ドイツのメディア「Bild」:虚偽情報か2024年10月29日 08:23

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【概要】

 トルコのBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)への加盟に関する誤報を指摘し、その訂正を行っている。具体的には、ドイツのメディア「Bild」が、インドがトルコのBRICS加盟申請をパキスタンとの関係を理由に拒否したと報じた点について、トルコの「Center for Combating Disinformation(虚偽情報対策センター)」が反論し、この問題が最新のBRICSサミットで議題にすら上がっていなかったことを明らかにしたと述べている。また、記事内で引用されたトルコの外交政策専門家も、自身の発言が意図通りに伝えられていないと主張している。

 インドのジャーナリストSidhant Sibalの報道を参照し、BRICSがトルコを含む10数カ国にパートナーシップを付与する方向で合意していることや、クレムリンの報道官Dmitry Peskovが「全員がトルコを招待することに関心を持っている」と述べたことを指摘している。BRICS加盟は議論に参加する権利を付与する一方で、パートナーシップはリアルタイムでの議論の観察を可能にし、一定の名声を伴うものの、正式な加盟とは異なると説明している。

 トルコは、自身を新興の大国と見なしており、少なくともBRICSの「金融多極化」議論の観察権を有する権利があると考えている。また、トルコはその地政学的な位置と経済的影響力を背景に、ユーラシアでの「Middle Corridor(中間回廊)」構想を通じて、金融の多極化を促進する上で重要な役割を果たしうるとされている。この点について、ロシアも支持しており、トルコのエルドアン大統領はBRICSプラス/アウトリーチ会議に参加するために招待された。

 インドは、カシミール紛争のような対立点があるものの、トルコのこの役割を評価しており、自国の利益や安全保障に直接関わらない限り、積極的に反対することはないと考えられている。インドの戦略は、各勢力間の微妙なバランスをとりながら最大限の利益を得ることであり、BRICSにおけるトルコのパートナーシップは、その戦略に大きな影響を与えないものと見られている。

 さらに、ロシアとインドがBRICSの拡張を巡って対立した証拠も見当たらないため、Bildの報道は信頼性に欠けると結論づけている。トルコ自身がBildの報道を否定したことにより、この報道がBildの信頼性に悪影響を与え、同紙を信頼性の低いタブロイド紙として位置づける結果となったとしている。
 
【詳細】

 トルコのBRICS加盟に関するドイツのメディア「Bild」による誤報と、その反証の詳細を述べている。具体的に、「Bild」はトルコがBRICS加盟を求めた際、パキスタンとの密接な関係を理由にインドがこれを拒否したと報じたが、トルコ政府の「Center for Combating Disinformation(虚偽情報対策センター)」がこの報道に反論し、BRICS加盟問題はそもそも最新のBRICSサミットの議題には含まれていなかったと述べた。この反論は、Bildの報道が根拠を欠いていることを示しており、トルコの外交政策専門家も自身の発言が正しく伝えられていないと強調した。

 加えて、インドのジャーナリストであるSidhant Sibalが、BRICSはトルコを含む十数カ国にパートナーシップの地位を与える方針であると報じており、ロシアのクレムリン報道官Dmitry Peskovも「BRICS全体がトルコの参加に関心を持っている」と述べていることが引用されている。ここでBRICSの「パートナーシップ地位」とは、正式加盟とは異なり、BRICS加盟国とリアルタイムでの議論や政策協議の進行を観察する権利を指し、形式的な名誉の側面も含まれるが、加盟国と同等の議決権や発言権は与えられない。多くの国がこのパートナーシップ地位を望んでいるのは、BRICSと密接な関係を築き、議論の方向性を直接把握することによって、金融の多極化などの分野で自国の影響力を増すためである。

 トルコはその一環としてBRICSの議論に参加することを目指しており、新興大国としての地位からBRICSの金融多極化の議論を観察する権利を有すると考えている。この点において、トルコは自国の地政学的な特性を生かし、ユーラシア大陸での中間回廊(Middle Corridor)構想により、地域内での経済影響力を強化し、結果として金融の多極化プロセスの加速に貢献するとしている。この中間回廊はトルコがアジアとヨーロッパを結ぶ貿易・エネルギー・物流のルートとして重要な位置を占める戦略であり、BRICSが目指す金融的多極化においてトルコの影響力を認識させる役割を果たしている。ロシアもこの点でトルコの戦略的価値を認め、エルドアン大統領をBRICSプラス/アウトリーチ会議に招待した。

 インドに関しては、カシミール問題などトルコと対立する側面があるものの、BRICSにおけるトルコの役割については一定の評価をしているとされている。インドの外交政策は多方面との関係強化を目指し、それぞれの利点を享受する「多角的な連携」を模索するものであり、自国の安全保障や国家的利益に直接的に関わる問題でない限りは、第三国の動きに反対することを避ける戦略である。トルコのBRICSとの関係の強化は、インドの国益に対して直接的な影響を及ぼすとは見なされていない。

 加えて、今回のBRICSサミットにおいてロシアとインドがトルコの参加をめぐって対立した形跡もないため、Bildの報道には根拠が薄く、虚偽情報と見なされている。Bildの報道は結果的に同紙の信頼性を損なうものであり、トルコの公式な反論により、Bildが誤った情報を基に報道を行ったことが露呈した。このことは、Bildの報道が信頼性に欠けるタブロイド紙としてのイメージを強め、慎重な情報提供を行うメディアとは見なされなくなる原因の一つとなっている。
 
【要点】

 ・ドイツのメディア「Bild」は、インドがパキスタンとの関係を理由にトルコのBRICS加盟申請を拒否したと報道。
 ・トルコの「虚偽情報対策センター」がこれを反論し、BRICSサミットでは加盟申請が議題にすら上がっていなかったと指摘。
 ・記事内で引用されたトルコの外交専門家も、発言が意図通りに伝わっていないと主張。
 ・インドのジャーナリストSidhant Sibalは、BRICSがトルコを含む複数国に「パートナーシップ地位」を与える方向で合意していると報道。
 ・ロシアの報道官Dmitry Peskovも「全員がトルコを招待したいと考えている」と述べ、トルコの参加に前向きな立場を示す。
 ・BRICS加盟は、議論参加権を与えるものの、パートナーシップ地位はリアルタイムでの議論観察を可能とし、一定の名誉も伴うが、正式な加盟国の権限は無い。
 ・トルコはユーラシアでの「中間回廊」構想を通じて、金融多極化に貢献できる立場にあり、ロシアもこれを評価し、エルドアン大統領をBRICSプラス/アウトリーチ会議に招待。
 ・インドは、カシミール紛争などでトルコと対立点はあるものの、自国に直接的な影響がない限り、第三国の動きに反対することを避ける方針。
 ・トルコのBRICSとの関係強化は、インドの安全保障や国益に大きな影響を与えるものとは見なされていない。
 ・ロシアとインドがBRICSサミットでトルコの参加を巡って対立した証拠もなく、Bildの報道は根拠が乏しく、誤報であると結論。
結果的に、トルコの反論によりBildの信頼性が損なわれ、信頼に足る情報源と見なされなくなる要因となった。

【引用・参照・底本】

Turkiye Debunked Bild’s Fake News About India Reportedly Vetoing Its BRICS Membership Request Andrew Korybko's Newsletter 2024.10.28
https://korybko.substack.com/p/turkiye-debunked-bilds-fake-news?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=150827008&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

政治と金の結果2024年10月29日 08:48

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【桃源寸評】

 勿論、政治と金の問題だけではない。金を目指す其の体質と無能が向かう先、つまり、国民軽視、米国(西側)一辺倒の詣で振りが問題なのだ。特に米国に顎で使われる主権喪失の対応が、世界の大きな潮流に逆らい国家利益を溝に捨てていることだ。

 要は、自民政権は世界の対極を見失い、国を売っているのだ。根本的には自民党を排さなければ、此の国はじり貧となる。

 国民は苦しんでいるのだ。

【寸評 完】

【概要】

 2024年10月27日、与党である自民党(LDP)が衆議院選挙で過半数を失い、石破茂首相にとって大きな打撃となった。自民党は選挙前の247議席から191議席に減少し、公明党と合わせても過半数には届かず、与党連合全体で215議席と、下院(衆議院)の過半数(465議席の半数)を大きく下回っている。石破首相は当面辞任する意向はなく、今後は安定的な政権運営のために、与党連合外から支持を確保する必要が生じている。

 選挙結果は、日本国内で自民党への不信感が高まっていることを示している。特に長年の政治と金に関する問題や経済政策への不満が有権者の支持を失わせた要因として挙げられている。中国清華大学のLiu Jiangyong副学長は、自民党の長期政権が腐敗問題を深刻化させたと指摘し、また中国社会科学院のLü Yaodong副所長は、自民党が経済問題を解決できなかったことが有権者の忍耐を限界に達させたと述べた。両者は、特にアベノミクス以来の株価上昇や投資家優遇政策が一般市民には実感されにくい一方、円安やインフレが生活を圧迫していることを問題視している。

 今回の敗北で、石破首相の政策推進は大きな制約を受ける見通しであり、与党内外からの支援を得ることが難航する可能性がある。さらに、野党は与党との連携を拒否する意向を示しており、来年7月の参議院選挙までには新たな政局が予想されている。
 
【詳細】

 1.衆議院選挙結果

 2024年10月27日に行われた衆議院選挙で、与党連合(自民党と公明党)は議席を大幅に減らし、衆議院の過半数(233議席)を失った。自民党(LDP)は247議席から191議席に減少、公明党も8議席減少し24議席となり、連合全体で215議席と過半数に届かなかった。

 2.石破茂首相の対応

 石破茂首相は辞任せず、今後も政権運営を続ける意向を示している。しかし、与党連合が過半数を失ったため、安定した政権を維持するには連合外の政党から支持を得る必要が生じている。このため、石破首相は他党との協力を模索するも、主要な野党が連携に難色を示しており、難航が予想される。

 3.与党に対する国民の不信感

 今回の選挙結果は自民党への不信感の高まりを示しており、その要因の一つとして「政治と金」問題が挙げられている。清華大学のLiu Jiangyong副学長は、自民党の長期政権によって腐敗が深刻化したと指摘しており、選挙結果に影響を与えたと分析している。公明党も幹部が落選するなど、連合全体が厳しい結果に直面している。

 4.経済政策への不満

 中国社会科学院のLü Yaodong副所長によれば、自民党の経済政策、特に「アベノミクス」以降の政策が一部で評価される一方で、多くの国民にとって実感が乏しかったとされる。アベノミクスは株価上昇と投資家の利益を促進したが、一般の労働者にとっては、円安やインフレの影響で生活コストが増加し、生活が圧迫される結果となっている。このため、経済政策に対する不満が高まり、選挙で自民党支持離れを引き起こしたとみられる。

 5.野党の対応と今後の政局

 選挙後、主要な野党(立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組など)は、自民党との連携に消極的な姿勢を示している。そのため、石破政権は重要法案の審議や政策推進において多数の支持を得ることが難しい状況であり、「ねじれ国会」のような停滞が生じる可能性が高まっている。また、来年7月に予定されている参議院選挙までは政局が不安定になることが予想される。

 6.石破政権の外交・防衛政策への影響

 石破首相は中国との関係改善や米国との同盟関係で対等性を強調した政策を掲げているほか、「アジア版NATO」構想を提唱してきた。しかし、今回の議席減少によって、これらの政策推進に向けた政治的基盤が弱まる見込みである。一方で、政権内の保守派の影響力が依然として強く、憲法改正や軍備拡張の議論も続くと考えられる。

 7.中国の反応

 中国外交部のLin Jian報道官は、日本の選挙について「日本の内政問題」とし、コメントを避けている。ただし、日本との関係を安定・健全に発展させることが双方の利益に資するとの立場を強調し、日中関係を「新時代にふさわしいものにする」ための協力を呼びかけた。
 
【要点】

 ・2024年10月27日、日本の衆議院選挙で与党連合が過半数を失う。
 ・自民党(LDP)は247議席から191議席に減少し、公明党を含む連合全体でも215議席にとどまる。
 ・石破茂首相は辞任しない意向を示し、政権維持のために連合外から支持を模索する必要がある。
 ・選挙結果は「政治と金」問題や自民党の長期政権に対する不信感の高まりを示している。
 ・清華大学のLiu Jiangyong副学長は、長期的な腐敗問題が敗北の原因であると分析。
 ・中国社会科学院のLü Yaodong副所長は、アベノミクス以来の経済政策が株価を押し上げた一方で、円安やインフレにより生活への影響が大きかったと指摘。
 ・石破首相は、内政や改革の推進において大きな困難に直面し、野党も与党との協力を拒否する姿勢を示している。
 ・来年7月に予定される参議院選挙まで政局が不安定になる可能性がある。

【引用・参照・底本】

Japan's ruling coalition loses majority in a blow to PM GT 2024.10.28
https://www.globaltimes.cn/page/202410/1322019.shtml

アフリカの平和団体「ピース・プロ」:BRICSに訴え2024年10月29日 10:36

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【概要】

 アフリカの平和団体「ピース・プロ」が、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に対し、ガザにおけるイスラエルの行動を「犯罪」として非難し、これに対抗する責任を担うよう求めた。この団体の声明によれば、国際機関がガザにおける民間人支援や国際法の履行において期待に応えられていないと指摘している。

 声明はナイジェリアにおいて発表され、ピース・プロのアブドゥルラザク・ハムザト事務局長は、BRICSが「シオニスト政権イスラエル」の行動に対し、強い姿勢を示すよう呼びかけた。また、同氏は国連総会や国連安保理がイスラエルの行動に対して有効な対応を取っていないこと、国際刑事裁判所も実効的な措置を講じていない現状に対し、深い失望感を表明した。

 さらに声明では、「現状において倫理的権威や行動力を備えた国際機関が存在していない」とし、「BRICSがこの問題を受け入れ、対策を講じなければ、世界的に正義と平和の追求が失敗する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。この発言は、BRICSがガザ情勢における主導的な役割を果たすべきとする強い意向を示している。

【詳細】

 「ピース・プロ」の声明には、BRICSがガザ情勢における主導的役割を担うべきだという強い訴えが含まれている。BRICS加盟国に対し、イスラエルの行動に迅速かつ明確な立場を示し、行動するよう求める一方、既存の国際機関や組織がガザでの現状に対して十分な対応をしていないと指摘した。

 具体的には、声明は国連総会や国連安保理に対し、イスラエルが占領地で行うとされる行為について決議や行動が無視されていると強く非難し、「これらの国際機関が国際法を守るための役割を果たしていない」としている。また、アブドゥルラザク・ハムザト事務局長は、特に国際刑事裁判所(ICC)への不満を述べ、ICCが断固たる措置を取っていないことも問題視し、これによりガザの民間人が保護されず、国際法が無視される状況が続いているとした。

 声明によると、ピース・プロは現在の国際情勢を「倫理的権威と行動能力を備えた機関が存在しない」状況としており、ガザの民間人を守る役割を担うべき新たな国際的リーダーシップを求めている。BRICSがこの役割を引き受けることで、国際的な正義と平和が保たれる可能性があり、それが実現されなければ「正義と平和の敗北」となるだろうと警告した。
 
【要点】

 ・アフリカの平和団体「ピース・プロ」は、ガザにおけるイスラエルの行動を「犯罪」として非難し、BRICSが主導的な役割を果たすよう求めている。
 ・同団体は、国際社会がガザに対して必要な支援や法の施行を果たしていないと強調した。
 ・声明は、特に国連総会や国連安保理がイスラエルの行動を抑止できていない点を問題視し、国際刑事裁判所(ICC)の消極的な対応にも失望を表明している。
 ・アブドゥルラザク・ハムザト事務局長は、BRICSが「シオニスト政権イスラエル」に対し、強い姿勢をとり責任を追及する必要があると主張。
 ・同声明では、現在の国際機関に「倫理的権威と行動力が欠けている」とし、新たなリーダーシップが求められていると述べた。
 ・BRICSがこの問題に積極的に取り組まない場合、国際的な正義と平和が失敗する危機があると警鐘を鳴らしている。

【引用・参照・底本】

アフリカ平和団体が、BRICSにイスラエルの犯罪阻止を要請 ParsToday 2024.10.28
https://parstoday.ir/ja/news/world-i126056

脱ドル化の具体的手法2024年10月29日 10:56

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【概要】

 ロシアのリャブコフ外務次官は、西側諸国がBRICSの提唱する脱ドル化プロセスに参加するためには、「目的の透明性」が求められると述べた。BRICSの議長国として活動しているロシアは、リャブコフ次官の指導のもとで、貿易のドル依存を削減し、複数の合意書にその内容を正式に取り入れることに成功している。次回の議長国はブラジルが務め、このプロセスの継続が期待されている。

 また、リャブコフ次官は、西側諸国の制裁が「違法」と見なされている点を強調し、それが脱ドル化の必要性を高める要因と指摘した。こうした背景から、BRICS諸国は脱ドル化の実行に際して発生しうるリスクに備え、制裁の影響からの保護策や解決方法も検討されていると述べている。

 BRICSは、2006年にブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国で設立され、後に南アフリカが加盟した。さらに、近年の拡張により、イラン、エジプト、UAE、エチオピアなどが新たに加盟している。10月24日まで行われたBRICS首脳会議では、イランからはマスウード・ペゼシュキヤーン大統領が主要な出席者として参加した。この会議では、加盟国間の協力強化や、特に金融面での連携が議論されたと考えられる。

【詳細】

 ロシアのリャブコフ外務次官は、新興経済国グループBRICSが進める「脱ドル化」プロセスについて、特に西側諸国がこれに参加するためには「目的の透明性」が不可欠であると述べた。彼の発言は、BRICSが推進する世界貿易におけるドル依存からの脱却の流れを支持し、参加を希望する西側諸国に対し、明確な意図を持って行動することが求められるという立場を示している。

 リャブコフ次官は、ロシアが議長国を務める現在のBRICS体制下で、ドルの影響力を削減するための重要な取り組みが進行中であることを明かし、複数の国際合意によりその内容が正式に定められたことを強調した。さらに、この脱ドル化の進展は今後、ブラジルが次期議長国として引き継ぐ形で継続される予定である。

 また、リャブコフ次官は、西側諸国による制裁措置が「違法」とされる背景を踏まえ、脱ドル化には一定のリスクが伴うと指摘した。こうした制裁リスクに対処するため、BRICS内では代替的な金融システムや保護策の構築も模索されている。これにより、BRICS加盟国はドル圏外での取引や資産管理を進め、制裁の影響を軽減することができると考えられている。

 BRICSは、もともと2006年にブラジル、ロシア、インド、中国が中心となって発足し、2010年に南アフリカが加わった。その後、2020年代に入り、イラン、エジプト、UAE、エチオピアが正式加盟国として加入した。今回の首脳会議では、10月24日までにこれらの国々が一堂に会し、特に金融、貿易、安全保障の分野における協力強化が議題として取り上げられた。イランからはマスウード・ペゼシュキヤーン大統領が代表として出席し、BRICSの新興国同士の協調による地位強化や脱ドル化の実行力の強化に向けた意見交換が行われたと考えられている。

 リャブコフ次官の発言は、BRICSが脱ドル化を通じて多極的な金融秩序を形成することを目指し、世界経済における従来のドル支配を打破しようとする意図を示唆しているといえる。BRICSはこれを実現するために、加盟国間の取引にドル以外の通貨(例えば人民元など)を活用する手法を模索しており、また、共通通貨や貿易決済のための新たな金融機関設立なども検討されているとの見解がある。
 
【要点】

 ・リャブコフ外務次官の発言: 西側諸国がBRICSの脱ドル化プロセスに参加するには「目的の透明性」が必須であると述べ、西側諸国が明確な意図を持って参加する必要があると強調。

 ・ロシアの取り組み: ロシアはBRICSの議長国として、ドルの影響力削減を進め、複数の合意書で脱ドル化の方針を正式化。

 ・今後の継続: このプロセスは、次期議長国であるブラジルに引き継がれ、引き続き推進される予定。

 ・制裁とリスク: リャブコフ次官は、西側諸国による「違法な制裁」が脱ドル化を加速させる背景であるとし、制裁リスクに対応するための保護策も検討していると言及。

 ・BRICSの拡張: BRICSは当初ブラジル、ロシア、インド、中国で構成され、後に南アフリカが加盟。その後、2020年代にイラン、エジプト、UAE、エチオピアも加入。

 ・BRICS首脳会議: 10月24日まで開催された首脳会議にて、イランからはマスウード・ペゼシュキヤーン大統領が出席。加盟国間の金融・貿易・安全保障分野での協力強化が議題に。

 ・脱ドル化の具体的手法: BRICS加盟国は、ドル以外の通貨での取引推進、共通通貨の検討、貿易決済専用の新たな金融機関設立なども模索中。

 ・多極的金融秩序の形成: リャブコフ次官の発言から、BRICSは多極的な金融秩序を目指し、ドル支配に依存しない経済構造を築く意図が見える。

【引用・参照・底本】

BRICSが西側諸国に提示した脱ドル化プロセスへの参加条件 ParsToday 2024.10.26
https://parstoday.ir/ja/news/world-i126032

ジェイク・サリバン米大統領補佐官:パレスチナ抵抗勢力を「アメリカの敵」2024年10月29日 11:58

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【概要】

 イスラエルとパレスチナの関係には、70年以上にわたる激しい対立が背景にある。イスラエルは1948年の建国以来、パレスチナの土地や資源の大部分を奪い、パレスチナ人をその地から排除してきた。この過程で、西側諸国、特にアメリカやEU、イギリスは「イスラエルには自衛権がある」としてイスラエル側を支持し続け、イスラエルによる軍事行動を事実上容認してきた。しかし、その「自衛」という名の下で、民間人への被害が広範囲にわたって発生している。

 具体例として、2022年8月にイスラエルがガザ地区を3日間空爆し、17人の子供を含む49人のパレスチナ人が死亡した際も、アメリカやEUはイスラエルの自衛権を支持するにとどまった。さらに、過去には1951年のガザ侵攻での虐殺や、1956年のハーン・ユーニスの砲撃事件など、イスラエルによるパレスチナ人やアラブ人への暴力行為が繰り返されてきた。1956年の事件では、数百人の民間人が犠牲となり、難民キャンプの住民が無差別に銃撃されるなど、大規模な人権侵害が行われたことが報告されている。

 また、1967年の第三次中東戦争では、イスラエルはガザを再び占領し、7万5千人のパレスチナ人をその地から追放した。この後、ガザ地区は「捕虜収容所」とも形容される地域となり、以降もイスラエルの空爆が続けられ、数多くの民間人が犠牲になっている。

 こうした状況の中でも、アメリカや西欧諸国はイスラエルに対する支援を続けており、ジェイク・サリバン米大統領補佐官はパレスチナ抵抗勢力を「アメリカの敵」と呼ぶなど、強硬な姿勢を見せています。イスラエルの「自衛権」を支持する国際社会の一方で、パレスチナにおける人権侵害や戦争犯罪が増加している現状は、根本的な解決を見出せないまま深刻化しています。

【詳細】

 イスラエルとパレスチナの対立は、歴史的背景、地政学的要因、宗教的な対立が絡み合い、非常に複雑な状況を生んでいる。以下に、主要な出来事とその影響を詳細に説明する。

1. 歴史的背景

 ・オスマン帝国とイギリス委任統治: イスラエルとパレスチナの地域は、オスマン帝国の一部でしたが、第一次世界大戦後、イギリスが委任統治を開始した。1917年のバルフォア宣言で、イギリスはユダヤ人国家の設立を支持したが、パレスチナ人の権利には言及しなかった。

 ・1948年のイスラエル建国: 1948年、イスラエルが独立を宣言し、周辺アラブ諸国との戦争が勃発した。この戦争により、約70万人のパレスチナ人が難民となり、多くの人が故郷を追われた。この出来事は、パレスチナ人にとって「ナクバ(大惨事)」と呼ばれ、彼らの民族的アイデンティティの形成に影響を与えた。

2. 軍事行動と人権侵害

 ・ガザ侵攻(1951年): イスラエルは1951年にガザ地区に侵攻し、パレスチナ人やエジプト人を殺害し、住宅を破壊した。この侵攻は、国際社会から「意図的な虐殺」として非難された。

 ・1956年スエズ危機: イスラエルはエジプトに対して軍事行動を起こし、民間人を含む数百人が死亡した。この事件は、イスラエルの軍事戦略の一環として位置づけられている。

 ・1967年の第三次中東戦争: イスラエルはガザとヨルダン川西岸を占領し、70,000人以上のパレスチナ人が追放された。この戦争後、パレスチナの土地と水資源の多くがイスラエルによって占有され、長期的な軍事占領が続いた。

 3. 現代の状況

 ・2014年のガザ戦争: イスラエルとハマスの間で発生したこの戦争では、2,200人以上のパレスチナ人が死亡し、その大多数が民間人であった。国際社会からの非難が高まったが、イスラエルは自衛権を主張し続けた。

 ・2022年の空爆: 2022年8月、イスラエルはガザを空爆し、49人が死亡した。この際も、米国やEUはイスラエルの行動を支持し、パレスチナの民間人への影響については懸念を表明するにとどまった。

 4. 国際的な反応

 ・西側諸国の姿勢: アメリカは常にイスラエルを支持しており、軍事援助や外交的保護を行っている。一方、EU諸国も多くはイスラエルに対して柔軟な姿勢を示し、パレスチナの人権侵害に関しては口を閉ざすことが多い。

 ・国際法と戦争犯罪: イスラエルの行動は国際法に照らして非難されることが多いが、具体的な制裁措置はほとんど取られていない。国連は数多くの決議を採択しているが、実行力に欠けている。

 5. パレスチナの抵抗と現状

 ・抵抗運動: パレスチナの抵抗は、武力闘争や非暴力運動の両方を含む。特に若い世代の間で非暴力的な抵抗運動が盛んであるが、厳しい抑圧に直面している。

 ・人道的危機: ガザ地区は経済的に困窮しており、ブロック経済や軍事攻撃により人道的危機が深刻化している。病院や学校の破壊、生活基盤の喪失が進行中である。

 このように、イスラエルとパレスチナの対立は単なる地域的な問題ではなく、国際的な影響をも及ぼす重大な問題である。双方の歴史的なgrievancesや地政学的な要因が複雑に絡み合っており、解決が難しい状況が続いている。
 
【要点】

 イスラエルとパレスチナの対立の概要

 1.歴史的背景

 ・オスマン帝国: 地域はオスマン帝国の一部。
 ・イギリスの委任統治: 第一次世界大戦後、イギリスが委任統治を開始。バルフォア宣言でユダヤ人国家の設立を支持。
 ・1948年のイスラエル建国: 独立宣言後、周辺アラブ諸国との戦争が勃発。約70万人のパレスチナ人が難民となる。

 2.軍事行動と人権侵害

 ・ガザ侵攻(1951年): イスラエルによるガザ侵攻で民間人を含む多くの犠牲者が出る。
 ・1956年スエズ危機: イスラエルがエジプトに対して軍事行動を起こす。多数の民間人が死亡。
 ・1967年の第三次中東戦争: イスラエルがガザとヨルダン川西岸を占領し、70,000人以上が追放される。

 3.現代の状況

 ・2014年のガザ戦争: イスラエルとハマスの戦争で2,200人以上のパレスチナ人が死亡。
 ・2022年の空爆: イスラエルによるガザの空爆で49人が死亡。

 4.国際的な反応

 ・西側諸国の姿勢: アメリカはイスラエルを支持し、EUも柔軟な姿勢を示すことが多い。
 ・国際法: イスラエルの行動は国際法に照らして非難されるが、制裁措置はほとんど取られていない。

 5.パレスチナの抵抗と現状

 ・抵抗運動: 武力闘争と非暴力運動が共存。若い世代による非暴力的な抵抗が盛ん。
 ・人道的危機: ガザ地区は経済的困窮が進行し、生活基盤が破壊されている。

【引用・参照・底本】

10.7は70年間の殺戮・入植への返答/西側が語ろうとしない歴史 ParsToday 2024.10.27
https://parstoday.ir/ja/news/west_asia-i126048