自身を映す鏡を持たぬ国、米国2025年06月02日 20:41

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【概要】

 2025年6月1日、シンガポールで開催された第22回シャングリラ・ダイアローグにおいて、アメリカ国防長官が中国に対して否定的な発言を行い、「中国の脅威」論を誇張したことに対し、中国国防部の報道官であるZhang Xiaogang氏は、中国国防部の公式WeChatアカウントを通じてコメントを発表した。

 Zhang氏は、アメリカはシャングリラ・ダイアローグの場を利用して争いを作り、対立を煽り、自己の利益を追求することに慣れていると指摘した。アメリカ国防長官の発言は、覇権主義的な論理、いじめのような行動、冷戦的な思考に満ちており、中国の主権と利益を著しく挑発し、中国の政策的立場を歪曲し、地域諸国が繁栄と安定を維持しようとする共同の努力を著しく無視するものであると述べた。こうしたアメリカの姿勢は、世界各国が平和と発展を求める共通の願いとかけ離れており、中国はこれに対し強い不満と断固たる反対を表明するものであるとした。

 またZhang氏は、アメリカの行動は国際社会に明らかであると述べ、アメリカは自己中心的な利益に基づいて、関税戦争や貿易戦争を仕掛け、世界中に高額な関税を課していると指摘した。さらに、排他的な同盟を形成し、陣営対立を助長しており、多くの国々に深刻な懸念を引き起こしているとも述べた。アメリカはアジア太平洋地域における軍事展開を強化し、他国の内政に対する干渉を繰り返し、緊張を煽っている。こうした事実は繰り返し証明されており、アメリカが時代の流れに逆行し、単独行動をとっていることは、最終的にアメリカ自身に跳ね返る結果になるとZhang氏は強調した。

 さらに、台湾問題については純然たる中国の内政問題であり、アメリカに対して無責任な発言や、台湾問題を中国封じ込めの交渉材料として利用する権利はないと主張した。中国人民解放軍は国家の主権と領土の完全性を断固として守り、「台湾独立」の分裂行為およびいかなる外部勢力の干渉も粉砕する強い決意を持ち、その能力と手段も信頼に足るものであると述べた。

 またZhang氏は、南シナ海が国際的に最も繁忙かつ安全な海上輸送ルートの一つであるとした上で、中国は関係国との対話と協議を通じて問題を解決し、法律に基づき領土主権と海洋権益を守り、地域諸国とともに平和、友情、協力の海を築いていくと述べた。これに対し、アメリカは同盟を結成し混乱を引き起こそうとしており、地域の平和と安定に対する最大の脅威となっていると非難した。

 最後にZhang氏は、中国はアジア太平洋地域における平和と発展の擁護者かつ推進者であると強調し、中国軍は地域諸国と協力して、アジア太平洋を害する覇権主義に反対し、地政学的対立の持ち込みに反対し、混乱を引き起こすいかなる国や勢力にも抵抗すると表明した。また、中国は「人類運命共同体」の理念および「三大全球イニシアティブ」の積極的な実行を通じて、アジア太平洋地域の長期的な平和、安定、繁栄の維持に努めるとしている。

【詳細】 

 概要と背景

 本声明は、2025年5月31日から6月2日までシンガポールで開催された第22回アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)において、アメリカ国防長官が中国に対する批判的発言を行ったことに対する、中国側の公式な反応である。会議は地域安全保障に関するハイレベルな多国間対話の場であり、アメリカと中国の間の戦略的対立の舞台ともなっている。

 中国国防部報道官 Zhang Xiaogang氏の発言内容の詳細

 1. 米国の「中国脅威論」への批判

 Zhang氏は、米国国防長官の発言が「根深い覇権主義的思考」「いじめ的行為」「冷戦的発想」によって貫かれており、中国の主権・安全保障・発展利益を著しく損なうものであると非難した。こうした発言は中国の政策や立場を歪曲し、地域諸国が共同で築こうとしている平和・安定の努力を侮辱するものであり、極めて無責任かつ危険であるとの認識を示した。

 注解:ここで言う「覇権主義」とは、米国が国際秩序を自国中心で構築しようとする態度を指し、「冷戦的思考」は敵対する陣営同士の対立構造を現代に持ち込もうとする姿勢を意味する。

 また、中国政府としては、このような米国の態度は世界の多数の国々が望む「平和と発展」という時代の潮流と大きく乖離しており、強い不満と断固たる反対を表明するとした。

 2. 米国の国際行動と「自己利益優先主義」への批判

 Zhang氏は、米国が自己中心的利益に基づき、以下のような国際的行動を取っていると列挙した:

 ・関税戦争・貿易戦争の主導:特定国に対し高関税を課し、経済的圧力を行使。

 ・排他的な同盟形成:NATOやAUKUSなどの軍事同盟を通じて他国を囲い込み、敵味方の二分構造を創出。

 ・アジア太平洋地域への軍事的前方展開:軍艦や戦闘機の展開、合同軍事演習の増加。

 ・他国の内政干渉:民主主義・人権を理由に他国の内政に介入。

 ・地域の緊張煽動:南シナ海や台湾海峡などのホットスポットで意図的に対立を激化。

 これらは「一国主義」的であり、国際社会の多極化や協調的秩序構築の流れに反するものであると非難している。最終的には、こうした行動が「ブーメランのように」アメリカ自身の不利益となって跳ね返ってくるであろうと強調した。

 3. 台湾問題に対する断固たる立場

 Zhang氏は、台湾問題が「純粋に中国の内政問題」であり、米国に口出しする資格も権利も一切存在しないと明言した。また、米国が台湾を「交渉のカード」として利用することは決して許容できず、断固反対する姿勢を明らかにした。

 軍事的警告の要素も含まれており、「中国人民解放軍は国家の主権と領土の完全性を断固として守る」「いかなる『台湾独立』分裂行為や外部勢力の干渉も粉砕する」としたうえで、「われわれの意志は揺るがず、能力と手段は信頼に足る」と軍事的抑止力の行使を仄めかしている。

 4. 南シナ海問題に対する立場と対米批判

 Zhang氏は、南シナ海について、国際的に「最も重要かつ安全な海上交通路の一つ」とされた上で、中国は関係諸国との「対話と協議による平和的解決」を堅持し、「国際法に基づく領土主権と海洋権益の維持」を継続すると述べた。

一方、米国は同地域において同盟関係を利用し「混乱を意図的に引き起こしている」と非難し、「地域の平和と安定に対する最大の脅威」だと断じた。

 5. 中国のアジア太平洋地域における役割と展望

 最後にZhang氏は、中国がアジア太平洋地域において「平和と発展の守護者および推進者」であると強調した。

 ・覇権主義への反対

 ・地政学的対立の導入への反対

 ・混乱を引き起こすいかなる国・勢力への抵抗

を中国軍が地域諸国と連携して実行する方針を示した。

 さらに、習近平国家主席が提唱した理念である「人類運命共同体」や、「グローバル発展イニシアティブ」「グローバル安全保障イニシアティブ」「グローバル文明イニシアティブ」という三大イニシアティブを積極的に実行し、アジア太平洋の「長期的かつ安定的な繁栄の構築」に貢献することを表明した。

 総括

 この声明は、米中対立が深まる中で、中国が国際社会および地域諸国に対し、アメリカに対抗する立場を鮮明に打ち出したものである。軍事的側面、外交的原則、法的主張、そして理念的価値観のすべてにおいて、主導権を握ろうとする中国の姿勢が全面に表れている。声明はまた、中国の内政に対する干渉や地域の不安定化に対し、必要な場合は強硬な対応も辞さないという抑止的メッセージを国際社会に対して発信するものである。

【要点】 

 米国の「中国脅威論」への批判

 ・アメリカ国防長官の発言は「覇権主義的論理」「いじめ的行為」「冷戦思考」に基づいていると指摘。

 ・中国の主権・安全保障・政策立場を歪曲し、地域諸国の平和・安定への努力を無視している。

 ・世界の国々が望む「平和と発展」という共通の願いと著しく乖離している。

 ・中国はこのような発言に対して強い不満と断固たる反対を表明する。

 米国の一方的行動への非難

 ・米国は自己の利益を最優先し、国際秩序に混乱をもたらしている。

  ➢関税戦争・貿易戦争を仕掛け、世界各国に不当な関税を課している。

  ➢排他的な同盟(例:AUKUS)を形成し、陣営対立を煽っている。

  ➢アジア太平洋地域への軍事展開を強化している。

  ➢他国の内政に干渉し、緊張と対立を引き起こしている。

 ・米国のこうした行為は「時代の潮流に逆行する」ものであり、最終的に米国自身に不利益をもたらす。

 台湾問題に対する断固たる立場

 ・台湾問題は中国の内政問題であり、米国に発言権はない。

 ・米国が台湾を対中牽制の「交渉材料」に使うことは断じて許されない。

 ・中国人民解放軍は国家の主権・領土の一体性を守る責任を負っている。

 ・「台湾独立」勢力や外部からの干渉は断固として粉砕される。

 ・中国の決意は揺るがず、能力・手段は信頼に値する。

 南シナ海問題における立場と米国批判

 ・南シナ海は国際的に重要かつ安全な海上交通路である。

 ・中国は関係諸国との対話と協議により問題を解決する方針である。

 ・中国は国際法に基づき、領土主権と海洋権益を堅持する。

 ・米国は同盟を組んで対立を煽り、地域の平和と安定に最大の脅威を与えている。

 アジア太平洋地域における中国の役割と展望

 ・中国はアジア太平洋における「平和と発展の守護者・推進者」である。

 ・中国軍は地域諸国と共に以下の行動を取る:

  ➢覇権主義に反対。

  ➢地政学的対立の導入に反対。

  ➢外部勢力による混乱の創出に抵抗。

 ・習近平国家主席が提唱する「人類運命共同体」や「三大全球イニシアティブ」(発展・安全保障・文明)を積極的に実行する。

 ・アジア太平洋地域の「長期的平和・安定・繁栄」の構築に貢献する意志を強調。

【桃源寸評】💚

 自身を映す鏡を持たぬ国、米国

 歴代および現行の米国政権の行動に見られる「卑しさ」や「品性の低さ」と見做され得る側面について、以下に忌憚なく、厳正かつ系統的に詳述する。

 Ⅰ. 利己的覇権主義の露骨な展開

 ・米国は自国の政治的・経済的利益を最優先するあまり、他国の主権や国際的合意をしばしば無視してきた。

 ・「自由」や「民主主義」の名の下に、実際には自国に有利な体制や政権の樹立を画策し、対米従属を強いる行為が常態化している。

 ・他国の政変・内戦・選挙に対してあからさまな干渉を行い、民意を踏みにじることを厭わない。

 Ⅱ. 経済制裁とドル覇権による脅迫外交

 ・国際通貨としてのドルの地位を武器に、米国は制裁措置や金融封鎖を通じて、政敵と見なす国家を経済的に締め上げてきた。

 ・これらの措置は、しばしば民間人に対する深刻な影響(食料・医療不足等)を伴い、国際人道法上の疑義も生じ得る。

 ・制裁の根拠は米国内法に基づくものであり、主権国家に対する「越権行為」「経済的覇権の乱用」にほかならない。

 Ⅲ. 軍事介入と武力による威圧

 ・アフガニスタン、イラク、リビア、シリアなどに対する軍事侵攻は、「大量破壊兵器の存在」や「テロとの戦い」といった偽りの大義名分の下で実施された。

 ・結果として、数百万の民間人が死傷・避難を余儀なくされ、国家機能の崩壊と無秩序の拡大をもたらした。

 ・「正義」を標榜しつつも、実際には地政学的利権や軍需産業の利益が介在していることが多く、道義的正当性に大いなる疑問が残る。

 Ⅳ. 同盟と価値観の「恫喝的運用」

 ・同盟国に対しても、米国はしばしば「パートナーシップ」とは名ばかりの従属的関係を強要している。

 ・対中・対露戦略に協調しない国に対しては、安全保障・貿易・技術などあらゆる分野で圧力を加え、「踏み絵」を迫る傾向が強い。

 ・「価値観外交」の名の下に、自国に都合のよい「民主」「人権」の定義を押し付け、他国の文化的・政治的多様性を軽視している。

 Ⅴ. 偽善的言動と二重基準

 ・自国に不都合な国や勢力に対しては「人権侵害」を声高に叫ぶが、同時に自国の同盟国による抑圧・弾圧には目をつむるという典型的な二重基準を示している。

 ・例:サウジアラビア、イスラエル、ウクライナなどに対しては極めて寛容であり、同様の行為を行う国々に対しては厳しく糾弾。

 ・言行不一致は国際社会における信用失墜を招き、「価値観の輸出」が空虚なスローガンに堕している。

 Ⅵ. 内政の腐敗と品性劣化の外部化

 ・自国社会における格差、警察暴力、人種差別、政治分断など、根深い問題を抱えながら、それを他国批判の材料に転嫁する傾向がある。

 ・内政不安や政権支持率低下を補うために、対外的に敵を作り出すという「外部スケープゴート戦略」が恒常化している。

 ・国際舞台での発言や行動において、尊大で尊重を欠いた姿勢がしばしば露呈し、品格と謙抑を欠く態度が国際的反感を招いている。

 総括

 米国政権は、「自由と民主」を旗印に掲げつつも、その実態は利己主義・覇権主義・偽善主義の複合体であり、しばしば他国の尊厳と安定を踏みにじる傲慢な振る舞いに終始している。

 こうした振る舞いは、「世界の警察」ではなく「世界の干渉者」としての実像を露呈させ、国際秩序に対する真の脅威となっている。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

US will only harm itself: Chinese defense ministry slams US defense chief for hyping ‘China threat’ at Shangri-La Dialogue GT 2025.06.01
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1335227.shtml

異口同音の米比2025年06月02日 22:14

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【概要】

 2025年6月1日、シンガポールで開催された第22回シャングリラ・ダイアローグの第5回全体会議において、フィリピンのギルベルト・テオドロ国防長官は、演説の中で中国に対し繰り返し攻撃的な発言を行った。彼は、南シナ海問題において中国が言行不一致であると主張し、その発言は厳しく、強い言葉で表現された。

 会議終了後、会場出口でグローバル・タイムズの記者がテオドロ長官に近づき、「中国とフィリピン(南シナ海問題に関して)には解決策があると思いますか?」と質問した。テオドロ長官はこれに対し何の返答もせず、その場を速やかに立ち去った。彼の軍事護衛官がこのインタビューを妨げた。

【詳細】 

 2025年6月1日にシンガポールで開催された第22回シャングリラ・ダイアローグは、アジア太平洋地域の主要な国防フォーラムである。その第5回全体会議において、フィリピンのギルベルト・テオドロ国防長官は、南シナ海における中国の行動を強く非難する演説を行った。

 テオドロ長官は演説の中で、中国が南シナ海問題において「言行不一致である」と繰り返し主張し、「中国政府が公平かつ公正とみなすものは、世界の他の国々、特に小国が受け入れている規範や価値観とは著しく対照的である」と述べた。彼はさらに、「中国主導の国際秩序を思い描くには、南シナ海におけるはるかに小さな隣国に対する中国の扱い方を見るだけでよい」と述べ、中国が地域で威圧的な行動をとっていると示唆した。また、南シナ海のような戦略的な海上交通路の混乱が、世界の経済に広範な影響を与えることにも言及した。

 会議が終了し、テオドロ長官が会場の出口に向かっていた際、中国共産党機関紙である「環球時報(Global Times)」の記者が彼に接近し、「中国とフィリピン(南シナ海問題に関して)には解決策があると思いますか?」と質問した。しかし、テオドロ長官はこの質問に対し、何の返答もすることなく、迅速にその場を立ち去った。彼の同行していた軍事護衛官が、記者のインタビューの試みを物理的に妨害した。

 この出来事は、南シナ海問題における中国とフィリピン間の緊張の深さを浮き彫りにするものである。フィリピン側は、中国が「プロパガンダ」と称する質問を、中国の代表団が会期中に行ったことにも不満を表明している。フィリピンの国防当局者は、中国の「ジャーナリストを装った者」が、議定書に反してフィリピンの軍関係者を追いかけ、選別された映像を用いて「フィリピン軍司令官が質問をかわした」という誤解を招くような記事を作成したと非難している。テオドロ長官自身も、中国側が正式な国防関係者を送らず、代わりに「ジャーナリストを装った若い人々、つまり彼らの諜報員」を送って質問をさせ、その後「ねじ曲げられた物語」を作り上げていると批判している。

 このように、シャングリラ・ダイアローグの場においても、南シナ海問題における中国とフィリピンの対立は鮮明に表れ、相互不信が根強い状況が示された。

【要点】 

 会議での発言

 ・第5回全体会議にて、テオドロ長官は中国に対し繰り返し攻撃的な発言を行った。

 ・南シナ海問題において中国が「言行不一致」であると強く批判した。
中国の行動が「世界の他の国々、特に小国が受け入れている規範や価値観とは著しく対照的」であると述べた。

 ・中国主導の国際秩序を評価するには「南シナ海におけるはるかに小さな隣国に対する

 ・中国の扱い方を見るだけでよい」と示唆し、中国の威圧的な行動を非難した。

 ・南シナ海の海上交通路の混乱が世界経済に及ぼす影響についても言及した。

 グローバル・タイムズ記者との遭遇

 ・会議終了後、会場出口でグローバル・タイムズの記者がテオドロ長官に接近した。

 ・記者は「中国とフィリピン(南シナ海問題に関して)には解決策があると思いますか?」と質問した。

 テオドロ長官の反応と護衛の妨害

 ・テオドロ長官は質問に対し、何の返答もせず、その場を速やかに立ち去った。

 ・彼の軍事護衛官が、記者のインタビューの試みを物理的に妨害した。

 背景にある対立:

 ・この出来事は、南シナ海問題における中国とフィリピン間の根深い緊張と相互不信を浮き彫りにした。

 ・フィリピン側は、中国が会議中に「プロパガンダ」と称する質問を、ジャーナリストを装った「諜報員」にさせていると批判している。

 ・テオドロ長官自身も、中国側が正式な国防関係者ではなく、「ジャーナリストを装った若い人々」を使って質問させ、その後「ねじ曲げられた物語」を作成していると非難している。

【桃源寸評】💚

 主権国家の恥

 フィリピンが米国と同調していると見られる「異口同音」の関係は、単なる同盟関係を超え、親分・子分の関係と見なされ批判されることがある。この関係は、フィリピンの外交政策が米国の戦略的利益に過度に左右され、真の国益が損なわれているのではないかという懸念を招いている。

 米国に追従するフィリピン外交への批判

 フィリピンが米国と「異口同音」の関係にあると指摘されるのは、南シナ海問題における米国の強硬な姿勢に、フィリピンが強く同調している点が挙げられる。例えば、国際的な場で中国を批判する際に、フィリピンの主張が米国のそれをなぞっているかのように聞こえることがある。これは、フィリピンが自らの主権的立場から独立した外交を展開しているとは言えず、米国の意向を汲んだ発言をしていると受け取られかねない。

 フィリピンの国家利益と自律性の問題

 この「親分・子分」の関係は、フィリピン自身の国家利益にとって本当に最善なのかという根本的な問いを投げかける。米国に過度に依存することは、外交的な選択肢を狭め、特に地域の大国である中国との関係において、不必要な緊張を生み出す可能性がある。南シナ海問題はフィリピンにとって死活問題であるが、米国との「異口同音」は、対話や多角的な解決策の模索を阻害し、結果的にフィリピンの安全保障をより不安定にするリスクを孕んでいる。

 また、国内的には、米国との「親密すぎる」関係は、国家としての自律性や尊厳を損なうものと見なされることもある。国民の間には、自国が他国の都合の良い駒として利用されているのではないかという疑念が生じ、ナショナリズムの観点から批判の対象となることも少なくない。

 真の同盟とは何か

 真の同盟関係は、互いの主権と国益を尊重し、対等な立場で協力し合うことで築かれるべきである。しかし、フィリピンが米国との関係において「異口同音」であると批判されるのは、この対等性の原則が揺らいでいるように見えるためである。フィリピンは、自国の地理的、経済的、政治的状況を考慮し、米国だけでなく、多様な国々とのバランスの取れた関係を構築することで、真の国益を追求すべきだと言えるだろう。

 このような批判は、フィリピンが米国との同盟関係を再評価し、より自律的で多角的な外交戦略を追求することの重要性を示唆する。

 米国の「親分・子分」関係が西側諸国にもたらす主権の課題

 米国とその同盟国、いわゆる「西側諸国」の関係は、しばしば共有する価値観や民主主義の原則に基づいて語られる。しかし、現実にはフィリピンの事例と同様に、米国の強大な影響力の下で、同盟国が自国の主権を「忘れ」、あるいは「侵害されている」かのような状況が見られることがある。これは、単なる協力関係を超え、大国が小国を従属させる「親分・子分」の関係と批判されることも少なくない。

 西側諸国の主権の「忘れ」と「侵害」

 このような「主権の忘れ」や「侵害」は、具体的に以下の様な形で現れる。

 安全保障政策における過度な依存: 多くの西側同盟国は、自国の防衛を米国の軍事力や核の傘に大きく依存している。これにより、自国の安全保障戦略を独自に立案する能力が低下し、米国の戦略的利益が自国の利益よりも優先されがちになる。例えば、特定の地域紛争への関与や軍事費の増額要求など、米国の意向に沿わざるを得ない状況が生じる。

 外交政策における同調圧力: 国際社会の主要な問題において、西側同国が米国の外交方針に強く同調する傾向が見られる。国連などの国際機関での投票行動や、特定の国に対する制裁措置など、自国の独立した外交判断よりも、米国の「お墨付き」を得ることを優先するあまり、多様な選択肢を検討する機会を逸することがある。これは、特に経済的な結びつきが強い国々との関係において、不必要な摩擦を生む可能性もはらんでいる。

 経済政策における影響: 米国は、その経済力と国際金融システムにおける影響力を用いて、同盟国の経済政策に間接的な圧力をかけることがある。例えば、特定の貿易相手国との関係見直しや、投資先の規制強化など、米国の経済的利益が同盟国の経済的自律性よりも優先されるケースが指摘される。

 情報共有と監視: 米国と同盟国間での情報共有は安全保障上重要であるが、時に米国の情報機関による同盟国内での広範な情報収集活動が、同盟国の主権を侵害しているとの批判を生むことがある。これは、市民のプライバシー保護や国家の機密保持といった観点から問題視されることがある。

 主権の再認識と対等な関係の構築

 これらの点は、西側諸国が自国の主権をいかに守り、真に対等な関係を米国と構築できるかという課題を浮き彫りにする。同盟関係は相互利益に基づくべきであり、一方的な従属関係であってはならない。各国が自国の国益を深く追求し、多様な選択肢を検討する能力を持つことが、国際社会の安定と発展にも繋がる。

 この「親分・子分」関係は、西側諸国の個々の強みと多様性を弱め、国際的な課題解決における独立した視点や建設的な批判精神を損なう可能性を秘めている。各国が自国の主権を再認識し、より自律的な外交を展開することが、真に強靭で持続可能な国際協調の基盤となるのではないだろうか。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

US will only harm itself: Chinese defense ministry slams US defense chief for hyping ‘China threat’ at Shangri-La Dialogue GT 2025.06.01
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1335227.shtml

中国:エジプで680基以上の井戸を掘削2025年06月02日 22:36

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【概要】

 中国の掘削技術がエジプトの砂漠を農地に変える

 2025年5月3日に撮影された写真には、エジプト・新渓谷県の砂漠地帯で実施されている「オワイナート水井戸プロジェクト」の現場で、夜間に稼働する掘削リグの様子が写されている。

 かつて砂と岩が広がるばかりであったエジプト西部砂漠に、夏の訪れとともに緑豊かな農地が点在するようになった。これは、中国のZhongman石油天然ガス集団(ZPEC)のエジプト支社が掘削した深井戸によるものであり、現在では小麦、アルファルファ、ジャガイモが整然と植えられた畑で育っている。

 これらの井戸は、農業目的での砂漠地帯の再開発という広範な取り組みの一環であり、不毛の地を生産的な農地へと転換させたものである。これは、乾燥地における持続可能な開発モデルの提示であり、食料安全保障や生態系の回復といった課題に対し、国際協力が有効であることを示している。

 このプロジェクトは、「一帯一路」構想の質の高い協力の一例とされる。エジプトにおける同構想は、インフラ整備を超え、農業、技術、産業にまで及ぶ変革的な協力プラットフォームとして発展している。食料不足、失業、技術格差といった課題への対処を通じて、より強靭で持続可能な成長の基盤を築くことに寄与している。

 生命の資源を求めて

 人口1億人を超えるエジプトにおいて、耕作可能な土地は国土の約4%に過ぎず、農地の拡大は喫緊の課題である。2015年以降、政府は食料輸入依存を減らすために砂漠の再開発を推進しており、水資源の開発がその中核をなしている。

 ZPECは2016年よりエジプトで活動しており、シナイ半島からアスワンにかけて全国で680基以上の井戸を掘削してきた。

 ZPECの「オワイナート井戸掘削プロジェクト」の責任者であるZhao Baojiang氏によると、同チームは約1年で450メートル深の井戸を63基掘削した。過酷な高温、砂嵐、複雑な地質、物流上の課題を克服しての成果である。

 エジプト政府が推進する「エジプトの未来」農業プロジェクトのオワイナート区画を管理するアブ・エルヒール・イブラヒム氏は、「今年、初めて小麦の収穫を迎えており、中国企業との協力に満足している」と語った。

 小麦はエジプトの主食であり、国連食糧農業機関の報告によれば、同国の一人当たり年間消費量は約146キログラムに上る。

 オワイナート区画の電気機械部門責任者モハメド・エルホサリー氏は、1フェダン(約0.42ヘクタール)の農地で最大3トンの小麦収穫が可能と推定している。

 ZPECエジプト支社のゼネラルマネージャー、Zhao Wutao氏は、「1フェダンの収穫量は、少なくとも20人分の年間消費を賄える」と説明した。

 技術革新の恩恵

 カイロから南に360キロ離れたミニャー県では、ZPECはエジプトとアラブ首長国連邦の合弁会社「カナル・シュガー・カンパニー」の農場支援にも従事している。この農場では、製糖工場向けに砂糖用ビートの栽培が行われている。

 同地の地下水層は不安定で、大口径掘削は崩落や漏水のリスクが高いという技術的課題が存在する。ZPECのエジプト支社業務責任者アブメサラム・モハメド・グーダ氏によると、同社の技術チームはこれを克服するために「エアーフォーム掘削技術」を導入した。これは、安定した発泡剤を掘削液として用い、漏水防止と効率向上を図る技術である。この手法は、後に地元企業にも共有された。

 カナル・シュガー農場の技術責任者であるハッサン・ガマル氏によれば、ZPECが掘削した193基の井戸は、3万フェダン(1万2600ヘクタール)の灌漑を可能にしており、2023年には2万2000フェダン(9240ヘクタール)のビートが栽培され、製糖・販売された。「ZPECの井戸がなければ、これは不可能であった」と同氏は語った。

 ZPECの活動は、農業のみならず、地元雇用や技術研修の促進にも寄与している。

 5年前にZPECに労働者として入社したモハメド・ガーベル氏は、現在ではプラットフォーム・マネージャーとして勤務している。彼は、「中国人の同僚から技術を学び、困難を乗り越える手助けを得た。チームの支えがあって自分も努力を続けられた」と述べた。

 発展するパートナーシップ

 エジプト国内では、これらのプロジェクトが単なるインフラ整備にとどまらず、食料安全保障、安定収入、将来への希望といった側面でも重要な意味を持つと評価されている。

 カイロにある高等農業協力研究所の学長アフマド・ガラール氏は、「中国企業による農業開発への貢献は注目に値する。水資源の開発は農業の発展に直結し、今後の継続を期待する」と語った。

 掘削プロジェクトは、一帯一路構想の下における中エジプト協力の一部にすぎない。他にも、新首都の中央ビジネス地区、サダト市の繊維都市、アイン・ソフナにある中国・エジプト経済貿易協力区などが挙げられる。これらのプロジェクトは、雇用創出や産業化、共同発展の推進力と見なされている。

 エジプト政治経済・統計・法学協会の会員ワリード・ガバラー氏は、「中国は、雇用と生活水準の向上に寄与する開発パートナーとしての認識を高めている」と述べた。さらに、再生可能エネルギー、電気自動車、先進製造業における中国の技術的リーダーシップに触れ、「参加国がこれらの技術に手頃な価格でアクセスできれば、生活様式に大きな変革がもたらされる」と指摘した。

 同様に、ガラール氏も中国からの更なる投資に期待を寄せ、「エジプトにとって、こうした投資は非常に必要であり、今後も全分野での協力が進むことを願う。これは互恵的で、共同発展をもたらす『ウィン・ウィン』の関係である」と述べた。

【詳細】 

 概要

 本報道は、中国のZhongman石油天然ガス集団(ZPEC)がエジプトにおいて展開している井戸掘削プロジェクトを中心に、中国の技術協力がエジプトの農業・インフラ・経済発展にどのように貢献しているかを具体的に紹介するものである。本プロジェクトは、「一帯一路(Belt and Road Initiative, BRI)」の枠組みに基づくものであり、単なるインフラ整備を超えて、農業・雇用・技術移転・持続可能性といった多方面にわたる影響を及ぼしている。

 1. 背景と目的

 エジプトは総人口が1億人を超えるが、国土のうち耕作可能な土地は全体の約4%にすぎない。そのため、同国は食料の大部分を輸入に依存しており、慢性的な食料安全保障の課題を抱えている。2015年以降、エジプト政府は食料自給率の向上と農地拡大を国家戦略と位置付け、特に砂漠地帯の再開発に注力してきた。

 水資源の確保がこの戦略の核心を成しており、井戸掘削技術が必要不可欠である。この文脈の中で、中国のZPECが2016年以降、エジプト国内で数百基の井戸を掘削してきた。

 2. ZPECの活動内容と技術的挑戦

 ZPEC(中国Zhongman石油天然ガス集団)は、エジプト各地で深井戸掘削を展開しており、その活動範囲はシナイ半島から南部のアスワンにまで及ぶ。

 オワイナートプロジェクト

 ・新渓谷県の砂漠地帯における「オワイナート水井戸プロジェクト」では、ZPECが63基の井戸を掘削。

 ・各井戸の深さは約450メートル。

 ・工期は1年未満であったが、高温、砂嵐、地質の複雑さ、物資輸送の困難など、厳しい条件を克服して掘削を完了した。

 技術と人材

 ・ZPECは中国人技術者とエジプト人労働者の混成チームで作業を行っている。

 ・技能移転の成果として、現地の労働者が短期間で技能を習得し、昇進して管理職に就く例も出ている。

 ・例えば、モハメド・ガーベル氏は入社5年で現場責任者(プラットフォーム・マネージャー)に昇格している。

 3. 農業への影響と収穫実績

 ZPECの掘削によって確保された水資源は、エジプト西部砂漠において農業生産を可能にした。

 ・オワイナート地域では、小麦、アルファルファ(飼料用牧草)、ジャガイモなどの作物が栽培されている。

 ・オワイナート農業プロジェクト責任者によれば、2025年に初の小麦収穫が実現した。

 ・電気機械部門責任者モハメド・エルホサリー氏によると、1フェダン(約0.42ヘクタール)あたり最大3トンの小麦が収穫可能とされており、これは20人分の年間小麦消費量に相当する。

 4. 他地域への展開と技術革新

 ミニャー県での取り組み

 ・ミニャー県では、エジプトとアラブ首長国連邦の合弁企業「カナル・シュガー・カンパニー」の農場開発にZPECが関与。

 ・目的は砂糖用ビートの大規模生産であり、製糖工場と連動して経済効果が見込まれている。

 技術的課題と対応策

 ・当地の地下水層は不安定であり、大口径掘削では井戸壁の崩壊や漏水のリスクがあった。

 ・ZPECは「エアーフォーム掘削技術(空気泡掘削技術)」を導入。この技術では、掘削液として発泡材を用い、地層への圧力を安定させることにより、漏水を防ぎ効率も向上させる。

 ・この技術は現地企業とも共有され、掘削全体の効率改善にも貢献している。

 成果

 ・ZPECはミニャー県において193基の井戸を掘削。
 ・これにより、3万フェダン(約1万2600ヘクタール)の農地灌漑が可能となった。
 ・2023年には2万2000フェダン(約9240ヘクタール)のビートが栽培され、製糖・販売された。

 5. 雇用・技能・地域社会への波及効果

 ・ZPECのプロジェクトはエジプト人労働者の雇用を創出し、技能移転を伴っている。

 ・技術訓練は中国人技術者からエジプト人作業員へと実践的に行われており、現場マネジメント能力の向上に資している。

 ・一例として、5年で労働者から管理者に昇格した人材も存在することが紹介されている。

 6. 政府・学術界からの評価と今後の展望

 ・カイロの高等農業協力研究所のアフマド・ガラール学長は、ZPECによる水資源開発が農業発展に直結するとして高く評価している。

 ・経済学者ワリード・ガバラー氏は、中国との協力が雇用創出と生活水準の改善に資する「開発パートナー」としての役割を果たしていると述べた。

 ・また、再生可能エネルギー、電気自動車、先進製造業といった分野での中国の優位性に注目が集まり、それらの技術が今後エジプトに導入されれば、社会全体の構造が転換する可能性があると指摘された。

 7. 一帯一路構想の広がりと相互利益

 ・井戸掘削プロジェクトは、「一帯一路構想」に基づく中エジプト協力の一端に過ぎず、他にも以下のような共同プロジェクトが進行中である:

 ・新行政首都の中央ビジネス地区(CBD)建設

 ・サダト市の繊維工業団地

 ・アイン・ソフナにおける中国・エジプト経済貿易協力区

 ・これらは産業化・都市化を推進し、エジプトの経済構造転換に寄与している。

 ・ガラール学長は、「我々エジプトはこのような投資を必要としており、協力は相互利益に基づいた“ウィン・ウィン”の関係である」とし、今後の更なる拡大に期待を寄せた。

 結語

 本報道は、エジプトにおける中国企業の活動が農業開発・雇用創出・技術移転・地域社会の安定化に多角的に貢献していることを、具体的事例と関係者の証言をもとに示したものである。これらの活動は、エジプトの課題解決に寄与するだけでなく、中国とエジプトの経済的・技術的パートナーシップの深化を象徴している。

【要点】 

 全体概要

 ・中国企業ZPEC(Zhongman石油天然ガス集団)がエジプトの砂漠地帯で井戸を掘削し、農業用水を確保。

 ・これにより、エジプト西部砂漠に農地が広がり、小麦などの作物の生産が可能となった。

 ・同プロジェクトは一帯一路構想(BRI)の一環であり、農業・雇用・技術移転など多方面に波及。

 背景

 ・エジプトの耕作可能地は国土の約4%のみ。

 ・人口増加と食料輸入依存のため、政府は2015年から砂漠の農地化を推進。

 ・水源開発が農業振興の鍵となっている。

 ZPECの取り組み

 ・2016年からエジプトで活動開始。

 ・これまでに全国で680基以上の井戸を掘削(シナイ半島~アスワンまで)。

 ・現地従業員と中国人技術者の混成チームで運営。

 オワイナート・プロジェクト(新渓谷県)

 ・63基の井戸を約1年で掘削(深さ450m程度)。

 ・高温・砂嵐・複雑な地質・物流課題を克服。

 ・収穫作物:小麦・アルファルファ・ジャガイモ。

 ・小麦は1フェダンあたり約3トン収穫 → 約20人分の年間消費量をカバー。

 ・「未来のエジプト農業プロジェクト」の一環として展開。

 ミニャー県での技術革新

 ・カナル・シュガー社(エジプトとUAEの合弁)の砂糖ビート農場支援。

 ・地下水層の不安定さと大口径掘削による崩壊・漏水リスクが課題。

 ・空気泡掘削(エアーフォーム・ドリリング)技術を導入し、効率と安全性を向上。

 ・掘削した193基の井戸により3万フェダン(1万2600ha)を灌漑。

 ・2023年には2万2000フェダン(9240ha)でビート栽培 → 製糖・販売。

 雇用・技能移転

 ・多数の現地労働者が採用され、技能研修を受けて管理職に昇格。

 ・例:入社5年でプラットフォーム責任者となったモハメド・ガーベル氏。

 ・中国人スタッフから直接技術指導を受け、現場で実践的に成長。

 地元からの評価

 ・高等農業協力研究所学長アフマド・ガラール氏:「水資源開発は農業発展に直結。今後も継続を望む」。

 ・経済学者ワリード・ガバラー氏:「中国は雇用創出と生活水準向上に貢献する開発パートナー」。

 ・中国の再生可能エネルギー・EV・先進製造技術への期待も大きい。

 一帯一路構想の広がり

 ・井戸掘削以外のプロジェクト例:

  ☞新行政首都の中央ビジネス地区(CBD)建設

  ☞サダト市の繊維工業団地

  ☞アイン・ソフナにおける中埃経済貿易協力区

 ・これらは産業化・雇用創出・地域開発の原動力。

 総括

 ・ZPECの技術と活動は、農業生産力の拡大、食料安全保障の強化、現地雇用の創出、技能移転に貢献。

 ・中国とエジプトの協力は「相互利益」「共通発展」を体現しており、今後の拡大が期待されている。

【桃源寸評】💚

 水さえあれば砂漠でも農業が可能か

  ―砂漠での農業:可能性と条件 ―

 水さえあれば砂漠でも農業が可能かという疑問は重要であり、本件の核心のひとつである。

 基本的な前提

 ・砂漠土壌は有機物・粘土分が少なく、保水性・保肥性が極めて低い。

 ・そのため、従来は農業に不向きとされていた。

 水の確保が第一条件

 ・地下深層からの安定した灌漑用水の供給が、砂漠農業を成立させる絶対条件。

 ・本事例では、中国の掘削技術によって450m級の深井戸から地下水を確保。

 補完的な土壌改良

 ・水だけでなく、以下の技術が併用されている可能性が高い

 ・堆肥や有機物の施用(土壌の保水性・栄養保持力向上)

 ・生分解性ポリマーの利用(保水資材)

 ・点滴灌漑システム(水の無駄を最小限に)

 作物の選定

 ・選ばれた作物(小麦・アルファルファ・ジャガイモ・ビートなど)

  ➢比較的乾燥に強い品種や、砂壌土でも栽培可能な作物。

  ➢特に小麦は短期間で収穫できるため、水管理の自由度が高い。

 ― 実際に砂で作物が育つのか ―

 理論上は可能

 ・砂は排水性が良いため、過湿による根腐れリスクは低い。

 ・適切な灌漑と肥料管理があれば、むしろ病害虫リスクが少ないという利点も。

 現場での成功例

 ・エジプトのオワイナート地域やミニャー県で実際に収穫が行われていることが報告されている。

 ・これは「水さえあれば育つ」というよりも、「水+技術+管理があって初めて成立」する事例である。

 この項まとめ

 ・「水さえあれば」作物が育つ、というのは一部正しいが、それは高度な掘削・灌漑・土壌改良技術が前提。

 ・エジプトのような乾燥国では、水の確保と管理がすべての鍵であり、中国の掘削技術はその基盤を提供したにすぎない。

 ・つまり、「水だけでは不十分、だが水がなければ始まらない」というのが、砂漠農業の実際である。

 ― 実際の砂漠農業では「土をつくる」努力が必要 ―

 人工的な土壌づくりの方法

 ・堆肥や家畜糞尿、有機残渣の投入

 ・微生物資材(菌根菌・納豆菌など)による活性化

 ・バイオチャー(炭素資材)で保水力強化

 ・緑肥植物の植栽→鋤き込みで有機物増加

 先進的な事例

 ・イスラエルや中国(内モンゴル)では、砂を「土のように使う」技術(例:土壌固化材や微生物利用)を開発。

 ・エジプトのようなプロジェクトでも、単に水を与えるだけではなく、こうした技術的介入が不可欠。

 補足:持続的農業のためには「土づくり」が中核

 ・土を育てずに収穫を続ければ、砂漠化が逆に進むリスクもある。

 ・よって、持続的に農業を行うには、「作物を育てながら、同時に土を育てる」という農業哲学が求められる。

 この項まとめ

 ・砂の上で作物を育てても、自然に「土」になるわけではない。

 ・しかし、作物+有機物+技術の組み合わせにより、徐々に土壌を作り出すことは可能である。

 ・これは自然任せではなく、人の手による「土づくり」=農業技術の核心である。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

Chinese well-drilling technology turns Egypt's deserts into farmland GT 2025.06.02
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1335246.shtml

♪世の中に、米ほどうるさき、ものはなし、自国棚上げ、他国批難す2025年06月02日 23:38

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【概要】

 中国国防省のZhang Xiaogang報道官が、米インド太平洋軍司令官の台湾に関する発言に対して反論したことを報じている。

 米インド太平洋軍司令官が「中国側が台湾奪還のための包括的な演習を実施しており、太平洋の他の地域でも活動を活発化させている」と主張したことに対し、Zhang Xiaogang報道官は木曜日にコメントした。Zhang報道官は、台湾海峡情勢において「台湾独立」分離主義者の挑発と外国勢力による妨害以上に不安定化させる要因はないと述べた。

 また、Zhang報道官は、台湾は中国の一部であり、台湾問題の解決は中国の事柄であり、外部からの干渉は許されないと主張した。中国側が国家主権と領土保全を守るために取る行動は、合法的、必要、適法かつ正当であるとした。さらに、Zhang報道官は米国に対し、台湾問題で煽動行為を止めるよう強く求め、そのような行為は自らに跳ね返ると付け加えた。

【詳細】 

 2025年5月29日のGlobal Timesの記事は、中国国防省報道官のZhang Xiaogang(Zhang Xiaogang)氏が、米国インド太平洋軍司令官による台湾に関する発言に反論したことを詳細に報じている。

 核心は、台湾問題に対する中国の揺るぎない立場と、米国がこの問題に関与することへの強い牽制にある。Zhang報道官は、米国インド太平洋軍司令官が「中国側が台湾奪還に向けた包括的な演習を実施しており、太平洋の他の地域でも活動を活発化させている」と主張したことに対し、明確に反論した。

 Zhang報道官は、以下の点を強調した。

 ・台湾海峡の不安定化要因: 台湾海峡の現状において、最も不安定な要素は「台湾独立」分離主義者による挑発と、外国勢力による介入であると指摘した。これは、中国が台湾問題の現状変更を試みているのではなく、分離主義勢力と外部からの干渉が不安定化の原因であるとの認識を示している。

 ・台湾は中国の一部: 台湾は中国の領土の不可分の一部であるという「一つの中国」原則を改めて強調した。

 ・内政不干渉の原則: 台湾問題の解決は、中国の内政であり、いかなる外部からの干渉も許されないと明言した。これは、米国を含む他国が台湾問題に介入することに対し、強い警告を発するものである。

 ・中国の行動の正当性: 中国側が国家主権と領土の一体性を守るために取る行動は、すべて合法的、必要、適法かつ正当であると主張した。これは、台湾周辺で行われる軍事演習やその他の行動が、中国の主権の行使であるという立場を示している。

 ・米国への警告: 米国に対し、台湾問題における煽動行為を止めるよう強く要求した。そのような行為は、最終的に米国自身に跳ね返ると警告し、米国の行動が地域全体の安定を損なう可能性があることを示唆した。

 この報道は、中国が台湾問題に関して非常に強硬な姿勢を維持しており、米国の関与に対しては断固として反発する意図があることを示している。特に、「煽動行為は自らに跳ね返る」という警告は、米国が台湾支援を強化する動きに対する中国の強い不満と、それに対する潜在的な対抗措置を示唆していると解釈できる。

 この報道がなされた時期は、国際的な安全保障会議であるシャングリラ・ダイアローグが開催される直前であり、米中間の緊張関係が高まっている状況下での発言として注目される。中国は今回のシャングリラ・ダイアローグに国防相を派遣せず、代わりに人民解放軍国防大学の代表団を派遣しており、米国とのハイレベルな対話の機会を避ける姿勢を見せていることも、この一連の動きと関連している可能性がある。

【要点】 

 ・発言の背景

 米インド太平洋軍司令官が、中国側が台湾奪還に向けた包括的演習を行い、太平洋地域で活動を活発化させていると主張したことに対する、中国国防省報道官・Zhang Xiaogang氏の反論である。

 ・台湾海峡情勢の不安定化要因

 Zhang報道官は、台湾海峡の状況を最も不安定にしているのは、「台湾独立」分離主義者による挑発と、外国勢力による妨害であると指摘した。

 ・台湾の地位

 Zhang報道官は、台湾は中国の一部であり、台湾問題の解決は中国の内政であるため、外部からの干渉は一切許されないと明言した。

 ・中国の行動の正当性

 中国側が国家主権と領土保全を守るために取る行動は、すべて合法的、必要、適法かつ正当であると主張した。

 ・米国への警告

 米国に対し、台湾問題における煽動行為を直ちに止めるよう強く要求した。

 そのような行動は、最終的に米国自身に跳ね返ると警告した。

【桃源寸評】💚

 ♪世の中に、米ほどうるさき、ものはなし、自国棚上げ、他国批難す♪

 太田南畝の狂歌に倣ってみた。ちょっと字余りであるが。

 米国の舌先三寸の介入は蚊の如し:台湾問題における無責任な扇動

 米国の台湾問題への介入は、「舌先三寸」と称されるように、その実態は「蚊の如し」であり、事態を悪化させるだけの無責任な扇動に過ぎない。中国国防省報道官が明確に指摘したように、台湾海峡の真の不安定化要因は、他ならぬ「台湾独立」を企図する分離主義者の挑発と、それに便乗する外部勢力の介入である。米国が自国の都合の良いように発言を繰り返すことは、火に油を注ぐ行為であり、地域全体の平和と安定を脅かす愚挙である。

 米国は、口先では「地域の安定」を唱えながら、その実、台湾への軍事支援を強化し、中国を牽制する姿勢を露骨に示している。これは、自国の地政学的利益を追求するための一方的な行動であり、台湾が中国の不可分の一部であるという国際社会の共通認識を故意に無視するものだ。台湾問題は中国の内政であり、いかなる外部勢力も干渉する権利はない。この基本原則を理解せず、あるいは理解しようとせず、無責任な言動を繰り返す米国の態度は、まさに「蚊が刺す」ような、取るに足らない嫌がらせに他ならない。

 米国の「舌先三寸」の介入は、台湾内部の分離主義勢力を不必要に刺激し、彼らに誤った期待を抱かせている。その結果、彼らはより過激な行動に走り、中国との間に緊張を高める要因となっている。米国は、このような行動が最終的に誰の利益にもならないことを理解すべきだ。煽動行為は必ず自らに跳ね返るという中国の警告は、単なる脅しではない。それは、歴史が示す紛れもない真実なのである。

 結局のところ、米国の台湾問題への介入は、地域の平和と安定を真剣に願うものではなく、自国の戦略的な目論見を優先する自己中心的な行為に過ぎない。その無責任な言動は、事態を混迷させ、深刻な結果を招く可能性をはらんでいる。米国は、その「蚊の如し」の介入が、いずれ大国間の衝突という「虎の尾」を踏むことになりかねないことを、深く認識すべきである。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

MND spokesperson refutes US Indo-Pacific chief's remarks on Taiwan island, urging US to stop fanning flames GT 2025.05.29
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1335101.shtml

米国:もはや「自由主義秩序の守護者」を自称する資格すらない2025年06月03日 23:19

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【概要】

 近頃、一部の米国当局者およびメディアが「米中間の緊張が再燃している」との言説を拡散し、中国が合意履行を「引き延ばしている」と非難している。ウォール・ストリート・ジャーナルは、「米中間の貿易休戦が崩壊の危機にある」と報じた。これらの報道は、メディアを通じた世論操作により中国に圧力をかけようとする試みであり、それ自体がジュネーブ合意の精神に反するものである。

 6月2日(月)、中国商務部はこうした根拠のない主張を明確に否定し、米国に対し誤った行動を直ちに正し、中国と協力してジュネーブで達成されたコンセンサスを共に守るよう呼びかけた。

 中米経済貿易協議におけるジュネーブ共同声明は、「相互開放、継続的な意思疎通、協力、相互尊重の精神に基づいて両国が前進する」ことを明記している。しかし、合意後、米国は一方的な措置を繰り返し、中国を標的とする差別的な制限措置を相次いで導入している。具体的には、AI半導体に関する輸出管理指針の発出、電子設計自動化(EDA)ソフトウェアの対中販売の制限、中国人留学生へのビザ取り消しの発表などが挙げられる。

 これらの行為が「相互開放、継続的な意思疎通、協力、相互尊重」の精神にどう合致するのか疑問である。むしろ、「進展が遅い」とされる原因は米国側にあるのではないか。

 事実に基づけば、中国はジュネーブでの経済貿易合意を誠実に履行し、共同声明に従って関税・非関税措置の一部を取り消す、あるいは一時停止するなどの対応を行ってきた。米国の挑発的な措置にもかかわらず、中国は一貫して全体の状況を優先し、経済・貿易摩擦の拡大を自制している。これは米国を恐れているからではなく、協議の継続と国際貿易システムの安定に対する誠意によるものである。

 ジュネーブ共同声明は、相互尊重と対等な協議に基づく重要な合意である。今後の中米間の緊張が激化するか否かは、米国が中国と同じ方向に進む意思があるか、そして誤った行動を正すかにかかっている。中国は合意履行において誠意を持って臨んでいるが、自国の正当な権益を守る姿勢も堅固である。米国は、中国に対して圧力や脅迫を用いるのが得策でないことを認識すべきである。過去、関税を用いた威圧政策で壁に突き当たったことを忘れてはならない。仮に同様の誤った手法で中国の利益を損なおうとすれば、再び同じ壁に直面することは不可避である。中国は不確実性に対応するための十分な能力と自信を備えている。

 さらに、輸出規制に関する主張についても誤解を正す必要がある。米国の一部では、中国が重要鉱物の管理によってグローバル・サプライチェーンを「締め付けている」と主張しているが、これは米国の二重基準と覇権的論理を露呈するものである。実際には、国家安全保障の概念を過度に拡張し、輸出規制を濫用し、違法な一方的制裁や「長腕管轄」を多用してきたのは米国の方である。

 中国外務省の報道官は、中国による希土類(レアアース)輸出管理措置は国際慣行に則ったものであり、特定の国を対象としたものではないと明言している。もし米国が自らを標的と見なすなら、それは経済・技術問題を政治化・武器化するという偏狭な思考が米国内で常態化し、病的な執着に陥っていることの表れである。

 中米がジュネーブで重要な成果を得ることができたのは、双方が「安定的・持続可能で、互恵的な経済・貿易関係が両国のみならず世界経済にとって重要である」との共通認識に基づいていたからである。この認識は、共同声明に明記され、国際社会にも公表された。また、米国の高官も「双方の代表団はデカップリングを望んでいないとのコンセンサスに至った」と認めている。この共通認識こそが、今後の対話の基盤である。

 仮にワシントンが本当に「相互開放、継続的な意思疎通、協力、相互尊重」の精神を反映した行動をとっているのであれば、米中の貿易関係は自然に健全で安定的かつ持続可能な発展に向かうはずであり、協議の進展も水が流れるようにスムーズに進むはずである。

 ジュネーブ会談後、米国のバイヤーからの注文は急増し、米中間の海運市場では船舶の需要が高まっている。これは、両国間の巨大な双方向需要を反映しており、国際社会が世界第1・第2の経済大国による安定した関係の維持と、世界経済成長への継続的貢献を望んでいる証左である。

 米国がゼロサム的思考や覇道的戦術を放棄し、開放性・包摂性・協力の姿勢で中米関係に臨むことを望む。ジュネーブで得られた合意は、容易に得られたものではない。今、米国がなすべきことは、口先だけでなく、実際に約束を履行することである。

【詳細】
 
 概要

 2025年春にスイス・ジュネーブで開催された中米経済貿易協議において合意された「ジュネーブ共同声明」の履行状況について論じるものである。中国側は、合意を誠実に実行している一方で、米国がこれに反する一方的かつ差別的な措置を相次いで講じており、それが両国間の緊張再燃の原因であると主張している。

 第一:米国側の情報操作および圧力行使の試み

 最近、米国の政府関係者および主要メディアは、中国が協議内容の履行を「意図的に遅らせている」かのような印象操作を行っている。ウォール・ストリート・ジャーナルは、「中米間の貿易休戦が崩壊の瀬戸際にある」との報道を行った。これらの論調は、世論の圧力を利用して中国に譲歩を迫ろうとするものであり、その手法自体が、合意文書に明記された「相互尊重・平等な協議」の原則に背反するものである。

 第二:中国商務部の公式見解と反論

 2025年6月2日、中国商務部はこうした報道と主張に対し、公式に「事実無根であり容認できない」と明確に反論した。さらに、米国側に対して直ちに誤った行動を是正し、中国と協力して、共にジュネーブ合意の履行を推進するよう求めた。

 第三:ジュネーブ共同声明の主旨と精神

 ジュネーブで発表された共同声明には、以下の原則が明示されている。

 ・相互開放

 ・継続的な意思疎通

 ・協力の深化

 ・相互尊重

 この合意は、中米双方が建設的で対等な姿勢をもって経済・貿易関係を安定させるという共通認識に基づいて締結されたものである。

 第四:米国側の一方的かつ対中差別的措置

 中国側の主張によれば、合意締結後に米国が講じた以下の措置は、ジュネーブ合意の趣旨に反しており、関係の安定化に逆行するものである:

 ・高性能AI半導体(AIチップ)に対する対中輸出管理措置の強化

 ・電子設計自動化(EDA)ソフトウェアの対中販売禁止

 ・一部の中国人学生に対するビザ発給の取り消し

 これらはすべて、中国の技術発展および人材交流に対する制限であり、事実上の経済封鎖的性質を帯びている。

 第五:中国の合意履行に対する誠意と抑制的対応

 中国は、共同声明に基づき、以下の措置をすでに講じたと説明している:

 ・米国の「報復関税」に対する一部の関税および非関税措置の撤廃または停止

 ・米国による挑発的措置に対する抑制的対応(報復の自制)

 中国はこのような対応を、「恐怖」や「屈服」によるものではなく、国際貿易秩序の安定と協議の持続可能性を重視した「責任ある大国」としての行動であると説明している。

 第六:米国に対する忠告と警告

 「もし米国が圧力や威圧を通じて中国に譲歩を迫るのであれば、それは過去の『関税恫喝』と同様に失敗に終わる」と強く警告している。中国は、自国の正当な権益を守る能力と決意を十分に備えており、今後いかなる「不確実性」にも対応できるとの自信を示している。

 第七:米国による輸出規制とその「二重基準」

 一部の米国メディアや政治家は、「中国が重要鉱物の輸出を通じて世界のサプライチェーンを人質に取っている」と非難しているが、中国側はこれに対し以下のように反論している:

 ・米国こそが国家安全保障を名目に輸出管理や制裁措置を濫用している

 ・中国の希土類(レアアース)輸出管理措置は国際慣行に合致しており、特定国を対象としたものではない

 ・「標的にされた」と受け取るのは、米国が経済・技術問題を政治的・戦略的に利用してきた結果である

 第八:合意の意義と今後の展望

 ジュネーブ合意は、米中両国が「デカップリング(経済切り離し)を望まない」という共通認識の上に築かれた重要な枠組みである。この合意の履行は、両国のみならず世界経済にとっても極めて重要である。

 会談後、以下のような具体的成果も生じている。

 ・米国から中国への注文が急増

 ・中国―米国間の海運需要が活況を呈している

 これらは、経済面での相互依存関係が依然として強固であり、世界もまた中米の安定的関係を望んでいることの証左である。

 まとめ:米国に求められる態度の転換

 中国側は、「ゼロサム思考や覇権主義的態度を捨て、開放性・包摂性・協調性に基づく新しい中米関係を構築すべきである」と提言している。ジュネーブで得られた合意は容易に得られたものではなく、今後は「言行一致」、すなわち米国が発言と行動を一致させ、真に誠実に合意履行に向かうことが期待される。

【要点】 

 1. 米国によるメディア操作と責任転嫁

 ・一部の米政府関係者およびメディアが「中国が合意履行を遅らせている」と報じ、中米関係の緊張を煽っている。

 ・これらの情報操作は、世論の圧力を利用して中国に譲歩を迫る手法であり、「相互尊重と平等な協議」の合意精神に反するものである。

 2. 中国商務部の正式な反論と立場表明

 ・中国商務部は、「米国の主張は根拠のないものであり、即時是正を求める」と発表。

 ・中国は合意履行に真摯に取り組んでいると強調。

 3. ジュネーブ共同声明の内容と基本原則

 ・共同声明は「相互開放・継続的対話・協力・相互尊重」の4原則を明記。

 ・両国は対立ではなく協調による問題解決を目指すと確認していた。

 4. 米国による合意に反する一方的措置

 ・合意後、米国は以下の措置を実施:

  ➢AI半導体の対中輸出制限

  ➢電子設計自動化(EDA)ソフトの販売規制

  ➢中国人学生のビザ取消し

 ・これらは合意の精神を損なうものであり、差別的である。

 5. 中国の誠意ある合意履行

 ・中国は米国の「報復関税」への対抗措置の一部を解除または停止。

 ・米国の挑発に対しても報復を自制し、国際貿易秩序の安定を優先している。

 ・これは「恐れ」ではなく「責任感」に基づく行動であると主張。

 6. 米国に対する警告

 ・中国は「圧力と威圧では問題解決できない」と警告。

 ・米国の過去の関税政策も失敗しており、同様の手法は再び壁にぶつかると指摘。

 ・中国はあらゆる不確実性に対応する能力と自信を持つとしている。

 7. 希土類輸出規制をめぐる反論

 ・米国は「中国が重要資源で世界の供給網を人質にしている」と批判。

 ・中国は、輸出管理措置は国際的な慣例に則り、特定国を対象にしていないと説明。

 ・米国が標的と感じるのは、自らの「経済の武器化」が原因であると主張。

 8. 合意の意義と実効性

 ・合意後、米中間の貿易需要が急増(注文増、海運活況)。

 ・これは合意の経済的効果と国際社会の支持を示すものである。

 ・世界は米中の安定した経済関係を望んでいる。

 9. 米国に求められる対応

 ・米国はゼロサム思考や覇権主義を捨てるべきである。

 ・合意を口先だけでなく行動で誠実に履行すべきである。

 ・中米関係の前進は「掘られた水路に自然に水が流れるように」進むべきである。

【桃源寸評】💚
 
 中国側がジュネーブ合意に誠実に対応していることを強調し、米国の一方的措置こそが問題の根源であると非難している。また、米国に対して態度の転換と実際の行動による履行を強く求めている。

 支離滅裂な米国

 米国の対中政策における支離滅裂ぶりは、既に理性と一貫性を完全に失っていると言わざるを得ない。中国とジュネーブにおいて「相互尊重」「協力」「開放性」「対話の継続」といった原則を明文化しながら、その舌の根も乾かぬうちに、露骨な二枚舌外交と敵対的行動に出ていることは、極めて悪質で欺瞞的である。

 一方で「対話の継続」を掲げながら、他方でAI半導体・EDAソフト・大学留学生などあらゆる分野での対中制限措置を強化している。これは、国際的な信義に背き、外交合意の価値を踏みにじる背信行為である。米国が合意を一方的に無効化しつつ、他方で「中国が進展を妨げている」と責任転嫁する構図は、まさに盗人猛々しいと言うほかない。

 さらに悪質なのは、米国が自国による輸出規制・制裁・技術封鎖の横暴を正当化しながら、中国が自国の戦略物資に対し取った極めて限定的な輸出管理措置については「サプライチェーンの人質化」などと非難する点である。これは典型的なダブルスタンダードであり、国際社会において自国だけを例外とする米国の傲慢な覇権主義の現れである。

 しかも、その言説の多くは、事実に基づくものではなく、米国国内の対中強硬派の政治的都合によって恣意的に構築されたものである。自己矛盾に満ちた主張を国際社会に押しつけることは、米国の信頼性を著しく損ねるのみならず、国際秩序全体に対する冒涜である。

 中国が国際合意を誠実に履行し、自制と協調の精神を堅持している一方、米国は自己の約束を公然と踏みにじりながら、責任は常に他者に転嫁する。このような一貫性のない外交姿勢、法の支配ではなく力によるルール変更、そして自身の行動を棚に上げて他国を非難する態度に、いかなる正統性も存在しない。

 米国は、もはや「自由主義秩序の守護者」を自称する資格すらない。言行不一致、約束不履行、そして選択的な法の適用という支離滅裂な姿勢が、真に世界経済の安定と協調を求める国際社会の期待に真っ向から背いていることを、断じて看過してはならない。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

Who exactly is undermining the China-US Geneva consensus?: Global Times editorial GT 2025.06.03
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1335286.shtml