新世代の有人打ち上げロケットである「長征10号」2024年12月07日 18:19

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【概要】
  
 中国の新世代の有人打ち上げロケットである「長征10号」は、月への移送軌道のペイロード容量を8.2トンから27トンに向上させる予定である。これは、中国運載火箭技術研究院(CALT)のロケット設計者であり、中国工程院の院士でもあるLong Lehao氏が明らかにしたものである。

 長征10号は、中国の月面着陸計画において、新世代の有人宇宙船や月着陸機を打ち上げるために開発されている。このロケットの開発は順調に進んでおり、第一段階の動力システム試験が完了したとされている。

 また、長征10号を基にした派生型が開発される予定であり、中国の宇宙ステーションの運用タスクを支援する有人および貨物ミッションや、さまざまな衛星の打ち上げ要求に対応することが可能であると述べている。

 さらに、Long氏は将来の重量級打ち上げロケット「長征9号」についても言及した。このロケットは直径10.6メートル、高さ約114メートルで、月への移送軌道のペイロード容量は50トンになる見込みである。長征9号は、液体酸素とメタンを極低温推進剤として使用し、将来的に有人火星ミッションの打ち上げに利用される予定である。

 長征9号は第一段および第二段が完全再利用可能な設計となっており、海上での回収を可能とする技術が採用される。最近の第15回中国国際航空宇宙博覧会で公開されたCALTのアニメーション映像では、再利用可能なロケットの第一段が降下中にグリッドフィンを展開し、海上プラットフォームの移動式レールによって捕捉される様子が描かれている。また、第二段は動力を使用した垂直着陸を行う設計となっている。

 Long氏によれば、この重量級打ち上げロケットの開発は、先進的な設計、高度な製造、原材料および部品など、関連する基礎産業の進歩に強力な推進力を与えるとされている。

【詳細】

 中国の新世代有人打ち上げロケット「長征10号」と重量級打ち上げロケット「長征9号」に関するさらなる詳細を以下に述べる。

 長征10号(Long March-10)

 1.目的と設計意図

 長征10号は、中国の月探査計画における有人月面着陸を支援するために開発されている。このロケットは、新世代の有人宇宙船や月着陸機を運搬するための基盤として設計されており、月への移送軌道(Lunar Transfer Orbit, LTO)のペイロード能力を8.2トンから27トンへと飛躍的に向上させる。これにより、より大規模な科学探査や月面基地建設のための資材輸送が可能となる。

 2.開発状況

 現在、長征10号の開発は順調に進んでおり、初期段階の主要な試験として、第一段階の動力システム試験が成功裏に完了した。動力システムには、推力を効率的に制御できる最新技術が採用されている。

 3.派生型の応用

 長征10号の設計を基に、複数の派生型が開発可能である。これらの派生型は、中国の宇宙ステーションの運用支援だけでなく、様々な衛星打ち上げミッションにも利用できる。これにより、有人および無人の多目的宇宙ミッションを包括的にサポートする能力が期待されている。

 長征9号(Long March-9)

 1.設計の概要

 長征9号は、中国の宇宙開発史上最大級の重量級打ち上げロケットであり、直径10.6メートル、高さ約114メートルに達する。そのペイロード能力は圧倒的であり、LTOへの50トンの積載が可能である。これは、将来の大規模な月面開発や火星探査、さらには小惑星の資源利用ミッションを視野に入れた設計である。

 2.推進システム

 長征9号は液体酸素(LOX)と液体メタン(CH₄)を推進剤として使用する。これらの極低温推進剤は、高いエネルギー効率と環境適応性を特徴としており、長期間のミッションにも適している。

 3.再利用可能な設計

 長征9号は再利用性を重視した設計が特徴である。

 ・第一段の回収

 第一段は降下中にグリッドフィンを展開し、制御された姿勢で海上の移動式プラットフォームに到達する。このプラットフォームには動くレールが備えられており、ロケットを確実に捕捉する仕組みとなっている。

 ・第二段の回収

 第二段は推進システムを用いた垂直着陸を行う設計で、地上または海上で回収可能となる。これにより、ミッションコストを大幅に削減し、ロケットの持続可能性を向上させることを目指している。

 4.利用範囲

 長征9号は、有人火星ミッションをはじめ、月面での本格的な拠点建設や大型宇宙望遠鏡の打ち上げに使用される予定である。また、小惑星探査や地球外資源の利用に関するプロジェクトにも寄与する可能性がある。

 産業への影響

 長征10号と長征9号の開発は、中国の宇宙産業のみならず、広範な基礎産業にも強い影響を与える。

 ・先進的な設計技術:航空宇宙分野での高度なシミュレーション技術や設計プロセスの進歩を促進する。
 ・高端製造技術:新材料や精密製造技術の開発を牽引し、他産業にも波及効果を与える。
 ・資材と部品の進化:極低温環境に耐えられる新素材や高度な電子部品の開発が進む。

 これにより、中国は世界の宇宙開発競争においてさらに優位性を確立することを目指している。

【要点】
 
 長征10号(Long March-10)

 ・目的: 有人月面着陸ミッションや新世代宇宙船、月着陸機の打ち上げに使用される。
 ・能力: 月移送軌道(LTO)のペイロード容量が8.2トンから27トンに向上。
 ・開発状況: 第一段階の動力システム試験を完了し、順調に進行中。
 ・派生型: 宇宙ステーション運用タスクや衛星打ち上げミッションを支援するための派生型が計画されている。

 長征9号(Long March-9)

 ・設計: 直径10.6メートル、高さ約114メートルの重量級ロケット。
 ・能力: 月移送軌道で50トンのペイロード能力を持つ。
 ・推進システム: 液体酸素と液体メタンを使用した極低温推進剤を採用。
 ・再利用設計

  ⇨ 第一段はグリッドフィンを展開して海上プラットフォームで回収。
  ⇨ 第二段は動力を使用した垂直着陸が可能。
 ・利用範囲: 有人火星ミッション、大型宇宙望遠鏡の打ち上げ、月面基地建設、小惑星探査など。

 産業への影響

 ・設計技術: 高度な航空宇宙設計技術の促進。
 ・製造技術: 新素材や精密製造技術の開発を牽引。
 ・資材開発: 極低温耐性素材や高度な電子部品の進歩。
 ・波及効果: 宇宙開発の成果が他産業の成長にも貢献。

 これにより、中国は宇宙開発競争におけるリーダーシップを強化することを目指している。

【引用・参照・底本】

China's new-generation Long March rockets to facilitate manned lunar, Mars missions GT 2024.12.07
https://www.globaltimes.cn/page/202412/1324526.shtml

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