロシアに対して直接的な打撃を与えたものの、結果的にアメリカ経済における国債信頼の低下、借入コストの上昇、ドル準備資産システムへの不信感を引き起こしたとされている。このように、制裁の逆効果が顕著に現れている。

 アメリカが制裁を通じてロシア経済を弱体化させる一方で、世界の金融市場におけるアメリカの立場を自ら損ねたという観点を中心に論じている。

【詳細】
 
 アメリカがロシアに対して行った制裁措置、特にロシアの外貨準備の差し押さえが、アメリカ経済および国際金融市場に与えた長期的な影響について詳細に分析している。この制裁措置が、アメリカ自身の財政コストを引き上げ、ドル基軸通貨体制への信頼を損なう結果を招いたという議論を中心に展開している。

 背景と制裁措置

 ロシアが2022年2月にウクライナへ侵攻した直後、アメリカとその同盟国はロシア経済に圧力をかけるために大規模な制裁を実施した。その一環として、ロシア中央銀行が保有していた約6000億ドルの外貨準備資産のうち、約半分を差し押さえた。この措置は、ロシア経済の混乱を狙ったものではあるが、予期せぬ形で国際的な影響を引き起こした。

 外国中央銀行の行動変化

 ロシアの外貨準備の差し押さえは、外国の中央銀行に対し、アメリカ国債(Treasuries)やドル資産が将来的に政治的リスクを伴う可能性があるとの警戒心を抱かせた。その結果、多くの中央銀行が外貨準備の構成を見直し、ドル資産の割合を減らし、金などの資産にシフトした。以下の諸国が具体的な行動を取ったとされている:

 ・中国:既に米中関係の緊張が高まっている中でドル依存を減らし、自国の外貨準備を多様化。
 ・インド、サウジアラビア、トルコ:ドル資産を減らす一方、金や他の安全資産への移行を進める。

 これにより、アメリカ国債の需要が減少し、その利回りが上昇する結果を招いた。

 アメリカ国債利回りへの影響

 ロシアの資産差し押さえが引き金となり、外国中央銀行がアメリカ国債の保有を削減したことが、アメリカ国債利回りの上昇を引き起こした。具体的には:

 ・10年物TIPS(インフレ連動債):外国中央銀行のアメリカ国債保有削減が、利回りを約0.8%(80ベーシスポイント)押し上げたとされる。
 ・相関関係の検証:経済学的分析では、外国中央銀行による保有削減がTIPS利回りの上昇を先行的に予測していることが確認されている。この因果関係は統計的に有意である。

 また、この動きは過去の金融危機時(2007年~2012年)とは対照的である。当時は外国中央銀行がアメリカ国債保有を増やし、アメリカの金融安定を支えたが、現在ではその逆の動きが進行している。

 アメリカ経済への具体的な影響

 アメリカ国債利回りの上昇は、国内経済に以下のような悪影響をもたらしている:

 1.連邦政府の利払い増加

 アメリカ連邦政府の債務利払いは、2021年の4000億ドルから2025年には1兆ドルに増加。これは財政赤字を更に悪化させ、2025年現在の財政赤字はGDPの6%以上に達している。

 2.住宅市場への影響

 高金利が住宅ローン金利を押し上げ、住宅建設や不動産取引が停滞している。これが経済全体の成長を抑制している。

 3.ドル高による輸出競争力の低下

 アメリカ国債の利回り上昇によりドルが高騰し、アメリカ製品の輸出競争力が低下している。

 金価格とアメリカ国債の乖離

 興味深い点として、金価格とアメリカ国債利回り(TIPS利回り)の関係性が2022年以降に変化している。通常、金とTIPSはインフレリスクに対するヘッジ手段として同じ方向に動くが、2022年以降、金価格はTIPS利回りの上昇にもかかわらず大幅に上昇した。この背景には以下が挙げられる。

 ・アメリカ国債が政治的リスクを伴う資産と見なされるようになった。
 ・金は中央銀行の金庫内で安全に保管でき、没収リスクがない。

 結論

 ロシアの外貨準備差し押さえが短期的にはロシア経済に打撃を与えたものの、長期的には以下のような深刻な逆効果をアメリカにもたらしたと結論付けている:

 1.外国中央銀行のアメリカ国債離れによるドル基軸通貨体制の信用低下。
 2.アメリカ国債利回りの上昇による財政コストの増加。
 3金融市場の変動とアメリカ経済の成長鈍化。

 これらの現象は、制裁が単なる外交政策の道具ではなく、予期せぬ形で経済的なブーメラン効果をもたらすことを示唆している。

【要点】
 
 ロシア外貨準備差し押さえによる影響

 背景

 ・アメリカと同盟国は2022年にロシアの外貨準備約6000億ドルのうち半分を差し押さえ。
 ・目的はロシア経済への打撃だが、国際金融市場とアメリカ経済にも影響が及ぶ。

 外国中央銀行の行動

 ・アメリカ国債(ドル資産)への信頼低下により、以下の行動を取る国が増加:

  ⇨ 中国、インド、サウジアラビア、トルコなどがドル資産を減らし、金などの安全資産にシフト。

 ・アメリカ国債の需要低下→利回り上昇。

 アメリカ国債利回りの変化

 ・外国中央銀行の売却がTIPS(インフレ連動債)利回りを約0.8%上昇させる。
 ・利回り上昇は、外国中央銀行の売却行動が主因であると分析。

 アメリカ経済への悪影響

 1.連邦政府の利払い増加

 ・債務利払い:2021年の4000億ドル→2025年には1兆ドルに増加。
 ・財政赤字がGDPの6%以上に拡大。

 2.住宅市場の停滞

 ・高金利により住宅ローンが上昇、不動産市場が縮小。

 3.輸出競争力の低下

 ・ドル高による輸出品の価格競争力が低下。

 金価格とアメリカ国債の乖離

 1.金価格は2022年以降上昇し続け、アメリカ国債(TIPS利回り)との相関が崩れる。

 ・金は没収リスクがない安全資産として注目。
 ・アメリカ国債は政治的リスクを伴う資産と認識される。

 結論

 ・制裁がアメリカに以下の逆効果をもたらした:

 1.ドル基軸通貨体制への信頼低下。
 2.財政コストの増加。
 3.経済成長の鈍化。

 ・制裁は予期せぬ経済的ブーメラン効果を招いた。
 
【引用・参照・底本】

How the US sanctioned itself in Ukraine ASIATIMES 2025.01.10
https://asiatimes.com/2025/01/how-the-us-sanctioned-itself-in-ukraine/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=531b2e9759-DAILY_10_01_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-531b2e9759-16242795&mc_cid=531b2e9759&mc_eid=69a7d1ef3c

トランプ:ウクライナ戦争を「血まみれの混乱」と表現2025年01月11日 20:15

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【概要】

 2025年1月10日、クレムリンはロシアのプーチン大統領がアメリカのドナルド・トランプ次期大統領との対話に前向きであると表明した。プーチン大統領の広報担当者であるドミトリー・ペスコフ報道官が明らかにしたものである。この声明は、トランプ氏がウクライナ戦争を「血まみれの混乱」と表現し、これを終結させる意思を繰り返し述べたことを受けてのものである。

 ペスコフ報道官は、プーチン大統領が国際的な指導者、特にアメリカ大統領との接触に常に前向きであると述べた。また、トランプ氏が1月20日の就任後、プーチン大統領との会談を計画していることにも言及し、トランプ氏の問題解決に対する対話重視の姿勢を歓迎した。

 トランプ氏は1月9日にフロリダ州パームビーチにある自身のリゾート施設「マール・ア・ラーゴ」で共和党知事との会合中に「プーチン大統領は会談を希望しており、それを実現させようとしている」と述べた。さらに「この戦争を終わらせなければならない。これは血まみれの混乱だ」と語った。

 クレムリン側は、会談実現に向けた具体的な条件は必要ないとしており、「必要なのは問題解決への相互の意欲と政治的意思である」と強調した。

 トランプ氏がウクライナ戦争を早期に終結させる意思を示したことについては、ウクライナ国内で懸念が広がっている。キーウ(キエフ)では、モスクワに有利な条件での和平合意を余儀なくされる可能性があると警戒する声が上がっている。

 アメリカは2022年2月にロシアがウクライナへの全面的な軍事侵攻を開始して以来、ウクライナに数百億ドル規模の支援を提供してきた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、アメリカの支援がなければウクライナは戦争に敗北していただろうと述べており、現在もトランプ氏に「力による平和」を提案している。この提案には、NATOの保護と具体的な西側諸国による安全保障の保証を和平合意の一環として求める内容が含まれている。

【詳細】
 
 2025年1月10日、クレムリンはプーチン大統領がアメリカ次期大統領であるドナルド・トランプ氏との対話に前向きな姿勢を示していると発表した。この声明は、トランプ氏が就任前にウクライナ戦争を終わらせる意向を繰り返し表明し、プーチン大統領との会談が計画されていると述べたことを受けたものである。以下に詳細を述べる。

 クレムリンの立場
 
 ・プーチン大統領の対話の姿勢

 クレムリンの報道官であるドミトリー・ペスコフ氏は、プーチン大統領が国際的な指導者、特にアメリカ大統領との対話に常に前向きであると述べた。ペスコフ氏によれば、プーチン大統領はこれまでに何度も問題解決のための対話を重視する姿勢を明確にしており、トランプ氏との会談にも同様の姿勢で臨むとしている。

 ・会談に必要な条件

 ペスコフ氏は、会談の実現にあたって具体的な条件や前提条件は必要ないとし、「必要なのは相互の意欲と政治的意思だけである」と強調した。この柔軟な立場は、迅速な会談実現を目指すクレムリンの意向を反映している。

 トランプ氏の発言と計画

 ・会談への準備

 トランプ氏は1月9日、フロリダ州パームビーチにある自身のリゾート施設「マール・ア・ラーゴ」で行われた共和党知事との会合で、「プーチン大統領は会談を望んでおり、その準備を進めている」と述べた。さらに、トランプ氏は「この戦争を終わらせなければならない。これは血まみれの混乱だ」と強調し、戦争終結への強い意欲を示した。

 ・和平への具体策の欠如

 トランプ氏はウクライナ戦争を迅速に終わらせる意向を示しているものの、現時点では具体的な和平案を提示していない。この点については、トランプ氏の政策の詳細が明らかになるまで不透明な部分が残されている。

 ウクライナ側の反応と懸念

 ・キーウの懸念

 トランプ氏がウクライナ戦争を迅速に終結させる意向を示したことに対し、ウクライナでは懸念が高まっている。特に、モスクワに有利な条件での和平合意を押し付けられる可能性があると警戒されている。

 ・アメリカの支援とその重要性

 アメリカは2022年2月のロシアによる全面侵攻以降、ウクライナに対し数百億ドル規模の軍事的・経済的支援を行ってきた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、この支援がなければ戦争に敗北していたと述べており、引き続きアメリカからの支援が必要であることを強調している。

 ・「力による平和」提案

 ゼレンスキー大統領はトランプ氏に対し、「力による平和」の実現を提案している。この提案には、NATOの保護下におけるウクライナの安全保障や、西側諸国からの具体的な安全保障の保証を和平合意の条件として含めることが挙げられている。ウクライナ側は、西側諸国からの支援を引き続き確保しつつ、戦争終結後の安全を確立することを目指している。

 全体の背景と意義

 プーチン大統領とトランプ次期大統領の対話が実現すれば、2022年以降激化しているロシア・ウクライナ戦争における国際的な和平プロセスに影響を与える可能性がある。ただし、トランプ氏が提案する和平案がどのような形で進展するのか、またそれがウクライナや西側諸国にとってどのような影響をもたらすかについては、引き続き注視が必要である。

【要点】
 
 クレムリンの立場

 ・対話の姿勢: プーチン大統領は国際的な指導者、特にアメリカ大統領との対話に常に前向きである。
 ・条件不要: 会談の実現に具体的な条件は必要なく、必要なのは相互の意欲と政治的意思のみと強調している。

 トランプ氏の発言と計画

 ・会談準備: トランプ氏は、プーチン大統領との会談が準備段階にあることを発表し、戦争終結の意志を表明。
 ・迅速な和平意向: ウクライナ戦争を「血まみれの混乱」と呼び、迅速な終結を目指す意向を繰り返し強調。
 ・具体策の欠如: 和平案について具体的な詳細は明らかにしていない。

 ウクライナ側の反応

 ・モスクワ有利な和平合意への懸念: トランプ氏の和平姿勢に対し、キーウはモスクワに有利な条件が押し付けられる可能性を警戒している。
 ・アメリカ支援の重要性: ゼレンスキー大統領は、アメリカの数百億ドル規模の支援が戦争継続の鍵であると強調。
 ・「力による平和」提案: NATOの保護や具体的な安全保障保証を含む和平条件を提示し、引き続き西側諸国の支援を求めている。

 背景と意義

 ・和平プロセスへの影響: トランプ氏とプーチン大統領の対話が実現すれば、戦争終結に向けた国際的な動きに影響を与える可能性がある。
 ・注視すべき点: トランプ氏の和平案がウクライナや西側諸国にどのような影響を及ぼすかは不透明であり、さらなる注視が必要である。
 
【引用・参照・底本】

Putin ready for dialogue with US, Kremlin says, as Trump vows to end Ukraine war FRANCE24 2025.01.10
https://www.france24.com/en/europe/20250110-trump-says-putin-seeks-meeting-in-bid-to-end-bloody-mess-of-ukraine-war?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250110&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

トランプの影響でアジア通貨が下落2025年01月11日 20:31

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【桃源寸評】

 結局、米国に振り回される結果となる。米国を上回る国際通貨軸を打ち立てない限り、今後も続き、小さな池に大きな石を、御山の大将に投げ入れられることになる。

 国際社会は真鰯の群れか。

【寸評 完】

【概要】

 トランプ政権の影響でアジア通貨が下落

 2025年1月10日、アジア通貨とドルの交差する画像(出典: iStock/Getty Images)
アジアの通貨が、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策の影響で下落している。特に中国の人民元、日本の円、インドのルピー、韓国のウォンが数年ぶりの安値を記録し、地域経済に深刻な影響を及ぼしている。これにより、輸入物価の上昇が問題視され、物価安定に向けた政策対応が難しくなっている。

背景

 ・ドル高: トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策や、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げにより、ドルが上昇。これがアジア通貨に対する下押し要因となっている。
 ・アジアの貿易依存: アジア諸国にとって、米国は主要な貿易相手国であり、特に石油など多くの商品がドル建てで取引されている。これが地元通貨の下落を引き起こし、輸入物価の高騰を招いている。

 アジア通貨下落の影響

 ・中国: 人民元の下落により、半導体や農作物など重要な輸入品の価格が上昇。製造業や食料供給に大きな影響を及ぼしている。
 ・韓国: ウォン安により、エネルギーや原材料の輸入コストが上昇し、輸出産業の収益性が低下するリスクが高まっている。
 ・インド: ルピーの下落が燃料や食料品の価格を押し上げ、生活必需品の価格が上昇し、インフレが加速している。

 政策のジレンマ

 アジア各国の中央銀行は、輸入物価によるインフレ抑制のために利上げなどの対応を行うが、その結果、経済成長が鈍化するリスクがある。

 ・インフレと経済成長: 高金利政策は輸入物価を抑える一方で、企業や消費者の借入コストを高め、国内経済の成長を抑制する可能性がある。
 ・日本: 円安が輸入価格を押し上げ、デフレ脱却のための金融緩和政策が揺らいでいる。BOJ(日本銀行)は、景気回復を損なわない範囲で、物価上昇をどう抑制するかに苦慮している。

 外部要因

 ・米国の金融政策: FRBの金融引き締めにより、投資家はドルの高金利に誘導され、新興国から資本が流出。その結果、アジア通貨の下落に拍車がかかっている。
 ・地政学的リスク: トランプ政権の貿易政策や関税措置が、通貨市場のボラティリティを高めている。

 中央銀行の対応策

 ・外国為替市場での積極的介入も検討されるが、これには外貨準備の枯渇や投資家の信頼低下といったリスクが伴う。
 ・短期的な金融政策と長期的な構造改革を組み合わせた対応が求められている。

  ⇨ インド: 「Make in India」政策を進め、国内生産の強化を図ることで、輸入依存を減少させる。
  ⇨ 中国: 半導体産業の自給自足を進め、技術供給の安定化を図る。

 長期的な課題

 アジア諸国は、短期的なインフレ対応だけでなく、将来的なショックに耐えうる経済基盤を築く必要がある。経済成長を促進しつつ、輸入物価の影響を抑えるバランスが求められている。

【詳細】
 
 上記の記事をさらに詳しく解説したものである。

 アジア通貨の下落の背景

 ・ドル高の要因: アメリカ合衆国の大統領に選出されたドナルド・トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策により、ドルが急上昇している。これはアジア通貨に大きな影響を与え、中国の人民元、日本の円、インドのルピー、韓国のウォンがいずれも数年来の低水準に達している。
 ・貿易と輸入価格の影響: アジア諸国にとって、アメリカは主要な貿易相手国であり、多くの重要な商品、特に原油がドル建てで取引されている。このため、地元通貨の下落は輸入コストの増加を引き起こし、結果的に物価上昇や購買力の低下を招く。

 各国への影響
 
 ・中国: 人民元の下落は、半導体や農産物など重要な輸入品のコスト増を招き、製造業や食料供給チェーンに負担をかけている。
 ・韓国: ウォンの減価により、エネルギーや原材料の輸入コストが上昇している。また、輸出依存型産業において、通貨安が競争力を高める利点を打ち消すほど生産コストが上昇している。
 ・インド: ルピーの下落は燃料や食用油といった生活必需品の価格上昇につながっており、インフレ期待が問題視されている。
 ・日本: 長年デフレと戦ってきた日本では、超緩和的な金融政策を維持してきたが、円安が輸入価格を押し上げることでインフレ圧力を招き、景気回復を妨げるリスクが高まっている。

 中央銀行と政策の課題

 ・輸入インフレの連鎖: 通貨安が輸入価格を上昇させることで、物価全体が上昇する。この状況では、企業が予防的に価格を引き上げたり、消費者が将来の値上がりを見越して買い物を前倒ししたりする「期待インフレ」が生じる可能性が高い。これがインフレを自己強化的に進行させる危険がある。
 ・金利政策のジレンマ: インフレ対策として利上げを行うのが教科書的な対応である。しかし、金利上昇は企業や消費者の借入コストを増加させ、経済成長を抑制する可能性がある。特に中国の成長減速や日本の経済の脆弱性など、すでに困難を抱える国々では深刻なリスクとなる。

 通貨安を引き起こす外部要因

 ・米国の金融引き締め: 米連邦準備制度理事会(FRB)の金利引き上げが、ドルを魅力的な投資先としている。これにより新興市場から資本が流出し、アジア通貨がさらに下落している。
 ・地政学的リスクと貿易政策の不確実性: トランプ氏の関税政策や「アメリカ・ファースト」アジェンダが市場の不安を煽り、通貨市場のボラティリティを高めている。
 
 外為市場への介入とリスク

 ・アジア各国の中央銀行は、自国通貨を安定させるために外貨準備を使ってドル売り介入を行う選択肢がある。しかし、これには外貨準備の枯渇や投資家の信頼喪失といったリスクが伴う。
 
 長期的な解決策

 ・構造改革の必要性: アジア経済が輸入インフレの影響を軽減し、将来的なショックに対する耐性を構築するには、短期的な金融政策と長期的な構造改革を組み合わせる必要がある。

  ⇨ インドでは、「Make in India」政策を通じて必需品の国内生産を拡大し、輸入依存を減らす取り組みが進められている。
  ⇨ 中国では、半導体や他のハイテク産業での自給自足を強化することで、通貨下落に伴うインフレの悪影響を緩和しようとしている。
  ⇨ 日本では、エネルギーの輸入依存を減らすための再生可能エネルギーへの投資が提案されている。

 結論

 アジア各国にとっての課題は、即時的なインフレ圧力に対処することにとどまらず、将来的なショックに対する経済の回復力を強化することである。そのためには、金融政策と成長戦略を慎重に調整しつつ、輸入依存の低減や経済基盤の強化に取り組む必要がある。

【要点】
 
 アジア通貨下落の背景と影響(箇条書き)

 背景

 ・ドル高の要因: トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策やFRBの利上げによりドルが上昇。
 ・貿易と輸入価格: アジア諸国はドル建てで取引する商品(原油など)が多いため、地元通貨の下落で輸入コストが上昇。

 各国への影響

 ・中国: 人民元の下落で輸入コスト増、特に製造業や食料供給に影響。
 ・韓国: ウォン安がエネルギー・原材料価格を押し上げ、輸出競争力も減少。
 ・インド: ルピー安で燃料や生活必需品価格が上昇し、インフレ圧力が高まる。
 ・日本: 円安により輸入価格が上昇し、デフレ脱却を目指す経済政策にリスク。

 中央銀行の課題

 ・輸入インフレ: 通貨安が輸入価格を押し上げ、物価全体を引き上げるリスク。
 ・金利政策のジレンマ: 利上げでインフレ抑制を図る一方、経済成長の抑制が懸念。

 外部要因

 ・米国の金融政策: FRBの利上げで新興市場から資本流出、アジア通貨下落。
 ・地政学的リスク: トランプ氏の関税政策や不透明な貿易環境が市場を動揺させる。

 各国の対応策

 ・中国: 半導体などハイテク産業の自給自足を強化。
 ・韓国: 通貨安を緩和するための介入を検討。
 ・インド: 「Make in India」政策で国内生産を拡大、輸入依存を減少。
 ・日本: 再生可能エネルギー投資で輸入エネルギー依存を軽減。

 リスクと長期戦略

 ・外為市場介入のリスク: 外貨準備の減少や市場の信頼喪失。
 ・構造改革の必要性: 短期的な金融政策と長期的な経済基盤の強化が重要。

 結論

 アジア諸国は輸入インフレへの即時対応に加え、経済の回復力を高めるための構造改革と成長戦略を進める必要がある。
 
【引用・参照・底本】

Trump power deflating Asian currencies ASIATIMES 2025.01.10
https://asiatimes.com/2025/01/trump-power-deflating-asian-currencies/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=531b2e9759-DAILY_10_01_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-531b2e9759-16242795&mc_cid=531b2e9759&mc_eid=69a7d1ef3c