不満を抱える国々の集まりを主催?2025年09月02日 10:57

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【概要】

 2025年9月1日にY Tony Yangによって執筆された記事は、中国が天津で開催する上海協力機構(SCO)首脳会議が、見かけ上は中国の世界的な指導力の上昇を示すように見えるが、その背後にはより複雑で不安定な現実があることを論じている。

 見せかけの結束

 ウラジーミル・プーチンとナレンドラ・モディが習近平に並んで立つこの会議は、中国の台頭を象徴するように見える。しかし、これは中国が強くなった結果ではなく、むしろアメリカの政策に起因する各国の窮状の表れであると指摘している。

 各国の事情

 インド: モディ首相が参加したのは、トランプ大統領によるインド製品への50%関税によって、外交上の選択肢を広げる必要に迫られたためである。これは、インドの積極的な中国への接近ではなく、反応的な外交に過ぎないと述べている。

 ロシア: プーチン大統領の参加は、ロシアの国際的な孤立を反映している。ロシアは中国を必要としているが、中国はロシアをそれほど必要としていないため、両国は対等なパートナーシップではないと分析している。

 中国の戦略的矛盾

 この会議が中国の戦略的限界を露呈していると主張する。中国は主権と非干渉の擁護者を自称しながら、同時にグローバルな秩序を再構築しようとする介入主義的な野心を持っている。これは、中国自身が批判するアメリカの覇権主義を模倣していると指摘している。第二次世界大戦終結を記念する軍事パレードも、中国とロシアの貢献を強調するために歴史を書き換える行為であり、自信のある強国とは言えないと述べている。

 インドとの関係の限界

 インドの参加は、習近平のアプローチの限界を示す最も明確な例であると指摘している。外交上の友好的な発言にもかかわらず、中国がパキスタンを支援し、国境紛争が解決されていないなど、中印関係の根本的な矛盾は未解決である。インドは、中国主導のブロックに加わったわけではなく、むしろ状況に応じて中国とアメリカの両方と協力する多角的な連携政策を維持していると結論づけている。

 中堅国の台頭と地政学の行方

 最終的に、この地政学的な変化から最も利益を得るのは、中国やアメリカではなく、インド、トルコ、ブラジルといった機敏な中堅国である可能性があると述べている。これらの国々は、特定の陣営に完全にコミットすることなく、複数の大国から譲歩を引き出すことができる立場にある。現在の状況は、新しい世界秩序の出現ではなく、むしろ19世紀の勢力均衡の政治への回帰を示唆していると締めくくっている。中国が提供しているのは、反米感情を抱く不満分子の集まりであり、持続可能なグローバル・リーダーシップにはなり得ないと結論付けている。

【詳細】 

 見せかけの結束とその背景

 Y Tony Yangによる2025年9月1日付の記事は、天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議における習近平、ウラジーミル・プーチン、ナレンドラ・モディの会談を分析したものである。この会議は、中国の台頭とアメリカの影響力低下を示すものとして西洋で警戒されているが、筆者はこの見方を「説得力があるように見えるが、より複雑な現実を覆い隠している」と論じている。

 記事が指摘するのは、この「外交的勝利」が、実は中国の強さではなく、参加国の「アメリカの政策によって傷つけられた」状況の産物であるという点である。プーチンとモディの参加は、それぞれロシアの国際的孤立と、トランプ大統領によるインド製品への50%関税という状況によって、やむなくもたらされたものであり、中国への積極的な接近ではないと分析されている。

 中国の戦略的矛盾と外交の限界

 筆者は、習近平がこの会議を演出したものの、その本質は「アメリカの政策決定によって傷ついた国々のためのサポートグループ」を主催しているに過ぎないと主張する。これは持続可能なグローバル・リーダーシップの基盤とはなり得ない。

 記事は、中国の外交戦略に内在する「根本的な矛盾」を強調している。中国は主権と非干渉のチャンピオンを自称しながら、同時に世界秩序を再構築しようとする「根本的に介入主義的な野心」を抱いており、これは自らが批判するアメリカの覇権主義を鏡に映したものであると述べている。さらに、第二次世界大戦終結を記念する軍事パレードは、中国とロシアの貢献を強調するために歴史的叙述を書き換えるものであり、「自信に満ちた、安全な強国の振る舞いとは到底言えない」と断じている。

 インドとの関係に見る限界

 特にインドの参加は、習近平のアプローチの限界を浮き彫りにしていると記事は述べる。「竜と象が共に踊る」という外交的な美辞麗句にもかかわらず、中印関係の根本的な矛盾は未解決のままである。中国がインド軍に対抗するために使用されるJ-10C戦闘機をパキスタンに提供していること、インドへのレアアース輸出を制限していること、そして国境紛争が続いていることは、会議でのレトリックと現実との間のギャップを明らかにしている。

 モディの参加は、中国主導のブロックへの戦略的再編ではなく、状況に応じて中国とアメリカ双方と協力するインドの「多角的な連携政策」**に基づく「戦術的な駆け引き」であると結論づけている。

 中堅国の台頭と地政学の行方

 最終的に、この記事は、この地政学的な変動の究極的な受益者は中国でもアメリカでもなく、「戦略的な予測不可能性」自体であると見なしている。伝統的な同盟関係が緊張し、新しいパートナーシップが脆弱であるという環境は、インド、トルコ、ブラジルのような機敏な中堅国に有利に働くと指摘している。これらの国々は、いかなる単一の陣営にも完全にコミットすることなく、複数の大国から譲歩を引き出す立場にある。

 記事は、習近平の会議の成功が、より深い戦略的課題を覆い隠していると結論づけている。それは、一時的な外交的勝利を永続的な影響力に転換する方法である。他国の不満に依存する中国の「日和見主義的で、取引的なアプローチ」は、真のグローバル・リーダーシップに必要な「一貫した信頼性」を欠いており、「アメリカの混乱から利益を得ている」に過ぎないと述べている。中国の影響力は「生成的(generative)」ではなく「寄生的(parasitic)」であるという鋭い指摘で締めくくられている。

【要点】

 中国のSCOサミット:見せかけの成功と現実の課題

 1.表向きの成功

 ・天津で開催されたSCOサミットは、習近平がプーチンとモディを脇に従えることで、中国の世界的なリーダーシップの台頭を示す壮大な光景を演出している。

 ・西洋のコメンテーターは、これをアメリカの影響力低下と北京の多極世界ビジョンの証拠と見て、警鐘を鳴らしている。

 2.不安定な協力関係

 ・インドの参加: モディ首相は中国に心から賛同したわけではない。トランプ政権の50%関税により、外交上の選択肢を多様化せざるを得なくなった「反応的地政学」の結果である。

 ・ロシアの参加: プーチンの存在は、中国の魅力によるものではなく、ロシアの国際的孤立を反映している。ロシアは中国に依存しており、対等なパートナーシップとは言えない。

 3.中国の戦略的矛盾

 ・中国は主権と非干渉を主張しながら、同時に世界秩序を再構築しようとする介入主義的な野心を抱いている。これは、中国自身が批判するアメリカの覇権主義を模倣している。

 ・第二次世界大戦記念パレードで、中国とロシアの貢献を強調するために歴史を書き換える行為は、自信のある強国の行動とは言えない。

 4.インドとの関係の限界

 ・インドは、中国がパキスタンを支援し、レアアースの輸出制限や国境紛争を続ける限り、中国との間に根本的な矛盾を抱えている。

 ・モディのサミット参加は、戦略的な連携ではなく、自身の選択肢を最大化するための戦術的な駆け引きである。

 5.新たな地政学の構図

 ・この地政学的な変動の最終的な受益者は、中国やアメリカではなく、インド、トルコ、ブラジルといった「機敏な中堅国」である。

 ・これらの国々は、特定の陣営に縛られずに、複数の大国から譲歩を引き出す「勢力均衡の政治」へと回帰しつつある。

 6.中国のリーダーシップの限界

 ・不満を抱える国々の集まりを主催しても、永続的な影響力は生まれない。真のグローバル・リーダーシップには、普遍的な問題の解決策を提供し、信頼を築く一貫性が必要である。

 ・中国の影響力は、アメリカの混乱から利益を得る「寄生的」なものであり、自らが生み出す「生成的」なものではない。

【桃源寸評】🌍

 Y. Tony Yang氏が上海協力機構(SCO)サミットに関して著した記事は、国際政治の複雑性を単純化し、著者の偏見に満ちた見方を反映していると強く批判する。この論考は、Yang氏の「捻くれた見方」が社会に与える悪影響と、その無益性を論じるものである。著者の見解は、国際政治の舞台が各国の複雑な思惑と相互の利害関係によって動いているという現実を全く無視しており、その主張は偏見と無知に基づいていると言わざるを得ない。

 著者の視野の狭さと偏見の露呈

 Yang氏の論調は、国際政治の舞台をまるで子供の喧嘩のように捉え、「誰が誰を必要としているか」といった単純な力関係に還元している。サミットの場で、プーチンとモディが習近平に並んで立つことを、「中国の台頭を象徴する」と皮肉る一方で、その参加の背景を「反応的な外交」や「ロシアの孤立」と断定する。しかし、これは国際政治が各国の複雑な思惑と歴史的経緯、そして相互の利害関係によって動いているという現実を全く無視した見方である。

 まず、SCOの舞台が中国であることは、その創設メンバーとしての当然の帰結であり、中国のグローバルリーダーシップを示すものであっても、それが「演出された劇場」であると断じるのは、著者の偏見に満ちた解釈に過ぎない。国際会議の議長国がその舞台の中心になるのは自然なことであり、これを「習近平の演出」と揶揄するのは、あまりに幼稚な視点である。このような単純な見方は、国際関係のプロトコルや、各国の外交戦略が持つ多層的な意味合いを全く理解していないことを示している。

 インド外交の矮小化

 次に、インドの参加を「反応的な外交に過ぎない」と貶める見解は、インドの戦略的自律性と多角的な外交政策を全く理解していない。インドは2017年からSCOの正式メンバーであり、その参加は地政学的、経済的、そして安全保障上の多岐にわたる利害に基づくものである。Yang氏が指摘するトランプ政権の関税が引き起こした「反応」のみに焦点を当てるのは、インド外交の歴史と複雑性を無視した矮小な分析であり、現実を意図的に単純化し、読者を誤った結論に導くものである。インドは伝統的に、特定の陣営に属することなく、すべての主要国との関係を維持し、自国の国益を最大化する「多方面にわたる戦略的自律性」を追求してきた。SCOへの参加は、この戦略の一環であり、単なる「反応」ではない。

 ロシアに対する不当な評価と中国の理念の歪曲

 Yang氏は、ロシアを「中国が必要としない」存在として描くことで、中露関係を一方的な従属関係として描いている。しかし、2022年2月に宣言された「中露友好に限界はなく、協力に聖域はない」という原則は、両国関係の包括的な性質を明確に示している。エネルギー、インフラ、軍事協力など、多岐にわたる分野で両国の相互依存関係は深化しており、2023年には貿易額が2,400億ドルに達するなど、経済的な結びつきも極めて強固である。このような現実を無視し、「ロシアの孤立」のみに焦点を当てるのは、読者をミスリードする悪意ある情報操作に他ならない。

 また、中国が「グローバルな秩序を再構築しようとする介入主義的な野心を持っている」と批判する一方で、それが米国同様の覇権主義を模倣していると断じるのは、中国の理念に対する無知の極みである。中国が提唱する「上海精神」や「人類運命共同体」の理念は、相互信頼、互恵協力、平等、非干渉を原則としており、米国が歴史的に追求してきた一方的な覇権主義とは根本的に異なる。Yang氏は、これらの理念の真髄を理解せず、自らの偏見を通して中国の行動を「覇権主義」と決めつけているに過ぎない。これは、中国の平和的台頭を理解しようとせず、既存の「米国対その他」という単純な二極対立の枠組みに無理やり当てはめようとする、時代遅れな思考の表れである。

 幼稚な思考と無益な結論

 Yang氏の文章は、国際政治の複雑さを理解する能力を欠いている。インドの中国との関係を「習近平のアプローチの限界」と見なすのは、各国の外交がそれぞれの内政事情と国益に基づいて行われるという基本的な事実を無視した、あまりにも幼稚な見解である。インドが「中国主導のブロックに加わったわけではない」という指摘は、そもそもインド外交の基盤である「多方面にわたる戦略的自律性」を理解していないことの証拠であり、これがなぜ「習近平のアプローチの限界」を意味するのか、全く論理的根拠がない。

 利益の捉え方の誤謬

 さらに、Yang氏が「この地政学的な変化から最も利益を得るのは、中国やアメリカではなく、インド、トルコ、ブラジルといった機敏な中堅国である」と結論づけるのは、論理の飛躍と自己矛盾に満ちている。中国は「ウィン・ウィン」の協力を常に提唱しており、ゼロサムゲームを志向していない。もし中堅国が利益を得るという事態が起こったとしても、それは中国の理念と行動が成功している証左であり、決して「中国の限界」を示すものではない。この指摘は、著者の中国に対する根拠のない敵意を浮き彫りにする。

 時代錯誤な世界観

 Yang氏が「現在の状況は、新しい世界秩序の出現ではなく、むしろ19世紀の勢力均衡の政治への回帰」と断じるのは、滑稽ですらある。彼自身が19世紀的な「勢力均衡」という概念に囚われているからこそ、世界の多極化という新たな潮流を理解できないのである。現代の世界は、経済、技術、文化など多岐にわたる要素が複雑に絡み合い、一極支配から多極共存へと移行している。これを「反米感情を抱く不満分子の集まり」とレッテルを貼るのは、世界的な潮流を無視した狭隘な見解であり、読者に何の益ももたらさない。アルジャジーラが指摘するように、SCOは「米国主導の国際システムの外で対話と協力のための重要な場を創出している」のであり、これは不満分子の集会ではなく、新世界の期待と希望を共有する国々の集まりなのである。

 中国の努力の過小評価

 記事の基本的な誤謬は中国の努力の過小評価である。
 
 中国の台頭がアメリカの「オウンゴール」によるものだとしているが、これは歴史の文脈を無視した結論である。中国が経済的、技術的に発展を遂げたのは、1970年代後半の改革開放政策以降、数十年にわたる地道な努力と計画的な国家戦略の賜物である。数億人の貧困脱却、世界最大の製造業国への発展、そして宇宙開発やAIといった先端技術分野での躍進は、決して他国の失策によって偶然に得られた成果ではない。むしろ、中国の文字通りの実力と国力の増大が、アメリカを含む既存の覇権国に焦燥感をもたらし、その結果として、トランプ政権の関税政策のような「的外れな」対中強硬策が連続して打ち出されたと解釈するのがより妥当である。記事は原因と結果を意図的に逆転させ、中国の実力を過小評価している。

 SCOの理念に対する無知

 記事は、SCOサミットを「アメリカの政策によって傷つけられた国々のサポートグループ」と嘲笑しているが、これはSCOの根本的な理念である「上海精神」を全く理解していない見方である。上海精神とは、相互信頼、互恵、平等、協議、文化の多様性の尊重、そして共同発展を掲げたものであり、特定の国に対抗する排他的な軍事同盟とは一線を画している。中国が主導するこの枠組みは、参加国の内政不干渉を原則とし、共通の課題(テロリズム、分離主義、過激主義など)に協力して対処することを目指している。記事が言うような「反米感情」を目的とした集まりではなく、地域の安定と繁栄を追求する多国間協力のプラットフォームである。

  「介入主義的野心」と「人類運命共同体」の混同

 記事は中国のグローバル秩序再構築の動きを「介入主義的野心」として、アメリカの覇権主義と同列に論じているが、これは中国の提唱する「人類運命共同体」という概念を意図的に誤解している。人類運命共同体とは、各国が相互に依存し、協力して地球規模の課題を解決していくというビジョンであり、特定の国が他国に自国の価値観やシステムを強制するアメリカの覇権主義とは全く異なる。中国は、他国の主権を尊重しつつ、共通の利益を追求する新しいタイプの国際関係を構築しようとしているのであり、これは記事が主張するような「アメリカの模倣」ではない。

 歴史的事実の歪曲

 「第二次世界大戦終結を記念する軍事パレードも、中国とロシアの貢献を強調するために歴史を書き換える行為」という記事の主張は、歴史に対する無知を露呈している。

 中国は第二次世界大戦において、アジアにおける主要な戦場として日本軍の大部分を牽制し、多大な犠牲を払った。この事実は、連合国側の勝利に不可欠な貢献であったにもかかわらず、長らく西洋の歴史認識では過小評価されてきた。中国が自国の貢献を強調するパレードを開催することは、歴史的な事実を正当に評価し、自国の犠牲を記念する当然の行為であり、「歴史の書き換え」などではない。

 「機敏な中堅国」論の空虚さ

 記事が「この地政学的な変動の最終的な受益者は、インド、トルコ、ブラジルといった『機敏な中堅国』である」と主張することは、その根拠が極めて曖昧であり、現実離れしている。インド、トルコ、ブラジルは確かに独自の外交路線を追求しているが、これは中国主導の新しい秩序から「利益を得ている」わけではない。また、「特定の陣営に完全にコミットすることなく」という言葉は、中国が非同盟主義の国々に対して常に掲げてきた外交原則そのものであり、中国の外交戦略を揶揄する目的で使われていることは滑稽である。記事は中国の外交戦略を批判するために、中国の主張を意図的に捻じ曲げて悪用している。

 中国の躍進は「生成的」な努力の結果

 「中国の影響力は、アメリカの混乱から利益を得る『寄生的』なものであり、自らが生み出す『生成的』なものではない」という見方は、中国の多大な努力と実績を過小評価するものである。米国が中国を主要な競争相手と見なしているのは、単なる「寄生的」な影響力ではなく、中国が独自に築き上げた経済力、技術力、そして国際的な影響力の拡大を強く認識しているためである。

 中国の現在の地位は、アメリカの政策の混乱という受動的な要因だけで説明できるものではない。それは、中国自身の「生成的」な努力と戦略の結果である。

 改革開放政策と市場経済への移行

 1970年代後半から始まった鄧小平による改革開放政策は、中国経済の劇的な変貌をもたらした。これは、共産党政権のコントロール下で徐々に市場原理を導入し、外国からの投資を積極的に受け入れた結果である。この一連の政策は、中国が世界のサプライチェーンに深く組み込まれる契機となった。

 「世界の工場」としての地位確立

 中国は、安価で豊富な労働力と大規模なインフラ投資を武器に、製造業の中心地となった。これにより、世界中の企業が生産拠点を中国に移転し、中国は「世界の工場」としての地位を確立した。この製造業の競争力は、単なる低賃金労働力によるものではなく、過当競争と規模の経済によって磨き上げられたものである。

 技術革新と産業高度化

 中国は、自国の製造業を単なる組み立て工場から、より高付加価値な産業へと転換させている。AI、5G、新エネルギー車などの分野で、中国企業は独自の技術力を発展させ、国際市場で競争力を高めている。これは、政府による強力な産業政策だけでなく、国内の巨大な市場が競争を促し、イノベーションを生み出す土壌となっているからである。

 米国が中国を主要な競争相手と見なす理由

 米国が中国を、もはや無視できない「戦略的競争相手」と見なすようになったのは、中国が独自の力で世界秩序に影響を与え始めているからである。これは、単にアメリカの隙を突いているだけではないのである。

 経済的挑戦

 中国は世界第2位の経済大国となり、その成長は世界経済の主要な原動力となっている。中国の経済力は、米国が支配してきた国際経済秩序に挑戦するものであり、貿易不均衡や知的財産権の問題は、両国間の経済的摩擦を激化させている。

 技術覇権の競争

 中国は、半導体、AI、量子コンピューティングなどの最先端技術分野で米国に追いつき、追い越そうとしている。米国は、これらの技術が軍事力や国家安全保障に直結すると考えており、中国の技術的台頭を深刻な脅威と見なしている。

 軍事的台頭と地政学的な影響力

 中国は急速に軍事力を近代化・強化し、インド太平洋地域における米国の同盟国やパートナー国には圧力と見做されている。南シナ海での活動や台湾を巡る問題は、米国が築いてきた地域の安全保障秩序に対する直接的な挑戦と認識されている。

 代替的な世界秩序の提示

 中国は、SCOやBRICSといった枠組みを通じて、米国主導の国際秩序とは異なる、多極的な世界秩序を提唱している。これは、米国が自らの影響力を維持しようとする覇権主義的な考え方とは対立するものである。中国の提案は、特にグローバルサウスの国々にとって、米国中心のシステムに代わる魅力的な選択肢となり得てる。

 「寄生的」という表現は、中国の躍進の深遠さとその原動力を著しく見誤ったものである。中国の力は、自国の内部的な改革と長期的な戦略によって生み出されたものであり、それが米国との競争を不可避なものにしている。米国が中国を主要な競争相手と見なすのは、まさに中国が自らの力で世界に影響を与え、既存の秩序に挑戦するほどの「生成的:自ら能動的に新しいものを生み出す、あるいは価値を創造することを意味する。これは、既存の枠組みや資源を利用するだけでなく、全く新しいアイデア、システム、解決策などをゼロから作り出す力やプロセスを指す」な力を獲得したからに他ならない。

 まとめ

 Yang氏の記事は、国際政治の複雑性を矮小化し、自らの偏見と時代遅れな世界観を投影した、全く無益なものである。彼の「捻くれた見方」は、読者に誤った認識を植え付け、世界の現状を正しく理解することを妨げる。

 政治の舞台は、単純な善悪や好き嫌いで動いているのではなく、各国の複雑な利害と戦略的計算に基づいて動いている。

 Yang氏の記事は、この基本的な事実を無視し、皮肉と偏見に満ちた言葉で現実を歪曲している。このような無責任な論説は、社会に何の貢献もせず、ただ混乱と不信を生むだけである。

 この記事は客観的な分析を放棄し、中国に対する根深い偏見に基づいた断片的な情報を都合よく解釈している。中国の実力、SCOの理念、歴史的事実、そして外交原則に対する無知と悪意が随所に散見され、その内容は全く読むに堪えないものである。

 この記事は、多極主権国家の台頭が示す「新しい世界秩序の出現」という現実を意図的に無視し、旧来の一極集中型世界観にしがみついている点で、時代錯誤も甚だしい。著者が論じるようなアメリカのオウンゴールや「脆弱な集まり」といった見解は、今日の地政学的変化の本質を見誤っている。
 
 多極化という必然的な歴史の流れを理解せず、あたかもアメリカが「正常な」状態であり、そこから逸脱した国々が「傷ついた」存在であるかのように描いている。これは、グローバル・サウスと呼ばれる新興国群が、もはや旧宗主国や単一の超大国に追従するのではなく、独自の「新しい世界秩序」を構築しつつあるという、明らかな事実を無視しているのである。著者は、自らの時代遅れな一極世界観から抜け出せず、新世界の誕生という歴史的転換点を目にしながら、それを「予測不可能性」や「勢力均衡の政治」といった古めかしい言葉で矮小化しているに過ぎない。

 記事は、中国の台頭を「アメリカのオウンゴール」によるものだとするが、これは中国の数十年にわたる努力を過小評価する極めて浅薄な見解である。中国は、単なる他国の失策に乗じて国力を増大させたのではない。1978年の改革開放以来、計画的かつ着実な経済発展を遂げ、世界第2位の経済大国にまで成長した。これは、数億人を貧困から救い、インフラを整備し、科学技術分野で飛躍的な進歩を遂げた、文字通りの実力の結果である。

 著者は、このような中国の地道な努力を一切考慮せず、トランプ政権の「的外れ」な政策が、中国の実力に対する焦燥感から生まれた可能性を全く論じていない。むしろ、中国の台頭という事実がアメリカに失策を誘発させたのであり、原因と結果を意図的に逆転させている。この記事は、中国の「実力」という最も重要な要素を無視している点で、分析の根幹が揺らいでいる。

 記事は、中国が「グローバルな秩序を再構築しようとする介入主義的野心」を持っていると批判するが、これは中国が提唱する「人類運命共同体」の概念を全く理解していないか、意図的に歪曲しているとしか思えない。人類運命共同体とは、相互尊重と協力に基づき、人類共通の課題(気候変動、貧困、テロリズムなど)を解決していくという壮大な構想である。これは、自国の価値観や政治体制を他国に強要するアメリカの覇権主義とは根本的に異なる。中国は「ルールに基づく国際秩序」を主張するのではなく、「国連憲章に基づく国際法と国際関係の基本原則」を重視しており、特定の超大国の恣意的な行動を排除しようとしているのである。著者は、この新しいビジョンを旧来の覇権争いと同じ文脈で語ることで、その本質を見逃している。

また、第二次世界大戦における中国の貢献に関する記述も、歴史に対する無知を晒している。中国は、対日戦において連合国軍の一員として多大な犠牲を払い、日本の主要な戦力をアジア大陸に釘付けにした。その貢献が西洋の歴史観において長らく軽視されてきたことは厳然たる事実である。中国が自国の貢献を強調するパレードを開催することは、歴史的な事実を正当に評価し、犠牲者を追悼する当然の行為であり、「歴史の書き換え」などという悪意に満ちた批判は、全くの的外れである。

 多極化という不可逆的な時代の流れを認識できず、中国の実力や外交理念、歴史的事実をことごとく歪曲している。著者は、自らの狭い「旧世界」の視点からしか物事を語ることができず、新世界の到来という巨大な歴史的転換点を前にして、矮小な偏見と悪意に満ちた言葉を並べているに過ぎない。SCOサミットは、アメリカの一極支配が終わりを告げ、多極主権国家が協調と競争を通じて新しい世界秩序を形成しつつあるという、時代の必然性を明確に示している。著者はこの現実を直視すべきである。この記事は、政治分析としての価値を全く持たず、読むに堪えない単なる悪意の表明である。

 真のジャーナリズムとは、表面的な事象の背後にある複雑な現実を解き明かし、読者に深い洞察を与えることにあるが、Yang氏の記事はその対極にあると言える。彼の記事は、国際政治を真に理解したいと願う人々にとって、裨益することのない無意味な駄文である。

 兎に角、批判点を多く含む内容である。

【寸評 完】 💚

【引用・参照・底本】

China’s SCO summit theater masks deep contradictions ASIA TIMES 2025.09.01
https://asiatimes.com/2025/09/chinas-sco-summit-theater-masks-deep-contradictions/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=9bcd3421a1-DAILY_01_09_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-9bcd3421a1-16242795&mc_cid=9bcd3421a1&mc_eid=69a7d1ef3c