中国は慎重かつ計画的な戦略を取るべきである2024年12月14日 21:13

Microsoft Designerで作成
【概要】
  
 南京大学国際関係学院の院長であるZhu Feng氏は、2025年に北京で開催された「グローバルタイムズ年次会議2025」(テーマ:「共に前進するパートナーシップ:中国と世界の価値の共鳴」)において、大国間の相互作用のあり方は常に存在してきたと述べている。重要なのは、この相互作用がどのような背景と国際的文脈の中で行われるのか、そして各国の戦略的発展の需要を満たすためにどのような価値を促進する必要があるのかである、と指摘した。

 Zhu 氏によると、今年の大国関係には以下の3つの特徴がある。

 1.国内政治要因の影響:国内の政治的要因が発酵し、大国の外交政策に新たな不確実性をもたらしている。
 2.戦略的核心問題における対立の深化:戦略的な核心問題に関する意見の相違や論争がより深刻化している。
 3.アメリカの利益中心主義と保護主義の影響:アメリカの利益中心のアプローチや保護主義が、世界経済と貿易状況に挑戦をもたらす可能性が高まっている。

 さらに、Zhu 氏は、中国が世界第2位の経済大国として、国際秩序やそのルールに対する理解を進化させつつあることを強調した。特に、世界との関係においてその理解が深化している点が重要であると述べた。また、大国間の相互作用の本質は、我々(中国)と世界の関係の変化を理解し、この変革期における中国の主要な国際的利益を特定することにあると指摘した。

 Zhu 氏は、台頭する中国が世界に影響を与え、世界を再形成していく過程は一夜にして成し遂げられるものではなく、長期的かつ持続的な努力が必要であると結論づけた。

【詳細】

 Zhu Feng氏は、大国間の相互作用が時代を超えて常に存在してきたものの、その形態や内容は、国際的な背景や文脈によって大きく変化する点を強調している。その上で、現在の国際関係において注目すべき点として、各国の戦略的発展に対応するために促進すべき価値観が何であるかを議論する必要性を指摘した。

 現代の大国関係の特徴

 Zhu 氏は、2024年における大国関係の特徴を次の3つの点で説明している。

 1.国内政治要因による不確実性の増大

 国内の政治的な状況や政策の変化が、各国の外交方針に大きな影響を及ぼしていると述べた。これにより、外交政策がより予測困難なものとなり、大国間の相互作用に不確実性をもたらしている。例えば、米国や欧州などの主要国では、国内の政治的分断や選挙による政権交代が外交政策に影響を与えるケースが増えている。

 2.戦略的核心問題を巡る対立の深化

 各国が持つ戦略的な利益や目標が衝突する場面が増えていると指摘した。具体的には、米中間の貿易戦争や安全保障を巡る対立、またはロシア・ウクライナ戦争などが挙げられる。このような対立が、国際社会全体に緊張をもたらしている。

 3.アメリカの利益中心主義と保護主義の影響

 アメリカの外交政策が、自国の利益を優先し、保護主義的な方向に進んでいることが、国際経済や貿易の安定に対するリスクを高めていると指摘した。これは特に、自由貿易体制や多国間協調の枠組みに挑戦をもたらす要因となっている。

 中国の役割と大国関係の本質

 Zhu 氏は、中国が世界第2位の経済大国として国際秩序やルールに対する理解を深めつつある現状についても言及した。その中で、以下の点を重視した。

 1.中国の視点から見る国際秩序

 中国は、これまで受動的に国際秩序に従う立場にあったが、近年では国際社会の主要な一員として、秩序の形成や再構築に積極的に関与する姿勢を見せている。これは、中国が自身の経済力や影響力を活用して、世界のルールや規範をより自国の利益や価値観に合った形で再定義しようとする動きである。

 2.大国間相互作用の本質

 Zhu 氏は、大国間の相互作用の本質を「中国と世界の関係の変化を理解すること」だと説明している。この理解を通じて、中国はどのような国際的利益を優先すべきかを見極めることが重要であるとした。これは、貿易、技術革新、安全保障、気候変動といった幅広い分野での国際協力や競争において、中国が自国の戦略的優位性を確保することを意味している。

 3.長期的視野の必要性

 Zhu 氏は、中国が国際社会での影響力を高め、世界を再形成していくプロセスは、一朝一夕で達成されるものではなく、長期的かつ持続的な努力が必要であると述べた。このため、中国は慎重かつ計画的に自国の利益を追求しつつ、他国との協調を図る必要があると指摘している。

 国際社会への提言

 Zhu 氏は、大国間の競争が激化する一方で、協力を通じて多国間主義や国際協調を促進することの重要性を強調している。特に、グローバルな課題(気候変動、貧困削減、パンデミック対応など)に対して、各国が価値観の違いを超えて共通の利益を追求する姿勢が求められるとした。中国はこれらの分野で積極的なリーダーシップを発揮するべきだとも述べている。

 総括

 Zhu Feng氏の発言は、中国が国際社会の中でいかにして自国の利益を守りつつ、大国間の競争と協力のバランスを取るべきかを深く考察したものである。特に、国内外の要因が絡み合う複雑な現代の国際関係において、中国が長期的視点での戦略的アプローチを取る必要性を説いている点が注目される。
 
【要点】 

 Zhu Feng氏の主張を箇条書きで説明

 大国関係の特徴

 1.国内政治要因の影響

 ・国内の政治状況や政策変化が各国の外交政策に不確実性をもたらしている。
 ・米国や欧州での政治的分断や選挙が外交方針に影響。

 2.戦略的核心問題における対立の深化

 ・各国の戦略的利益が衝突し、米中間の貿易摩擦やロシア・ウクライナ戦争などの対立が深刻化。

 3.アメリカの利益中心主義と保護主義の影響

 ・アメリカの利益優先主義が自由貿易体制や国際経済の安定に挑戦をもたらしている。

 中国の役割とアプローチ

 1.国際秩序における進化

 中国は受動的な立場から、積極的に国際秩序の形成や再構築に関与する段階に移行。

 2.大国間相互作用の本質

 ・世界との関係の変化を理解し、中国が優先すべき国際的利益を特定することが重要。

 3.長期的視野の必要性

 ・中国の国際的影響力拡大は長期的努力が必要で、一夜にして達成されるものではない。

 国際社会への提言

 1.多国間主義の推進

 ・大国間の競争激化の中でも協調を重視し、多国間主義を強化。

 2.グローバル課題への対応

 ・気候変動、パンデミック、貧困削減といった課題での国際協力を促進。
 ・中国はこれらの分野でリーダーシップを発揮。

 総括

 ・大国間関係は国内外の複雑な要因で構成されており、中国は慎重かつ計画的な戦略を取るべきである。

【引用・参照・底本】

The way of interaction among great powers has always existed: Chinese scholar GT 2024.12.14
https://www.globaltimes.cn/page/202412/1325038.shtml

コメント

トラックバック