ポスト・アサド期のシリア崩壊回避策 ― 2024年12月08日 17:14
【概要】
アンドリュー・コリブコ氏による「ポスト・アサド期のシリアが崩壊を回避するために必要な対策」
現在、ポスト・アサド期のシリアは全面的な崩壊の危機に瀕しており、このままでは世界最大のテロ拠点となる可能性がある。この危機を回避するためには、以下の5つの対策が必要である。
1. 軍および治安機関の維持
アフガニスタン、イラク、リビアなどの国家崩壊の事例では、政権交代後に軍と治安機関が解体されることが共通点であった。一方で、シリア・アラブ軍(SAA)は依然として組織として存在しており、たとえ敗退を続けているとしても完全崩壊は避けなければならない。非テロリスト反政府勢力(NTAGO)と協力し、国家全体が制御不能になる事態を防ぐことが求められる。
2. 政治改革の即時開始
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、土曜日のドーハ・フォーラムで、シリア政府とNTAGOが国連安保理決議2254を直ちに実行に移す必要性を強調した。この決議には、新憲法の制定や国連監視下での選挙実施など、大幅な政治改革が含まれている。アサド政権の改革拒否が今回の事態を招いたため、暫定首相ジャラリ氏による政治移行は肯定的な一歩である。
3. ロシア作成の憲法草案の復活
2017年1月のアスタナ会議で提案されたロシア作成の憲法草案が、今回の危機を防ぐ重要な手段となる可能性がある。この草案は当時、建設的な批評を受けつつも、アサド政権により拒否された。しかし、アサド大統領が退陣した今、状況に応じた修正を加えた上でこの草案を再び議論する必要がある。
4. アラウィ派とクルド人の少数派保護
現在、トルコ支援のハヤト・タハリール・アルシャム(HTS)勢力はアラウィ派の沿岸地域を完全には支配しておらず、また、米国支援下のクルド人が統治する北東部も独立を維持している。これらの地域をテロリストから守るために、ボスニア型の広範な連邦制を基にした自治権の付与が必要である。沿岸地域がロシアの影響下に置かれることで、安定が維持される可能性がある。
5. ロシアの基地維持
ロシアはこれまで、2015年以降アサド政権を支援しながらテロリストと戦ってきた。暫定政府がロシアの軍事基地維持を認めることは、国家防衛と沿岸地域の保護にとって不可欠である。ロシアが基地を撤退させれば、シリア国家はテロリストの脅威にさらされ、アラウィ派地域も危機に陥る可能性が高い。ロシアは、必要に応じて独立した沿岸国家を支援し、自国の安全保障を理由に基地を維持する可能性もある。
このように、ポスト・アサド期のシリアが崩壊を回避し、さらなるテロリズムの拡散を防ぐためには、上記の5つの対策を速やかに実行する必要がある。仮に最悪の事態が発生したとしても、ロシアがテロリストを空爆し、独立した沿岸国家を支援することで、ある程度の被害を軽減できる可能性がある。
【詳細】
アンドリュー・コリブコ氏の分析「ポスト・アサド期のシリア崩壊を防ぐために必要な具体策」について
現在、シリアは深刻な混乱に直面しており、アサド大統領がダマスカスから逃亡したことで、国家崩壊のリスクが一層高まっている。このままでは、シリアは世界最大のテロの温床となり、地域や国際社会全体に重大な脅威をもたらす可能性がある。この危機を回避するためには、次の5つの具体的な措置を実施することが不可欠である。
1. 軍および治安機関の維持
過去の国家崩壊事例(アフガニスタン、イラク、リビア)では、軍と治安機関の解体が主要な混乱の原因であった。シリアの場合、シリア・アラブ軍(SAA)は現在も組織として存在しており、アルアウィ派が多く住む沿岸部に後退する可能性がある。
この組織を維持し、非テロリスト反政府勢力(NTAGO)との協力体制を構築することで、国家が無秩序状態に陥ることを防ぐ必要がある。特に、兵士や幹部の離反を防ぎ、最低限の秩序維持機能を確保することが求められる。
2. 政治改革の即時開始
シリア政府とNTAGOは、国連安保理決議2254(2015年採択)に基づいて迅速に改革を進める必要がある。この決議には以下のような具体的な改革措置が含まれる:
・新憲法の制定:国家体制を根本的に見直し、多様な民族や宗教の権利を保障する内容を含める。
・国連監視下での自由選挙:国内外の信頼を得るために透明性を確保する。
・政治的包摂:これまで疎外されていた反政府勢力や少数派を政治プロセスに参加させる。
現在の暫定首相であるジャラリ氏のリーダーシップの下、このプロセスを加速することが求められる。これにより、国家としての統一性を維持し、内戦や外部干渉のリスクを減少させることが期待される。
3. ロシア作成の憲法草案の復活
2017年1月にアスタナ会議で提示されたロシア作成の憲法草案は、当初、シリアの統治構造を柔軟化し、自治権拡大を図ることを目的としていた。しかし、アサド大統領はこの草案を拒否し、現在の危機を招いた要因の一つとなった。この草案を基盤とし、以下の改訂が必要である:
・地方自治の拡大:クルド人やアルアウィ派などの少数民族が自治権を享受できる体制を構築する。
・権力分散:中央集権的な体制を見直し、地域ごとのニーズに対応する柔軟性を持たせる。
この草案の復活は、国内外の利害関係者の信頼を回復し、シリアが統一国家として機能を維持するための基盤となる。
4. 少数派の保護
アルアウィ派やクルド人は、シリアにおける重要な少数派であるが、テロ組織や他国からの干渉にさらされる危険がある。特に以下の地域が焦点となる:
・アルアウィ派沿岸地域:トルコ支援のハヤト・タハリール・アルシャム(HTS)の脅威を受けている。この地域を防衛するため、ロシアが主導する保護体制を強化する必要がある。
・クルド人統治地域:米国の支援下にあるが、米軍撤退の可能性が高まっている。この場合、ロシアや国際社会がクルド人地域の安全を保障する役割を果たす必要がある。
これにより、少数派への迫害を防ぎ、シリア国内での大規模な人道危機を抑制することが可能となる。
5. ロシアの軍事基地維持
ロシアは2015年以降、テロリストに対する空爆を通じてシリア政府を支援してきた。暫定政府がロシアの基地維持を認めることは、以下の点で重要である:
・国家防衛の継続:ロシア軍が撤退すれば、シリア政府はテロリストの攻撃に対して脆弱となる。
・地域安定の維持:特にアルアウィ派地域がHTSの支配下に陥ることを防ぐために必要不可欠である。
さらに、ロシアはシリア沿岸地域を独立国家として支援し、これを国際的に承認することで、自国の安全保障を確保しながら地域安定を図る可能性がある。
結論
ポスト・アサド期のシリアが国家崩壊を防ぎ、地域や国際社会への脅威を最小限に抑えるためには、上記の5つの対策を直ちに実行する必要がある。仮に最悪の事態が避けられない場合でも、ロシアが主導する形でテロ対策と少数派保護が進められることで、ある程度の安定を取り戻すことが可能である。これらの措置は、シリアの未来を左右する鍵となるであろう。
【要点】
1.軍および治安機関の維持
・シリア・アラブ軍(SAA)の組織を解体せず、非テロリスト反政府勢力(NTAGO)と協力体制を構築する。
・国家の秩序維持を図り、無秩序な状態に陥ることを防ぐ。
2.政治改革の即時開始
・国連安保理決議2254(2015年)に基づき、新憲法の制定や国連監視下での自由選挙を迅速に実施する。
・暫定首相ジャラリ氏の下、包括的な政治プロセスを推進する。
3.ロシア作成の憲法草案の復活
・2017年のアスタナ会議で提案された草案を基に、地方自治権拡大や権力分散を含む体制改革を進める。
・中央集権から柔軟な地方自治への転換を図ることで、多様な民族や地域の権利を保障する。
4.少数派の保護
・アルアウィ派沿岸地域とクルド人統治地域を重点的に保護し、テロリストや外部勢力の脅威を防ぐ。
・ロシアや国際社会の支援を活用し、少数派への人道危機を防ぐ体制を構築する。
5.ロシアの軍事基地維持
・ロシア軍が基地を維持し、暫定政府と協力してテロリストへの防衛体制を強化する。
・アルアウィ派地域の安全を確保しつつ、地域の安定に寄与する可能性を追求する。
これらの措置を実施することで、シリアの国家崩壊を回避し、国際的なテロの温床となる事態を防ぐことが可能である。
【引用・参照・底本】
Here’s What Has To Happen To Prevent Post-Assad Syria From Collapsing Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.08
https://korybko.substack.com/p/heres-what-has-to-happen-to-prevent?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152784175&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
アンドリュー・コリブコ氏による「ポスト・アサド期のシリアが崩壊を回避するために必要な対策」
現在、ポスト・アサド期のシリアは全面的な崩壊の危機に瀕しており、このままでは世界最大のテロ拠点となる可能性がある。この危機を回避するためには、以下の5つの対策が必要である。
1. 軍および治安機関の維持
アフガニスタン、イラク、リビアなどの国家崩壊の事例では、政権交代後に軍と治安機関が解体されることが共通点であった。一方で、シリア・アラブ軍(SAA)は依然として組織として存在しており、たとえ敗退を続けているとしても完全崩壊は避けなければならない。非テロリスト反政府勢力(NTAGO)と協力し、国家全体が制御不能になる事態を防ぐことが求められる。
2. 政治改革の即時開始
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、土曜日のドーハ・フォーラムで、シリア政府とNTAGOが国連安保理決議2254を直ちに実行に移す必要性を強調した。この決議には、新憲法の制定や国連監視下での選挙実施など、大幅な政治改革が含まれている。アサド政権の改革拒否が今回の事態を招いたため、暫定首相ジャラリ氏による政治移行は肯定的な一歩である。
3. ロシア作成の憲法草案の復活
2017年1月のアスタナ会議で提案されたロシア作成の憲法草案が、今回の危機を防ぐ重要な手段となる可能性がある。この草案は当時、建設的な批評を受けつつも、アサド政権により拒否された。しかし、アサド大統領が退陣した今、状況に応じた修正を加えた上でこの草案を再び議論する必要がある。
4. アラウィ派とクルド人の少数派保護
現在、トルコ支援のハヤト・タハリール・アルシャム(HTS)勢力はアラウィ派の沿岸地域を完全には支配しておらず、また、米国支援下のクルド人が統治する北東部も独立を維持している。これらの地域をテロリストから守るために、ボスニア型の広範な連邦制を基にした自治権の付与が必要である。沿岸地域がロシアの影響下に置かれることで、安定が維持される可能性がある。
5. ロシアの基地維持
ロシアはこれまで、2015年以降アサド政権を支援しながらテロリストと戦ってきた。暫定政府がロシアの軍事基地維持を認めることは、国家防衛と沿岸地域の保護にとって不可欠である。ロシアが基地を撤退させれば、シリア国家はテロリストの脅威にさらされ、アラウィ派地域も危機に陥る可能性が高い。ロシアは、必要に応じて独立した沿岸国家を支援し、自国の安全保障を理由に基地を維持する可能性もある。
このように、ポスト・アサド期のシリアが崩壊を回避し、さらなるテロリズムの拡散を防ぐためには、上記の5つの対策を速やかに実行する必要がある。仮に最悪の事態が発生したとしても、ロシアがテロリストを空爆し、独立した沿岸国家を支援することで、ある程度の被害を軽減できる可能性がある。
【詳細】
アンドリュー・コリブコ氏の分析「ポスト・アサド期のシリア崩壊を防ぐために必要な具体策」について
現在、シリアは深刻な混乱に直面しており、アサド大統領がダマスカスから逃亡したことで、国家崩壊のリスクが一層高まっている。このままでは、シリアは世界最大のテロの温床となり、地域や国際社会全体に重大な脅威をもたらす可能性がある。この危機を回避するためには、次の5つの具体的な措置を実施することが不可欠である。
1. 軍および治安機関の維持
過去の国家崩壊事例(アフガニスタン、イラク、リビア)では、軍と治安機関の解体が主要な混乱の原因であった。シリアの場合、シリア・アラブ軍(SAA)は現在も組織として存在しており、アルアウィ派が多く住む沿岸部に後退する可能性がある。
この組織を維持し、非テロリスト反政府勢力(NTAGO)との協力体制を構築することで、国家が無秩序状態に陥ることを防ぐ必要がある。特に、兵士や幹部の離反を防ぎ、最低限の秩序維持機能を確保することが求められる。
2. 政治改革の即時開始
シリア政府とNTAGOは、国連安保理決議2254(2015年採択)に基づいて迅速に改革を進める必要がある。この決議には以下のような具体的な改革措置が含まれる:
・新憲法の制定:国家体制を根本的に見直し、多様な民族や宗教の権利を保障する内容を含める。
・国連監視下での自由選挙:国内外の信頼を得るために透明性を確保する。
・政治的包摂:これまで疎外されていた反政府勢力や少数派を政治プロセスに参加させる。
現在の暫定首相であるジャラリ氏のリーダーシップの下、このプロセスを加速することが求められる。これにより、国家としての統一性を維持し、内戦や外部干渉のリスクを減少させることが期待される。
3. ロシア作成の憲法草案の復活
2017年1月にアスタナ会議で提示されたロシア作成の憲法草案は、当初、シリアの統治構造を柔軟化し、自治権拡大を図ることを目的としていた。しかし、アサド大統領はこの草案を拒否し、現在の危機を招いた要因の一つとなった。この草案を基盤とし、以下の改訂が必要である:
・地方自治の拡大:クルド人やアルアウィ派などの少数民族が自治権を享受できる体制を構築する。
・権力分散:中央集権的な体制を見直し、地域ごとのニーズに対応する柔軟性を持たせる。
この草案の復活は、国内外の利害関係者の信頼を回復し、シリアが統一国家として機能を維持するための基盤となる。
4. 少数派の保護
アルアウィ派やクルド人は、シリアにおける重要な少数派であるが、テロ組織や他国からの干渉にさらされる危険がある。特に以下の地域が焦点となる:
・アルアウィ派沿岸地域:トルコ支援のハヤト・タハリール・アルシャム(HTS)の脅威を受けている。この地域を防衛するため、ロシアが主導する保護体制を強化する必要がある。
・クルド人統治地域:米国の支援下にあるが、米軍撤退の可能性が高まっている。この場合、ロシアや国際社会がクルド人地域の安全を保障する役割を果たす必要がある。
これにより、少数派への迫害を防ぎ、シリア国内での大規模な人道危機を抑制することが可能となる。
5. ロシアの軍事基地維持
ロシアは2015年以降、テロリストに対する空爆を通じてシリア政府を支援してきた。暫定政府がロシアの基地維持を認めることは、以下の点で重要である:
・国家防衛の継続:ロシア軍が撤退すれば、シリア政府はテロリストの攻撃に対して脆弱となる。
・地域安定の維持:特にアルアウィ派地域がHTSの支配下に陥ることを防ぐために必要不可欠である。
さらに、ロシアはシリア沿岸地域を独立国家として支援し、これを国際的に承認することで、自国の安全保障を確保しながら地域安定を図る可能性がある。
結論
ポスト・アサド期のシリアが国家崩壊を防ぎ、地域や国際社会への脅威を最小限に抑えるためには、上記の5つの対策を直ちに実行する必要がある。仮に最悪の事態が避けられない場合でも、ロシアが主導する形でテロ対策と少数派保護が進められることで、ある程度の安定を取り戻すことが可能である。これらの措置は、シリアの未来を左右する鍵となるであろう。
【要点】
1.軍および治安機関の維持
・シリア・アラブ軍(SAA)の組織を解体せず、非テロリスト反政府勢力(NTAGO)と協力体制を構築する。
・国家の秩序維持を図り、無秩序な状態に陥ることを防ぐ。
2.政治改革の即時開始
・国連安保理決議2254(2015年)に基づき、新憲法の制定や国連監視下での自由選挙を迅速に実施する。
・暫定首相ジャラリ氏の下、包括的な政治プロセスを推進する。
3.ロシア作成の憲法草案の復活
・2017年のアスタナ会議で提案された草案を基に、地方自治権拡大や権力分散を含む体制改革を進める。
・中央集権から柔軟な地方自治への転換を図ることで、多様な民族や地域の権利を保障する。
4.少数派の保護
・アルアウィ派沿岸地域とクルド人統治地域を重点的に保護し、テロリストや外部勢力の脅威を防ぐ。
・ロシアや国際社会の支援を活用し、少数派への人道危機を防ぐ体制を構築する。
5.ロシアの軍事基地維持
・ロシア軍が基地を維持し、暫定政府と協力してテロリストへの防衛体制を強化する。
・アルアウィ派地域の安全を確保しつつ、地域の安定に寄与する可能性を追求する。
これらの措置を実施することで、シリアの国家崩壊を回避し、国際的なテロの温床となる事態を防ぐことが可能である。
【引用・参照・底本】
Here’s What Has To Happen To Prevent Post-Assad Syria From Collapsing Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.08
https://korybko.substack.com/p/heres-what-has-to-happen-to-prevent?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152784175&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ラブロフ外相:シリア情勢に関する判断 ― 2024年12月08日 17:58
【概要】
セルゲイ・ラブロフ外相がタッカー・カールソンとのインタビューで述べたシリア情勢に関する判断は以下の通りである。
ラブロフ氏はまず、ロシア、イラン、トルコが主導する「アスタナプロセス」について言及し、その主な目的がシリアにおけるアメリカ支援のクルド人分離主義の脅威を封じ込めることであると述べた。その上で、彼は今週末の「ドーハフォーラム」において関係国の外相と最新の進展について議論することを希望していると表明した。また、「イドリブ非武装地帯に関する合意の厳格な履行に立ち戻る必要性」について議論したいと述べた。彼は特に、イドリブの非武装地帯が「テロリストがアレッポを攻撃するために移動した場所」だったことを指摘した。
ラブロフ氏はさらに、トルコが「ハヤート・タハリール・アル=シャム(HTS)」を非テロリストの反対勢力から分離する作業を続けるべきであると述べ、また、HTSが北部を掌握したM5ハイウェイ(ダマスカスとアレッポを結ぶ主要道路)を再び開通させる必要があると主張した。カールソンからHTSを支援しているのは誰かと問われた際、ラブロフ氏はトルコについては触れず、代わりにアメリカとイギリスが関与している可能性を示唆した。さらに、最新の混乱がどのようにイスラエルに利益をもたらす可能性があるかについての推測にも言及した。
これらの発言を分析すると、ラブロフ氏がアスタナプロセスで合意された内容への回帰を強調している点がまず注目される。それは主に、アメリカ支援のクルド人分離主義の脅威を抑えること、HTSと非テロリストの反対勢力を分離することを定めたイドリブ非武装地帯の合意を厳格に履行すること、そしてM5ハイウェイを再び開通させることに関するものである。これらは全てトルコの責務に関わる内容であり、そのため彼がトルコをHTSの支援者として名指ししなかった可能性がある。
背景として、プーチン大統領がエルドアン大統領との間でシリアに関する合意に達することを希望している場合、トルコがテロリストを支援していないという前提を維持する必要がある。ラブロフ氏の発言はこの文脈で理解できる。ロシアとしては、シリアがリビアのような状況に陥ることを防ぐため、現実的な妥協策を模索している。これは、HTSがダマスカスを占領し、アサド政権を転覆させる事態を回避するためであり、さらに、地域の混乱と不安定化が拡大し、ISISの復活を招く可能性を防ぐ意図もある。
また、現在のロシアの軍事的制約がある中で、ウクライナでの特別作戦を優先しているため、ロシアは軍事的解決ではなく、政治的解決に重きを置いている。これが、ラブロフ氏がシリア情勢において慎重な外交的評価を行った理由を説明するものである。
【詳細】
ラブロフ外相の発言をより詳細に分析し、背景や文脈を掘り下げて説明すると以下のようになる。
アスタナプロセスの意義と現状
アスタナプロセスはロシア、イラン、トルコが主導するシリア和平プロセスであり、2017年に開始された。主な目的はシリア内戦の沈静化と紛争解決のための枠組みを提供することである。このプロセスは、アメリカ主導の外交努力と異なり、シリア国内の具体的な軍事状況や地域勢力の利害を直接反映している。
ラブロフ氏がこのプロセスを再び強調した背景には、米国が支援するクルド人勢力(特にシリア北東部で影響力を持つシリア民主軍=SDF)の分離主義活動がある。これらはトルコにとっても国家安全保障上の脅威であり、トルコ軍がシリア北部で複数の軍事作戦を展開する主な理由となっている。ロシアにとっては、クルド人勢力の台頭を防ぎつつ、アメリカの影響力を削ぐことが戦略的に重要である。
イドリブ非武装地帯に関する合意の履行
ラブロフ氏が言及したイドリブ非武装地帯は、2018年にロシアとトルコが合意した枠組みに基づいて設定された。この合意では、トルコがイドリブ内の反体制派を管理し、テロ組織(主にHTS)を排除する責任を負っている。しかし、合意後もトルコはHTSの排除に成功しておらず、むしろイドリブ地域は同組織の支配が強化される結果となった。
ラブロフ氏が強調した「合意の厳格な履行」とは、トルコにHTSを非テロリストの反対勢力から分離させる義務を果たさせることである。同時に、M5ハイウェイの再開通も重要である。このハイウェイはシリアの経済と軍事戦略上の要所であり、北部をHTSが掌握している現状はアサド政権にとって大きな障害である。
HTSへの支援者に関する発言の意図
カールソンの質問に対し、ラブロフ氏はHTSを支援している主体としてトルコを名指しせず、代わりにアメリカとイギリスの関与を示唆した。この慎重な発言の背景には、トルコとの外交関係を維持しつつ、協力を引き出す狙いがあると考えられる。
ラブロフ氏がトルコを批判しない理由の一つは、プーチン大統領がエルドアン大統領との間で政治的妥協を形成し、シリアの安定を図ろうとしているからである。トルコを公然と非難すれば、トルコがロシアとの協力を拒否し、アメリカやNATO寄りの立場を強化する可能性がある。そのため、トルコがHTSを支援していないという「建前」を維持することが必要となる。
一方で、アメリカやイギリスの関与を示唆することで、シリアにおける西側諸国の影響力を問題視し、ロシアの正当性を強調する狙いが見て取れる。
シリアの「リビア化」を防ぐためのロシアの戦略
ラブロフ氏が言及した「シリアがリビアのような状況になる」ことへの懸念は、無秩序な内戦と権力真空が広がり、地域の混乱がさらに深刻化することを指している。リビアでは、NATOの介入後に中央政府が崩壊し、複数の武装勢力が国内を分断している。同様のシナリオがシリアで発生すれば、HTSやISISのような過激派が勢力を拡大し、地域全体の不安定化を招く可能性が高い。
ロシアとしては、このような事態を回避するため、アサド政権の存続を支持しつつ、トルコやイランとの協力を深め、現地の安定を維持することを目指している。また、シリアが過激派の訓練拠点となれば、ロシアや旧ソ連地域からのテロリストが再び流入し、国内安全保障にも影響を与える恐れがある。
軍事的解決から政治的解決へのシフト
ラブロフ氏の発言からは、ロシアが現在、シリアにおける軍事的解決ではなく、政治的解決を優先していることが明らかである。これは、ウクライナ戦争が進行中であり、軍事リソースが限られている現状を反映している。特に、ロシア航空宇宙軍をウクライナからシリアに振り向ける余裕がないため、トルコやイランとの外交交渉を通じて問題を解決しようとしている。
さらに、アメリカで2024年の大統領選挙が進行しており、ドナルド・トランプ氏が再び当選する可能性がある中で、ロシアはウクライナ戦争における戦略的優位性を確保する必要がある。そのため、シリアでの軍事的負担を増やすことは避けるべきリスクと見なされている。
以上の分析を踏まえると、ラブロフ外相のシリア情勢に関する発言は、ロシアの現状の軍事的および外交的制約を反映した、現実主義的なアプローチを示していると言える。
【要点】
1.アスタナプロセスの意義
・ロシア、イラン、トルコによるシリア和平枠組みで、米国主導の外交と異なり、現地の軍事状況や利害を反映。
・主目的は、米国支援のクルド分離主義勢力の封じ込めと、シリア全土の安定化。
2.イドリブ非武装地帯の履行問題
・トルコがHTS(ハヤト・タハリール・アル=シャーム)を非テロリスト勢力から分離させる合意を未履行。
・M5ハイウェイ(シリア北部の要路)の再開通はアサド政権にとって戦略的優先事項。
3.HTS支援者についての発言
・トルコを名指しせず、アメリカとイギリスの関与を示唆。
・トルコとの外交関係を維持し、協力を引き出すための慎重な姿勢。
・一方で西側諸国の影響力を問題視し、ロシアの正当性を強調。
3.シリアの「リビア化」懸念
・無秩序な内戦と権力真空が生じれば、過激派(HTS、ISISなど)の勢力拡大と地域不安定化が進行。
・ロシアはトルコやイランと連携して中央政府(アサド政権)の存続と秩序維持を目指す。
4.ロシアの安全保障への影響
・シリアがテロリストの拠点化すれば、ロシアや旧ソ連地域からのテロリスト流入のリスクが再燃。
・国内の治安維持の観点からもシリアの安定が必要。
5.軍事から政治へのシフト
・ウクライナ戦争へのリソース集中のため、シリアでの軍事的負担を増やさない方針。
・外交交渉を通じて問題解決を図る現実主義的戦略。
・トランプの再選可能性を視野に、ウクライナでの戦略的優位性確保を優先。
6.結論
・ラブロフの発言はロシアの軍事的・外交的制約を反映し、トルコやイランとの協調を重視する現実的アプローチを示している。
【引用・参照・底本】
Interpreting Lavrov’s Assessment Of Events In Syria From His Interview With Tucker Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.07
https://korybko.substack.com/p/interpreting-lavrovs-assessment-of?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152749755&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
セルゲイ・ラブロフ外相がタッカー・カールソンとのインタビューで述べたシリア情勢に関する判断は以下の通りである。
ラブロフ氏はまず、ロシア、イラン、トルコが主導する「アスタナプロセス」について言及し、その主な目的がシリアにおけるアメリカ支援のクルド人分離主義の脅威を封じ込めることであると述べた。その上で、彼は今週末の「ドーハフォーラム」において関係国の外相と最新の進展について議論することを希望していると表明した。また、「イドリブ非武装地帯に関する合意の厳格な履行に立ち戻る必要性」について議論したいと述べた。彼は特に、イドリブの非武装地帯が「テロリストがアレッポを攻撃するために移動した場所」だったことを指摘した。
ラブロフ氏はさらに、トルコが「ハヤート・タハリール・アル=シャム(HTS)」を非テロリストの反対勢力から分離する作業を続けるべきであると述べ、また、HTSが北部を掌握したM5ハイウェイ(ダマスカスとアレッポを結ぶ主要道路)を再び開通させる必要があると主張した。カールソンからHTSを支援しているのは誰かと問われた際、ラブロフ氏はトルコについては触れず、代わりにアメリカとイギリスが関与している可能性を示唆した。さらに、最新の混乱がどのようにイスラエルに利益をもたらす可能性があるかについての推測にも言及した。
これらの発言を分析すると、ラブロフ氏がアスタナプロセスで合意された内容への回帰を強調している点がまず注目される。それは主に、アメリカ支援のクルド人分離主義の脅威を抑えること、HTSと非テロリストの反対勢力を分離することを定めたイドリブ非武装地帯の合意を厳格に履行すること、そしてM5ハイウェイを再び開通させることに関するものである。これらは全てトルコの責務に関わる内容であり、そのため彼がトルコをHTSの支援者として名指ししなかった可能性がある。
背景として、プーチン大統領がエルドアン大統領との間でシリアに関する合意に達することを希望している場合、トルコがテロリストを支援していないという前提を維持する必要がある。ラブロフ氏の発言はこの文脈で理解できる。ロシアとしては、シリアがリビアのような状況に陥ることを防ぐため、現実的な妥協策を模索している。これは、HTSがダマスカスを占領し、アサド政権を転覆させる事態を回避するためであり、さらに、地域の混乱と不安定化が拡大し、ISISの復活を招く可能性を防ぐ意図もある。
また、現在のロシアの軍事的制約がある中で、ウクライナでの特別作戦を優先しているため、ロシアは軍事的解決ではなく、政治的解決に重きを置いている。これが、ラブロフ氏がシリア情勢において慎重な外交的評価を行った理由を説明するものである。
【詳細】
ラブロフ外相の発言をより詳細に分析し、背景や文脈を掘り下げて説明すると以下のようになる。
アスタナプロセスの意義と現状
アスタナプロセスはロシア、イラン、トルコが主導するシリア和平プロセスであり、2017年に開始された。主な目的はシリア内戦の沈静化と紛争解決のための枠組みを提供することである。このプロセスは、アメリカ主導の外交努力と異なり、シリア国内の具体的な軍事状況や地域勢力の利害を直接反映している。
ラブロフ氏がこのプロセスを再び強調した背景には、米国が支援するクルド人勢力(特にシリア北東部で影響力を持つシリア民主軍=SDF)の分離主義活動がある。これらはトルコにとっても国家安全保障上の脅威であり、トルコ軍がシリア北部で複数の軍事作戦を展開する主な理由となっている。ロシアにとっては、クルド人勢力の台頭を防ぎつつ、アメリカの影響力を削ぐことが戦略的に重要である。
イドリブ非武装地帯に関する合意の履行
ラブロフ氏が言及したイドリブ非武装地帯は、2018年にロシアとトルコが合意した枠組みに基づいて設定された。この合意では、トルコがイドリブ内の反体制派を管理し、テロ組織(主にHTS)を排除する責任を負っている。しかし、合意後もトルコはHTSの排除に成功しておらず、むしろイドリブ地域は同組織の支配が強化される結果となった。
ラブロフ氏が強調した「合意の厳格な履行」とは、トルコにHTSを非テロリストの反対勢力から分離させる義務を果たさせることである。同時に、M5ハイウェイの再開通も重要である。このハイウェイはシリアの経済と軍事戦略上の要所であり、北部をHTSが掌握している現状はアサド政権にとって大きな障害である。
HTSへの支援者に関する発言の意図
カールソンの質問に対し、ラブロフ氏はHTSを支援している主体としてトルコを名指しせず、代わりにアメリカとイギリスの関与を示唆した。この慎重な発言の背景には、トルコとの外交関係を維持しつつ、協力を引き出す狙いがあると考えられる。
ラブロフ氏がトルコを批判しない理由の一つは、プーチン大統領がエルドアン大統領との間で政治的妥協を形成し、シリアの安定を図ろうとしているからである。トルコを公然と非難すれば、トルコがロシアとの協力を拒否し、アメリカやNATO寄りの立場を強化する可能性がある。そのため、トルコがHTSを支援していないという「建前」を維持することが必要となる。
一方で、アメリカやイギリスの関与を示唆することで、シリアにおける西側諸国の影響力を問題視し、ロシアの正当性を強調する狙いが見て取れる。
シリアの「リビア化」を防ぐためのロシアの戦略
ラブロフ氏が言及した「シリアがリビアのような状況になる」ことへの懸念は、無秩序な内戦と権力真空が広がり、地域の混乱がさらに深刻化することを指している。リビアでは、NATOの介入後に中央政府が崩壊し、複数の武装勢力が国内を分断している。同様のシナリオがシリアで発生すれば、HTSやISISのような過激派が勢力を拡大し、地域全体の不安定化を招く可能性が高い。
ロシアとしては、このような事態を回避するため、アサド政権の存続を支持しつつ、トルコやイランとの協力を深め、現地の安定を維持することを目指している。また、シリアが過激派の訓練拠点となれば、ロシアや旧ソ連地域からのテロリストが再び流入し、国内安全保障にも影響を与える恐れがある。
軍事的解決から政治的解決へのシフト
ラブロフ氏の発言からは、ロシアが現在、シリアにおける軍事的解決ではなく、政治的解決を優先していることが明らかである。これは、ウクライナ戦争が進行中であり、軍事リソースが限られている現状を反映している。特に、ロシア航空宇宙軍をウクライナからシリアに振り向ける余裕がないため、トルコやイランとの外交交渉を通じて問題を解決しようとしている。
さらに、アメリカで2024年の大統領選挙が進行しており、ドナルド・トランプ氏が再び当選する可能性がある中で、ロシアはウクライナ戦争における戦略的優位性を確保する必要がある。そのため、シリアでの軍事的負担を増やすことは避けるべきリスクと見なされている。
以上の分析を踏まえると、ラブロフ外相のシリア情勢に関する発言は、ロシアの現状の軍事的および外交的制約を反映した、現実主義的なアプローチを示していると言える。
【要点】
1.アスタナプロセスの意義
・ロシア、イラン、トルコによるシリア和平枠組みで、米国主導の外交と異なり、現地の軍事状況や利害を反映。
・主目的は、米国支援のクルド分離主義勢力の封じ込めと、シリア全土の安定化。
2.イドリブ非武装地帯の履行問題
・トルコがHTS(ハヤト・タハリール・アル=シャーム)を非テロリスト勢力から分離させる合意を未履行。
・M5ハイウェイ(シリア北部の要路)の再開通はアサド政権にとって戦略的優先事項。
3.HTS支援者についての発言
・トルコを名指しせず、アメリカとイギリスの関与を示唆。
・トルコとの外交関係を維持し、協力を引き出すための慎重な姿勢。
・一方で西側諸国の影響力を問題視し、ロシアの正当性を強調。
3.シリアの「リビア化」懸念
・無秩序な内戦と権力真空が生じれば、過激派(HTS、ISISなど)の勢力拡大と地域不安定化が進行。
・ロシアはトルコやイランと連携して中央政府(アサド政権)の存続と秩序維持を目指す。
4.ロシアの安全保障への影響
・シリアがテロリストの拠点化すれば、ロシアや旧ソ連地域からのテロリスト流入のリスクが再燃。
・国内の治安維持の観点からもシリアの安定が必要。
5.軍事から政治へのシフト
・ウクライナ戦争へのリソース集中のため、シリアでの軍事的負担を増やさない方針。
・外交交渉を通じて問題解決を図る現実主義的戦略。
・トランプの再選可能性を視野に、ウクライナでの戦略的優位性確保を優先。
6.結論
・ラブロフの発言はロシアの軍事的・外交的制約を反映し、トルコやイランとの協調を重視する現実的アプローチを示している。
【引用・参照・底本】
Interpreting Lavrov’s Assessment Of Events In Syria From His Interview With Tucker Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.07
https://korybko.substack.com/p/interpreting-lavrovs-assessment-of?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152749755&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ブルキナファソの軍事政権指導者:首相の職務を解任 ― 2024年12月08日 18:24
【概要】
ブルキナファソの軍事政権指導者であるイブラヒム・トラオレ大尉は、2024年12月7日、首相の職務を解任し、政府を解散すると発表した。この決定について理由は明らかにされていない。大統領令によると、解散された政府の閣僚は新政府が発足するまで継続して業務を行うとされている。
解任された首相、アポリネール・ジョアキム・キエレム・ド・タンベラ氏は、2022年10月のクーデター後に首相に任命され、3度の政府改造を経てその地位を維持してきた人物である。トラオレ大尉が政権を掌握したのは2022年1月のクーデターで権力を握ったポール=アンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐を同年9月に追放した後である。ダミバ氏は現在、隣国トーゴで亡命生活を送っている。
ブルキナファソはマリ、ニジェールと共にサヘル諸国同盟(AES)を結成しており、旧宗主国フランスとの関係を断絶してロシアとの関係を強化している。2024年1月には、これら3国は西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)からの離脱を表明し、フランスが同組織を操作しているとの批判を行った。
同国は2012年にマリ北部で発生し、2015年にはブルキナファソとニジェールにも拡大したジハード主義暴力と戦っている。ブルキナファソでは、2015年以降、この紛争により兵士や市民を含む26,000人以上が死亡し、約200万人が避難を余儀なくされていると報告されている(監視グループACLEDのデータによる)。
ロシアは同国を含む複数のアフリカ諸国に軍事指導者を派遣し、イスラム過激派との戦いを支援している。ブルキナファソの外務大臣カラモコ・ジャン=マリー・トラオレ氏は先月、ロシアとの協力がフランスとの歴史的な関係よりも国益に適していると述べた。
【詳細】
ブルキナファソの現状に関する詳細な説明は以下の通りである。
背景
ブルキナファソは、2022年以降、複数のクーデターによる政情不安に直面している。2022年1月、ポール=アンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐がロック・マルク・クリスチャン・カボレ大統領を追放し政権を掌握した。しかし、同年9月にダミバ中佐は36歳のイブラヒム・トラオレ大尉によって再び追放された。これにより、ブルキナファソは若い軍事指導者の下で新たな軍政体制に移行した。
首相の解任と政府解散
2024年12月7日、トラオレ大尉は大統領令を通じて首相アポリネール・ジョアキム・キエレム・ド・タンベラを解任し、政府を解散した。この措置の理由は公表されていないが、タンベラ氏は2022年10月のトラオレ大尉のクーデター後に首相に任命され、その後3度の内閣改造を経ても地位を維持していた人物である。解散された政府の閣僚は、新しい政府が発足するまで引き続き業務を行うこととなっている。
サヘル地域の安全保障とジハード主義
ブルキナファソは長年、イスラム過激派による暴力に苦しんできた。2012年にマリ北部で発生したジハード主義運動は、2015年にはブルキナファソとニジェールに広がった。この紛争により、ブルキナファソ国内では26,000人以上が死亡し、約200万人が住居を追われている。これらのジハード主義者は、アルカイダ系のグループやIS系のグループに属しているとされ、村落への襲撃や軍事拠点への攻撃を続けている。
トラオレ大尉の政権は、このジハード主義との戦いを最優先課題と位置付け、国家の主権回復を掲げている。西側諸国の支援に対する信頼を減少させる中、ロシアとの軍事協力を強化している。具体的には、ロシアは軍事教官を派遣し、ブルキナファソ軍の訓練や装備支援を行っているとされる。
サヘル諸国同盟(AES)の結成とフランスとの関係断絶
2023年9月、ブルキナファソ、マリ、ニジェールの3国は、サヘル諸国同盟(Alliance of Sahel States, AES)を結成した。この同盟は、フランスの影響力を排除し、地域の軍事協力を強化することを目的としている。これにより、フランスとの伝統的な関係は大幅に悪化した。ブルキナファソは以前フランスの植民地であり、独立後も経済的・軍事的な結びつきが強かったが、2022年のクーデター以降、これらの関係は急速に冷え込んでいる。
ブルキナファソ政府はフランスを、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)を通じて干渉を続けていると非難し、2024年1月にはECOWASからの離脱を表明した。同時にロシアとの協力関係を強化し、フランスに代わる戦略的パートナーとして位置付けている。
現在の課題
ブルキナファソは、ジハード主義暴力に加え、国内避難民の増加、経済的停滞、政情不安など多くの課題に直面している。トラオレ政権は安定化と発展を目指しているが、軍事政権に対する国際的な批判や経済制裁の可能性が依然として存在している。また、地域的な不安定性が他国との協力を困難にする要因となっている。
これらの状況を踏まえ、トラオレ政権が新政府をどのように構築し、どのような政策を打ち出すのかが注目されている。
【要点】
1.背景
・ブルキナファソは2022年以降、複数のクーデターによる政情不安に直面。
・2022年1月、ポール=アンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐が政権掌握。
同年9月、イブラヒム・トラオレ大尉がダミバを追放し、36歳で軍事政権を指導。
2.首相解任と政府解散
・2024年12月7日、トラオレ大尉が首相アポリネール・ジョアキム・キエレム・ド・タンベラを解任し、政府を解散。
・理由は公表されず。新政府発足まで現閣僚が業務を継続。
3.サヘル地域の安全保障とジハード主義
・2012年にマリ北部で発生したジハード主義暴力が、2015年にブルキナファソやニジェールに拡大。
・紛争で26,000人以上が死亡し、約200万人が国内避難民に。
・トラオレ政権はジハード主義との戦いを最優先課題とし、国家主権の回復を掲げる。
4.ロシアとの関係強化
・ロシアから軍事教官を受け入れ、軍の訓練や装備支援を受ける。
・外務大臣が「ロシアとの協力はフランスより適している」と発言。
5.サヘル諸国同盟(AES)の結成
・2023年9月、マリ、ニジェールとともにサヘル諸国同盟(AES)を結成。
・フランスの影響力排除と地域の軍事協力強化が目的。
6.フランスとの関係断絶とECOWASからの離脱
・ブルキナファソはフランスを西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)への干渉を非難。
・2024年1月、ECOWASからの離脱を表明。
7.現在の課題
・ジハード主義暴力、国内避難民問題、経済停滞、政情不安が継続。
・国際的批判や制裁のリスクが存在。
・新政府の構築と政策方針が国内外で注目されている。
【引用・参照・底本】
dismisses PM, dissolves government FRANCE24 2024.12.07
https://www.france24.com/en/africa/20241207-burkina-faso-junta-chief-dismisses-pm-dissolves-government?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020241207&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
ブルキナファソの軍事政権指導者であるイブラヒム・トラオレ大尉は、2024年12月7日、首相の職務を解任し、政府を解散すると発表した。この決定について理由は明らかにされていない。大統領令によると、解散された政府の閣僚は新政府が発足するまで継続して業務を行うとされている。
解任された首相、アポリネール・ジョアキム・キエレム・ド・タンベラ氏は、2022年10月のクーデター後に首相に任命され、3度の政府改造を経てその地位を維持してきた人物である。トラオレ大尉が政権を掌握したのは2022年1月のクーデターで権力を握ったポール=アンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐を同年9月に追放した後である。ダミバ氏は現在、隣国トーゴで亡命生活を送っている。
ブルキナファソはマリ、ニジェールと共にサヘル諸国同盟(AES)を結成しており、旧宗主国フランスとの関係を断絶してロシアとの関係を強化している。2024年1月には、これら3国は西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)からの離脱を表明し、フランスが同組織を操作しているとの批判を行った。
同国は2012年にマリ北部で発生し、2015年にはブルキナファソとニジェールにも拡大したジハード主義暴力と戦っている。ブルキナファソでは、2015年以降、この紛争により兵士や市民を含む26,000人以上が死亡し、約200万人が避難を余儀なくされていると報告されている(監視グループACLEDのデータによる)。
ロシアは同国を含む複数のアフリカ諸国に軍事指導者を派遣し、イスラム過激派との戦いを支援している。ブルキナファソの外務大臣カラモコ・ジャン=マリー・トラオレ氏は先月、ロシアとの協力がフランスとの歴史的な関係よりも国益に適していると述べた。
【詳細】
ブルキナファソの現状に関する詳細な説明は以下の通りである。
背景
ブルキナファソは、2022年以降、複数のクーデターによる政情不安に直面している。2022年1月、ポール=アンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐がロック・マルク・クリスチャン・カボレ大統領を追放し政権を掌握した。しかし、同年9月にダミバ中佐は36歳のイブラヒム・トラオレ大尉によって再び追放された。これにより、ブルキナファソは若い軍事指導者の下で新たな軍政体制に移行した。
首相の解任と政府解散
2024年12月7日、トラオレ大尉は大統領令を通じて首相アポリネール・ジョアキム・キエレム・ド・タンベラを解任し、政府を解散した。この措置の理由は公表されていないが、タンベラ氏は2022年10月のトラオレ大尉のクーデター後に首相に任命され、その後3度の内閣改造を経ても地位を維持していた人物である。解散された政府の閣僚は、新しい政府が発足するまで引き続き業務を行うこととなっている。
サヘル地域の安全保障とジハード主義
ブルキナファソは長年、イスラム過激派による暴力に苦しんできた。2012年にマリ北部で発生したジハード主義運動は、2015年にはブルキナファソとニジェールに広がった。この紛争により、ブルキナファソ国内では26,000人以上が死亡し、約200万人が住居を追われている。これらのジハード主義者は、アルカイダ系のグループやIS系のグループに属しているとされ、村落への襲撃や軍事拠点への攻撃を続けている。
トラオレ大尉の政権は、このジハード主義との戦いを最優先課題と位置付け、国家の主権回復を掲げている。西側諸国の支援に対する信頼を減少させる中、ロシアとの軍事協力を強化している。具体的には、ロシアは軍事教官を派遣し、ブルキナファソ軍の訓練や装備支援を行っているとされる。
サヘル諸国同盟(AES)の結成とフランスとの関係断絶
2023年9月、ブルキナファソ、マリ、ニジェールの3国は、サヘル諸国同盟(Alliance of Sahel States, AES)を結成した。この同盟は、フランスの影響力を排除し、地域の軍事協力を強化することを目的としている。これにより、フランスとの伝統的な関係は大幅に悪化した。ブルキナファソは以前フランスの植民地であり、独立後も経済的・軍事的な結びつきが強かったが、2022年のクーデター以降、これらの関係は急速に冷え込んでいる。
ブルキナファソ政府はフランスを、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)を通じて干渉を続けていると非難し、2024年1月にはECOWASからの離脱を表明した。同時にロシアとの協力関係を強化し、フランスに代わる戦略的パートナーとして位置付けている。
現在の課題
ブルキナファソは、ジハード主義暴力に加え、国内避難民の増加、経済的停滞、政情不安など多くの課題に直面している。トラオレ政権は安定化と発展を目指しているが、軍事政権に対する国際的な批判や経済制裁の可能性が依然として存在している。また、地域的な不安定性が他国との協力を困難にする要因となっている。
これらの状況を踏まえ、トラオレ政権が新政府をどのように構築し、どのような政策を打ち出すのかが注目されている。
【要点】
1.背景
・ブルキナファソは2022年以降、複数のクーデターによる政情不安に直面。
・2022年1月、ポール=アンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐が政権掌握。
同年9月、イブラヒム・トラオレ大尉がダミバを追放し、36歳で軍事政権を指導。
2.首相解任と政府解散
・2024年12月7日、トラオレ大尉が首相アポリネール・ジョアキム・キエレム・ド・タンベラを解任し、政府を解散。
・理由は公表されず。新政府発足まで現閣僚が業務を継続。
3.サヘル地域の安全保障とジハード主義
・2012年にマリ北部で発生したジハード主義暴力が、2015年にブルキナファソやニジェールに拡大。
・紛争で26,000人以上が死亡し、約200万人が国内避難民に。
・トラオレ政権はジハード主義との戦いを最優先課題とし、国家主権の回復を掲げる。
4.ロシアとの関係強化
・ロシアから軍事教官を受け入れ、軍の訓練や装備支援を受ける。
・外務大臣が「ロシアとの協力はフランスより適している」と発言。
5.サヘル諸国同盟(AES)の結成
・2023年9月、マリ、ニジェールとともにサヘル諸国同盟(AES)を結成。
・フランスの影響力排除と地域の軍事協力強化が目的。
6.フランスとの関係断絶とECOWASからの離脱
・ブルキナファソはフランスを西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)への干渉を非難。
・2024年1月、ECOWASからの離脱を表明。
7.現在の課題
・ジハード主義暴力、国内避難民問題、経済停滞、政情不安が継続。
・国際的批判や制裁のリスクが存在。
・新政府の構築と政策方針が国内外で注目されている。
【引用・参照・底本】
dismisses PM, dissolves government FRANCE24 2024.12.07
https://www.france24.com/en/africa/20241207-burkina-faso-junta-chief-dismisses-pm-dissolves-government?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020241207&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
フランス政府は約60年ぶりに倒れる ― 2024年12月08日 18:36
【概要】
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ミシェル・バルニエ首相および政府が不信任決議により倒れた後、困難な状況に直面している。バルニエ首相は、社会保障予算を議会の承認なしで強行しようとしたことが原因で、左派連合と極右の国民連合の両方から不信任決議を受け、その結果、首相の座を失った。この不信任決議により、フランス政府は約60年ぶりに倒れることとなった。
マクロン大統領は、新たな首相を任命し、2025年度予算を議会で通過させる必要がある。大統領は今後数日以内に新たな首相を任命する意向を示しているが、具体的な候補者については明言していない。現在、マクロンは自派の中道勢力、社会党、保守派「共和党」のリーダーと妥協案を模索しているが、極右の国民連合、極左のフランス・アンブーなどは協議に応じていない。
マクロンが今後選択できる選択肢としては、以下のようなものが考えられる。
1.バルニエの再任または類似の人物の起用
マクロンはバルニエを再任することができるが、これには極左と極右からの反発が予想される。代わりに、バルニエと同様の保守的・中道的な人物を選ぶ可能性もある。例として、保守派のフランソワ・バロワンやブルノ・ルテイヨーなどが挙げられているが、これらの人物も不信任決議の対象となる可能性がある。
2.信頼できる近親者の任命
マクロンは信頼できる側近を任命する可能性もある。例えば、バルニエ政権下で防衛大臣を務めたセバスチャン・ルコルヌが候補として浮上している。ルコルヌは、マクロンに忠実な人物であり、極右のマリーン・ルペンとも協力する可能性がある。
3.センター派の人物を選ぶ
フランソワ・バイロウのような中道派の人物も選択肢に挙がっている。バイロウは、社会党の一部を引き寄せる可能性があり、極右とは距離を置いているため、議会での支持を得やすいと考えられている。
4.左派の人物の起用
左派の人物を選ぶことも一つの方法だが、マクロンはこれを避けたいと考えている。社会党出身のベルナール・カズヌーブのような人物を選ぶことで、左派の議員を味方につけることは可能だが、税制改革や年金改革についての対立が生じる可能性が高い。
新しい首相の選任は、フランスの政治危機を収束させ、2025年度予算を通過させるための重要な一手となる。しかし、どの選択肢を取っても、議会での反発や不信任決議のリスクは避けられない。
【詳細】
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、2024年12月に発生した政治危機に直面している。この危機は、ミシェル・バルニエ首相およびその政府が不信任決議により倒れたことから始まった。この不信任決議は、左派の「新しい共産主義連合」(NUPES)と極右の「国民連合」(RN)によって提出され、いずれも可決された結果、バルニエ首相とその内閣は崩壊した。フランスでは60年ぶりに政府が不信任決議で倒れたこととなる。
1. 政治的背景
バルニエ首相は、2019年から2024年にかけての欧州議会選挙で、極右勢力が大勝した後、マクロン大統領が国民議会(下院)の解散を決定し、早期選挙を実施した結果、政治的な混乱が生じた。選挙の結果、左派の「新しい共産主義連合」が多数の議席を獲得したが、単独で過半数を確保することはできなかった。この状況下で、マクロンはバルニエを首相に任命し、新たな政府を組織したが、バルニエの政策推進に関する立場が分裂し、最終的に政府は不信任決議を受けて倒れることとなった。
2. 不信任決議の経緯
バルニエ首相は、議会での支持を欠いたまま、社会保障予算案の提出を強行しようとした。この予算案は、議会での承認を得ることなく推し進められたため、左派と極右の両勢力から強い反発を受け、最終的に両勢力が共同で不信任決議を提出した。この決議は可決され、バルニエ政権は崩壊した。
3. マクロン大統領の対応と選択肢
現在、フランスには首相が不在であり、マクロン大統領は新たな首相を任命し、政治的混乱を収束させる必要がある。最も重要なのは、2025年度予算を議会で通過させることであり、そのためには安定した政府を構築する必要がある。マクロンは、以下のような選択肢を持っている。
3.1 バルニエ再任または類似の人物を選ぶ
マクロンは、バルニエを再任することができる。しかし、バルニエが推進した予算案は議会で反発を招き、再任した場合、再度不信任決議を受けるリスクがある。代わりに、バルニエと似たような政治的スタンスを持つ人物を選ぶことも考えられる。例えば、保守派のフランソワ・バロワン(共和党)やブルノ・ルテイヨー(元内務大臣)などが挙げられ、これらの人物は、マクロンの中道政策に沿った人物として適任とされる。しかし、両者も不信任決議の対象となる可能性があり、問題は依然として解決しない。
3.2 マクロンの忠実な側近を任命
マクロンが、自らの忠実な側近を選ぶ可能性もある。セバスチャン・ルコルヌ(元防衛大臣)はその一例であり、マクロンの2017年の大統領選挙からの支持者で、現在もその側近として知られている。ルコルヌは、マクロンの政策を強力に支持し、かつ左派や極右との対立を避けることができる人物として、政局を安定させる可能性がある。しかし、この選択肢もまた、議会での支持を得るためには慎重な調整が必要となる。
3.3 センター派のベテラン政治家を起用
フランソワ・バイロウは、マクロンの中道連合におけるベテラン政治家であり、これまで何度も大統領選に挑戦してきたが、未だに当選には至っていない。バイロウは、社会党や極右を相手にバランスを取る能力を持ち、議会で一定の支持を集める可能性がある。また、マクロンが求める「妥協の象徴」として、バイロウは適任と考えられている。
3.4 左派の人物を任命
マクロンは、左派の人物を任命することも考えられるが、この選択肢は避けたいと考えている。特に、社会党のベルナール・カズヌーブ(元首相)などは、左派の一部議員を取り込む可能性があるが、税制改革や年金改革を巡る対立が再燃する恐れがある。特に、マクロンが税制や年金改革を巡る左派の要求に応じることは難しく、左派を積極的に取り込むことは政権の安定性を損ねる可能性がある。
4. 今後の課題
マクロン大統領が新たな首相を任命することは、単に政治的な安定をもたらすだけでなく、2025年度の予算案を通過させるためにも重要である。もし、議会で予算案が通らなければ、フランスの国家財政は危機に直面し、公共サービスの運営に深刻な影響が及ぶ可能性がある。
また、フランスの経済状況も懸念されており、政府の混乱が続くことで、国の債務が増加するリスクも高まっている。最終的には、マクロンがどのような人物を選び、政治的な合意を得るかが、フランスの未来を大きく左右することになる。
【要点】
・フランスの政治危機: 2024年12月、エマニュエル・マクロン大統領の首相ミシェル・バルニエ政権が不信任決議により崩壊。
・不信任決議の原因: バルニエ首相が強行した社会保障予算案に対し、左派の「新しい共産主義連合」(NUPES)と極右の「国民連合」(RN)が反発し、不信任決議を提出。
・議会の反応: 不信任決議が可決され、バルニエ政権が崩壊。60年ぶりの政府崩壊となる。
・マクロン大統領の選択肢:
1.バルニエ再任: 再任しても不信任決議を受けるリスクがある。
2.似た人物の選任: バルニエに似た政治スタンスを持つ人物(例:フランソワ・バロワン、ブルノ・ルテイヨー)を任命する可能性。
3.マクロンの忠実な側近の選任: セバスチャン・ルコルヌなどの側近を任命する可能性。
4.センター派のベテラン政治家: フランソワ・バイロウなどのベテランを選び、政局を安定させる。
5.左派の人物の任命: 左派の人物を任命する選択肢もあるが、税制改革や年金改革で対立が予想される。
・課題
・新首相の任命による政治的安定の確保。
・2025年度予算案の通過が必要。
・財政危機の回避と公共サービスの運営の維持が重要。
【引用・参照・底本】
France’s PM and government have fallen, so what are Macron’s next options? FRANCE24 2024.12.06
https://www.france24.com/en/europe/20241206-france-s-pm-and-government-have-fallen-so-what-are-macron-s-next-options?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020241206&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ミシェル・バルニエ首相および政府が不信任決議により倒れた後、困難な状況に直面している。バルニエ首相は、社会保障予算を議会の承認なしで強行しようとしたことが原因で、左派連合と極右の国民連合の両方から不信任決議を受け、その結果、首相の座を失った。この不信任決議により、フランス政府は約60年ぶりに倒れることとなった。
マクロン大統領は、新たな首相を任命し、2025年度予算を議会で通過させる必要がある。大統領は今後数日以内に新たな首相を任命する意向を示しているが、具体的な候補者については明言していない。現在、マクロンは自派の中道勢力、社会党、保守派「共和党」のリーダーと妥協案を模索しているが、極右の国民連合、極左のフランス・アンブーなどは協議に応じていない。
マクロンが今後選択できる選択肢としては、以下のようなものが考えられる。
1.バルニエの再任または類似の人物の起用
マクロンはバルニエを再任することができるが、これには極左と極右からの反発が予想される。代わりに、バルニエと同様の保守的・中道的な人物を選ぶ可能性もある。例として、保守派のフランソワ・バロワンやブルノ・ルテイヨーなどが挙げられているが、これらの人物も不信任決議の対象となる可能性がある。
2.信頼できる近親者の任命
マクロンは信頼できる側近を任命する可能性もある。例えば、バルニエ政権下で防衛大臣を務めたセバスチャン・ルコルヌが候補として浮上している。ルコルヌは、マクロンに忠実な人物であり、極右のマリーン・ルペンとも協力する可能性がある。
3.センター派の人物を選ぶ
フランソワ・バイロウのような中道派の人物も選択肢に挙がっている。バイロウは、社会党の一部を引き寄せる可能性があり、極右とは距離を置いているため、議会での支持を得やすいと考えられている。
4.左派の人物の起用
左派の人物を選ぶことも一つの方法だが、マクロンはこれを避けたいと考えている。社会党出身のベルナール・カズヌーブのような人物を選ぶことで、左派の議員を味方につけることは可能だが、税制改革や年金改革についての対立が生じる可能性が高い。
新しい首相の選任は、フランスの政治危機を収束させ、2025年度予算を通過させるための重要な一手となる。しかし、どの選択肢を取っても、議会での反発や不信任決議のリスクは避けられない。
【詳細】
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、2024年12月に発生した政治危機に直面している。この危機は、ミシェル・バルニエ首相およびその政府が不信任決議により倒れたことから始まった。この不信任決議は、左派の「新しい共産主義連合」(NUPES)と極右の「国民連合」(RN)によって提出され、いずれも可決された結果、バルニエ首相とその内閣は崩壊した。フランスでは60年ぶりに政府が不信任決議で倒れたこととなる。
1. 政治的背景
バルニエ首相は、2019年から2024年にかけての欧州議会選挙で、極右勢力が大勝した後、マクロン大統領が国民議会(下院)の解散を決定し、早期選挙を実施した結果、政治的な混乱が生じた。選挙の結果、左派の「新しい共産主義連合」が多数の議席を獲得したが、単独で過半数を確保することはできなかった。この状況下で、マクロンはバルニエを首相に任命し、新たな政府を組織したが、バルニエの政策推進に関する立場が分裂し、最終的に政府は不信任決議を受けて倒れることとなった。
2. 不信任決議の経緯
バルニエ首相は、議会での支持を欠いたまま、社会保障予算案の提出を強行しようとした。この予算案は、議会での承認を得ることなく推し進められたため、左派と極右の両勢力から強い反発を受け、最終的に両勢力が共同で不信任決議を提出した。この決議は可決され、バルニエ政権は崩壊した。
3. マクロン大統領の対応と選択肢
現在、フランスには首相が不在であり、マクロン大統領は新たな首相を任命し、政治的混乱を収束させる必要がある。最も重要なのは、2025年度予算を議会で通過させることであり、そのためには安定した政府を構築する必要がある。マクロンは、以下のような選択肢を持っている。
3.1 バルニエ再任または類似の人物を選ぶ
マクロンは、バルニエを再任することができる。しかし、バルニエが推進した予算案は議会で反発を招き、再任した場合、再度不信任決議を受けるリスクがある。代わりに、バルニエと似たような政治的スタンスを持つ人物を選ぶことも考えられる。例えば、保守派のフランソワ・バロワン(共和党)やブルノ・ルテイヨー(元内務大臣)などが挙げられ、これらの人物は、マクロンの中道政策に沿った人物として適任とされる。しかし、両者も不信任決議の対象となる可能性があり、問題は依然として解決しない。
3.2 マクロンの忠実な側近を任命
マクロンが、自らの忠実な側近を選ぶ可能性もある。セバスチャン・ルコルヌ(元防衛大臣)はその一例であり、マクロンの2017年の大統領選挙からの支持者で、現在もその側近として知られている。ルコルヌは、マクロンの政策を強力に支持し、かつ左派や極右との対立を避けることができる人物として、政局を安定させる可能性がある。しかし、この選択肢もまた、議会での支持を得るためには慎重な調整が必要となる。
3.3 センター派のベテラン政治家を起用
フランソワ・バイロウは、マクロンの中道連合におけるベテラン政治家であり、これまで何度も大統領選に挑戦してきたが、未だに当選には至っていない。バイロウは、社会党や極右を相手にバランスを取る能力を持ち、議会で一定の支持を集める可能性がある。また、マクロンが求める「妥協の象徴」として、バイロウは適任と考えられている。
3.4 左派の人物を任命
マクロンは、左派の人物を任命することも考えられるが、この選択肢は避けたいと考えている。特に、社会党のベルナール・カズヌーブ(元首相)などは、左派の一部議員を取り込む可能性があるが、税制改革や年金改革を巡る対立が再燃する恐れがある。特に、マクロンが税制や年金改革を巡る左派の要求に応じることは難しく、左派を積極的に取り込むことは政権の安定性を損ねる可能性がある。
4. 今後の課題
マクロン大統領が新たな首相を任命することは、単に政治的な安定をもたらすだけでなく、2025年度の予算案を通過させるためにも重要である。もし、議会で予算案が通らなければ、フランスの国家財政は危機に直面し、公共サービスの運営に深刻な影響が及ぶ可能性がある。
また、フランスの経済状況も懸念されており、政府の混乱が続くことで、国の債務が増加するリスクも高まっている。最終的には、マクロンがどのような人物を選び、政治的な合意を得るかが、フランスの未来を大きく左右することになる。
【要点】
・フランスの政治危機: 2024年12月、エマニュエル・マクロン大統領の首相ミシェル・バルニエ政権が不信任決議により崩壊。
・不信任決議の原因: バルニエ首相が強行した社会保障予算案に対し、左派の「新しい共産主義連合」(NUPES)と極右の「国民連合」(RN)が反発し、不信任決議を提出。
・議会の反応: 不信任決議が可決され、バルニエ政権が崩壊。60年ぶりの政府崩壊となる。
・マクロン大統領の選択肢:
1.バルニエ再任: 再任しても不信任決議を受けるリスクがある。
2.似た人物の選任: バルニエに似た政治スタンスを持つ人物(例:フランソワ・バロワン、ブルノ・ルテイヨー)を任命する可能性。
3.マクロンの忠実な側近の選任: セバスチャン・ルコルヌなどの側近を任命する可能性。
4.センター派のベテラン政治家: フランソワ・バイロウなどのベテランを選び、政局を安定させる。
5.左派の人物の任命: 左派の人物を任命する選択肢もあるが、税制改革や年金改革で対立が予想される。
・課題
・新首相の任命による政治的安定の確保。
・2025年度予算案の通過が必要。
・財政危機の回避と公共サービスの運営の維持が重要。
【引用・参照・底本】
France’s PM and government have fallen, so what are Macron’s next options? FRANCE24 2024.12.06
https://www.france24.com/en/europe/20241206-france-s-pm-and-government-have-fallen-so-what-are-macron-s-next-options?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020241206&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
シリア内戦:政治的解決の最後のチャンス ― 2024年12月08日 19:07
【概要】
シリア内戦における政治的解決の最後のチャンスとして、2024年12月のアスタナサミットを取り上げている。ロシア外相セルゲイ・ラヴロフは、イランおよびトルコの外相とドーハフォーラムの合間に会談する予定であり、このアスタナ形式の会議がシリア問題に対する最後の政治的解決の機会となる可能性が高いと述べている。
トルコ支援のハヤット・タハリール・アルシャム(HTS)は、テロリストと見なされている国もあるが、アレッポやハマなどを制圧した。エルドアン大統領は、シリアのアサド政権に対し、ボスニアのような連邦化された自治を認め、アメリカ支持のクルド勢力に対する共同作戦を求めている。しかしアサドは、トルコがシリアから軍を撤退しない限り対話を拒否している。この停滞を打破するため、エルドアンは最新の攻勢を行ったが、その背景にはロシアのウクライナ戦争やイランの中東での問題がある。
シリアアラブ軍(SAA)の北部からの撤退は、同国の同盟国の支援不足や準備不足によるもので、もしこの週末までに政治的解決が見込めない場合、次にホムスの戦いが起こり、HTSがダマスカスを攻撃する可能性もある。そのため、アサドが政治的譲歩を行うことが唯一の現実的な解決策となる。
アサドは、2017年にロシアが提案したシリア憲法案を参考に、北部に対して連邦自治を与える形で、クルドにも同様の権利を与えることを提案する可能性がある。また、アラブ連盟の平和維持部隊(UAEやエジプトが主導)をシリアとトルコ支援勢力の接触線に配備する案も出ている。このような平和維持部隊は、HTSの再攻撃を防ぐために重要な役割を果たすとされている。
もしアラブ連盟の平和維持部隊が展開されれば、アサドはイランとヒズボラの撤退を約束する必要があり、それがサウジアラビアやUAEからの制裁解除を促進する可能性がある。また、もし平和維持部隊が派遣されなくても、アサドはイスラエルに支援を求める可能性があり、その際、イランとヒズボラの撤退を前提にすることが考えられる。
ロシアの視点では、シリアがテロリストを完全に排除し、国を完全に制圧することが理想的だが、それは現実的ではないため、アサド政権が継続することがロシアにとって最良のシナリオであるとされる。また、シリア戦争の早期終結が、アメリカの影響を残したシリア北部の農業・エネルギー資源地帯におけるクルドとの連携を確保することで、ウクライナ戦争における譲歩の材料となる可能性もある。
最終的に、アサドが政治的解決を拒否すれば、ロシアは彼を支援する意思を薄め、アサドが政権を失う事態に備えてロシアの対応を見直す可能性がある。
【詳細】
シリア内戦における政治的解決に関する重要な瞬間を描いており、2024年12月のアスタナサミットがその最も重要なチャンスの一つであると述べている。サミットでの成果がシリア内戦の終結を決定づける可能性があるという観点から、状況と背景に関する詳細な説明を行っている。
シリア内戦とアスタナ形式
シリア内戦は、アサド政権と反政府勢力、さらにはクルド勢力やトルコ支援の反乱軍など、多様な勢力が絡む複雑な構造を持つ戦争である。2017年から始まった「アスタナ形式」という外交プロセスは、シリア内戦を終結させるための試みの一環として、ロシア、トルコ、イランが主導する協議の枠組みである。この枠組みは、戦闘の縮小や、反政府勢力と政府の間での対話促進を目指してきましたが、未だに決定的な解決には至っていない。
12月のアスタナサミットがシリア問題における「最後の政治的解決の機会」とされており、その理由として、トルコ支援のハヤット・タハリール・アルシャム(HTS)の攻勢や、シリア政府(アサド政権)の立場が強調されている。
トルコの意図とアサド政権の対応
トルコのエルドアン大統領は、シリアのアサド政権に対して、ボスニアのような連邦化を提案している。これは、シリアの北部におけるイスラム過激派勢力(トルコが支援する勢力)に広範な自治権を認めるというものです。さらに、エルドアンはアメリカが支援するクルド勢力を「テロリスト」と見なしており、これに対する共同作戦を求めている。
アサド政権はこれを拒否し、トルコ軍の撤退を前提にして対話を再開するべきだと主張している。この状態で停滞しているため、エルドアンは軍事的手段に訴え、トルコ支援のHTSをシリアに送り込む形で攻勢を仕掛けた。これにより、シリアアラブ軍(SAA)の北部での退却が引き起こされ、シリア政府の軍事的な立場が弱体化した。
HTSの攻勢とシリア政府の対応
HTSは、シリアの主要都市であるアレッポやハマを制圧し、政府軍に大きな圧力をかけている。これは、シリア政府にとって重大な挑戦であり、もしシリア政府が政治的譲歩を行わなければ、ホムスの戦いを皮切りに、HTSがさらにダマスカスを目指して進軍する可能性が高いとされている。
そのため、アサドは政治的譲歩を行う必要に迫られている。2017年にロシアが提案したシリア憲法案がその参考となる可能性があり、これはシリア国内の decentralization(分権化)を促進し、特に北部に対しては広範な自治を与えることを提案している内容である。この案が現実的な解決策となる可能性があり、さらにそれを進めて、トルコの要求に応じて北部への自治権を与える形が考えられている。これには、クルド勢力にも同じような権利を与える形でのパッケージ解決が含まれるかもしれない。
アラブ連盟の平和維持部隊とイランの撤退
政治的解決には、アラブ連盟による平和維持部隊の展開も検討されている。特に、UAE(アラブ首長国連邦)やエジプトが主導する形で、シリア政府とトルコ支援勢力の間の接触線(Line of Contact、LOC)に平和維持部隊を配置する案が提案されています。この部隊は、HTSの攻撃を防ぐために重要な役割を果たすとされている。もしこれが実現すれば、アサドはイランとヒズボラのシリアからの撤退を約束し、これがさらなる国際的支援や制裁解除を引き出すための条件となる可能性がある。
また、平和維持部隊が派遣されなかった場合でも、アサドはイスラエルに空爆支援を求める可能性があり、その条件としてイランとヒズボラの撤退を提案することが考えられる。
ロシアの視点と戦略
ロシアは、シリア内戦における最大の支援国の一つであり、シリアの完全な支配を目指すことが理想的だと考えている。しかし、現実的には、アサド政権が完全に勝利する可能性は低いため、ロシアはアサド政権の存続を望んでいる。もしアサド政権が崩壊すれば、ロシアの国際的な評判が傷つくため、アサドが一定の政治的譲歩を行い、シリアがある程度の分権化を進めることがロシアにとって最良のシナリオとなる。
また、シリアの戦争が終結すれば、アメリカが支配するクルド地域(農業・エネルギー資源の豊かな地域)との関係が強化され、アメリカに対する譲歩が引き出せるかもしれない。ロシアは、これがウクライナ戦争における譲歩に繋がる可能性を考慮しているとされている。
アサドの選択とロシアの対応
最終的に、アサドが政治的解決案を拒否し続ける場合、ロシアは彼を支援しなくなる可能性があり、アサドが政権を失った場合、ロシアは彼の亡命や避難を支援しないかもしれない。ロシアにとって、アサド政権の存続はその国際的な影響力を維持するために重要であり、アサドが政治的譲歩をするかどうかがシリア内戦の行方を決定づける要素となる。
【要点】
1.シリア内戦とアスタナ形式
・シリア内戦はアサド政権、反政府勢力、クルド勢力、トルコ支援の反乱軍などが関与する複雑な構造。
・2017年から「アスタナ形式」による外交努力が始まり、ロシア、トルコ、イランが協議を主導。
・2024年12月のアスタナサミットがシリア内戦の解決への重要な機会とされている。
2.トルコの意図とアサド政権の対応
・トルコのエルドアン大統領はシリア北部に自治権を与えることを提案。
・アサド政権はこの提案を拒否し、トルコ軍の撤退を条件に対話再開を主張。
・エルドアンは軍事的手段としてHTSを支援し、シリア政府軍に圧力をかけている。
3.HTSの攻勢とシリア政府の対応
・HTSはアレッポやハマを制圧し、シリア政府軍に大きな圧力を与える。
・政府は政治的譲歩を求められており、シリア憲法改正案(分権化案)が注目される。
・トルコ要求を満たすため、北部への自治権付与やクルド勢力への配慮が議論されている。
4.アラブ連盟の平和維持部隊とイランの撤退
・アラブ連盟が平和維持部隊をシリアに派遣し、HTSの攻勢を防ぐ案が提案される。
・部隊派遣が実現すれば、アサドはイランとヒズボラの撤退を約束し、国際的支援や制裁解除の道が開かれる可能性がある。
・部隊派遣がなければ、アサドはイスラエルに支援を求め、イラン撤退を条件にする可能性がある。
5.ロシアの視点と戦略
・ロシアはアサド政権の存続を望み、シリア完全勝利は現実的でないと認識。
・政治的譲歩による分権化案がロシアにとって最適とされ、アメリカ支配下のクルド地域との関係強化を目指している。
・シリア内戦が終結すれば、ウクライナ戦争における譲歩が引き出せると考える。
6.アサドの選択とロシアの対応
・アサドが政治的譲歩を拒否し続ければ、ロシアは支援を停止し、アサド政権崩壊を受け入れる可能性がある。
・ロシアにとっては、アサド政権の存続が国際的な影響力維持に不可欠であり、アサドが譲歩するかどうかがシリア問題の鍵となる。
【引用・参照・底本】
This Weekend’s Astana Summit Is Likely The Last Chance For A Political Solution In Syria Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.06
https://korybko.substack.com/p/this-weekends-astana-summit-is-likely?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152652103&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
シリア内戦における政治的解決の最後のチャンスとして、2024年12月のアスタナサミットを取り上げている。ロシア外相セルゲイ・ラヴロフは、イランおよびトルコの外相とドーハフォーラムの合間に会談する予定であり、このアスタナ形式の会議がシリア問題に対する最後の政治的解決の機会となる可能性が高いと述べている。
トルコ支援のハヤット・タハリール・アルシャム(HTS)は、テロリストと見なされている国もあるが、アレッポやハマなどを制圧した。エルドアン大統領は、シリアのアサド政権に対し、ボスニアのような連邦化された自治を認め、アメリカ支持のクルド勢力に対する共同作戦を求めている。しかしアサドは、トルコがシリアから軍を撤退しない限り対話を拒否している。この停滞を打破するため、エルドアンは最新の攻勢を行ったが、その背景にはロシアのウクライナ戦争やイランの中東での問題がある。
シリアアラブ軍(SAA)の北部からの撤退は、同国の同盟国の支援不足や準備不足によるもので、もしこの週末までに政治的解決が見込めない場合、次にホムスの戦いが起こり、HTSがダマスカスを攻撃する可能性もある。そのため、アサドが政治的譲歩を行うことが唯一の現実的な解決策となる。
アサドは、2017年にロシアが提案したシリア憲法案を参考に、北部に対して連邦自治を与える形で、クルドにも同様の権利を与えることを提案する可能性がある。また、アラブ連盟の平和維持部隊(UAEやエジプトが主導)をシリアとトルコ支援勢力の接触線に配備する案も出ている。このような平和維持部隊は、HTSの再攻撃を防ぐために重要な役割を果たすとされている。
もしアラブ連盟の平和維持部隊が展開されれば、アサドはイランとヒズボラの撤退を約束する必要があり、それがサウジアラビアやUAEからの制裁解除を促進する可能性がある。また、もし平和維持部隊が派遣されなくても、アサドはイスラエルに支援を求める可能性があり、その際、イランとヒズボラの撤退を前提にすることが考えられる。
ロシアの視点では、シリアがテロリストを完全に排除し、国を完全に制圧することが理想的だが、それは現実的ではないため、アサド政権が継続することがロシアにとって最良のシナリオであるとされる。また、シリア戦争の早期終結が、アメリカの影響を残したシリア北部の農業・エネルギー資源地帯におけるクルドとの連携を確保することで、ウクライナ戦争における譲歩の材料となる可能性もある。
最終的に、アサドが政治的解決を拒否すれば、ロシアは彼を支援する意思を薄め、アサドが政権を失う事態に備えてロシアの対応を見直す可能性がある。
【詳細】
シリア内戦における政治的解決に関する重要な瞬間を描いており、2024年12月のアスタナサミットがその最も重要なチャンスの一つであると述べている。サミットでの成果がシリア内戦の終結を決定づける可能性があるという観点から、状況と背景に関する詳細な説明を行っている。
シリア内戦とアスタナ形式
シリア内戦は、アサド政権と反政府勢力、さらにはクルド勢力やトルコ支援の反乱軍など、多様な勢力が絡む複雑な構造を持つ戦争である。2017年から始まった「アスタナ形式」という外交プロセスは、シリア内戦を終結させるための試みの一環として、ロシア、トルコ、イランが主導する協議の枠組みである。この枠組みは、戦闘の縮小や、反政府勢力と政府の間での対話促進を目指してきましたが、未だに決定的な解決には至っていない。
12月のアスタナサミットがシリア問題における「最後の政治的解決の機会」とされており、その理由として、トルコ支援のハヤット・タハリール・アルシャム(HTS)の攻勢や、シリア政府(アサド政権)の立場が強調されている。
トルコの意図とアサド政権の対応
トルコのエルドアン大統領は、シリアのアサド政権に対して、ボスニアのような連邦化を提案している。これは、シリアの北部におけるイスラム過激派勢力(トルコが支援する勢力)に広範な自治権を認めるというものです。さらに、エルドアンはアメリカが支援するクルド勢力を「テロリスト」と見なしており、これに対する共同作戦を求めている。
アサド政権はこれを拒否し、トルコ軍の撤退を前提にして対話を再開するべきだと主張している。この状態で停滞しているため、エルドアンは軍事的手段に訴え、トルコ支援のHTSをシリアに送り込む形で攻勢を仕掛けた。これにより、シリアアラブ軍(SAA)の北部での退却が引き起こされ、シリア政府の軍事的な立場が弱体化した。
HTSの攻勢とシリア政府の対応
HTSは、シリアの主要都市であるアレッポやハマを制圧し、政府軍に大きな圧力をかけている。これは、シリア政府にとって重大な挑戦であり、もしシリア政府が政治的譲歩を行わなければ、ホムスの戦いを皮切りに、HTSがさらにダマスカスを目指して進軍する可能性が高いとされている。
そのため、アサドは政治的譲歩を行う必要に迫られている。2017年にロシアが提案したシリア憲法案がその参考となる可能性があり、これはシリア国内の decentralization(分権化)を促進し、特に北部に対しては広範な自治を与えることを提案している内容である。この案が現実的な解決策となる可能性があり、さらにそれを進めて、トルコの要求に応じて北部への自治権を与える形が考えられている。これには、クルド勢力にも同じような権利を与える形でのパッケージ解決が含まれるかもしれない。
アラブ連盟の平和維持部隊とイランの撤退
政治的解決には、アラブ連盟による平和維持部隊の展開も検討されている。特に、UAE(アラブ首長国連邦)やエジプトが主導する形で、シリア政府とトルコ支援勢力の間の接触線(Line of Contact、LOC)に平和維持部隊を配置する案が提案されています。この部隊は、HTSの攻撃を防ぐために重要な役割を果たすとされている。もしこれが実現すれば、アサドはイランとヒズボラのシリアからの撤退を約束し、これがさらなる国際的支援や制裁解除を引き出すための条件となる可能性がある。
また、平和維持部隊が派遣されなかった場合でも、アサドはイスラエルに空爆支援を求める可能性があり、その条件としてイランとヒズボラの撤退を提案することが考えられる。
ロシアの視点と戦略
ロシアは、シリア内戦における最大の支援国の一つであり、シリアの完全な支配を目指すことが理想的だと考えている。しかし、現実的には、アサド政権が完全に勝利する可能性は低いため、ロシアはアサド政権の存続を望んでいる。もしアサド政権が崩壊すれば、ロシアの国際的な評判が傷つくため、アサドが一定の政治的譲歩を行い、シリアがある程度の分権化を進めることがロシアにとって最良のシナリオとなる。
また、シリアの戦争が終結すれば、アメリカが支配するクルド地域(農業・エネルギー資源の豊かな地域)との関係が強化され、アメリカに対する譲歩が引き出せるかもしれない。ロシアは、これがウクライナ戦争における譲歩に繋がる可能性を考慮しているとされている。
アサドの選択とロシアの対応
最終的に、アサドが政治的解決案を拒否し続ける場合、ロシアは彼を支援しなくなる可能性があり、アサドが政権を失った場合、ロシアは彼の亡命や避難を支援しないかもしれない。ロシアにとって、アサド政権の存続はその国際的な影響力を維持するために重要であり、アサドが政治的譲歩をするかどうかがシリア内戦の行方を決定づける要素となる。
【要点】
1.シリア内戦とアスタナ形式
・シリア内戦はアサド政権、反政府勢力、クルド勢力、トルコ支援の反乱軍などが関与する複雑な構造。
・2017年から「アスタナ形式」による外交努力が始まり、ロシア、トルコ、イランが協議を主導。
・2024年12月のアスタナサミットがシリア内戦の解決への重要な機会とされている。
2.トルコの意図とアサド政権の対応
・トルコのエルドアン大統領はシリア北部に自治権を与えることを提案。
・アサド政権はこの提案を拒否し、トルコ軍の撤退を条件に対話再開を主張。
・エルドアンは軍事的手段としてHTSを支援し、シリア政府軍に圧力をかけている。
3.HTSの攻勢とシリア政府の対応
・HTSはアレッポやハマを制圧し、シリア政府軍に大きな圧力を与える。
・政府は政治的譲歩を求められており、シリア憲法改正案(分権化案)が注目される。
・トルコ要求を満たすため、北部への自治権付与やクルド勢力への配慮が議論されている。
4.アラブ連盟の平和維持部隊とイランの撤退
・アラブ連盟が平和維持部隊をシリアに派遣し、HTSの攻勢を防ぐ案が提案される。
・部隊派遣が実現すれば、アサドはイランとヒズボラの撤退を約束し、国際的支援や制裁解除の道が開かれる可能性がある。
・部隊派遣がなければ、アサドはイスラエルに支援を求め、イラン撤退を条件にする可能性がある。
5.ロシアの視点と戦略
・ロシアはアサド政権の存続を望み、シリア完全勝利は現実的でないと認識。
・政治的譲歩による分権化案がロシアにとって最適とされ、アメリカ支配下のクルド地域との関係強化を目指している。
・シリア内戦が終結すれば、ウクライナ戦争における譲歩が引き出せると考える。
6.アサドの選択とロシアの対応
・アサドが政治的譲歩を拒否し続ければ、ロシアは支援を停止し、アサド政権崩壊を受け入れる可能性がある。
・ロシアにとっては、アサド政権の存続が国際的な影響力維持に不可欠であり、アサドが譲歩するかどうかがシリア問題の鍵となる。
【引用・参照・底本】
This Weekend’s Astana Summit Is Likely The Last Chance For A Political Solution In Syria Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.06
https://korybko.substack.com/p/this-weekends-astana-summit-is-likely?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152652103&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ロシアとパキスタンの関係:インドに対抗するものではない ― 2024年12月08日 19:14
【概要】
2024年12月6日、アンドリュー・コリブコ氏は、インディアンMPマニッシュ・テワリ氏に対して、ロシアとパキスタンの関係がインドに対抗するものではないと述べた。ロシアは、パキスタンとの関係強化を、アフガニスタンやインドとの争いを解決するために仲介し、南アジアへの新たなエネルギーおよび貿易回廊を開拓する手段として位置づけている。これは、各国からの外交的支援を前提としており、ロシアはその経済パートナーを多様化すること、特にエネルギー輸出を行う市場を拡大することを目指している。
マニッシュ・テワリ氏は先週、ロシアと中国・北朝鮮・イランの地理的軸に関連したインディアの安全保障およびエネルギーのニーズを論じ、ロシアがインドに依存しながらもパキスタンとの関係強化を試みていることに懸念を示した。この発言は、ロシアとパキスタンの間に「軸」が存在するかのように解釈されたが、実際には両国の関係はインドに対抗するものではない。
ロシアの目的は、経済パートナーの多様化とエネルギー輸出先の拡大にあり、南アジアへのエネルギーと貿易回廊を構築することにある。この計画には、アフガニスタンを経由したパキスタンからインドへのパイプライン構築が含まれ、ロシアの経済外交が地域の安全保障状況を改善し、インドにとっても利益をもたらす可能性がある。
また、ロシアは中国への依存を避けるため、南アジアを経済的な反発力として活用することを計画しており、パキスタンはロシアとの関係を強化することで、既存の中国への依存を減らすことができる。インドにとっても、地域の安全保障状況の改善は利益をもたらし、アメリカへの過度な依存を防ぐ可能性がある。
ロシアとパキスタンの関係がインドに対する敵対的なものであるという推測は誤りであり、両国は互いの利益に配慮し、現在のユーラシア問題におけるバランスを取る戦略を共有している。
【詳細】
アンドリュー・コリブコ氏は、2024年12月6日の記事で、インディアの議員マニッシュ・テワリ氏がロシアとパキスタンの関係について述べたことに対し、誤解を解くための詳細な説明を行った。テワリ氏は、ロシアがインドとの関係を維持しつつも、パキスタンとの関係を強化していることに懸念を示し、その背後に「ロシアとパキスタンの軸」が存在するとした。しかし、コリブコ氏はそのような見解を否定し、ロシアとパキスタンの関係はインドに対するものではなく、むしろロシアの経済的・戦略的利益に基づいていると強調した。
ロシアの戦略的目的
ロシアは、パキスタンとの関係強化を、南アジアへのエネルギーおよび貿易回廊の構築を目的とした戦略の一環として位置づけている。コリブコ氏によれば、ロシアの関心は、パキスタンを通じてアフガニスタンやインドにエネルギーを供給するためのインフラを整備することにある。この計画の一環として、アフガニスタンをエネルギーのハブとして利用し、パキスタンを通じてインドへのパイプラインを構築し、貿易回廊を開発することを目指している。
その背景にある地域の地政学
ロシアは、アフガニスタンとパキスタンとの関係を強化することで、これらの国々との戦略的協力を深化させ、南アジアにおける新たなエネルギー供給ルートを確立しようとしている。これにより、ロシアはエネルギー市場の多様化を図り、特にインドやパキスタンといった成長著しい市場にエネルギーを供給することを目指している。この戦略には、ロシアが持つエネルギー資源を活用し、経済的な影響力を拡大する意図がある。
また、ロシアのこの計画は、パキスタンとアフガニスタンの間の長年の対立や緊張を和らげ、経済的な利害を共有することで、両国の関係を改善する可能性を持っている。ロシアは、これらの国々との協力を通じて、地域全体の安定を図り、エネルギー回廊の構築を進める意向である。
インドとの関係
ロシアとインドの関係は長年にわたって戦略的なものであり、両国は互いにとって重要なパートナーである。コリブコ氏は、ロシアがインドに対して敵対的な行動を取ることはないと強調しており、ロシアとインドは共通の利益を追求していると述べている。インドのエネルギー需要は高まり続けており、ロシアはその供給源として重要な役割を果たすと考えられている。ロシアは、インドのエネルギー安全保障を支えるために、インドへのエネルギー供給を確保し、同時にインドとの経済関係を深化させることを目指している。
パキスタンとの関係強化
一方、ロシアとパキスタンの関係が強化されている背景には、ロシアの経済的・戦略的必要性がある。パキスタンは、ロシアにとって重要な貿易およびエネルギー供給の中継点となる国であり、パキスタンとの良好な関係を築くことは、ロシアの南アジア市場へのアクセスを確保するために不可欠である。また、ロシアがパキスタンとの関係を強化することで、インドに対して不利益をもたらす意図があるわけではない。むしろ、ロシアは、アフガニスタンやパキスタンとの協力を通じて、地域全体の安定を図り、最終的にはインドにも利益をもたらすことを目指している。
ロシアの多国籍戦略
コリブコ氏は、ロシアが中国との関係に過度に依存しないように、南アジアを経済的な反発力として活用しようとしていることを指摘している。ロシアは、パキスタンとの協力を通じて、既存の中国への依存を減らすことができ、同時にインドとの関係も維持しつつ、地域全体の安全保障と経済的利益を共有することを目指している。ロシアがその戦略的パートナーシップを多国籍に展開していく中で、インドと中国への依存のバランスを取ることが重要となっている。
結論
コリブコ氏は、ロシアとパキスタンの関係がインドに対して敵対的なものであるという誤解を避けるべきだと強調している。ロシアは、インドの利益を損なうことなく、パキスタンとの協力を進めており、最終的には南アジア全体の安定と経済的利益を追求している。ロシアとインドは、ユーラシアの安全保障を巡る戦略的バランスを共有しており、双方が相互に補完的な役割を果たしているため、両国の関係は今後も強固なものとして維持されるべきだと述べている。
【要点】
・ロシアの目的: ロシアはパキスタンとの関係強化を、南アジアへのエネルギーと貿易回廊の構築を目指している。これにより、パキスタンを通じてアフガニスタンやインドへのエネルギー供給を図る。
・ロシアの経済戦略: ロシアは、エネルギー供給の多様化と、インドやパキスタンといった成長市場へのアクセスを重視している。アフガニスタンをエネルギーのハブとして利用する計画がある。
・インドとの関係: ロシアとインドは長年の戦略的パートナーシップを維持しており、ロシアはインドのエネルギー安全保障を支える重要なパートナーである。
・パキスタンとの協力: ロシアは、パキスタンとの良好な関係を築くことで、南アジア市場へのアクセスを確保し、地域の安定を図ろうとしている。
・地域の安定と発展: ロシアはアフガニスタンとパキスタンとの協力を進め、これによりインドを含む南アジア全体の安全保障と経済発展を促進しようとしている。
・多国籍戦略: ロシアは中国への依存を避けるため、パキスタンとの協力を強化し、インドとの関係も維持しつつ、経済的・戦略的バランスを取ろうとしている。
・インドとパキスタンの関係: ロシアはインドとパキスタンの間で対立を解決するため、もし両国からのリクエストがあれば、仲介の役割を果たすことを目指している。
・誤解の解消: ロシアとパキスタンの関係はインドに対抗するものではなく、両国はそれぞれの利益に基づいた戦略的協力を進めている。
【引用・参照・底本】
Korybko To Indian MP Manish Tewari: Russian-Pakistani Ties Aren’t Aimed Against India Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.06
https://korybko.substack.com/p/korybko-to-indian-mp-manish-tewari?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152648077&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
2024年12月6日、アンドリュー・コリブコ氏は、インディアンMPマニッシュ・テワリ氏に対して、ロシアとパキスタンの関係がインドに対抗するものではないと述べた。ロシアは、パキスタンとの関係強化を、アフガニスタンやインドとの争いを解決するために仲介し、南アジアへの新たなエネルギーおよび貿易回廊を開拓する手段として位置づけている。これは、各国からの外交的支援を前提としており、ロシアはその経済パートナーを多様化すること、特にエネルギー輸出を行う市場を拡大することを目指している。
マニッシュ・テワリ氏は先週、ロシアと中国・北朝鮮・イランの地理的軸に関連したインディアの安全保障およびエネルギーのニーズを論じ、ロシアがインドに依存しながらもパキスタンとの関係強化を試みていることに懸念を示した。この発言は、ロシアとパキスタンの間に「軸」が存在するかのように解釈されたが、実際には両国の関係はインドに対抗するものではない。
ロシアの目的は、経済パートナーの多様化とエネルギー輸出先の拡大にあり、南アジアへのエネルギーと貿易回廊を構築することにある。この計画には、アフガニスタンを経由したパキスタンからインドへのパイプライン構築が含まれ、ロシアの経済外交が地域の安全保障状況を改善し、インドにとっても利益をもたらす可能性がある。
また、ロシアは中国への依存を避けるため、南アジアを経済的な反発力として活用することを計画しており、パキスタンはロシアとの関係を強化することで、既存の中国への依存を減らすことができる。インドにとっても、地域の安全保障状況の改善は利益をもたらし、アメリカへの過度な依存を防ぐ可能性がある。
ロシアとパキスタンの関係がインドに対する敵対的なものであるという推測は誤りであり、両国は互いの利益に配慮し、現在のユーラシア問題におけるバランスを取る戦略を共有している。
【詳細】
アンドリュー・コリブコ氏は、2024年12月6日の記事で、インディアの議員マニッシュ・テワリ氏がロシアとパキスタンの関係について述べたことに対し、誤解を解くための詳細な説明を行った。テワリ氏は、ロシアがインドとの関係を維持しつつも、パキスタンとの関係を強化していることに懸念を示し、その背後に「ロシアとパキスタンの軸」が存在するとした。しかし、コリブコ氏はそのような見解を否定し、ロシアとパキスタンの関係はインドに対するものではなく、むしろロシアの経済的・戦略的利益に基づいていると強調した。
ロシアの戦略的目的
ロシアは、パキスタンとの関係強化を、南アジアへのエネルギーおよび貿易回廊の構築を目的とした戦略の一環として位置づけている。コリブコ氏によれば、ロシアの関心は、パキスタンを通じてアフガニスタンやインドにエネルギーを供給するためのインフラを整備することにある。この計画の一環として、アフガニスタンをエネルギーのハブとして利用し、パキスタンを通じてインドへのパイプラインを構築し、貿易回廊を開発することを目指している。
その背景にある地域の地政学
ロシアは、アフガニスタンとパキスタンとの関係を強化することで、これらの国々との戦略的協力を深化させ、南アジアにおける新たなエネルギー供給ルートを確立しようとしている。これにより、ロシアはエネルギー市場の多様化を図り、特にインドやパキスタンといった成長著しい市場にエネルギーを供給することを目指している。この戦略には、ロシアが持つエネルギー資源を活用し、経済的な影響力を拡大する意図がある。
また、ロシアのこの計画は、パキスタンとアフガニスタンの間の長年の対立や緊張を和らげ、経済的な利害を共有することで、両国の関係を改善する可能性を持っている。ロシアは、これらの国々との協力を通じて、地域全体の安定を図り、エネルギー回廊の構築を進める意向である。
インドとの関係
ロシアとインドの関係は長年にわたって戦略的なものであり、両国は互いにとって重要なパートナーである。コリブコ氏は、ロシアがインドに対して敵対的な行動を取ることはないと強調しており、ロシアとインドは共通の利益を追求していると述べている。インドのエネルギー需要は高まり続けており、ロシアはその供給源として重要な役割を果たすと考えられている。ロシアは、インドのエネルギー安全保障を支えるために、インドへのエネルギー供給を確保し、同時にインドとの経済関係を深化させることを目指している。
パキスタンとの関係強化
一方、ロシアとパキスタンの関係が強化されている背景には、ロシアの経済的・戦略的必要性がある。パキスタンは、ロシアにとって重要な貿易およびエネルギー供給の中継点となる国であり、パキスタンとの良好な関係を築くことは、ロシアの南アジア市場へのアクセスを確保するために不可欠である。また、ロシアがパキスタンとの関係を強化することで、インドに対して不利益をもたらす意図があるわけではない。むしろ、ロシアは、アフガニスタンやパキスタンとの協力を通じて、地域全体の安定を図り、最終的にはインドにも利益をもたらすことを目指している。
ロシアの多国籍戦略
コリブコ氏は、ロシアが中国との関係に過度に依存しないように、南アジアを経済的な反発力として活用しようとしていることを指摘している。ロシアは、パキスタンとの協力を通じて、既存の中国への依存を減らすことができ、同時にインドとの関係も維持しつつ、地域全体の安全保障と経済的利益を共有することを目指している。ロシアがその戦略的パートナーシップを多国籍に展開していく中で、インドと中国への依存のバランスを取ることが重要となっている。
結論
コリブコ氏は、ロシアとパキスタンの関係がインドに対して敵対的なものであるという誤解を避けるべきだと強調している。ロシアは、インドの利益を損なうことなく、パキスタンとの協力を進めており、最終的には南アジア全体の安定と経済的利益を追求している。ロシアとインドは、ユーラシアの安全保障を巡る戦略的バランスを共有しており、双方が相互に補完的な役割を果たしているため、両国の関係は今後も強固なものとして維持されるべきだと述べている。
【要点】
・ロシアの目的: ロシアはパキスタンとの関係強化を、南アジアへのエネルギーと貿易回廊の構築を目指している。これにより、パキスタンを通じてアフガニスタンやインドへのエネルギー供給を図る。
・ロシアの経済戦略: ロシアは、エネルギー供給の多様化と、インドやパキスタンといった成長市場へのアクセスを重視している。アフガニスタンをエネルギーのハブとして利用する計画がある。
・インドとの関係: ロシアとインドは長年の戦略的パートナーシップを維持しており、ロシアはインドのエネルギー安全保障を支える重要なパートナーである。
・パキスタンとの協力: ロシアは、パキスタンとの良好な関係を築くことで、南アジア市場へのアクセスを確保し、地域の安定を図ろうとしている。
・地域の安定と発展: ロシアはアフガニスタンとパキスタンとの協力を進め、これによりインドを含む南アジア全体の安全保障と経済発展を促進しようとしている。
・多国籍戦略: ロシアは中国への依存を避けるため、パキスタンとの協力を強化し、インドとの関係も維持しつつ、経済的・戦略的バランスを取ろうとしている。
・インドとパキスタンの関係: ロシアはインドとパキスタンの間で対立を解決するため、もし両国からのリクエストがあれば、仲介の役割を果たすことを目指している。
・誤解の解消: ロシアとパキスタンの関係はインドに対抗するものではなく、両国はそれぞれの利益に基づいた戦略的協力を進めている。
【引用・参照・底本】
Korybko To Indian MP Manish Tewari: Russian-Pakistani Ties Aren’t Aimed Against India Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.06
https://korybko.substack.com/p/korybko-to-indian-mp-manish-tewari?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152648077&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
中国の科学者:潜水艦の探知における突破口を開く ― 2024年12月08日 19:39
【概要】
中国の科学者たちは、潜水艦の探知における突破口を開き、高エネルギーマイクロ波合成技術を用いて空中にラジオ波源を生成することに成功した。研究者によると、この仮想信号源は光速に近い速度で移動しながら、連続的に電磁波を発信することができるという。
地球上の観察者にとって、このような高速度で移動する信号源から発信される電磁波の波長は大きく拡張される。これにより、信号の周波数は低下し、遠くの星が示す赤方偏移と類似した現象が発生する。これらの非常に低い周波数(ELF)の電磁波は海水を貫通する能力を持ち、数百メートルの深さに隠れた潜水艦を探知することを可能にする。
この技術は「破壊的技術(disruptive technology)」であると、国立微波イメージング研究所のLi Daojing博士が率いる研究チームは述べている。この研究は、今年発表された査読付き論文に基づいている。
100Hzという非常に低い周波数の信号に対して、核潜水艦のレーダークロスセクション(RCS)は最大で88平方メートル(約947平方フィート)に達することがある。このため、潜水艦を探知するためには「一般的な磁気検出器」だけでも十分であると、李博士とその同僚は記している。
【詳細】
中国の科学者たちは、潜水艦の探知における突破口を開き、高エネルギーマイクロ波合成技術を用いて空中にラジオ波源を生成することに成功した。研究者によると、この仮想信号源は光速に近い速度で移動しながら、連続的に電磁波を発信することができるという。
地球上の観察者にとって、このような高速度で移動する信号源から発信される電磁波の波長は大きく拡張される。これにより、信号の周波数は低下し、遠くの星が示す赤方偏移と類似した現象が発生する。これらの非常に低い周波数(ELF)の電磁波は海水を貫通する能力を持ち、数百メートルの深さに隠れた潜水艦を探知することを可能にする。
この技術は「破壊的技術(disruptive technology)」であると、国立微波イメージング研究所のLi Daojing博士が率いる研究チームは述べている。この研究は、今年発表された査読付き論文に基づいている。
100Hzという非常に低い周波数の信号に対して、核潜水艦のレーダークロスセクション(RCS)は最大で88平方メートル(約947平方フィート)に達することがある。このため、潜水艦を探知するためには「一般的な磁気検出器」だけでも十分であると、李博士とその同僚は記している。
【要点】
1.技術概要
・中国の科学者たちは、高エネルギーマイクロ波合成技術を使用して、空中にラジオ波源を生成。
・この信号源は、光速に近い速度で移動しながら連続的に電磁波を発信。
2.仮想信号源
・信号源は物理的に存在しないが、高速で移動する電磁波の発信点として機能。
・高速移動によって、発信される電磁波の波長が拡大し、周波数が低下(赤方偏移の現象に類似)。
3.ELF電磁波の特性
・ELF(Extremely Low Frequency)電磁波は、3Hzから30Hzの非常に低い周波数帯域。
・ELF波は海水を深く貫通するため、潜水艦の探知に有効。
4.潜水艦探知
・ELF波は水中を深く通過できるため、数百メートルの深さに隠れた潜水艦を探知可能。
・これにより、潜水艦が隠れている深さに関わらずその位置を特定できる。
5.潜水艦のレーダークロスセクション(RCS)
・核潜水艦のRCSは、100Hzの信号に対して最大88平方メートルに達することがある。
・ELF波を利用することで、潜水艦の反応が大きくなり、探知が容易になる。
6.磁気検出器の使用
・ELF波は一般的な磁気検出器でも探知可能。
・高度なレーダー装置を必要とせず、広範囲にわたって潜水艦を検出できる。
7.技術の革新性
・この技術は「破壊的技術」とされ、潜水艦探知方法に革命をもたらす可能性がある。
・従来の潜水艦探知手段に比べて効率的で広範囲な監視が可能となる。
8.応用可能性
・潜水艦の探知に限らず、海中での他の物体の探知にも利用できる可能性がある。
10.研究チームと影響
・中国科学院のLi Daojing博士を中心とする研究チームが発表。
・この技術は、海軍技術の発展に重要な影響を与えると予測される。
【引用・参照・底本】
Chinese scientists create a ghost radar moving at ‘near-light-speed’ to detect submarines SCMP 2024.12.06
https://www.scmp.com/news/china/science/article/3288634/chinese-scientists-create-ghost-radar-moving-near-light-speed-detect-submarines?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-focus_sea_ru&utm_content=20241206&tpcc=enlz-focus_sea&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&tc=15
中国の科学者たちは、潜水艦の探知における突破口を開き、高エネルギーマイクロ波合成技術を用いて空中にラジオ波源を生成することに成功した。研究者によると、この仮想信号源は光速に近い速度で移動しながら、連続的に電磁波を発信することができるという。
地球上の観察者にとって、このような高速度で移動する信号源から発信される電磁波の波長は大きく拡張される。これにより、信号の周波数は低下し、遠くの星が示す赤方偏移と類似した現象が発生する。これらの非常に低い周波数(ELF)の電磁波は海水を貫通する能力を持ち、数百メートルの深さに隠れた潜水艦を探知することを可能にする。
この技術は「破壊的技術(disruptive technology)」であると、国立微波イメージング研究所のLi Daojing博士が率いる研究チームは述べている。この研究は、今年発表された査読付き論文に基づいている。
100Hzという非常に低い周波数の信号に対して、核潜水艦のレーダークロスセクション(RCS)は最大で88平方メートル(約947平方フィート)に達することがある。このため、潜水艦を探知するためには「一般的な磁気検出器」だけでも十分であると、李博士とその同僚は記している。
【詳細】
中国の科学者たちは、潜水艦の探知における突破口を開き、高エネルギーマイクロ波合成技術を用いて空中にラジオ波源を生成することに成功した。研究者によると、この仮想信号源は光速に近い速度で移動しながら、連続的に電磁波を発信することができるという。
地球上の観察者にとって、このような高速度で移動する信号源から発信される電磁波の波長は大きく拡張される。これにより、信号の周波数は低下し、遠くの星が示す赤方偏移と類似した現象が発生する。これらの非常に低い周波数(ELF)の電磁波は海水を貫通する能力を持ち、数百メートルの深さに隠れた潜水艦を探知することを可能にする。
この技術は「破壊的技術(disruptive technology)」であると、国立微波イメージング研究所のLi Daojing博士が率いる研究チームは述べている。この研究は、今年発表された査読付き論文に基づいている。
100Hzという非常に低い周波数の信号に対して、核潜水艦のレーダークロスセクション(RCS)は最大で88平方メートル(約947平方フィート)に達することがある。このため、潜水艦を探知するためには「一般的な磁気検出器」だけでも十分であると、李博士とその同僚は記している。
【要点】
1.技術概要
・中国の科学者たちは、高エネルギーマイクロ波合成技術を使用して、空中にラジオ波源を生成。
・この信号源は、光速に近い速度で移動しながら連続的に電磁波を発信。
2.仮想信号源
・信号源は物理的に存在しないが、高速で移動する電磁波の発信点として機能。
・高速移動によって、発信される電磁波の波長が拡大し、周波数が低下(赤方偏移の現象に類似)。
3.ELF電磁波の特性
・ELF(Extremely Low Frequency)電磁波は、3Hzから30Hzの非常に低い周波数帯域。
・ELF波は海水を深く貫通するため、潜水艦の探知に有効。
4.潜水艦探知
・ELF波は水中を深く通過できるため、数百メートルの深さに隠れた潜水艦を探知可能。
・これにより、潜水艦が隠れている深さに関わらずその位置を特定できる。
5.潜水艦のレーダークロスセクション(RCS)
・核潜水艦のRCSは、100Hzの信号に対して最大88平方メートルに達することがある。
・ELF波を利用することで、潜水艦の反応が大きくなり、探知が容易になる。
6.磁気検出器の使用
・ELF波は一般的な磁気検出器でも探知可能。
・高度なレーダー装置を必要とせず、広範囲にわたって潜水艦を検出できる。
7.技術の革新性
・この技術は「破壊的技術」とされ、潜水艦探知方法に革命をもたらす可能性がある。
・従来の潜水艦探知手段に比べて効率的で広範囲な監視が可能となる。
8.応用可能性
・潜水艦の探知に限らず、海中での他の物体の探知にも利用できる可能性がある。
10.研究チームと影響
・中国科学院のLi Daojing博士を中心とする研究チームが発表。
・この技術は、海軍技術の発展に重要な影響を与えると予測される。
【引用・参照・底本】
Chinese scientists create a ghost radar moving at ‘near-light-speed’ to detect submarines SCMP 2024.12.06
https://www.scmp.com/news/china/science/article/3288634/chinese-scientists-create-ghost-radar-moving-near-light-speed-detect-submarines?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-focus_sea_ru&utm_content=20241206&tpcc=enlz-focus_sea&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&tc=15
ノートルダム大聖堂の火災:重要な考古学的発見 ― 2024年12月08日 20:07
【概要】
2019年のノートルダム大聖堂の火災は、修復作業中に重要な考古学的発見をもたらした。発掘調査では、古代から19世紀に至るまでのさまざまな時代の遺物が発見され、その一部は現在、パリのクロニィ美術館で展示されている。
その中で注目すべきは、1230年に制作されたノートルダム大聖堂の「祭壇屏(ルードスクリーン)」の断片30点であり、初めて公開されている。これらの石像は、大聖堂の合唱部と中殿の間を仕切る役割を果たしていた。美術館の館長セヴェリーヌ・ルパペは、「これらの要素が永遠に失われたと思っていた」と語っている。
発掘された遺物の中には、色彩が保たれているものもあり、これらは13世紀の彫刻に施されたポリクローム(彩色)を示している。考古学者のクリストフ・ベニエは、「ルードスクリーンの発見は、100年に一度のような特別な発見であり、13世紀の彫刻が1,000点も発見されることは信じられない」と述べている。
ノートルダム大聖堂は、修復が進む中で20回以上の診断や発掘作業が行われ、これにより2,000年以上にわたる歴史が明らかになった。最も古い遺物は、1世紀初頭に遡るもので、カテドラルの中心にあるソフロ・セラーで発見された。これにより、カテドラルの下にはローマ時代の住宅や工芸品の遺構があることが確認された。
さらに、中世の建物やカロリング朝時代(750年から887年)の大きな建物の遺跡も発見された。ノートルダムの基礎部分が初めて明らかになり、この発見はカテドラルの建設に関連する初期の活動を示している。
特に注目されたのは、ノートルダムの中殿で発見された2つの棺であり、その一つは16世紀の詩人ジョアキム・デュ・ベレのものと考えられているが、依然として真相は不明である。
ノートルダム大聖堂の修復が終了した後も、発掘作業は続いており、今後2、3年にわたり重要な分析が行われる予定である。火災の瓦礫も収集され、これらは現在、科学者によって検査されており、建材や修復の段階に関する新たな情報を提供するものと期待されている。
火災がもたらした悲劇的な出来事ではあったが、その後の考古学的な発見は、研究を進めるための重要な手がかりとなった。
【詳細】
2019年4月に発生したノートルダム大聖堂の火災は、悲劇的な出来事であったが、その後の修復作業を通じて、多くの考古学的発見がもたらされた。火災後の発掘調査によって、カテドラルの周辺から古代から近代に至るまで、実に2,000年にわたる歴史的な遺物が発見され、これらの遺物は現在、パリのクロニィ美術館(Musée de Cluny)で展示されている。
ノートルダム大聖堂で発見された主な遺物
1. 祭壇屏の断片(ルードスクリーン)
ノートルダム大聖堂の祭壇屏(ルードスクリーン)は、1230年に作られたもので、信者と聖職者が分かれるように合唱部と中殿を仕切っていた石造の構造物である。2022年に発見されたこの祭壇屏の30点の断片は、初めて公開され、その精緻な彫刻が注目を集めている。これらの断片には、金や青の色彩が施されており、当時の宗教的な美術や礼拝空間の装飾的な側面を知る手がかりとなっている。発見当初、これらの彫刻は失われたと考えられていたため、その発見は非常に重要であると評価されている。
2. ポリクローム(彩色)彫刻
祭壇屏に加えて、ノートルダムの発掘で見つかった彫刻の一部には、ポリクローム(彩色)が残っているものがあり、これが極めて貴重な資料となっている。これらの彫刻は元々色鮮やかな彩色が施されており、長年の風化によって色が失われていたが、発掘によってその痕跡が明らかになった。これらの色彩は、当時の信者がどのように宗教的な儀式を視覚的に経験したかを示す貴重な情報源となる。
3. ガリア時代の硬貨
ノートルダム大聖堂の地下にあるソフロ・セラーで発見されたガリア時代(紀元前1世紀)の硬貨は、特に注目されている。これらの硬貨は、ノートルダムの建設前にその地でどのような活動が行われていたか、またその地域の経済活動の一端を知る貴重な証拠となる。
4. 中世の遺構
中世の時代に遡る遺物も多く発見されており、特にカロリング朝時代の大きな建物の遺構が発掘されたことが重要である。この建物は750年から887年の間に建てられ、カロリング家によって支配されていた時代の遺物である。発見された建物は、当時の西ヨーロッパの支配体制や宗教的・文化的な背景を知る手がかりとなる。
5. ノートルダムの基礎部分
また、ノートルダム大聖堂の基礎部分が初めて明らかになったことも大きな発見である。この発見は、大聖堂がどのように建設され、長い年月にわたってどのように変遷してきたかを示す重要な証拠となる。特に、基礎部分の発掘は、建築技術の進化や中世の宗教的建築物に関する理解を深めるものとなった。
特に注目された発見
6. 棺の発見
ノートルダム大聖堂の中殿(ナヴ)の下で発見された2つの棺も注目された。一つの棺には16世紀の詩人ジョアキム・デュ・ベレ(Joachim du Bellay)が埋葬されている可能性があると考えられ、フランスの考古学者エリック・クリュベジは、トゥールーズ大学病院の法医学研究所で行った分析を基にその可能性を示唆した。しかし、この人物がジョアキム・デュ・ベレであることを示す決定的な証拠はなく、研究は続けられている。
7. 火災後の瓦礫
2019年の火災で発生した瓦礫は、復元作業の一環として収集され、今もなお考古学的に重要なデータ源として利用されている。火災後の木材や石材、金属片などは、当時の建設方法や修復の歴史について新たな情報を提供しており、これらの材料は将来的に詳細な分析が行われ、ノートルダム大聖堂の建築史に対する理解をさらに深めるものとなる。
研究と発掘の続行
現在、ノートルダム大聖堂の修復作業は完了しているが、考古学者たちは引き続き発掘と分析を行っており、今後数年にわたって新たな発見が期待されている。特に、祭壇屏の断片に施されたポリクロームの修復作業や、その他の遺物の詳細な分析が進められている。これらの調査結果は、ノートルダム大聖堂の歴史だけでなく、フランスの中世から近代に至る宗教的・文化的な変遷を理解するうえで非常に重要な資料となる。
火災の影響と研究の進展
火災という悲劇的な出来事がもたらした発見には、無論、辛い側面もある。しかし、火災後の修復作業と発掘調査は、ノートルダム大聖堂に関する新たな知識を科学者や歴史家に提供し、今後数十年にわたって貴重な研究資料となるだろう。火災がもたらした「災難」から得られた「教訓」という側面は、研究者によって高く評価されている。
【要点】
1.祭壇屏の断片(ルードスクリーン)
・1230年に作られた祭壇屏の30点の断片が発見。
・精緻な彫刻と色彩が施されており、当時の宗教的美術や礼拝空間を知る手がかりとなる。
2.ポリクローム(彩色)彫刻
・ノートルダム大聖堂の彫刻には元々色鮮やかな彩色が施されていた。
・発掘により、当時の宗教儀式の視覚的な経験を知る貴重な資料となる。
3.ガリア時代の硬貨
・ノートルダム大聖堂の地下で発見された紀元前1世紀のガリア時代の硬貨。
・当時の地域の経済活動や歴史的背景を示す証拠。
4.中世の遺構
・カロリング朝時代(750~887年)の建物の遺構が発掘。
・西ヨーロッパの支配体制や宗教的・文化的な背景を理解するための重要な発見。
5.ノートルダムの基礎部分
・大聖堂の基礎部分が明らかにされ、建築技術や中世宗教建築物の理解を深める手がかりとなる。
6.棺の発見
・中殿下で発見された2つの棺のうち、1つは16世紀の詩人ジョアキム・デュ・ベレの可能性がある。
・法医学的な分析が進行中。
7.火災後の瓦礫
・2019年の火災による瓦礫が収集され、当時の建設方法や修復の歴史を知る貴重なデータ源となる。
8.研究と発掘の続行
・現在も発掘と分析が続けられており、新たな発見が期待されている。
・祭壇屏のポリクローム修復作業やその他の遺物分析が進行中。
9.火災の影響と研究の進展
・火災による悲劇的な出来事が、新たな歴史的知識を提供し、今後数十年にわたって重要な研究資料となる。
【引用・参照・底本】
Archaeological dig at Notre-Dame unearths 2,000 years of history FRANCE24 2024.12.04
https://www.france24.com/en/europe/20241204-archeological-dig-at-notre-dame-paris-unearths-2-000-years-of-history?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020241204&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
2019年のノートルダム大聖堂の火災は、修復作業中に重要な考古学的発見をもたらした。発掘調査では、古代から19世紀に至るまでのさまざまな時代の遺物が発見され、その一部は現在、パリのクロニィ美術館で展示されている。
その中で注目すべきは、1230年に制作されたノートルダム大聖堂の「祭壇屏(ルードスクリーン)」の断片30点であり、初めて公開されている。これらの石像は、大聖堂の合唱部と中殿の間を仕切る役割を果たしていた。美術館の館長セヴェリーヌ・ルパペは、「これらの要素が永遠に失われたと思っていた」と語っている。
発掘された遺物の中には、色彩が保たれているものもあり、これらは13世紀の彫刻に施されたポリクローム(彩色)を示している。考古学者のクリストフ・ベニエは、「ルードスクリーンの発見は、100年に一度のような特別な発見であり、13世紀の彫刻が1,000点も発見されることは信じられない」と述べている。
ノートルダム大聖堂は、修復が進む中で20回以上の診断や発掘作業が行われ、これにより2,000年以上にわたる歴史が明らかになった。最も古い遺物は、1世紀初頭に遡るもので、カテドラルの中心にあるソフロ・セラーで発見された。これにより、カテドラルの下にはローマ時代の住宅や工芸品の遺構があることが確認された。
さらに、中世の建物やカロリング朝時代(750年から887年)の大きな建物の遺跡も発見された。ノートルダムの基礎部分が初めて明らかになり、この発見はカテドラルの建設に関連する初期の活動を示している。
特に注目されたのは、ノートルダムの中殿で発見された2つの棺であり、その一つは16世紀の詩人ジョアキム・デュ・ベレのものと考えられているが、依然として真相は不明である。
ノートルダム大聖堂の修復が終了した後も、発掘作業は続いており、今後2、3年にわたり重要な分析が行われる予定である。火災の瓦礫も収集され、これらは現在、科学者によって検査されており、建材や修復の段階に関する新たな情報を提供するものと期待されている。
火災がもたらした悲劇的な出来事ではあったが、その後の考古学的な発見は、研究を進めるための重要な手がかりとなった。
【詳細】
2019年4月に発生したノートルダム大聖堂の火災は、悲劇的な出来事であったが、その後の修復作業を通じて、多くの考古学的発見がもたらされた。火災後の発掘調査によって、カテドラルの周辺から古代から近代に至るまで、実に2,000年にわたる歴史的な遺物が発見され、これらの遺物は現在、パリのクロニィ美術館(Musée de Cluny)で展示されている。
ノートルダム大聖堂で発見された主な遺物
1. 祭壇屏の断片(ルードスクリーン)
ノートルダム大聖堂の祭壇屏(ルードスクリーン)は、1230年に作られたもので、信者と聖職者が分かれるように合唱部と中殿を仕切っていた石造の構造物である。2022年に発見されたこの祭壇屏の30点の断片は、初めて公開され、その精緻な彫刻が注目を集めている。これらの断片には、金や青の色彩が施されており、当時の宗教的な美術や礼拝空間の装飾的な側面を知る手がかりとなっている。発見当初、これらの彫刻は失われたと考えられていたため、その発見は非常に重要であると評価されている。
2. ポリクローム(彩色)彫刻
祭壇屏に加えて、ノートルダムの発掘で見つかった彫刻の一部には、ポリクローム(彩色)が残っているものがあり、これが極めて貴重な資料となっている。これらの彫刻は元々色鮮やかな彩色が施されており、長年の風化によって色が失われていたが、発掘によってその痕跡が明らかになった。これらの色彩は、当時の信者がどのように宗教的な儀式を視覚的に経験したかを示す貴重な情報源となる。
3. ガリア時代の硬貨
ノートルダム大聖堂の地下にあるソフロ・セラーで発見されたガリア時代(紀元前1世紀)の硬貨は、特に注目されている。これらの硬貨は、ノートルダムの建設前にその地でどのような活動が行われていたか、またその地域の経済活動の一端を知る貴重な証拠となる。
4. 中世の遺構
中世の時代に遡る遺物も多く発見されており、特にカロリング朝時代の大きな建物の遺構が発掘されたことが重要である。この建物は750年から887年の間に建てられ、カロリング家によって支配されていた時代の遺物である。発見された建物は、当時の西ヨーロッパの支配体制や宗教的・文化的な背景を知る手がかりとなる。
5. ノートルダムの基礎部分
また、ノートルダム大聖堂の基礎部分が初めて明らかになったことも大きな発見である。この発見は、大聖堂がどのように建設され、長い年月にわたってどのように変遷してきたかを示す重要な証拠となる。特に、基礎部分の発掘は、建築技術の進化や中世の宗教的建築物に関する理解を深めるものとなった。
特に注目された発見
6. 棺の発見
ノートルダム大聖堂の中殿(ナヴ)の下で発見された2つの棺も注目された。一つの棺には16世紀の詩人ジョアキム・デュ・ベレ(Joachim du Bellay)が埋葬されている可能性があると考えられ、フランスの考古学者エリック・クリュベジは、トゥールーズ大学病院の法医学研究所で行った分析を基にその可能性を示唆した。しかし、この人物がジョアキム・デュ・ベレであることを示す決定的な証拠はなく、研究は続けられている。
7. 火災後の瓦礫
2019年の火災で発生した瓦礫は、復元作業の一環として収集され、今もなお考古学的に重要なデータ源として利用されている。火災後の木材や石材、金属片などは、当時の建設方法や修復の歴史について新たな情報を提供しており、これらの材料は将来的に詳細な分析が行われ、ノートルダム大聖堂の建築史に対する理解をさらに深めるものとなる。
研究と発掘の続行
現在、ノートルダム大聖堂の修復作業は完了しているが、考古学者たちは引き続き発掘と分析を行っており、今後数年にわたって新たな発見が期待されている。特に、祭壇屏の断片に施されたポリクロームの修復作業や、その他の遺物の詳細な分析が進められている。これらの調査結果は、ノートルダム大聖堂の歴史だけでなく、フランスの中世から近代に至る宗教的・文化的な変遷を理解するうえで非常に重要な資料となる。
火災の影響と研究の進展
火災という悲劇的な出来事がもたらした発見には、無論、辛い側面もある。しかし、火災後の修復作業と発掘調査は、ノートルダム大聖堂に関する新たな知識を科学者や歴史家に提供し、今後数十年にわたって貴重な研究資料となるだろう。火災がもたらした「災難」から得られた「教訓」という側面は、研究者によって高く評価されている。
【要点】
1.祭壇屏の断片(ルードスクリーン)
・1230年に作られた祭壇屏の30点の断片が発見。
・精緻な彫刻と色彩が施されており、当時の宗教的美術や礼拝空間を知る手がかりとなる。
2.ポリクローム(彩色)彫刻
・ノートルダム大聖堂の彫刻には元々色鮮やかな彩色が施されていた。
・発掘により、当時の宗教儀式の視覚的な経験を知る貴重な資料となる。
3.ガリア時代の硬貨
・ノートルダム大聖堂の地下で発見された紀元前1世紀のガリア時代の硬貨。
・当時の地域の経済活動や歴史的背景を示す証拠。
4.中世の遺構
・カロリング朝時代(750~887年)の建物の遺構が発掘。
・西ヨーロッパの支配体制や宗教的・文化的な背景を理解するための重要な発見。
5.ノートルダムの基礎部分
・大聖堂の基礎部分が明らかにされ、建築技術や中世宗教建築物の理解を深める手がかりとなる。
6.棺の発見
・中殿下で発見された2つの棺のうち、1つは16世紀の詩人ジョアキム・デュ・ベレの可能性がある。
・法医学的な分析が進行中。
7.火災後の瓦礫
・2019年の火災による瓦礫が収集され、当時の建設方法や修復の歴史を知る貴重なデータ源となる。
8.研究と発掘の続行
・現在も発掘と分析が続けられており、新たな発見が期待されている。
・祭壇屏のポリクローム修復作業やその他の遺物分析が進行中。
9.火災の影響と研究の進展
・火災による悲劇的な出来事が、新たな歴史的知識を提供し、今後数十年にわたって重要な研究資料となる。
【引用・参照・底本】
Archaeological dig at Notre-Dame unearths 2,000 years of history FRANCE24 2024.12.04
https://www.france24.com/en/europe/20241204-archeological-dig-at-notre-dame-paris-unearths-2-000-years-of-history?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020241204&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
シリアの騒乱:米国、イスラエル、トルコの共同計画 ― 2024年12月08日 20:23
【概要】
米アナリストのジェフリー・サックス氏は、シリアの騒乱について、アメリカ、イスラエル、トルコの共同計画によるものであるとの見解を示した。サックス氏は、シリアの武装勢力によるダマスカス制圧とタイミングを合わせる形で、英ジャーナリストのピアーズ・モーガン氏と行ったインタビューでこの主張を行い、このインタビューは「X(旧Twitter)」で多くの注目を集めた。
サックス氏は、シリアの混乱がアメリカ、イスラエル(特にシオニスト政権)、およびトルコによる一連の作戦の結果であると述べ、特にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が掲げてきた、パレスチナの理念を支持する政府の打倒を目的とする長期的な計画の一環であると指摘した。この計画は、西アジア全域におけるパレスチナ支援の政府を排除しようとする試みの一部であり、30年間にわたり進められてきたという。
【詳細】
ジェフリー・サックス氏は、シリアの騒乱が単なる国内的な問題ではなく、アメリカ、イスラエル、そしてトルコが関与した共同作戦の結果であると主張している。彼の見解では、この騒乱はこれらの国々の長期的な戦略に基づいており、特にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が推進してきた政策に関連している。
サックス氏は、シリアで起こった一連の暴動や武力衝突、特にダマスカス制圧の試みを、これらの国々が主導した「作戦」の一部として位置付けている。シリアの内戦は、アメリカやイスラエルが推し進めてきた、地域の政治的勢力を変えようとする戦略の一環とされており、特にパレスチナ問題に関連する国家の変革を目指しているとされる。
サックス氏によると、イスラエルは30年以上にわたって「パレスチナの理念」を支持する政府を排除するための活動を行ってきた。この「パレスチナの理念」とは、パレスチナの独立やその権利を支持する政策を採る国々を指し、イスラエルはこれらの国々を抑え込むために影響力を行使してきたという。
特にネタニヤフ首相は、パレスチナ問題を軸に、地域内でイスラエルの影響力を強化するための戦略を取っており、その中でシリアを含む中東諸国の政権をターゲットにしてきたとサックス氏は述べている。この長期的な計画の一環として、シリアの内戦が利用されてきたという見解が示されている。
さらに、サックス氏は、アメリカとイスラエルの連携だけでなく、トルコもこの計画に関与していると指摘している。トルコはシリアの北部で独自の影響力を確立し、地域の戦略的な動向に影響を与えようとしてきた。これにより、シリア内戦は単なる内政の問題にとどまらず、広範な国際的な力学に組み込まれることになった。
サックス氏の主張において重要なのは、シリアの騒乱が単なる偶然や無秩序な暴動ではなく、これらの国々が意図的に地域の政治を再編し、特にパレスチナ問題に関連する政府を排除するための計画的な作業の一部であるという点である。
【要点】
・ジェフリー・サックス氏の主張: シリアの騒乱は、アメリカ、イスラエル、トルコの共同作戦によるものとされている。
・シリアの内戦の背景: サックス氏はシリアの混乱が単なる国内問題ではなく、これらの国々による地域的な戦略の一環であると述べている。
・イスラエルの役割: イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、パレスチナの理念を支持する政府を排除するために30年以上にわたる長期計画を進めてきた。
・パレスチナ理念: サックス氏は「パレスチナの理念」を支持する国家(パレスチナ独立やその権利を支持する国々)を排除することをイスラエルが目指してきたと指摘。
・アメリカの関与: アメリカはイスラエルの政策を支持し、シリアの政権変革に積極的に関与してきたとされる。
・トルコの関与: トルコはシリア北部で独自の影響力を拡大し、シリア内戦において重要な役割を果たしてきた。
・シリア内戦の国際的影響: サックス氏は、シリア内戦が単なる内政問題にとどまらず、広範な国際的な力学に影響されていると強調している。
【引用】
「これは米国、シオニスト政権イスラエル、トルコによる作戦だ。これは、西アジア全域でパレスチナの理念を支持する政府を打倒すべく30年間活動してきたネタニヤフ・イスラエル首相の長期計画の一環である」
【以上、引用蘭のParsToday記事】
【引用・参照・底本】
米アナリスト・サックス氏:「米、イスラエル、そしてトルコはシリアの騒乱の責任者」 ParsToday 2024.12.08
https://parstoday.ir/ja/news/world-i126462-%E7%B1%B3%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88_%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E6%B0%8F_%E7%B1%B3_%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB_%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%81%AF%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%81%AE%E9%A8%92%E4%B9%B1%E3%81%AE%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E8%80%85
米アナリストのジェフリー・サックス氏は、シリアの騒乱について、アメリカ、イスラエル、トルコの共同計画によるものであるとの見解を示した。サックス氏は、シリアの武装勢力によるダマスカス制圧とタイミングを合わせる形で、英ジャーナリストのピアーズ・モーガン氏と行ったインタビューでこの主張を行い、このインタビューは「X(旧Twitter)」で多くの注目を集めた。
サックス氏は、シリアの混乱がアメリカ、イスラエル(特にシオニスト政権)、およびトルコによる一連の作戦の結果であると述べ、特にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が掲げてきた、パレスチナの理念を支持する政府の打倒を目的とする長期的な計画の一環であると指摘した。この計画は、西アジア全域におけるパレスチナ支援の政府を排除しようとする試みの一部であり、30年間にわたり進められてきたという。
【詳細】
ジェフリー・サックス氏は、シリアの騒乱が単なる国内的な問題ではなく、アメリカ、イスラエル、そしてトルコが関与した共同作戦の結果であると主張している。彼の見解では、この騒乱はこれらの国々の長期的な戦略に基づいており、特にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が推進してきた政策に関連している。
サックス氏は、シリアで起こった一連の暴動や武力衝突、特にダマスカス制圧の試みを、これらの国々が主導した「作戦」の一部として位置付けている。シリアの内戦は、アメリカやイスラエルが推し進めてきた、地域の政治的勢力を変えようとする戦略の一環とされており、特にパレスチナ問題に関連する国家の変革を目指しているとされる。
サックス氏によると、イスラエルは30年以上にわたって「パレスチナの理念」を支持する政府を排除するための活動を行ってきた。この「パレスチナの理念」とは、パレスチナの独立やその権利を支持する政策を採る国々を指し、イスラエルはこれらの国々を抑え込むために影響力を行使してきたという。
特にネタニヤフ首相は、パレスチナ問題を軸に、地域内でイスラエルの影響力を強化するための戦略を取っており、その中でシリアを含む中東諸国の政権をターゲットにしてきたとサックス氏は述べている。この長期的な計画の一環として、シリアの内戦が利用されてきたという見解が示されている。
さらに、サックス氏は、アメリカとイスラエルの連携だけでなく、トルコもこの計画に関与していると指摘している。トルコはシリアの北部で独自の影響力を確立し、地域の戦略的な動向に影響を与えようとしてきた。これにより、シリア内戦は単なる内政の問題にとどまらず、広範な国際的な力学に組み込まれることになった。
サックス氏の主張において重要なのは、シリアの騒乱が単なる偶然や無秩序な暴動ではなく、これらの国々が意図的に地域の政治を再編し、特にパレスチナ問題に関連する政府を排除するための計画的な作業の一部であるという点である。
【要点】
・ジェフリー・サックス氏の主張: シリアの騒乱は、アメリカ、イスラエル、トルコの共同作戦によるものとされている。
・シリアの内戦の背景: サックス氏はシリアの混乱が単なる国内問題ではなく、これらの国々による地域的な戦略の一環であると述べている。
・イスラエルの役割: イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、パレスチナの理念を支持する政府を排除するために30年以上にわたる長期計画を進めてきた。
・パレスチナ理念: サックス氏は「パレスチナの理念」を支持する国家(パレスチナ独立やその権利を支持する国々)を排除することをイスラエルが目指してきたと指摘。
・アメリカの関与: アメリカはイスラエルの政策を支持し、シリアの政権変革に積極的に関与してきたとされる。
・トルコの関与: トルコはシリア北部で独自の影響力を拡大し、シリア内戦において重要な役割を果たしてきた。
・シリア内戦の国際的影響: サックス氏は、シリア内戦が単なる内政問題にとどまらず、広範な国際的な力学に影響されていると強調している。
【引用】
「これは米国、シオニスト政権イスラエル、トルコによる作戦だ。これは、西アジア全域でパレスチナの理念を支持する政府を打倒すべく30年間活動してきたネタニヤフ・イスラエル首相の長期計画の一環である」
【以上、引用蘭のParsToday記事】
【引用・参照・底本】
米アナリスト・サックス氏:「米、イスラエル、そしてトルコはシリアの騒乱の責任者」 ParsToday 2024.12.08
https://parstoday.ir/ja/news/world-i126462-%E7%B1%B3%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88_%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E6%B0%8F_%E7%B1%B3_%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB_%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%81%AF%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%81%AE%E9%A8%92%E4%B9%B1%E3%81%AE%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E8%80%85
ガザ地区:農業、畜産、漁業部門がイスラエルの攻撃で深刻な被害 ― 2024年12月08日 20:37
【概要】
2024年12月8日、パレスチナ農業省の報道官ムハンマド・アブ・アウデは、ガザ地区における農業、畜産業、漁業部門がイスラエルの攻撃によって深刻な被害を受けたことを報告した。アウデ報道官によると、ガザ戦争の間に、シオニスト政権が同地域の農作物栽培地の85%以上を破壊し、畜産部門の95%、漁業部門の97%以上も破壊したという。さらに、ガザの漁民を標的にした漁船の攻撃も行われたと伝えられている。
また、2023年10月7日以来、イスラエルによる攻撃で、4万4000人以上のパレスチナ人が死亡し、10万5000人以上が負傷したとの最新の報告もある。このような状況は、イスラエルが占領したパレスチナ領土において続いており、1948年にイスラエル国家が宣言されて以降、パレスチナ人に対する広範な抑圧と暴力が続いている。
イスラエルの存在とその政策に対しては、イランをはじめとするいくつかの国々が、解体とユダヤ人の元の国への帰還を支持している。
【詳細】
ガザ地区におけるシオニスト政権(イスラエル)の攻撃により、農業、畜産業、漁業が甚大な被害を受けているという報告が、パレスチナ農業省のムハンマド・アブ・アウデ報道官からなされました。アウデ氏によれば、シオニスト政権による侵略行動は、ガザ地区の農業部門にとって壊滅的な結果をもたらし、特に農作物栽培地域の85%以上が破壊されたとされています。この破壊は、農作物の生産に必要な土地やインフラ、作物そのものが攻撃を受ける形で行われ、農業生産における大きな損失を引き起こしました。
また、畜産業に関しては、その95%が破壊されたと報告されています。これは、家畜の殺傷や飼料の供給の停止、家畜を飼うための施設の破壊などを含んでおり、地域経済への影響が非常に深刻です。さらに、漁業部門もほぼ完全に壊滅しており、漁業活動の97%以上が不可能になったとされています。イスラエルはガザ地区の漁民が使っていた漁船を標的にすることで、漁業の破壊を進めています。これにより、ガザの漁民たちは生計手段を失い、食料供給がさらに逼迫しています。
この攻撃は、2023年10月7日に始まったガザ戦争の一環として行われています。イスラエルは、西側諸国からの全面的な支援を受けて、パレスチナの人々に対する攻撃を強化し、無差別の爆撃や地上戦を展開しています。この戦争において、ガザ地区で4万4000人以上のパレスチナ人が死亡し、10万5000人以上が負傷したとされています。これにより、ガザ地区の人々は生命と生計を脅かされる状況に置かれています。
イスラエルの行動は、1948年に宣言されたイスラエル国家の設立に遡ります。イスラエルは、イギリスによる植民地主義計画と、ユダヤ人移民をパレスチナに受け入れる政策を通じて成り立ちました。しかし、この過程でパレスチナ人の土地が奪われ、彼らの権利が無視されることとなり、その後も数十年にわたる占領と弾圧が続いています。
イランをはじめとするいくつかの国々は、イスラエルによる占領とパレスチナ人への抑圧を非難し、イスラエルの解体と、ユダヤ人の元の国への帰還を支持しています。特に、イランはイスラエルを「植民地主義的な政権」と位置づけ、その解体を目指す立場を強調しています。
このように、ガザ地区における農業、畜産、漁業の破壊は、単なる物理的な被害にとどまらず、パレスチナ人の生活基盤を根底から揺るがし、食料危機や経済的な困難を深刻化させています。また、これに対する国際社会の反応や支援の動向も注目される中で、パレスチナ問題は依然として解決が見えない状況にあります。
【要点】
1.農業の破壊
・ガザ地区の農作物栽培地域の85%以上が破壊された。
・これには農地、作物、農業インフラが含まれる。
2.畜産業の被害
・畜産部門の95%が破壊された。
・家畜の殺害、飼料供給の停止、畜舎の破壊などが含まれる。
3.漁業の壊滅
・漁業部門の97%以上が破壊された。
・漁船が標的にされ、漁業活動がほぼ不可能に。
4.ガザ戦争の影響
・2023年10月7日から続くイスラエルの攻撃により、4万4000人以上のパレスチナ人が死亡、10万5000人以上が負傷。
5.イスラエルの歴史的背景
・ イスラエルは1948年に設立され、イギリスの植民地主義計画とユダヤ人移民政策を通じて成立。
・その後、パレスチナ人の土地が奪われ、権利が無視されてきた。
6.国際的な反応
・イランをはじめとするいくつかの国々がイスラエルを「植民地主義的な政権」として非難し、解体とユダヤ人の元の国への帰還を支持。
7.ガザ地区の経済的影響
・農業、畜産業、漁業の壊滅的被害により、ガザの人々の生活基盤が脅かされている。
【引用・参照・底本】
衝撃的な統計;シオニストによるガザの農業・畜産部門の破壊 ParsToday 2024.12.08
https://parstoday.ir/ja/news/west_asia-i126458-%E8%A1%9D%E6%92%83%E7%9A%84%E3%81%AA%E7%B5%B1%E8%A8%88_%E3%82%B7%E3%82%AA%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%82%AC%E3%82%B6%E3%81%AE%E8%BE%B2%E6%A5%AD_%E7%95%9C%E7%94%A3%E9%83%A8%E9%96%80%E3%81%AE%E7%A0%B4%E5%A3%8A
2024年12月8日、パレスチナ農業省の報道官ムハンマド・アブ・アウデは、ガザ地区における農業、畜産業、漁業部門がイスラエルの攻撃によって深刻な被害を受けたことを報告した。アウデ報道官によると、ガザ戦争の間に、シオニスト政権が同地域の農作物栽培地の85%以上を破壊し、畜産部門の95%、漁業部門の97%以上も破壊したという。さらに、ガザの漁民を標的にした漁船の攻撃も行われたと伝えられている。
また、2023年10月7日以来、イスラエルによる攻撃で、4万4000人以上のパレスチナ人が死亡し、10万5000人以上が負傷したとの最新の報告もある。このような状況は、イスラエルが占領したパレスチナ領土において続いており、1948年にイスラエル国家が宣言されて以降、パレスチナ人に対する広範な抑圧と暴力が続いている。
イスラエルの存在とその政策に対しては、イランをはじめとするいくつかの国々が、解体とユダヤ人の元の国への帰還を支持している。
【詳細】
ガザ地区におけるシオニスト政権(イスラエル)の攻撃により、農業、畜産業、漁業が甚大な被害を受けているという報告が、パレスチナ農業省のムハンマド・アブ・アウデ報道官からなされました。アウデ氏によれば、シオニスト政権による侵略行動は、ガザ地区の農業部門にとって壊滅的な結果をもたらし、特に農作物栽培地域の85%以上が破壊されたとされています。この破壊は、農作物の生産に必要な土地やインフラ、作物そのものが攻撃を受ける形で行われ、農業生産における大きな損失を引き起こしました。
また、畜産業に関しては、その95%が破壊されたと報告されています。これは、家畜の殺傷や飼料の供給の停止、家畜を飼うための施設の破壊などを含んでおり、地域経済への影響が非常に深刻です。さらに、漁業部門もほぼ完全に壊滅しており、漁業活動の97%以上が不可能になったとされています。イスラエルはガザ地区の漁民が使っていた漁船を標的にすることで、漁業の破壊を進めています。これにより、ガザの漁民たちは生計手段を失い、食料供給がさらに逼迫しています。
この攻撃は、2023年10月7日に始まったガザ戦争の一環として行われています。イスラエルは、西側諸国からの全面的な支援を受けて、パレスチナの人々に対する攻撃を強化し、無差別の爆撃や地上戦を展開しています。この戦争において、ガザ地区で4万4000人以上のパレスチナ人が死亡し、10万5000人以上が負傷したとされています。これにより、ガザ地区の人々は生命と生計を脅かされる状況に置かれています。
イスラエルの行動は、1948年に宣言されたイスラエル国家の設立に遡ります。イスラエルは、イギリスによる植民地主義計画と、ユダヤ人移民をパレスチナに受け入れる政策を通じて成り立ちました。しかし、この過程でパレスチナ人の土地が奪われ、彼らの権利が無視されることとなり、その後も数十年にわたる占領と弾圧が続いています。
イランをはじめとするいくつかの国々は、イスラエルによる占領とパレスチナ人への抑圧を非難し、イスラエルの解体と、ユダヤ人の元の国への帰還を支持しています。特に、イランはイスラエルを「植民地主義的な政権」と位置づけ、その解体を目指す立場を強調しています。
このように、ガザ地区における農業、畜産、漁業の破壊は、単なる物理的な被害にとどまらず、パレスチナ人の生活基盤を根底から揺るがし、食料危機や経済的な困難を深刻化させています。また、これに対する国際社会の反応や支援の動向も注目される中で、パレスチナ問題は依然として解決が見えない状況にあります。
【要点】
1.農業の破壊
・ガザ地区の農作物栽培地域の85%以上が破壊された。
・これには農地、作物、農業インフラが含まれる。
2.畜産業の被害
・畜産部門の95%が破壊された。
・家畜の殺害、飼料供給の停止、畜舎の破壊などが含まれる。
3.漁業の壊滅
・漁業部門の97%以上が破壊された。
・漁船が標的にされ、漁業活動がほぼ不可能に。
4.ガザ戦争の影響
・2023年10月7日から続くイスラエルの攻撃により、4万4000人以上のパレスチナ人が死亡、10万5000人以上が負傷。
5.イスラエルの歴史的背景
・ イスラエルは1948年に設立され、イギリスの植民地主義計画とユダヤ人移民政策を通じて成立。
・その後、パレスチナ人の土地が奪われ、権利が無視されてきた。
6.国際的な反応
・イランをはじめとするいくつかの国々がイスラエルを「植民地主義的な政権」として非難し、解体とユダヤ人の元の国への帰還を支持。
7.ガザ地区の経済的影響
・農業、畜産業、漁業の壊滅的被害により、ガザの人々の生活基盤が脅かされている。
【引用・参照・底本】
衝撃的な統計;シオニストによるガザの農業・畜産部門の破壊 ParsToday 2024.12.08
https://parstoday.ir/ja/news/west_asia-i126458-%E8%A1%9D%E6%92%83%E7%9A%84%E3%81%AA%E7%B5%B1%E8%A8%88_%E3%82%B7%E3%82%AA%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%82%AC%E3%82%B6%E3%81%AE%E8%BE%B2%E6%A5%AD_%E7%95%9C%E7%94%A3%E9%83%A8%E9%96%80%E3%81%AE%E7%A0%B4%E5%A3%8A










