西側諸国が民主主義プロセスに対する危険な操作2024年12月16日 17:21

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【概要】

 2024年12月16日にアンドリュー・コリブコが執筆した記事「Romania’s Constitutional Coup Is Meant To Buy More Time For NATO In Ukraine」の内容である。

 ルーマニアでの選挙結果が無効とされたことについて、欧米のエリートが自らの利益を正当化するために民主主義プロセスを操作した事例として解釈されている。特に、2024年12月8日に予定されていたルーマニア大統領選挙の第2ラウンドに関連し、ポピュリストで保守的なナショナリストであるカリン・ゲオルゲスク氏が当選すれば、NATOがウクライナで進める可能性のある計画に支障をきたす可能性があると懸念されていた。

 ゲオルゲスク氏は第1ラウンドで最多得票を得たが、その結果は憲法裁判所の判断により無効とされた。この決定は、彼の選挙前のTikTokにおける支持が外国勢力による支援の可能性があるという疑惑を理由に下されたものである。この記事によれば、このような事態は過去に例がなく、選挙プロセスそのものが不正であるとの主張はなかった。ただし、彼のTikTokの支持が不自然に拡大した可能性があるという理由だけで選挙結果が覆された。

 この先例が将来的に西側諸国によって利用される可能性を警告している。特に、NATOや西側の政策に批判的なポピュリスト候補が選挙で勝利した際に、同様の手法が用いられる可能性があると示唆されている。次回の選挙の日程はまだ決まっていないが、新たな親欧米派議会が12月20日に召集される予定である。これに関連して、議会選挙では不正の主張がなされなかったことが、西側が望む結果を得られたからであると解釈されている。

 また、次期大統領が選出されるまでの間、誰が指導者としての役割を果たすのかは明確でないが、ゲオルゲスク氏のような急進的な政策を実行する人物が就任することは期待されていない。このため、NATOはウクライナで計画しているとされる平和維持活動の準備を整えるための時間を確保したとされる。特に、ルーマニアはウクライナへの軍事ロジスティクスにおいてポーランドほど重要ではないが、ウクライナ南西部や西部の戦略的地域に隣接しているため、その役割は重要視されている。

 もしゲオルゲスク氏が当選し、大統領として就任していれば、彼はこのようなNATOの計画に反対し、ルーマニアの領土を通じたNATO部隊や装備の輸送を阻止した可能性がある。これにより、NATOの計画が大きく複雑化したであろう。しかし、選挙結果が無効とされたことで、西側はそのようなシナリオを回避し、軍事ロジスティクスの選択肢を維持することが可能となったとされる。

 最終的に、これらの干渉がどの程度有効であったのかは不透明であり、計画されている平和維持活動が実施されない場合や、ルーマニアがその活動に重要な役割を果たさない場合には、これらの動きが無意味であった可能性もある。しかし、西側諸国は選択肢を最大限に維持するために、これらのコストを容認したと結論づけられている。

 この事例は、欧米のリーダーが民主主義プロセスに対してどのように考えているかを示しており、「西側の民主主義はエリートの利益を正当化するためのプロセスに過ぎない」という主張で締めくくられている。
 
【詳細】

 アンドリュー・コリブコの2024年12月16日の記事を更に詳しく説明する。この記事は、ルーマニアにおける大統領選挙の結果が無効とされた一連の出来事を通じて、西側諸国が民主主義を操作し、NATOのウクライナにおける戦略を維持するための時間稼ぎを行ったと論じている。以下、その内容を更に深掘りする。

 1. 背景と問題の焦点

 2024年12月8日に予定されていたルーマニア大統領選挙の第2ラウンドをめぐる問題が中心である。第1ラウンドでは、保守的ナショナリストのカリン・ゲオルゲスク氏が最多得票を得た。彼はNATOがウクライナで展開する軍事的行動や、西側諸国の対ロシア戦略に批判的な姿勢を取っており、彼の当選がNATOの計画にとって重大な障害となるとみられていた。

 憲法裁判所は、ゲオルゲスク氏の選挙結果を無効とした。その理由は、彼の選挙キャンペーンに関連するTikTok上の支持が、外国勢力の支援によるものではないかという疑惑に基づいている。しかし、この記事によると、選挙プロセスそのものに不正があったとする主張はなく、選挙後の票数が合法的であるにもかかわらず、疑惑のみで結果が覆されたことが問題視されている。

 2. 憲法裁判所の判断の前例と影響

 この記事が指摘するように、今回の選挙無効化は民主主義プロセスに対する危険な前例を作るものである。このような手法は、将来的に他国で「西側諸国やNATOの利益に反するポピュリスト候補」が当選した場合にも同様に適用される可能性がある。例えば、選挙結果に不満を抱くエリート層や政府が、外国勢力の関与を口実として結果を無効化し、自分たちの望む結果を実現するための再選挙を求めることが可能となる。

 憲法裁判所が判断を下した根拠とされる「外国勢力の関与」の詳細は明らかにされておらず、機密情報に基づくとされている。この「不透明さ」が問題をさらに複雑化している。特に、選挙に参加した有権者の意志が反映されないことが、西側諸国の民主主義の正当性そのものを揺るがす要因となり得ると指摘されている。

 3. NATOの戦略的利益とルーマニアの役割

 NATOにとって、ルーマニアはウクライナ戦争の軍事ロジスティクスにおいて戦略的な役割を果たしている。具体的には、ルーマニアはウクライナの西部および南西部に隣接しており、オデッサなどの重要拠点への部隊や装備の移動に利用可能である。仮にゲオルゲスク氏が大統領に就任していれば、彼の政策により、ルーマニア領内でのNATOの自由な活動が制限される可能性があった。

 この記事では、NATOが計画しているとされる「ウクライナへの平和維持活動」についても言及されている。この活動は、形式上は非NATOの名目で行われる可能性があるが、実際にはNATOの戦略の一環として機能するものである。この計画の実現に向けて、ルーマニアがその活動に積極的に関与すること、または少なくともその妨害をしないことが重要とされている。

 ゲオルゲスク氏が当選し、NATOの計画に反対した場合、ルーマニアを経由した装備や部隊の移動が制限される可能性があり、NATOの計画遂行に大きな支障をきたしたであろう。そのため、彼の当選を阻止する、あるいは彼の政権発足を遅延させることが、西側諸国にとって戦略的に重要であったとされている。

 4. 議会選挙との対照的な取り扱い

 ルーマニアでは大統領選挙第1ラウンド後に議会選挙も行われたが、この議会選挙では不正や疑惑が一切提起されなかった。この記事によれば、議会選挙の結果が西側の望む親欧米派の議会構成をもたらしたためであり、西側諸国が自らの利益に適合する結果を選択的に正当化していると批判している。

 12月20日に召集される新たな議会は親欧米派で構成されるため、大統領選挙の再実施や政治プロセスにおいてゲオルゲスク氏が不利になる可能性が高いとされている。

 5. 広範な結論と民主主義の問題

 この記事は最終的に、西側の民主主義が本質的にエリートの利益を正当化するための手段に過ぎないと結論付けている。特に、エリートが望む結果を得られるまでプロセスを繰り返す傾向があると指摘している。この事例では、ゲオルゲスク氏のような候補が選挙に勝利した場合、形式上の理由で結果を無効化し、西側の利益に適合する結果を実現する動きが見られる。

 この記事は、これが単なるルーマニア国内の問題に留まらず、西側諸国が他国の民主主義プロセスを操作する際の典型的なモデルとなる可能性を示唆している。また、こうした行動が西側諸国の民主主義の信頼性を損なう危険性について警告している。

 総括

 ルーマニアの選挙結果の無効化は、NATOの戦略的利益を守るために行われたとされており、この事例を通じて西側諸国の民主主義プロセスの操作とその限界が明らかになった。この記事は、西側のエリートが自らの利益を守るために民主主義の原則を損なう危険性を警告しており、同様の事例が今後も繰り返される可能性があると論じている。
  
【要点】 
 
 1.大統領選挙の背景

 ・ルーマニアの大統領選挙で第1ラウンドを勝利したカリン・ゲオルゲスク氏は、NATOのウクライナ政策に批判的な保守的ナショナリストであった。
 ・第2ラウンドの実施を前に、憲法裁判所は第1ラウンドの結果を無効化した。

 2.憲法裁判所の判断理由

 ・ゲオルゲスク氏のTikTokキャンペーンが「外国勢力の関与」による可能性があるとの疑惑が理由。
 ・選挙プロセスそのものの不正は主張されておらず、疑惑のみで選挙が無効化された。

 3.危険な前例

 ・外国勢力の関与を理由に選挙結果が覆された事例はこれまでになく、西側諸国が都合の悪い候補を排除する手法として利用される可能性がある。

 4.NATOの戦略的利害

 ・ルーマニアはウクライナの南西部と接する戦略的地域に位置し、NATOの軍事ロジスティクスにおいて重要。
 ・ゲオルゲスク氏はNATOの「平和維持活動」やルーマニア領内の軍事利用を制限する可能性があり、彼の当選が阻止された理由とされる。

 5.議会選挙との対比

 ・同時期に行われた議会選挙では、不正の主張がなく、親欧米派の議会が成立。
 ・西側の利益に適合する結果は問題視されず、選択的な正当化が行われた。

 6.再選挙と今後の影響

 ・再選挙は未定だが、12月20日に召集される新たな議会が親欧米派であるため、ゲオルゲスク氏の再出馬や勝利が妨げられる可能性が高い。

 7.民主主義への批判

 ・西側諸国の民主主義はエリートの利益を正当化する手段とされ、望む結果が得られるまでプロセスを繰り返す傾向がある。
この事例は、他国の民主主義プロセスを操作するモデルとなる可能性がある。

 8.総括

 ・ルーマニアの選挙無効化は、NATOの戦略維持のための時間稼ぎとされ、民主主義の信頼性を損なう動きと批判されている。

【引用・参照・底本】

Romania’s Constitutional Coup Is Meant To Buy More Time For NATO In Ukraine Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.16
https://korybko.substack.com/p/romanias-constitutional-coup-is-meant?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153189728&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

ブリンケン国務長官:HTS)と直接接触2024年12月16日 18:05

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【概要】

 2024年12月15日、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、アメリカ政府がハヤート・タハリール・アル=シャーム(HTS)と直接接触していることを確認した。HTSは、アルカイダから派生した組織であり、アメリカによってテロ組織に指定されている。また、最近のシリア前大統領バッシャール・アル=アサドの失脚を主導した勢力でもある。

 ブリンケン長官は、「我々はHTSおよび他の当事者と接触している。我々のシリア国民へのメッセージは、彼らの成功を望み、その実現を支援する準備があるということだ」と述べた。これは、アメリカがHTSとの協議を行っているとする以前の報道を裏付けるものである。

 現在、HTSとその指導者アブ・ムハンマド・アル=ジュラーニ(本名アフマド・アル=シャラー)が、新たな「移行政府」を統治している。ブリンケン長官および他のアメリカ高官は、アサド政権の崩壊を歓迎し、ジュラーニとの協力も辞さない姿勢を示している。

 ジュラーニは2016年以降、過去のイスラム国およびアルカイダとの関係を清算し、「穏健派」として西側の支持を得ようとする再ブランド化を進めてきた。2017年には、HTSを他のイスラム主義派閥と統合し、新たな組織として発足させた。このため、2018年にアメリカ国務省から外国テロ組織として指定された。また、ジュラーニにはアメリカ政府から1,000万ドルの懸賞金がかけられている。

 バイデン政権は現在、HTSのテロ指定を解除する可能性を検討していると報じられている。テロ指定が解除されれば、アメリカがHTS主導の政府に対して大規模な支援を行う道が開かれる。ブリンケン長官は数日前に声明を発表し、アメリカが支援を提供する条件を概説した。その中で「アメリカはシリア主導かつシリア所有の政治的移行を完全に支持する。この移行プロセスは、透明性と説明責任の国際基準を満たす信頼できる、包摂的かつ非宗派的な統治を目指すべきである」と述べた。

 一方で、アメリカ政府はHTSに対して柔軟な姿勢を見せているが、ハマスやヒズボラなど他の組織のテロ指定を理由に、イスラエルによる民間人の大量殺害を正当化する主張を展開している。
 
【詳細】

 アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が、2024年12月15日にハヤート・タハリール・アル=シャーム(HTS)との直接接触を認めた発言は、アメリカのシリア政策において重要な転換点とみなされるべきである。以下に、関連する背景や状況をさらに詳しく説明する。

 HTSの背景と位置付け
 
 HTSは、アルカイダのシリア支部であったアル=ヌスラ戦線から派生した組織であり、イスラム主義を基盤とした武装勢力である。2016年、HTSの指導者であるアブ・ムハンマド・アル=ジュラーニ(本名アフマド・アル=シャラー)は、アルカイダとの公式な関係を断絶すると発表し、西側諸国からの支援を得るための「穏健派」への転換を図った。この動きは、ジュラーニが自らの過去のテロ活動を棚上げし、政治的正当性を求める試みとして解釈されている。

 2017年には、HTSは他の武装イスラム主義派閥と統合し、現在の形態となった。しかし、アメリカ国務省は2018年にHTSを外国テロ組織として指定し、ジュラーニには1,000万ドルの懸賞金をかけた。これにより、HTSは国際的には依然としてテロ組織として認識されている。

 アサド政権の崩壊とHTSの台頭

 シリアのバッシャール・アル=アサド前大統領が最近の攻勢により失脚したことは、HTSを中心とする武装勢力の戦略的勝利である。HTSはこの混乱の中で、新たな「移行政府」の形成を主導し、その支配地域で行政機能を確立しつつある。現在、ジュラーニは自らの本名であるアフマド・アル=シャラーを名乗り、過去の過激派としての経歴から距離を置こうと努めている。

 アメリカ政府は、アサド政権の崩壊を歓迎しており、HTSとの協力を検討している。この背景には、アメリカがシリアの政権移行を支援し、自国の地政学的利益を追求する狙いがあると考えられる。

 アメリカ政府の立場と政策の変化

 ブリンケン国務長官は、アメリカがHTSと接触している理由として、「シリア国民の成功を支援するため」という見解を示している。しかし、アメリカが過去にテロ組織と指定したHTSと連携することは、政策的な矛盾をはらんでいる。現在、バイデン政権はHTSのテロ指定を解除する可能性を模索しており、これが実現すれば、HTS主導の政府に対する公式な支援が可能となる。

 ブリンケン長官は、シリアにおける「移行プロセス」について、「透明性、説明責任、包摂性」を満たす非宗派的な統治を求める条件を示した。しかし、HTSがこれらの条件を満たせるかは依然として疑問視されており、国際社会からの懸念も強い。

 国際的な反応と懸念
 
 HTSとの接触に対する国際社会の反応はさまざまである。一部の国々は、テロ組織と指定されているHTSとの協力は正当化できないと主張しており、特にロシアやイランは、アメリカがテロ支援に加担していると非難している。一方で、アメリカ政府は、HTSを「政治的主体」として認めることで、シリア問題の安定化を図る意図を示唆している。

 また、アメリカ政府がHTSに柔軟な姿勢を示す一方で、ハマスやヒズボラなどの他の武装組織に対しては依然として厳しい態度を取り続けている。このような二重基準は、国際社会におけるアメリカの信頼性を損ねる可能性がある。

 結論

 アメリカがHTSとの接触を認めたことは、シリア政策における重大な変化を象徴している。ブリンケン長官の発言からは、アメリカがシリアの新たな政権に対して関与を強める意図が読み取れるが、それが国際的なテロ対策や地域の安定に与える影響については議論の余地が残されている。HTSの過去の活動や現在の統治能力に対する懸念は根強く、今後のアメリカの対応が国際社会の注目を集めることは間違いない。
  
【要点】 
 
 1.HTSの背景

 ・ハヤート・タハリール・アル=シャーム(HTS)は、アルカイダのシリア支部であるアル=ヌスラ戦線から派生した組織である。
 ・2016年に指導者アブ・ムハンマド・アル=ジュラーニ(本名アフマド・アル=シャラー)がアルカイダとの公式な関係を断絶し、穏健派として再ブランド化を進めた。
 ・2017年、他のイスラム主義派閥と統合して現在のHTSとなり、2018年にアメリカからテロ組織として指定された。

 2.アサド政権の崩壊とHTSの台頭

 ・最近の攻勢でバッシャール・アル=アサド前大統領が失脚。
 ・HTSが新たな「移行政府」の形成を主導し、その地域で行政機能を確立。
 ・ジュラーニは過去の過激派としての経歴から距離を置き、本名を使用するなど、正当性をアピールしている。

 3.アメリカの接触と政策の変化

 ・アントニー・ブリンケン国務長官は、HTSと他の当事者との接触を認めた。
 ・アメリカは「シリア国民の成功を支援する」と述べ、HTS主導の政府と協力する可能性を示唆。
 ・バイデン政権はHTSのテロ指定解除を検討中。解除されればHTS政府への大規模支援が可能となる。

 4.ブリンケン長官の条件

 ・アメリカは「透明性、説明責任、包摂性」を備えた非宗派的な統治を求めると表明。
 ・シリアの移行プロセスが国際基準を満たすべきと主張。

 5.国際的な反応

 ・ロシアやイランなどは、アメリカがHTSと協力することを非難。
 ・一部では、アメリカの柔軟な対応を地域安定化のための現実的な選択と見る声もある。
 ・アメリカは他の武装組織(ハマスやヒズボラ)に対して厳格な立場を維持しており、この「二重基準」に批判が集まる。

 6.結論と課題

 ・アメリカのHTS接触はシリア政策の重要な転換点であり、地政学的利益を追求する意図がある。
 ・しかし、HTSの過去や現在の統治能力に対する懸念が残る中、今後の対応が国際的な議論を呼ぶことは避けられない。

【引用・参照・底本】

Blinken Confirms the US Is in Direct Contact With al-Qaeda-Linked HTS ANTIWAR.com 2024.12.15
https://news.antiwar.com/2024/12/15/blinken-confirms-the-us-is-in-direct-contact-with-al-qaeda-linked-hts/

イスラエル国防軍(IDF):シリア国内で数百回の空爆実施2024年12月16日 18:19

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【概要】

 イスラエル国防軍(IDF)は、シリアにおける国家安全保障上の脅威を抑えるためと主張し、同国の様々な目標に対する攻撃を行っている。シリアでの政権交代以降、IDFは同国内で数百回の空爆を実施し、先進兵器を「無力化」することを目的としてきた。

 現地情報によると、イスラエル空軍は12月16日の夜間、西シリアのラタキア及びタルトゥースの軍事基地を空爆した。この攻撃により、シリア中部のハマー及びホムスの地域で大規模な爆発が発生したと報じられている。また、トルコのイズニックに設置された磁力計によれば、これらの空爆はマグニチュード3.0の揺れを引き起こしたとの独立研究者リチャード・コルダロの分析がある。

 攻撃の詳細

 イスラエルはダマスカス近郊の武器弾薬庫、防空施設、空軍基地、ハマー空港の防空施設を含む75カ所の目標を攻撃したとされる。これにより、IDFはシリアの戦略的軍事能力の70〜80%を12月10日までに破壊したと発表している。これらの攻撃は48時間にわたり約480回行われ、そのうち350回は有人航空機によるもので、対象には空軍基地、防空施設、ミサイル、ドローン、戦闘機、戦車、兵器製造施設が含まれている。

 また、IDFの艦艇はラタキア港で停泊していたシリアの15隻の海軍艦艇を攻撃し、複数の対艦ミサイルを破壊した。これらの攻撃は、地上作戦を支援するためのものであり、武器庫、軍事構造物、発射装置、発射位置も標的にされている。

 反応と背景

 シリア反政府勢力の指導者アブ・モハンマド・アルジュラニは12月14日にシリアTVで、「イスラエルとの紛争に関与する意図はない」と述べ、イスラエルが「不当な領土占拠」を正当化しようとしていると非難した。一部の専門家は、これらの攻撃を「防衛行動ではなく、全面的な攻勢」であると分析している。
 
【詳細】

 イスラエルによるシリアへの攻撃は、その規模と範囲において過去の作戦を超えるものとなっており、特に戦略的目標に集中している。以下に、各方面の攻撃と背景について詳細に説明する。

 1. 攻撃の主な対象と戦術

 イスラエル国防軍(IDF)は、シリア国内の広範囲にわたり攻撃を実施し、その対象には以下が含まれている。

 (1) 武器・弾薬庫と兵器製造施設

 ダマスカス、ハマー、ホムス、タルトゥース、ラタキアなど、シリア全土に点在する兵器貯蔵庫や製造施設を攻撃。
特にミサイルや無人機(ドローン)などの高度な兵器が破壊されたとされる。これらの兵器は、イスラエルに対する直接的脅威とみなされている。

 (2) 空港および空軍施設

 ハマー空港やダマスカス国際空港の防空施設を標的にし、シリア空軍の作戦能力を低下させる狙い。
IDFによると、これらの空港は兵器の輸送や配備に使用されており、イランからの支援物資が到着する拠点とみられている。

 (3) 防空システム

 イスラエルはシリアの地対空ミサイル(S-200、S-300など)やレーダー設備を破壊。これにより、イスラエル空軍がさらに自由に作戦行動を行えるようにしている。

 (4) 海軍施設

 ラタキア港に停泊していた15隻のシリア海軍艦艇が破壊され、対艦ミサイルを含む武器システムも無力化された。これにより、シリアの海上防衛力は大幅に削減された。

 2. 作戦の規模と影響

 (1) 攻撃回数と期間

 48時間の間に約480回の攻撃が行われ、そのうち350回は有人航空機による直接攻撃であった。残りは地上部隊や海軍、長距離ミサイルによるものと推定される。
 IDFは12月10日までにシリアの戦略的軍事能力の70〜80%を破壊したと主張している。

 (2) 地震計による検出

 トルコのイズニックに設置された磁力計が、これらの攻撃に伴う爆発をマグニチュード3.0の揺れとして検出。これにより、攻撃の威力が地質学的にも確認された。

 3. 背景と目的

 イスラエルの行動は、シリア内戦の混乱に乗じて、自国の安全保障を強化するための戦略的動きとみられる。以下の理由が挙げられる。

 (1) イランの影響力排除

 シリアはイランの代理勢力であるヒズボラの活動拠点となっており、武器供給の中継地として機能している。イスラエルはこれを重大な脅威と見なし、イランの影響力を削ぐことを目的としている。

 (2) シリア軍の再建阻止

 内戦で弱体化したシリア軍が再び力を取り戻すことを防ぐため、戦略的な兵器施設や防空システムの破壊に注力している。

 (3) 領土拡張と安全保障地帯の確保

 ゴラン高原を含むイスラエル占領地域に対する潜在的脅威を排除し、安全保障地帯を強化する意図がある。

 4. シリアと地域勢力の反応

 (1) シリア政府

 攻撃に対し非難の声明を出しているが、軍事力が大幅に削減されているため、直接的な報復能力は限られている。

 (2) 反政府勢力

 シリア反政府勢力の指導者アブ・モハンマド・アルジュラニは、イスラエルとの紛争には関与しない意向を表明。ただし、イスラエルの攻撃を「不当な領土占拠の正当化」として批判。

 (3) 国際社会

 アメリカなど一部の西側諸国はイスラエルの行動を黙認している一方で、ロシアやイランはこれを非難している。ロシアはシリア政府を支援しており、この攻撃により地域内の緊張が高まる可能性がある。

 5. 結論

 イスラエルのシリアに対する攻撃は、防衛目的を超えて、シリアの軍事力を恒久的に削ぐための大規模な戦略的攻勢である。これにより、地域のパワーバランスが変化する可能性があるが、同時にシリア国内の安定をさらに損なう結果を招いている。
  
【要点】 
 
 イスラエルのシリア攻撃に関する詳細(箇条書き)

 1. 攻撃の対象

 ・武器・弾薬庫および兵器製造施設

  ⇨ ダマスカス、ハマー、ホムス、タルトゥース、ラタキアなどに分布する戦略的兵器施設を破壊。
  ⇨ 特にミサイルや無人機(ドローン)が主要標的。

 ・空港および空軍施設

  ⇨ ハマー空港やダマスカス空港の防空施設を攻撃し、兵器輸送の拠点を無力化。

 ・防空システム

  ⇨ 地対空ミサイル(S-200、S-300)やレーダー設備を破壊し、シリアの防空能力を低下。

 ・海軍施設

  ⇨ ラタキア港で15隻の海軍艦艇を破壊、対艦ミサイルも無力化。

 2. 攻撃の規模

 ・回数と期間

  ⇨ 約480回の攻撃を48時間で実施、そのうち350回は有人航空機によるもの。

 ・成果の主張

  ⇨ IDFは、12月10日までにシリアの戦略的軍事能力の70〜80%を破壊したと発表。

 ・爆発の影響

  ⇨ トルコ・イズニックの磁力計がマグニチュード3.0の揺れを検出。

 3. 攻撃の背景と目的

 ・イランの影響力排除

  ⇨ シリアを拠点とするイランとヒズボラの軍事活動を阻止。

 ・シリア軍の再建阻止

  ⇨ 戦略的兵器や防空能力の削減により、シリア軍の復活を防ぐ。

 ・安全保障地帯の強化

  ⇨ ゴラン高原を含むイスラエル占領地域の防衛を目的とする。

 4. 地域勢力の反応

 ・シリア政府

  ⇨ 攻撃を非難する声明を発表するも、報復能力は限定的。

 ・反政府勢力

  ⇨ アルジュラニ指導者はイスラエルとの対立を回避する姿勢を示し、攻撃を「不当な領土占拠の正当化」と批判。

 ・国際社会

 ・アメリカは黙認の姿勢、一方でロシアやイランは非難。

 5. 結論

 ・イスラエルの行動は防衛目的を超え、シリアの軍事力を恒久的に削ぐ意図がある。
 ・地域の緊張を高め、シリア内戦のさらなる不安定化を招く可能性がある。

【引用・参照・底本】

What’s Known About Israel's Strikes on Syria? sputnik international 2024.12.16
https://sputnikglobe.com/20241216/whats-known-about-israels-strikes-on-syria---1121183762.html

「ネタニヤフの死刑判決は不可能ではない」2024年12月16日 18:47

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【概要】

 イランのカゼム・ガリババディ副外相は、パレスチナを支持する国々が団結して、イスラエルのネタニヤフ首相や他の高官に対して戦争犯罪に関連する死刑を言い渡す可能性があると述べた。彼は、先月ハーグの国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ首相と元国防大臣ヨアフ・ガラントに対して戦争犯罪容疑で逮捕状を出したことに言及した。イスラエルは裁判所の管轄権を否定し、戦争犯罪の責任を否定している。

 ガリババディ氏は、ICCや国際司法裁判所がイスラエルの指導者を起訴する実績が乏しいと指摘し、代替の「法的手段」として、数カ国が集まり、パレスチナを支持する立場で、イスラエル指導者に対して死刑を言い渡すことが可能だと述べた。「ネタニヤフの死刑判決は不可能ではない」と言い、死刑制度を維持している55カ国以上があることを挙げ、同様の立場を取る国々が共同で裁判を開くことで実現できるとした。

 ガリババディ副外相の発言は、イランの最高指導者アリー・ハメネイ氏の先月の発言とも一致しており、ハメネイ氏はネタニヤフ首相とガラント氏が死刑に値すると述べている。イスラエルとイランの関係は今年、4月と10月に激化し、両国は互いに攻撃を行った。イスラエルは、2023年10月7日にハマスによる攻撃をイランが背後で操っていると非難し、イランはパレスチナの武闘派は独立して行動していると主張している。

 現在、ガザではイスラエルの軍事作戦によって約45,000人のパレスチナ人が死亡しており、国連は人道的な危機が進行していることを繰り返し警告している。
 
【詳細】

 イランのカゼム・ガリババディ副外相は、パレスチナを支持する国々が協力し、イスラエルのネタニヤフ首相や他の高官に対して戦争犯罪に基づく死刑を言い渡す可能性があると述べた。これについて、彼は「ネタニヤフ首相に対する死刑判決は不可能ではない」と明言している。

 この発言の背景には、先月、ハーグの国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ首相と元国防大臣ヨアフ・ガラントに対して戦争犯罪容疑で逮捕状を出したことがある。ICCは、イスラエルのガザでの軍事作戦において、ネタニヤフ首相とガラント元大臣が「戦争犯罪」や「その他の非人道的行為」を行ったとする合理的な証拠があるとし、逮捕状を発行した。しかし、イスラエルはこの裁判所の管轄権を認めておらず、同国の指導者たちは戦争犯罪を否定している。

 ガリババディ副外相は、ICCや国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルの指導者に対して死刑を科すことはほぼ不可能だと考えていると述べ、その理由としてこれらの裁判所が国連に関連しており、政治的な影響を受けやすい点を挙げた。しかし、彼は代替案として、複数のパレスチナを支持する国々が連携し、「共同裁判」を開き、ネタニヤフ首相やガラント元大臣に対して死刑を言い渡すことができる可能性を示唆した。これを実現するためには、死刑を維持している国々が協力することが必要だと述べ、具体的には、戦争犯罪を問題視する国々が共同で裁判を開き、法的手続きを通じて死刑を宣告する道があるとした。

 ガリババディ副外相は、「55カ国以上が死刑を合法的に保持しており、そうした国々が連携することで、法的な手続きを進められる」と強調した。これは、国際的な協力を通じて実現する方法を模索していることを示している。

 また、イランの最高指導者であるアリー・ハメネイ氏も、ネタニヤフ首相とガラント元大臣が戦争犯罪に関与しているとし、死刑に値すると発言している。これらの発言は、イランの強硬な立場を反映しており、イスラエルとイランの関係は今年、特に4月と10月に激化した。両国は互いに攻撃を行い、イスラエルはイランがハマスの攻撃を支援していると非難し、イランはその主張を否定している。

 イスラエルのガザに対する軍事作戦により、現在までに約45,000人のパレスチナ人が死亡しているとされ、国連はガザでの人道的危機が悪化していることを繰り返し警告している。国際社会は、イスラエルによるガザへの攻撃が非人道的であるとする意見や、パレスチナの人々への支援を求める声が高まっており、イランをはじめとする一部の国々はイスラエルの指導者たちに対して厳しい処罰を求める姿勢を強めている。
  
【要点】 
 
 ・イランのカゼム・ガリババディ副外相は、パレスチナを支持する国々が連携し、イスラエルのネタニヤフ首相や他の高官に戦争犯罪に基づく死刑を言い渡す可能性があると述べた。
 ・先月、国際刑事裁判所(ICC)はネタニヤフ首相と元国防大臣ヨアフ・ガラントに対して戦争犯罪容疑で逮捕状を出した。
 ・ICCは、イスラエルのガザでの軍事作戦が戦争犯罪や非人道的行為を含む可能性があるとしたが、イスラエルはICCの管轄権を認めておらず、戦争犯罪を否定している。
 ・ガリババディ副外相は、ICCや国際司法裁判所(ICJ)が死刑を科す可能性は低いとし、代替手段としてパレスチナを支持する国々が協力して「共同裁判」を開くことで死刑を言い渡すことが可能だと述べた。
 ・世界には55カ国以上が死刑を合法的に維持しており、これらの国々が協力すれば法的手続きを進められると強調した。
 ・イランの最高指導者アリー・ハメネイ氏も、ネタニヤフ首相とガラント元大臣が戦争犯罪に関与しているとして、死刑に値すると発言している。
 ・イスラエルとイランの関係は、特に今年の4月と10月に激化し、両国は互いに攻撃を行った。
 ・イスラエルはイランがハマスの攻撃を支援していると非難し、イランはそれを否定している。
 ・イスラエルのガザに対する軍事作戦で約45,000人のパレスチナ人が死亡し、国連は人道的危機を警告している。
 ・イランをはじめとする一部の国々は、イスラエルの指導者たちに厳しい処罰を求めている。

【引用・参照・底本】

Death sentence for Netanyahu ‘not impossible’ – Iran RT 2024.12.16
https://www.rt.com/news/609406-death-sentence-israel-iran/

シリア:イスラエルの攻撃に対し国際社会に支援を求める2024年12月16日 19:01

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【概要】

 シリアはイスラエルの攻撃に対して国際社会に支援を求めていると、ハヤト・タフリール・アル・シャム(HTS)ジハード主義組織のリーダーであるアブ・ムハンマド・アル・ジュラニが述べた。ジュラニは、シリアの新政府がイスラエルの攻撃に対して介入を求めていると、イスタンブールに拠点を置くシリアTVチャンネルでのインタビューで語った。

 ジュラニは、HTSがシリア軍に対して攻撃を開始した11月以来初めてイスラエルについて言及した。HTSがシリアの主要都市を制圧し、ダマスカスに向かって進軍した後、シリア軍は崩壊し、元大統領バシャール・アサドはロシアに亡命した。

 ジュラニは、「イスラエルの主張は薄弱になっており、最近の違反を正当化するものではない」と述べ、イスラエルが「シリアにおける交戦の限界を越えてしまった」と強調した。これにより、地域での緊張が高まる可能性があると警告している。

 先週、イスラエルはシリアのアサド政権軍が所有していた武器庫や海軍艦船を攻撃したと報じられており、シリア軍の武装反対勢力が国を支配する前に行われた攻撃である。また、イスラエル軍は、シリアとイスラエルの間にある国連監視区域内にも駐留しており、ここを「一時的な無菌防衛地帯」として、テロリストの脅威を防ぐために利用していると主張している。

 HTSの報道官は、イスラエルの空爆を直接的に非難することはなかったが、「新しいシリア」の主権を「すべての国が尊重すべきだ」と述べている。

 ジュラニは、国際社会に対して介入し、地域でのエスカレーションに責任を持つべきだと呼びかけた。また、安定と安全を確保する唯一の方法は、「外交的解決策」によるものであり、「無謀な」軍事的行動を避けるべきだと考えている。
 
【詳細】

 シリアの新政府は、イスラエルの攻撃に対して国際社会に支援を求める姿勢を示している。この呼びかけは、ハヤト・タフリール・アル・シャム(HTS)のリーダー、アブ・ムハンマド・アル・ジュラニが発言したもので、彼はシリアの国際的立場を強調し、イスラエルの行動に対して厳しく批判した。ジュラニは、シリアTVのインタビューで、シリア国内でのイスラエルの行動を非難すると共に、国際社会に対して介入と責任を求めた。

 HTSはシリアの反政府勢力の一つであり、その影響力を強めている。ジュラニが言う「新しいシリア」は、彼の組織が支配する地域を指しており、シリア政府軍から独立した支配体制が構築されつつあることを意味する。この背景には、シリア内戦が長期化し、アサド政権の軍事的な敗北や国家の崩壊がある。アサド大統領はシリア軍の支配を失い、ロシアに亡命した後、シリア内での軍事的・政治的な空白が生じた。

 ジュラニは、イスラエルがシリアへの攻撃において「交戦の限界を越えている」と指摘した。特に、イスラエルが行った軍事作戦は、シリア政府軍が所有する武器庫や海軍艦船をターゲットにしたものであり、これはシリア国内の戦争に関与している外国勢力の行動として見なされている。また、ジュラニはイスラエルの行動が「正当化されるべきではない」と述べ、シリアの主権を尊重することを求めた。

 イスラエルの軍事行動は、アサド政権の崩壊後も続いており、シリアの南部にある国連監視区域でもイスラエル軍は駐留を続けている。この地域は、イスラエルとシリアの間で設けられた緩衝地帯であり、イスラエルは「無菌防衛地帯」として使用していると主張している。イスラエルの目的は、シリアからの「テロリストの脅威」を排除することであり、これによりシリア内の反イスラエル勢力への圧力を強めている。

 一方で、HTSの報道官はイスラエルの攻撃を直接的に非難することを避け、「すべての国が新しいシリアの主権を尊重すべきだ」と発言した。これは、HTSがイスラエルの行動に対しても一部理解を示しつつも、シリアの内政に関与することを容認しない立場を取っていることを示している。

 ジュラニは、地域でのさらなるエスカレーションを防ぐためには、軍事的解決ではなく「外交的解決策」が必要であると強調している。彼は、国際社会がシリアの状況に対して責任を持ち、介入していくべきだと訴えており、暴力に頼らず、平和的な方法で問題を解決するべきだと主張している。
  
【要点】 
 
 ・シリア新政府の立場

 シリアの新政府は、イスラエルの攻撃に対して国際社会に支援を求めている。

 ・ジュラニの発言

 ハヤト・タフリール・アル・シャム(HTS)のリーダー、アブ・ムハンマド・アル・ジュラニが、シリアTVでイスラエルについて初めて言及した。

 ・シリア内戦と政権崩壊

 HTSがシリア軍に対して攻撃を開始し、主要都市を制圧。アサド大統領はシリアを離れ、ロシアに亡命。

 ・イスラエルの攻撃
 
 イスラエルはシリア内でアサド政権軍の武器庫や海軍艦船を攻撃。南部の国連監視区域でも駐留している。

 ・ジュラニの批判

 ジュラニはイスラエルが「交戦の限界を越えている」とし、その行動を「正当化されるべきではない」と批判。

 ・HTSの立場

 HTSはイスラエルの空爆を直接非難せず、シリアの主権を尊重するよう求める。

 ・国際社会への呼びかけ

 ジュラニは、国際社会にシリアの状況に介入し、責任を果たすよう訴える。

 ・外交的解決策の主張

 ジュラニは、地域の安定と安全を確保するために「外交的解決策」を強調し、軍事的手段を避けるべきだと主張。

【引用・参照・底本】

Syria asks for help against Israeli aggression RT 2024.12.14
https://www.rt.com/news/609369-syria-asks-world-for-help/

キエフ洞窟修道院での料理番組非難される2024年12月16日 19:15

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【概要】

 ウクライナの有名なシェフ、エフゲニー・クロポテンコが、自身の料理番組のクリスマス特番の一部をキエフ・ペチェルスカ・ラヴラ(キエフ洞窟修道院)で撮影したことが、キリスト教徒たちから非難を浴びた。この修道院はウクライナの最大の正教会修道院で、1051年に建立された歴史的な場所である。特に、ウクライナ正教会モスクワ総主教区(UOC)との関連から、宗教的な緊張が高まっている背景がある。

 クロポテンコは、この番組がウクライナの聖なる料理を紹介することを目的としており、食堂で撮影された部分では、ウクライナの伝統的な料理、例えばキャビア入りのダンプリングや豌豆ゼリーなどが紹介された。彼は、撮影場所としてキエフ・ペチェルスカ・ラヴラを選んだ理由を説明し、この修道院がウクライナの古代料理に関する唯一の資料を保有していることを挙げた。

 しかし、この放送が引き起こした反発は大きく、ソーシャルメディアでは「ウクライナ全体の恥」といった批判的な声が多数寄せられた。特にウクライナ正教会モスクワ総主教区の聖職者であるアレクサンドル・クリメンコは、この放送を「冒涜」と呼び、修道院の食堂が神聖な場所であることを強調し、「テレビ番組を撮る場所ではない」と非難した。

 クロポテンコは、この批判に対し、撮影は教会の規則に従って行われ、聖職者とも相談した上で進められたことを強調。料理は食堂で展示しただけであり、調理は行っていないと説明した。また、彼は番組が信者を傷つける意図はなかったと述べ、ウクライナ文化を広めることが目的であったと述べた。
 
【詳細】

 エフゲニー・クロポテンコはウクライナの著名なシェフであり、ウクライナの伝統的な料理を紹介するテレビ番組を手掛けている。彼はその番組の一環として、2024年のクリスマス特番を撮影する際、ウクライナの最も重要な宗教施設のひとつであるキエフ・ペチェルスカ・ラヴラ(キエフ洞窟修道院)の食堂で一部を撮影した。この修道院は、1051年に設立され、ウクライナ正教会モスクワ総主教区(UOC)に長年管理されてきたが、現在はウクライナ当局とウクライナ正教会(OCU)との間で激しい対立の中心となっている場所である。

 キエフ・ペチェルスカ・ラヴラは、ウクライナの歴史的・文化的に非常に重要な場所であり、数多くの宗教的儀式や祈りが行われる神聖な空間として広く認識されている。しかし、ウクライナとロシアの戦争が始まった後、この修道院は特に注目を集めた。ウクライナ当局は、UOCがモスクワ総主教区と関係が深いと見なしており、その影響力を排除するために修道院の管理権を巡る争いを続けている。一方、UOCはこの問題を否定し、独立した宗教機関であると主張している。この対立が、クロポテンコの撮影に対する批判を一層激化させた。

 クロポテンコが番組の撮影場所として選んだ食堂は、修道院の中でも特に神聖な場所とされる。食堂は修道士たちが食事をする場所であり、また祈りの一環として使われることも多い。クロポテンコの番組では、ウクライナの伝統料理を紹介することを目的として、そこでの撮影が行われた。彼はこの場所を選んだ理由として、キエフ・ペチェルスカ・ラヴラがウクライナの古代料理に関する貴重な資料を保持していることを挙げ、修道院の食堂がそれらの料理を紹介するのに適していると考えたと述べている。

 番組はウクライナの聖なる料理、例えばキャビア入りのダンプリングや豌豆ゼリーなどを紹介する内容であり、ウクライナの伝統文化を広めることが目的だった。しかし、この番組の放送後、キリスト教徒や修道院の支持者から強い反発を受けた。多くの人々は、修道院の食堂での撮影を「冒涜的」とし、このような神聖な場所でテレビ番組を撮ることを許しがたいと感じた。

 特にウクライナ正教会モスクワ総主教区(UOC)の聖職者であるアレクサンドル・クリメンコは、この番組を「冒涜」と呼び、修道院の食堂が神聖な場所であることを強調した。また、「新しい修道院の支配者たちによる冒涜である」とし、これがウクライナの宗教的伝統を尊重しない行為であると非難した。彼は、食堂が修道士たちの祈りと静かな食事の場所であることから、「この場所はテレビ番組を撮るための場所ではない」と述べた。

 クロポテンコはこの批判に対して、撮影はすべて教会の礼儀に従い、修道院の聖職者と相談の上で行ったことを説明した。彼は、撮影にあたっては食堂で料理を調理することはせず、料理を展示するだけだったと強調している。クロポテンコは、「私の目的は、信者の感情を傷つけることではなく、むしろウクライナの文化を広めることだった」と述べ、批判されたことに対して謝罪の意を表明した。

 この事件は、ウクライナ国内での宗教的緊張を再燃させ、キエフ・ペチェルスカ・ラヴラがウクライナ社会の宗教的・政治的な分断を象徴する場所となっていることを浮き彫りにした。クロポテンコは文化的な目的で行動したが、その行動が多くの信者にとっては宗教的な感情を害する結果となり、ウクライナにおける宗教的・文化的対立の複雑さを再確認させる出来事となった。
  
【要点】 
 
 ・エフゲニー・クロポテンコはウクライナの著名なシェフで、ウクライナの伝統料理を紹介するテレビ番組を制作している。
 ・2024年のクリスマス特番の一部をキエフ・ペチェルスカ・ラヴラ(キエフ洞窟修道院)の食堂で撮影。
 ・キエフ・ペチェルスカ・ラヴラは1051年に建立され、ウクライナ正教会モスクワ総主教区(UOC)に長年管理されてきた。
 ・ウクライナとロシアの戦争を契機に、UOCとウクライナ当局との間で修道院の管理権を巡る争いが続いている。
 ・クロポテンコは、ウクライナの伝統的な料理(キャビア入りダンプリングや豌豆ゼリー)を紹介するため、修道院の食堂を選んだと説明。
 ・しかし、この撮影がウクライナのキリスト教徒から強い反発を受け、「冒涜的」だと非難された。
 ・アレクサンドル・クリメンコ(UOCの聖職者)は、修道院の食堂での撮影を神聖な場所での不適切な行為だとして批判。
 ・クロポテンコは、撮影は教会の規則に従い、聖職者と相談の上で行ったと反論。
 ・彼は、料理を展示しただけで、調理は行わなかったと強調。
 ・クロポテンコは意図的に信者の感情を傷つけるつもりはなく、ウクライナの文化を広めることが目的だったと説明。

【引用・参照・底本】

Ukrainian chef outrages Christians by filming show in iconic monastery RT 2024.12.16
https://www.rt.com/russia/609414-ukraine-chef-outrage-food-show-church/

プーチン:NATOの東方拡大を長年懸念してきた2024年12月16日 19:40

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【概要】

 ロシアのプーチン大統領は、国際的な制裁と外部からの圧力に対して、ロシアが依然として強固に発展を続けていると述べた。彼は、ロシアに対する干渉と圧力を加える西側諸国の支配的エリートにもかかわらず、ロシアの経済は成長しており、「外部からの脅迫や妨害は決して結果をもたらさない」と強調した。

 プーチン大統領は、ロシアが短期的および長期的な目標を達成することを確信していると述べた。また、ロシアのエネルギー輸出に関して、EU内で依然としてロシア産エネルギーを購入し続けている国々があることを指摘し、これらの国々はブリュッセルの方針に反してロシアと取引をしている場合があるとした。

 西側諸国は、2014年のウクライナ革命を契機にロシアに対して数多くの制裁を課しており、その数は2022年の特別軍事作戦開始後に急増した。ロシアは、これらの制裁が違法であると批判しており、制裁の目的がロシア経済の不安定化や国際金融システムからの孤立であったが、実際にはこれらが逆効果を生み、制裁を課した国々に悪影響を与えていると主張している。

 ロシアは、ウクライナ紛争を自国を封じ込めるための代理戦争と見なし、NATOの東方拡大を長年懸念してきた。また、米国主導のブロックを存在の脅威として捉えている。
 
【詳細】

 プーチン大統領は、ロシアが直面している国際的な制裁や外部からの圧力に対して、依然として強い経済的な発展を遂げていることを強調した。彼は、ロシアの経済成長が「前例のない制裁」や「一部の国家の支配的エリートによる露骨な干渉」にもかかわらず続いていると述べ、外部からの「脅迫」や「妨害」が効果を持たないことを明言した。これは、ロシアが外部からの圧力に屈することなく、持続的に発展し続けているとのメッセージを発信するものと解釈される。

 この発言は、ロシアが制裁に直面している状況において、国内の士気を高める狙いも含まれている。ロシアは、2014年のウクライナ革命を契機に、特に西側諸国による経済制裁を受け始め、その後、特に2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻後に制裁が急増した。現在、ロシアはこれまでに22,000を超える制裁措置を受けている。しかし、プーチン大統領はこれらの措置が逆効果を生み、制裁を課した国々にも経済的なダメージを与えていると述べている。

 プーチン大統領はまた、ロシア産エネルギーが依然としてEU内で取引され続けている事実を挙げ、EUがロシアとのエネルギー関係を断絶しようとする試みが失敗していることを指摘している。特に、一部のEU諸国は、ロシアから直接購入するのではなく、中継業者を通じてロシア産エネルギーを購入し続けていることが報告されている。これにより、EUの制裁政策に対する反発や矛盾が浮き彫りになっており、ロシア側はこれを「西側の制裁が意味を成さない証拠」として強調している。

 さらに、プーチン大統領はロシアが短期的および長期的な目標を必ず達成するという自信を示し、国内の政治活動にも触れた。具体的には、ロシアの与党である統一ロシア党の大会で、党のプログラムや憲章が改定され、党内での高官の交代が進められる予定であることを発表した。これは、ロシア国内での政権基盤を強化する狙いもあると考えられる。

 ロシアは西側諸国の制裁を違法だと見なしており、その理由として、制裁がロシアの経済を不安定化させることを目的としている一方で、その結果、制裁を課した国々に逆効果をもたらしている点を挙げている。特に、エネルギー価格の高騰や供給不足といった影響が、制裁を課した国々に悪影響を及ぼしているという主張が強調されている。

 ウクライナ紛争についても、ロシアはこれを単なる地域紛争としてではなく、ロシアを封じ込めるための「代理戦争」と見なしている。ロシアは、NATOの東方拡大を長年にわたり警戒しており、ウクライナがNATO加盟を目指す動きがロシアにとって脅威であると主張してきた。プーチン大統領は、米国主導のNATOがロシアに対して存在の脅威を及ぼすものであるとし、その拡大を阻止するために行動していると述べている。
  
【要点】 
 
 1.プーチン大統領の発言

 ・ロシアは「前例のない制裁」や「外部からの干渉」にもかかわらず、経済成長を続けている。
 ・外部からの脅迫や妨害はロシアに対して効果がないと強調。
 ・ロシアは短期的および長期的な目標を必ず達成する自信を示す。

 2.制裁に関するロシアの立場

 ・ロシアは西側諸国の制裁を「違法」と見なしており、その目的がロシア経済の不安定化であると主張。
 ・制裁が逆効果を生み、制裁を課した国々にも悪影響を及ぼしていると指摘。
 ・ロシアは、エネルギー価格の高騰や供給不足が制裁を課した国々に損害を与えていると説明。

 3.EUとのエネルギー取引

 ・EU内の一部の国々はロシア産エネルギーを購入し続け、EUの制裁方針に反して取引をしている。
 ・これにより、EUの制裁政策が実質的に失敗していることが示されている。

 4.ウクライナ紛争の認識

 ・ロシアはウクライナ紛争を「代理戦争」として捉えており、ロシアを封じ込めるための西側の戦略だと見なしている。
 ・NATOの東方拡大がロシアにとって脅威であり、その拡大を阻止するために行動していると主張。

 5.統一ロシア党の大会

 ・ロシアの与党「統一ロシア党」の大会で、党のプログラムや憲章の改定、党内高官の交代が発表される予定。
 ・政権基盤の強化を狙った内部改革が進められている。

【引用・参照・底本】

West’s hounding of Russia is futile – Putin RT 2024.12.14
https://www.rt.com/russia/609356-putin-blackmail-sanctions-economy/

ロシアの北方海航路(Northern Sea Route、NSR)2024年12月16日 20:00

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【概要】

 ロシアの北方海航路(Northern Sea Route、NSR)は、ロシアの広大な北極海岸線を横断する重要な交通路であり、ヨーロッパとアジアを結ぶ冷たい航路として世界的に注目されている。この航路は、ロシアの石油、ガス、貴金属などの自然資源の輸送を支える役割を果たしており、核動力の砕氷船が氷に覆われた海域を進むことによって、年間を通じて航行が可能となっている。しかし、この驚異的な物流システムは、一夜にして完成したわけではなく、数十年にわたる探査、忍耐、革新の成果である。

初期の探査: 基礎の築かれた時代

ロシアの北極への関心は、19世紀末に本格的に始まった。それまでシベリアの過酷な環境とインフラの不足が大規模な開発を妨げていたが、1891年に建設されたトランスシベリア鉄道はこの状況を変えるきっかけとなった。この時期、海軍将校であり先駆的な北極探検家であったステパン・マカロフ提督が北極航路の重要性を説いた。彼の1897年の講演「北極点へ全速力で!」は、北極航路の戦略的重要性を強調した。

マカロフの努力により、世界初の本格的な北極用砕氷船「エルマーク」が建造された。これにより、厚い氷を砕く技術が確立され、その後の北極航行が可能となった。マカロフはこの夢の実現を見届けることなく、日露戦争で命を落とすこととなった。

ソビエト時代の野心: 拡張と革新

1917年のロシア革命後、ソビエト政府は北極開発へのコミットメントを継続した。1920年代と1930年代には、ソビエトの工業化の一環として北極探査が加速した。この時期の代表的な人物は、ドイツ系ロシア人の科学者で北極探検家であり、グラヴセムモルプット(北方海航路の管理機関)の長であったオットー・シュミットである。

シュミットは、北極探査を指導し、北極研究所を設立し、数々の建設プロジェクトを監督した。彼の最も大胆な挑戦は、1932年に蒸気船「シビリヤコフ」を使って北方海航路を1回の航海で横断しようとしたことである。この航海は、氷によりプロペラが破損するという大きなトラブルに見舞われたが、乗組員はテント布を使って即席の帆を作り、最終的には目的地に到達した。

チェリューシュキン号の悲劇と英雄的救出

 シュミットの最も有名な任務は、1933-1934年のチェリューシュキン号の遭難事件である。この船は北極航行に耐えうる強化船であったが、真の砕氷船ではなく、チュクチ海で氷に閉じ込められてしまった。乗組員は船が氷に潰され、漂流する氷上での過酷な生活を強いられた。

 その後、ソビエトのパイロットたちは-40°Cの寒さの中、原始的な装備で乗組員104人を無事に空輸して救助した。この壮絶な作戦は世界中の注目を集め、北方海航路はソビエトの伝説となった。

 冷戦時代の戦略的拡大

 冷戦時代、北方海航路は軍事的および経済的な重要性を増し、ソビエト連邦は北極地域のインフラ強化を進めた。港湾や航空基地、ノリリスクやムルマンスクなどの北極都市が建設され、鉱物の採掘、科学研究、軍事作戦が行われた。

 1959年には、ソビエト連邦が世界初の核動力砕氷船「レーニン号」を就航させ、これが北極航行に革命をもたらした。これにより、通常の船では通れない厚い氷を年中通じて砕くことが可能となった。20世紀末には、北方海航路は世界で最も進んだ北極輸送システムとなった。

 現代: 経済的潜在能力と地政学的競争

 ソビエト連邦の崩壊後、北方海航路は資金不足と物流の問題により衰退したが、21世紀初頭にロシアの北極に対する関心が再び高まった。気候変動により氷が溶け、航路が長期間開かれるようになり、ロシアは再び北極インフラへの投資を強化した。

 現在、ロシアの北極艦隊には「50 Let Pobedy」や「アークティカ」などの核動力砕氷船が含まれ、北方海航路は年中無休で稼働している。商業船は液化天然ガス(LNG)、石油、鉱物を国際市場に輸送しており、ヤマル半島のサベッタ港などが重要な貿易拠点となっている。

 ロシアは北方海航路を、スエズ運河やパナマ運河に匹敵する競争力を持つグローバルな航路に変えることを目指しており、2030年までに貨物輸送量を倍増させる計画を掲げている。

 地政学的および環境的な課題

 しかし、北方海航路は数々の課題に直面している。特にロシアと西側諸国との地政学的緊張が国際協力を難しくしている。西側の制裁は北極エネルギー開発への外国投資を制限しており、中国はロシアの北極開発における重要なパートナーとして浮上している。

 また、環境問題も深刻である。氷が溶けることによって船舶の通行が増加し、油 spills や生態系へのダメージのリスクが高まっている。環境団体は厳格な規制を求めており、ロシアは核動力砕氷船の方が従来の燃料を使用する船よりも排出ガスが少ないと主張している。

 今後の展望

 北方海航路は、ロシアの技術的な能力、戦略的なビジョン、そして歴史的な忍耐力を象徴する存在である。かつての帝国主義的なプロジェクトとして始まったこの航路は、現代においては地政学的にも経済的にも重要な資産となりつつある。北極の温暖化と氷の後退により、北方海航路は今後さらに重要性を増すだろう。
 
【詳細】

 ロシアの北海航路(Northern Sea Route、NSR)は、ロシアの北極沿岸に広がる重要な航路であり、ヨーロッパとアジアを結ぶ重要な輸送ルートである。資源の輸送、特に石油、ガス、貴金属などの天然資源の輸出において中心的な役割を果たしており、ロシアの経済にとって極めて重要な位置を占めている。この航路は氷を砕くための原子力砕氷船によって商船が年中通行できるように保たれており、ロシアの技術的な成果と物流の革新を象徴している。

 初期の探検と基礎の構築

 ロシアが北極に関心を持ち始めたのは19世紀末であり、特にシベリアの過酷な環境とインフラの不足が大規模な開発を困難にしていた。しかし、1891年に完成したシベリア鉄道は、ロシアにとって北極への進出のきっかけとなる。帝政ロシア時代の海軍提督、ステパン・マカロフは、北極航路の重要性を訴え、「北極へ全速力で!」という講演を行い、北極探検に関する関心を高めた。マカロフはその後、世界初の本格的な極地用砕氷船「エルマーク」を設計し、北極圏での航行に道を開いた。彼の取り組みは、ロシアの北極開発の礎となり、その業績は現在でも評価されている。

 ソビエト時代の野心と拡大

 1917年のロシア革命後、ソビエト政府は北極開発を続け、特に1920年代と1930年代にはその拡大が加速した。この時期の主要な人物であるオットー・シュミットは、ソビエト連邦の極地探検と「北海航路」を管理する国家機関「グラヴセヴモルプト」を指揮し、航路の確立と研究、北極圏の基盤整備に貢献した。シュミットの最も大胆なミッションの一つは、1932年に行われた蒸気船「シビリヤコフ」による実験的な北海航路横断であり、厳しい状況の中で船のプロペラが氷により破損したものの、乗組員は自作の帆を使って目的地に到達するという奮闘を見せた。

 特に注目すべきは、1933年から1934年にかけて起こった「チェリウシュキン号」の悲劇である。この船はアークティック用に強化されていたが、真の砕氷船ではなかったため、チャクチ海で氷に閉じ込められ、最終的には沈没した。乗組員は流氷に取り残され、ソビエト空軍による英雄的な救出作戦が展開され、104名の乗組員が無事に救助された。この出来事は、NSRの重要性を国民に印象づけるとともに、ソビエト連邦の冷徹なアークティックでのサバイバル能力を象徴するものとなった。

 冷戦時代と戦略的拡張

 冷戦時代に入ると、NSRは軍事的および経済的な要素としてさらに重要性を増した。ソビエト連邦は北極のインフラを強化し、港や空港、さらにはノリリスクやムルマンスクなどの極北都市を建設して、鉱物の採掘、科学的研究、軍事作戦を支えた。この時期、ソビエト連邦は原子力砕氷船を開発し、1959年に初代「レーニン号」が就航、これにより通常の砕氷船では進めなかった氷を一年中突破することが可能となった。NSRは世界で最も先進的な極地輸送システムに進化した。

 現代の経済的潜力と地政学的競争

 ソビエト連邦崩壊後の1991年には、NSRは一時的に低迷したが、21世紀に入り、気候変動により新たな航路が開かれると、ロシアの北極開発の野心が再び高まった。氷の融解によってNSRが長期間航行可能となり、ロシアは再びそのインフラの強化に投資し始めた。現在、ロシアの北極艦隊には「50 Let Pobedy」や「アルクティカ」などの原子力砕氷船が含まれており、これらは商船が液化天然ガス(LNG)や石油、鉱物などを国際市場に輸送する際に重要な役割を果たしている。

 ロシアは、北海航路をスエズ運河やパナマ運河に匹敵する世界的な航路に育て上げようとする戦略を掲げており、2030年までにNSRの貨物輸送量を倍増させることを目指している。ロシアのプーチン大統領は、北極を「戦略的優先事項」とし、その重要性を強調している。

 地政学的および環境的課題

 しかし、NSRの運営にはいくつかの課題が伴う。地政学的な緊張が、ロシアと西側諸国との協力を複雑にしている。西側諸国の制裁は、北極のエネルギープロジェクトへの外国投資を妨げ、ロシアの開発に影響を与えている。一方、中国は、NSRを極地の「シルクロード」の一部と位置づけており、ロシアとの協力関係を強化している。

 また、環境問題も大きな懸念事項である。氷の融解に伴い、船の交通量が増加しており、石油流出などの事故や環境破壊のリスクが高まっている。環境団体は、より厳しい規制を求めているが、ロシアは、原子力砕氷船が従来の燃料船よりも少ない排出ガスを排出するとの立場を取っている。

 今後の展望

 NSRは、ロシアの技術的成果、復活した極地開発への決意、そして地政学的な戦略の象徴である。北極の温暖化と氷の退縮が進む中で、ロシアの北極航路は、経済的および政治的にさらに重要性を増していくと予想される。この航路の歴史は、探検、サバイバル、そして人間の知恵と忍耐力の物語であり、極寒の環境における人類の挑戦を物語っている。  

【要点】 
 
 1.ロシアの北海航路(NSR)

 ・ロシアの北極沿岸に広がる重要な航路で、ヨーロッパとアジアを結ぶ輸送ルート。
 ・主に石油、ガス、貴金属などの天然資源の輸出に使用されている。
 ・冬季でも運航可能なように原子力砕氷船が運行している。

 2.初期の探検と基礎の構築

 ・19世紀末、シベリア鉄道の完成が北極開発のきっかけとなる。
 ・海軍提督ステパン・マカロフが北極航路の重要性を訴え、極地探検を進める。
 ・初の極地用砕氷船「エルマーク」を開発。

 3.ソビエト時代の拡張

 ・1920~30年代に北海航路の整備が進む。
 ・オットー・シュミットが「グラヴセヴモルプト」を指導し、北極開発を推進。
 ・1932年に「シビリヤコフ号」で実験的な航行を実施。
 ・1933年、ソビエトの「チェリウシュキン号」が氷に閉じ込められ、空軍による救出作戦。

 4.冷戦時代の軍事的拡大

 ・ソビエト連邦が北極のインフラを強化し、極北都市を建設。
 ・原子力砕氷船の開発(1959年の「レーニン号」)により航行の効率化。
 ・北極が軍事的および経済的に重要な地域となる。

 5.ソ連崩壊後の再興:

 ・1991年のソビエト連邦崩壊後、北海航路は低迷するが、気候変動により新たな航路が開かれる。
 ・ロシアは再びインフラ強化に投資し、2020年代に入って航路の利用が増加。

 6.現代の地政学的な戦略と競争

 ・ロシアはNSRを世界的な輸送ルートとして強化し、2030年までに貨物輸送量を倍増させる計画。
 ・西側諸国との地政学的緊張、特に経済制裁が開発に影響。
 ・中国はNSRを「シルクロード」の一部と位置づけ、ロシアとの協力を強化。

 7.環境問題とリスク

 ・氷の融解により船の通行量が増加、石油流出などの環境リスクが高まる。
 ・環境団体からは規制強化の声も上がっているが、ロシアは原子力砕氷船の低排出ガスを主張。

 8.今後の展望

 ・北海航路は、ロシアの技術と地政学的戦略の象徴として、さらに重要性が増すと予想される。
 ・温暖化の進行と氷の退縮により、航路の利用は今後拡大する見込み。

【引用・参照・底本】

Through ice and fire: The untold story of Russia’s Northern Sea Route RT 2024.12.15
https://www.rt.com/russia/608841-steamship-chelyuskin-disaster-turned-triumph/

スーダン:ロシアと石油探査に関する協力を進める2024年12月16日 21:47

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【概要】

 スーダンはロシアと石油探査に関する協力を進める計画を発表した。この協定には、2023年4月以来続いている紛争の影響を受けていない地域にある20以上の石油井の探査が含まれている。スーダンの石油・ガス省大臣モヒ・エディン・ナイーム・モハメド・サイードは、ロシアとのエネルギーおよび石油投資協定が締結されたことを、サウジアラビアのメディア「アル・アラビ・アル・ジャディード」に伝えた。この協定は、紅海地域や西スーダンなど、紛争の影響を受けていない地域を中心に行われる。

 協定の内容には、メロウェダムにおける水力および火力発電の強化、1日あたり120バレルの燃料生産のための設備の改善、ローゼイレスおよびセンナール貯水池の改善も含まれている。さらに、ロシアの精製所がスーダンを訪れ、紅海沿岸地域を中心にガス探査を開始する計画もある。

 スーダンは、ロシアのエネルギー企業であるロスネフチやガスプロムなどに対し、22の石油鉱区を提供しており、これらの地域での石油探査が予定されている。また、ロシアの先端技術がガス部門で活用されることから、特に紅海地域におけるロシアの関与が強調されている。スーダンはポートスーダンでの発電を強化するため、浮体式発電設備の派遣を求めており、これにより同地域の電力供給が向上する見込みである。

 スーダンのエネルギー分野におけるロシアとの協力は、水力発電の強化にも及び、スーダンはロシアの企業であるパワー・マシーンズと契約を結び、メロウェ水力発電所の新しいタービンの供給や、ローゼイレス、センナール、セティット貯水池の設備改修を進めている。このアップグレードにより、スーダン全体での発電能力が向上することを目指している。

 スーダンは、2023年4月から続くスーダン軍と急成長した準軍事組織である迅速支援部隊(RSF)の間で激しい戦闘が行われ、首都を中心に国内全域に拡大した紛争によって深刻な人道的危機が発生している。国際連合は、これを世界最大の避難民危機と形容している。
 
【詳細】

 スーダンはロシアとの間で石油、エネルギー、およびインフラに関する協力を進める計画を発表し、具体的な協定が結ばれた。この協力の一環として、スーダンはロシア企業を優先的に選び、特に西スーダンや紅海地域など、現在も続く紛争の影響を受けていない安全な地域での石油探査を行う。これにより、スーダンは西側諸国の企業に代わるパートナーとしてロシア企業との関係を強化することを目指している。

 主要な協定の内容

 1.石油探査

 スーダンはロシアに対して22の石油鉱区を提供し、ロシアのエネルギー企業、特にロスネフチやガスプロムなどに探査を依頼している。これらの鉱区は、スーダン国内の紅海地域や西スーダンに位置しており、紛争の影響を受けていない地域とされている。これにより、スーダンは国内の石油生産を増加させ、エネルギー資源を活用する計画である。

 2.発電インフラの強化

 スーダンのエネルギーインフラの強化に向けた取り組みも進行しており、ロシア企業との協力によって水力発電および火力発電の能力が増強される予定である。特に、メロウェダムの強化が注目されており、1日あたり120バレルの燃料を生産する能力を持つ設備改修が進められている。これはスーダン国内でのエネルギー供給の安定化を図る一環であり、発電能力の向上を目的としている。

 3.ガス探査

 ロシアはスーダンの紅海地域におけるガス探査にも関与することになっており、これにはロシアの精製所の訪問も含まれている。スーダンは浮体式発電設備を紅海地域に配備し、特にポートスーダンの電力供給を強化する計画もある。これにより、ロシアの先端技術が活用され、スーダン国内のエネルギー供給が改善される見込みだ。

 4.水力発電施設のアップグレード

 スーダンはロシアの企業であるパワー・マシーンズと契約を結び、メロウェ水力発電所に新しいタービンを供給し、ローゼイレス、センナール、セティット貯水池の設備の近代化を進める。これにより、スーダン全体の水力発電能力が向上し、国内の電力供給が強化される。水力発電はスーダン全体の電力の70%を占めており、これらの改善は重要なエネルギー源の効率向上に寄与する。

 5.スーダンの国内情勢とその影響

 スーダンは2023年4月以降、スーダン軍と準軍事組織である迅速支援部隊(RSF)との間で激しい戦闘が続いており、この紛争は首都ハルツームを中心に広がっている。スーダン軍とRSFは、民間人の政治的移行を巡る対立から戦闘を開始したが、戦闘は全国に拡大し、国際連合はこれを世界最大の避難民危機として認識している。

 戦闘により、スーダン国内のインフラが大きなダメージを受け、特に民間人への影響が深刻化している。2023年末時点で、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は約500万人が国内避難を強いられており、そのうち4.7百万の子供が栄養失調に苦しんでいるという報告がされている。このような状況下で、スーダンは経済回復とエネルギーインフラの強化を急務としており、ロシアとの協力がその一環として進められている。

 結論

 スーダンは現在の紛争と人道的危機に直面しながらも、ロシアとのエネルギー・インフラ協力を強化している。この協力には、石油探査やガス探査、水力発電の強化などが含まれ、スーダンのエネルギー供給の安定化を図るとともに、経済回復に向けた重要な一歩となるだろう。しかし、国内の紛争と人道的危機が続く中で、これらのプロジェクトがどれだけの効果を上げるかは不透明であり、今後の状況に注目する必要がある。  

【要点】 
 
 ・スーダンとロシアの協力

 スーダンはロシアとエネルギー、石油、インフラ分野で協力を進めており、西スーダンや紅海地域などの安全な地域で石油探査を行う予定。

 ・22の石油鉱区

 スーダンはロシアに22の石油鉱区を提供し、ロスネフチやガスプロムなどのロシアのエネルギー企業に探査を依頼している。

 ・発電インフラ強化

 メロウェダムの強化を含む水力発電および火力発電の能力増強が進められており、1日あたり120バレルの燃料生産を目指している。

 ・ガス探査と発電設備

 ロシアは紅海地域でのガス探査に関与し、ポートスーダンでの電力供給を強化するため、浮体式発電設備の派遣を計画。

 ・水力発電施設のアップグレード

 ロシア企業パワー・マシーンズとの契約により、メロウェ水力発電所のタービン更新やローゼイレス、センナール、セティット貯水池の近代化が行われる。

 ・国内の紛争と人道的危機

 2023年4月から続くスーダン軍と迅速支援部隊(RSF)の戦闘により、国内で約500万人が避難し、特に子供たちが栄養失調に苦しんでいる。

 ・エネルギーインフラの強化の重要性

 ・スーダンは経済回復とエネルギー供給の安定化を目指しており、ロシアとの協力がその一環として進められている。

【引用・参照・底本】

Sudan to cooperate with Russia on oil exploration – media RT 2024.12.16
https://www.rt.com/africa/609420-sudan-cooperate-russia-oil-exploration/

イスラエル:アイルランドにある大使館を閉鎖2024年12月16日 22:15

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【概要】

 イスラエルはアイルランドにある大使館を閉鎖することを発表した。この決定は、アイルランド政府の「極端な」政策に起因しているとされる。特に、パレスチナ人に対する虐殺を行ったとの非難が含まれており、これが理由の一つとして挙げられている。イスラエル外務省は、アイルランド政府がイスラエルに対して行った反ユダヤ的な言動と行動について「否定的な描写と二重基準」を指摘し、アイルランドはイスラエルとの関係において「すべての赤線を越えた」と述べた。

 アイルランドのサイモン・ハリス首相は、イスラエルの決定に対して「非常に失望している」と表明した。彼は、意見が異なっていても、コミュニケーションを保つことが重要だと強調し、アイルランドは決して反イスラエルではなく、「平和、国際法、そして人権を支持している」と述べた。

 アイルランド政府は、ガザでの即時停戦を求める声を一貫して上げており、2024年5月にはパレスチナ国家を正式に認める決定を下した。このことが、イスラエル政府を激怒させた。また、アイルランド政府は、南アフリカによって国際司法裁判所に提出されたジェノサイドに関する訴訟を支持した。

 イスラエルはジェノサイドの非難を「ばかげている」として否定しており、ガザでの民間人の死に関してはハマスが責任を負うべきだと主張している。イスラエル国防軍(IDF)は、ハマスがパレスチナの民間人を人間の盾として利用しているとし、その軍事作戦はハマスの脅威を排除するまで続けると発表している。また、イスラエルは国際刑事裁判所(ICC)が発行した、ネタニヤフ首相を含む高官に対する逮捕状を無視している。
 
【詳細】

 イスラエルは2024年12月にアイルランドにある大使館を閉鎖する決定を下した。この決定は、アイルランド政府が取った「極端な反イスラエル政策」に基づいており、特にガザにおけるイスラエルの軍事行動に対する批判が強く影響している。アイルランド政府は、イスラエルによるパレスチナ人への虐殺の疑いを支持する立場を取っており、この点が西エルサレムの怒りを買った。イスラエル外務省は、アイルランド政府がイスラエルに対して行った行動を「ユダヤ国家の非正当化と悪魔化」に繋がるものとし、その背景には二重基準があると非難した。また、アイルランド政府が発した反イスラエル的な言動を「反ユダヤ的なレトリック」としても問題視している。

 イスラエルの外務大臣ギデオン・サールは、「アイルランドはすべての赤線を越えた」と述べ、アイルランドとの外交関係の断絶を示唆している。イスラエルは今後、他国との二国間関係に資源を投じ、各国がイスラエルに対してどのような態度を取るかも考慮していく方針を示した。

 一方、アイルランドのサイモン・ハリス首相はイスラエルの決定に「深い失望」を表明し、対話を続ける重要性を強調した。首相は、アイルランドが「平和、国際法、人権を支持する国」であるとし、自国が反イスラエルではないことを強調した。アイルランド政府は、イスラエルの行動に対する批判的な立場を取っており、ガザでの停戦を求める姿勢を続けている。さらに、アイルランドは2024年5月にパレスチナを独立した国家として正式に認めた。この決定はイスラエル側にとって非常に不快であり、両国の関係をさらに悪化させた。

 加えて、アイルランド政府は、南アフリカが国際司法裁判所に提出した、イスラエルのガザでの軍事行動がジェノサイドに該当するとの訴訟を支持している。アイルランド政府は、イスラエルによるガザでの軍事行動が「パレスチナ人民への集団的報復」であり、44,000人以上のパレスチナ人が死亡し、何百万人もの民間人が避難を余儀なくされたことを指摘している。

 これに対して、イスラエルはジェノサイドの非難を完全に否定しており、ガザでの民間人の死に関しては、ハマスが責任を負うべきだと主張している。イスラエルは、ハマスがパレスチナの民間人を「人間の盾」として利用しているとし、そのために多くの民間人が犠牲になっていると指摘している。イスラエル国防軍(IDF)は、ガザでの作戦は「ハマスの脅威を排除するまで続ける」と宣言しており、軍事作戦が続く中で民間人の死者が増加していることについても弁明している。

 また、イスラエルは、国際刑事裁判所(ICC)から発行されたネタニヤフ首相を含む高官に対する逮捕状にも反発しており、その決定を無視する立場を取っている。イスラエルは、ICCの決定が政治的な動機によるものであり、司法的な正当性を欠いていると主張している。  

【要点】 
 
 ・イスラエルの大使館閉鎖: イスラエルはアイルランドにある大使館を閉鎖する決定を発表した。
 ・理由: アイルランド政府の「極端な反イスラエル政策」に起因。特にガザでの虐殺非難が関係。
 ・イスラエル外務省の声明: アイルランド政府の行動を「ユダヤ国家の非正当化と悪魔化」「反ユダヤ的なレトリック」として非難。
 ・ギデオン・サール外務大臣の発言: アイルランドは「すべての赤線を越えた」とし、今後は他国との関係を優先する方針を示した。
 ・アイルランド首相の反応: サイモン・ハリス首相は「深い失望」を表明し、対話の重要性を強調。アイルランドは「平和、国際法、人権を支持する国」であると主張。
 ・アイルランド政府の立場: ガザでの即時停戦を求め、2024年5月にパレスチナ国家を正式に認定。
 ・アイルランドのジェノサイド訴訟支持: 南アフリカが国際司法裁判所に提出したジェノサイドに関する訴訟を支持。
 ・イスラエルの立場: ジェノサイド非難を否定し、ガザでの民間人死者はハマスに責任があると主張。
 ・IDFの見解: ハマスが民間人を「人間の盾」として利用しており、軍事作戦はハマスの脅威を排除するまで続く。
 ・国際刑事裁判所(ICC)への反発: イスラエルは、ネタニヤフ首相を含む高官に対する逮捕状を無視し、ICCの決定が政治的動機によるものと批判。

【引用・参照・底本】

Israel shuts down embassy in EU country RT 2024.12.16
https://www.rt.com/news/609405-israel-shuts-down-embassy-ireland/