タルシ・ガバード国家情報長官(DNI)による議会証言 ― 2026-03-20 20:35
【概要】
本文書は、米国国家情報長官室(ODNI)が2026年に提出した年次脅威評価である。CIA、DIA、FBI、NSAの各長官が同席のもと、トランプ政権の国家安全保障戦略に沿った優先順位に基づき、米国市民・本土・国益に対する脅威を体系的に評価したものである。評価の対象は、国内安全保障(国境、麻薬、テロ)、サイバー・技術領域、主要地域(西半球、欧州、中東、アフリカ、インド太平洋)における国家・非国家アクターによる脅威に及ぶ。
【詳細】
1. 国境・移民・越境犯罪組織(TCO)
米国とメキシコ国境における厳格な執行措置の結果、2026年1月の不法越境遭遇件数は2025年1月比で83.8%減少、2024年比では79%減少した。ただし、キューバ・ハイチ等における情勢不安が移民増加の潜在的誘因として継続する。
シナロア・カルテルおよびハリスコ新世代カルテル(CJNG)を中心とするメキシコ系TCOは、フェンタニル・ヘロイン・メタンフェンタミン・コカインの生産・密輸を主導している。フェンタニル過剰摂取死は2024年9月から2025年9月の間に30%減少し、効力低下も確認されているが、依然として毎年数万人規模の関連死者が発生している。コロンビアは世界最大のコカイン生産国であり、FARC・ELNが欧米市場への大量輸送を担っている。MS-13は米国内に組織的細胞を持ち、暴力・恐喝・麻薬密売等を行っている。
2. テロリズム
国内では2025年に少なくとも3件のイスラム系テロ攻撃が発生し、少なくとも15件の国内テロ計画が法執行機関によって阻止された。阻止された計画の約半数は、海外テロ組織と何らかのオンライン接触があった。
アル・カイダの世界的構成員数は推定1万5千~2万8千人、ISISは推定1万2千~1万8千人とされる。アフリカは、スンニ派ジハード主義運動の世界的焦点となっている。イラク・ソマリア・イエメン・シリアでの対テロ作戦により複数の指導者・工作員が排除されたが、ISIS・アル・カイダはシリアを中心に勢力再建を図っている。
3. 戦略的競合国(中国・ロシア・北朝鮮・イラン)
中国は、2030年までにAI分野で米国を凌駕することを目標とし、軍の全領域にわたる近代化を急速に推進している。台湾については、武力行使による併合能力の開発と並行して、平和的統一に向けた条件整備を優先するとICは評価している。
ロシアは、ウクライナ戦争において引き続き優勢を維持している。核宇宙兵器・極超音速ミサイル・海中能力など非対称・先進兵器の開発を継続しており、宇宙分野での核兵器開発は世界の宇宙インフラに対する単一最大の脅威とされる。
北朝鮮は2025年に約20億ドル相当の暗号資産を窃取したとされ、ICBMは既に米本土への到達能力を有する。2024年には1万1千人超の兵力をロシアに派遣し、ロシアとの軍事・外交協力を強化している。
イランは、「オペレーション・エピック・フューリー」および「オペレーション・ミッドナイト・ハンマー」により、ミサイル生産施設・核濃縮施設を破壊され、地域的影響力投射能力を著しく喪失した。しかし依然として米国・同盟国の利益への攻撃能力を保持しているとされる。
4. ミサイル・核・サイバー・新興技術
IC(Intelligence Community)は、米本土への脅威となるミサイル数が現状の3,000発超から2035年までに16,000発超に増加すると評価している。サイバー領域では、中国・ロシア・北朝鮮・イランおよび非国家系ランサムウェア集団が政府・民間ネットワークへの侵害を継続している。AIの進歩はサイバー作戦の脅威を加速させるとされ、2025年8月には政府・医療・緊急サービス機関を標的としたAI利用のデータ恐喝事案が発生している。量子コンピュータの早期開発国は、現行暗号手法を解読する重大な技術的優位を獲得しうる。
5. 地域別脅威
西半球では、ベネズエラのマドゥロ逮捕後、同国は米国との協力姿勢に転じているが、ラテンアメリカ全体では経済不安・組織犯罪・腐敗が持続する。中国・ロシア・イランは同地域への影響力拡大を継続している。
中東では、ハマスによる2023年10月7日の攻撃以来の一連の作戦がイランおよびその代理勢力を大幅に弱体化させた。
アフリカでは、アル・シャバブがソマリアのモガディシュに接近しつつあり、西アフリカ・サヘル地域ではISISの攻撃が激化している。また、アフリカ固有の感染症が新たな地域に拡散する懸念が継続する。
【要点】
・国境・移民:厳格な執行措置により不法越境が大幅減少(最大83.8%)。ただし移民誘因は継続
・麻薬・TCO:フェンタニル死者数30%減。TCOは対策に適応し、経路・生産拠点を変更する可能性
・テロ:国内外でイスラム系テロの脅威が継続。アフリカが新たな中心地として台頭
・中国:AI・軍近代化で米国を追う最大の競合国。台湾への武力行使より条件整備を優先と評価
・ロシ:アウクライナ戦争で優勢。核宇宙兵器が世界の宇宙インフラへの最大脅威
・北朝鮮:ICBM・核拡張・サイバー窃取(年間約20億ドル)・ロシア派兵で脅威増大
・イラン:軍事作戦により核・ミサイル能力を大幅喪失。ただし残存攻撃能力あり
・ミサイル脅威:2035年までに米本土を射程に収めるミサイルが16,000発超に増加と予測
・サイバー・AI:AI活用による攻撃の高度化・加速化が進行。量子コンピュータも将来的脅威
・宇宙:中露が対宇宙能力を開発。ロシアの核宇宙兵器が単一最大の脅威
注:IC(Intelligence Community)は複数の情報機関の総称であり、本評価書に直接関与している主要機関として以下が明示されている。
CIA(Central Intelligence Agency:中央情報局)
DIA(Defense Intelligence Agency:国防情報局)
FBI(Federal Bureau of Investigation:連邦捜査局)
NSA(National Security Agency:国家安全保障局)
これらを統括する機関として ODNI(Office of the Director of National Intelligence:国家情報長官室)が位置づけられており、本報告書はODNIが取りまとめた形で発表されている。
【引用・参照・底本】
タルシ・ガバード国家情報長官(DNI)による2026年3月18日の議会証言の公式PDF
https://www.intelligence.senate.gov/wp-content/uploads/2026/03/os-gabbard-031826.pdf
上院情報委員会での開会演説(トルシ・ギャバード国家情報長官が議会証言の際に提出した、報告書のハイライトをまとめた演説資料
関連資料:2026(U)ANNUAL THREAT ASSESSMENTOF THE U.S. INTELLIGENCE COMMUNITY March 2026
本文書は、米国国家情報長官室(ODNI)が2026年に提出した年次脅威評価である。CIA、DIA、FBI、NSAの各長官が同席のもと、トランプ政権の国家安全保障戦略に沿った優先順位に基づき、米国市民・本土・国益に対する脅威を体系的に評価したものである。評価の対象は、国内安全保障(国境、麻薬、テロ)、サイバー・技術領域、主要地域(西半球、欧州、中東、アフリカ、インド太平洋)における国家・非国家アクターによる脅威に及ぶ。
【詳細】
1. 国境・移民・越境犯罪組織(TCO)
米国とメキシコ国境における厳格な執行措置の結果、2026年1月の不法越境遭遇件数は2025年1月比で83.8%減少、2024年比では79%減少した。ただし、キューバ・ハイチ等における情勢不安が移民増加の潜在的誘因として継続する。
シナロア・カルテルおよびハリスコ新世代カルテル(CJNG)を中心とするメキシコ系TCOは、フェンタニル・ヘロイン・メタンフェンタミン・コカインの生産・密輸を主導している。フェンタニル過剰摂取死は2024年9月から2025年9月の間に30%減少し、効力低下も確認されているが、依然として毎年数万人規模の関連死者が発生している。コロンビアは世界最大のコカイン生産国であり、FARC・ELNが欧米市場への大量輸送を担っている。MS-13は米国内に組織的細胞を持ち、暴力・恐喝・麻薬密売等を行っている。
2. テロリズム
国内では2025年に少なくとも3件のイスラム系テロ攻撃が発生し、少なくとも15件の国内テロ計画が法執行機関によって阻止された。阻止された計画の約半数は、海外テロ組織と何らかのオンライン接触があった。
アル・カイダの世界的構成員数は推定1万5千~2万8千人、ISISは推定1万2千~1万8千人とされる。アフリカは、スンニ派ジハード主義運動の世界的焦点となっている。イラク・ソマリア・イエメン・シリアでの対テロ作戦により複数の指導者・工作員が排除されたが、ISIS・アル・カイダはシリアを中心に勢力再建を図っている。
3. 戦略的競合国(中国・ロシア・北朝鮮・イラン)
中国は、2030年までにAI分野で米国を凌駕することを目標とし、軍の全領域にわたる近代化を急速に推進している。台湾については、武力行使による併合能力の開発と並行して、平和的統一に向けた条件整備を優先するとICは評価している。
ロシアは、ウクライナ戦争において引き続き優勢を維持している。核宇宙兵器・極超音速ミサイル・海中能力など非対称・先進兵器の開発を継続しており、宇宙分野での核兵器開発は世界の宇宙インフラに対する単一最大の脅威とされる。
北朝鮮は2025年に約20億ドル相当の暗号資産を窃取したとされ、ICBMは既に米本土への到達能力を有する。2024年には1万1千人超の兵力をロシアに派遣し、ロシアとの軍事・外交協力を強化している。
イランは、「オペレーション・エピック・フューリー」および「オペレーション・ミッドナイト・ハンマー」により、ミサイル生産施設・核濃縮施設を破壊され、地域的影響力投射能力を著しく喪失した。しかし依然として米国・同盟国の利益への攻撃能力を保持しているとされる。
4. ミサイル・核・サイバー・新興技術
IC(Intelligence Community)は、米本土への脅威となるミサイル数が現状の3,000発超から2035年までに16,000発超に増加すると評価している。サイバー領域では、中国・ロシア・北朝鮮・イランおよび非国家系ランサムウェア集団が政府・民間ネットワークへの侵害を継続している。AIの進歩はサイバー作戦の脅威を加速させるとされ、2025年8月には政府・医療・緊急サービス機関を標的としたAI利用のデータ恐喝事案が発生している。量子コンピュータの早期開発国は、現行暗号手法を解読する重大な技術的優位を獲得しうる。
5. 地域別脅威
西半球では、ベネズエラのマドゥロ逮捕後、同国は米国との協力姿勢に転じているが、ラテンアメリカ全体では経済不安・組織犯罪・腐敗が持続する。中国・ロシア・イランは同地域への影響力拡大を継続している。
中東では、ハマスによる2023年10月7日の攻撃以来の一連の作戦がイランおよびその代理勢力を大幅に弱体化させた。
アフリカでは、アル・シャバブがソマリアのモガディシュに接近しつつあり、西アフリカ・サヘル地域ではISISの攻撃が激化している。また、アフリカ固有の感染症が新たな地域に拡散する懸念が継続する。
【要点】
・国境・移民:厳格な執行措置により不法越境が大幅減少(最大83.8%)。ただし移民誘因は継続
・麻薬・TCO:フェンタニル死者数30%減。TCOは対策に適応し、経路・生産拠点を変更する可能性
・テロ:国内外でイスラム系テロの脅威が継続。アフリカが新たな中心地として台頭
・中国:AI・軍近代化で米国を追う最大の競合国。台湾への武力行使より条件整備を優先と評価
・ロシ:アウクライナ戦争で優勢。核宇宙兵器が世界の宇宙インフラへの最大脅威
・北朝鮮:ICBM・核拡張・サイバー窃取(年間約20億ドル)・ロシア派兵で脅威増大
・イラン:軍事作戦により核・ミサイル能力を大幅喪失。ただし残存攻撃能力あり
・ミサイル脅威:2035年までに米本土を射程に収めるミサイルが16,000発超に増加と予測
・サイバー・AI:AI活用による攻撃の高度化・加速化が進行。量子コンピュータも将来的脅威
・宇宙:中露が対宇宙能力を開発。ロシアの核宇宙兵器が単一最大の脅威
注:IC(Intelligence Community)は複数の情報機関の総称であり、本評価書に直接関与している主要機関として以下が明示されている。
CIA(Central Intelligence Agency:中央情報局)
DIA(Defense Intelligence Agency:国防情報局)
FBI(Federal Bureau of Investigation:連邦捜査局)
NSA(National Security Agency:国家安全保障局)
これらを統括する機関として ODNI(Office of the Director of National Intelligence:国家情報長官室)が位置づけられており、本報告書はODNIが取りまとめた形で発表されている。
【引用・参照・底本】
タルシ・ガバード国家情報長官(DNI)による2026年3月18日の議会証言の公式PDF
https://www.intelligence.senate.gov/wp-content/uploads/2026/03/os-gabbard-031826.pdf
上院情報委員会での開会演説(トルシ・ギャバード国家情報長官が議会証言の際に提出した、報告書のハイライトをまとめた演説資料
関連資料:2026(U)ANNUAL THREAT ASSESSMENTOF THE U.S. INTELLIGENCE COMMUNITY March 2026

